説明

優れた接着強さを有する複合物品及び該複合物品の形成方法

複合物品は一般的に実質的に透明な最表層、連結層、及び裏地層を含む。複合物品は更に基材層を含むことができる。連結層は実質的に透明な最表層と裏地層との間に優れた接着強さを付与する。最表層はコーティング組成物、例えば、クリアコート塗料組成物から形成され、且つ場合により着色することができる。連結層は、塩素化ポリオレフィン(CPO)などのハロゲン化ポリオレフィン及び場合により有機溶媒などの溶媒を含む接着促進組成物から形成される。裏地層はクロムなどの金属組成物から形成される。使用される場合、基材層は典型的にはアクリロニトリルブタジエンスチレンなどのプラスチックから形成される。本発明の複合物品は、自動車の部品及びトリムなどの種々の用途に使用してよい。複合物品は付与された美的効果(例えば、ピュータの色である)を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年10月29日に出願された米国特許仮出願第60/983,480号の利益を主張し、その開示は本明細書にそのまま援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的に複合物品に関し、更に詳細にはハロゲン化ポリオレフィンを含む接着促進組成物から形成された連結層を含む複合物品並びに複合物品の形成方法に関する。
【0003】
従来技術の説明
複合物品、例えば、金属プレートのプラスチックが当該技術分野で公知である。例えば、クロムメッキのプラスチック、例えば、クロムメッキのアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)は、自動車のグリル、ウィンドウトリム、ライトトリム等の自動車用の部品やトルムとしてよく使用されている。
【0004】
本来、クロムメッキのプラスチックは、高い反射性の、鏡のような表面を有する、それ自体で完成された複合物品であることが意図されていた。高い反射性の、鏡のような表面は典型的には、該表面をまさしく非極性、即ち、非反応性にするため、該表面の劣化を低減するため、そして従って、完成された複合物品の劣化を低減するために処理される。換言すれば、クロムメッキのプラスチックは本来、その後にそこに塗布されたコーティング、例えば、表面を覆う塗料組成物のコーティングを有する基材であることが設計又は意図されていた。
【0005】
近年、特に、クロムと薄い色のついたクリアコートとの間のコントラストによって、ピュータの見かけを有するものなどの、クロムメッキのプラスチック(例えば、基材)に、種々の色を与えるためのクリアコート及び薄い色のついたクリアコートなどの塗料組成物でクロムメッキのプラスチックを被覆することが望まれてきた。クロムメッキのプラスチックを被覆するために使用される従来の塗料組成物は反応性(例えば、極性)である。残念なことに、塗料組成物(一般的に極性)とクロムメッキのプラスチック(一般的に非極性)の表面との間の極性の違いにより、従来の塗料組成物は、GM4465P及びGM9525P試験基準などの高度な湿潤試験及び熱衝撃試験に対して不適当な接着強さ及び性能を与える。特に、クロムメッキのプラスチックはその上に配置されたクリアコートを有し、これは特にカナダや合衆国北部などの北部の気候において、風雨に曝された後に接着破壊を示した。クリアコートとクロムメッキのプラスチックとの間の接着破壊は、クリアコートが掻ききず又は欠損(例えば、石によるきず)などによって貫通される場合に促進される。雨又は更に洗車の水などの湿気への曝露、及び「熱衝撃」として知られた温度の変化は、クリアコートの接着破壊を更に促進させる。一般的に、クリアコートは、表面が貫通されるまで耐候性であり、クロムメッキのプラスチックは下側で曝露される。かかる貫通後、クリアコートはクリアコートとクロムメッキのプラスチックとの間の接着破壊により連続的に剥離される。
【0006】
上述の接着破壊の問題への対応を試みるために従来の塗料組成物を調整することが試みられた。しかしながら、従来の塗料組成物に対するこれらの調整は、クロムメッキプラスチックと比較して、クリアコートの最初の接着強さを増大させて耐湿性を低下させるか、又は耐湿性を増大させて最初の接着強さを低下させるかのいずれかである。代替的に、又は従来の塗料組成物を調整することに加えて、クロムメッキのプラスチックは、例えば、クロムメッキのプラスチックの表面に火炎処理を施すことによって、しばしば表面処理されており、一時的にクロムメッキのプラスチックの表面の極性を調整して、従来の塗料組成物のものをより良好に適合させる。しかしながら、かかる表面処理は最大で1日又は2日間持続するに過ぎないので、該表面処理は時間がかかり、高価であり、且つ一時的である。これは、従来の塗料組成物をできるだけ早く表面に塗布することが必要である。
【0007】
従って、改良された複合物品及びかかる改良された複合物品の製造方法を提供する可能性が残っている。
【0008】
本発明の概要及び利点
本発明は複合物品を提供する。複合物品は、クリアコート組成物から形成された実質的に透明な最表層を含む。複合物品は更に実質的に透明な最表層に隣接して配置された裏地層を含む。裏地層は複合物品に美的な効果を付与する金属組成物から形成される。複合物品は更に連結層を含む。連結層は、実質的に透明な最表層及び裏地層を接着するために、実質的に透明な最表層と裏地層との間に配置される。連結層はハロゲン化ポリオレフィンを含む接着促進組成物から形成される。本発明は更に複合物品の形成方法を提供する。
【0009】
本発明の複合物品は上述の層の独自の組み合わせを含む。連結層は一般的に、優れた接着力、湿度、及び熱衝撃性能を複合物品に与える。
【0010】
図面の簡単な説明
本発明の別の利点は容易に理解され、また本発明の別の利点は、添付図面と関連して考慮される場合に以下の詳細な説明を参照してより良好に理解できる通りである:
【0011】
図1は自動車に取り付けられた複数の本発明の複合物品の透視図であり;
【0012】
図2は、本発明による複合物品の実施態様の分解断面図であり;
【0013】
図2Aは図2に描かれた複合物品の断面図であり;
【0014】
図3は、本発明による複合物品の別の実施態様の断面図であり;
【0015】
図4は、本発明による複合物品の別の実施態様の分解断面図であり;
【0016】
図4Aは図4に描かれた複合物品の断面図である。
【0017】
発明の詳細な説明
複数の図の全体にわたって同じ数字が同じ部品を示している、図面を参照すると、複合物品は一般的に10で示される。一実施態様において、図1に示されるように、自動車12は複数の複合物品10を含み、これらは外装部品及びトリム部品として構成されており、更に詳細には、グリル10a、ドアハンドル10b、泥よけトリム10c、バンパトリム10d、ピラー及びポストトリム10e、サイドミラートリム10f、ウィンドウトリム10g、サイドモールトリム10h、ライトトリム10i、ベントトリム10j、及びホイールトリム10kとして構成されている。複合物品10は他の外装部品及びトリム部品(例えば、ロッカーパネルトリム)のために使用してよく、且つ内装部品及びトリム部品、例えば、ペダルトリム、シフトレバートリム、ダッシュボードトリム、ドアパネルトリム10l等のために使用できることが理解されるべきである。複合物品10が自動車12の自動車部品及びトリム部品として示されているが、複合物品10を他の車、例えば、トラック、SUV、ボート、スノーモービル、ATV、ジェットスキー、飛行機、オートバイ、バイク等のために使用してよいことが理解されるべきである。複合物品10は自動車の用途に加えて他の用途、例えば、家具のフェーシア及び/又はトリム、建築部材(例えば、注出栓、ノブ、ハンドル等)、玩具、コンピュータ、及び電化製品(例えば、洗浄器、ドライヤ、真空、ミキサー等)にも使用してよい。本発明は複合物品10の特定の使用に限定されないことが理解されるべきである。
【0018】
ある実施態様において、複合物品10は、以下で、物品10が実質的に透明な最表層14、連結層16、及び裏地層18を含む。裏地層18は実質的に透明な最表層14に隣接して配置される。連結層16は、実質的に透明な最表層14及び裏地層18を接着するために、実質的に透明な最表層14と裏地層18との間に配置される。図2及び2Aに最もよく示されるように、連結層16は裏地層18の上に配置され且つ直接接触しており、実質的に透明な最表層14は連結層16の上に配置され且つ直接接触している。一実施態様において、図3に示されるように、物品10の裏地層18は基材層20の上に配置され且つ直接接触している。別の実施態様において、図4及び4Aに最もよく示されるように、物品10が、裏地層18をオーバーレイし且つこれに直接接触している連結層16(最表層として)を含むので、物品10には最表層14がない。この実施態様において、連結層16は基材層20(示さず)の上に配置され且つこれに直接接触しているので、上で導入されたように、物品10は基材層20をも含む。上述の図面に関して、物品10が一般的に、実質的に透明な最表層14、連結層16、裏地層18、及び/又は基材層20の間に配置された中間層を有していないことを理解することができる。上述の実施態様のそれぞれについて層14、16、18、20の更なる説明が以下に与えられる。
【0019】
使用される場合、実質的に透明な最表層14、以降、最表層14は、一般的に下側に配置された層、例えば、裏地層18、基材層20等を保護する。「実質的に透明」とは、コーティング技術において理解されるように、最表層14には隠ぺい力が皆無かそれに近いことを意味する。例えば、最表層14は典型的には50%より高い、更に典型的には75%より高い、更に一層典型的には90%より高い、最も典型的には95%より高い、最表層14を通って連結層16及び裏地層18への光の透過を可能にする。光の透過は、当該技術分野で公知の種々の方法、例えば、改良された(逆転した)隠ぺい力の試験方法によって測定することができる。最表層14は一般的に物品10に美的効果、例えば、物品10の色をも付与する。ある実施態様において、最表層14は透明であるか又は染料もしくは顔料(例えば、カーボンブラック顔料)などの種々の量の着色剤でわずかに色味付けられてよい。例えば、以下に更に詳細に記載された一実施態様において、裏地層18はクロムを含み、従ってクロムの色を呈し、そして最表層14は、クロムの組み合わせと色味付けにより、物品10にピュータ又はスモーキー色を付与するのに十分な量のカーボンブラックで色味付けられる。最表層14の種々の部分は互いに異なることが理解されるべきである。例えば、最表層14は透明部分及び色味付けられた部分、段彩等を含んでよい。
【0020】
上記のように、最表層14はコーティング組成物、典型的にはクリアコート組成物から形成される。クリアコート組成物はコーティング技術において公知のクリアコートコーティング組成物、例えば、クリアコート塗料組成物又はクリアコートインク組成物であってよい。典型的には、クリアコート組成物はクリアコート塗料組成物であり、これは水性塗料組成物又は油性塗料組成物であってよい。クリアコート塗料組成物は、塗料技術分野で理解されるように、1成分(1液型又は1K)又は2成分(2液型又は2K)の塗料組成物のいずれかとして配合することができる。クリアコート塗料組成物は、アクリル塗料組成物、ウレタン塗料組成物、ウレタン/アクリル塗料組成物、カルバメート塗料組成物、メラミン塗料組成物、ポリエステル塗料組成物、及びそれらの組み合わせの群から選択してよいが、これらに限定されない。ある実施態様において、クリアコート組成物はウレタン/アクリル塗料組成物である。ある実施態様において、塗料組成物はコーティング技術分野で当業者に理解されるように、(例えば、極性であるために)反応性コーティング系として分類される。典型的には、クリアコート塗料組成物は極性であるため、最表層14も一旦極性に形成される。最表層14はコーティング技術分野で理解されるように、一般的に軟質であると分類される。典型的には、最表層14のクラッキング及び/又はひずみを防ぐために、最表層14は少なくともその下にある層(例えば、基材層20)と同程度に軟質である。
【0021】
一実施態様において、最表層14は油性2Kウレタン/アクリル塗料組成物から形成されたクリアコートである。図2から3に示したように、最表層14は1つのコーティング組成物、例えば、クリアコート組成物から形成される。しかしながら、最表層14が2つ以上の下層を含む場合(示さず)、これらの下層は様々な順序で配向してよく、例えば、色味のあるクリアコートの上に配置された実質的に透明なクリアコート、又は逆もまた同様である。
【0022】
本発明のための好適なクリアコート塗料組成物は、STAINGUARD(登録商標)、URECLEAR(登録商標)、DURACLEAR(登録商標)、及びINOVA(登録商標)の商標で、Florham Park, New JerseyのBASF社から市販されている。他の好適な塗料組成物はインディアナ州エバンスビルのRed Spot Paint & Varnish社から市販されている。更に別の好適な塗料組成物は、米国特許出願第5,137,972号(Cook);同第4,720,528号(Etzellら);同第5,216,078号(Cookら);同第5,238,999号(Cookら);同第5,276,096号(Serdiukら);同第5,356,669号(Rehfussら);同第5,379,947号(Williamsら);同第5,494,970号(Serdiuk);同第5,498,783号(Foukesら);同第5,559,195号(McGeeら);同第5,596,043号(Harrisら);同第5,635,302号(Buddeら);同第6,995,208号(Mehtaら);同第6,071,568号(Harmonら);同第5,605,965号(Rehfussら);同第5,474,811号(Rehfussら);及び同第5,726,246号(Rehfussら)によって開示されており;その開示は本明細書にそのまま援用される。最表層14が2つ以上の前述のクリアコート塗料組成物の組み合わせから形成されてよいことが理解されるべきである。
【0023】
着色剤は、最表層14を色味付けるために最表層14において利用される場合、コーティング技術分野において公知の種類の着色剤、例えば、粉末状顔料、顔料分散液、染料濃縮物、マスターバッチ等であってよい。本発明のための好適な着色剤は、多種多様な供給者から市販されている。使用される場合、着色剤は典型的には、100質量部のクリアコート塗料組成物を基準として、約0.001〜約1(1)、更に典型的には約0.01〜約0.5、更に一層典型的には約0.01〜約0.1、最も典型的には約0.01質量部の量で存在する。典型的には、より多い着色剤の量はより高い着色性を与えるが、より少ない量はより低い着色性を与える。
【0024】
コーティング技術においてプライマー層16をも意味する連結層16は、下側に配置された層(例えば、裏地層18、基材層20等)を保護するのに有用である。最表層14が使用されない時に、連結層16が物品10の最表層をも意味することが理解されるべきである。典型的には、連結層16は実質的に透明である。「実質的に透明」とは、コーティング技術分野で理解されるように、連結層16には隠ぺい力が皆無かそれに近いことを意味する。例えば、連結層16は典型的には50%より高い、更に典型的には75%より高い、更に一層典型的には90%より高い、最も典型的には95%より高い、連結層16から裏地層18への光の透過を可能にする。あるいは、典型的ではないが、連結層16は、最表層14の説明について上で記載且つ例示されるように、色を有するか又は色味付けられてよい。連結層16は特に最表層14(使用される場合)と裏地層18との間に優れた接着強さを与えるために有用である。コーティング技術分野の当業者に理解されるように、以下の実施例の節に記載且つ例示されるように、連結層16は特に、環境条件、例えば、高度な湿潤試験及び熱衝撃型試験の間に生じるそれらの条件に曝された時、最表層14と裏地層18との間に改良された接着性を与えるために有用である。連結層16が物品10の最表層である場合、連結層16は裏地層18に保護を与える。
【0025】
連結層16はまた物品10に改良された外観、向上した屋外耐久性(例えば、優れた熱衝撃抵抗性、向上した耐候性、向上した耐湿性、及び向上した耐薬品性)、並びに優れた耐引掻性及び表面摩耗抵抗をも与えることができる。ある実施態様において、連結層16は最表層14及び/又は裏地層18と部分的に反応(及び/又は相互作用)して最表層14と裏地層18との間の接着強さを更に向上させる。特定の理論により拘束又は制限されることなく、連結層16と裏地層18との間にある程度のイオン性相互作用が発生し得ることが考えられる。更に、連結層16は一般的に使用時に最表層14によって貫通(又は溶解)されないと考えられる。
【0026】
連結層16は接着促進組成物から形成される。接着促進組成物はハロゲン化ポリオレフィンを含む。本発明のための好適なハロゲン化ポリオレフィンの例として、フッ化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、臭素化ポリオレフィン、ヨウ化ポリオレフィン等、及びそれらの混合物が挙げられる。典型的には、ハロゲン化ポリオレフィンは塩素化ポリオレフィン(CPO)である。様々な種類及び等級のCPOを、連結層16を形成するために使用してよい。ハロゲン化ポリオレフィン、特に、CPOは、それらの製造方法とともに、米国特許第5,319,032号(Martzら)、同第5,840,783号(Momchilovichら)、同第5,385,979号;同第5,198,485号(Ozawaら);同第5,863,646号(Verardiら);同第5,489,650号(Ainsworthら);及び同第4,273,894号(Mucke)に開示されており;その開示は本明細書にそのまま援用される。ある実施態様において、接着促進組成物はハロゲン化ポリオレフィン、例えば、CPOから本質的になる。
【0027】
ハロゲン化ポリオレフィンは当業者によって理解されるように種々の量のハロゲン含量を有してよい。典型的には、ハロゲン化ポリオレフィンは、ハロゲン化ポリオレフィンの全質量を基準として、約1(1)〜約50、更に典型的には約5(5)〜約35、そして最も典型的には約10〜約30パーセントのハロゲン含量を有する。CPOを使用するある実施態様において、CPOは典型的には、CPOの全質量を基準として、約3(3)〜約35、更に典型的には約15〜約30、そして最も典型的には約20〜約25パーセントの塩素含量を有する。CPOを使用するある実施態様において、CPOはCPOの全質量を基準として約20パーセントの塩素含量を有する。ハロゲン化ポリオレフィンで使用される量のハロゲンは連結層16の極性を変えるために有用であると考えられる。典型的には、連結層16は非極性〜超非極性であると分類される。最表層14と裏地層18の極性が異なる時、例えば、最表層14が極性であり且つ裏地層18が非極性である時、連結層16は最表層14と裏地層18との間に優れた接着強さを与える。特定の理論により拘束又は制限されることなく、連結層16に存在するCPO分子の長さ及び/又は形状は、最表層14に物理的な固着を与えることができ、それによって連結層16と最表層14との間の接着強さを高めることが考えられる。
【0028】
ある実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンは無水マレイン酸で改質される。例えば、CPOを使用するある実施態様において、CPOは無水マレイン酸で改質される。ハロゲン化ポリオレフィンは当技術分野で公知の他の改質剤又は添加剤、例えば、アクリル樹脂、[4-[(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]メチル]オキシラン等によって改質されてよい。接着促進組成物はコーティング技術分野で公知の他の添加剤、例えば、コーティング技術分野で公知の架橋剤及び/又は他の接着促進剤を含んでよいことが理解されるべきである。使用する場合、無水マレイン酸は、ハロゲン化ポリオレフィン、例えば、CPOの全質量を基準として、種々の量で、典型的には約1(1)〜約10、更に典型的には約1(1)〜約5(5)、最も典型的には約2(2)〜約3(3)パーセントの無水マレイン酸の量で使用してよい。無水マレイン酸は幾らかの極性をハロゲン化ポリオレフィンに、又はその一部に、従って連結層16の一部に付与するために有用であり、これは最表層14と裏地層18との間に接着強さを更に与えることができると考えられる。また、無水マレイン酸は、最表層14と裏地層18との間の接着強さを高めるために少なくとも最表層14と少なくとも部分的に反応し得ると考えられる。特定の理論により拘束又は制限されることなく、ハロゲン化ポリオレフィン及び/又は無水マレイン酸によって与えられた、電子雲/密度、及びその配置は、連結層16によって付与された接着強さを高めるとも考えられる。
【0029】
ハロゲン化ポリオレフィン、例えば、CPOは、種々の分子量であってよい。ある実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンは少なくとも約50,000、あるいは少なくとも約60,000、あるいは少なくとも約75,000の数平均分子量を有する。ハロゲン化ポリオレフィンはより小さい数平均分子量を有し得ることが理解されるべきである。上記のように、ハロゲン化ポリオレフィン分子の長さと大きさが物理的な固着を与えることができると考えられる。
【0030】
ある実施態様において、接着促進組成物はハロゲン化ポリオレフィンに加えて溶媒を更に含む。溶媒は一般的にハロゲン化ポリオレフィンを溶解及び/又は運ぶか(固体の形である場合)又はハロゲン化ポリオレフィンを薄める(液体又はエマルションの形である場合)ために使用される。一実施態様において、溶媒は有機溶媒である。溶媒は非極性及び極性の溶媒、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジエチルエーテル、エチルアセタート、Aromatic100、クロロホルム、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、SC−100、SC−150、ブチルセロソルブ等を含むことができる。接着促進組成物は2種以上の前述の溶媒の組み合わせを含んでよいことが理解されるべきである。他の実施態様において、接着促進組成物は、ハロゲン化ポリオレフィンを水によって溶解又は薄めることができる場合、更に水を含む。
【0031】
ハロゲン化ポリオレフィンは、種々の量で接着促進組成物中に存在してよい。典型的には、ハロゲン化ポリオレフィンは、100質量部の溶媒を含む接着促進組成物を基準として、約5〜約50、更に典型的には約10〜約30、更に典型的には約10〜約20、最も典型的には約15質量部の量で存在する。ある実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンはCPOを含み、且つ100質量部の溶媒を含む接着促進組成物、例えば、Aromatic 100を基準として約15質量部の量で存在する。前述の実施態様において、溶媒は残りの質量部、即ち、約85質量部の接着促進組成物を含んでよい。例えば、溶媒はAromatic100及びブチルセロソルブを含むことができるので、接着促進組成物は、それぞれ100質量部の接着促進組成物を基準として、約15質量部の無水マレイン酸改質CPO、約83質量部のAromatic100、及び約2質量部のブチルセロソルブを含む。
【0032】
溶媒を含む接着促進組成物を形成するために、溶媒は典型的には容器中に提供される。特にハロゲン化ポリオレフィンが固体、例えば、粉末、ペレット等である場合、ハロゲン化ポリオレフィンはミキサーで溶媒中に溶解して接着促進組成物を形成する。ある実施態様において、接着促進組成物は約100質量部のハロゲン化ポリオレフィンを含み、即ち、接着促進組成物はハロゲン化ポリオレフィンからなってよいことが理解されるべきである。
【0033】
本発明のための、好適な接着促進組成物及び/又はハロゲン化ポリオレフィンは、HARDLEN(登録商標)の商標で東洋化成工業株式会社(大阪、日本)より市販されており、次のHARDLEN(登録商標)の等級を含むがこれらに限定されない(100%固形分、油性、及び水性のハロゲン化ポリオレフィンを含む):13−LP、13−LLP、14−LWP、14−WL−P、15−LP、15−LLP、16−LP、DX−525P、CY−9122P、CY−9124−P、HM−21P、M−28P、F−2P、F−6P、F−7P、CY−1132、EH−801、EW−5303、EW−5504、EW−5313、EW−8511、EZ−1000、EZ−2000、P−5528、EY−4052、EY−4075、EY−4011、EY−6011、及びそれらの組み合わせ。ある実施態様において、接着促進組成物はHARDLEN(登録商標)F−2P、及びこれらの実施態様の幾つかは更に溶媒を含む。一実施態様において、接着促進組成物は約15質量部のHARDLEN(登録商標)F−2Pを含み、その残りの質量部は溶媒としてのAromatic100とブチルセロソルブのブレンドである。
【0034】
本発明のための、他の好適な接着促進組成物及び/又はハロゲン化ポリオレフィンは、テネシー州、キングズポートのイーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)から市販されている。接着促進組成物として、100%固形分、油性及び水性の接着促進組成物、例えば、イーストマン塩素化ポリオレフィン153−2(キシレン中25%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン164−1(100%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−1(100%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−1(キシレン中25%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−1(キシレン中40%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−1(キシレン中50%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−3(キシレン中25%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン343−3(キシレン中50%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン515−2(Aromatic100中40%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン515−2(トルエン中40%固形分);イーストマン塩素化ポリオレフィン515−2(キシレン中40%固形分);イーストマン改質塩素化ポリオレフィンCP−164−1(キシレン中25%固形分);イーストマンCP310W水性塩素化ポリオレフィン接着促進剤;イーストマンCP347W水性塩素化ポリオレフィン接着促進剤;イーストマンCP349W水性塩素化ポリオレフィン接着促進剤;イーストマンCP730−1塩素化接着促進剤(100%固形分);イーストマンCP730−1塩素化接着促進剤(Aromatic100中20%固形分);イーストマンCP730−1塩素化接着促進剤(キシレン中20%固形分);及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明のための、更に他の好適な接着促進組成物は、SUPERCHLON(登録商標)及びAUROREN(登録商標)の商標で、日本製紙ケミカル株式会社(東京、日本)から市販されており、該組成物としてSUPERCHLON(登録商標)E−723、E−673、及びE−503;及びAUROREN(登録商標)100、150、及び200が挙げられるが、これらに限定されない。接着促進組成物が2種以上の前述の接着促進組成物及び/又はハロゲン化ポリオレフィンを含んでよいことが理解されるべきである。商業的に入手可能な接着促進組成物が、上で記載及び例示された接着促進組成物として単独で使用されてよいか、又は上で記載されたように、接着促進組成物を形成するためにそれに添加される水又は溶媒を有してよいことが理解されるべきである。
【0036】
ある実施態様において、最表層14の説明について上で記載且つ例示されたように、コーティング組成物は添加剤として接着促進組成物を含む。コーティング組成物中で添加剤として接着促進組成物を使用することにより、連結層16を介して最表層14と裏地層18との間に接着強さが更に与えられ得ることが考えられる。添加剤として使用される場合、接着促進組成物は種々の量、例えば、約50質量部以上の量でコーティング組成物中で使用されてよい。添加剤として使用される場合、接着促進組成物は典型的には、100質量部のコーティング組成物を基準として、少なくとも約50、あるいは約1(1)から約50、更に典型的には約1(1)から約25、更に一層典型的には約1(1)から約10、そして最も典型的には約1(1)から約5(5)質量部の量でコーティング組成物中に存在する。
【0037】
裏地層18は金属組成物から形成される。「金属」とは、金属組成物が金属材料、例えば、金属、合金、金属単体等を含むことを意味する。ある実施態様において、金属組成物は銅、すず、チタン、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びその合金(例えば、鋼、ブロンズ等)の少なくとも1つを含む。
【0038】
更に典型的には、上記のように、裏地層18はクロムから形成されており(即ち、金属組成物がクロムを含む)、これは以下に更に詳細に記載される。裏地層18は下層を含んでよい(示さず)。裏地層18は物品10に美的効果を付与し、例えば、連結層16及び最表層14を介してクロム色を付与する。最表層14及び/又は連結層16が着色されるか又は色味付けられる場合、物品10は種々の外観を有し得る。例えば、上で説明されたように、裏地層18がクロムである時、物品10はピュータの色に見えて(即ち、美的効果を有する)、最表層14は、例えば、着色剤としてのカーボンブラック顔料を介して、若干の黒色の色味を含む。一般的に、裏地層18は非極性〜超非極性として分類される;しかしながら、ある実施態様において、特にある金属材料、例えば、鋼及び/又はアルミニウムを裏地層18として使用する場合、裏地層18は極性である。裏地層18は、コーティング技術分野の当業者に理解されるように、(例えば、非極性であるために)非反応性であると分類されてよい。典型的には、裏地層18の表面22は、非極性であり(さらに本明細書において裏地層18の最表部22を指す)、連結層16に接着する。裏地層18はまた全体として非極性であり、単にその表面22ではないことが理解されるべきである。上述のように、最表層14と裏地層18の極性が異なる時、例えば、最表層14が極性であり且つ裏地層18の表面22が非極性である時、連結層16は最表層14と裏地層18との間に優れた接着強さを与える。
【0039】
使用される場合、基材層20は一般的に可撓性材料、典型的にはプラスチック、更に典型的には熱可塑性プラスチックから形成される;しかしながら、熱硬化性樹脂、並びに当技術分野で公知の他の材料、例えば、複合材料もまた使用されてよい。ある実施態様において、基材層20はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から形成される。様々な種類及び等級のABSを、基材層20を製造するために使用してよい。本発明のための他の好適なプラスチックとして、ポリカーボネート(PC)、ABS/PC、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、TPO/PP、ポリアミド(PA)、ABS/PA、ポリ(p−フェニレンオキシド)(PPO)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリビニルクロリド(PVC)、塩素化PVC(CPVC)、アルファメチルスチレンアクリロニトリル(AMSAN)、反応射出成形(RIM)材料(例えば、RIMポリウレタン)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、エラストマー、バルク成形コンパウンド(BMC)、シート成形複合材料(SMC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチル−テレフタレート(PBT)、Noryl(登録商標)、Xenoy(登録商標)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のためのプラスチック材料は、LURAN(登録商標)(SAN)、LURAN(登録商標)S(ASA)、TERLURAN(登録商標)(ABS)、TERBLEND(登録商標)(ABS/PA)等の種類に応じて種々の商標の下で、様々な供給源、例えば、BASF社から市販されている。特定の例の好適な等級のABSは商標MAGNUM(登録商標)の下で、ミシガン州、ミッドランドのDow Chemical社からも市販されている。基材層20が前述のプラスチック材料の2つ以上の下層(示さず)から形成されてよいことが理解されるべきである。
【0040】
物品10を製造するために、基材層20は一般的に使用される場合に提供される。上述のように、基材層20はプラスチック、例えば、ABSから形成されてよい。物品10の使用及び用途に応じて、基材層20は種々の大きさ、厚さ、及び形状であってよい。基材層20は成形及び形成技術分野で公知の方法、例えば、限定されずに、射出成形及び反応射出成形、圧縮成形、押出し成形、及び熱成形技術によって形成することができる。
【0041】
次に、裏地層18が提供され、典型的には、例えば、金属組成物を基材層20に適用して裏地層18を形成することによって、基材層20に適用される。裏地層18は当技術分野で公知の種々の方法によって基材層20に適用されてよい。例えば、裏地層18は基材層20に成形、押出し、又は積層されてよい。裏地層18がクロムを含む実施態様において、クロムは種々の方法、例えば、浸漬、成形、及び蒸着(例えば、物理的蒸着法によって及び化学的蒸着法によって)によって基材層20の上に堆積されてよい。基材層20の上にクロムを堆積して裏地層18を形成するための種々の方法は米国特許第6,277,494号(Mokerji)に開示されており、この開示は本明細書にそのまま援用される。基材層20及び裏地層18を含む予備形成された部分もまた、様々な供給源、特に自動車用途のために使用されるそれらの供給者から市販されていることが理解されるべきである。
【0042】
ある実施態様において、裏地層18がクロムである時、裏地層18は連続層の材料によって構成されており、これは多段階の浸漬プロセスによって達成することができる。換言すると、クロム処理プロセス又は「クロム処理」は、裏地層18を形成するために使用することができる。一般的に、クロム処理プロセスはクロムを使用し、従って裏地層18の最も外側のクロム層を形成する。クロム層は典型的には裏地層18の最も外側の表面22の上に酸化物を形成し、これはより低い層のクロムの保護に役立つ。他の実施態様において、裏地層18は2つ以上の下層の様々な組み合わせを含む。ある実施態様において、裏地層18は上に記載且つ例示されたクロムを含み、基材層20はABSを含む。特定の理論により拘束又は制限されることなく、裏地層18の表面22は幾らかの多孔性を有すると考えられる。接着促進組成物は表面22(非極性)にわたりウェルを湿潤させ、且つ連結層16と裏地層18の表面22との間の接着強さを増大させるために小さな空隙中に引き込まれると考えられる。特定の理論により拘束又は制限されることなく、裏地層18は酸化状態(例えば、Cr+3、Cr+2、Cr+6)などの様々な状態であると考えられる。かかる酸化状態は、金属組成物及び接着促進組成物を形成するために使用される特定の成分及びその量に応じて、裏地層18上の連結層16の接着強さを増大させることができると考えられる。例えば、連結層16の電子雲が裏地層18と結合し、これがそれらの間の接着強さを増大させると考えられる。ある実施態様において、裏地層18は上で例示されたように、酸化状態でクロム(Cr)を含む。
【0043】
裏地層18は形成後に洗浄及び/又は表面処理してよい。ある実施態様において、裏地層18は複数の脱イオン水洗浄を受けて、裏地層18の最表面22上に存在し得るイオン化を解消する。これらの実施態様において、裏地層18の最表面22は一般的に洗浄後も無孔の非極性表面22のままである。裏地層18は、上述の洗浄に加えて又はそれに代替して、種々の方法によって表面処理してよい。表面処理方法はコーティング技術分野で当業者に公知であり且つ理解されており、該方法は典型的には裏地層18の表面エネルギーを変えるために使用される。好適な表面処理は種々の方法によって得られてよく、コロナ処理、火炎処理、化学処理などを含むがこれらに限定されない。ある実施態様において、コロナ処理は裏地層18の表面処理の間に水及び/又は溶媒の注入を含んでよい。ある実施態様において、裏地層18は、裏地層18の最表面22を極性にするために、又は少なくとも最表面22の極性を増大させるために処理される。ある実施態様において、窒素コロナを使用して最表面22を処理し、処理の間に2質量パーセントのN−メチルピロリドン(NMP)水溶液を窒素コロナ中に注入し、最表面22の極性を増大させる。
【0044】
更に典型的には、ある実施態様において、火炎処理及び/又はコロナ処理工程は使用されない。これらの実施態様は製造コストを削減するために有用であり、かかる処理が本発明の方法から除外される場合、裏地層18の表面22への連結層16の接着強さは一般的に増大すると考えられる。加えて、裏地層18の極性も影響を受けず、即ち、変化しない/非極性のままである。
【0045】
次に、接着促進組成物を典型的には裏地層18に適用して連結層16を形成する。接着促進組成物をコーティング技術分野において公知の種々の方法によって裏地層18に適用してよい。これらの方法は、限定されずに、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロール塗工、カーテン塗工、及び類似物を含む。吹付け塗り又は吹き付け塗装は典型的には自動車の部品及びトリムとして使用される物品10を製造するために使用される。吹き付け塗装はスプレーガン、スプレーベル、噴霧器、例えば、静電回転型ベル状(ESRB)噴霧機などの使用を介して達成することができる。
【0046】
次に、コーティング組成物は典型的には最表層14を形成するために連結層16に適用される。ある実施態様において、連結層16はなお湿潤しており、即ち、連結層16を形成する接着促進組成物の組成に応じて乾燥されないか又は硬化されない/完全に硬化されないかのいずれかであるが、他の実施態様において、連結層16は乾燥/硬化される。層に「ウェットオンウェット」又は「ウェットオンドライ/硬化」を施すことは、コーティング技術分野の当業者に理解されている。更に典型的には、連結層16は、たるみなどの欠点を防ぐために、コーティング組成物を塗布する前は半硬化乾燥(実質的に乾燥)である。当技術分野で理解されるように、半硬化乾燥又は乾燥とは、単に揮発物(例えば、溶媒)の蒸発分離を意味するのに対して、硬化とは、揮発物の蒸発分離と特定の組成の化学成分の間に生じる化学反応との両方を意味する。コーティング組成物はコーティング技術分野において公知の種々の方法によって連結層16に塗布してよい。これらの方法は、限定されずに、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロール塗工、カーテン塗工、及び類似物を含む。吹付け塗り又は吹き付け塗装は典型的には自動車の部品及びトリムとして使用される物品10を製造するために使用される。吹き付け塗装はスプレーガン、スプレーベル、噴霧器、例えば、ESRB噴霧機などの使用を介して達成することができる。最表層14が2つ以上の下層を含む場合、該下層は互いに「ウェットオンウェット」又は「ウェットオンドライ/硬化」を施されてよい。
【0047】
接着促進組成物及びコーティング組成物(即ち、複数の組成物)は、乾燥フィルムを形成する厚さで又はコーティング技術分野の典型的な硬化フィルム厚さ、例えば、約0.01〜約5.0ミルで塗布することができる。最表層14の典型的な厚さT1は使用されるコーティング組成物によって変わり得る。最表層14の典型的な厚さ、例えば、クリアコート層14又は一層のトップコート14は、約0.5〜約3.0、更に典型的には約1.5〜約2.5、更に典型的には約1.6〜約2ミルである。連結層16の典型的な厚さT2は約0.1〜約3、更に典型的には約0.1〜約1、更に一層典型的には約0.1〜約0.5、最も典型的には約0.1〜約0.3ミルである。裏地層18及び基材層20は一般的に厚さT3、T4であり、これは当技術分野によく見られるが、物品10の用途に応じて、厚く又は薄くしてよい。基材層20が一般的に、構成、即ち、物品10の形状のために、ある特定の厚さT4を有していないことが理解されるべきである。層14、16、18、20それぞれの厚さが均一であってよい又は変化してよいことも理解されるべきである。それに加えて、2つ以上の層14、16、18、20がほぼ同じ厚さであってよいか、又は層14、16、18、20の全てが異なる厚さであってよい。
【0048】
本明細書に記載された接着促進組成物は一般に乾燥されており、本明細書に記載されたコーティング組成物は典型的には熱硬化されて物品10の層14、16を形成する。乾燥及び/又は硬化温度は使用される特定の組成物、溶媒の種類及び量(使用される場合)などに応じて変わるが、これらの温度は一般的に約100°F〜約270°Fの間、更に典型的には約150°F〜約230°Fの間の範囲である。温度は一般的に、基材層20の反りもしくは変形又は形成中(又は形成後)の他の層14、16、18のうち1つの劣化を防ぐために制御される。乾燥及び/又は硬化時間は、使用される特定の成分及び組成物、並びに物理的パラメーター、例えば、層14、16の厚さT1、T2に応じて変わるが、典型的な時間は約15〜約60分、更に典型的には約20〜約40分、最も典型的には約20〜約30分の範囲である。有利な条件、即ち、有利な乾燥及び/又は硬化の温度及び時間は、使用される特定の組成物並びに裏地層18及び基材層20によって変わり、且つ日常的な実験及び試験によって測定することができる。ある実施態様において、連結層16及び最表層14は約180°Fの温度で約25分で硬化する。種々の方法、例えば、オーブンの使用、又はコーティング技術分野で公知の他の方法が層14、16の熱硬化に使用されてよい。物品10の製造方法が上で記載且つ説明されているが、物品10は当技術分野で公知の他の方法によって製造されてよく、本発明の物品10はある特定の製造方法に限定されないことが理解されるべきである。
【0049】
本発明の物品を例示する次の実施例は、本発明を例示するが限定しないことを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は自動車に取り付けられた複数の本発明の複合物品の透視図である。
【図2】図2は、本発明による複合物品の実施態様の分解断面図である。
【図2A】図2Aは図2に描かれた複合物品の断面図である。
【図3】図3は、本発明による複合物品の別の実施態様の断面図である。
【図4】図4は、本発明による複合物品の別の実施態様の分解断面図である。
【図4A】図4Aは図4に描かれた複合物品の断面図である。
【0051】
実施例
6つの異なる複合物品を3部ずつ製造する。6つの異なる複合物品(複合材No.1〜6)を以下の表Iに示す。複合材No.1及び2は対照の複合物品であり、複合材No.3及び4は本発明のある実施態様を例示し、複合材No.5及び6は本発明の別の実施態様を例示する。
【表1】

【0052】
全ての複合物品(複合材No.1〜6)は4×4の板を使用して製造されており、この板は自動車トリム製造業者から供給され、そしてABSから形成された基材層、及びクロムから形成された裏地層を含み、これは基材層の上にめっきされる、即ち「クロムめっき」されている。(クロムの)裏地層は、クロムの層を含む裏地層の実施態様を説明しながら上で記載且つ説明されるような、複数の下層を含む。
【0053】
複合材No.2、4及び6の板を、脱イオン化水洗浄を介して洗浄し、窒素コロナ処理を介して表面処理し、処理の間、2質量パーセントのN−メチルピロリドン(NMP)を有する水溶液の注入を用いる。複合材No.1、3及び5の板を洗浄するが、予め処理しない、即ち、火炎又はコロナ処理を使用しない。このように、複合材1、3及び5の表面は一般的に非極性であるが、複合材2、4及び6の表面は一般的に表面処理のために極性である。
【0054】
複合材No.1、2、5及び6は、裏地層の上に配置された、第1の塗料層(クリアコート層1)を含む。クリアコート層1は軟質の2Kウレタン/アクリルクリアコート塗料組成物から形成されており、ニュージャージー州、Florham ParkのBASF社から市販されている。
【0055】
複合材No.5及び6は、更に裏地層とクリアコート層1との間に配置された連結層を含む。連結層は、約15質量部のCPOをハロゲン化ポリオレフィンとして、約83質量部のAromatic100を溶媒として、及び約2質量部のブチルセロソルブを溶媒として含む接着促進組成物から形成されている。CPOは無水マレイン酸で改質されており且つHARDLEN(登録商標)の商標で、東洋化成工業株式会社(大阪、日本)から市販されている。Aromatic100はテキサス州、IrvingのExxon Mobil社から市販されている。ブチルセロソルブは種々の供給源から市販されている。
【0056】
複合材No.3及び4は、裏地層の上に配置された、第1の塗料層(クリアコート層2)を含む。クリアコート層2は、連結層を形成するために使用される40質量部の接着促進組成物及びクリアコート層1を形成するために使用される280質量部の2Kウレタン/アクリルクリアコート塗料組成物から形成されている。
【0057】
全ての複合物品(複合材No.1〜6)は、それぞれの第1層の上に配置された第2の塗料層を含み、この第2の塗料層はクリアコート層1と同じ塗料組成物から形成される。
【0058】
板はオフラインで塗料及び接着促進組成物が吹付けられ、次いでオンラインに置かれてコーティング技術分野で使用される通常のフラッシュ/焼き付けサイクルを通過する。フラッシュ/焼き付けサイクルは様々な温度、例えば、約180°Fにおいてオーブン中で生じる。連結層及びクリアコート層のフラッシュめっき及び硬化に必要な最適な温度及び時間は日常的な実験を通して見出される。
【0059】
複合物品の接着強さを試験する。複合物品の接着強さを試験するために、10日間の湿度及び接着試験をGM4465Pに従って行い、その際、複合物品への損傷をシミュレートするためにクロスハッチのスクラッチが層の中に切り込まれる。複合物品の接着強さを更に試験するために、熱衝撃試験をGM9525Pに従って行い、その際、複合物品への損傷をシミュレートするために複合物品がクロスハッチでスクラッチされる。複合物品の最初のテープ接着強さはGM9071P、方法Bに従って行われる。複合物品のウェザロメーター(WOM)試験をBORO BOROフィルターを使用してJ−1960に従って行う。
【0060】
10日間の湿度及び接着試験後の複合物品の外観検査の時に、複合材No.1及び2は多くの中間ブリスタ及びおおよそ0%の接着を有する(例えば、クロスハッチで、クリアコート層1は完全に裏地層から離層する)。複合材No.3及び4は多くのミクロブリスタ及びおおよそ0%の接着を有する(例えば、クロスハッチで、クリアコート層2は完全に裏地層から離層する)。複合材No.5及び6はごくわずか〜ゼロのミクロブリスタ及び100%の接着を有する(例えば、クロスハッチにおいて、クリアコート層1及び連結層は完全に裏地層に接着する)。熱衝撃試験後の複合物品の外観検査の時に、複合材No.1及び2は接着不良を有する(例えば、クリアコート層1は実質的に裏地層から離層する)。複合材No.3及び4は接着不良を有する(例えば、クリアコート層2は実質的に裏地層から離層する)。複合材No.5及び6はゼロ〜ごくわずかな接着不良を有する。要するに、複合材No.5及び6は、複合材No.1〜4に関する熱衝撃及び湿度試験において劇的に改善された接着能力を示し、これらは典型的には深刻な破損状態として板の供給者によって記載されている。表IIは以下に複合材No.1と5の間の物理試験データを例示する。例示されるように、複合材No.5は、特に湿度試験条件下で、複合材No.1に対して優れた接着特性を有する。
【表2】

【0061】
3つの追加の複合物品を3部ずつ製造する。3つの複合物品(複合材No.7〜9)を、以下の表IIIに示す。複合材No.7は対照の複合物品であり、複合材No.8は本発明のある実施態様を例示し、複合材No.9は本発明の別の実施態様を例示する。
【表3】

【0062】
全ての複合物品(複合材No.7〜9)は4×4の板を使用して製造されており、この板は自動車トリム製造業者から供給され、そしてABSから形成された基材層、及びクロムから形成された裏地層を含み、これは基材層の上にめっきされる、即ち「クロムめっき」されている。(クロムの)裏地層は、上で記載且つ説明されるように、複数の下層を含む。
【0063】
全ての複合材No.7〜9の板は脱イオン水洗浄を介して洗浄される。複合材No.7及び8の板は窒素コロナ処理を含み、処理の間に2質量パーセントのN−メチルピロリドン(NMP)を有する水溶液の注入を行い、それによってそれらの表面の極性が増大する。複合材No.9の板は窒素コロナ処理せず、それによってそれらの表面が影響を受けないようにする、即ち、それらを非極性のままにする。
【0064】
複合材No.7は、裏地層の上に配置された、第1の塗料層(クリアコート層3)を含む。クリアコート層3は軟質の2Kウレタン/アクリルクリアコート塗料組成物から形成されており、これはインディアナ州エバンスビルのRed Spot Paint & Varnish社から市販されている。クリアコート層3はカーボンブラックの色付けを含む。
【0065】
複合材No.8及び9は、更に裏地層とクリアコート層1との間に配置された連結層を含む。連結層は上述のものと同じである。
【0066】
複合材No.8及び9は、連結層の上に配置された、第1の塗料層(クリアコート層4)を含む。クリアコート層4はクリアコート層1の2Kウレタン/アクリルクリアコート塗料組成物から形成されており、且つクリアコート層4の色付けのために約0.01質量%のカーボンブラック顔料を含む。
【0067】
全ての複合物品(複合材No.7〜9)は、それぞれの第1層の上に配置された第2の塗料層を含み、この第2の塗料層はそれぞれのクリアコート層3及び4と同じ塗料組成物から形成される。
【0068】
板はオフラインで塗料及び接着促進組成物が吹付けられ、次いでオンラインに置かれてコーティング技術分野で使用される通常のフラッシュ/焼き付けサイクルを通過する。フラッシュ/焼き付けサイクルは様々な温度、例えば、約180°Fにおいてオーブン中で生じる。連結層及びクリアコート層のフラッシュめっき及び硬化に必要な最適な温度及び時間は日常的な実験を通して見出される。
【0069】
複合物品の接着強さを試験する。複合物品の接着強さを試験するために、10日間の湿度及び接着試験をGM4465Pに従って行い、その際、複合物品への損傷をシミュレートするためにクロスハッチのスクラッチが層の中に切り込まれる。複合物品の接着強さを更に試験するために、熱衝撃試験をGM9525Pに従って行い、その際、複合物品への損傷をシミュレートするために複合物品がクロスハッチでスクラッチされる。表IVは以下に複合材No.7〜9の間の物理試験データを例示する。QUV試験、又は促進WOM試験をJ−2020に従って行う。
【表4】

【0070】
500時間のWOM及びQUV試験の後、接着が良好であり、光沢が良好であり、そして外観検査の時に、外観が良好である。色ずれは視覚的に認められず、比色計を使用して複合材No.7〜9のわずかな淡色化が検知される。複合物品の接着強さを更に試験するために、熱衝撃試験をGM9525Pに従って行い、その際、複合物品への損傷をシミュレートするために複合物品がクロスハッチでスクラッチされる。外観検査の時に、複合材7は例えば、50%より大きな深刻な離層を有し、複合物品8及び9は両方とも例えば、5%未満のわずかな離層を有する。
【0071】
本発明は例示的な方法で本明細書に記載されてきたが、使用された用語は、限定ではなく、本質的には説明の言葉であることを意図していることが理解されるべきである。本発明の多くの修正及び変更は、上記の教示に鑑みて可能である。本発明は、添付した特許請求の範囲内にとりわけ記載されている以外にも実施されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合物品であって:
クリアコートコーティング組成物から形成された実質的に透明な最表層;
前記実質的に透明な最表層に隣接して配置され且つ前記複合物品に美的な効果を付与する金属組成物から形成された裏地層;及び
前記実質的に透明な最表層と前記裏地層との間に配置された連結層(前記連結層は前記実質的に透明な最表層及び前記裏地層を接着するために、ハロゲン化ポリオレフィンを含む接着促進組成物から形成される);
を含み、
その際、前記クリアコートコーティング組成物は、アクリル塗料組成物、ウレタン塗料組成物、ウレタン/アクリル塗料組成物、カルバメート塗料組成物、メラミン塗料組成物、ポリエステル塗料組成物、及びそれらの組み合わせの群から選択される、複合物品。
【請求項2】
前記金属組成物がクロムを含む、請求項1記載の複合物品。
【請求項3】
前記金属組成物が銅、すず、チタン、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びそれらの合金の少なくとも1つを含む、請求項1記載の複合物品。
【請求項4】
前記ハロゲン化ポリオレフィンが塩素化ポリオレフィンである、請求項1から3までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項5】
前記塩素化ポリオレフィンが無水マレイン酸で改質された、請求項4記載の複合物品。
【請求項6】
前記塩素化ポリオレフィンが100質量部の前記塩素化ポリオレフィンを基準として約3〜約35質量%の塩素含量を有する、請求項4又は5記載の複合物品。
【請求項7】
前記裏地層が、非極性であり且つ前記連結層に接着される表面を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項8】
前記実質的に透明な最表層が極性である、請求項1から7までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項9】
前記接着促進組成物が非極性である、請求項1から8までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項10】
前記クリアコートコーティング組成物がウレタン/アクリル塗料組成物である、請求項1から9までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項11】
前記実質的に透明な最表層が、前記複合物品に美的な効果を更に付与する着色剤を更に含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項12】
前記連結層が実質的に透明であり且つ約0.1〜約1ミルの厚さを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項13】
前記実質的に透明な最表層が約0.5〜約3.0ミルの厚さを有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項14】
前記実質的に透明な最表層の反対側に配置され且つ前記裏地層に接着された基材層を更に含み、前記基材層は熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項15】
前記実質的に透明な最表層の反対側に配置され且つ前記裏地層に接着された基材層を更に含み、前記基材層はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリプロピレン(PP)、及びそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項16】
前記連結層が前記実質的に透明な最表層と前記裏地層との両方に直接接触している、請求項1から15までのいずれか1項記載の複合物品。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の複合物品の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【公表番号】特表2011−502815(P2011−502815A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532043(P2010−532043)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/012252
【国際公開番号】WO2009/058286
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】