説明

光ケーブル

【課題】鋼線からなるテンションメンバが外被から露出される場合であっても、テンションメンバを覆う被覆層が存在するか否かの判別を容易にできるようにした光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線2の両側に鋼線からなるテンションメンバ3を配し、外被4で被覆した光ケーブルであって、テンションメンバ3の外周が、白色顔料を含有する被覆層8で被覆されていることを特徴とする。前記の被覆層8は変性ポリオレフィンをベース樹脂とし、前記の白色顔料はチタン白とするのが好ましい。また、テンションメンバ8を覆う被覆層8の厚みHは、0.05mm〜0.2mmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の管路に挿通させて布設するのに適したインドア光ケーブルで、光ファイバ心線の両側にテンションメンバを配し、外被で被覆した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のFTTH(Fiber To The Home)の本格的な導入に伴い、既設のマンションのような集合住宅においても、各戸まで光ケーブルの配線を望む要求が高くなっている。既設のマンション等では、光ファイバ布設用の管路を配設しているところは少なく、既設の電話線が入っている管路を利用して光ケーブルを布設する方法が考えられている。建物内に布設される光ケーブルは、通常、インドア光ケーブルとも言われ、光ファイバ心線や光ファイバテープ心線の両側に鋼線等のテンションメンバ(抗張力体ともいう)を配し、外被(シースともいう)で一括被覆した構成のものが用いられている。
【0003】
管路内に通線して布設する光ケーブルとして、例えば、特許文献1に開示のように、光ケーブルの外被に脂肪酸系の滑剤を含ませることにより、その外被表面の動摩擦係数を小さくする方法がある。また、特許文献2には、光ケーブルが、布設時に曲げやしごきを受けたり、布設後のヒートサイクルにより外被が伸縮するのを抑制するために、抗張力体と外被との間に接着剤を介在させて、抗張力体と外被との接着力を高めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183477号公報
【特許文献2】特開2000−171673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電話配線用の管路を利用して光ケーブルを布設する場合、管路内には既設の電話線に加えて複数の光ケーブルを通線する必要があり、十分なスペースがあるとは言えない。このような狭い管路内に光ケーブルを挿通させる場合、通線工具を用いて挿通すると既設のケーブル等を損傷させる恐れがある。そこで、通線工具を使わずに光ケーブル単体で管路内に挿通することが望まれるが、光ケーブルに細径のものを用いる(例えば、厚さ2mm×幅3mm)だけでは、挿通は容易でない。
【0006】
特許文献1に開示のように、光ケーブルの外被に滑剤を含有させて外被表面を滑りやすくする方法を用いることにより、ある程度の挿通性を改善することは可能である。しかし、光ケーブルの外被に添加した滑剤はブリードが生じやすく、光ファイバとファイバ被覆との間にまで滑剤が浸透してくる可能性がある。外被の滑剤が、ファイバ被覆の内面にまで侵入してくると、光ファイバの伝送損失増加の要因となる。また、光ケーブルの外被に滑剤を含むと、光ファイバ心線およびテンションメンバとの間でも滑りやすくなる。このため、光ケーブルの曲げやしごき、ヒートサイクル等で外被が伸縮し、光ファイバの突き出しや引っ込み等が生じやすくなるという問題がある。
【0007】
そこで、光ケーブルの管路内への通線性を高めるために、光ケーブルの外被の外寸を限界近くまで小さくすることが考えられる。しかしながら、外被内に配設されるテンションメンバとして、他の材料と比べて抗張力の大きい鋼線を用いるとしても、必要な許容張力を確保するには、現状の太さ(0.4mm〜0.5mm)より細くすることは難しい。このため、光ケーブルの外被の外寸を小さくすると、テンションメンバである鋼線に対する被覆が薄くなる。
【0008】
光ケーブルの外被が薄くなると、光ケーブルの配線作業中に発生する工具落下等に対する耐性が低下する。この結果、光ケーブルに衝撃が加わると、テンションメンバである鋼線上の外被が剥がれたり亀裂が生じたりするなどで、鋼線が露出して錆が発生しやすくなる。このため、このような事故が生じたときは光ケーブルの取り替えや布設工事のやり直しを行なうことになる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示するように、外被との接着力を高めるために、テンションメンバの外周に接着剤層を設けている場合、光ケーブルが衝撃等を受けて外被が剥がれたりしても、中の鋼線上の接着剤は残って、鋼線は外部に露出していないこともある。このような場合は、光ケーブル布設の工事のやり直し等を行なわないでも済ますことが可能である。しかし、通常、光ケーブルのテンションメンバに用いる鋼線は黒っぽい色をしており、宅内に引き込む光ケーブルは白色系の薄い色で、接着剤層はアドマーなどの透明な色のものが用いられる。
【0010】
このため、外被に亀裂が入っているが、鋼線は接着剤層に覆われて露出していない場合でも、露出していると誤判断され、余分な作業を強いられることがある。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、鋼線からなるテンションメンバが外被から露出される場合であっても、テンションメンバを覆う被覆層が存在するか否かの判別を容易にできるようにした光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光ケーブルは、光ファイバ心線の両側に鋼線からなるテンションメンバを配し、外被で被覆した光ケーブルであって、テンションメンバの外周が、白色顔料を含有する被覆層で被覆されていることを特徴とする。
前記の被覆層は変性ポリオレフィンをベース樹脂とし、前記の白色顔料はチタン白とするのが好ましい。また、テンションメンバを覆う被覆層の厚みは、0.05mm〜0.2mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光ケーブルによれば、光ケーブルに衝撃が加えられ、外被が剥がれて内部の鋼線からなるテンションメンバが露出したような場合であっても、テンションメンバが被覆層で覆われているか否かを容易に確認することができる。そして、被覆層で覆われている場合は、特に補修のための作業をしないで済ますことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による光ケーブルの実施形態の概略を説明する図である。
【図2】本発明による光ケーブルの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は本発明による光ケーブルの横断面を示す図、図1(B)は、既設の電話管路への光ケーブルの挿通状態を示す図である。図中、1は光ケーブル、2は光ファイバ心線、3はテンションメンバ、4は外被、5はノッチ、6は電話管路、7は電話線、8は被覆層を示す。
【0015】
本発明による光ケーブル1は、例えば、図1(A)に示すような一般的に知られる断面矩形状のもので、光ファイバ心線2の両側に1対のテンションメンバ3を平行に配し、外被4で一体に被覆し、外被4の両側面には、例えば、ノッチ5を設けて構成される。この光ケーブル1は、図1(B)に示すように、例えば、すでに電話線7が挿通されている既設の管路6(内径22mmΦ程度)内に、20本以上を通線することが要望されている。また、この管路6は、通常、5箇所程度の曲がりを有し、通線ロッド等を用いることなく、光ケーブル単体での押し込みで通線することが可能な光ケーブルを対象とする。
【0016】
光ケーブル内の光ファイバ心線2は、例えば、ガラスの裸ファイバ径が標準の125μm、ファイバ被覆の外径が250μm前後のもので、1または2芯で配設される。テンションメンバ3には、外径が0.4mmΦ〜0.5mmΦの単心鋼線を用い、光ファイバ心線2を両側から挟むようにして設けられる。外被4の形状は断面が長方形状で、可能な限り細径化したもので、短辺側(厚さT)が2.0mm以下、長辺側(幅D)が3.0mm以下とし、管路6内への押し込み本数を多くすることが好ましい。また、外被4の両側面には、光ケーブルの端末を形成する際に、手で外被4を長手方向に引裂いて内部の光ファイバ心線2を取り出しやすくするためのノッチ5を設けることができる。
【0017】
光ケーブル1の外被4は、ポリエチレン樹脂で形成され、特に高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。外被4に高密度ポリエチレンを用いることにより、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)に比べて、外被4の密度が高く硬く形成することができるので、管路6内への通線性を高めることができる。
【0018】
本発明は、上記構成の光ケーブルで、特に鋼線からなるテンションメンバ3の外周を白色顔料を含有する被覆層8で被覆している。被覆層8は、接着性の樹脂で押出成形で形成するのが好ましく、これにより、テンションメンバ3と外被4との接着性を高め、外被4の伸縮や蛇行を抑止し、光ファイバに対する損失増加や断線を低減することができる。被覆層8の樹脂材としては、変性ポリオレフィンをベース樹脂とするのが好ましい。変性ポリオレフィンは、テンションメンバへの押出成形性がよく、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに官能基を導入することによって接着性を高めることができ、耐衝撃性にも優れ、これら諸特性とコストのバランスもよい。
【0019】
この被覆層8に含有させる白色顔料としては、例えば、チタン白(二酸化チタン)、酸化亜鉛、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、硫化亜鉛などが考えられるが、特に、チタン白が好ましい。このチタン白(二酸化チタン)は、他の白色顔料と比べて、着色力が大きいことと隠蔽力が大きいことで知られ、外被から露出すると目立ちやすく、テンションメンバを見え難くすることができる。なお、白色顔料は、他の顔料と組合わせて、淡い灰色や淡色系の色になっていてもよい。
【0020】
被覆層8は、その厚さHが0.05mm〜0.02mmの範囲で形成されていることが好ましい。被覆層8の厚さHは、厚いほどテンションメンバ3および外被4との接着性を増すが、厚すぎると軟質であるので耐衝撃性が低下する。このため、上記した範囲でテンションメンバ3の外周全体に形成することが望ましい。
【0021】
上記したように、テンションメンバ3と外被4との間に、白色で不透明の被覆層8を介在させることにより、衝撃等により外被4に亀裂が入り、中の鋼線からなるテンションメンバ3が露出することがあっても、鋼線が被覆層8で覆われている場合は問題なしとして、余分な修復作業をしないで済ますことができる。鋼線が被覆層8で覆われているか否かは、被覆層8がテンションメンバの鋼線の色および外被4の色と異なる白色顔料が添加されて、識別しやすくされているので、鋼線の露出に対する誤判断を少なくすることができる。
【0022】
図2は、上述した光ケーブルの衝撃試験を行なった結果を示す図である。試験は、光ケーブルの1m上方から、重さ300gの錘を落下させ、テンションメンバ(鋼線)の露出状態を観察した。
試験した光ケーブルは、試料No.1がテンションメンバを被覆層なしの従来の光ケーブル、試料No.2がテンションメンバの被覆層に白色顔料を添加しない従来の光ケーブル、試料No.3がテンションメンバの被覆層に白色顔料(チタン白配合したカラーバッチ)を3重量部配合した光ケーブル、試料No.4がテンションメンバの被覆層に白色顔料(同)を10重量部配合した光ケーブルである。
【0023】
なお、試験に用いた光ケーブルの光ファイバ心線2には、標準外径125μmのガラスファイバに、外径250μmのファイバ被覆を施したものを用いた。テンションメンバ3には、太さが0.5mmΦの鋼線を用い、その被覆層8には変性ポリエチレン用い、その被覆厚さHを0.1mmとした。外被4は高密度ポリエチレン(HDPE)をベース樹脂として、厚さTを1.6mm、幅Dを2.0mmの外寸で押出成形により形成した。
【0024】
試料No.1の光ケーブルは、外被の亀裂部分から鋼線が露出し、黒色の鋼線を確認でき、このため不良と判定した。試料No.2の光ケーブルは、外被の亀裂部分から鋼線は被覆層に覆われて露出していなかったが、被覆層が識別できず鋼線が露出していると誤判断し、したがって不良と判定した。試料No.3の光ケーブルと試料No.4の光ケーブルは、外被の亀裂部分から鋼線は被覆層に覆われて露出しておらず、被覆層を識別して鋼線は露出していないと判断でき、したがって良と判定した。
【0025】
上記の結果から、鋼線からなるテンションメンバを白色顔料を配合した被覆層で覆うことにより、外被に衝撃等で亀裂生じるような場合でも、鋼線が露出しているか否かを容易に判断することができる。この結果、鋼線が被覆層で覆われている場合は、鋼線に錆びつきは生じないので光ケーブルを取り替えたり、修復するなどの手間を省くことができる。また、これにより、外被の外寸を極限まで小さくして、管路内への相通を容易にし通線性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1…光ケーブル、2…光ファイバ心線、3…テンションメンバ、4…外被、5…ノッチ、6…電話管路、7…電話線、8…被覆層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の両側に鋼線からなるテンションメンバを配し、外被で被覆した光ケーブルであって、前記テンションメンバの外周が、白色顔料を含有する被覆層で被覆されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記被覆層は、変性ポリオレフィンをベース樹脂としていることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記白色顔料は、チタン白であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記被覆層の厚みは、0.05mm〜0.2mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−33743(P2011−33743A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178546(P2009−178546)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】