説明

充填材入り人工芝の回収処理方法

【課題】 簡素な工程を採りつつも回収された使用後の充填材入り人工芝を確実に人工芝シートと充填材分離・回収することができ、かつ回収された人工芝シート及び充填材を再資源化できる手段を提供する。
【解決手段】 使用後の人工芝シートを充填材が入った状態で葉茎面が内側になるようにロール状に巻回して敷設面から回収した後、回収した充填材入り人工芝シートをロール状のままで又は巻き戻し若しくは巻き緩めながら水洗して人工芝シートから充填材を水中に洗い落として充填材と充填材を含まない人工芝シートとを分別回収し、該回収された充填材を含まない人工芝シートを破砕して人工芝チップとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝の回収処理方法に係り、特に、テニスコート、野球場、陸上競技場等のスポーツ施設に敷設された充填材入りの人工芝を回収して、人工芝シートと充填材に分別回収するとともに、回収された人工芝シートと充填材を再利用可能な状態とする充填材入り人工芝の回収処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工芝は運動場等のスポーツ施設の表層材料として広く利用されており、中でもパイルと呼ばれる葉茎の隙間に珪砂や川砂を充填したものはその感触が天然芝に近く優れた全天候舗装材として重用されてきた。近年では、この充填材に改良が加えられ、珪砂や川砂に加えて人造ゴム粒等の弾性骨材(ゴムチップとも呼ばれる)を混合したものが用いられるようになり、スポーツ施設を利用する者の足腰への負担が一層軽減されるようになってきている。
【0003】
この種の人工芝は、図3に示すように耐候性ポリプロピレン平織布からなる基布に長さが30mmを超える葉茎を植え込んだ人工芝シートをコンクリートなどの基礎上に敷き詰めた後、葉茎の隙間に厚さ20〜40mm程度に珪砂と弾性骨材との混合物を充填する、いわゆる置き引き工法により構築される。このように構築された人工芝は、相当の長期間、例えば7〜10年程度の耐用年数を有する。
【0004】
このように構築された人工芝は、上記耐用年数を経過し、葉茎が千切れるなど劣化すると張替え工事が行われる。従来、この張替え工事は、フォークリフトなどを用いて人工芝を剥がした後、ロール状に巻き上げ、トラックなどに積んで産業廃棄物処理場に運搬し、充填材が入った状態で埋設処分されていたが、近年、廃棄物処理に対する法規制が強化され、また、基布及び葉茎を含む人工芝シートは、充填材を分離すれば廃プラスチックとして、例えば燃料として利用可能であり、また、充填材も、例えば、建築現場の埋め戻し材等として利用可能であるため、これらを分別回収して再利用(リサイクル)使用とする提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、敷設済みの砂入り人工芝生を敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝生をパイル面側が凸になるように屈曲させてパイル相互間を目開きし、該目開き状態のパイル面から砂を分離すると共に、該砂を分離後の人工芝生から回収する敷設済み砂入り人工芝生の回収方法が開示されている。また、特許文献2には、既設の砂入り人工芝生を撤去し砂と人工芝生を分別して回収する砂入り人工芝生の回収方法であって、砂入り人工芝生が敷設した状態のままで締まった砂を解す工程と、砂入り人工芝生が敷設した状態のままで砂を回収する工程と、人工芝生を回収する工程とを備える砂入り人工芝生の回収方法が開示されている。さらに、特許文献3には、パイルが基材に植設され、上記パイルが接着材により上記基材に固定されており、上記パイルおよび上記基材が熱可塑性樹脂からなり、上記接着材には熱可塑性を示さないポリマー材料からなる非熱可塑性樹脂が用いられている人工芝を再資源化するリサイクル方法において、上記接着材を劣化させる接着材劣化工程を含む人工芝のリサイクル方法が開示されている。この特許文献3には、その実施形態の一つとして、人工芝の充填材の回収に当たり、回収された人工芝を水槽に漬けることが効果的であると記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−8314号公報
【特許文献2】特開2001−336111号公報
【特許文献3】特開2002−192120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、回収される充填材入り人工芝から充填材フリーの人工芝シートと充填材を分離・回収するには、人工芝のパイル面を目開きし、さらに、ブラッシング、叩打するなどの装置を必要とし、操作要員の確保と相俟って回収コストが高くなるという問題がある。特許文献2に記載の回収方法では、人工芝の充填材を解する装置とこの工程により解された充填材を例えば吸引除去する装置を必要とし、特許文献1と同様の問題がある。特許文献3には、人工芝の充填材を回収するには、水槽に漬けるのが効果的であると記載されているが、回収された人工芝シートを処理するに当たり、基布とパイルとの接着剤の劣化工程を含むものであって、人工芝シートの事前裁断や紫外線照射工程を必要とし、コスト高になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する問題点、特に、回収に要する費用が多大になるという問題を解決することを課題としてなされたものであって、簡素な工程を採りつつも回収された使用後の充填材入り人工芝を確実に人工芝シートと充填材分離・回収することができ、かつ回収された人工芝シート及び充填材を再資源化できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の充填材入り人工芝の回収処理方法は、使用後の人工芝シートを充填材が入った状態で葉茎面が内側になるようにロール状に巻回して敷設面から回収した後、回収した充填材入り人工芝シートをロール状のままで又は巻き戻し若しくは巻き緩めながら水洗して人工芝シートから充填材を水中に洗い落として充填材と充填材を含まない人工芝シートとを分別回収し、該回収された充填材を含まない人工芝シートを破砕して人工芝チップとすることからなる。
【0010】
上記発明において、人工芝シートを破砕は、人工芝チップが人工芝の基布部の一片が20mm以下の砕片となるように行われることとするのが好ましく、これにより人工芝チップをそのままの状態で又はペレット化して固形燃料とすることが可能になる。また、人工芝チップを、さらに基布部と葉茎部に分別し、化学工業用原料に再生処理することも可能である。
【0011】
本発明は、充填材が砂である場合及び砂とゴムチップの混合物である場合の双方に適用することができ、充填材が砂である場合には、分別回収された充填材を建設用埋戻し材に再生処理するのが好適であり、一方、充填材が砂とゴムチップの混合物である場合には、回収された充填材を水中で篩い分けしてゴムチップと砂に分離し、これらを分別回収するのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、人工芝の張替え工事に伴う回収人工芝の廃棄処置場が不要になるばかりでなく、回収された人工芝をエネルギー源や化学工業の原料あるいは建設用の埋め戻し材として再資源化できるので、地球環境の保護にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明に係る充填材入り人工芝シートの回収処理方法の実施工程をブロック図により示したものである。図1に示すように、本発明では、まず、張替え時期に到達した人工芝、すなわち使用済み人工芝シートが、充填材が入った状態で葉茎面が内側になるように、いわゆる内巻に、ロール状に巻回して敷設面から回収される。この回収は、例えば、フォークリフトなどを使用して使用済み人工芝シートを、その敷設面長手方向の一端から剥ぎ取りながら行う。なお、後に行われる回収人工芝シートの水洗作業の便を考慮すると、回収人芝シートは、幅1〜4m、長さ3〜10m程度のサイズとし、これを上記のようにロール状に巻回して敷設面から回収するのがよい。このように使用済み人工芝シートを適当なサイズで切り取り、葉茎面が内側になるようにロール状に巻き取ることにより、充填材の全量を葉茎の間に充填されている状態を維持しながら人工芝シートとともに回収できことになる。
【0014】
回収された充填材入りの人工芝シートは、人工芝シート−充填剤分離処理場(以下単に「分離処理場」という)に運搬される。分離処理場は、張替え工事の行われる施設内に設けてもよいが、施設と離れた箇所に別途設けてもよい。前者の場合には、人工芝シートの回収に使用したフォークリフトを使用して、ロール状に巻回された人工芝を運搬することができるが、後者の場合には、トラックなど適当な手段に積載して分離処理場まで運搬する。
【0015】
分離処理場には、図2に示すように、少なくとも水槽1及び回収された人工芝(ロール状に巻回されたもの)4を持ち上げ、水槽1中に繰返し浸漬することのできる回収人工芝昇降浸漬装置2を備える。水槽1は、断面が船底形又はホッパー状をなし、底部に回収人工芝4から分離された充填材貯留部3を備えるものとするのがよい。その大きさは、ロール状に巻回された回収人工芝4を余裕をもって浸漬し、これに上下動を与えることができるものとする。一般には、上面で長さ:3〜6m、幅:3〜5m、深さ:2〜3m程度とすればよい。なお、充填材貯留部3には、例えばサンドポンプ5を備え付けて分離された充填材を適宜汲出し、配管6と通じて排出できるようにするのがよい。
【0016】
回収人工芝昇降浸漬装置2は、例えばクローラークレーン等の移動式クレーンとして、回収人工芝4をロール状に巻回した状態で持ち上げ、前記水槽1中に繰返し浸漬できるようにすればよい。なお、クレーン先端には回収人工芝を水槽中で巻き戻し若しくは巻き緩め、あるいは叩打するなどの操作爪を取り付けておくのが好ましい。また、移動式クレーンに代えて油圧シャベルを利用することもできる。
【0017】
回収されロール状に巻回された充填材入りの人工芝シートは、上記の水槽と回収人工芝シート昇降浸漬装置を備える分離処理場で、水槽中に繰返し浸漬され、その際、水槽中で、適宜の叩打又は巻き緩め若しくは巻き戻し操作を施すことによって、充填材が人工芝シートの葉茎間から分離され、充填材を含まない人工芝シートとなる。分離された充填材は、水槽底部の充填材貯留部に堆積し、ここからサンドポンプにより汲み上げられ、その性質に応じて再生処理に付される。なお、充填材を含まないとは、人工芝の葉茎間に充填材がまったく残留していないという意味ではなく、後の破砕処理にとって障害にならない程度の充填材の残留は許容されるという意味である。
【0018】
充填材の分離(洗い流し)の終わった人工芝シートは、続いて破砕されて人工芝チップにされる。破砕の程度は、人工芝チップの用途により決めればよい。
【0019】
例えば、人工芝チップは、ペレット化するときは高カロリーのエネルギー源として各種燃焼炉の燃料として用いることができる。そのような用途に向ける場合には、人工芝チップが人工芝シートの基布部の一片が20mm以下の砕片となるように破砕されているのが好ましい。この程度まで破砕すれば、人工芝シートが耐候性ポリプロピレン平織布からなる基布に同じく耐候性ポリプロピレン製で長さが30mmを超える葉茎をラテックスゴム等により接着して構成した場合であっても、十分ペレット化することができる。
【0020】
一方、化学工業用原料としてのリサイクルを図る場合には、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンとラテックスゴム等の非熱可塑性樹脂とを分離することが重要になる。そのためには、人工芝チップを極力細かく破砕して、例えば、特許文献1に記載の手段を利用することができるようにするのが好ましい。かかる目的のためにも先述のように人工芝シートの基布部の一片が20mm以下の砕片となるように破砕するのがよい。
【0021】
このような破砕に用いる破砕機としては、例えば、機械工学便覧エンジニアリング編C8編環境装置141頁に記載の回転式破砕機を利用することができ、例えば、固定刃と回転刃で細断を行うハードクラッシャEH−6090などが利用できる。本発明では、破砕に先立って、人工芝シートから充填材が分離・除去されているので、上記破砕機を用いても無理なく、前述の寸法、すなわち、20mm以下に破砕することができる。
【0022】
人工芝シートは、このように破砕することにより、基布部分と葉茎部分(パイル部分)に分離することが可能になる。さらに、必要に応じて、接着剤の除去を行えば、化学工業用の再生原料として利用できるようになる。そのための分離手段については、公知の手段、例えば、特許文献3に記載の手段等を利用すればよい。
【0023】
充填材の再生処理は、充填材が砂単独である場合には、脱水して建設現場の埋め戻し用に利用するのが一般的である。しかしながら、回収された砂の粒度構成が、十分大きい場合には、乾燥後、篩に掛けて再度人工芝の充填材として利用することもできる。
【0024】
充填材が砂とゴムチップの混合物である場合には、これらをさらに分離して、砂を建設現場の埋め戻し材として、あるいは人工芝の充填材として再利用し、ゴムチップは、人工芝の充填材として利用し、あるいは老朽化が進んでいる場合には、例えばセメント工場で粒状の燃料として利用することができる。
【0025】
充填材が砂とゴムチップの混合物である場合のこれらの分離は、特に限定されるものではないが、例えば、これら混合物を水槽内に浸漬した傾斜・振動篩の上端部から供給して珪砂分を傾斜篩の篩下分として前記水槽底部に沈降させるとともに、前記弾性骨材分を洗浄水とともに流下させて弾性骨材回収槽中に導いて沈降させることによって達成することができる。
【0026】
以上、本発明をその典型的な構成に基づいて説明したが、本発明の適用対象、回収処理方法及び利用方法は、図示例に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない限り適宜変更が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る充填材入り人工芝シートの回収処理方法の実施工程をブロック図である。
【図2】人工芝シート−充填剤分離処理場の概略構成図である。
【図3】本発明の回収・処理対象となる人工芝の典型的な構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1:水槽
2:人工芝昇降浸漬装置
3:回収人工芝(ロール状に巻回されたもの)
4:充填材貯留部
5:サンドポンプ
6:配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用後の人工芝シートを充填材が入った状態で葉茎面が内側になるようにロール状に巻回して敷設面から回収した後、回収した充填材入り人工芝シートをロール状のままで又は巻き緩め若しくは巻き戻しながら水洗して人工芝シートから充填材を水中に洗い落として充填材と充填材を含まない人工芝シートとを分別回収し、該回収された充填材を含まない人工芝シートを破砕して人工芝チップとすることを特徴とする充填材入り人工芝の回収処理方法。
【請求項2】
人工芝シートを破砕は、人工芝チップが人工芝の基布部の一片が20mm以下の砕片となるように行われることを特徴とする請求項1記載の充填材入り人工芝の回収処理方法。
【請求項3】
人工芝チップは、ペレット化して固形燃料とすることを特徴とする請求項1又は2記載の充填材入り人工芝の回収処理方法。
【請求項4】
人工芝チップは、さらに基布部と葉茎部に分別し、化学工業用原料に再生処理することを特徴とする請求項1又は2記載の充填材入り人工芝の回収処理方法。
【請求項5】
充填材が砂であり、分別回収された充填材を建設用埋戻し材に再生処理することを特徴とする請求項1記載の充填材入り人工芝の回収処理方法。
【請求項6】
充填材が砂とゴムチップの混合物であり、回収された充填材を水中で篩い分けしてゴムチップと砂に分離し、分別回収することを特徴とする請求項5記載の充填材入り人工芝の回収処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−68177(P2008−68177A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247596(P2006−247596)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(501406912)アシストインターナショナル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】