説明

充填コンクリートの漏洩防止構造

【課題】 鋼管杭基礎と海洋構造としてのジャケットの鋼管柱との連結作業を短期間で行うとともに、鋼管杭と鋼管柱との連結部の隙間に充填されるコンクリートの漏洩を確実に防止する。
【解決手段】 海底地盤に先行打設された鋼管杭20の頭部を、所定重ねしろで鋼管柱11で覆い、鋼管杭20と鋼管柱11の隙間6にコンクリートを充填して連結する際、連結部5にコンクリート漏洩防止部30を設ける。漏洩防止部30は、鋼管杭20の外周面に設けられたシール支持部材12と、鋼管柱11の内周面に外縁が支持されるように、シール支持部材12の上方に設けられたリング状の弾性シール板13とを備える。弾性シール板13が内縁側の一部が中央開口部を貫通した鋼管杭20と密着してコンクリート15の漏洩を防止する際、シール支持部材12は、コンクリートの打設時に生じた弾性シール板13の弾性変形状態を保持し、その後の変形進行を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケット構造物の鋼管杭連結部において、鋼管杭とジャケット下端の鋼管柱とを接合するために打設される充填コンクリートが海中に漏洩しないようにするための漏洩防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の係留設備や桟橋、あるいは各種洋上構造物の基礎架台として、ジャケット構造物と呼ばれる、多数本の鋼管杭に支持された立体格子状の鋼管トラス構造物がある。ジャケット構造物が大型構造物となる場合には、工場で所定のブロックに製作され、設置位置まで搬送され、洋上において全体構造としてのジャケット構造物が組み立てられる。
【0003】
すなわち、洋上をクレーン船等で搬送されたトラス形状の各ブロックは、あらかじめ所定位置に先行打設された鋼管杭群位置で、トラスの柱部材を構成する鋼管柱の下端が対応する鋼管杭の上端に接合され、さらに鋼管杭に支持された各ブロック間を連結することでジャケット構造物の全体構造が構築される。
【0004】
図1は、対象海域1に構築されたジャケット構造物10の一例を示した模式側面図である。ジャケット構造物10は、工場製作した立体トラス構造からなるジャケット本体10Aとその上に構築されるスラブ状の上部工10Bとからなり、あらかじめ海底地盤2の支持層3に支持されるように、所定位置に先行打設された複数本の鋼管杭20に支持されている。一般に、ジャケット本体10Aの鋼管柱11と鋼管杭20とは、連結部5において、鋼管柱11の内周面と鋼管杭20の外周面との間にコンクリートやモルタルを充填して接合され、一体化される。
【0005】
図7(a),(b)は、従来のジャケット構造物における、ジャケット本体10Aの鋼管柱11と、先行打設された鋼管杭20との連結部5(図1参照)の構造に着目した部分拡大断面図である。図7(a)は、漏洩防止シート101を用いた充填コンクリートの漏洩防止構造の一例を示している。この従来例では、ジャケット構造物10の立体トラスの一部の鋼管柱11の下端11aと鋼管杭20の周面20aとを合成樹脂製の漏洩防止シート101で覆い、この漏洩防止シート101をバンド(図示せず)で鋼管杭20と鋼管柱11に結束した状態で、鋼管柱11の外周面と鋼管杭20の内周面との隙間6に、間詰め用の充填コンクリート15を打設して一体化させている。
【0006】
図7(b)は、他の従来例として、連結部5において、当てプレート102を鋼管柱11の下端11aに取り付け、鋼管柱11と鋼管杭20との隙間6からの充填コンクリート15の漏洩を防止する構造を示している。この当てプレート102は海中で鋼管杭20の周面20aに溶接しておき、さらに海中で鋼管柱11の下端11aを当てプレート102上に載せた状態で両者を溶接した後に、隙間6に充填コンクリート15を打設する。
【0007】
このように、ジャケット構造物では、ジャケット本体の鋼管柱と、先行打設された鋼管杭とを連結する場合、鋼管柱の内周面と鋼管杭の外周面との間の隙間にコンクリートやモルタルを充填して接合し、一体化するのが一般的である。
【0008】
また、出願人は類似技術として、鋼構造建物において、溶接接合することなく、下節柱と上節柱とを接合する方法として、柱接合部にモルタルを打設して上下の柱を連結させる鋼管柱の接合方法を提案している(特許文献1参照)。この発明は、内部柱が鋼管杭に相当し、上節柱が鋼管柱に相当し、その隙間にモルタルを充填して両者を接合することで上下の柱(鋼管)を接合するという類似点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−322276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7(a)に示した漏洩防止構造を採用した場合、コンクリートの重量が作用する漏洩防止シート101の強度を考慮すると、下端から1m程度の高さで充填コンクリート15を打設して固化させた後に、その上部の充填コンクリート15を打設することが好ましい。そのため、隙間の高さ(長さ)によっては、充填コンクリート15を2回あるいは複数回に分けて打設する必要があり、充填コンクリートの施工期間が長くなるとともに、施工コストも増加するという問題がある。
【0011】
また、図7(b)に示した漏洩防止構造を採用すると、鋼管柱11と当てプレート102を海中で溶接する必要があり、荒天の場合には溶接作業が困難になり、作業に遅延が生じるという問題がある。
【0012】
特許文献1に開示された接合方法では、上節柱と、下節柱とは同一外径からなり、リングプレートを配置した場合でも上下の柱間は密着した状態にできる。また内部柱の下端も下節柱にメタルタッチさせるようになっているので、モルタルが充填される接合部において、特にモルタルの漏洩防止手段を講じなくてもよい構造となっている。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、特に充填するコンクリートの漏洩を確実に防止でき、接合作業が迅速に行えるようにした、ジャケット構造物の連結部における充填コンクリートの漏洩防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の充填コンクリートの漏洩防止構造は、海底地盤に支持されるように先行打設された杭の頭部を、所定重ねしろを設けて覆い、前記杭との隙間に充填されたコンクリートにより前記杭と接合される鋼管柱を備えた洋上鋼製構造物における充填コンクリートの漏洩防止構造であって、前記杭の外周面に設けられたシール支持部材と、前記鋼管柱の内周面に外縁が支持されるように前記シール支持部材の上方に設けられ、中央開口部を前記杭が貫通するリング状の弾性シール板とを備え、前記弾性シール板は、内縁側の一部が前記中央開口部を貫通した杭と密着して前記コンクリートの漏洩を防止し、前記シール支持部材は、前記コンクリートの打設時に生じた前記弾性シール板の弾性変形状態を保持し、その後の変形進行を抑止することを特徴とする。
【0015】
他の発明としての充填コンクリートの漏洩防止構造は、海底地盤に支持されるように先行打設された杭の頭部を、所定重ねしろを設けて覆い、前記杭との隙間に充填されたコンクリートにより前記杭と接合される鋼管柱を備えた洋上鋼製構造物における充填コンクリートの漏洩防止構造であって、前記鋼管柱の内周面に設けられたシール支持部材と、前記シール支持部材上に固定され、中央開口部を前記杭が貫通するリング状の弾性シール板とを備え、前記弾性シール板は、内縁側の一部が前記前記中央開口部を貫通した杭と密着して前記コンクリートの漏洩を防止し、前記シール支持部材は、前記コンクリートの打設時に生じた前記弾性シール板の弾性変形状態を保持し、その後の変形進行を抑止することを特徴とする。
【0016】
前記弾性シール板は、無応力状態において内径が前記杭の外径よりも小さくすることが好ましい。
【0017】
前記鋼管柱の内周面には、前記杭との隙間を形成し、前記コンクリートを打設するための空間を確保するスペーサを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基礎としての鋼管杭と海洋構造としてのジャケットの鋼管柱との間の隙間に充填されるコンクリートが漏洩するのを確実に防止でき、連結部における鋼管杭と鋼管柱との連結を短期間で施工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の充填コンクリートの漏洩防止構造を適用したジャケット構造物の一例を示した模式全体構造図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造を示した断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造とその施工手順((a)〜(b))を示した断面図。
【図4】図3中の(IV)を拡大した断面図であり、(a)はコンクリート打設前の断面図、(b)はコンクリート打設後の断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造と、その施工手順((a)〜(c))を示した断面図。
【図6】図5中の(VI)を拡大した断面図であり、(a)はコンクリート打設前の断面図、(b)はコンクリート打設後の断面図。
【図7】(a),(b)は、ジャケット本体と杭との連結部に着目した従来のジャケット構造物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造について、添付図面を参照して説明する。図2は、第1の実施形態として、図1に示したジャケット構造物10の連結部5を拡大して示した断面図である。
【0021】
同図に示したように、連結部5の下端に設けられた充填コンクリートの漏洩防止部30は、鋼管杭20の外周面に沿って取り付けられたシール支持部材12と、鋼管柱11の内周面に固定部材17を介して取り付けられたシール板13とからなる。
【0022】
シール支持部材12は、鋼管杭20の外径とほぼ等しい内径で、隙間6よりわずかに小さい幅を有するリング状に切り出された鋼板からなる。そして鋼管杭20の外周面に対して鍔状をなすように、鋼管杭20の外周の所定高さに溶接されている。シール支持部材12は、上端からH1mの高さの鋼管杭20の外周面に取り付けられている。そして、後述するように、隙間6内に打設された充填コンクリート15がまだ固まらない段階で生じるコンクリート自重により変形したシール板13を、その上面で支持する。
【0023】
シール板13は、たとえばクロロプレンゴム系の合成ゴムが用いられている。シール板13は、所定幅を有するリング状に形成されており、無応力状態において、その外径は鋼管柱11の内径とほぼ等しく、内径は鋼管杭20の外径よりも小さい。鋼管柱11の内周面には支持プレート16(図4)が取り付けられており、シール板13は支持プレート16にボルト17で固定されている。
【0024】
鋼管杭20、鋼管柱11には、既製鋼管あるいは鋼板を管状に曲げ加工し、その継目を溶接した加工鋼管が用いられている。その直径寸法は、先行打設された鋼管杭20の上端に鋼管柱11の下端が所定の隙間6を有して挿入された状態で、充填コンクリートにより固定できる程度の寸法関係に設定されている。
【0025】
そして、図2に示したように、鋼管杭20と鋼管柱11との間には、充填コンクリート15が施工されている。この充填コンクリートの付着力により、鋼管杭20と鋼管柱11とが一体化されている。また、供用時に連結部5にせん断力等が作用した場合にも、この充填コンクリートが抵抗して連結部の連結状態が保持される。充填コンクリート15は連結状態を保持するために必要な強度のコンクリートを用いればよい。
【0026】
図3は、図2に示した連結部5の組立手順(図3(a),(b))と組立後の形態((c))とを示した断面図である。図3(a)に示したように、鋼管杭20はあらかじめ海底地盤の所定位置に先行打設されている。この鋼管杭20に対して、図中下向き矢印で示したように、図示しないクレーン等に吊持されたジャケット本体10(図2)の鋼管柱11を降下させ、その下端を鋼管杭20の上端に挿入していく。なお、無応力状態において、シール板13の開口13cの直径は鋼管杭20の外径に比べて小さい。そのため、鋼管杭20はシール板13は、弾性変形して中央部に形成された開口13cを押し広げるように挿入されていき、鋼管杭20の全周とシール板13の底面側13aの開口13cからの所定範囲とが密着した状態となる。
【0027】
図3(b)は鋼管杭20の鋼管柱11への挿入が完了した状態を示している。鋼管柱11の内周面の鋼管杭20の上端に対応する位置には、レベル調整部18が取り付けられている。このレベル調整部18は、鋼管杭20の上端に当接してジャケット本体10の姿勢を調整する部材である。レベル調整部18は、たとえば所定長さのL形鋼ピースからなり、鋼管杭20が許容範囲内で傾いて打設された場合、その傾斜分を考慮して、その傾斜分をキャンセルしてジャケット本体(図示せず)が水平となるように鋼管柱11内周面に取り付けたり、レベル調整部18と鋼管杭20の天端との間にライナープレート(図示せず)を挿入することで、連結部5での鋼管柱11の水平状態を調整することができる。また、鋼管柱11の内周面にはスペーサ14が取り付けられており、鋼管杭20と鋼管柱11との間の隙間6が均等に確保されるようになっている。
【0028】
図4は、図3中に示した破線範囲(IV)の充填コンクリートの漏洩防止部30を拡大した断面図である。図4(a)は充填コンクリート打設前を、図4(b)は充填コンクリート打設後の状態を示している。図4(a)に示したように、シール板13は強制的に上方に折り曲げられた状態で、底面側13aが鋼管杭20の外周面と密着している。シール板13の合成ゴム材の板厚は、隙間6の距離Cに応じて、シール板13が変形した際にシール板13の開口側が十分変形して鋼管杭20に密着できる好適な厚さを設定することが好ましい。
【0029】
図4(a)の状態から、鋼管柱11と鋼管杭20との隙間6に充填コンクリート15が充填される。隙間6内に打設された未硬化状態のコンクリートの自重により、シール板13は下方へ押圧され、鋼管杭20との密着状態を保持しながら下方に向けて、側面視して中間位置がU字形をなすように弾性変形する。弾性変形したシール板13は底面側13aが鋼管杭20に密着しつつU字形状部13bが、図4(b)に示したように、鋼管杭20のシール支持部材12に当接する。よって、隙間6にコンクリートが打設され、自重がこれ以上増加してもシール板13はこの変形状態以上ほとんど変形しない。
【0030】
上述した漏洩防止部30によれば、以下のような効果を奏する。鋼管柱11に鋼管杭20を接合する際、シール板13の開口13c側は鋼管杭20に摺接して弾性変形する。そのため、鋼管杭20とシール板13の密着状態を強固なものとすることができる。これにより、鋼管杭20と鋼管柱11との隙間に打設した充填コンクリート15の漏洩を確実に防止することができる。
【0031】
また、本実施形態の漏洩防止部30では、リング状のシール板13の内径を鋼管杭20の外径よりも小さくし、シール板13と鋼管杭20との接触面積を所定量確保している。そのため、たとえば鋼管杭20の上端が杭中心から偏心して施工され、鋼管杭20の杭中心が鋼管柱11の設置位置の柱中心とずれた場合であっても、そのずれた分をシール板13と鋼管杭20との重なり量で調整できるため、シール板13による鋼管杭20との密着は確実に保持される。
【0032】
さらに、充填コンクリート15の自重により、U字形をなすように弾性変形するシール板13を、鋼管杭20のシール支持部材12で支持する。そのため、充填コンクリート15の自重による荷重が大きくても充填コンクリート15の漏洩を防止ことができる。そのため、所定量の充填コンクリート15を一度に施工することも可能であり、施工期間を短くすることが可能となる。
【0033】
加えて、シール板13やシール支持部材12はあらかじめ工場で所定位置に取り付けられるため、基本的に海中での取付作業を必要としない。そのため、鋼管柱11と鋼管杭20との接合作業を効率よく行うことができ、施工期間の短縮、工事コストの低減を図ることができる。
【0034】
なお、上述した漏洩防止部30では、シール支持部材はリング状部材であったが、たとえば、所定長さのピースからなるシール支持部材を鋼管柱11の内周面に等間隔に配置してもよい。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る充填コンクリートの漏洩防止構造と、その施工手順((a)〜(c))を示した断面図である。なお、本実施形態の充填コンクリートの漏洩防止構造の構成部材のうち、第1の実施形態の同等部材には第1の実施形態と同一符号を付してある。
【0036】
本実施形態の漏洩防止部30(図6各図参照)は、上述した第1の実施形態の構造と異なり、シール支持部材12が鋼管柱11の内周面に取り付けられている。シール支持部材12はリング状鋼板からなり、外縁が鋼管柱11の内周面に溶接されている。シール支持部材12の内径は鋼管杭20の外径よりも小さく、後述するように鋼管杭20の施工誤差を反映して切断するための切断しろ12a(図5(b))が設けられている。
【0037】
シール板13は、第1の実施形態と同じく、リング状をなしたクロロプレンゴム系の合成ゴム板である。シール板13の外径は鋼管柱11の内径とほぼ等しく、内径は鋼管杭20の外径よりも小さい。シール板13は、シール支持部材12上に載置され、シール支持部材12にボルト17で固定されている(図5(a))。
【0038】
なお、先行打設された鋼管杭20には鉛直度、杭中心位置等、許容範囲内の施工誤差がある。このような場合であっても、ジャケット本体10(図2)を支持する鋼管柱11は、これらの鋼管杭20の施工誤差に影響を受けることなく、設計位置に高精度で設置される必要がある。本実施形態では、連結部5における鋼管杭20の設計位置からの誤差寸法を計測し、鋼管杭20が挿通する範囲のシール支持部材12の内縁側の所定範囲を切断する(図5(b)中の切断しろ12a)。たとえば、鋼管杭20が傾いて施工されている場合には、シール支持部材12は切断しろ12aは楕円状に切断される。これにより、鋼管杭20に生じた施工誤差に影響されずに、鋼管柱11を設計位置で接合することができる。
【0039】
続いて、鋼管柱11内に鋼管杭20を収容していき、図5(c)に示したように、レベル調整部材18を鋼管杭20の天端に当接させて鋼管柱11と鋼管杭20とを所定の位置関係とする。
【0040】
図6は図5中の破線範囲(VI)を拡大して漏洩防止部30を示した断面図で、(a)はコンクリート打設前の断面図、(b)はコンクリート打設後の断面図を示している。図6(a)に示したように、第1の実施形態と同様に、この漏洩防止部30においてもシール板13は上方に向いて鋼管杭20の外側面に沿うように密着する。
【0041】
図6(a)に示した設置状態から、鋼管柱11と鋼管杭20との隙間6に充填コンクリート15が充填される。充填されたコンクリートによりシール板13は下方に押し下げられるが、図6(b)に示したように、シール板13がシール支持部材12と接触することにより、それ以上の変形が抑制される(図6(b))。このようにシール支持部材12は、充填コンクリート15により下方に押し下げられたシール板13を支える機能を有している。シール板13にこのような機能を保持させるため、鋼管杭20とシール支持部材12との隙間19の距離dをシール板13の厚さtの2倍より小さくなるように、シール支持部材12を切断することが好ましい(図6(a))。これにより、シール板13が、鋼管杭20とシール支持部材12との隙間から抜け出すのを防止することができる。
【0042】
なお、本発明の充填コンクリートの漏洩防止構造は上述した2つの実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10 ジャケット本体
11 鋼管柱
12 シール支持部材
12a 切断しろ
13 シール板
14 スペーサ
15 充填コンクリート
17 ボルト
18 レベル調整部
20 鋼管杭
30 漏洩防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底地盤に支持されるように先行打設された杭の頭部を、所定重ねしろを設けて覆い、前記杭との隙間に充填されたコンクリートにより前記杭と接合される鋼管柱を備えた洋上鋼製構造物における充填コンクリートの漏洩防止構造であって、
前記杭の外周面に設けられたシール支持部材と、
前記鋼管柱の内周面に外縁が支持されるように前記シール支持部材の上方に設けられ、中央開口部を前記杭が貫通するリング状の弾性シール板と、を備え、
前記弾性シール板は、内縁側の一部が前記中央開口部を貫通した杭と密着して前記コンクリートの漏洩を防止し、前記シール支持部材は、前記コンクリートの打設時に生じた前記弾性シール板の弾性変形状態を保持し、その後の変形進行を抑止することを特徴とする充填コンクリートの漏洩防止構造。
【請求項2】
海底地盤に支持されるように先行打設された杭の頭部を、所定重ねしろを設けて覆い、前記杭との隙間に充填されたコンクリートにより前記杭と接合される鋼管柱を備えた洋上鋼製構造物における充填コンクリートの漏洩防止構造であって、
前記鋼管柱の内周面に設けられたシール支持部材と、
前記シール支持部材上に固定され、中央開口部を前記杭が貫通するリング状の弾性シール板と、を備え、
前記弾性シール板は、内縁側の一部が前記前記中央開口部を貫通した杭と密着して前記コンクリートの漏洩を防止し、前記シール支持部材は、前記コンクリートの打設時に生じた前記弾性シール板の弾性変形状態を保持し、その後の変形進行を抑止することを特徴とする充填コンクリートの漏洩防止構造。
【請求項3】
前記弾性シール板は、無応力状態において内径が前記杭の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充填コンクリートの漏洩防止構造。
【請求項4】
前記鋼管柱の内周面には、前記杭との隙間を形成し、前記コンクリートを打設するための空間を確保するスペーサが設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の充填コンクリートの漏洩防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77533(P2012−77533A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224593(P2010−224593)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】