説明

充填材

【課題】流動性の高い充填材を得る。
【解決手段】セメント重量:1に対して、ベントナイト重量:0.05〜0.45、金属粉末重量:0.00005〜0.001、リグニンスルホン酸塩重量:0.0015〜0.05、水:1.0〜10.0を混合した充填材である。ベントナイトの混入により、水分の増量分を捕捉して、ブリージングの問題を解決する。リグニンスルホン酸塩の混入により、セメント、保水剤等を分散させて、流動性を向上させる。金属粉末の発泡により、保形性のある空隙層の多い充填層とすることができる。充填層の空隙が増せば、流動性が向上すると共に、圧縮などの機械的強度が低下する。ベントナイト等の混合比を調整することにより、圧縮強度:0.1〜1.0N/mm2とすれば、管継手部が耐震性の構造の場合において、地震の発生による継手の伸縮が円滑になされ、同:1.0〜2.0N/mm2とすれば、従来と同様な充填材となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下水道の管路、シールド工法による配管、廃棄管等の空隙及びその他の地殻空隙を充填するために使用する空隙充填材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、農業用水、工業用水、ガス、電力、通信等の様々な分野で、流体輸送に使用されるものとして、例えば、ダクタイル鋳鉄管がある。このダクタイル鋳鉄管を用いた管路の構築は、鞘管としてヒューム管や鋼管を土中に推進埋設し、その鞘管内に鞘管よりも小さい口径のダクタイル鋳鉄管(新管)を挿入(布設)する鞘管推進工法や、既設管内に既設管よりも口径の小さいダクタイル鋳鉄管(新管)を挿入(布設)するパイプインパイプ工法が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
これらの工法であれば、地面を開削して管を布設する開削工法のように、交通を遮断するという問題もなく、また、既に埋設されている管に新管を挿入することになるため、複雑な管路が構築されていても新管による新管路の構築が可能となる。
【特許文献1】特開2002−276284号公報
【0004】
例えば、そのパイプインパイプ工法は、図1に示すように、発進坑Sと到達坑Rとの間に埋設されている既設管(鞘管)A内にこれよりも口径の小さな新管Pを挿入敷設するものであり、発進坑Sには油圧ジャッキJが設置され、この油圧ジャッキJの後部は反力受けHに当接し、前部は押角Pを介して新管Pを押圧するようになっている。新管Pは、その先端部の挿し口1を先行の新管Pの後端部の受口2に挿入することによって順次接合され、既設管A内に押し込まれて行って新配管P´を形成する。なお、先頭の新管Pの先端部には挿入抵抗を小さくするための先導ソリKを取り付ける。
【0005】
これらの鞘管推進工法等において、今日、その配管継手部は、一の管の挿し口を他の管の受口にゴム輪を介在して挿し込んで構成され、その受口に対し挿し口が所要範囲において伸縮可能(抜き差し可能)な耐震構造とすることが一般的であり、その継手として、PII形、S形、NS形、SII形等がある。
【0006】
その耐震管継手は、通常、挿し口外周面の突部を受口内面の突部と奥端部の間を移動可能としたものであり、例えば、その代表例であるNS形継手は、図2に示すように、挿し口1の先端に突起3、受口2の内面に芯出しゴム4を介してロックリング5をそれぞれ設け、受口2にシール用ゴム輪6を介在して挿し口1を挿入し、そのロックリング5と受口内面の奥端部2aとの間を突起3(挿し口1の先端)を移動可能として挿し口1の伸縮代Lを確保した構成であり、引き抜き力に対しては、挿し口1がその突起3がロックリング5に当接するまで後退し(距離L1)、挿し込み力に対しては、挿し口1の先端が奥端部2aに当接するまで挿し込まれて(距離L2)、継手部の破損を防止する(特許文献1参照)。
【0007】
また、これらの鞘管推進工法やパイプインパイプ工法の他にシールド工法によっても管路の構築が行われている。この工法では、シールドマシンを使用して地盤に空洞を設けてセグメントを設置し、その空間に新管を挿入して管路を構築するものである(特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2003−296086号公報
【0008】
これらの方法により、鞘管A等に新管Pを挿入した後、挿入された新管Pの固定や保護を目的として、発進坑Sや到達坑Rから鞘管Aと新管Pの空隙に砂やセメントミルク、エアモルタルなどを充填材として充填することが行われている(特許文献3参照)。このとき、充填距離が長くなると、一度の充填では管路全域への充填が困難なことから、鞘管等の長さ方向の適宜位置に地盤表面に至る縦細孔を設け、この各縦細孔により区切られた区間にその縦細孔によって充填を行うようにしている。
【特許文献3】特開昭59−231283号公報
【0009】
また、鞘管A及び新管Pが大径のものの場合には、図3、図4に示すように、鞘管A内に新管Pを順々に挿入してその各新管Pを管継手Cを介して継ぎ合わせて新配管Pを形成し(図3)、その新配管P(新管P)と鞘管Aの間に新管Pの注入口を介してグラウト材aを充填するものがある(特許文献4参照)。
【特許文献4】特開平9−166242号公報
【0010】
この工法において、グラウト材aの充填は、15〜20本程の新管Pを一回のグラウト材aの充填範囲とし、その範囲の両端の新管Pと鞘管Aの間に中間部間仕切り壁Dを形成し、新管Pに形成した注入口から、グラウト材aを新管Pと鞘管Aの間に注入して行っている。なお、発進坑Sと到達坑Rに開口する端にも間仕切り壁Dを形成する。
【0011】
また、新管Pと鞘管Aの間にその一端(例えば、発進坑S)から複数本のホースを挿入し、その各ホースの挿入長さを、その長さ方向に、例えば、50m毎(間隔:50m)に異ならせて、その各ホースからグラウト材aを送り込む工法もある。因みに、各ホースの挿入長さが50m毎に異なっておれば、一のホースによるグラウト材aの充填長さは50mとなる。
【0012】
シールド工法においても、セグメントと新管Pの空隙にエアモルタルなどが同じようにして充填される場合があり、セグメントと地山との空隙にも地山落ちや地盤沈下を抑制するために裏込剤(充填材a)を充填している(特許文献5参照)。
【特許文献5】特開平9−235996号公報
【0013】
さらに、上述した方法などにより管路が構築されるが、管路寿命や人口増加などの問題により、既設管路が不要になったり、その口径が小さくなって使用に耐え無くなる場合がある。その不要等となった管路について、地面を開削して撤去しようとすると、コストがかかりすぎるため、そのまま管路を地中に廃棄管として残し、管内にエアモルタル等を充填する廃棄管充填が行われている。
これは、地中に管路を放置したままであると、管路部分は地盤に空洞があるのと同じであるため、地盤沈下等を誘発する恐れがあり、廃棄管内に充填材を充填し中実として、空洞部分を無くして地盤強度を高めるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、エアモルタル等の充填材には多種多様な用途があるが、縦細孔を設けるその充填材の充填方法は、充填距離が長距離になると、縦細孔を複数本形成する必要があり、その分、コスト高となるとともに、縦細孔の形成スペースが必要であり、道路事情等により、そのスペースを確保できない場合がある。その場合には、充填材を長距離に亘って充填しなければならなくなり、その充填材にはフロー性(流動性)の良いものが要求される。
【0015】
また、縦細孔を設けない場合にも、鞘管Aと新管Pの隙間の状況により、充填材aの流動度合が低下し、流動性の向上を要求される場合がある。
いずれにしても、布設管路や廃棄管の距離が長くなれば、管路全域に充填されない恐れもあり、充填材の流動性は高いことが望まれる。
【0016】
さらに、新管P内の流体流量を最大限に確保するために、呼び径の大きい新管P、例えば、鞘管Aに対し1口径のみ小さい新管Pを挿入すると、互いの隙間が極小となり、流動性の低い充填材aでは管路P全域に充填材aが回らない恐れが増す。今日では、通常、新管P内の流体流量を最大限に確保することが要求されるため、流動性の良い充填材が要望される。
【0017】
また、法律によって呼び径700以下の管Pへは人が入ることができないため、充填材aの充填を確認するために、管路の長さ方向の適宜個所に中間立孔を設けて、その確認をすることが行われるが、交通渋滞を招くことから、任意の位置にその中間立孔を形成することができず、そのような確認方法も限られた場所でしかできないのが実情である。この場合には、充填材aを流動性の高いものとして、その確認を省略し得るようにしたい。
【0018】
さらに、各新管Pの注入口から、又は複数本のホースにより、充填材(グラウト材)aを充填する方法においても、充填材aの流動性が向上して、充填距離が増せば、それだけ、注入位置も数本の新管P毎の注入口となったり、各ホースの挿入長さの間隔を長くできて、ホースの本数を削減できる等、作業性が向上する。
【0019】
なお、流動性を向上させる方法として、一般的には、セメントに混合する水量を増加させれば良いことになるが、水量が増加すると骨材(砂など)が沈降し、均一な充填材aを得ることができず、ブリージングの問題が出てくる。
【0020】
また、上記の耐震継手の管路において、鞘管Aに新管Pを挿入した後に充填されるエアモルタルなどの充填材aは、その固化後の圧縮強度が1.0 N/mm2以上と高いため、地震の発生による継手の伸縮が円滑になされない恐れがある。
【0021】
この発明は、流動性の高い充填材を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を達成するために、この発明は、セメントと水からなる従来周知の充填材において、保水剤及び流動化剤を混合することとしたのである。
【0023】
一般的に、充填材には、高い機械的強度は要求されず、特に、鞘管と新管に充填されるものにおいては、過去では、砂を充填しており、その砂からなる充填層は機械的強度は低く、それでも、十分に機能を果たしており、高い機械的強度は要求されない。要は、空隙(間隙)を十分に埋めればよい。
【0024】
このため、まず、セメントに対する水の重量比を高めれば、流動性は向上するが、ブリージングの問題が生じる。このため、保水剤を混入することにより、その流動性向上のために増量した水分を捕捉して、ブリージングの問題を解決する。
一方、保水剤を混入すると、一般的には、流動性が低下する。このため、流動化剤を混入することにより、セメント、保水剤等を分散させて、流動性を向上させる。また、流動化剤は、微細な空気を連行しつつ、セメント粒子の分散作用によって単位水量を低減させ、ワーカビリティーの改善、諸特性の改善・向上を図る。
【0025】
さらに、発泡剤を混入することにより、保形性のある空隙層の多い充填層とすることができ、固化時の収縮(体積収縮)を極力抑えるとともに、圧縮などの機械的強度が低下する。これにより、管継手部が耐震性の構造の場合において、地震の発生による継手の伸縮が円滑になされる。固化時の収縮を抑えれば、鞘管と新管の間の充填率が向上する。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、以上のように、保水剤及び流動化剤を混合することにより、流動性の高い充填材を得ることができる。このため、長距離の充填が可能となって、作業性を向上させることができる。
また、発泡剤を混入させれば、充填材の機能を維持したまま機械的強度を低下させ得るため、耐震管継手構造において、その継手部の伸縮を確実に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明の実施形態としては、セメントと水を充填材の基本配合とし、それに、保水剤と流動化剤を混入した構成を採用することができる。また、発泡剤を混入する場合には、その発泡剤を金属粉末とすることができる。
ここで、セメントとしては、あらゆる種類のセメントが使用できるが、安価で入手しやすいことから、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどが望ましい。
【0028】
保水剤としては、保水効果が大きくブリージング低減作用に優れていることから、モンモリロナイト又はそれを主成分とするベントナイトが望ましい。
【0029】
流動化剤としては、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル誘導体、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物などが挙げられるが、保水剤添加による増粘作用を低減する効果が大きい点を考慮すると、アルキルアリルスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩が望ましい。
【0030】
発泡剤には、合成界面活性剤系や加水分解タンパク系といった有機系のものと金属系のものがあるが、有機系のものは液状であるため、保水剤や流動化剤といった粉末状材料とのプレミックスが困難であるため、金属粉末状のものが望ましい。具体的には、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛などの金属粉末を用いることができるが、安価で入手しやすいことやガスの性質(充填材そのもの、または管に対して腐食などの悪影響を及ぼさないという意味)などを考慮するとアルミニウム粉末が望ましい。
【0031】
ここで、流動化剤と発泡剤の組合せとしては、流動性と硬化性、ブリージングのバランスを考慮すると、リグニンスルホン酸塩とアルミニウム粉末の組み合わせが最も望ましい。
【0032】
それらの混合比率としては、例えば、セメント重量:1に対して、ベントナイト重量:0.05〜0.45、好ましくは0.10〜0.25、金属粉末重量:0.00005〜0.001、好ましくは0.00015〜0.0003、リグニンスルホン酸塩重量:0.0015〜0.05、好ましくは0.005〜0.015等を採用できる。
【0033】
ベントナイトが規定値(0.05)より少量であると、膨潤不良、ブリージングの発生、体積収縮などの問題が生じ、規定値(0.45)より過剰となると、増粘、流動不良などの問題が生じる。リグニンスルホン酸塩が規定値(0.0015)より少量であると、流動不良という問題が生じ、規定値(0.05)より過剰となると、ブリージングの発生、硬化遅延という問題が生じる。金属粉末が規定値(0.00005)より少量であると、上記ベントナイトと同様の問題があり、規定値(0.001)より過剰となると、過膨張、流動不良となる問題が生じる。
【0034】
上記セメントと水の重量比は、充填材の強度、流動化剤の混合量などに基づき、使用目的に応じて適宜に設定すれば良く、例えば、1:1.0〜10.0とすることができる。
ここで、充填材の固化後の圧縮強度は、0.1〜2.0N/mm2とすることができ、そのとき、低強度充填材として、固化後の圧縮強度を0.1〜1.0N/mm2とする場合は、セメントと水の重量比は1:2.5〜10.0の範囲が望ましい。一方、高強度充填材として、固化後の圧縮強度を1.0〜2.0N/mm2とする場合は、同重量比は1:1.0〜2.5未満の範囲が望ましい。
【0035】
また、上記金属粉末の発泡時間はかなり長い時間継続するが、発泡による膨張が終わった後に充填材が流動すると、金属粉末から発生した気泡が消滅して、体積収縮が発生する恐れがある。また、逆に発泡による膨張が終わる前に充填材の硬化が始まると、気泡の分布が不均一になったり、膨張が不十分となるため体積収縮の恐れがある。このように、充填材の配合において発泡速度の制御が非常に重要となる。
ここで、一般に、金属粉末の粒径が小さい(比表面積が大きい)と、発泡速度が速くなり、粒径が大きい(比表面積)と発泡速度が遅くなる。このため、金属粉末の粒径の範囲を1〜500μm、好ましくは80〜200μmとすることにより、通常の充填作業において、充填材の流動が終わってから硬化が始まるまでの間に、その発泡がなされるように、発泡速度を制御することが可能となる。
【0036】
上記のように、充填材の固化後の圧縮強度は、0.1〜2.0N/mm2とすることができるが、低強度を目的として充填材の構成成分を所定の比率で配合して、固化後の圧縮強度を、0.1〜1.0N/mm2とすれば、耐震管継手の2重管配管構造のグラウト材とした場合において、その継手部の伸縮を確実に確保できるものとし得る。また、高強度を目的として充填材の構成成分を所定の比率で配合し、固化後の圧縮強度を、1.0〜2.0N/mm2とすれば、エアモルタル等の従来材と同様に使用することができる。
【0037】
これらの充填材は、地中に敷設された鞘管内に管を順々に挿入してその各管を継ぎ合わせて配管を形成し、その配管と前記鞘管の間にグラウト材として使用したり、配管内への充填材等と上記各種の充填材として使用でき、前者のグラウト材の場合には、新配管と鞘管Aの間にそのグラウト材が充填された2重管配管構造となる。
【0038】
また、この充填材は、各種の上下水道の2重管配管構造の管路のみならず、シールド工法による配管、廃棄管等の空隙及びその他の地殻空隙を充填するために、使用し得る。
【実施例】
【0039】
表1に、セメント、ベントナイト、金属粉末、流動化剤、水からなる充填材配合と各種試験結果を示し、その配合表において、「◎」はそのものを使用したことを示す。
【0040】
【表1】

【0041】
充填材の流動性の評価項目としては、フロー性試験、コンシステンシー試験を行った。また、充填材の基礎試験として、ブリージング試験、体積変化試験、一軸圧縮強度試験を行った。
【0042】
(フロー値試験)JHS:日本道路公団規格
JHS A 313-1992「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」のシリンダー法により測定する。具体的には、平滑な板面上に静置した直径φ80mm×高さ80mmの円筒に充填材を入れ、これを素早く垂直に引き上げ、板面上に広がった充填材の最大、最小寸法を測定する。
【0043】
(コンシステンシー試験)JSCE:土木学会基準
JSCE F 531-1999「PCグラウトの流動性試験方法」に準拠し、J14ロートによる充填材の流下時間を測定する。
【0044】
(ブリージング試験)
容量500mlのメスシリンダーに充填材を400ml注入し、上部開口部をラップフィルムで密閉し、24時間静置後のブリージング水量(A ml)の測定を行い、下記の式によりブリージング率に換算して評価する。
ブリージング率={100 × ブリージング水量(A)} ÷ 400
【0045】
(体積変化試験)
容量500mlのメスシリンダーに充填材を400ml注入し、上部開口部をラップフィルムで密閉し、24時間静置後の体積変化量(B ml)の測定を行い、下記の式により体積変化率に換算して評価する。
体積変化率={100 × 体積変化量(B)} ÷ 400
【0046】
(一軸圧縮強度試験)JSCE:土木学会基準
材齢28日における一軸圧縮強度の測定をJSCE G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮試験方法」により行った。
【0047】
この試験結果によれば、各実施例は、各試験において、満足した結果「○」を得ているのに対し、各比較例においては、何れかの試験において、満足し得ない結果「△」又は「×」となっている。このことから、実施例は、流動性の高い充填材を得ることができる等の所要の目的を達成できるものであることを確認できる。
【0048】
(施工例1:充填材設定強度:0.5 N/mm2
図3、図4に示した2重管配管構造の充填材として使用したところ、注入口7の間隔は50m以上とすることができ、また、耐震管継手とした場合においても、その継手部の十分な伸縮を得ることができた。このとき、既設管呼び径:27インチ、新管呼び径:500mm、管路延長は100m、間隙容積は20m3であった。充填には、市販のグラウトポンプ(充填速度:約40L/min)を用いた。充填時間は約9時間であった。
【0049】
(施工例2:充填材設定強度:2.0 N/mm2
図3、図4に示した2重管配管構造の充填材として使用したところ、注入口7の間隔は50m以上とすることができた。このとき、鞘管呼び径:900mm、新管呼び径:500mm、管路延長は200m、間隙容積は80m3であった。充填には、市販のグラウトポンプ(充填速度:約200L/min)を用いた。充填時間は約7時間であった。
【0050】
実施例は、鞘管推進工法及びパイプインパイプ工法における2重管配管構造での使用であったが、この工法に限らず、各種の上下水道の管路、シールド工法による配管、廃棄管等の空隙及びその他の地殻空隙を充填するために、この実施例の充填材は使用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】パイプインパイプ工法の説明図
【図2】NS形継手の断面図
【図3】2重管配管構造の構築説明図
【図4】同構築説明図
【図5】同構築説明図
【符号の説明】
【0052】
A 鞘管
P´ 新配管
P 新管
a 充填材(グラウト材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと水からなる充填材であって、保水剤及び流動化剤を混合したことを特徴とする充填材。
【請求項2】
発泡剤をさらに混合したことを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
上記保水剤がモンモリロナイト及び上記流動化剤がリグニンスルホン酸塩、又は、上記保水剤がモンモリロナイト、上記流動化剤がリグニンスルホン酸塩及び上記発泡剤が金属粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の充填材。
【請求項4】
上記セメント重量:1に対して、上記モンモリロナイトを主成分とするベントナイト重量:0.05〜0.45、上記金属粉末重量:0.00005〜0.001、上記リグニンスルホン酸塩重量:0.0015〜0.05であることを特徴とする請求項3に記載の充填材。
【請求項5】
上記金属粉末の粒径が1〜500μmであることを特徴とする請求項3又は4に記載の充填材。
【請求項6】
上記セメントと水の重量比が、1:1.0〜10.0であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の充填材。
【請求項7】
固化後の圧縮強度が0.1〜2.0 N/mm2であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の充填材。
【請求項8】
地中に敷設された鞘管A内に管Pを順々に挿入してその各管Pを継ぎ合わせて配管P´を形成し、その配管P´と前記鞘管Aの間にグラウト材aとして上記請求項1乃至7のいずれかに記載の充填材を充填するグラウト材の充填方法。
【請求項9】
地中に敷設された鞘管A内に管Pを順々に挿入してその各管Pを継ぎ合わせて配管P´が形成され、その配管P´と前記鞘管Aの間にグラウト材aとして上記請求項1乃至7のいずれかに記載の充填材が充填されている2重管配管構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−21933(P2006−21933A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199102(P2004−199102)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【出願人】(502406328)株式会社薬材開発センター (4)
【出願人】(594205373)ユージーテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】