説明

充電コネクタ

【課題】装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることを確実に防止することができる充電コネクタを提供する。
【解決手段】充電コネクタは、本体部に固定された軸を中心に揺動する第1揺動アームと、挿入部から突出可能な抜け止めフックと、抜け止めフックが突出するように付勢する第1付勢部材とを備える。さらにソレノイド50、タイマリレー手段63、スイッチ手段61を有し、ソレノイド50のプランジャ51の進出に対応して、抜け止めフックを突出した状態に保持する押え片を備える。ソレノイド50の駆動は、タイマリレー手段63が規定する所定の時間行われる。プランジャ51が適正位置まで進出すれば、スイッチ手段61により上記所定時間の経過後においても、電源PSとソレノイド50を導通させ、抜け止めフックを挿入部から突出した状態に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を備える装置のインレットに接続し、装置の蓄電池に給電するための充電コネクタに関する。特に、装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることを確実に防止することができる充電コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、蓄電池(バッテリー)を搭載し、その電力でモータを駆動して走行する電動車両(代表的には、電気自動車)の普及が進められており、電気自動車のインフラ整備として充電器の拡充が図られている。また、電気自動車の普及に向け、電気自動車用急速充電器の規格化が進められている(例、日本電動車両規格(JEVS:Japan Electric Vehicle Standard))。
【0003】
充電器側の充電コネクタに関する技術が、例えば特許文献1に記載されている。この充電コネクタの使用方法は、充電コネクタの先端部を車両側インレット(装置側インレット)に差し込み、その後さらに、充電コネクタのレバーを握ることで、車両側インレットへの嵌合を完了する。このとき、充電コネクタが差し込まれることで、先端部の外周面からフックが突出し、車両側インレットの内周面に設けられた凹部に係合して、充電コネクタと車両側インレットとが係止される。また、嵌合状態において、所謂ソレノイド(電磁コイルとプランジャとバネとを備える機構部品)の通電駆動により解除レバーをロックすることで、給電中に誤って解除レバーが操作されることを防止する。一方、充電コネクタを車両側インレットから取り外すときは、給電終了により、ソレノイドへの通電が停止され解除レバーのロックが解除される。次いで、解除レバーを操作して、車両側インレットの内周面の凹部に係合するフックを引っ込め、係合を解除した状態で、充電コネクタを車両側インレットから引き抜く(特許文献1(段落0023−0026)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−192802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充電コネクタには、安全性や操作性に優れることが望まれる。しかし、上記した特許文献1に記載されるような従来の充電コネクタは、次のような課題がある。
【0006】
給電中に車両側インレットから充電コネクタが抜けないように、充電コネクタのフックと車両側インレットの凹部との係合を解除するための解除レバーをソレノイドの通電駆動によりロックして、解除レバーの操作を禁止し、この通電の停止によりロックを解除して、解除レバーの操作を許容している。このとき、ロックのためのソレノイドの駆動に合わせて充電コネクタに設けたLEDランプが点灯され、ロックの解除のためのソレノイドの駆動によりLEDランプが消灯されて、ロックとその解除がユーザに知らされる。つまり、ソレノイドのプランジャが所定の位置まで進出して確実に解除レバーがロックされたかどうかに関係なく、ソレノイドが駆動したか否かにより、解除レバーの操作の禁止と許容が行われる構造となっている。この不具合の概要を図14の模式図にて説明する。この模式図では、充電器の電源PSと充電コネクタとが接続された状態を示している。この電源には、ソレノイド50とLEDランプ5とが並列に接続されている。ここで、図14(A)に示すように、フック11P(フックと一体の部材の一部)と解除レバー80の各貫通孔が重なった状態において、プランジャ51が両貫通孔を貫通すれば、解除レバー80の操作が禁止され、フック11Pも車両側インレットの凹部に係合した状態が維持される。しかし、図14(B)に示すように、各貫通孔がずれた状態においてプランジャ51が進出された場合、一方の貫通孔にしか、場合によっては双方の貫通孔にプランジャ51が貫通されず(細線表示)、フック11Pが解除レバー80と共に適正にロックされていないにもかかわらず、LEDランプ5が点灯し、フック11Pがロックされているように誤認する。そのため、プランジャ51が適正位置にまで進出したことを検出して、充電コネクタのフック11Pと車両側インレットの凹部との係合と解除を確実に動作させられる技術が求められている。
【0007】
また、上記の従来技術では解除レバーのロックを利用して、充電コネクタのフックと車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを間接的に防止している。そのため、衝撃や振動、或いはフックを突出させる部品(特許文献1では「板ばね38」)の破損など、解除レバーの操作に関係なく、抜け止めフックが引っ込むようなトラブルが生じたときは、充電コネクタのフックと車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを防止することができない。よって、給電中、車両側インレットから充電コネクタが不用意に抜ける虞があり、安全性の点で問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、ソレノイドのプランジャが適正位置まで進出したことを確実に検知でき、装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることを確実に防止することができる充電コネクタを提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、充電コネクタのフックと装置側インレットの凹部との係合が解除されることを直接的に防止できる充電コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の充電コネクタは、蓄電池を備える装置のインレットに接続して前記装置の蓄電池に充電器から給電するためのものであり、本体部とこの本体部の先端側に設けられる挿入部とを備える。この挿入部は、装置側のインレットに差し込まれる。また、この充電コネクタは、第1揺動アームと、抜け止めフックと、第1付勢部材と、ソレノイドと、押え片と、タイマリレー手段と、スイッチ手段とを備えることを特徴とする。上記第1揺動アームは、本体部側から挿入部側に亘って延設され、本体部に固定された軸を中心に揺動する。上記抜け止めフックは、第1揺動アームの軸より挿入部側の前方部分に設けられ、挿入部から突出可能である。上記第1付勢部材は、抜け止めフックが突出するように第1揺動アームを付勢する。上記ソレノイドは、プランジャを有し、通電時にプランジャを一方向に移動させ、非通電時にプランジャを元の位置に復帰させる。上記押え片は、プランジャの進出に対応して、第1揺動アームの抜け止めフックを突出した状態に保持する。上記タイマリレー手段は、前記挿入部を前記インレットに差し込んで前記充電器側と導通することで前記ソレノイドを所定の時間動作させる。上記スイッチ手段は、前記タイマリレー手段に規定される所定の時間内に前記プランジャが適正位置まで進出した場合、引き続き前記充電器側とソレノイドとを導通させ、前記所定時間経過後もソレノイドを動作させる。
【0011】
本発明の充電コネクタでは、挿入部を装置側インレットに差し込むと、装置側インレット内周面に設けられた凹部に抜け止めフックが突出して係合する。また、抜け止めフックと装置側インレットの凹部との係合を解除するときは、解除部材を設けておき、その解除部材を用いればよい。解除部材は、上記第1揺動アームの前方部分とは反対側の後方部分に当接して、上記第1揺動アームを第1付勢部材による付勢方向とは逆方向に揺動させる押当部を有する。この解除部材の押当部を第1揺動アームの後方部分に当接させ、第1揺動アームを揺動させることにより、抜け止めフックを引っ込める。
【0012】
ここで、上記挿入部を上記インレットに差し込んで充電器側の電源とソレノイドが導通すると、プランジャが進出される。このプランジャの進出に伴い、タイマリレー手段が計時を開始する。タイマリレー手段は、設定された所定の時間にわたってソレノイドを駆動してプランジャを進出させ、所定時間の経過後はソレノイドのへの通電を遮断する。一方、スイッチ手段は、この所定の時間内にプランジャが適正位置まで進出したことを検知する。この検知に伴い、スイッチ手段は、充電器側の電源とソレノイドとを導通させ、上記所定の時間の経過後もソレノイドを動作させる。それに伴い、プランジャが適正位置まで進出したこと、換言すれば、抜け止めフックを突出状態に保持することが確実に実現できる。よって、抜け止めフックのインレットの凹部への係合が確実に保持され、不用意に充電コネクタがインレットから脱落することを防止できる。逆に、所定の時間内にプランジャが適正位置まで進出しなければ、充電器側の電源とソレノイドはスイッチ手段により導通されず、所定時間の経過に伴いプランジャが元の位置に復帰される。つまり、抜け止めフックのインレットの凹部への係合状態を保持できていないことになり、充電コネクタとインレットとの嵌合が不適切であることを認識できる。
【0013】
本発明の充電コネクタの一形態としては、前記ソレノイドとスイッチ手段とが直列に接続され、前記タイマリレー手段は、前記ソレノイドと前記充電器側との途中で前記スイッチ手段をバイパスするバイパス回路を構成することが挙げられる。
【0014】
この構成によれば、スイッチ手段の動作前においてはタイマリレー手段によりソレノイドを導通状態として駆動できる。一方、スイッチ手段は、ソレノイドの駆動により動作されるが、タイマリレー手段により規定される所定時間の経過後は、ソレノイドを導通状態として駆動させる。よって、これらの動作を簡易な回路構成で実現でき、電源に対してスイッチ手段用の信号線を別途増設する必要もない。
【0015】
本発明の充電コネクタの一形態としては、前記ソレノイドの動作に同期して、前記抜け止めフックが突出状態に保持されていることを表示する表示手段を備えることが挙げられる。
【0016】
この構成によれば、表示手段によりソレノイドの動作状態を確認することができる。即ち、タイマリレー手段の規定する所定時間の経過後に表示手段で所定の表示が行われていれば、プランジャが適正位置まで進出してスイッチ手段が動作され、抜け止めフックが突出状態に保持されていることを確認できる。表示手段は、LEDなど適宜な発光手段が好適に利用できる。より具体的には、ソレノイドの動作時にLEDを点灯し、ソレノイドの動作停止時にLEDが消灯するようにすることが挙げられる。
【0017】
本発明の充電コネクタの一形態としては、前記押え片は、前記プランジャに連動して、前記第1揺動アームの前方部分における抜け止めフックが突出する側とは反対側の面に当接するように進出することが挙げられる。
【0018】
この構成によれば、ソレノイドのプランジャに連動して、押え片が第1揺動アームの前方部分に当接するように進出する。そして、抜け止めフックが挿入部から突出した状態で、ソレノイドにより押え片が第1揺動アームの前方部分に当接するように進出することで、抜け止めフックが挿入部から引っ込まないように、第1揺動アームの揺動を規制することができる。つまり、抜け止めフックが挿入部から引っ込むことを直接的に防止することができる。そのため、使用者が誤って解除部材を操作したり、衝撃や振動、或いは抜け止めフックを突出させる第1付勢部材が破損するなどのトラブルが生じても、抜け止めフックが引っ込むことがなく、抜け止めフックと装置側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができる。よって、例えば給電中に、装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることがなく、安全性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の充電コネクタは、ソレノイドのプランジャの進出に対応して、押え片を動作させ、或いは押え片の動作を規制して、抜け止めフックが挿入部から引っ込むことを防止することができる。その際、タイマリレー手段とスイッチ手段により、プランジャを確実に適正位置まで進出した状態とすることができる。よって、抜け止めフックと装置側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができ、例えば給電中に、装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る車両用充電コネクタを模式的に示す左後方斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る車両用充電コネクタを模式的に示す要部拡大上面図である。
【図3】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す左側面図である。
【図4】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す左後方斜視図である。
【図5】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す右後方斜視図である。
【図6】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の初期状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図7】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の初期状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図8】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の一状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図9】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の一状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図10】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の別の状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図11】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構のさらに別の状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図12】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおけるスライドスイッチの状態を説明するために模式的に示す要部拡大上面図であり、(A)は初期状態でのスライドスイッチの位置を示し、(B)は後退限まで後退した状態でのスライドスイッチの位置を示す。
【図13】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおけるソレノイドの動作に関連する機構を模式的に示し、(A)は各部材の構成図、(B)は各部材の概略等価回路図である。
【図14】従来の車両用充電コネクタにおけるソレノイドとフック及び解除レバーの関係を示し、(A)はソレノイドのプランジャが適正位置まで進出した状態の概略構成図、(B)はプランジャが適正位置まで進出できなかった場合の概略拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。ここでは、蓄電池を備える装置が電動車両(具体的には、電気自動車)であり、充電コネクタが車両用充電コネクタである場合を例として説明する。なお、図中、同一符号は同一部分を示す。
【0022】
(実施の形態1)
図1に示す車両用充電コネクタ(以下、単に「充電コネクタ」と呼ぶ場合がある)100は、図示しない電気自動車のインレット(車両側インレット)に接続して、電気自動車の蓄電池に給電するために利用される。この充電コネクタ100は、図示しない充電器から延びるケーブル200の先端に取り付けられ、二つ割れのアルミ合金製カバー(右カバーと左カバー)で外装されている。充電コネクタ100は、L字状の本体部1と、本体部1の先端に設けられる挿入部2と、本体部1の背面に形成されるハンドル部3とを備え、本体部1の後端からケーブル200が導入されている。挿入部2は、車両側インレットに差し込まれる部分であり、抜け止めフック11が外周面から露出するように切欠き41が形成されている(図2参照)。ハンドル部3は、C字状であり、一端側が本体部1の上面に沿って延長するように形成され、他端側が本体部1の後端に連結されている。このハンドル部3の上面にはスライドスイッチ4の一部が露出するように配置され、ハンドル部3の背面下方にはLEDランプ5(表示手段)が埋め込まれている。
【0023】
充電コネクタ100の内部構造を、図3〜7を用いて説明する。図3、4、6は左カバーを、図5、7は右カバーをそれぞれ取り外した状態であり、いずれの図も充電コネクタ100を車両側インレットに差し込んで嵌合させる前の状態(初期状態)を示している。図3〜5に示すように、本体部1には、ケーブル200が配設されると共に、後述する機械部品や機構部品が格納されている。また、挿入部2には、端子(図示せず)が格納されており、端子は端子ケース70に収納されている。以下、充電コネクタ100における車両側インレットに嵌合させるための嵌合機構について説明すると共に、後述するソレノイド50を用いて、この嵌合機構を確実にロックさせるための機構を説明する。なお、端子は、例えばJEVS G 105-1993などの規格に準拠した端子配列となっており、ここでは説明を省略する。
【0024】
充電コネクタ100は、第1揺動アーム10と、抜け止めフック11と、第1付勢部材12とを備える(図4、6参照)。第1揺動アーム10は、本体部1側から挿入部2側に亘って延設され、本体部1に固定された軸13を中心に揺動する。抜け止めフック11は、第1揺動アーム10の軸13より挿入部2側の前方部分に設けられ、挿入部2から突出可能である。第1付勢部材12は、抜け止めフック11が突出するように第1揺動アーム10を付勢する。
【0025】
この例では、第1揺動アーム10は、棒状の部材であり、中央部に軸13が挿通される孔が形成されており、この軸13に揺動可能に支持されている。抜け止めフック11は、第1揺動アーム10の先端部に設けられており、挿入部2に形成された切欠き41(図2参照)から挿入部2の径方向外方(上方)に突出可能である。抜け止めフック11は、第1揺動アーム10における前方部分の先端部の上面から突出し、第1揺動アーム10の先端側に向かって傾斜する傾斜面を有するくさび状に形成されている。この抜け止めフック11は、挿入部2が車両側インレットに確実に差し込まれたとき、車両側インレットの内周面に設けられた凹部に対応する位置に位置する。この抜け止めフック11の位置は、後述する第2揺動アーム20に設けられた突起部21よりも挿入部2の前方側である。一方、第1揺動アーム10の前方部分とは軸13を挟んで反対側の後方部分は、L字状に屈曲し、後端部が本体部1の径方向内方(下方)に突出している。
【0026】
またこの例では、第1付勢部材12に捻じりバネを利用している(図4参照)。具体的には、捻じりバネ12を軸13に同心状に配置し、捻じりバネ12の一端を第1揺動アーム10に固定し、他端を本体部1に固定する。そして、第1揺動アーム10の先端部に設けられた抜け止めフック11が挿入部2から突出するように、第1揺動アーム10を揺動(回動)させる方向に付勢するように捻じりバネ12を取り付けている。第1揺動アーム10の第1付勢部材12による揺動は、同アーム10の前方部分が本体部1の内周面に当接するまで許容される。
【0027】
さらにこの例では、第1揺動アーム10の前方部分に貫通部14が形成されている(図4、5参照)。この例では、貫通部14が貫通孔であるが、貫通部としては貫通孔以外にも、例えば、第1揺動アーム10の前方部分の一部を切欠いた切欠きであってもよい。
【0028】
この例の充電コネクタ100は、第2揺動アーム20と、突起部21と、第2付勢部材22とを備える(図5、7参照)。第2揺動アーム20は、本体部1側から挿入部2側に向かって延設され、本体部1に固定された軸13を中心に揺動する。突起部21は、第2揺動アーム20の軸13より挿入部2側の前方部分に設けられ、本体部1と挿入部2との境界から突出可能である。第2付勢部材22は、突起部21が突出するように第2揺動アーム20を付勢する。
【0029】
この例では、第2揺動アーム20は、棒状の部材であり、中央部に軸13が挿通される孔が形成されており、この軸13に揺動可能に支持されている。つまり、第1揺動アーム10と第2揺動アーム20とは、同じ軸13に支持されている。また、第1揺動アーム10と第2揺動アーム20とは、左右に並列に配置されている。突起部21は、第2揺動アーム20の先端部に設けられており、挿入部2に形成された切欠き42(図2参照)から挿入部2の径方向外方(上方)に突出可能である。突起部21は、第2揺動アーム20における前方部分の先端部の上面から突出し、第2揺動アーム20の先端側に向かって傾斜する傾斜面を有するくさび状に形成されている。この突起部21は、挿入部2が車両側インレットに確実に差し込まれたとき、車両側インレットの周縁に当接する位置に位置する。一方、第2揺動アーム20の前方部分とは軸13を挟んで反対側の後方部分は、L字状に屈曲し、後端部が本体部1の径方向内方(下方)に突出している。
【0030】
またこの例では、第2付勢部材22に捻じりバネを利用している(図5参照)。具体的には、捻じりバネ22を軸13に同心状に配置し、捻じりバネ22の一端を第2揺動アーム20に固定し、他端を本体部1に固定する。そして、第2揺動アーム20の先端部に設けられた突起部21が挿入部2から突出するように、第2揺動アーム20を揺動(回動)させる方向に付勢するように捻じりバネ22を取り付けている。第2揺動アーム20の第2付勢部材22による揺動は、前方部分が本体部1の内周面に当接するまで許容される。
【0031】
また、充電コネクタ100は、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させ、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除する解除部材(ここでは、スライド棒30)を備える。スライド棒30は、第1揺動アーム10の延設方向に平行し、かつ、第1揺動アーム10の前方部分とは反対側の後方部分よりさらに後方に向かって延設され、その延設方向にスライド移動可能である。そして、このスライド棒30は、第1揺動アーム10の後方部分に当接して、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させる押当部32を有する。
【0032】
この例では、スライド棒30の先端部に押当部32が設けられており、反対側の後端部にスライドスイッチ4が連結されている。押当部32は、スライド棒30の先端部の上面から突出し、先端側に向かって傾斜する傾斜面を有するくさび状に形成されている(図4、6参照)。押当部32は、スライド棒30(スライドスイッチ4)が挿入部2側(前方)に前進したとき、第1揺動アーム10の後端部に当接し、第1揺動アーム10の後端部を押し上げることで、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させることができる。これにより、抜け止めフック11を下降させ、抜け止めフック11を挿入部2から引っ込めることで、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除する。
【0033】
またこの例では、スライド棒30を後退させる方向に付勢する第3付勢部材31を備えると共に、スライド棒30は、第2揺動アーム20の後方部分に当て止めされ、第3付勢部材31による後退を阻止する当止部33を有する。
【0034】
当止部33は、スライド棒30の先端部に設けられた押当部32から第2揺動アーム20側に向かって突出する片状に形成されており、先端側に向かって傾斜する上面を有する(図5、7参照)。スライド棒30が前進したとき、当止部33の上面が傾斜しているので、第2揺動アーム20の後端部を押し上げて通過できる。図5、7に示すように、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされることで、第3付勢部材31による付勢に抗って、スライド棒30の後退が阻止される。つまり、スライド棒30(スライドスイッチ4)が第2揺動アーム20側、即ち挿入部2側にスライドした(押し込まれた)状態で固定される。そして、挿入部2が車両側インレットに差し込まれたとき、車両側インレットの周縁に第2揺動アーム20の先端部に設けられた突起部21が当接して押し込まれて、第2揺動アーム20の後端部が上昇するように第2揺動アーム20が揺動する。これにより、当止部33と第2揺動アーム20との当止状態が解除され、スライド棒30が第3付勢部材31による付勢により後退限まで後退する。
【0035】
ここでは、第3付勢部材31に圧縮バネを利用している。具体的には、圧縮バネ31の一端を本体部1に固定された支持板43に固定し、他端をスライドスイッチ4に固定する。そして、スライド棒30(スライドスイッチ4)を後退方向、即ち挿入部2側とは反対側方向に付勢するように圧縮バネ31を取り付けている。
【0036】
さらに、充電コネクタ100は、ソレノイド50を備える。このソレノイド50は、プランジャ51を有し、通電駆動時に内蔵された電磁コイル(図示せず)によりプランジャ51を一方向に移動させ、非通電時に内蔵されたバネ(図示せず)によりプランジャ51を元の位置に復帰させる。この例では、ソレノイド50が、第1揺動アーム10の後方で、かつ第2揺動アーム20の仮想延長上とはスライド棒30を挟んで反対側であって、スライド棒30に並列に配置されている(図4、5参照)。また、プランジャ51が挿入部2側に向かって第1揺動アーム10の延設方向と平行(ここでは、水平方向)に移動する。初期状態では、非通電となっている。ソレノイド50の配置位置は、特に限定されるものではない。例えば、第1揺動アーム10における抜け止めフック11が突出する側とは反対側の方に配置し、プランジャ51を第1揺動アーム11の延設方向と直交する方向に移動させることが挙げられる。しかし、その場合、ソレノイドの設置スペースを確保することが難しい。挿入部2には、車両側インレットの端子と電気的に接続される端子が格納され、また、本体部1には、ケーブル200が配設されているためである。これに対し、ソレノイド50を第1揺動アーム10の後方に配置する場合、ソレノイド50の設置スペースを確保し易い。
【0037】
プランジャ51の移動方向側の先端には、連結部52が取り付けられ、その先端部に押え片53が設けられている。連結部52は、プランジャ51の移動方向側に延びる板状片と、この板状片の先端側から上方に突出すると共に、第1揺動アーム10の前方部分の下方に延びる屈曲部とを有する(図4、6参照)。そして、連結部52の屈曲部先端に挿入部2(抜け止めフック11)側に延びる押え片53が設けられている(図6参照)。この例では、押え片53は、第1揺動アーム10の前方部分に対向する上面において、挿入部2(抜け止めフック11)側に向かって厚さが薄くなるように傾斜した傾斜面を有する。この押え片53は、ソレノイド50が非通電状態、即ちプランジャ51が元の位置にある状態では、第1揺動アーム10の前方部分に形成された貫通孔14に臨む位置に位置し、抜け止めフック11が押し込まれたとき、第1揺動アーム10に形成された貫通孔14に遊嵌状態で挿通される。一方、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態で、ソレノイド50が通電駆動され、プランジャ51が挿入部2側に向かって移動すると、押え片53は、抜け止めフック11側に進出し、第1揺動アーム10の前方部分における抜け止めフック11が突出する側とは反対側の下面に当接する位置に位置する。このとき、押え片53は、第1揺動アーム10に形成された貫通孔14から位置ずれする。そして、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接することで、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込まないように、第1揺動アーム10の揺動が規制される。つまり、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態が維持される。
【0038】
このソレノイド50の駆動には、リミットスイッチ61(スイッチ手段)とタイマリレー手段63とが接続される基板CBが用いられる(図13参照)。充電コネクタを車両側インレットに差し込むと、充電器側の電源PSとソレノイド50を含む回路とが導通される。
【0039】
この電源PSは、充電器が車両の蓄電池に給電するための主電源とは異なり、充電コネクタと車両側インレットとが電気的につながることで、充電器と車両との間で通信が行われ、電気的接続が完了したことの信号をスタンド側に送るための別系統の副電源である。ここでは12Vの電源PSを用いている。
【0040】
上記の基板CBは、図13(A)に示すように、電源PSに並列に接続されるソレノイド50とLEDランプ5とを備える。また、この並列の両者50,5に対して直列にリミットスイッチ61が接続されている。このリミットスイッチ61はドッグを有し、そのドッグが適正位置まで進出したソレノイド50のプランジャ51に押されることよりONとなって、電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5を導通させる。
【0041】
一方、基板CB上の回路を構成するタイマリレー手段63は、図13(B)に示すように、タイマ素子63Aとリレー63Bを備える。タイマ素子63Aは、設定された所定の時間の間、リレー63BをONにしてソレノイド50(LEDランプ5)を電源PSと導通させて、リミットスイッチ61がONになる前にプランジャ51(図13A)を動作させる。より具体的には、タイマリレー手段63は、リミットスイッチ61とソレノイド50(LEDランプ5)との間を電源PSに対してバイパスする回路を形成する。タイマ素子63Aに設定される所定の時間は、例えば接続される抵抗の値とコンデンサの電圧により適宜選択すればよい。このタイマリレー手段63により、リミットスイッチ61がONとされる前は、所定の時間の間、ソレノイド50を駆動させ、ソレノイド50の駆動に伴ってリミットスイッチ61がONになると、所定時間経過後は、リミットスイッチ61を介した回路により電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5を導通させる。
【0042】
次に、充電コネクタ100における車両側インレットへの差し込み操作、及び車両側インレットからの引き抜き操作での嵌合機構の動作について、主に図6〜12を用いて詳しく説明する。
【0043】
まず、挿入部2を差し込む前の初期状態では、抜け止めフック11及び突起部21が第1付勢部材12及び第2付勢部材22による付勢により挿入部2から突出している(図6、7参照)。また、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされることで、第3付勢部材31による付勢に抗って、スライド棒30の後退が阻止されている。そのため、スライド棒30の後端部に連結されているスライドスイッチ4が挿入部2側にスライドした(押し込まれた)状態で固定される。
【0044】
ここで、スライドスイッチ4が摺動するカバーの上面において、スライドスイッチ4が押し込まれた状態では露出し、かつスライドスイッチ4が後退限まで後退したときは露出しない箇所は、表示部45に利用することができる(図4、5参照)。例えば、この表示部45に周囲と異なる色を塗装することで、色によってスライドスイッチ4が押し込まれた状態、即ち当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされていることによりスライド棒30の後退が阻止されている状態であることを視覚的に容易に判別することができる(図12(A)参照)。
【0045】
〈差し込み操作〉
挿入部2を車両側インレットに差し込むと、まず、抜け止めフック11が車両側インレットの内周面に当接し、第1付勢部材12による付勢に抗って、抜け止めフック11が押し込まれる。抜け止めフック11は傾斜面を有するので、挿入部2から突出していても、車両側インレットに挿入し易い。
【0046】
次いで、挿入部2を車両側インレットの奥まで差し込むと、突起部21が車両側インレットの周縁に当接し、第2付勢部材22による付勢に抗って、突起部21が押し込まれる(図8参照)。突起部21は傾斜面を有するので、挿入部2から突出していても、車両側インレットに本体部1が突き当たるまで挿入し易い。そして、突起部21が押し込まれることで、第2揺動アーム20の後端部が上昇するように第2揺動アーム20が揺動することにより、当止部33と第2揺動アーム20との当止状態が解除され、スライド棒30が第3付勢部材31による付勢により後退限まで後退する(図8、9参照)。このとき、抜け止めフック11が車両側インレットの内周面に設けられた凹部に対応する位置に位置することになり、第1付勢部材12による付勢により挿入部2から突出する。これにより、抜け止めフック11が車両側インレットの凹部に正常に係合して係止されることから、充電コネクタ100と車両側インレットとが完全に嵌合した状態となる。以上により、充電コネクタ100の車両側インレットへの差し込み操作が完了する。このとき、充電コネクタ100と車両側インレットとの間で端子同士の電気的接続も確立される。
【0047】
ここで、スライドスイッチ4の上面において、スライドスイッチ4が押し込まれた状態では露出せず、かつスライドスイッチ4が後退限まで後退したときは露出する箇所は、表示部46に利用することができる(図4、5参照)。例えば、この表示部46に文字などを表記したり、周囲と異なる色を塗装したりすることで、文字や色によってスライドスイッチ4(スライド棒30)が後退限まで後退したことを視覚的に容易に判別することができる(図12(B)参照)。
【0048】
さらに、抜け止めフック11が車両側インレットの凹部に突出して係止された状態で、ソレノイド50を通電駆動して、第1揺動アーム10の前方部分の下方であって、第1揺動アーム10に形成された貫通孔14からずれた位置に、押え片53を進出させる(図10参照)。これにより、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接することから、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態で、第1揺動アーム10の揺動が規制される。つまり、抜け止めフック11がロックされた状態となる。そのため、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことがなく、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合が外れることを確実に防止することができる。この例では、ソレノイド50のプランジャ51と押え片53とをつなぐ連結部52の板状片を水平方向に案内するガイド溝54(図4参照)が端子ケース70に設けられており、このガイド溝54に沿って連結部52を移動させることができるので、押え片53を水平方向の正確な位置に進出させ易い。また、押え片53の上面が傾斜しているので、押え片53が第1揺動アーム10の前方部分の下方に当接するように進出し易い。ソレノイド50への通電中は、LEDランプ5(図1参照)が点灯する。
【0049】
このソレノイド50のより詳しい駆動手順を、リミットスイッチ61やタイマリレー手段63との関連性を含めて、図13に基づいて説明する。
【0050】
充電コネクタ100を車両側インレットへ差し込むと、両者の電気的接続が確立され、それに伴って充電信号がタイマリレー手段63に入力される。この充電信号は、充電器の給電スイッチ(図示略)が操作され、主電源から車両の蓄電池に給電が指令されたことをもって充電信号としてもよいし、給電スイッチが操作されていなくても、充電コネクタが車両側インレットに差し込まれて副電源による電気的接続が確立されたことをもって充電信号としてもよい。本例では前者としている。これにより、給電中に使用者が充電コネクタ100を車両側インレットから誤って引き抜いたり、充電コネクタ100が車両側インレットから抜け落ちたりすることを確実に防止することができる。
【0051】
この充電信号のタイマリレー手段63への入力により、タイマリレー手段63の計時が開始される。この計時の開始と共に、タイマリレー手段63を介して電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5が導通される。この導通は、タイマ素子63Aに設定された所定の時間の間だけ行われる。その間、ソレノイド50のプランジャ51は進出され、LEDランプ5は点灯される。
【0052】
次に、このプランジャ51の進出状態により、リミットスイッチ61がONになるか否かが決まる。プランジャ51が適正位置にまで進出した場合、そのプランジャ51がリミットスイッチ61のドッグを押圧して同スイッチ61をONにする。その場合、ONになったリミットスイッチ61を介して電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5が導通され、ソレノイド50の駆動(プランジャ51の進出)とLEDランプ5の点灯が継続される。この場合、タイマ素子63Aに設定された所定の時間が経過すれば、タイマリレー手段63を介しての電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5との導通は遮断されるが、リミットスイッチ61を介して電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5とは導通が継続される。そのため、ソレノイド50は適正な進出状態を維持し、押え片53が第1揺動アーム10の前方部分に当接して、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態に保持されることになり、抜け止めフック11はロックされる(図10)。
【0053】
逆に、プランジャ51が適正位置にまで進出しなければ、リミットスイッチ61はONにならない。つまり、リミットスイッチ61がONになることなく所定時間が経過すれば、プランジャ51の進出が何らかの事情により適正に行われなかったことになる。この場合、上記所定時間の経過により、タイマリレー手段63を介しての電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5との導通は遮断される。また、プランジャ51が適正位置にまで進出しなければリミットスイッチ61もONにならないため、リミットスイッチ61を介して電源PSとソレノイド50及びLEDランプ5とが導通されることもない。そのため、ソレノイド50は不作動となり、LEDランプ5も消灯される。このLEDランプ5の消灯により、押え片53が抜け止めフック11を挿入部2から突出した状態に保持しておらず、即ち、充電コネクタと車両側インレットとの嵌合が適正でないことが判明する。
【0054】
〈引き抜き操作〉
ソレノイド50への通電を停止して、押え片53を元の位置(即ち、第1揺動アーム10に形成された貫通孔14の下方)に復帰させる(図9参照)。これにより、抜け止めフック11のロック状態が解除される。ソレノイド50への通電停止は、例えば、充電器(主電源)から車両への給電を終了するときに行うことが挙げられる。その他、主電源からの給電の停止とは別に適宜な操作を行うことで、副電源PSからソレノイド50への通電を停止しても良い。この通電が停止されることで、ソレノイド50のプランジャ51は元の位置に復帰され、それに伴ってリミットスイッチ61もOFFにされる。つまり、押え片53は、第1揺動アーム10の貫通部14に対応する位置に復帰され、抜け止めフック11を挿入部2から突出した状態に保持していない状態となる。
【0055】
次いで、スライドスイッチ4を挿入部2側(前方)に押し込むことで、スライド棒30を前進させ、押当部32を第1揺動アーム10の後端部に当接させる(図11参照)。また、押当部32は、第1揺動アーム10の後端部に当接し、第1揺動アーム10の後端部を押し上げることで、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させる。このとき、押当部32は傾斜面を有するので、第1揺動アーム10の後端部を押し上げ易い。そして、抜け止めフック11が下降し、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことで(図11参照)、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態が解除される。
【0056】
そして、この状態で、充電コネクタ100を車両側インレットから引き抜くことで、充電コネクタ100の車両側インレットからの引き抜き操作が完了する。引き抜き操作完了後、スライド棒30は、第3付勢部材31の付勢により、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされるまで後退して、初期状態の位置に戻る(図6、7参照)。
【0057】
以上説明した実施の形態1に係る充電コネクタ100は、次の効果を奏する。
【0058】
タイマリレー手段63により、設定された所定の時間にわたってソレノイド50を駆動してプランジャ51を進出させ、所定時間の経過後はソレノイド50への通電を遮断すると共に、リミットスイッチ61により、この所定の時間内にプランジャ51が適正位置まで進出したことを検知する。それに伴い、プランジャ51を適正位置まで進出させ、抜け止めフック11を突出状態に確実に保持することができる。よって、抜け止めフック11のインレットの凹部への係合が確実に保持され、不用意に充電コネクタ100がインレットから脱落することを防止できる。
【0059】
ソレノイド50とリミットスイッチ61とが直列に接続され、タイマリレー手段63は、電源PSとソレノイド50との回路の途中でリミットスイッチ61をバイパスするバイパス回路を構成する。そのため、リミットスイッチ61の動作前においてはタイマリレー手段63によりソレノイド50を導通状態として駆動できる。一方、リミットスイッチ61は、ソレノイド50の駆動により動作されるが、タイマリレー手段63により規定される所定時間の経過後は、ソレノイド50を導通状態として駆動させる。よって、これらの動作を簡易な回路構成で実現でき、電源PSに対してリミットスイッチ61の信号線を別途増設する必要もない。
【0060】
ソレノイド50の動作に同期して、抜け止めフック11が突出状態に保持されていることを表示するLEDランプ5を備えることで、プランジャ51が適正位置まで進出してリミットスイッチ61が動作され、抜け止めフック11が突出状態に保持されていることを確認できる。
【0061】
ソレノイド50により押え片53を第1揺動アーム10の前方部分の下方に進出させることで、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことを直接的に防止している。そのため、衝撃や振動、或いは抜け止めフック11を突出させる第1付勢部材12の破損などのトラブルが生じても、抜け止めフック11が引っ込むことがなく、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができる。よって、例えば給電中に、車両側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることを確実に防止することができる。
【0062】
また、ソレノイド50を第1揺動アーム10の後方に配置し、プランジャ51が挿入部2側に向かって水平方向に移動することで押え片53を第1揺動アーム10の前方部分の下方に進出させる構成としたことで、ソレノイド50の設置スペースを確保し易い。
【0063】
その他、本体部1と挿入部2との境界から突出可能な突起部21が設けられた第2揺動アーム20を備え、挿入部2が車両側インレットの奥まで差し込まれたとき、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退する。そのため、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退したか否かによって、車両側インレットへの差し込みが確実に行われたかどうかを確認することができる。したがって、不慣れな使用者であっても、スライド棒30(スライドスイッチ4)の状態を確認することで、車両側インレットへの差し込みを確実に行うことができ、充電コネクタ100の半嵌合を防止することができる。また、表示部45,46を備えることで、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退したことを使用者が容易に判別することができ、車両側インレットへの差し込みが確実に行われたか否かを容易に確認することができる。
【0064】
車両側インレットへの差し込み操作は、充電コネクタ100の挿入部2を車両側インレットに差し込むだけの動作でよく、上記した特許文献1に記載の充電コネクタ(差し込み+レバーを握る)に比較して、直観的に分かり易く操作性に優れる。また、充電コネクタ100の内部構造(嵌合機構)も部品点数が少なくシンプルな構造のため、信頼性が高く、小型化、メンテナンスの容易化、低コスト化を図ることができる。さらに、スライドスイッチ4をハンドル部3の上面に配置したことにより、車両側インレットからの引き抜き操作を片手で行うことが可能である。
【0065】
上述した実施の形態では、本発明の充電コネクタを車両用充電コネクタに適用し、車両側インレットに接続して車両の蓄電池に給電する場合を例に説明した。この他、例えば、車両以外の船舶や潜水艇、航空機などの移動体に搭載された蓄電装置のインレットや、家庭やビル・工場などに設置された蓄電装置のインレットが上記した車両側インレットと同様の形状、即ち、インレットの内周面に凹部を有するような場合にも、本発明を適用可能である。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、押え片として、従来の充電コネクタで用いた解除レバーを用いても良い。その他、第1揺動アーム、第2揺動アーム及びスライド棒の形態を適宜変更することが可能である。また、第1付勢部材、第2付勢部材及び第3付勢部材としては、捻じりバネや圧縮バネに限らず、例えばゴムなどでもよく、バネの種類を適宜変更することも可能である。バネの種類を変更する場合、目的に応じてバネの配置を適宜変更するとよい。さらに、ソレノイドの配置やプランジャの移動方向を適宜変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、蓄電池を備える装置のインレットに接続し、装置の蓄電池に給電するための充電コネクタに利用することができ、例えば、電気自動車用充電器に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 車両用充電コネクタ(充電コネクタ)
200 ケーブル
1 本体部 2 挿入部 3 ハンドル部
4 スライドスイッチ 5 LEDランプ(表示手段)
10 第1揺動アーム
11 抜け止めフック 12 第1付勢部材(捻じりバネ)
13 軸 14 貫通部(貫通孔) 11P フック
20 第2揺動アーム
21 突起部 22 第2付勢部材(捻じりバネ)
30 スライド棒(解除部材)
31 第3付勢部材(圧縮バネ)
32 押当部 33 当止部
41,42 切欠き 43 支持板 45,46 表示部
50 ソレノイド
51 プランジャ 52 連結部
53 押え片 54 ガイド溝
61 リミットスイッチ(スイッチ手段)
63 タイマリレー手段 63A タイマ素子 63B リレー
70 端子ケース
80 解除レバー
PS 電源(副電源) CB 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を備える装置のインレットに接続し、前記装置の蓄電池に充電器から給電するための充電コネクタであって、
本体部と、
前記本体部の先端側に設けられ、前記インレットに差し込まれる挿入部と、
前記本体部側から前記挿入部側に亘って延設され、前記本体部に固定された軸を中心に揺動する第1揺動アームと、
前記第1揺動アームの前記軸より挿入部側の前方部分に設けられ、前記挿入部から突出可能な抜け止めフックと、
前記抜け止めフックが突出するように前記第1揺動アームを付勢する第1付勢部材と、
プランジャを有し、通電時にプランジャを一方向に移動させ、非通電時にプランジャを元の位置に復帰させるソレノイドと、
前記プランジャの進出に対応して、前記第1揺動アームの抜け止めフックを突出した状態に保持する押え片と、
前記挿入部を前記インレットに差し込んで前記充電器側と導通することで前記ソレノイドを所定の時間動作させるタイマリレー手段と、
前記タイマリレー手段に規定される所定の時間内に前記プランジャが適正位置まで進出した場合、引き続き前記充電器側とソレノイドとを導通させ、前記所定の時間経過後もソレノイドを動作させるスイッチ手段と
を備えることを特徴とする充電コネクタ。
【請求項2】
前記ソレノイドとスイッチ手段とが直列に接続され、
前記タイマリレー手段は、前記ソレノイドと前記充電器側との途中でスイッチ手段をバイパスするバイパス回路を構成することを特徴とする請求項1に記載の充電コネクタ。
【請求項3】
前記ソレノイドの動作に同期して、前記抜け止めフックが突出状態に保持されていることを表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の充電コネクタ。
【請求項4】
前記押え片は、前記プランジャに連動して、前記第1揺動アームの前方部分における抜け止めフックが突出する側とは反対側の面に当接するように進出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−243391(P2012−243391A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108786(P2011−108786)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000213884)住電朝日精工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】