説明

像担持体駆動装置及び画像形成装置

【課題】複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、慣性体と、像担持体の速度変動を減衰させる構成とをともに備え、これらの機能が良好に発揮される像担持体駆動装置及びこれを備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】像担持体を回転駆動するための駆動源と、像担持体と一体で回転し像担持体の回転に慣性を与える慣性体78と、慣性体78に外部から係合し慣性体78の回転に粘性を与える粘性付与手段79とを有する像担持体駆動装置80Y及びこれを備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、像担持体を回転駆動する像担持体駆動装置及びこれを備えたかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において、感光体等の潜像担持体、中間転写ベルト等の中間転写体などの像担持体を備えた画像形成装置(たとえば〔特許文献1〕〜〔特許文献8〕参照)にあっては、像担持体の回転に従って、像担持体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程等を施すことにより画像形成を行うようになっている。
【0003】
そのため、かかる画像形成装置においては、像担持体を回転駆動するためのモータ等の駆動源が設けられているが、かかる画像形成を行う際には、駆動源からの回転駆動力を、回転変動言い換えると速度変動を極力低減した状態で像担持体に伝達すること、すなわち像担持体の回転駆動を高い精度で安定して行うことが要求される。これは、かかる回転変動に起因して、出力画像を構成するドット位置精度の均一性、安定性が乱され、出力画像上のジッターや濃度ムラを生じたり、画像内における周期的な濃度ムラを起こして画像上に縞模様が現れるバンディングと呼ばれる画質劣化を生じたり、画像形成装置がカラー機である場合において2次色として表現される場合の色ムラを生じたりするためである。
【0004】
一方、かかる駆動源の回転数は一般に、像担持体の回転に求められる回転数よりも大きいため、従来より、歯車を用いた減速装置が多く用いられている。しかし、歯車を用いた減速装置では、上述の各工程の実施中に像担持体に回転負荷が生じたときなどに、バックラッシュに起因して、像担持体の回転変動が生じるという問題がある。このような問題は、減速装置に限らず、歯車やタイミングベルト等を備えた回転伝達機構において同様に生じる。その他、像担持体の回転変動は、駆動源自身の出力変動によって生じることもある。これは駆動源としてステッピングモータを用いる場合も含む。
【0005】
このような事情等に鑑み、像担持体を高精度に安定して回転駆動させるための技術が従来より種々提案されている。かかる技術としては、像担持体の回転軸にフライホイール等の慣性体を一体に設けた構成(たとえば〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕参照)、ゴム等の弾性体、オイル等の粘性体を駆動源からの回転駆動力の伝達等に用いた構成(たとえば〔特許文献1〕、〔特許文献2〕、〔特許文献4〕〜〔特許文献8〕参照)が提案されている。
【0006】
前者の構成は、慣性体により像担持体の慣性力を増し、これにより、モータ等の駆動源や、その駆動源から像担持体へ回転駆動力を伝えるギヤ、タイミングベルト等を備えた回転伝達機構で生じる高周波域の回転変動を低減し、像担持体の駆動精度を向上する。また、慣性体を設けると、これを設けていない場合に比べて、回転伝達機構の固有振動周波数が、たとえば10Hz程度、低周波側へシフトする。そのため、減衰する高周波側の領域が広がり、より広い周波数帯域にわたって回転変動が低減される。
後者の構成は、かかる弾性体、粘性体により、像担持体の速度変動を減衰させたり吸収したりすることで、像担持体の駆動精度を向上する。
【0007】
前者の構成、後者の構成は、このような特性を有するため、ともに備えられていることが、像担持体の駆動を高い精度で向上するのに好ましい。
このような構成としては、従来、たとえば、像担持体の回転軸に弾性体を介して慣性体を設け、一体に回転する技術が挙げられており(たとえば〔特許文献1〕参照)、この技術によれば、ダイナミックダンパ効果が発揮され、振動が減衰されるものとされている。またかかる構成としては、従来、たとえば、像担持体の内部に慣性体を設けるとともに、この像担持体の外周面にオイルの粘性を利用して粘性抵抗を付与する回転部材を当接させた技術が挙げられており(たとえば〔特許文献2〕参照)、この技術によれば、像担持体の速度変動が速やかに減衰されるものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の技術には以下の問題点がある。
・弾性体が慣性体を保持する構造であるため、慣性体の倒れに起因するフレ振動の影響を受けて高粘性付与が十分に行われないおそれがある。
・比較的回転変動の大きい領域、言い換えると回転変動の振幅が比較的大きい場合にしか有効でない。
・装置実装後は弾性体による付与粘性が装置個体差などに合わせて調整不能である。
【0009】
また、後者の技術には以下の問題がある。
・像担持体表面に付着したトナー等によって同表面の摩擦条件が大きく変化するため、像担持体の速度変動の減衰性が安定しない。
【0010】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、慣性体と、像担持体の速度変動を減衰させる構成とをともに備え、これらの機能が良好に発揮される像担持体駆動装置及びこれを備えたかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、像担持体を回転駆動するための駆動源と、像担持体と一体で回転し同像担持体の回転に慣性を与える慣性体と、この慣性体に外部から係合しこの慣性体の回転に粘性を与える粘性付与手段とを有する像担持体駆動装置にある。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記慣性体の回転に粘性を与えるための回転部材を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の像担持体駆動装置において、前記回転部材は、少なくとも前記慣性体に当接する部分が弾性体の弾性ローラであることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の像担持体駆動装置において、前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、前記弾性ローラは、前記複数の部分のうち、径が最大でない部分に当接していることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記慣性体に一体の弾性体を有し、前記回転部材は、前記弾性体に当接したローラであることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の像担持体駆動装置において、前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、前記弾性体は、前記複数の部分のうち、少なくとも径が最大でない部分に一体とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項2ないし8の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記回転部材を、前記慣性体の回転中心に対称な位置で同慣性体の回転に粘性を与えるように複数備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を変位可能に支持することにより前記慣性体に与える粘性を可変とした支持機構を有することを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項7記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を定位置で支持した支持部材を有することを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項2ないし9の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記回転部材と、この回転部材に当接した前記慣性体又は前記慣性体に一体の弾性体との少なくとも一方の、これらが互いに当接する部分に、摩擦係数を上げる加工が施された摩擦係数上昇部を有することを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項2ないし10の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記弾性体は、少なくともその表層が所定の硬度を有するウレタン系ゴム又はシリコンゴム系の材料で形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項12記載の発明は、請求項2ないし10の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記粘性付与手段は、前記回転部材の回転に粘性抵抗を与える粘性抵抗部を有することを特徴とする。
【0023】
請求項13記載の発明は、請求項1ないし12の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、前記粘性付与手段を、前記減速機構と像担持体との間に設けたことを特徴とする。
【0024】
請求項14記載の発明は、請求項1ないし13の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、前記粘性付与手段を、像担持体を挟んで前記減速機構の反対側に設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項15記載の発明は、請求項1ないし14の何れか1つに記載の像担持体駆動装置と、この像担持体駆動装置によって回転駆動される像担持体とを有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、像担持体を回転駆動するための駆動源と、像担持体と一体で回転し同像担持体の回転に慣性を与える慣性体と、この慣性体に外部から係合しこの慣性体の回転に粘性を与える粘性付与手段とを有する像担持体駆動装置にあるので、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0027】
前記粘性付与手段は、前記慣性体の回転に粘性を与えるための回転部材を有することとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0028】
前記回転部材は、少なくとも前記慣性体に当接する部分が弾性体の弾性ローラであることとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、慣性体に当接する弾性ローラを有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0029】
前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、前記弾性ローラは、前記複数の部分のうち、径が最大でない部分に当接していることとすれば、慣性体のかかる形状によって慣性体の大型化及びこれに起因する装置の大型化を抑制しつつ、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、慣性体に当接する弾性ローラを有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0030】
前記粘性付与手段は、前記慣性体に一体の弾性体を有し、前記回転部材は、前記弾性体に当接したローラであることとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、慣性体に一体の弾性体およびこれに当接するローラを有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、また、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0031】
前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、前記弾性体は、前記複数の部分のうち、少なくとも径が最大でない部分に一体とされていることとすれば、慣性体のかかる形状によって慣性体の大型化及びこれに起因する装置の大型化を抑制しつつ、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、慣性体に一体の弾性体およびこれに当接するローラを有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、また、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0032】
前記粘性付与手段は、前記回転部材を、前記慣性体の回転中心に対称な位置で同慣性体の回転に粘性を与えるように複数備えていることとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材が対称性を持って配設されていることにより偏った力の作用に起因するトルク変動や偏芯を回避することによって、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によりさらに良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0033】
前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を変位可能に支持することにより前記慣性体に与える粘性を可変とした支持機構を有することとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材が対称性を持って配設されていることにより偏った力の作用に起因するトルク変動や偏芯を回避すること、および、支持機構によって最適な粘性抵抗を付与することを可能とすることによって、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によりさらに良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0034】
前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を定位置で支持した支持部材を有することとすれば、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材が対称性を持って配設されていることにより偏った力の作用に起因するトルク変動や偏芯を回避することによって、回転部材及びこれを定位置で支持した支持部材を有する比較的簡易な粘性付与手段より良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0035】
前記粘性付与手段は、前記回転部材と、この回転部材に当接した前記慣性体又は前記慣性体に一体の弾性体との少なくとも一方の、これらが互いに当接する部分に、摩擦係数を上げる加工が施された摩擦係数上昇部を有することとすれば、摩擦係数上昇部により回転部材のスリップを防止ないし抑制し、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によってより良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0036】
前記弾性体は、少なくともその表層が所定の硬度を有するウレタン系ゴム又はシリコンゴム系の材料で形成されていることとすれば、弾性体により回転部材のスリップを防止ないし抑制し、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によってより良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0037】
前記粘性付与手段は、前記回転部材の回転に粘性抵抗を与える粘性抵抗部を有することとすれば、粘性抵抗部により粘性抵抗を増加させることが可能であって大きな粘性抵抗を要する場合にも対応可能であり、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが、回転部材を有する比較的簡易な粘性付与手段によって良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0038】
前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、前記粘性付与手段を、前記減速機構と像担持体との間に設けたこととすれば、駆動源から像担持体に向けた駆動力の伝達方向において減速機構より下流側の、減速機構と像担持体との間において、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0039】
前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、前記粘性付与手段を、像担持体を挟んで前記減速機構の反対側に設けたこととすれば、駆動源から像担持体に向けた駆動力の伝達方向において減速機構より下流側の、像担持体を挟んで減速機構の反対側において、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、良好な画像形成に寄与することが可能な像担持体駆動装置を提供することができる。
【0040】
本発明は、かかる像担持体駆動装置と、この像担持体駆動装置によって回転駆動される像担持体とを有する画像形成装置にあるので、慣性体の機能と、像担持体の速度変動を減衰させる粘性付与手段の機能とが良好に発揮され、像担持体の駆動が安定し、画像のバンディング現象、色ムラ現象を防止ないし抑制し、均一安定なドット位置精度を保った画像による、良好な画像形成が可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に備えられた像担持体駆動装置の概略図である。
【図3】図2に示した像担持体駆動装置の概略側面図である。
【図4】図2、図3に示した像担持体駆動装置によって像担持体の駆動が安定化することを示した概念図である。
【図5】図2、図3に示した像担持体駆動装置によって像担持体の駆動が安定化することを、とくに慣性の付与によるものについて示した相関図である。
【図6】図2、図3に示した像担持体駆動装置に備えられた粘性付与手段の概略正面図である。
【図7】図6に示した粘性付与手段によって得られる作用を説明するための、同粘性付与手段の一部の拡大正面図である。
【図8】図6に示した粘性付与手段によって像担持体の駆動が安定化したことが確かめられた実験結果を示したグラフである。
【図9】図2、図3に示した像担持体駆動装置の変形例の一部を示した概略図である。
【図10】図2、図3に示した像担持体駆動装置の別の変形例の一部を示した概略図である。
【図11】図2、図3に示した像担持体駆動装置のまた別の変形例の一部を示した概略図である。
【図12】図2、図3に示した像担持体駆動装置のさらに別の変形例の一部を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に本発明を適用した、カラー画像を形成可能な多色画像形成装置である画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、カラーレーザプリンタとファクシミリとの複合機であるが、他のタイプのプリンタ、ファクシミリ、複写機、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。これは画像形成装置100がファクシミリとして用いられる場合も同様である。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。
【0043】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な複数の像担持体としての潜像担持体である円筒状の回転体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを並設したタンデム構造を採用したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式の画像形成装置である。
【0044】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、同一径であり、画像形成装置100の本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端ベルトである中間転写体たる転写搬送ベルトとしての転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に、等間隔で並んでいる。
【0045】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写ベルト11の移動方向であるA1方向の上流側からこの順で並設されている。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための、画像形成部としての作像部たる画像ステーション60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0046】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11によって搬送される記録媒体である転写媒体たる転写紙に対しそれぞれ重畳転写されるようになっている。
【0047】
転写紙に対する重畳転写は、転写ベルト11により転写紙がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写紙の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKのそれぞれに対向する位置に配設された転写チャージャとしての転写器12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと転写ベルト11と対向位置である転写位置にて行われる。
【0048】
転写ベルト11は、その全層をゴム剤等の弾性部材を用いて構成した弾性ベルトである。転写ベルト11は、単層の弾性ベルトであっても良いし、その一部を弾性部材とした弾性ベルトであっても良いし、従来から用いられている、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を用いても良く、非弾性ベルトであっても良い。
【0049】
画像形成装置100は、4つの画像ステーション60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた転写搬送装置であるベルトユニットとしての転写ベルトユニット10とを有している。
【0050】
画像形成装置100はまた、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと転写ベルト11との間に向けて搬送される転写紙を積載したシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙を、画像ステーション60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対13と、転写紙の先端がレジストローラ対13に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0051】
画像形成装置100はまた、トナー像を転写された転写紙に同トナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置6と、定着装置6を経た転写紙を本体99の外部に排出する排紙ローラ7と、本体99の側部に配設され排紙ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙を積載する排紙部としての排紙トレイ17と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーホッパとしての図示しないトナーボトルとを有している。
【0052】
画像形成装置100はまた、図2に示すように、CPU75と、図示しないROM、RAM等の記憶手段等とを備え、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの駆動制御など、画像形成装置100の動作全般を制御する制御手段40と、画像形成装置100の種々の状態を表示することが可能となった図示しない表示装置を備えるとともに操作者すなわちユーザにより画像形成装置100に対して種々の設定を行うことを可能とした入力手段としての操作パネル76とを有している。
【0053】
図1に示すように、転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、転写ベルト11を巻き掛けられた、複数の巻き掛け部材としての、駆動部材である駆動ローラを兼ねた転写入口ローラ72と、従動ローラ73とを有している。
【0054】
転写ベルトユニット10はまた、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11を除電する除電手段としての除電器74と、A1方向において除電器74より下流側で転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする図示しない転写クリーニングブラシを備えた転写ベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置18とを有している。
【0055】
転写入口ローラ72は、図示しない駆動源としてのモータの駆動により回転駆動され、これによって、転写ベルト11がA1方向に回転駆動される。転写入口ローラ72は図示しない電源に接続され、転写ベルト11が転写紙を静電吸着するよう転写ベルト11を帯電する帯電手段としての帯電ローラとして機能するようになっている。
従動ローラ73は、転写ベルト11が一定の張力で回転駆動されるように転写ベルト11を付勢するテンションローラとして機能するようになっている。
【0056】
除電器73は、転写入口ローラ72によって帯電された転写ベルト11表面上の電荷を除電し、転写ベルト11上のパターンその他のトナー、紙粉等がクリーニング装置18によって除去され易い状態とする。
【0057】
定着装置6は、図示しない熱源を有する加熱ローラである定着ローラ62と、定着ローラ62に圧接された加圧ローラ63とを有しており、トナー像を担持した転写紙を定着ローラ62と加圧ローラ63との圧接部である定着部に通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙の表面に定着するようになっている。
シート給送装置61は、転写紙を積載した給紙カセットである給紙トレイ15と、給紙トレイ15上に積載された転写紙を送り出す給紙コロ16とを有している。
【0058】
画像ステーション60Y、60M、60C、60BKについて、そのうちの一つの、感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yの構成を代表して構成を説明する。なお、他の画像ステーションの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像ステーション60Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像ステーションの構成に付し、また詳細な説明については適宜省略することとし、符号の末尾にY、M、C、Kが付されたものはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成を行うための構成であることを示すこととする。
【0059】
感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yは、感光体ドラム20Yの周囲に、図中時計方向であるその回転方向B1に沿って、転写器12Yと、感光体ドラム20Yをクリーニングするためのクリーニング手段としてのクリーニング装置70Yと、感光体ドラム20Yを高圧に帯電するための帯電手段としての帯電器である帯電装置30Yと、感光体ドラム20Yを現像するための現像手段としての現像装置50Yとを有している。
【0060】
画像ステーション60Yはまた、感光体ドラム20Yの上方に配設され、方向B1における帯電装置30Yと現像装置50Yとの間の位置において感光体ドラム20Yに露光を行う書き込み手段である光書き込み装置としての書込装置たる光走査装置8Yを有している。光走査装置8Yは、感光体ドラム20Yの表面によって構成された被走査面をそれぞれ走査して露光し、静電潜像を形成するための、画像信号に基づくレーザービームとしてのレーザー光であるビームLYを発するものである。
【0061】
画像ステーション60Yはまた、図2に示すように、感光体ドラム20Yを回転駆動するための駆動源としてのモータ81Yを備えモータ81Yの駆動力により感光体ドラム20Yを回転駆動する駆動ユニットとしての回転体駆動装置である像担持体駆動装置80Yを有している。像担持体駆動装置80Yの詳細については後述する。
【0062】
画像ステーション60Yは、以上述べた構成のうち、転写器12Y、光走査装置8Y、像担持体駆動装置80Yを除き、一体で、本体99に着脱される感光体ドラムユニットとしてのプロセスカートリッジを構成している。このようにプロセスカートリッジ化して一帯で本体99に着脱可能とすることは、その劣化等による交換及びプロセスカートリッジ自身やその周辺のメンテナンス性を高度に向上させるという利点がある。
【0063】
以上のような構成により、感光体ドラム20Yは、B1方向への回転に伴い、帯電装置30Yにより表面を一様に帯電され、光走査装置8からのビームLYの露光走査によりイエロー色に対応した静電潜像を形成される。この静電潜像の形成は、ビームLYが、紙面垂直方向である主走査方向に走査するとともに、感光体ドラム20YのB1方向への回転により、感光体ドラム20Yの円周方向である副走査方向へも走査することによって行われる。
【0064】
このようにして形成された静電潜像には、現像装置50Yにより供給される帯電したイエロー色のトナーが付着し、イエロー色に現像されて顕像化され、現像により得られたイエロー色の可視画像たるトナー像は、転写器12YによりA1方向に移動する転写紙に転写され、転写後に残留したトナー等の異物はクリーニング装置70Yにより掻き取り除去され備蓄されて、感光体ドラム20Yは、帯電装置30Yによる次の帯電に供される。
【0065】
他の感光体ドラム20C、20M、20BKにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は、転写器12C、12M、12BKにより、A1方向に移動する転写紙上の同じ位置に順次転写される。
【0066】
感光体ドラム20Y、20C、20M、20BKと転写ベルト11との間に搬送されてきた転写紙は、シート給送装置61から繰り出され、レジストローラ対13によって、センサによる検出信号に基づいて、感光体ドラム20Y上のトナー像の先端部が転写ベルト11に対向するタイミングで送り出されたものである。
【0067】
転写紙は、すべての色のトナー像を順次転写され、担持すると、転写ベルト11から剥離して定着装置6に進入し、定着ローラ62と加圧ローラ63との間の定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、この定着処理により、転写紙上に合成カラー画像たるカラー画像が形成される。定着装置6を通過した定着済みの転写紙は、排紙ローラ7を経て、排紙トレイ17上にスタックされる。一方、転写紙の搬送を終えた転写ベルト11は、除電器74によって除電されてからクリーニング装置18によってクリーニングされ、次の転写紙の搬送に備える。
【0068】
図2に示すように、画像形成装置100において、像担持体駆動装置80Y、80M、80C、80BKは互いに略同様の構成となっている。以下、像担持体駆動装置80Y、80M、80C、80BKを像担持体駆動装置80として説明する。またこれに伴い、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを感光体ドラム20として説明し、モータ81Y、81M、81C、81BKをモータ81として説明する。
【0069】
図3に示すように、像担持体駆動装置80は、モータ81と、モータ81の回転を減速して感光体ドラム20に伝達し感光体ドラム20を駆動するための減速機としての減速装置82と、減速装置82と感光体ドラム20とを連結するジョイント機構としてのカップリング83とを有している。
【0070】
像担持体駆動装置80はまた、モータ81の出力軸であって減速装置82への入力軸として機能する駆動軸81a上に設けられ、モータ81の回転数を検知するための第1の検出手段としてのエンコーダ77と、カップリング83によって駆動軸82aに接続された感光体ドラム20の回転中心をなした回転軸20a上に設けられ、感光体ドラム20の回転数を検知するための第2の検出手段としてのエンコーダ84とを有している。
【0071】
像担持体駆動装置80はまた、制御手段40の一機能として実現され、エンコーダ84によって検知された感光体ドラム20の回転数に基づいて感光体ドラム20の回転数を制御する像担持体駆動制御手段41を有している。
【0072】
像担持体駆動装置80はまた、減速装置82の出力軸であってカップリング83及び感光体ドラム20への入力軸として機能する駆動軸82a上に設けられ、感光体ドラム20と一体で回転し感光体ドラム20の回転に慣性を与える慣性体としての円盤状部材であるディスク状のフライホイール78と、フライホイール78に外部から係合しフライホイール78の回転に粘性を与える粘性付与手段79とを有している。
【0073】
減速装置82は、遊星歯車減速機構を用いたものであって、モータ81の回転数を感光体ドラム20の回転に求められる回転数に減じて感光体ドラム20に伝達するために配設されている。像担持体駆動装置80は、減速装置82を備えていることから、駆動源たるモータ81からの回転を減速機にて減速し回転体たる感光体ドラム20へ伝達する回転体駆動装置となっている。
【0074】
像担持体駆動制御手段41は、上述した感光体ドラム20の回転制御の他に、エンコーダ77、エンコーダ84の出力から速度変動成分を観察することで、減速装置82の遊星歯車の噛み合い周波数変動、駆動軸82aの偏心に伴う変動及びそれらの高次成分、及び共振周波数の発生と、そこに重畳して増幅された速度変動の観察を行う。像担持体駆動制御手段41はこのように、エンコーダ77、エンコーダ84の出力すなわち検出された回転変動から回転変動検出情報を取得する回転変動情報取得手段として機能する。像担持体駆動制御手段41はまた、後述のように粘性付与手段79の駆動を制御する粘性制御手段としても機能する。
【0075】
ここで、フライホイール78、粘性付与手段79の役割、機能について説明する。かかる役割、機能は、簡単には、フライホイール78、粘性付与手段79の何れも、感光体ドラム20の回転速度を一定に保つことにあるが、フライホイール78は、感光体ドラム20の回転に慣性を与え、感光体ドラム20の回転速度を均一化することでかかる役割、機能を果たすものであり、粘性付与手段79は、感光体ドラム20の回転速度に対する粘性を与え、かかる回転速度に生じた変動を減衰させることでかかる役割、機能を果たすものである。
【0076】
フライホイール78、粘性付与手段79の役割、機能を別の角度から見ると、像担持体駆動装置80による振動系に、次のように作用するものである。すなわち、図4に示すように、フライホイール78による慣性の付与は、共振点を低周波数帯へ移動させ、また共振帯に重畳して速度変動が増幅しないようにするものであり、粘性付与手段による粘性の付与は、かかる振動形の振動特性に減衰性を持たせるものである。
【0077】
よって、フライホイール78は、感光体ドラム20の回転速度変動を未然に防止あるいは抑制し、また共振点を低周波数帯へ移動させることを主な役割、機能とし、粘性付与手段78は、感光体ドラム20に生じた回転速度変動及びこの変動に等価な振動を減衰させたり吸収したりすることを主な役割、機能としているといえる。ただし、前者の役割、機能は粘性付与手段79によっても発揮され、後者の役割、機能はフライホイール78によっても発揮される。たとえば、図5に示すように、粘性付与手段79によってフライホイール78に与える粘性を回転トルク付与とすると、同図(a)に示すように回転トルクの付与がAのときと、同図(b)に示すように回転トルクの付与がAの1.5倍であるときとでは、同図(a)、(b)のそれぞれにおいてまるで囲んだ部分を対比すれば明らかなように、回転トルク付与の大きい同図(b)のときの方が、速度変動率のピークが抑えられ、速度変動周波数帯が低周波数帯に移動している。このように、像担持体駆動装置80は、感光体ドラム20の駆動伝達系を構成する減速装置82を介して行われる感光体ドラム20の高精度な回転駆動実現のために、感光体ドラム20の駆動伝達系において、慣性付与と粘性抵抗の付与とを同時に行うようになっている。
【0078】
フライホイール78は、駆動軸82aの回転に伴って駆動軸82aとともに回転する回転ディスクであって、剛性体からなる剛性ディスクとなっている。フライホイール78の回転中心は、駆動軸82a及び回転軸20aの回転中心に対する偏芯量が少なくなるように加工され、これらに実質的に一致するように設けられており、感光体ドラム20の軸芯に実質的に一致している。フライホイール78はその回転面が駆動軸82aの延在方向に直角をなすように駆動軸82aに直接取り付けられており、駆動軸82aの回転時に、フレ振動が、生じないか、粘性抵抗の付与に影響を与えることのない程度に低減されている。フライホイール78の回転半径言い換えるとディスク径は、必要とされる慣性力を得るように、その比重を左右する材料及び厚さとともに決定されている。
【0079】
図6に示すように、粘性付与手段79は、フライホイール78の外周面に当接しフライホイール78の回転に連動して回転すること言い換えると従動することでこの回転に粘性を与えるための回転部材としての粘性抵抗付与ローラである一対の粘性抵抗発生ローラ85と、これら粘性抵抗発生ローラ85をそれぞれ変位可能に支持しフライホイール78に対する加圧力を可変とすることによりフライホイール78に与える粘性を可変とした加圧力設定機構としての支持機構86とを有している。
【0080】
粘性抵抗発生ローラ85は、低硬度のウレタン系ゴムからなる弾性ローラである。粘性抵抗発生ローラ85は、弾性体であれば、ウレタン系ゴムでなくシリコンゴム系の材料によって構成されていても良い。粘性抵抗発生ローラ85は、全体が弾性体でなくとも良く、少なくともフライホイール78に当接する部分が弾性体であれば良いものであって、すなわち、少なくともその表層が弾性体であれば良い。粘性抵抗発生ローラ85を構成する弾性体部分の硬度は、フライホイール78に当接するときに変形によって発生する粘弾性を利用して適度な粘性抵抗を与える所定の硬度であれば良い。
【0081】
粘性抵抗発生ローラ85はフライホイール78に従動回転するものであるため、フライホイール78と粘性抵抗発生ローラ85とのうちの少なくとも一方の、これらが互いに当接する部分には、粘性抵抗発生ローラ85を確実に従動回転させるように摩擦係数を上げる加工が施された摩擦係数上昇部を設けることが好ましく、本形態においては、フライホイール78の外周面に図示しない摩擦係数上昇部が形成されている。この摩擦係数上昇部は、薄膜によるゴム系コーティング処理によって形成されている。
【0082】
支持機構86は、各粘性抵抗発生ローラ85の軸85aをその一端において支持することにより各粘性抵抗発生ローラ85を回転自在に支持した、高剛性材料によって形成された一対の加圧力設定アーム87と、各加圧力設定アーム87の他端部を回転自在に支持した、各加圧力設定アーム87に共通の回転支点88と、回転支点88を本体99に固定したブラケット89と、各加圧力設定アーム87の中途部に設けられたメネジ90と、各メネジ90に螺合したオネジ91と、オネジ91を回転駆動するモータ92とを有している。
【0083】
各メネジ90には互いに逆向きのねじが切られており、オネジ91の回転により、図6に示すように、各加圧力設定アーム87は、回転支点88を中心に、各粘性抵抗発生ローラ85を同期して互いに近接あるいは離間する、すなわち開閉する方向に変位させる。
【0084】
各加圧力設定アーム87は、図7に示すように、各粘性抵抗発生ローラ85を、フライホイール78の回転中心に実質的に対称な位置すなわちほぼ点対称の位置でフライホイール78に当接させるように支持している。よって、かかる開閉により、各粘性抵抗発生ローラ85は互いに等しい力でフライホイール78を挟みつけるようになっている。
【0085】
図2に示すように、モータ92は、制御手段40の一機能として実現された像担持体駆動制御手段41によって駆動を制御され、オネジ91を回転駆動させる。したがって、モータ92の駆動により、各粘性抵抗発生ローラ85の弾性変形、加圧変形によって、フライホイール78に対する粘性抵抗が、フライホイール78の回転中心に対称な位置で同回転中心に対称に互いに同じ力すなわち等荷重で発生するとともに、この荷重言い換えると加圧力は軸芯に向けて均一に作用し相殺される。よって駆動軸82aはラジアル方向に変形することなく、偏心による変動影響なく回転するようになっている。回転のとき、摩擦係数上昇部が形成されているため、粘性抵抗発生ローラ85はスリップなくフライホイール78に従動回転し、安定した回転がなされ、これによって粘性抵抗が安定して発生する。なお、かかる対称性が得られるのであれば、粘性抵抗発生ローラ85の数は複数であればよく、本形態のように2つに限らず3つ以上であっても良い。
【0086】
像担持体駆動制御手段41は、モータ92を駆動し、図7に示すように、各粘性抵抗発生ローラ85によるフライホイール78に対する加圧力を増加させることで、各粘性抵抗発生ローラ85によりフライホイール78を締め付けると、粘性抵抗を上昇させ、また、各粘性抵抗発生ローラ85によるフライホイール78に対する加圧力を低下させると、粘性抵抗を低下させるようになっている。図8に示すように、粘性付与手段79により粘性抵抗が付与されると、感光体ドラム20の回転速度の変動が抑制されることが確かめられた。像担持体駆動制御手段41は、粘性付与手段79の駆動を制御することで粘性抵抗を制御する粘性制御手段として機能するようになっている。支持機構86と粘性制御手段として機能する像担持体駆動制御手段41とは、検出された回転変動に基づいて粘性付与手段79によりフライホイール78に付与する粘性を増減させる付与粘性調整手段として機能する。
【0087】
そのため、粘性制御手段として機能する像担持体駆動制御手段41は、回転変動情報取得手段として機能する像担持体駆動制御手段41によって取得した回転変動検出情報により、たとえば印刷スピード言い換えると画像形成速度の変更のためにモータ81の基本回転速度が変更された場合であっても、かかる変更と、その回転数で起こる回転変動の発生レベルとに対応して、フィードバック制御により最適な粘性抵抗を付与するように構成されている。そこで、粘性制御手段として機能する像担持体駆動制御手段41は、記憶手段の一機能として実現され回転変動の発生レベルとそれに対して与えるべき粘性抵抗力との関係に関するデータを記憶した粘性抵抗値記憶手段と、図2に示すように、粘性抵抗記憶手段に記憶されたかかるデータに基づいてCPU75によって制御されモータ92を駆動するモータコントローラ93と、モータコントローラ93によって生成された信号をモータ92に入力するドライバ94とを有している。よって、感光体ドラム20の回転変動要因として挙げられる、現像装置50Y等の現像装置やクリーニング装置70Y等のクリーニング装置の経時の当接圧の変化や、プロセスカートリッジ交換時の個体差によらず、粘性抵抗が常時適正化される。
【0088】
粘性制御手段として機能する像担持体駆動制御手段41は、かかる基本回転速度の変更に対応してかかるデータを事前に取得してこれを粘性抵抗値記憶手段に記憶しておき、モータ81の基本回転速度の変更を行うと最適な粘性抵抗を付与するように構成してもよく、この場合は回転変動情報取得手段が不要となる。
【0089】
かかる粘性抵抗力の値を操作パネル76の表示装置に表示するとともに、操作パネル76において、ユーザがかかる値を変更可能としても良い。このようにすれば、たとえば、ユーザが、形成された画像を見てバンディングや色むらを認識したとき、マニュアルでかかる値を操作すれば、画質と照合しながら画像を所望の状態に調整可能となる。
【0090】
このような構成の粘性付与手段79を用いることで、フライホイール78のフレ振動が実質的に生じないことと相俟って、フライホイール78に高い粘性抵抗の付与を行うことが可能となっている。また、フライホイール78の材質を種々選択可能であるため、付与可能な粘性抵抗の帯域が、超軟性から超硬性まで極めて広くなっており、振幅の大小によらず回転変動言い換えると回転速度の変化に対応可能となっている。さらに、フライホイール78が感光体ドラム20と別体でありトナーの付着による摩擦条件の変動が防止ないし抑制されているとともに、粘性制御手段を備えていることにより、粘性の付与が自在であるとともに、感光体ドラム20の回転速度変動の減衰性が安定する。したがって、感光体ドラム20の回転速度が安定し、出力画像を構成するドット位置精度の均一性、安定性が担保され、これにより、出力画像上のジッターや濃度ムラを生じたり、画像内における周期的な濃度ムラを起こして画像上に縞模様が現れるバンディングと呼ばれる画質劣化を生じたり、色ムラを生じたりすることがない。
【0091】
図9に示すように、像担持体駆動装置80は、フライホイール78が径の異なる複数の部分として大径ディスク78aと小径ディスク78bと駆動軸82aの軸方向に沿って隣り合うように設け、粘性抵抗発生ローラ85を、大径ディスク78aと小径ディスク78bとのうち、径が小さい小径ディスク78bに当接した構成としても良い。これにより、フライホイール78による慣性付与を維持しつつ、フライホイール78の外周面に粘性抵抗発生ローラ85を当接させても、これらの径の合計の長さを低減して、像担持体駆動装置80の大型化を抑制している。そのため、フライホイール78によって付与すべき慣性の大きさからフライホイール78が極端に大きなディスクになってしまい、レイアウト的に本体99内に収納することが困難となるという問題、回転トルクが増大してしまうといった問題が解消ないし緩和される。
【0092】
図9に示したフライホイール78は、大径ディスク78aと小径ディスク78bとにより2段形状となっているが、径の異なる複数の部分は3つ以上であっても良く、粘性抵抗発生ローラ85は、この複数の部分のうち径が最大でない部分に当接していれば、フライホイール78による慣性付与を維持しながら像担持体駆動装置80の大型化が抑制されるが、フライホイール78と粘性抵抗発生ローラ85との径の合計の長さ方向における像担持体駆動装置80の大型化の抑制の点においては、粘性抵抗発生ローラ85は、かかる複数の部分のうち径が最小である部分に当接していることが望ましい。
【0093】
なお、図9に示した構成例では、支持機構86が、オネジ91を回転駆動させるための構成として、モータ92に代えて、ノブ95を有している。この構成において、像担持体駆動制御手段41は、粘性制御手段として機能することがなく、手動でノブ95を回転操作することで、粘性付与手段79によりフライホイール78に付与する粘性を増減させる。よって支持機構86が付与粘性調整手段として機能する。
【0094】
図10に示すように、図9に示した構成に加えて、粘性抵抗発生ローラ85の回転に粘性抵抗を与える粘性抵抗発生機構としての粘性抵抗部96を設けても良い。粘性抵抗部96は、軸85aに軽圧入され非回転で固定されたホルダ部96aと、ホルダ部96aの内部に封入されたオイル96bと、オイル96bに浸漬された抵抗発生羽根部である羽96cと、羽根96cを軸95aと同一軸芯で回転するように粘性抵抗発生ローラ85に嵌合したジョイント96dとを有している。よって、粘性抵抗部96は、粘性抵抗発生ローラ85の回転に連動し、オイル96bに接触している羽根96cを粘性抵抗発生ローラ85とともにオイル96bの粘性に抗して回転させることで、粘性抵抗発生ローラ85の回転抵抗を獲得し、粘性抵抗発生ローラ85の弾性変形を伴うフライホイール78への従動回転との複合的作用によりより大きな粘性抵抗を得ることが可能なものとなっている。この構成においても、粘性抵抗の調整は、粘性抵抗発生ローラ85の材料を、適当な硬度を有するものとなるように選択することで行われる。
【0095】
図11に示すように、粘性付与手段79は、上述の支持機構86に代えて、各粘性抵抗発生ローラ85を定位置で回転自在に支持した連結アームとしての支持部材97を有するものであっても良い。支持部材97は、軸85aを遊嵌するようにプレート逃げ穴としての孔97aと、本体99に固定し変位しないようにするための2箇所の固定ネジ部97bとを有している。支持部材97は、支持機構86と同位置で各粘性抵抗発生ローラ85がフライホイール78に当接するように、孔97aに対称な位置で各粘性抵抗発生ローラ85の軸85aを支持している。各軸85a相互間の距離は、フライホイール78に対する各粘性抵抗発生ローラ85の当接圧が適当な圧力となるように設定されている。すなわち、フライホイール78に粘性抵抗発生ローラ85が当接したときの粘性抵抗発生ローラ85の変形量と、これによって得られる粘性抵抗の大きさすなわち粘性抵抗力との関係とから、適正な粘性抵抗力が得られるように、各軸85a相互間の距離が設定されている。
【0096】
支持部材97は、金属製の高剛性材料で形成されている。これは、支持部材97による各粘性抵抗発生ローラ85の支持において支持部材97が弾性を有すると、バネ系振動のような作用が働き、複雑な振動モードを招くこととなることから、これを回避するためである。したがって、本構成例では、実質的に、各粘性抵抗発生ローラ85の変形による反発力のみによって、粘性抵抗が生ずる。支持部材97は、このような作用が得られる高剛性材料であれば、金属製でなく、プラスチック等によって形成しても良い。
【0097】
上述の各構成例において、粘性付与手段79は、フライホイール78の回転に粘性を与えるための回転部材である粘性抵抗発生ローラ85に弾性体を備えているが、弾性体は、図12に示すように、フライホイール78の外部すなわち外周面に一体で設けられる態様でフライホイール78に係合した粘性抵抗付与ローラ部としてのローラ部98として備えられていても良い。またこの例では、かかる回転部材として、ローラ部98の外周面に当接しフライホイール78及びローラ部98の回転に連動して回転すること言い換えると従動することでこの回転に粘性を与えるためのローラである剛性ローラ42を有している。
【0098】
ローラ部98は、フライホイール78の外周に、上述した粘性抵抗発生ローラ85の材質と同じ粘性抵抗を生じる材質を成形等によって一体化されたものである。本構成例において、剛性ローラ42がローラ部98に従動回転して粘性抵抗を発生させるものであるため、剛性ローラ42とローラ部98とのうちの少なくとも一方の、これらが互いに当接する部分には、剛性ローラ42を確実に従動回転させるように摩擦係数を上げる加工が施された摩擦係数上昇部を設けることが好ましく、本形態においては、剛性ローラ42の外周面に図示しない摩擦係数上昇部がコーティングによって形成されている。
【0099】
このような構成は、図9に示した、フライホイール78が径の異なる複数の部分を有する構成にも適用可能である。すなわち、ローラ部98は、かかる複数の部分のうち、少なくとも径が最大でない部分に、この部分とローラ部98とを合わせた径がかかる径が最大となる部分よりも小径となるように一体とされてもよい。
【0100】
その他、このような構成は、図10に示した構成にも適用可能であり、また、剛性ローラ42は、ローラ部98への当接において対称性が得られるのであれば、2つに限らず3つ以上備えられていても良いし、その支持は、支持機構86、支持部材97の何れに同様の構成によっても行い得る。
【0101】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0102】
たとえば、本発明にかかる像担持体駆動装置によって駆動される像担持体は、感光体等の潜像担持体に限らず、中間転写ベルト等の中間転写体であっても良い。慣性体、粘性付与手段の配設位置は、上述の各構成例のように減速機構と像担持体との間に限らず、図2において一点鎖線で示したように、像担持体を挟んで減速機構の反対側であっても良い。
【0103】
また、本発明は、中間転写体上に順次、各色のトナー像を重ね合わせて転写し、重ね合わされたトナー像を一括して記録媒体に転写するいわゆる中間転写方式の画像形成装置にも適用可能である。本発明は、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも適用可能である。本発明は、モノクロのみの画像形成が可能な画像形成装置にも適用可能である。
【0104】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0105】
20、20Y、20M、20C、20BK 像担持体
42 回転部材、ローラ
78 慣性体
78a、78b 径の異なる複数の部分
78b 径が最大でない部分
79 粘性付与手段
80、80Y、80M、80C、80BK 像担持体駆動装置
81、81Y、81M、81C、81BK 駆動源
82 減速機構
85 回転部材、弾性ローラ
86 支持機構
96 粘性抵抗部
97 支持部材
98 弾性体
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開2005−80399号公報
【特許文献2】特許第3258393号公報
【特許文献3】特開平9−222826号公報
【特許文献4】特開平7−325445号公報
【特許文献5】特開平10−240067号公報
【特許文献6】特許第3347965号公報
【特許文献7】特開2005−338307号公報
【特許文献8】特開平10−171297号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を回転駆動するための駆動源と、
像担持体と一体で回転し同像担持体の回転に慣性を与える慣性体と、
この慣性体に外部から係合しこの慣性体の回転に粘性を与える粘性付与手段とを有する像担持体駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記慣性体の回転に粘性を与えるための回転部材を有することを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の像担持体駆動装置において、
前記回転部材は、少なくとも前記慣性体に当接する部分が弾性体の弾性ローラであることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の像担持体駆動装置において、
前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、
前記弾性ローラは、前記複数の部分のうち、径が最大でない部分に当接していることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項5】
請求項2記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記慣性体に一体の弾性体を有し、
前記回転部材は、前記弾性体に当接したローラであることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の像担持体駆動装置において、
前記慣性体は、径の異なる複数の部分を有し、
前記弾性体は、前記複数の部分のうち、少なくとも径が最大でない部分に一体とされていることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項7】
請求項2ないし8の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記回転部材を、前記慣性体の回転中心に対称な位置で同慣性体の回転に粘性を与えるように複数備えていることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項8】
請求項7記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を変位可能に支持することにより前記慣性体に与える粘性を可変とした支持機構を有することを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項9】
請求項7記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記複数の回転部材を定位置で支持した支持部材を有することを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項10】
請求項2ないし9の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記回転部材と、この回転部材に当接した前記慣性体又は前記慣性体に一体の弾性体との少なくとも一方の、これらが互いに当接する部分に、摩擦係数を上げる加工が施された摩擦係数上昇部を有することを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項11】
請求項2ないし10の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記弾性体は、少なくともその表層が所定の硬度を有するウレタン系ゴム又はシリコンゴム系の材料で形成されていることを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項12】
請求項2ないし10の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記粘性付与手段は、前記回転部材の回転に粘性抵抗を与える粘性抵抗部を有することを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、
前記粘性付与手段を、前記減速機構と像担持体との間に設けたことを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか1つに記載の像担持体駆動装置において、
前記駆動源の回転を減速して像担持体に伝達するための減速機構を有し、
前記粘性付与手段を、像担持体を挟んで前記減速機構の反対側に設けたことを特徴とする像担持体駆動装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか1つに記載の像担持体駆動装置と、この像担持体駆動装置によって回転駆動される像担持体とを有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−242472(P2011−242472A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112461(P2010−112461)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】