充填検知方法、モルタルまんじゅう作製装置及び充填検知システム
【課題】 形がいびつになったり、切り欠け部ができたりすることのないモルタルまんじゅうが作製でき、また柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填状況を確実に検出できる充填検知方法、モルタルまんじゅう作製装置及び充填検知システムを得る。
【解決手段】 リング状枠体21を有するモルタルまんじゅう作製装置2を備える。このモルタルまんじゅう作製装置2には、リング枠体21の外周面に、圧電スピーカ22が配置されており、圧電スピーカ22は充填検知装置3と接続されている。前記充填検知装置3は前記圧電スピーカ22に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して得られた振動周波数特性から充填材の充填状況を検知する。
【解決手段】 リング状枠体21を有するモルタルまんじゅう作製装置2を備える。このモルタルまんじゅう作製装置2には、リング枠体21の外周面に、圧電スピーカ22が配置されており、圧電スピーカ22は充填検知装置3と接続されている。前記充填検知装置3は前記圧電スピーカ22に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して得られた振動周波数特性から充填材の充填状況を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造やCFT(Concrete Filled steel Tube)造の柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間への充填材の充填状況を検知する充填検知方法、並びに柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込み時に基礎コンクリート面上で且つ柱脚ベースプレート直下部分に施工されるモルタルまんじゅうを作製するためのモルタルまんじゅう作製装置及びモルタルまんじゅう作製装置を備えた充填検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築基礎構造において鉄骨柱を基礎コンクリートに建て込む場合、鉄骨柱に接続した柱脚ベースプレートのアンカーボルト穴に、基礎コンクリートに固定したアンカーボルトを嵌め込み、アンカーボルト穴より突出したアンカーボルトにナットを締め付けて建て込みを行う工法がある。この建築工法において、鉄骨柱を基礎コンクリートに建て込む際に、基礎コンクリート上面中央部分に“モルタルまんじゅう”と呼ばれる鉄骨柱の支持に必要な無収縮グラウト材(堅練りのモルタル)を所定の高さに塗り付けた物を施工する。モルタルまんじゅうを施工後は柱脚ベースプレートの建て込みを行うが、その際、モルタルまんじゅう周囲の基礎コンクリートと柱脚ベースプレートとの間に生ずる隙間を埋めるために、後詰めモルタルと呼ばれる、セメントミルクやモルタルを含む充填材が注入される。
【0003】
基礎コンクリートと柱脚ベースプレートとの間に注入される充填材の充填状況検出については、柱脚ベースプレートのアンカーボルト穴を大きく形成し、さらに、このアンカーボルト穴に連通する充填材注入穴、及び充填材検知穴を設けて充填材注入穴から充填材を注入し、この注入によって充填検知穴から充填材が溢れたときに、充填材が充満状態に充填されたとする方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−102639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間を埋めるために行う充填材検出の従来方法においては、アンカーボルトの周辺部の充填状況しか確認できず、充填材の注入の仕方(例えば充填材を断続的に注入した場合)や、モルタルまんじゅうの大きさ並びに形状によって、モルタルまんじゅうの周囲では未充填部分が残ってしまうという問題がある。
【0006】
特に、モルタルまんじゅうの形状は、通常、丸型と角型が多いが、角型形状のモルタルまんじゅうの場合には、充填材を連続的に注入しても、モルタルまんじゅうの周囲、特に充填位置から見て、モルタルまんじゅうの裏側となる下流側において空気溜りによる未充填部分が発生しやすい。これは、充填材の流動距離が長くなると、モルタルまんじゅうの角部で充填材の流れが変化するため、流れが遅くなった先で空気溜りによる未充填部分が発生しやすいことによる。したがって、モルタルまんじゅうは角型にするより丸型にすることが未充填部分の発生を抑えるうえで好ましい。しかしながら、通常、モルタルまんじゅうは無収縮モルタルを柱脚ベースプレートの中央部分に積み上げて、所定の高さとなるように手作業で成型するため、いびつになったり、切り欠け部ができたりして、角型形状のモルタルまんじゅうで発生したような要因で未充填部分が発生する虞がある。
【0007】
また、従来方法では、充填材検知穴からの充填材の流出を目視で判定することで充填状況の確認を行うようにしているが、工事現場では脚注や鉄筋、鉄骨が過密になることが多く、そのような場合には充填材検知穴を目視し難く、充填状況の確認を容易に行えないという問題もある。
【0008】
この発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、形がいびつになったり、切り欠け部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製でき、またモルタルまんじゅう周りにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填状況を確実に検出できる充填検知方法、モルタルまんじゅう作製装置及び充填検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は下記方法及び構成により達成される。
(1) 柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知方法において、前記基礎コンクリート面上の前記柱脚ベースプレート直下に略リング状の枠体を配置して、その枠体内にモルタルまんじゅうを作製するための無収縮モルタルの打ち込みを行った後、前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに建て込む際の前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に前記充填材を注入する工程時に、予め前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号に基づいて前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の充填検知方法において、前記センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、前記センサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して、センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出したセンサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する。
【0011】
(3) モルタルまんじゅう作製装置であって、柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備える。
【0012】
(4) 上記(3)に記載のモルタルまんじゅう作製装置において、前記略リング状の枠体の高さ方向の調整を可能とする高さ調整手段を備える。
【0013】
(5) 上記(3)又は(4)に記載のモルタルまんじゅう作製装置において、前記略リング状の枠体の外周面上に離間配置され、夫々が電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個のセンサ素子を備える。
【0014】
(6) 柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知システムにおいて、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作成するための略リング状の枠体を有するモルタルまんじゅう作製装置と、前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号に基づいて前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に注入する前記充填材の充填状況を検知する充填検知装置と、を備える。
【0015】
(7) 上記(6)に記載の充填検知システムにおいて、前記センサ素子は、電気エネルギを機械エネルギに変換するものであり、前記充填検知装置は、複数の前記センサ素子夫々に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して各センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出した各センサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)に記載の充填検知方法では、基礎コンクリート上に設けるモルタルまんじゅうの作製に略リング状の枠体を使用することで、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製することができる。そして、モルタルまんじゅうの作製後、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間に充填材を注入する工程時に、充填材の注入が断続的に行われたとしても、略リング状の枠体の外周面上にセンサ素子を配置させて、センサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号値に基づいて充填材の充填状況を検知しているので、未充填部分があった場合には、直ちにこれを検出することができる。これにより、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にすることができる。また、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0017】
上記(2)に記載の充填検知方法では、センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、そのセンサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して振動周波数特性を判定することで、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0018】
上記(3)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを容易に作製することができる。これにより、未充填の発生割合を低く抑えることができ、鉄骨柱と基礎コンクリートの確実な接続が可能となる。
【0019】
上記(4)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体が高さ調整手段を備えるので、モルタルまんじゅう作製時のモルタルまんじゅうの高さや、水平出しを容易に行うことができる。
【0020】
上記(5)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体に複数のセンサ素子を備えるので、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。特に、センサ素子をリング状枠体の外周面全域に亘って設けることで、充填材の充填状況を余すことなく検知することが可能となる。
【0021】
上記(6)に記載の充填検知システムでは、モルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製することができる。また、モルタルまんじゅう作製後にモルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間に充填材を注入する工程において、たとえ充填材の注入が断続的に行われたとしても、モルタルまんじゅう作製装置のセンサ素子と充填検知装置とにより充填材の充填状況を検知するので、未充填があった場合には、直ちにこれを検出することができる。これにより、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にできる。また、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0022】
上記(7)に記載の充填検知システムでは、センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを備え、そのセンサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して振動周波数特性を判定するので、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。特に、複数個のセンサ素子を略リング状の枠体の外周面全域に亘って設けることで、充填材の充填状況を余すことなく検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る充填検知システムの概略構成を示すブロック図である。この図において、本実施の形態に係る充填検知システム1は、モルタルまんじゅう作製装置2と、充填検知装置3とを備えて構成される。
【0025】
モルタルまんじゅう作製装置2は、図7に示すように、柱脚ベースプレート5を接続した鉄骨柱6の基礎コンクリート7への建て込みの際に、基礎コンクリート7面上に設けるモルタルまんじゅう8の作製のために用いられるとともに、モルタルまんじゅう8の作成後、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間に生ずる隙間に充填材(セメントミルク、モルタル等)9を注入した際の充填材の充填状況を検知するために用いられる。なお、充填材9は、柱脚ベースプレート5の周りに仮設される充填材流れ止め型枠10と柱脚ベースプレート5との間より注入する。
【0026】
図1に戻り、モルタルまんじゅう作製装置2は、略円形に形成されたリング状枠体21と、それぞれが電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個(本実施形態では6個)の圧電スピーカ(センサ素子)22とを備えている。なお、圧電スピーカの代わりに圧電セラミック振動板を用いても良い。また、センサ素子としての圧電スピーカ又は圧電セラミック振動板の数は6個に限定されるものではなく、それ以下又はそれ以上であっても構わない。
【0027】
モルタルまんじゅう作製装置2のリング状枠体21は、図2に示すように、金属(又は樹脂)でできており、その外周側の上縁には、それぞれL字状に形成されたセンサ取り付け金具21aが60度の間隔で取り付けられている。
センサ取り付け金具21aは、図3に示すように、スポット溶接25でリング状枠体21の本体に取り付けられる。なお、スポット溶接で取り付ける以外には、図4に示すように、ネジ(又はリベット)26で取り付ける方法や、図5に示すように、リング状枠体21に厚みを持たせてその周方向に複数の穴27を形成し、各穴27内にセンサ取り付け金具21aの一端部を差し込むことで取り付ける方法などがある。
【0028】
また、モルタルまんじゅう作製装置2のリング状枠体21の外周面には、図6に示すように、作製するモルタルまんじゅうの高さと水平出しを行うための高さ調整金具21bが取り付けられている。この高さ調整金具21bは、L字状に形成されてその一片にネジ穴が切られた本体30と、この本体30のネジ穴に螺合する高さ調整用ネジ31とから構成され、リング状枠体21の周方向に沿って120度の間隔で3個設けられる。なお、高さ調整金具21bの本体に対する取り付けもセンサ取り付け金具21aの取り付けと同様、スポット溶接、ネジ(リベット)、差込み等が挙げられる。なお、リング状枠体21に取り付ける高さ調整金具21bの個数も3個に限定されるものではなく、それ以上又はそれ以下であっても良い。
【0029】
高さ調整金具21bの高さ調整用ネジ31を本体30に入り込む方向に廻すことで、高さ調整用ネジ31の先端が基礎コンクリート7に当たり、その後、さらに廻し込んで行くことでリング状枠体21が持ち上がり、作製するモルタルまんじゅうの高さLが高くなる。このように高さ調整金具21bによって、基礎コンクリート7面に合わせて作製するモルタルまんじゅうの高さを所望の値に設定することができ、さらにモルタルまんじゅうの水平出しも容易に行うことができる。
【0030】
6個の圧電スピーカ22は、それぞれ圧電素子を使用したものであり、電気信号を機械信号に変換して出力する。各圧電スピーカ22は、図3、図4又は図5に示すように、リング状枠体21から突出したセンサ取り付け金具21aの下面に取り付けられる。
圧電スピーカ22をセンサ取り付け金具21aの下面に取り付けることで、充填材9がモルタルまんじゅう8の高さまで充填されたときに充填材9の充填状況を検知できることになり、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に対して充填材9を確実に充填させることが可能となる。なお、リング状枠体21の高さ方向に沿って複数個の圧電スピーカ22を取り付ければ、充填状況の進行を逐次把握することが可能である。即ち、充填材の注入の進行に応じて下の方の圧電スピーカ22から順次充填材を検知して行くので、充填状況の進行が分かる。
【0031】
次に、モルタルまんじゅう作製装置2の使用方法について、図7を参照して説明する。
まず、モルタルまんじゅう作製装置2を基礎コンクリート7上面で、かつ、柱脚ベースプレート5の中央下部に相当する位置に配置した後、高さ調整金具21bの高さ調整用ネジ31を調整して高さ調整を行うとともに、リング状枠体21上端の水平出しを行う。高さ調整及び水平出しを行った後、リング状枠体21内に無収縮モルタルを打ち込み、その後、リング状枠体21の上端部をコテで均して柱脚ベースプレートとの間で隙間ができないように水平出しを行う。
【0032】
モルタルまんじゅう作製装置2は、そのリング状枠体21が最初から真円に近いことと、高さ調整金具21bを備えることから、極めて容易に柱脚ベースプレート5に密着するモルタルまんじゅう8を作製することができる。また、真円に近いモルタルまんじゅうが作製できることから、後工程の充填材を注入する工程において、充填材の流れに変化を生じ難くして、従来技術で生じた空気溜りによる未充填部分の発生を低く抑えることができる。
柱脚ベースプレート下のモルタルまんじゅう周りに生じる充填材の未充填部分は目視することができないので、充填材注入時に何等かの方法で未充填部分を検知することが未充填部分を減らす意味で有効である。そして、未充填部分が検知できれば、注入方法の見直しができることや、施工のやり直しの判断が確実にできる。
本実施の形態の充填検知システム1では、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22と充填検知装置3により充填材の充填状況を検知するので、ユーザはその結果から充填状況を容易に判断することができる。
【0033】
次に、充填検知装置3について説明する。
図8は、充填検知装置3の概略構成を示すブロック図である。この図において、充填検知装置3は、信号発生・印加部50と、モルタルまんじゅう作製装置2の圧電スピーカ22の個数と同数の周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6と、判定部70と、表示部80とを備えて構成される。
信号発生・印加部50は、同期信号発生器51と、可変周波数発振器52と、増幅器53とから構成される。同期信号発生器51は、可変周波数発振器52を繰り返し動作させるための同期信号を発生する。
可変周波数発振器52は、周波数が所定の周波数範囲(例えば1kHzから20kHz)で連続的に変化する正弦波の電気信号を発生する。この場合、同期信号発生器51から同期信号が出力される毎に初期周波数(例えば1kHz)から繰り返し正弦波信号を発生する。
増幅器53は、可変周波数発振器52からの正弦波信号を、モルタルまんじゅう作製装置2の圧電スピーカ22を駆動できるレベルまで増幅し、加振用信号Vrとして出力する。
【0034】
各周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6は、モルタルまんじゅう作製装置2の各圧電スピーカ22と1対1の関係となっており、夫々、抵抗61と、差動増幅器62と、4象限掛け算器63と、ローパスフィルタ64とから構成される。
抵抗61は、信号発生・印加部50の増幅器53と、モルタルまんじゅう作製装置2との間に直列に介挿され、その両端に、モルタルまんじゅう作製装置2の1つの圧電スピーカ22に流れる電流に対応する電圧が発生する。
圧電スピーカ22に流れる電流の振幅と位相は周波数の変化に応じて変化することから、抵抗61の両端に発生する電圧は圧電スピーカ22の周波数特性を反映したものになる。
【0035】
差動増幅器62は、抵抗61の両端に発生する電圧を増幅して電圧Viを出力する。
4象限掛け算器63は、信号発生・印加部50の増幅器53から出力される加振用信号Vrと差動増幅器62から出力される電圧Viを乗算して、これらの電圧に対するノイズの影響を除去する。
ローパスフィルタ64は、4象限掛け算器63の出力信号から以下で説明するcos(2ωt+α+β)分を除去した信号(出力電圧Vo)を出力する。なお、本実施の形態では、図1に示すように、6つの周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6に対して1つの信号発生・印加部50を設けているが、6つの周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6夫々に対して1つの信号発生・印刷部50を設けても構わない。
【0036】
判定部70は、図示せぬマイコン、RAM、ROM及びA/D変換器を備えており、モルタルまんじゅう作製装置2の各圧電スピーカ22に充填材を接触させないときの固有の振動周波数特性を基準として、ローパスフィルタ64から出力される信号から、各圧電スピーカ22に対する充填材の接触・非接触を判定し、その結果(良否)を表示部80に表示する。なお、各圧電スピーカ22の固有の振動周波数特性を一度設定しておくことで以後メンテナンス時以外、再設定する必要はなくなる。また、各圧電スピーカ22の固有の振動周波数特性は、上記したRAMに記憶される。また、マイコンを制御するためのプログラムは、上記したROMに記憶されている。
【0037】
次に、上記構成の充填検知装置3の動作について説明する。
可変周波数発振器52にて発生した正弦波信号が増幅器53で増幅された後、加振用電圧Vrとして、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22夫々に印加される。以後、6個の圧電スピーカ22夫々に対応する動作が全て同じであるので、1個の圧電スピーカ22に注目して説明を続ける。
加振用電圧Vrが圧電スピーカ22に印加されることによって機械的振動が発生し、その圧電スピーカ22に流れる電流に対応する電圧が抵抗61に発生する。抵抗61に発生した電圧が差動増幅器62にて増幅されて電圧Viが得られ、その電圧Viが4象限掛け算器63に入力される。
【0038】
一方、信号発生・印加部50の増幅器53からの加振用電圧Vrは4象限掛け算器63にも入力され、加振用電圧Vrと差動増幅器62からの電圧Viとが乗算されて、これらの電圧に対するノイズが除去される。そして、ノイズが除去された4象限掛け算器63からの出力信号がローパスフィルタ64に入力され、cos(2ωt+α+β)成分が除去されて出力電圧Voが得られる。この出力電圧Voは、加振用電圧Vrの周波数変化に対する圧電スピーカ22の周波数特性(振幅と位相)を反映した信号になる。このとき、圧電スピーカ22の表面に充填材9が接触していない(空気が接触している)と、図9に示すように、圧電スピーカ22の持つ固有振動数付近の周波数にピークを持った電圧が現れる。これに対して、圧電スピーカ22の周囲に充填材9が充填されていると、図10に示すように、圧電スピーカ22の振動特性が変化してピーク電圧の位置と大きさが変化する。すなわち、ピーク電圧が殆ど無い状態になる。判定部70は、このピーク電圧の変化から充填材の充填状況を判定し、その結果を表示部80に表示する。
【0039】
特に、判定部70は、各周波数特性検出部60−1〜60−6を短時間に切り替えて、各周波数特性検出部60−1〜60−6の出力電圧Voを取り込み、それぞれについて判定を行う。因みに、充填材の検知は、例えば図1において、矢印90で示す方向から充填材が注入されたとすると、それに一番近い圧電スピーカ22から検知が行われ、その後、充填される充填材に近い順で検知が行われる。そして、最も遠い圧電スピーカ22にて充填検知が行われる。全ての圧電スピーカ22にて検知が行われると充填が完了し、1つでも検知が行われない場合は空気溜りによる未充填箇所が生じていると判定して、注入方法の見直しや、施工のし直しの判断とする。
【0040】
ここで、図11は充填材を連続して注入したときの充填検知結果の一例である。また、図12は充填材を断続して注入したときの充填検知結果の一例である。図11及び図12において、縦軸は経過時間を示しており、横軸はセンサ番号を示している。センサ番号は、6個の圧電スピーカ22に対し、例えば図1に示すように、反時計周りに(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)と割り当てている。充填材を連続して注入した場合は、図11に示すように、注入を開始してから6分06秒後に、(1)〜(6)全ての圧電スピーカ22にて充填材の充填を検知しているのに対し、充填材を断続して注入した場合は、図12に示すように、注入を開始してから19分26秒後でも注入口直前の(1)の圧電スピーカ22でしか充填を検知しておらず、(2)〜(6)の圧電スピーカ22では充填を検知していないことが判る。このように、モルタルまんじゅう作製装置2はリング状枠体21の全周囲に対する充填材9の充填状況を検知することができる。
【0041】
次に、上記動作原理を、数式を用いて説明する。
ここで、Vr=Asin(ωt+α)、Vi=Bsin(ωt+β)とする。但し、A,Bは振幅、ωtは周波数、αとβは位相のずれとする。
Vr×Vi=Asin(ωt+α)×Bsin(ωt+β)
=AB[cos(β−α)−cos(2ωt+α+β)]/2 …(1)
【0042】
式(1)のcos(β−α)の部分は、位相差に合わせて変化する直流成分であり、ここに電圧Viの振幅成分も含まれる。また、cos(2ωt+α+β)の部分は、元の加振用電圧Vrと電圧Viの2倍の周波数の信号である。必要とする周波数特性の情報は、電圧Viの振幅(大きさ)であるので、式(1)のcos(β−α)のみで良い。したがって、ローパスフィルタ64を通過させてcos(2ωt+α+β)の成分を除去すればよい。このようにして出力電圧Voには周波数特性が電圧の形で現れる。
【0043】
図9及び図10で示したように、モルタルまんじゅう8周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に充填材9が充填されると、ピークの周波数とレベルが変化することから、その状況を検知することができる。
【0044】
このように、本実施の形態の充填検知システム1によれば、リング状枠体21を有するモルタルまんじゅう作製装置2を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅう8を作製することができる。また、モルタルまんじゅう作製装置2に、高さ調整を可能とする高さ調整21bを設けたので、モルタルまんじゅう8の高さを所望の値に設定することができ、更にモルタルまんじゅう8の水平出しも容易に行うことができる。また、モルタルまんじゅう作製後のモルタルまんじゅう8周りにおける柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に充填材9を注入する工程において、その注入が断続的に行われたとしても、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22と充填検知装置3とで充填材9の充填状況を非破壊で検知するので、未充填部分を検知した場合には充填材9の注入が断続的になったことが分かり、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にできる。これにより、柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間への充填材9の充填を確実に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、単一の周波数範囲の正弦波を用いたが、周波数範囲を切り替える周波数範囲切替器(図示略)を設けて、複数の周波数範囲の正弦波を択一的に選択できるようにしても良い。この場合、可変周波数発振器52は、周波数範囲切替器にて切り替えられた範囲の周波数帯で正弦波信号を繰り返し発生させる機能を有することになる。このように複数の周波数範囲の正弦波を択一的に選択できるようにすることで、柱脚ベースプレートと基礎コンクリートの構造や材質等の物理的な特性に応じて測定に最適な周波数範囲を選択することができ、より精度の高い測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、形がいびつになったり、切り欠け部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製でき、またモルタルまんじゅう周りにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填を確実に行うことができるといった効果を有し、鉄骨造やCFT造の柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みにおけるモルタルまんじゅうの作製や、柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填状況を非破壊で検出する充填検知装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係る充填検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のモルタルまんじゅう作製装置のリング状枠体の概観を示す斜視図である。
【図3】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の取り付け例を示す図である。
【図4】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の他の取り付け例を示す図である。
【図5】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の他の取り付け例を示す図である。
【図6】図2のリング状枠体における高さ調整金具を示す図である。
【図7】柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込み後の状態を示す図である。
【図8】図1の充填材検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図1の充填材検知装置での測定結果の一例を示し、圧電スピーカに充填材が接触していないときの出力電圧波形図である。
【図10】図1の充填材検知装置での測定結果の一例を示し、圧電スピーカに充填材が接触しているときの出力電圧波形図である。
【図11】充填材を連続注入した時の充填検知結果を示す図である。
【図12】充填材を断続的に注入した時の充填検知結果を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 充填検知システム
2 モルタルまんじゅう作製装置
3 充填検知装置
5 柱脚ベースプレート
6 鉄骨柱
7 基礎コンクリート
8 モルタルまんじゅう
9 充填材
10 充填材流れ止め型枠
21 リング状枠体
21a センサ取り付け金具
21b 高さ調整金具
22 圧電スピーカ
31 高さ調整用ネジ
50 信号発生・印加部
51 同期信号発生器
52 可変周波数発振器
53 増幅器
60−1〜60−6 周波数特性検出部
61 抵抗
62 差動増幅器
63 4象限掛け算器
64 ローパスフィルタ
70 判定部
80 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造やCFT(Concrete Filled steel Tube)造の柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間への充填材の充填状況を検知する充填検知方法、並びに柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込み時に基礎コンクリート面上で且つ柱脚ベースプレート直下部分に施工されるモルタルまんじゅうを作製するためのモルタルまんじゅう作製装置及びモルタルまんじゅう作製装置を備えた充填検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築基礎構造において鉄骨柱を基礎コンクリートに建て込む場合、鉄骨柱に接続した柱脚ベースプレートのアンカーボルト穴に、基礎コンクリートに固定したアンカーボルトを嵌め込み、アンカーボルト穴より突出したアンカーボルトにナットを締め付けて建て込みを行う工法がある。この建築工法において、鉄骨柱を基礎コンクリートに建て込む際に、基礎コンクリート上面中央部分に“モルタルまんじゅう”と呼ばれる鉄骨柱の支持に必要な無収縮グラウト材(堅練りのモルタル)を所定の高さに塗り付けた物を施工する。モルタルまんじゅうを施工後は柱脚ベースプレートの建て込みを行うが、その際、モルタルまんじゅう周囲の基礎コンクリートと柱脚ベースプレートとの間に生ずる隙間を埋めるために、後詰めモルタルと呼ばれる、セメントミルクやモルタルを含む充填材が注入される。
【0003】
基礎コンクリートと柱脚ベースプレートとの間に注入される充填材の充填状況検出については、柱脚ベースプレートのアンカーボルト穴を大きく形成し、さらに、このアンカーボルト穴に連通する充填材注入穴、及び充填材検知穴を設けて充填材注入穴から充填材を注入し、この注入によって充填検知穴から充填材が溢れたときに、充填材が充満状態に充填されたとする方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−102639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間を埋めるために行う充填材検出の従来方法においては、アンカーボルトの周辺部の充填状況しか確認できず、充填材の注入の仕方(例えば充填材を断続的に注入した場合)や、モルタルまんじゅうの大きさ並びに形状によって、モルタルまんじゅうの周囲では未充填部分が残ってしまうという問題がある。
【0006】
特に、モルタルまんじゅうの形状は、通常、丸型と角型が多いが、角型形状のモルタルまんじゅうの場合には、充填材を連続的に注入しても、モルタルまんじゅうの周囲、特に充填位置から見て、モルタルまんじゅうの裏側となる下流側において空気溜りによる未充填部分が発生しやすい。これは、充填材の流動距離が長くなると、モルタルまんじゅうの角部で充填材の流れが変化するため、流れが遅くなった先で空気溜りによる未充填部分が発生しやすいことによる。したがって、モルタルまんじゅうは角型にするより丸型にすることが未充填部分の発生を抑えるうえで好ましい。しかしながら、通常、モルタルまんじゅうは無収縮モルタルを柱脚ベースプレートの中央部分に積み上げて、所定の高さとなるように手作業で成型するため、いびつになったり、切り欠け部ができたりして、角型形状のモルタルまんじゅうで発生したような要因で未充填部分が発生する虞がある。
【0007】
また、従来方法では、充填材検知穴からの充填材の流出を目視で判定することで充填状況の確認を行うようにしているが、工事現場では脚注や鉄筋、鉄骨が過密になることが多く、そのような場合には充填材検知穴を目視し難く、充填状況の確認を容易に行えないという問題もある。
【0008】
この発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、形がいびつになったり、切り欠け部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製でき、またモルタルまんじゅう周りにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填状況を確実に検出できる充填検知方法、モルタルまんじゅう作製装置及び充填検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は下記方法及び構成により達成される。
(1) 柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知方法において、前記基礎コンクリート面上の前記柱脚ベースプレート直下に略リング状の枠体を配置して、その枠体内にモルタルまんじゅうを作製するための無収縮モルタルの打ち込みを行った後、前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに建て込む際の前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に前記充填材を注入する工程時に、予め前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号に基づいて前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の充填検知方法において、前記センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、前記センサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して、センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出したセンサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する。
【0011】
(3) モルタルまんじゅう作製装置であって、柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備える。
【0012】
(4) 上記(3)に記載のモルタルまんじゅう作製装置において、前記略リング状の枠体の高さ方向の調整を可能とする高さ調整手段を備える。
【0013】
(5) 上記(3)又は(4)に記載のモルタルまんじゅう作製装置において、前記略リング状の枠体の外周面上に離間配置され、夫々が電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個のセンサ素子を備える。
【0014】
(6) 柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知システムにおいて、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作成するための略リング状の枠体を有するモルタルまんじゅう作製装置と、前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号に基づいて前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に注入する前記充填材の充填状況を検知する充填検知装置と、を備える。
【0015】
(7) 上記(6)に記載の充填検知システムにおいて、前記センサ素子は、電気エネルギを機械エネルギに変換するものであり、前記充填検知装置は、複数の前記センサ素子夫々に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して各センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出した各センサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)に記載の充填検知方法では、基礎コンクリート上に設けるモルタルまんじゅうの作製に略リング状の枠体を使用することで、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製することができる。そして、モルタルまんじゅうの作製後、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間に充填材を注入する工程時に、充填材の注入が断続的に行われたとしても、略リング状の枠体の外周面上にセンサ素子を配置させて、センサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号値に基づいて充填材の充填状況を検知しているので、未充填部分があった場合には、直ちにこれを検出することができる。これにより、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にすることができる。また、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0017】
上記(2)に記載の充填検知方法では、センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、そのセンサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して振動周波数特性を判定することで、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0018】
上記(3)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを容易に作製することができる。これにより、未充填の発生割合を低く抑えることができ、鉄骨柱と基礎コンクリートの確実な接続が可能となる。
【0019】
上記(4)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体が高さ調整手段を備えるので、モルタルまんじゅう作製時のモルタルまんじゅうの高さや、水平出しを容易に行うことができる。
【0020】
上記(5)に記載のモルタルまんじゅう作製装置では、略リング状の枠体に複数のセンサ素子を備えるので、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。特に、センサ素子をリング状枠体の外周面全域に亘って設けることで、充填材の充填状況を余すことなく検知することが可能となる。
【0021】
上記(6)に記載の充填検知システムでは、モルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製することができる。また、モルタルまんじゅう作製後にモルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間に充填材を注入する工程において、たとえ充填材の注入が断続的に行われたとしても、モルタルまんじゅう作製装置のセンサ素子と充填検知装置とにより充填材の充填状況を検知するので、未充填があった場合には、直ちにこれを検出することができる。これにより、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にできる。また、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。
【0022】
上記(7)に記載の充填検知システムでは、センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを備え、そのセンサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して振動周波数特性を判定するので、充填材の充填状況を非破壊で確認することができる。特に、複数個のセンサ素子を略リング状の枠体の外周面全域に亘って設けることで、充填材の充填状況を余すことなく検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る充填検知システムの概略構成を示すブロック図である。この図において、本実施の形態に係る充填検知システム1は、モルタルまんじゅう作製装置2と、充填検知装置3とを備えて構成される。
【0025】
モルタルまんじゅう作製装置2は、図7に示すように、柱脚ベースプレート5を接続した鉄骨柱6の基礎コンクリート7への建て込みの際に、基礎コンクリート7面上に設けるモルタルまんじゅう8の作製のために用いられるとともに、モルタルまんじゅう8の作成後、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間に生ずる隙間に充填材(セメントミルク、モルタル等)9を注入した際の充填材の充填状況を検知するために用いられる。なお、充填材9は、柱脚ベースプレート5の周りに仮設される充填材流れ止め型枠10と柱脚ベースプレート5との間より注入する。
【0026】
図1に戻り、モルタルまんじゅう作製装置2は、略円形に形成されたリング状枠体21と、それぞれが電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個(本実施形態では6個)の圧電スピーカ(センサ素子)22とを備えている。なお、圧電スピーカの代わりに圧電セラミック振動板を用いても良い。また、センサ素子としての圧電スピーカ又は圧電セラミック振動板の数は6個に限定されるものではなく、それ以下又はそれ以上であっても構わない。
【0027】
モルタルまんじゅう作製装置2のリング状枠体21は、図2に示すように、金属(又は樹脂)でできており、その外周側の上縁には、それぞれL字状に形成されたセンサ取り付け金具21aが60度の間隔で取り付けられている。
センサ取り付け金具21aは、図3に示すように、スポット溶接25でリング状枠体21の本体に取り付けられる。なお、スポット溶接で取り付ける以外には、図4に示すように、ネジ(又はリベット)26で取り付ける方法や、図5に示すように、リング状枠体21に厚みを持たせてその周方向に複数の穴27を形成し、各穴27内にセンサ取り付け金具21aの一端部を差し込むことで取り付ける方法などがある。
【0028】
また、モルタルまんじゅう作製装置2のリング状枠体21の外周面には、図6に示すように、作製するモルタルまんじゅうの高さと水平出しを行うための高さ調整金具21bが取り付けられている。この高さ調整金具21bは、L字状に形成されてその一片にネジ穴が切られた本体30と、この本体30のネジ穴に螺合する高さ調整用ネジ31とから構成され、リング状枠体21の周方向に沿って120度の間隔で3個設けられる。なお、高さ調整金具21bの本体に対する取り付けもセンサ取り付け金具21aの取り付けと同様、スポット溶接、ネジ(リベット)、差込み等が挙げられる。なお、リング状枠体21に取り付ける高さ調整金具21bの個数も3個に限定されるものではなく、それ以上又はそれ以下であっても良い。
【0029】
高さ調整金具21bの高さ調整用ネジ31を本体30に入り込む方向に廻すことで、高さ調整用ネジ31の先端が基礎コンクリート7に当たり、その後、さらに廻し込んで行くことでリング状枠体21が持ち上がり、作製するモルタルまんじゅうの高さLが高くなる。このように高さ調整金具21bによって、基礎コンクリート7面に合わせて作製するモルタルまんじゅうの高さを所望の値に設定することができ、さらにモルタルまんじゅうの水平出しも容易に行うことができる。
【0030】
6個の圧電スピーカ22は、それぞれ圧電素子を使用したものであり、電気信号を機械信号に変換して出力する。各圧電スピーカ22は、図3、図4又は図5に示すように、リング状枠体21から突出したセンサ取り付け金具21aの下面に取り付けられる。
圧電スピーカ22をセンサ取り付け金具21aの下面に取り付けることで、充填材9がモルタルまんじゅう8の高さまで充填されたときに充填材9の充填状況を検知できることになり、モルタルまんじゅう周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に対して充填材9を確実に充填させることが可能となる。なお、リング状枠体21の高さ方向に沿って複数個の圧電スピーカ22を取り付ければ、充填状況の進行を逐次把握することが可能である。即ち、充填材の注入の進行に応じて下の方の圧電スピーカ22から順次充填材を検知して行くので、充填状況の進行が分かる。
【0031】
次に、モルタルまんじゅう作製装置2の使用方法について、図7を参照して説明する。
まず、モルタルまんじゅう作製装置2を基礎コンクリート7上面で、かつ、柱脚ベースプレート5の中央下部に相当する位置に配置した後、高さ調整金具21bの高さ調整用ネジ31を調整して高さ調整を行うとともに、リング状枠体21上端の水平出しを行う。高さ調整及び水平出しを行った後、リング状枠体21内に無収縮モルタルを打ち込み、その後、リング状枠体21の上端部をコテで均して柱脚ベースプレートとの間で隙間ができないように水平出しを行う。
【0032】
モルタルまんじゅう作製装置2は、そのリング状枠体21が最初から真円に近いことと、高さ調整金具21bを備えることから、極めて容易に柱脚ベースプレート5に密着するモルタルまんじゅう8を作製することができる。また、真円に近いモルタルまんじゅうが作製できることから、後工程の充填材を注入する工程において、充填材の流れに変化を生じ難くして、従来技術で生じた空気溜りによる未充填部分の発生を低く抑えることができる。
柱脚ベースプレート下のモルタルまんじゅう周りに生じる充填材の未充填部分は目視することができないので、充填材注入時に何等かの方法で未充填部分を検知することが未充填部分を減らす意味で有効である。そして、未充填部分が検知できれば、注入方法の見直しができることや、施工のやり直しの判断が確実にできる。
本実施の形態の充填検知システム1では、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22と充填検知装置3により充填材の充填状況を検知するので、ユーザはその結果から充填状況を容易に判断することができる。
【0033】
次に、充填検知装置3について説明する。
図8は、充填検知装置3の概略構成を示すブロック図である。この図において、充填検知装置3は、信号発生・印加部50と、モルタルまんじゅう作製装置2の圧電スピーカ22の個数と同数の周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6と、判定部70と、表示部80とを備えて構成される。
信号発生・印加部50は、同期信号発生器51と、可変周波数発振器52と、増幅器53とから構成される。同期信号発生器51は、可変周波数発振器52を繰り返し動作させるための同期信号を発生する。
可変周波数発振器52は、周波数が所定の周波数範囲(例えば1kHzから20kHz)で連続的に変化する正弦波の電気信号を発生する。この場合、同期信号発生器51から同期信号が出力される毎に初期周波数(例えば1kHz)から繰り返し正弦波信号を発生する。
増幅器53は、可変周波数発振器52からの正弦波信号を、モルタルまんじゅう作製装置2の圧電スピーカ22を駆動できるレベルまで増幅し、加振用信号Vrとして出力する。
【0034】
各周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6は、モルタルまんじゅう作製装置2の各圧電スピーカ22と1対1の関係となっており、夫々、抵抗61と、差動増幅器62と、4象限掛け算器63と、ローパスフィルタ64とから構成される。
抵抗61は、信号発生・印加部50の増幅器53と、モルタルまんじゅう作製装置2との間に直列に介挿され、その両端に、モルタルまんじゅう作製装置2の1つの圧電スピーカ22に流れる電流に対応する電圧が発生する。
圧電スピーカ22に流れる電流の振幅と位相は周波数の変化に応じて変化することから、抵抗61の両端に発生する電圧は圧電スピーカ22の周波数特性を反映したものになる。
【0035】
差動増幅器62は、抵抗61の両端に発生する電圧を増幅して電圧Viを出力する。
4象限掛け算器63は、信号発生・印加部50の増幅器53から出力される加振用信号Vrと差動増幅器62から出力される電圧Viを乗算して、これらの電圧に対するノイズの影響を除去する。
ローパスフィルタ64は、4象限掛け算器63の出力信号から以下で説明するcos(2ωt+α+β)分を除去した信号(出力電圧Vo)を出力する。なお、本実施の形態では、図1に示すように、6つの周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6に対して1つの信号発生・印加部50を設けているが、6つの周波数特性検出部60−1、60−2、…、60−6夫々に対して1つの信号発生・印刷部50を設けても構わない。
【0036】
判定部70は、図示せぬマイコン、RAM、ROM及びA/D変換器を備えており、モルタルまんじゅう作製装置2の各圧電スピーカ22に充填材を接触させないときの固有の振動周波数特性を基準として、ローパスフィルタ64から出力される信号から、各圧電スピーカ22に対する充填材の接触・非接触を判定し、その結果(良否)を表示部80に表示する。なお、各圧電スピーカ22の固有の振動周波数特性を一度設定しておくことで以後メンテナンス時以外、再設定する必要はなくなる。また、各圧電スピーカ22の固有の振動周波数特性は、上記したRAMに記憶される。また、マイコンを制御するためのプログラムは、上記したROMに記憶されている。
【0037】
次に、上記構成の充填検知装置3の動作について説明する。
可変周波数発振器52にて発生した正弦波信号が増幅器53で増幅された後、加振用電圧Vrとして、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22夫々に印加される。以後、6個の圧電スピーカ22夫々に対応する動作が全て同じであるので、1個の圧電スピーカ22に注目して説明を続ける。
加振用電圧Vrが圧電スピーカ22に印加されることによって機械的振動が発生し、その圧電スピーカ22に流れる電流に対応する電圧が抵抗61に発生する。抵抗61に発生した電圧が差動増幅器62にて増幅されて電圧Viが得られ、その電圧Viが4象限掛け算器63に入力される。
【0038】
一方、信号発生・印加部50の増幅器53からの加振用電圧Vrは4象限掛け算器63にも入力され、加振用電圧Vrと差動増幅器62からの電圧Viとが乗算されて、これらの電圧に対するノイズが除去される。そして、ノイズが除去された4象限掛け算器63からの出力信号がローパスフィルタ64に入力され、cos(2ωt+α+β)成分が除去されて出力電圧Voが得られる。この出力電圧Voは、加振用電圧Vrの周波数変化に対する圧電スピーカ22の周波数特性(振幅と位相)を反映した信号になる。このとき、圧電スピーカ22の表面に充填材9が接触していない(空気が接触している)と、図9に示すように、圧電スピーカ22の持つ固有振動数付近の周波数にピークを持った電圧が現れる。これに対して、圧電スピーカ22の周囲に充填材9が充填されていると、図10に示すように、圧電スピーカ22の振動特性が変化してピーク電圧の位置と大きさが変化する。すなわち、ピーク電圧が殆ど無い状態になる。判定部70は、このピーク電圧の変化から充填材の充填状況を判定し、その結果を表示部80に表示する。
【0039】
特に、判定部70は、各周波数特性検出部60−1〜60−6を短時間に切り替えて、各周波数特性検出部60−1〜60−6の出力電圧Voを取り込み、それぞれについて判定を行う。因みに、充填材の検知は、例えば図1において、矢印90で示す方向から充填材が注入されたとすると、それに一番近い圧電スピーカ22から検知が行われ、その後、充填される充填材に近い順で検知が行われる。そして、最も遠い圧電スピーカ22にて充填検知が行われる。全ての圧電スピーカ22にて検知が行われると充填が完了し、1つでも検知が行われない場合は空気溜りによる未充填箇所が生じていると判定して、注入方法の見直しや、施工のし直しの判断とする。
【0040】
ここで、図11は充填材を連続して注入したときの充填検知結果の一例である。また、図12は充填材を断続して注入したときの充填検知結果の一例である。図11及び図12において、縦軸は経過時間を示しており、横軸はセンサ番号を示している。センサ番号は、6個の圧電スピーカ22に対し、例えば図1に示すように、反時計周りに(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)と割り当てている。充填材を連続して注入した場合は、図11に示すように、注入を開始してから6分06秒後に、(1)〜(6)全ての圧電スピーカ22にて充填材の充填を検知しているのに対し、充填材を断続して注入した場合は、図12に示すように、注入を開始してから19分26秒後でも注入口直前の(1)の圧電スピーカ22でしか充填を検知しておらず、(2)〜(6)の圧電スピーカ22では充填を検知していないことが判る。このように、モルタルまんじゅう作製装置2はリング状枠体21の全周囲に対する充填材9の充填状況を検知することができる。
【0041】
次に、上記動作原理を、数式を用いて説明する。
ここで、Vr=Asin(ωt+α)、Vi=Bsin(ωt+β)とする。但し、A,Bは振幅、ωtは周波数、αとβは位相のずれとする。
Vr×Vi=Asin(ωt+α)×Bsin(ωt+β)
=AB[cos(β−α)−cos(2ωt+α+β)]/2 …(1)
【0042】
式(1)のcos(β−α)の部分は、位相差に合わせて変化する直流成分であり、ここに電圧Viの振幅成分も含まれる。また、cos(2ωt+α+β)の部分は、元の加振用電圧Vrと電圧Viの2倍の周波数の信号である。必要とする周波数特性の情報は、電圧Viの振幅(大きさ)であるので、式(1)のcos(β−α)のみで良い。したがって、ローパスフィルタ64を通過させてcos(2ωt+α+β)の成分を除去すればよい。このようにして出力電圧Voには周波数特性が電圧の形で現れる。
【0043】
図9及び図10で示したように、モルタルまんじゅう8周りの柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に充填材9が充填されると、ピークの周波数とレベルが変化することから、その状況を検知することができる。
【0044】
このように、本実施の形態の充填検知システム1によれば、リング状枠体21を有するモルタルまんじゅう作製装置2を備えるので、形がいびつになったり、切り欠き部ができたりすることのないモルタルまんじゅう8を作製することができる。また、モルタルまんじゅう作製装置2に、高さ調整を可能とする高さ調整21bを設けたので、モルタルまんじゅう8の高さを所望の値に設定することができ、更にモルタルまんじゅう8の水平出しも容易に行うことができる。また、モルタルまんじゅう作製後のモルタルまんじゅう8周りにおける柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間に充填材9を注入する工程において、その注入が断続的に行われたとしても、モルタルまんじゅう作製装置2の6個の圧電スピーカ22と充填検知装置3とで充填材9の充填状況を非破壊で検知するので、未充填部分を検知した場合には充填材9の注入が断続的になったことが分かり、注入方法の見直しができることや、施工のし直しの判断を確実にできる。これにより、柱脚ベースプレート5と基礎コンクリート7との間の隙間への充填材9の充填を確実に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、単一の周波数範囲の正弦波を用いたが、周波数範囲を切り替える周波数範囲切替器(図示略)を設けて、複数の周波数範囲の正弦波を択一的に選択できるようにしても良い。この場合、可変周波数発振器52は、周波数範囲切替器にて切り替えられた範囲の周波数帯で正弦波信号を繰り返し発生させる機能を有することになる。このように複数の周波数範囲の正弦波を択一的に選択できるようにすることで、柱脚ベースプレートと基礎コンクリートの構造や材質等の物理的な特性に応じて測定に最適な周波数範囲を選択することができ、より精度の高い測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、形がいびつになったり、切り欠け部ができたりすることのないモルタルまんじゅうを作製でき、またモルタルまんじゅう周りにおける柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填を確実に行うことができるといった効果を有し、鉄骨造やCFT造の柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みにおけるモルタルまんじゅうの作製や、柱脚ベースプレートと基礎コンクリートとの間の隙間への充填材の充填状況を非破壊で検出する充填検知装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係る充填検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のモルタルまんじゅう作製装置のリング状枠体の概観を示す斜視図である。
【図3】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の取り付け例を示す図である。
【図4】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の他の取り付け例を示す図である。
【図5】図2のリング状枠体におけるセンサ取り付け金具の他の取り付け例を示す図である。
【図6】図2のリング状枠体における高さ調整金具を示す図である。
【図7】柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込み後の状態を示す図である。
【図8】図1の充填材検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図1の充填材検知装置での測定結果の一例を示し、圧電スピーカに充填材が接触していないときの出力電圧波形図である。
【図10】図1の充填材検知装置での測定結果の一例を示し、圧電スピーカに充填材が接触しているときの出力電圧波形図である。
【図11】充填材を連続注入した時の充填検知結果を示す図である。
【図12】充填材を断続的に注入した時の充填検知結果を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 充填検知システム
2 モルタルまんじゅう作製装置
3 充填検知装置
5 柱脚ベースプレート
6 鉄骨柱
7 基礎コンクリート
8 モルタルまんじゅう
9 充填材
10 充填材流れ止め型枠
21 リング状枠体
21a センサ取り付け金具
21b 高さ調整金具
22 圧電スピーカ
31 高さ調整用ネジ
50 信号発生・印加部
51 同期信号発生器
52 可変周波数発振器
53 増幅器
60−1〜60−6 周波数特性検出部
61 抵抗
62 差動増幅器
63 4象限掛け算器
64 ローパスフィルタ
70 判定部
80 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知方法において、
前記基礎コンクリート面上の前記柱脚ベースプレート直下に略リング状の枠体を配置して、その枠体内にモルタルまんじゅうを作製するための無収縮モルタルの打ち込みを行った後、前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに建て込む際の前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に前記充填材を注入する工程時に、予め前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号に基づいて前記充填材の充填状況を検知する充填検知方法。
【請求項2】
前記センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、前記センサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して、センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出したセンサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する請求項1に記載の充填検知方法。
【請求項3】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備えるモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項4】
前記略リング状の枠体の高さ方向の調整を可能とする高さ調整手段を備える請求項3に記載のモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項5】
前記略リング状の枠体の外周面上に離間配置され、夫々が電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個のセンサ素子を備える請求項3又は請求項4に記載のモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項6】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知システムにおいて、
前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作成するための略リング状の枠体を有するモルタルまんじゅう作製装置と、
前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号に基づいて前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に注入する前記充填材の充填状況を検知する充填検知装置と、
を備える充填検知システム。
【請求項7】
前記センサ素子は、電気エネルギを機械エネルギに変換するものであり、
前記充填検知装置は、複数の前記センサ素子夫々に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して各センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出した各センサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する請求項6に記載の充填検知システム。
【請求項1】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知方法において、
前記基礎コンクリート面上の前記柱脚ベースプレート直下に略リング状の枠体を配置して、その枠体内にモルタルまんじゅうを作製するための無収縮モルタルの打ち込みを行った後、前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに建て込む際の前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に前記充填材を注入する工程時に、予め前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号を取り込み、この出力信号に基づいて前記充填材の充填状況を検知する充填検知方法。
【請求項2】
前記センサ素子として、電気エネルギを機械エネルギに変換するものを使用し、前記センサ素子に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して、センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出したセンサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する請求項1に記載の充填検知方法。
【請求項3】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作製するための略リング状の枠体を備えるモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項4】
前記略リング状の枠体の高さ方向の調整を可能とする高さ調整手段を備える請求項3に記載のモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項5】
前記略リング状の枠体の外周面上に離間配置され、夫々が電気エネルギを機械エネルギに変換する複数個のセンサ素子を備える請求項3又は請求項4に記載のモルタルまんじゅう作製装置。
【請求項6】
柱脚ベースプレートを接続した鉄骨柱の基礎コンクリートへの建て込みに際して、前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間の隙間に注入する充填材の充填状況を検知する充填検知システムにおいて、
前記基礎コンクリート面上で且つ前記柱脚ベースプレート直下部分に無収縮モルタルを用いたモルタルまんじゅうを作成するための略リング状の枠体を有するモルタルまんじゅう作製装置と、
前記略リング状の枠体に配置したセンサ素子の出力信号に基づいて前記モルタルまんじゅう周りの前記柱脚ベースプレートと前記基礎コンクリートとの間に注入する前記充填材の充填状況を検知する充填検知装置と、
を備える充填検知システム。
【請求項7】
前記センサ素子は、電気エネルギを機械エネルギに変換するものであり、
前記充填検知装置は、複数の前記センサ素子夫々に周波数が経時的に変化する電気信号を印加して各センサ素子の振動周波数特性を検出し、検出した各センサ素子の振動周波数特性に基づいて前記充填材の充填状況を検知する請求項6に記載の充填検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−46940(P2007−46940A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229338(P2005−229338)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(598159333)伊藤忠丸紅テクノスチール株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(598159333)伊藤忠丸紅テクノスチール株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]