説明

像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】像担持体を回転可能に支持するシャフトとアース部材の摺動部に塗布された導電性潤滑剤が流れ出て枯れることを防ぐことにより、異常音の発生を抑制する。
【解決手段】アース板5における折り曲げ部5B,5Bの突起形状5C,5Dは、シャフト4に対して対向する2箇所に設けられ、シャフト4の中心軸線4aに対して平行に、かつ、中心軸線4aに対して所定の傾斜角度θ1,θ2をもって直線状に延びた線状突起部6を備え、なおかつ、各突起形状5C,5Dが中心軸線4aに関して線対称に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関し、さらに詳しくは、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタ等またはそれら複数の機能を備えた複合機等の画像形成装置に用いられる像担持体ユニット、これを用いたプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタ等またはそれら複数の機能を備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置に配置されている画像形成部において、トナー画像を作成して用紙等に転写するために用いられている像担持体は、導電性基材としてアルミ等の金属上に感光層を備えている。
そして、上記感光層に対してその周囲に配置している帯電装置、現像装置、転写装置等により、帯電・現像・トナー画像の転写等の動作を順次繰り返して行い、トナー画像を用紙に転写して画像形成された用紙を作成する。このような像担持体においては、繰り返して帯電動作等が行われ、その帯電電圧が高いものであることから、アース手段を設けることで静電気を逃がすようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
すなわち、特許文献1記載の技術では、ドラム本体(像担持体)の両端部に固定されたフランジ部材と、これらフランジ部材の中心を貫通することによりドラム本体を回転可能に支持するシャフトとを有する感光体ドラムにおいて、ドラム本体の内面とシャフトとの間で導通を得るために、フランジ部材の内側部に設けたアース部材と、円筒形状を有し、シャフトが圧入される導電性の被摺動部材と、シャフトに設けた導電性の被摺動部材に対してアース部材の接触部を摺動させる手段とを設けている。
特許文献1記載の技術では、被摺動部材とアース部材とを接触させることで、アース部材との接触部位に従来塗布されていた導電性のグリース等の位置ずれによる潤滑性能の劣化を防ぐとともにシャフトとアース部材の導通を確保しながら異常音の発生を防ぐというものである。
【0004】
特許文献2記載の技術では、無端状のベルトから駆動力を受ける従動プーリと、その両者を結ぶ軸とを互いに電気的に接続しておき、従動プーリの側面に摺動アース板の摺動部を所定の押圧力で摺動接触させる。そして、摺動アース板は、装置本体の一部をなすフレームに取り付けられていることで、電気的な接続もされている状態の下で、従動プーリの回転に伴い、摺動部は従動プーリの側面に接触したまま摺動し、感光体ドラムからの電気的導通がフレームに到るよう構成している。
特許文献2記載の技術では、感光体ドラムの軸(シャフト)と摺動アース板との間の導通を確保しながら摺動によるトルク増大を抑えるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、導電性のグリース等を含む導電性潤滑剤と比べて、高価であって別部品である導電性の被摺動部材をシャフトに圧入しなければならないため、部品点数が増えるとともに、安価な画像形成装置を提供することができないという問題点がある。
特許文献2記載の技術では、異常音の発生については言及されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点・事情に鑑みてなされたものであり、像担持体を回転可能に支持するシャフトとアース部材の摺動部に塗布された導電性潤滑剤が流れ出て枯れる(後述の従来装置の比較例を示す図9〜図11参照)ことを防ぐことにより、異常音の発生を抑制した、部品点数が増えることなく安価かつ小型の像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよびこれらを具備する画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、導電性基材上に感光層を備えた像担持体と、該像担持体の少なくとも一端部に固定されたフランジ部材と、該フランジ部材の中心部を貫通することにより前記像担持体を回転可能に支持するシャフトと、その一部が前記導電性基材に接触し他部が前記シャフトに接触することにより、前記導電性基材と前記シャフトとを導通するアース部材と、前記シャフトの前記アース部材との接触部位に塗布される導電性潤滑剤と、前記シャフトを支持するフレームと、前記シャフトを電気的に接地する導通手段とを有する像担持体ユニットにおいて、前記アース部材における前記シャフトとの接触部が、前記シャフトに対して対向する2箇所に設けられ、前記シャフトの中心軸線に対して平行に、かつ、該中心軸線に対して所定の傾斜角度をもって直線状に延びた突起形状をなし、なおかつ、前記各突起形状が前記中心軸線に関して線対称に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の像担持体ユニットにおいて、前記各所定の傾斜角度は、0度より大きく90度未満であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の像担持体ユニットにおいて、前記アース部材における少なくとも一方の前記突起形状の前記像担持体の回転方向下流側には、前記シャフトに近接する向きに折り曲げられた折り曲げ形状を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の像担持体ユニットにおいて、前記折り曲げ形状は、前記シャフトとは非接触であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の像担持体ユニットにおいて、前記アース部材は、ばね材で形成されており、該アース部材によるばね付勢力により、前記各突起形状が常に前記シャフトに押圧しながら接触することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、像担持体と、帯電手段、クリーニング手段および現像手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットを有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットまたは請求項6記載のプロセスカートリッジを具備することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記課題を解決して新規な像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよびこれらを具備する画像形成装置を実現し提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば、以下のとおりである。
請求項1、2記載の発明によれば、上記各構成を用いることにより、アース部材とシャフトとが接触する接触部分における導電性潤滑剤が、各突起形状により、シャフトの軸方向の左右における所定の傾斜角度の範囲内で交互に案内・移動されることによって、枯れてしまうことがなくなるので、装置を長時間使用した際にも異常音の発生を抑制することができ、部品点数が増えることなく、安価かつ小型の像担持体ユニットを実現し提供することができる。
【0015】
請求項3、4記載の発明によれば、上記各構成を用いることにより、アース部材とシャフトとが接触する部分においてシャフトの軸方向の左右に掻き分けられてしまった導電性潤滑剤が、折り曲げ形状によって均されることによって再び接触部分に戻されるので、装置をさらに長時間使用した際にも異常音の発生を抑制することができ、安価で小型の像担持体ユニットを実現し提供することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、上記構成を用いることにより、安定した画像品質を得られる像担持体ユニットを実現し提供することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、上記構成のプロセスカートリッジにおいても、請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットと同等の効果を得ることができる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、上記構成の画像形成装置においても、請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットまたは請求項6記載のプロセスカートリッジと同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態等の像担持体ユニットを長手(軸)方向で断面にした断面図である。
【図2】第1の実施形態の像担持体ユニットをシャフトと直交する方向で断面にした像担持体、シャフト、フランジ、アース板周りの断面図である。
【図3】(a)は、第1の実施形態のアース板に形成した一方の突起形状の、(b)は、他方の突起形状の、それぞれの配置状態および導電性潤滑剤に対する作用を表す平面図である。
【図4】第1の実施形態の変形例の像担持体ユニット要部をシャフトと直交する方向で断面にしたシャフト、フランジ、アース板周りの断面図である。
【図5】第2の実施形態の像担持体ユニットの要部であるアース板の一対の突起形状のシャフトへの配置状態を示す正面図である。
【図6】(a)は、第2の実施形態のアース板に形成した一方の突起形状の、(b)は、他方の突起形状の、それぞれの配置状態および導電性潤滑剤に対する作用を表す平面図である。
【図7】第1の実施形態等を適用したカラー画像形成装置全体の概略的な構成図である。
【図8】第1の実施形態等を適用したプロセスカートリッジの要部の断面図である。
【図9】従来装置(比較例)の像担持体ユニットの要部であるシャフト、フランジ、アース板に形成された一方の突起形状周りの斜視図である。
【図10】図9とシャフトを挟んで反対側のアース板に形成された他方の突起形状、シャフト、フランジ周りの斜視図である。
【図11】従来装置(比較例)の像担持体ユニットの要部であるアース板を軸方向で断面にして、各突起形状の配置状態および導電性潤滑剤に対する作用を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り同一符号を付すこととする。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る電子写真方式のカラー画像形成装置100の全体構成とともに動作を説明する。図7は、カラー画像形成装置100の内部構成を示す概略的な断面図である。
同図に示すように、カラー画像形成装置100は、装置本体としての機枠体をなす本体フレーム101のほぼ中央部に、画像形成部を構成するプロセスカートリッジとして右から左に向けて順に4つのプロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yを並設しており、プロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yの上側には、それぞれの像担持体1K,1C,1M,1Yに潜像を形成するための露光装置105を配置している。図示した例では、各像担持体1K,1C,1M,1Yの表面に、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像およびブラックトナー像がそれぞれ形成される。
以下、プロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yでは、現像剤として使用されるトナーの色および形成されるトナー像が異なるだけで同様の構成であるため、これらを総括的に説明する際にはその色を表す符号を削除したプロセスカートリッジ106で説明する。同様に、像担持体1K,1C,1M,1Yを総括的に説明する際にはその色を表す符号を削除した像担持体1で説明する。
【0022】
プロセスカートリッジ106は、図7および図8に示すように、後述するように像担持体1等を有して構成された像担持体ユニット10と、帯電手段としての帯電装置を構成する帯電ローラ11と、クリーニング手段としてのクリーニング装置を構成するクリーニングブレード13と、現像手段としての現像装置を構成する現像ローラ12とを一体に支持する筺体状の支持部材としてのフレーム14を有し、フレーム14を介して、カラー画像形成装置100の本体フレーム101に対して着脱自在に構成されている。フレーム14は、図8において紙面の手前側および奥側に一対配設された支持側板を有している。
【0023】
プロセスカートリッジ106の下側には、複数の支持ローラ104a,104bに巻き掛けられ矢印方向に駆動される、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト103が設置されている。さらに中間転写ベルト103の下側には、給紙装置を構成する、用紙やOHPシート等のシート状記録媒体(以下、「シート」という)107を積載・収容する給紙カセット108が配置されている。給紙装置を構成する給紙ローラ109および図示しないシート分離手段によって1枚ずつ分離して給紙されたシート107は、支持ローラ104aを介して中間転写ベルト103と第2転写装置としての第2転写ローラ111との間を通り、定着装置112へ導かれてシート107にトナー像が熱定着される。
【0024】
プロセスカートリッジ106の像担持体1が中間転写ベルト103と接する下方位置には、第1転写装置を構成する第1転写ローラ103aがそれぞれ設置されている。各第1転写ローラ103aに高電位を印加することによって、像担持体1と中間転写ベルト103に電位差が生じることで像担持体1表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト103に転写される。
各プロセスカートリッジ106にてこれら色毎のトナー像が順次中間転写ベルト103に転写され、中間転写ベルト103上に単色トナー像を重ね合わせた複数色のカラートナー像が形成される。
【0025】
給紙ローラ109から給送されたシート107は、レジスト手段としてのレジストローラ110でタイミングをとって第2転写ローラ111に供給され、中間転写ベルト103の表面に形成されている単色あるいはカラートナー像は、第2転写ローラ111において高電位が印加されることによって、中間転写ベルト103と第2転写ローラ111との間に電位差が生じることで、中間転写ベルト103表面に形成されたトナー像がシート107上に転写される。
【0026】
未定着のトナー像が転写されたシート107は、中間転写ベルト103から剥離され、定着装置112によってシート107に溶融定着され、排紙装置を構成する排紙ローラ113により本体フレーム101の上面に配置された排紙トレイ116に排出・排紙される。
【0027】
シート107へトナー像を転写した後の中間転写ベルト103の表面に残っている余剰トナーは、中間転写体清掃装置114により清掃され、トナー回収装置115に回収される。清掃された中間転写ベルト103は、次のトナー像の転写に備える。
【0028】
図7に示すように、カラー画像形成装置100は、シート107の給紙から排紙までのシート搬送経路をできる限り簡略化し、そのシート搬送経路の曲率半径を大きくすることにより、搬送途中での紙詰まりを防止し、信頼性を向上させることができる。また、紙詰まり発生時の解消処理操作も簡単に行うことができ、さらに、厚紙等も使用する多種記録媒体方式のカラー電子写真装置にも対応することもできる。
【0029】
この実施形態では、シート搬送経路を略円弧状に形成し、中間転写ベルト103とプロセスカートリッジ106と露光装置105とを、シート搬送経路の内側に配置することにより、本体フレーム101内の空間を有効利用して小型化するとともに、シート搬送経路を簡略化し、画像面を下向きにしてシート107を排出する構成とした。
【0030】
上記構成により、シート搬送経路を簡略化することができ、かつ、殆どの構成ユニットをシート搬送経路よりも内側に配置したことによって、シート搬送経路が外側の本体フレーム101に近くなり、シート搬送経路を開放し易くなるために、紙詰まり発生時の解消処理操作も簡単になる。また、シート107が画像面を下向きにして本体フレーム101上面の排紙トレイ116上に排出されることにより、排紙トレイ116上に積み重なったシート107は、画像面側が上を向くように取り出すと、上側から下側に印刷順に並ぶように積み重なる利点がある。
また、図7での右側が正面となるよう構成するとともに、シート搬送経路のほぼ中央で分割してその右側を開閉自在なカバーユニット(図示せず)とし、このカバーユニットを開放してシート搬送経路を露出させることができる構成であるため、紙詰まり発生時の解消処理操作もより簡単になる。
【0031】
次に、電子写真画像形成プロセスについて説明する。図8はプロセスカートリッジ106の断面図である。図7および図8において、像担持体1は、本体フレーム101に設置された図示しない駆動装置により矢印方向に回転駆動され、その表面の感光層1Bが帯電ローラ11によって一様な高電位に帯電される。一様帯電された感光層1Bは、露光装置105からの画像情報に基づく光線(例えばレーザ光)Lにより露光される。この露光により電位の減衰した低電位部と初期化による高電位部とからなる静電潜像が感光層1Bに形成される。次いで、当該静電潜像の低電位部(または高電位部)が像担持体1と現像ローラ12との対向位置に至ると、その表面にトナー薄層を担持した現像ローラ12からトナーが像担持体1に移され、像担持体1の表面にトナー像が形成される。像担持体1の回転が進むと、上記トナー像は図7に示した1次転写ローラ103aによって中間転写ベルト103に転写される。このとき、像担持体1上には、中間転写ベルト103に転写されずに残った転写残トナーが存在するが、この転写残トナーはクリーニングブレード13によって像担持体1から除去される。このクリーニングブレード13よりも像担持体1の回転方向下流側には、図示しない除電装置が設けられている。この除電装置では、像担持体1の表面の残留電荷が除去される。除電装置における像担持体1の回転方向下流側には上記帯電ローラ11が設けられており、像担持体1は再び帯電ローラ11によって一様な高電位に帯電される。
【0032】
図1〜図3を参照して、本実施形態のプロセスカートリッジ106を構成する像担持体ユニット10について、図9〜図11に示す従来の比較例である像担持体ユニット500と比較しながら説明する。本実施形態の像担持体ユニット10は、比較例の像担持体ユニット500と比較して、後述するようにアース板5の一対の突起形状の方向および配置状態のみが主に相違するだけで他の構成は同様であるため、従来の比較例として図9〜図11に示されているフランジ2、シャフト4、アース板5周りの形状・配置を適宜借用しながら説明する。
図1は、像担持体ユニット10をその長手方向(軸方向)で断面にした図であり、像担持体ユニット10を構成する像担持体1の周辺部品も同時に表したものである。
【0033】
図1〜図3に示すように、像担持体ユニット10は、円筒状をなす導電性基材1Aの表面に感光層1Bを備えた像担持体1(図2参照)と、像担持体1の一端部に取り付け・固定されたフランジ部材(以下、「フランジ」という)2(立体的な形状については図9および図10参照)と、像担持体1の他端部に取り付け・固定されたギヤ3と、フランジ2およびギヤ3の中心部を貫通することにより像担持体1を回転可能に支持するシャフト4と、その一部が導電性基材1Aに接触し他部がシャフト4に接触することにより、導電性基材1Aとシャフト4とを導通するアース部材としてのアース板5と、シャフト4のアース板5との接触部位に塗布される図示しない導電性潤滑剤と、シャフト4を支持するフレーム14と、シャフト4を電気的に接地する後述する導通手段とを有している。
【0034】
図1に示すように、像担持体1は、フランジ2の中心部に形成された孔2aと、ギヤ3の中心部に形成された孔3aとを貫通するシャフト4によって回転可能に支持されている。シャフト4は、例えば導電性の特殊鋼等の金属で形成されたり、導電性のメッキ処理を施されていて、プロセスカートリッジ106のフレーム14によってその両端部を支持され、止め輪等の回転防止部材9によってシャフト4は回転することを抑制されるとともに、図において左側への抜け止めがなされている。また、シャフト4は、回転防止部材9と反対側の端部において、図示しない別部材で軸方向に対する完全な抜け止めがなされている。
【0035】
プロセスカートリッジ106をカラー画像形成装置100の本体フレーム101に装着したときに、本体フレーム101に取り付けられ電気的に接地された例えばステンレススチール製の板金(図示せず)と、導電性のシャフト4の端部とが接触することにより、シャフト4が接地されるようになっている。上記のとおり、本体フレーム101に取り付けられ電気的に接地された板金(図示せず)は、シャフト4を電気的に接地する導通手段を構成している。
【0036】
図2に示すように、像担持体1は、アルミ等で形成された導電性基材1Aの表面にセレン等からなる感光層1Bを設けた構成であり、図7および図8において、感光層1Bに対してその周囲に配置している帯電装置の帯電ローラ11、現像装置の現像ローラ12、1次転写装置の1次転写ローラ103aにより、帯電・現像・トナー画像の転写等の動作を順次繰り返して行い、中間転写ベルト103を介してトナー像を最終的に用紙等のシート107に転写して画像形成されたシートを作成するものである。
像担持体1においては、繰り返して帯電動作が行われもので、その帯電電圧が高いものであるので、その一部が導電性基材1Aに接触し、他部がシャフト4に摺動・接触するように設けることにより、導電性基材1Aとシャフト4とを電気的に導通するアース板5をフランジ2に固定するように設けて、静電気を容易に逃がすことで画像に異常が発生することを防いでいる。
【0037】
アース板5は、図2に示すように、フランジ2の円筒状外周部の外側に固定する状態で設けられ、4隅が丸みを帯びたほぼ正方形状をなし、一方の一対の対向する辺の部位が外側に突出するように延びて導電性基材1Aの内周面に食い込むように接触する2箇所の凸部5A,5Aと、他方の一対の対向する辺の部位がシャフト4の軸方向に沿うように折り曲げられてシャフト4の外周表面に接触する突起形状5C,5Dを備えた2箇所の折り曲げ部5B,5Bとを有し、りん青銅あるいはアルミ等の薄板状のばね材で一体的に形成されている。突起形状5C,5Dは、その断面がほぼU字状をなす。
【0038】
像担持体1は、図1において、図示しない駆動装置に連結されたギヤ列等の駆動力伝達部材と噛み合っているギヤ3に上記駆動装置の回転駆動力が伝達されることにより、図2中矢印方向に回転駆動されることによって、フランジ2とともにアース板5も図2中矢印方向に回転することとなり、対向する2箇所の折り曲げ部5B,5Bの突起形状5C,5Dがシャフト4の外周面に塗布された導電性潤滑剤(図示せず)上を摺動・接触しながら回転する。導電性潤滑剤としては、例えば導電性グリースを用いている。
図3(a)、(b)において、太矢印で示す回転方向は、像担持体1のそれを示すとともに、像担持体1と一緒にフランジ2およびアース板5の折り曲げ部5Bが回転する方向を示している。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、各折り曲げ部5B,5Bの突起形状5C,5Dは、シャフト4に対して対向する2箇所に設けられ、シャフト4の中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して平行に、かつ、中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して所定の傾斜角度θ1,θ2をもって直線状に延びた破線で示す線状突起部6を備え、なおかつ、各突起形状5C,5Dが中心軸線4aに関して線対称に配置されていることを一つの特徴としている。
【0040】
上述したとおり、アース板5の2箇所の凸部5A,5Aが像担持体1の導電性基材1Aの内面に食い込むように接触し、かつ、2箇所の折り曲げ部5B,5Bに形成された平面視で楕円状の突起形状5C,5Dによってシャフト4に対して押し込むように接触することで、像担持体1とシャフト4との間の導通を確保しており、突起形状5C,5Dが接触する部位のシャフト4外周面上に図示しない導電性潤滑剤を塗布していることにより、摺動で発生する異常音を抑制することができる。
【0041】
従来装置の比較例の像担持体ユニット500は、本実施形態の像担持体ユニット1と比較して、図9および図10に示すように、アース板5に代えたアース板5’を有し、アース板5’を以下のように作製して配置した点が相違する。この相違点以外は、像担持体ユニット500は本実施形態の像担持体ユニット1の構成と同様である。
すなわち、像担持体ユニット500のアース板5’における2箇所の折り曲げ部5B’,5B’は、シャフト4に対して対向する2箇所に設けられ、シャフト4の中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して平行に、かつ、中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して直交する角度(90度)をもって直線状に延びた破線で示す線状突起部6’を備え、なおかつ、各突起形状5C’,5D’が中心軸線4aに関して線対称に配置されている。
【0042】
各突起形状5C’,5D’を形成する上でのプレス金型形状に着目して見方を変えて表現すると、次のようになる。すなわち、比較例における各折り曲げ部5B’,5B’の突起形状5C’,5D’は、例えば太線矢印で示す平面視(図9および図10では「見る方向」と記載している)で楕円形状をなし、楕円形状の長軸方向に線状突起部6’が一致し、線状突起部6’がシャフト4と接触する任意の一点から見て、平面視でシャフト4の軸方向に対して直交する方向を向いているため、像担持体1を回転させてアース板5’を長時間摺動させていると、図11に示すように、導電性潤滑剤が突起形状5C’,5D’によって矢印で示すシャフト4の各端部に向かう軸方向に掻き分けられて流れ出て枯れてしまうことで潤滑効果が無くなり、アース板5’とシャフト4との間で異常音が発生する問題がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、上記比較例の問題を解決するために、図3(a)、(b)を参照して上述したように、アース板5における各折り曲げ部5B,5Bの突起形状5C,5Dを形成し配置した。
本実施形態の各突起形状5C,5Dを形成する上でのプレス金型形状に着目して見方を変えて表現すると、次のようになる。すなわち、本実施形態における各折り曲げ部5B,5Bの突起形状5C,5Dは、例えば平面視で楕円形状をなし、楕円形状の長軸方向に線状突起部6が一致し、線状突起部6がシャフト4と接触する任意の一点から見て、平面視でシャフト4の軸方向(中心軸線4aもしくは一母線)に対して所定の傾斜角度θ1,θ2を持ち、中心軸線4aに関して線対称に配置されている。
従って、突起形状5C,5Dによって導電性潤滑剤を掻き分ける方向がそれぞれ異なり、例えば突起形状5Cの線状突起部6によって導電性潤滑剤が図3(a)の矢印A方向に掻き分けられたとしても、突起形状5Dの線状突起部6によって導電性潤滑剤は図3(b)の矢印B方向に戻されるように掻き分けられ、突起形状5C,5Dとシャフト4の外周面とが接触する部分においては導電性潤滑剤が常に塗布される状態を保つことができる。
【0044】
傾斜角度θ1,θ2は、望ましくは0度より大きく90度未満、すなわち鋭角に設定されている。傾斜角度θ1,θ2は、より望ましくは45度以上75度以下であるとよい。傾斜角度θ1,θ2が上記したものより小さいと、導電性潤滑剤を掻き分ける働き・効果が小さくなり、上記したものより大きいと導電性潤滑剤をせき止めてしまう働き・効果が大きくなるためである。
【0045】
上述したとおり、本実施形態によれば、突起形状5C,5Dとシャフト4の外周面とが接触する部分においては導電性潤滑剤が常に塗布される状態を保つことができ、図9に示した比較例のようにシャフト4の各端部に向かう軸方向に掻き分けられて流れ出てしまうことで枯れてしまうことがなくなるので、装置を長時間使用した際にも異常音の発生を抑制することができ、特許文献1のように部品点数が増えることなく、安価かつ小型の像担持体ユニット10を実現し提供することができるとともに、安定した画像品質を得られる像担持体ユニット10を実現し提供することができる。また、プロセスカートリッジ106およびカラー画像形成装置100においても、像担持体ユニット10と同等の効果を得ることができる。
【0046】
(第1の実施形態の変形例)
図4を参照して、第1の実施形態の変形例を説明する。この変形例は、第1の実施形態のアース板5に代えて、アース部材としてのアース板5Xを用いてこれを後述するように配置した点のみが相違する。アース板5Xは、アース板5と比較して、突起形状5C,5Dのうち少なくとも一方(本変形例では突起形状5C)の像担持体1の回転方向下流側に、シャフト4に近接する向きに折り曲げられた折り曲げ形状5Eを設けた点、およびこの折り曲げ形状5Eをシャフト4の外周面と非接触に突出して配置した点のみが相違する。この相違点以外は、アース板5Xはアース板5と同様の構成である。
本変形例によれば、突起形状5C,5Dによって掻き分けられた導電性潤滑剤を折り曲げ形状5Eの突出先端部分で均すことができ、突起形状5C,5Dとシャフト4とが接触する部分においては導電性潤滑剤が常に塗布される状態を保つことができるので、第1の実施形態よりも装置をさらに長時間使用した際にも異常音の発生を抑制することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
図5および図6を参照して、第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態は、第1の実施形態のアース板5に代えて、アース部材としてのアース板5Yを用いてこれを後述するように配置した点のみが相違する。
アース板5Yは、アース板5と比較して、2箇所の折り曲げ部5B,5Bのうちの一方に代えて、本実施形態例では突起形状5C形成側のシャフト4との接触中心位置が軸方向で変わるように軸方向に短く形成されている折り曲げ部5BYを用いる点、およびこれを後述するように配置した点が主に相違する。この相違点以外は、第2の実施形態は第1の実施形態の構成と同様である。
【0048】
すなわち、本実施形態におけるアース板5Yの突起形状5C,5Dの配置状態の特徴を明確にすべく第1の実施形態のそれと比較して述べると、図6(a)、(b)に示すように、各折り曲げ部5BY,5Bの突起形状5C,5Dは、シャフト4に対してほぼ対向する2箇所に設けられ、シャフト4の中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して平行に、かつ、中心軸線4a(もしくはシャフト4の一母線)に対して所定の傾斜角度θ1,θ2をもって直線状に延びた破線で示す線状突起部6を備え、なおかつ、各突起形状5C,5Dを中心軸線4aに関して線対称に配置した後、折り曲げ部5B,5Bのうちの一方の折り曲げ部5BYの突起形状5Cをシャフト4の軸方向に沿って平行移動し、各突起形状5C,5Dの中心位置がシャフト4の軸方向で異なる接触位置を占めるように配置したものである。
【0049】
本実施形態の各突起形状5C,5Dを形成する上でのプレス金型形状に着目して見方を変えて表現すると、次のようになる。すなわち、本実施形態における各折り曲げ部5BY,5Bの突起形状5C,5Dは、例えば平面視で楕円形状をなし、楕円形状の長軸方向に線状突起部6が一致し、線状突起部6がシャフト4と接触する任意の一点から見て、平面視でシャフト4の軸方向(中心軸線4aもしくは一母線)に対して所定の傾斜角度θ1,θ2を持ち、各突起形状5C,5Dを中心軸線4aに関して線対称に配置した後、一方の折り曲げ部5BYの突起形状5Cをシャフト4の軸方向に沿って平行移動し、各突起形状5C,5Dの中心位置がシャフト4の軸方向で異なる接触位置を占めるように配置したものである。
傾斜角度θ1,θ2の望ましい、あるいはより望ましい範囲は上述したとおりである。また、本実施形態においても、図4に示した変形例を適用できることは無論である。
【0050】
従って、本実施形態によれば、突起形状5C,5Dによって導電性潤滑剤を掻き分ける方向がそれぞれ異なり、例えば突起形状5Cの線状突起部6によって導電性潤滑剤が図6(a)のハッチングを施して示す矢印A方向に掻き分けられたとしても、突起形状5Dの線状突起部6によって導電性潤滑剤は図6(b)のハッチングを施して示す矢印B方向に戻されるように掻き分けられ、第1の実施形態よりもシャフト4の軸方向のより広い範囲内で突起形状5C,5Dとシャフト4の外周面とが接触する部分においては導電性潤滑剤が常に塗布される状態を保つことができる。それ故に、図9に示した比較例のようにシャフト4の各端部に向かう軸方向に掻き分けられて流れ出てしまうことで枯れてしまうことがなくなるので、装置を長時間使用した際にも異常音の発生を抑制することができ、特許文献1のように部品点数が増えることなく、安価かつ小型の像担持体ユニット10を実現し提供することができるとともに、安定した画像品質を得られる像担持体ユニット10を実現し提供することができる。また、プロセスカートリッジ106およびカラー画像形成装置100においても、像担持体ユニット10と同等の効果を得ることができる。
【0051】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施例を含む実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 像担持体
2 フランジ(フランジ部材)
3 ギヤ
4 シャフト
4a シャフトの中心軸線
5,5X,5Y アース板(アース部材)
5A 凸部
5B,5BY 折り曲げ部
5C,5D 突起形状
5E 折り曲げ形状
6 線状突起部
9 回転防止部材
10 像担持体ユニット
11 帯電ローラ(帯電手段を構成)
12 現像ローラ(現像手段を構成)
13 クリーニングブレード(クリーニング手段を構成)
14 フレーム(像担持体ユニットの支持部材)
100 カラー画像形成装置(画像形成装置)
101 本体フレーム(画像形成装置の装置本体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2005−316210号公報
【特許文献2】特開2006−106638号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材上に感光層を備えた像担持体と、該像担持体の少なくとも一端部に固定されたフランジ部材と、該フランジ部材の中心部を貫通することにより前記像担持体を回転可能に支持するシャフトと、その一部が前記導電性基材に接触し他部が前記シャフトに接触することにより、前記導電性基材と前記シャフトとを導通するアース部材と、前記シャフトの前記アース部材との接触部位に塗布される導電性潤滑剤と、前記シャフトを支持するフレームと、前記シャフトを電気的に接地する導通手段とを有する像担持体ユニットにおいて、
前記アース部材における前記シャフトとの接触部が、前記シャフトに対して対向する2箇所に設けられ、前記シャフトの中心軸線に対して平行に、かつ、該中心軸線に対して所定の傾斜角度をもって直線状に延びた突起形状をなし、なおかつ、前記各突起形状が前記中心軸線に関して線対称に配置されていることを特徴とする像担持体ユニット。
【請求項2】
前記各所定の傾斜角度は、0度より大きく90度未満であることを特徴とする請求項1記載の像担持体ユニット。
【請求項3】
前記アース部材における少なくとも一方の前記突起形状の前記像担持体の回転方向下流側には、前記シャフトに近接する向きに折り曲げられた折り曲げ形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の像担持体ユニット。
【請求項4】
前記折り曲げ形状は、前記シャフトとは非接触であることを特徴とする請求項3記載の像担持体ユニット。
【請求項5】
前記アース部材は、ばね材で形成されており、該アース部材によるばね付勢力により、前記各突起形状が常に前記シャフトに押圧しながら接触することを特徴とする請求項1ないし4の何れか一つに記載の像担持体ユニット。
【請求項6】
像担持体と、帯電手段、クリーニング手段および現像手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットまたは請求項6記載のプロセスカートリッジを具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−170046(P2010−170046A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14641(P2009−14641)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】