説明

優れた抗癌活性の漆抽出物の製造方法およびこれを含む抗癌薬剤組成物

本発明はアレルギー誘発物質を除した漆を可溶性溶媒で抽出して抽出液を得る過程と、前記抽出液を限外濾過し、高分子量の物質を除去して濃縮および乾燥して抽出粉末を得る過程、および前記抽出粉末に遠赤外線を照射して抗癌活性を向上させる過程;とを含んでなる漆抽出物の製造方法を提供する。また、このような漆抽出物は非常に優れた抗癌活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた抗癌活性を有する漆抽出物の製造方法およびこれを含む薬剤組成物に関するものであり、さらに詳細には、アレルギー誘発物質が除去された漆を水、エタノールなどで抽出した後、限外濾過によって高分子量の物質を除去し、これを濃縮、乾燥して得られた物質に遠赤外線を照射して抗癌活性を著しく向上させる漆抽出物の製造方法と、このような漆抽出物を活性成分として含む抗癌薬剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漆(ウルシ)は、ウルシ科(Anacardiaceae)に属する落葉高木で漆又は乾漆とも言い、一般的に工業用と薬用として使用し、特に、漢方と民間で酒毒、解熱、駆虫、マラリヤ、腹痛、月経、便秘などに薬剤として使用され、漆鶏のように食品として利用して来た(キム・テジョン(1996)韓国の資源植物II,294、ソウル大学校出版部)。 漆抽出物に対する生理活性に対する研究が報告されたところ、抗菌作用、フラボノイド成分と樹液のウルシオール成分に対する抗酸化作用(韓国食品科学会誌。31:855-63;生薬学会誌31:345-50)が報告されており、ウルシオール成分の癌細胞に対する細胞毒性効果は「Arch.Pharm.Res. 22:638-41(2000)」で報告された。
【0003】
漆は昔からアレルギーをもたらすので、様々な生理活性があるにもかかわらず、使用が制限された。様々な努力によって、漆でアレルギーを誘発する成分がウルシオールであることがわかり、これを除去するためのいろいろな方法が研究された。その中には熱処理を行う方法、溶媒で抽出して低温定置する方法、酸素を用いて処理する方法などがある。
【0004】
今まで漆と関連した技術および用途には、アレルギーを除去する技術と関連した方法、アレルギー誘発物質と知られたウルシオールの薬理効果に関する薬理的、製造技術に関する方法、アレルギーを除去した漆抽出物の分離および精製、薬理効果に関する方法がその大部分である。
【0005】
一方、漆は多量の抗酸化物質を有する。例えば、キム・インウンなどは「Korean J.Food Sci. Technol. 31(3), 855-63(1999)」で、漆樹皮の抽出物で抗酸化活性物質の分離を報告し、イム・ギェテクなどは「Korean J. Food Sci. Technol. 29, 1248-54(1997)」で、漆エタノール抽出物のラット脳細胞の適用結果、強い抗酸化活性を報告した。 ジョン・ヒョンジンらは「Korean J. plant. Res. 14(3), 220-8(2001)」で、漆類の抗酸化力および分画方法を報告し、J.-C. Leeらは「Food and Chemical Technology 42, 1383-88(2004)」で、漆抽出物をシリカカラムを用いて分離精製した分画が人体血液癌細胞の成長を抑制する効果を示すと報告している。リ・ジョンチェらは「Food Sci.Biotechnol. 9(3), 139-45(2000)」で、漆エタノール抽出物で抗酸化、抗菌の効果を有する分画を報告し、チェ・ウォンシクらは「J. Korean Soc. A gric. Chem. Biotechnol. 45(3), 168-72(2002)」で、メタノール抽出物分画で分離精製した成分の抗酸化効果を報告し、癌細胞に対する細胞毒性の実験結果、活性が高くないと報告した。
【0006】
イム・ギェテクは「A gric. Chem. Biotechnol. 45(4)、173-9(2002)」で、漆水抽出物とエタノール抽出物の肝細胞の細胞自殺(apoptosis)を予防する効果を比較および報告し、チョン・ウォンギョンらは「生薬学会誌 3494)、339-43(2003)」で、漆皮をメタノールで抽出して肥満誘発マウスに対する肥満抑制効果を報告した。
【0007】
また、漆抽出物の抗癌活性と関連して、例えば、「韓国特許出願第1997-0013163号および第1997-0004193号」には、ウルシオール成分を含有する抗癌剤組成物が提示されており、「韓国特許第0257448号」には、漆抽出物をシリカカラムで精製した組成物としてフスティン、フィセチン、スルフレチン、バトウィンなどを含有する抗癌剤組成物が提示されている。「韓国特許第0251526号」には、ウルシオールを主要成分として含有する抗癌剤組成物が提示されており、「韓国特許出願第2002-0018186号」には、漆のエタノール抽出物を低温定置する方法による抗酸化効果および細胞自殺防止効果を有する抽出物が提示されている。
【0008】
「韓国特許出願第2002-0071464」には、漆抽出物を利用した肝疾患治療剤が提示されており、「韓国特許出願第2000-0004700号」には、光誘発熟成の方法による薬剤の抗ガン効果と、漆抽出物を利用した抗癌剤の使用例が提示されている。
【0009】
前記従来技術の大部分は、漆を水を含む溶媒で抽出し、これをカラムなどの方法によって精製し、主要成分としてウルシオール、フスティン、フィセチン、スルフレチン、バトウィン、カフェー酸、没食子酸などを含有する抽出物を抗癌剤として使用する方案を提示している。
【0010】
しかし、漆抽出物の抗酸化特性と抗癌活性が知られているにもかかわらず、前記従来技術で提示した漆抽出物は、希望するレベルの抗癌活性を発揮できないため、実際に抗癌剤への適用は実現できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、前記ような従来技術の問題点を解決するとともに、過去から求められている技術的課題を解決することをその目的としている。
即ち、本発明の一番目の目的は、簡単な工程によって優れた抗癌活性を示す漆抽出物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の二番目の目的は、前記のような方法で製造して様々な癌に対して優れた抗ガン効果を発揮する薬剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
このような目的を達成するための本発明による漆抽出物の製造方法は、
(a)アレルギー誘発物質を除去した漆を可溶性溶媒で抽出して抽出液を得る過程;
(b)前記抽出液を限外濾過し、高分子量の物質を除去して濃縮および乾燥して抽出粉末を得る過程;
(c)前記抽出粉末に遠赤外線を照射して抗癌活性を向上させる過程;を含んで構成されている。
【0014】
本発明による方法で得られた漆抽出物は、後で説明する実施例でも確認できるように、従来の他のどの漆抽出物と比較して非常に優れた抗癌活性を示す。
【0015】
前記過程(a)と関連して、漆でアレルギー誘発物質の除去は様々な方法で達成することができ、好ましくは、本出願人の韓国特許第0504160号に開示された方法で行うことができる。前記特許は参照として本発明の内容に合体される。
【0016】
このようにアレルギー誘発成分を除去した漆を、例えば、チップ、粉末、おがくず状に粉砕 して溶媒抽出を行うことができる。
【0017】
前記溶媒抽出は好ましくは、可溶性溶媒として水とエタノールを使用して行うことができる。
【0018】
一つの好ましい例で、漆に第1溶媒として過量の水を加えて水抽出液を得て、残った漆に第2溶媒として過量の希エタノールを加えてエタノール抽出液を得た後、前記水抽出液と混合して混合抽出液を得ることができる。
【0019】
前記第1溶媒としての水は、漆チップ、おがくずなどの内部に浸透し、水に水溶性の成分を抽出する作用をする。抽出温度は60℃乃至110℃が好ましく、60℃以下の場合、水が漆粉末の内部に浸透するのにかかる時間が長いため、抽出効率が低下され、反対に110℃ 以上の場合、過度に高い温度で抽出物の成分が壊れ、変形するため、好ましくない。
【0020】
抽出時に水の浸透を容易にするために、抽出槽内部を0.6〜1.0気圧で、空気又はスチームによって加圧することができる。この場合、相対気圧が1.0気圧以上であれば、過度に高い圧力によって作業上の危険性が高くなり、設備の製作コスト上昇をもたらす。
【0021】
抽出溶媒の量は可溶物質を溶かすために、重量対比5〜20倍であることが好ましく、これは1Kgの漆に対して5〜20Lを加えることを意味する。
【0022】
抽出のために加える水の量が5倍以下であれば、十分な程度の抽出物を得ることができ、反対に20倍以上であれば、次の過程での濃縮時、多くの時間と費用がかかる短所がある。また、抽出時間は3〜24時間が適切であり、一般的に温度が高い場合、時間短縮が可能であり、温度が低い場合、抽出時間は長くなるので、通常的に60℃抽出の場合、24時間抽出する。抽出時間が24時間以上であれば、追加的な時間投資対比、抽出収率の向上を期待できず、3時間以下であれば、抽出収率の低下を招く。
【0023】
第2溶媒としてエタノールによる前記2次抽出は、好ましくは、水による1次抽出後、残った漆にエタノールの濃度が40〜50%(v/v)の希エタノールを、最初漆の重量の5〜10倍を添加した後、60〜70℃で3〜10時間行う。
【0024】
エタノールの濃度を前記範囲にするのは、漆抽出物の収率が最も高くなる濃度として、非水溶性の薬理物質がよく溶解する濃度からである。一般的に疎水性成分は、高濃度のエタノールに容易に溶解するが、前記のように先ず水で水溶性成分を抽出した後、希エタノールで追加的な抽出を行うと、1次抽出過程で木質部の深くまで溶媒が容易に浸透し、可溶成分を溶解して抽出する。高濃度のエタノールは大量化が困難であり、細心の注意および高価な設備を必要とする反面、前記のエタノール濃度は一般的に簡単に扱える濃度であり、追加的な高価な設備を必要としない。また、有効成分の抽出においても抽出収率が99% 以上と非常に高かった。
【0025】
エタノールの抽出時、温度はエタノールが含有された点を考慮して、水抽出より低い60〜70℃に設定され、これは作業上の危険要素を減らすためである
このように、水による1次抽出と希エタノールによる2次抽出後、二種類の抽出液を集めて混合すると、最終的に混合抽出液を得ることができる。
【0026】
前記過程(b)と関連して、前記過程(a)で得られた混合抽出液を、例えば、20〜35℃で2〜4日間放置すると、微細なブラウンの沈澱が生じ、これは一般的に高分子量の多糖類であり、濃縮する前に微細濾過して除去することが好ましい。前記微細濾過は例えば、気孔の大きさが0.45μmフィルターを使用して行うことができる。
【0027】
このように得られた微細濾液は、前に説明したように限外濾過によって高分子量の物質を除去する。限外濾過は微細濾過より気孔の大きさが著しく小さな濾過膜を用いることで、分子量の大きさによる調節が可能である。
【0028】
前記限外濾過に使用する膜の分子量cut-off値は、好ましくは500,000以上である。従って、分子量500,000を基準で、その以上は除去し、その以下で限外濾過膜を通過することを濾液を得ることが可能である。ここで、分子量が500,000より大きい物質は、実際に摂取した場合、体内で吸収される可能性はほとんど無く、食物繊維としての役割をするだけなので。薬理効果を高めるために、必ずしも必要ではない成分を分子量の基準で500,000にして、その以上の成分は限外濾過膜によって除去する。
【0029】
限外濾過を行った濾液は、例えば、真空濃縮して20〜30Bxに作り、これを凍結乾燥してブラウン〜淡いブラウンの粉末として得ることができ、本出願の発明者が行った実験結果、その収率は4〜12%(w/w)であった。
【0030】
前記過程(c)と関連して、前記のような過程にって得られた漆抽出の粉末に対して遠赤外線を照射した結果、驚くべきことに、抗癌活性が大きく増加したことがわかった。
【0031】
遠赤外線は光の一種で、1,800年ドイツの天文学者F. W. Herschelによって発見、可視光線より波長が長く、マイクロ波より波長が短い電磁波で、0.76〜1,000μmの波長範囲を有する。あらゆる物体は熱を持っていれば、必ず特定波長をを放射する。このような赤外線光を発する遠赤外線放射体は放射体であるとともに吸収体である。赤外線中に波長が4μm以上のものを遠赤外線と呼び、常温の温度を吸収して遠赤外線という光エネルギーに変換して放射する。 材木が住居環境で使われる時に示される遠赤外線に関する利点については、Leeなどが「Proceedings of International Furniture Symposium. 1-23, 1996」で初めて言及した。リ・ファヒョンは「木材工学 33(1); 17-20(2005)」で、韓国産の樹種の間で、遠赤外線放射率を調査して報告した。その結果、大部分の樹種で類似の遠赤外線が放出されることを報告した。このような遠赤外線は光エネルギーとして人体、物体、食品などに様々な効果をもたらす。例えば、「韓国特許出願第2001-0004700」には、食品などの光誘発熟成の方法で遠赤外線を使用する例を開示している。
【0032】
本発明で漆抽出の粉末に遠赤外線を照射して抗癌活性を向上させる過程は、様々な遠赤外線処理システムによって達成することができる。
【0033】
一つの好ましい例で、前記遠赤外線処理システムは、最上層の光源;前記光源から光を吸収して発熱し、100メッシュの炭粉末からなる厚さ0.5〜1cmの光吸収発熱層;前記光吸収発熱層の下部に位置し、陰干しにした漆からなる厚さ0.5〜1mmの遠赤外線放射層; 前記遠赤外線放射層から所定の距離を隔てて、不活性雰囲気で透明基材に密封している厚さ2〜10mmの漆抽出粉末層を含んでなる。
【0034】
前記光源は自然光又は人工光源である可能性がある。前記人工光源は、例えば、遠赤外線照射用電球、赤外線照射用電球などを使用することができる。
【0035】
前記光源として自然光を使用する場合には、前記光吸収発熱層上に2〜10mmのガラス基材をさらに実装することができる。前記ガラス基材は光源から光を集中させるために、板ガラスの代わりに凸レンズを使用することができ、自然光を集中させてその下にあるオーク炭に高熱を提供する。凸レンズを使用する場合、下に位置するオーク炭は、集中された光によって温度が60〜120℃まで上昇するようになる。ガラスの厚さは2〜10mmで薄すぎると、取り扱うことが困難であり、10mm以上で厚い場合、光の透過率が低くなる。前記ガラス基材と光吸収発熱層の離隔距離は3〜20cmの距離を置くが、これは十分な光を集めて炭の温度を上昇するようにするためである。
【0036】
前記光吸収発熱層の炭粉末では、好ましくは、オーク炭粉末を使用することができる。炭粉末の大きくは100メッシュ網を通過するものを使用し、炭粒子が大きいほど光の吸収が少なくなり、粒子が小さすぎる場合、微細な粉末が飛散して取り扱うことが困難である。
【0037】
光吸収発熱層の厚さが厚すぎる場合には、その下にある赤外線放射層に熱を加えるために長い時間がかかる。反対に、薄すぎる場合には、十分な発熱量を提供できないため、好ましくない。
【0038】
前記遠赤外線放射層の陰干しにした漆は、好ましくは、微細粉末又は薄い板状の形態に含まれている。このような放射層の厚さが1mm以上であれば、遠赤外線の放射率が低下するので、好ましくない。
【0039】
漆は十分な熱を吸収した炭から熱を受けて遠赤外線を放出し、漆の遠赤外線放射率はFT-IRで測定した結果、40〜50℃で5〜20μmの範囲で90%以上であった。これは炭で吸収した熱の90%が、漆で遠赤外線として放射されることを意味する。
【0040】
前記漆抽出粉末層は、ガラス、ビニルなどの透明基材上に漆抽出粉末を投与し、窒素などの不活性ガスで内部を充填した状態で遠赤外線放射層の下部に位置する。
【0041】
濃縮後、粉末化した漆抽出物粉末は、ガラス又は光が容易に通過するビニルで作った密閉容器に、2〜10mmに均一に広げ、窒素に置換した後、完全に密封して酸素との接触を避ける。
【0042】
前記のような遠赤外線処理システムでの処理時間は、好ましくは1〜24時間である。24時間以上の遠赤外線処理は、物性又は効果に直接的な影響を及ぼさなく、通常の作業の効率を考慮する時は好ましくない。さらに、48時間以上の遠赤外線処理は、抽出物粉末が過度の熱によって一部溶融する場合が発生することが確認された。
【0043】
人工光源として遠赤外線又は赤外線照射用電球を使用する場合、100〜200Wのものを使用することができ、それより高いものは過度の熱を発生して品質低下をもたらす。一方、光源として自然光は、人工光源に比較して過熱の危険が少なく、自然の熱源であるという利点があるが、時間が長くかかるという点と、日暮れ後は不可能であるという短所がある。
【0044】
漆抽出物に対する遠赤外線の照射は、基本的には抽出物に含有された有効成分を活性化させるだけでなく、高分子の物質を分解して人体吸水性を高める効果もある。漆抽出物を遠赤外線として照射する場合、その構成成分の差は分析誤差の範囲内にあり、色は濃いブラウンから濃い黄色にわたってやや差があった。
【0045】
本発明はまた前記方法で製造された抗癌活性を有する漆抽出物を提供する。
【0046】
漆抽出物の機能性成分を分析するために、10%(w/v)で水に溶解して、これを1μm気孔の濾過紙で微細濾過し、ここに1:1の体積比でクロロホルムを加え、力強く混ぜた後、層分離して下部のクロロホルム層を得て、また、水層に酢酸エチルを加えて力強く混ぜた後、層分離して上部の酢酸エチルを分離して酢酸エチル分画を得た。
【0047】
酢酸エチル分画物を濃縮して固形分含量10%(w/v)になるようにメタノールに溶解させた後、これを70-230メッシュのシリカが充填されたシリカカラムに投入し、「クロロホルム:メタノール:水=70:21:9」からなる移動相の下層を分離して移動相に展開して5つの分画を得て、この中で2つの分画を再び逆相シリカ(C18)が充填されたカラムに投入し、「メタノール:水=65:35」の移動相に展開して5つの分画を得た。その中でフスティン、フィセチンを分離、精製し、これをSigmaから標準物質を購入して確認した。
【0048】
その結果、本発明の漆抽出物には、基本的に10〜30%(w/w)のフスティン、2〜15%(w/w)のフィセチン、15〜45%(w/w)のレジンと、その他の成分を含有していることが示された。フスティンとフィセチンの分析は、HPLCを利用したフラボノイド分析方法に従って行われ、レジンは成分の特性上、単一物質ではないので、エタノールに溶けるが、水には溶けない成分を基準にした。一般的にレジンの主要構成成分はタンニンと知られており、樹種によって組成が異なる。レジンの分析は、漆抽出物粉末を純度95%(v/v)のエタノールに溶かし、不溶成分を濾過した後エタノールを蒸発させて除去し、ここに水を加えて水溶性成分を除去して残る固形分を乾燥したものであり、分子量500,000以下を意味する。漆抽出物の組成における含量の分布が大きいのは、漆の場合、木の樹齢および採取時期、栽培地帯、収穫部位によってやや偏差が存在するからである。
【0049】
今までの漆抽出物の抗ガン効果は、抽出物に含有されたフラボノイド性物質に起因することがわかっており、漆のレジンは、今まで抗癌と関連して報告されたことがなかった。しかし、本出願の発明者は、漆抽出物が抗ガン効果を発揮する物質としてレジンを注目し、後に説明する実施例にも分かるように、本発明による漆の抽出物は、驚くべきことに、特にレジンに起因して優れた抗ガン効果を発揮することが確認された。
【0050】
本発明で得られた漆抽出物は、癌細胞培養試験による抗ガン効果検証において、結腸癌、肝癌、子宮癌、胃癌、直腸癌、肺癌などに対して、癌細胞の成長抑制効果が非常に優れていることが確認された。また、漢方病院で行った末期癌患者を対象とした治療において、非常に優れた治療効果を示した。
【0051】
従って、本発明は、また、(i)有効成分として薬理学的有効量の前記抽出物、及び(ii)薬剤学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、又はこれらの組み合わせを含んでなる抗ガン薬剤組成物を提供する。
【0052】
用語 「薬剤組成物(pharmaceutical composition)」は、本発明の抽出物と希釈剤又は担体のような他の化学成分の混合物を意味する。薬剤組成物は、生物体内に化合物の投与を容易にする。薬理学的有効成分を投与する様々な技術が存在し、ここには経口、注射、エアゾール、非経口、及び局所投与などが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0053】
用語「薬理学的有効量(therapeutically effective amount)」は、投与される化合物の量が治療する癌と関連する症状をある程度軽減することを意味する。従って、薬理学的有効量は、(1)癌と癌転移の進行速度を逆転させる効果と、(2)癌と癌転移のそれ以上の進行をある程度禁止させる効果と、(3)癌と関連する症状をある程度軽減(好ましくは、除去)する効果を有する量を意味する。
【0054】
用語「担体(carrier)」は、細胞又は組織内に有効成分の合体を容易にする化合物で定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞又は組織内への多くの有機化合物の投入を容易にする一般に使用される担体である。
【0055】
用語「希釈剤(diluent)」は、対象有効成分の生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、有効成分を溶解させる水で希釈される化合物で定義される。緩衝液に溶解されている塩類は当該分野で希釈剤として使用される。一般に使用される緩衝液はリン酸緩衝液食塩水であり、それは人間体液の浸透圧状態を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できるため、緩衝希釈剤が化合物の生物学的活性を変更することは珍しい。
【0056】
用語「薬理学的に許容される(physiologically acceptable)」は、有効成分の生物学的活性と物性を損傷させない担体又は希釈剤で定義される。
【0057】
本発明による抽出物は人間患者にそのものとして、又は複合治療のように他の活性成分とともに、又は適当な担体や賦形剤とともに混合した薬剤組成物として投与することができる。本応用での化合物の剤形及び投与に関する技術は「Remington's Pharmaceutical Sciences,」 Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition, 1990で確認することができる。
【0058】
a)投与経路
適切な投与経路は、例えば、経口、鼻腔内、粘膜内、又は腸投与;包膜内、直接心室内、腹腔内、又は眼内注射だけではなく、筋肉内、皮下、静脈内、骨髄内注射を含む非経口伝達を含む。
【0059】
b)組成物/剤形
本発明の薬剤組成物は、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖剤-製造、粉末化、乳化、カプセル化、トラッピング、又は凍結乾燥過程の手段によって、公知方式で製造することができる。
【0060】
従って、本発明による使用のための薬剤組成物は、薬剤学的に使用できる剤形への活性化合物の処理を容易にする賦形剤又は補助剤を含んでなる一つ又はその以上の薬理学的に許容される担体を使用して通常の方法で製造することができる。好適な剤形は選択された投与ルートによって左右される。周知技術、担体および賦形剤のうち、どれでも適合に、そして当該分野、例えば、前に説明したRemingston's Pharmaceutical Sciencesで理解するように使用することができる。
【0061】
注射のため、本発明の成分は液状溶液として、好ましくは、ハンクス液 、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝のような薬理学的に合う緩衝で製剤することができる。経粘膜の透過投与のために、通過するバリアに適した浸透剤が剤形に使用される。そうような浸透剤は一般に公知されている。
【0062】
経口投与のため、 当業界に公知されている薬理学的に許容される担体を有効成分と組み合わせることにより容易に製剤することができる。このような担体は、本発明の抽出物が錠剤 、丸薬、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに製剤化(剤形化)できるようにする。経口使用のための薬剤準備は、本発明の抽出物と一つ又は二つ以上の賦形剤を混合し、場合によっては、このような混合物を粉砕し、必要であれば適切な補助剤を透過した後、顆粒の混合物を処理して錠剤又は糖剤コアを得ることができる。
【0063】
適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールのような充填剤(フィラー);とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース系物質などである。必要であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天(天草)、又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムのような塩などの分解剤が添加できる。
【0064】
糖剤コアは適切にコーティングして供給する。このような目的のために、場合によっては、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/又は、二酸化チタン、ラッカ溶液、および好適な有機溶媒、又は溶媒混合物を含んだりする濃縮砂糖溶液が使われ得る。活性化合物用量の確認、又はこれらの他の組み合わせを特徴づけるために、染料や顔料が錠剤又は糖剤に含まれたりする。
【0065】
経口に使用可能な医薬品は、ゼラチンおよびグリコール、又はソルビトールのような可塑剤で作られた柔らかい密封カプセルだけでなく、ゼラチンで作られた押し込み型のカプセルを含むことができる。押し込み型のカプセルは、ラクトースのような充填剤(フィラー)、澱粉のようなバインダー、および/又は滑石又はステアリン酸マグネシウムのような滑剤との混合物として、活性成分を含むことができる。軟カプセルで、活性化合物は脂肪酸、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールのような適当な溶体に溶解又は分散することができる。また、安定化剤を含むことができる。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に適当な含量でなければならない。
【0066】
頬側投与のために、組成物は通常の方法によって製剤化(剤形化)した錠剤又は菱形の錠剤を取ることができる。
【0067】
吸入による投与のために、本発明による抽出物は一般的に、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素又は他の適切なガスのような適切な推進薬を使用し、加圧パック又はネブライザー(nebuliser)からエアゾールスプレー提供の形態で伝達することができる。吸入剤又は吸入器での使用のために、化合物とラクトース又は澱粉のような適切な粉末の粉末状混合物を含む、例えば、ゼラチンのようなカプセルおよびカートリッジが製剤化できる。
【0068】
抽出物は、注射によって、例えば、巨丸の注射や持続注入によって、非経口投与用として製剤化(剤形化)が可能である。注射用剤形は、例えば、防腐剤を添加したアンプル又はマルチ・ドーズとして単位用量形態で提供できる。組成物は油性又は水性のビヒクル(vehicle)状の懸濁液、溶液、エマルションのような形態を取ることもでき、懸濁液剤、安定化剤および/又は分散剤のような剤形用成分を含むことができる。
【0069】
非経口投与用の液剤剤形は、水溶性形態で有効成分の液状溶液を含む。その上に、有効成分の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として準備することができる。適当な親油性溶媒又はビヒクル(vehicle)には、ゴマ油のような脂肪酸、オレイン酸エチル又はトリグリセライドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームなどがある。液状注射懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどを含むことができる。場合によって、懸濁液に高濃縮溶液の製造が可能にするように、化合物の溶解度を増加させる成分や安定化剤を含むことができる。
【0070】
また、有効成分は、使用前に無菌の発熱物質の水のような適切なビヒクルとの構成のために粉末の形態である可能性がある。
【0071】
有効成分は、例えば、カカオバターや他のグリセリドのような一般的な座薬基剤を含有する、座薬又は停留浣腸のような直腸投与組成物に製剤することができる。
【0072】
本発明による抽出物用の剤形担体は、ベンジルアルコール、無極性の界面活性剤、水混和性有機高分子、および液状からなる共溶媒系である。共溶媒系はVPD共溶媒系である可能性がある。
【0073】
VPDは、無水エタノールから体積まで作られたベンジルアルコール3% w/v、無極性の界面活性剤ポリソルベート(Polysorbate)80TM 85 w/v、およびポリエチレングリコール300 65% w/vの溶液である。VPD共溶媒系(VPD: D5W)は、水溶液で5%デキストロースで1:1希釈されたVPDからなる。このような共溶媒系は疎水性化合物をよく溶解させ、全身投与時、低毒性をそのものが提供する。自然に共溶媒系の割合はそれの溶解度および毒性特性を抑制することなく、かなり変化することができる。さらに、共溶媒成分の確認は変化することができる: 例えば、他の低毒性の無極性の界面活性剤がポリソルベート(Polysorbate) 80TM代りに使用することができる;ポリエチレングリコールの分画のサイズは変化することができる;他の生体適合性高分子が例えばポリビニルピロリドンのようなポリエチレングリコールを代替し得る。また、他の糖と多糖類がデキストロースに代わることができる。
【0074】
また、他のデリバリー系を使用することができる。リポソームとエマルションは、疎水性薬剤用伝達ビヒクルの公知の例である。通常より高い毒性を犠牲しても、ジメチルスルホキシドのような任意の有機溶媒を使用することができる。その上、治療成分を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性のマトリックスのような徐放性系を使用して有効成分が伝達することができる。様々な徐放性物質が開発され、当業者に公知されている。徐放性カプセルは、それの化合物特性によって2又は3週から100日まで化合物を放出することができる。治療剤の化学的特性および生物学的安定性により、タンパク質安定のための追加的な戦略を使用することができる。
【0075】
c)有効量
本発明で使用に適切な薬剤組成物には、有効成分がそれの意図された目的を達成するのに有効な量に含有されている組成物を含む。さらに詳細には、治療的有効量は治療される主体の生存を延長し、疾患の症状を防止、軽減又は改善に有効な化合物の量を意味する。治療的有効量の決定は、特に、ここに提供された詳細な開示で、当業者の能力範囲内にある。
【0076】
本発明の抽出物に対する治療的有効量は、細胞培養分析から初期に推測することができる。例えば、線量(dose)は、細胞培養で決定されたIC50を含む循環濃度範囲を得るために動物モデルで計算することができる。そのような情報は、人間にとって有用な線量をより正確に決定するのに使用することができる。
【0077】
投与量は使用された投与形態と利用された投与ルートにより前記範囲内で変化することができる。正確な算定、投与ルートおよび投与量は、患者の状態を考慮して個個の医者によって選択され得る(例えば、 Fingl et al. 1975, in 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」, Ch. 1 p. 1参照)。 通常、患者に投与される組成物の線量範囲は、患者体重のおよそ0.5乃至1000mg/kgである可能性がある。投与量は、患者に必要な程度によって、一度に又は一日又はその以上の過程で、一連の二度又はその以上提供することができる。
【0078】
局所投与又は選択的取込み(uptake)の場合には、薬剤の有効局所濃度が血漿濃度と関連しない可能性がある。
【0079】
勿論、投与される組成物の量は、治療される主体によって、主体の体重によって、痛みの症状によって、投与方式および医者の判断によって変わる。
【0080】
以下、本発明を次の実施例で説明する。但し、実施例が本発明の範囲に限定するものではない。
【実施例1】
【0081】
漆抽出物(抽出物A)の製造
漆は原州(ウォンジュ)産で10年生の生漆を10Kgを購入し、韓国特許第0504160号の方法によってアレルギー除去過程を経て、おがくずに作って乾燥させた。 乾燥したおがくず100gずつ2つの試料を準備し、1つの試料は本発明の抽出物(以下、「A抽出物」という)の製造のために、残り1つの試料は、成分の比較のために従来の水抽出物(以下、「B抽出物」という)の製造に使用した。
【0082】
A抽出物は下記のような方法で製造した。
【0083】
生漆おがくずの重量の13倍に該当する1.3Lの水を加え、100℃、相対気圧1気圧で6時間抽出した。1次抽出結果1.12Lの抽出液を得た。残ったものに再び45%(v/v)エタノールの酒精を1.0L加え、80℃で相対気圧0.6気圧で6時間抽出した。抽出後1.05Lの濾液を得た。これを1次抽出液と混合して気孔の大きさが1μmのマイクロフィルターで濾過して不純物を除去し、再び分子量500,000以上の物質を除去する限外濾過膜で濾過し、分子量が500,000 以上のことを除去し、得られた濾液を回収し、50℃および真空下で蒸発濃縮して20ml程度残った時、凍結乾燥した。
【0084】
この過程で除去された固形分の量は1.3gであった。乾燥後ブラウンの粉末を8.8gを得た。
【0085】
最上層に1mm厚さの無色透明ガラスを置き、前記ガラスから10cmの間隔で、100メッシュ網を通過する炭粉を4mmの厚さに敷いた。その下に陰干しにした漆の木質部を細かく粉砕し、50メッシュ網を通過する粉末を1mmの厚さに敷いた。再び、その下に5cmの間隔を置いて、透明ポリプロピレン・ビニルに前記で得られた漆抽出物粉末を入れて2cmの厚さに敷いて、窒素をビニル容積の10倍にパージして酸素を除去してビニルの内部を窒素に置換して密封した。最上層のガラス板で10cmの間隔を置いて120Wの赤外線が発生する電球をつけた後、8時間照射した。遠赤外線照射時、炭粉表面の温度は80℃前後であった。
【0086】
遠赤外線照射結果、漆抽出物粉末の重さは8.5gで測定されることで、遠赤外線照射前と比較しておおよそ3.4%減る結果を示した。このような抽出物を以後の抗癌活性の検証実験に使用した。
【0087】
(比較例1)
漆抽出物(抽出物B)の製造
抽出物Bは、まず、水抽出過程を抽出物Aと同一に13倍の1.3Lの水を加え、100℃および相対気圧1気圧で6時間抽出した。1次抽出結果1.12Lの抽出液を得た。残ったものに再び1Lの水を加え、同じ条件で抽出して抽出液980mlを得て、これを1次抽出液と混合して真空濃縮後、凍結乾燥することにより製造した。
【0088】
これらの抽出物の中でフスティン、フィセチンおよびレジンの含量を分析した結果を下記の表1に示した。
【表1】

【0089】
前記表1に示すように、 本発明の一つの実施例による漆抽出物(抽出物A)は、水抽出物(抽出物B)と比較してフスティン、フィセチンおよびレジンの含量で、かなりの差があることが分かった。
【実施例2】
【0090】
毒性および安全性試験
実施例1で製造した抽出物Aを薬剤として使用できるかどうかを確認するために、毒性試験を韓国KGLP認証機関であるバイオトクステックに依頼して実施した。その結果を下記の表2に示した。
【表2】

【0091】
前記表2に示すように、本発明による漆抽出物は、薬剤として使用するにあたって、毒性を示さないことが確認された。
【実施例3】
【0092】
抗ガン効果試験
前記実施例1で製造した本発明の抽出物(抽出物A)と、既存水抽出物(抽出物B)の抗ガン効果を調べるために、結腸癌、肝癌、子宮癌、胃癌、直腸癌および肺癌細胞を対象に癌細胞成長抑制効果を調べた。使用した癌細胞および成長抑制効果を下記の表3に示した。抗癌活性は癌細胞を韓国種菌協会から入手して継代培養後、24-ウェルプレート(well plate)に110cells/mlの濃度で分注し、ここに漆抽出物を50ppmずつ加えて癌細胞の成長を比較した。
【表3】

【0093】
前記表3に示すように、本発明の一つの実施例による抽出物Aは、抽出物Bと比較して有意に高い抗癌活性を示すことが分かる。
【実施例4】
【0094】
遠赤外線照射前後の抗ガン効果の比較
本発明による遠赤外線の照射前と後の抽出物の抗ガン効果を比較した。これは遠赤外線照射システムの効果を物性又は定量的に明確に表記しにくい点を考慮し、その効果的な側面で差異点を見るためである。実施例1で製造した抽出物Aと、実施例1と同じ工程で抽出し、但し、遠赤外線を照射しない抽出物(抽出物C)を対象に、前記実施例3と同じ方法で抗癌活性を測定し、その結果を下記の表4に示した。
【表4】

【0095】
前記表4に示すように、遠赤外線を照射することにより抗癌活性が60〜120%程度向上したことが分かる。
【実施例5】
【0096】
アレルギー誘発物質の除去確認
本発明による漆抽出物のアレルギー誘発物質除去を確認するために、前記実施例1の抽出物Aと、生漆で抽出した抽出物(抽出物D)に対して、HPLCを用いてアレルギーを誘発することが知られているウルシオールの含量を調査した。ウルシオールの分析は、「Korean J.Medical Crop Sci.,10(4):288-93(2002)」によって行われた。その結果を下記の表5に示した。
【表5】

【0097】
前記表5に示すように、本発明による方法で得られた漆抽出物には、アレルギーを誘発することが知られているウルシオールが完全に除去されていることが分かった。
【実施例6】
【0098】
レジン(樹脂)の抗ガン効果
本発明による漆抽出物中でレジン成分による抗ガン効果を確認するために、前記実施例1で得られた抽出物Aを水に溶かし、水溶性物質を除去し、残る固形分を再び95%(v/v)エタノールに溶かし、得られた液を真空濃縮して黒色に近いレジン成分を得た。これに対して抗ガン効果の検証試験を行い、その結果を下記の表6に示した。
【表6】

【0099】
前記表6に示すように、レジンは漆抽出物の全体組成と比較して非常に優れた抗ガン効果を示すことが分かる。
【実施例7】
【0100】
癌患者を対象とした治療効果
前記実施例1と同一に製造した漆抽出物Aを使用して漢方病院で末期癌患者を対象とした効果を確認した。その結果、非常に優れた治療効果を示した。その結果を下記の表7に示した。
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0101】
以上の説明のように、本発明による方法で製造された漆抽出物は、非常に優れた抗癌活性を示すので、様々な種類の癌を治療および予防に効果的に使用することができる。
【0102】
本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範囲内で、多様な応用および変更して実施することが可能なのは明らかなことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アレルギー誘発物質を除した漆を可溶性溶媒で抽出して抽出液を得る過程;
(b)前記抽出液を限外濾過して、高分子量の物質を除去して濃縮および乾燥して抽出粉末を得る過程;および
(c)前記抽出粉末に遠赤外線を照射して抗癌活性を向上させる過程;
とを含んでなる漆抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記過程(a)の溶媒抽出は、漆に第1溶媒として過量の水を加えて水抽出液を得て、残った漆に第2溶媒として過量の希エタノールを加えてエタノール抽出液を得た後、前記水抽出液と混合して混合抽出液を得ることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記水抽出は、漆の重量対比5〜20倍の水を加え、60〜110℃で3〜24時間行い、前記エタノール抽出は、エタノールの濃度が40〜50%(v/v)の希エタノールを漆の重量の5〜10倍を加え、60〜70℃で3〜10時間行うことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記過程(b)の限外濾過前に気孔の大きさが0.45μmのフィルタを使用して微細濾過をさらに行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記限外濾過に使用する膜の分子量カットオフ値(cut-off value)は、500,000以上であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記過程(c)で漆抽出粉末に対する遠赤外線の照射は、
最上層の光源;
前記光源からの光を吸収して発熱し、 100メッシュの炭粉末からなる厚さ0.5〜1cmの光吸収発熱層;
前記光吸収発熱層の下部に位置し、陰干しにした漆からなる厚さ0.5〜1mmの遠赤外線放射層;および
前記遠赤外線放射層から所定の距離を隔てて、不活性雰囲気で透明基材に密封している厚さ2〜10mmの漆抽出粉末層;
とを含んでなる遠赤外線処理システムによって行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
10〜30%(w/w)のフスティン、 2〜15%(w/w)のフィセチンおよび15〜45%(w/w)のレジンを含有しており、優れた抗癌活性を有することを特徴とする第1項による方法で製造された漆抽出物。
【請求項8】
(a)有効成分として請求項7による薬理学的有効量の前記抽出物、および(b)薬剤学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はこれらの組み合わせを含んでなる抗癌薬剤組成物。

【公表番号】特表2009−513624(P2009−513624A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537573(P2008−537573)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001601
【国際公開番号】WO2007/049846
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(506402322)エージアィ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】