説明

光コネクタおよび光コネクタ用冶具

【課題】光コネクタに一旦組み込まれた光ファイバ素線を容易に取り外し可能とする。
【解決手段】本体1と、本体1後端に設置されるエンドキャップ7と、エンドキャップ7に装着される、一対の把持プレート82と一対の差込プレート83とを有するクリップ8を有する光コネクタ100であって、エンドキャップ7は、光コネクタ100外部から導入される光ファイバケーブル102先端部に設置された外被把持部材106を収納し、外被把持部材106が一対の差込プレート83によって狭持されることで光ファイバケーブル102が本体に対して固定される、光コネクタ100に用いられる光コネクタ用冶具200であって、基部210と、基部210の後端部に二股に形成された左右一対のアーム240と、アーム240の後端部に先端が鋭角に突出したテーパ部242とを有する、光コネクタ用冶具200。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を接続するための光コネクタおよび光コネクタ用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの接続技術において、光ファイバ素線を固定支持したフェルールと、フェルールの近傍にて、フェルールから突出する組込光ファイバ素線の一部分と外部から導入された光ファイバケーブルの光ファイバ素線を圧力下で挟持するスプライス部とを、共通のコネクタ本体に装備した光コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の光コネクタは、光伝送路における接続/分離自在な接続部を、光伝送路の敷設工事現場等で作業者が容易に形成できるものとして広く用いられている。
【0003】
この特許文献1記載の光コネクタにおいて、スプライス部は、コネクタ本体の凹部に受容される断面略V字状の素線固定部材と、素線固定部材のV字をなす両翼を挟持する作動部材とを備える。素線固定部材の両翼の内側では、一対の光ファイバ素線(組込光ファイバ素線と外部から導入された光ファイバ素線)が互いに突き合わされ、この状態で、コネクタ本体の凹部に治具を用いて作動部材が嵌入されることにより、素線固定部材の両翼に閉じる方向の圧力が作用し、素線固定部材内で一対の光ファイバ素線が圧接固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−30663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作動部材の嵌入により一対の光ファイバ素線を圧力下で挟持した際に、所望の光伝送の性能が得られないとき、光ファイバ素線の端面仕上げ等に不良があったと考えられる。したがって、この場合には光ファイバ素線の接続端面を再仕上げする必要がある。しかしながら、上記特許文献1記載の光コネクタにおいては、作動部材がコネクタ本体の凹部に嵌入されているため、光コネクタに一旦組み込まれた光ファイバ素線を取り外すことは難しい。
【0006】
本発明の目的は、光コネクタに一旦組み込まれた光ファイバ素線を容易に取り外すことができる光コネクタおよび光コネクタ用冶具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、本体と、本体後端に設置されるエンドキャップと、エンドキャップに装着される、一対の把持プレートと一対の差込プレートとを有するクリップを有する光コネクタであって、エンドキャップは、光コネクタ外部から導入される光ファイバケーブル先端部に設置された外被把持部材を収納し、外被把持部材が一対の差込プレートによって狭持されることで光ファイバケーブルが本体に対して固定される、光コネクタに用いられる光コネクタ用冶具であって、基部と、基部の後端部に二股に形成された左右一対のアームと、アームの後端部に先端が鋭角に突出したテーパ部とを有する、光コネクタ用冶具である。
【0008】
また、本発明の別の態様は、本体と、本体に設置され、所定長さの第1の光ファイバ素線を予め突出して支持するフェルールと、フェルールに近接して本体に設置され、フェルールから突出する第1の光ファイバ素線および本体の外部から導入された第2の光ファイバ素線にそれぞれ圧接力を付与して、第1の光ファイバ素線と第2の光ファイバ素線とを先端突き合わせ接続状態で固定するスプライス部とを備え、スプライス部は、外部からの押込力により本体に嵌入されて、圧接力を発生させる作動部材を有し、作動部材は、押込力が付与される被押込部と、作動部材を押し出すときに押出力が付与される被押出部と、本体は、前後方向にスライドするカバースライダと、作動部材が嵌入される嵌合部と、作動部材の被押出部に対向した貫通孔とを有する光コネクタに用いられる光コネクタ用冶具であって、基部と、基部から突設され、本体の貫通孔に挿入されて作動部材の被押出部に押出力を付与するための押出部とを有し、本体に嵌合し、本体に対して押出部を位置決めするとともに、本体に嵌合する際に、貫通孔が露出される位置にカバースライダを移動させるガイド部を有する、光コネクタ用冶具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンドキャップの下段面とクリップの把持プレートとの間に形成される空隙に差込むテーパ部を有することで、エンドキャップ内に収納された外被把持部材を固定するクリップとエンドキャップとの係合状態を解除することができ、光ファイバケーブルを光コネクタから容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタの全体構成を概略的に示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタの組立状態における要部断面図。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ図1の本体の上面図、側面図、底面図および前面図。
【図4】(a)は、図3のバックボーンの構成を示す斜視図、(b)は、図4(a)のb−b線断面図。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ図1のフェルールの外観形状を示す斜視図および断面図。
【図6】図3のフレームの斜視図。
【図7】外部から導入される光ファイバケーブルの先端部の構成を示す側面図。
【図8】(a)は、図1のクリップの斜視図、(b)は、図8(a)の矢視b図。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタを構成するエレメントの斜視図、(b)は、図9(a)のb−b線断面図。
【図10】(a)は、本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタを構成するキャップの斜視図、(b)は、図10(a)の矢視b図。
【図11】(a)〜(c)はそれぞれ図10のキャップの押込時の動作を示す図。
【図12】(a)は、本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具の斜視図、(b)は図12(a)の矢視b図、(c)は図12(a)の矢視c図。
【図13】図12の治具の使用例を示す斜視図。
【図14】図12の治具の使用状態における要部断面図。
【図15】(a)は、図12の治具の他の使用例を示す斜視図、(b)は、図15(a)のb−b線断面図。
【図16】(a)〜(d)はそれぞれ図12の変形例を示す平面図。
【図17】本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタの他の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図17を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタの全体構成を概略的に示す図である。以下では、便宜上、図示のように前後左右方向および上下方向を定義し、この定義にしたがい各部の構成を説明するが、方向はこれに限定されない。光コネクタ100は、コネクタ内に予め組み込まれた光ファイバ素線(組込光ファイバ素線101)と外部から導入される光ファイバケーブル102の光ファイバ素線(導入光ファイバ素線103)とを先端突き合わせ状態で接続するためのものである。この光コネクタ100は、他の光コネクタ104に着脱可能に取り付けられる。
【0012】
なお、本明細書において、光ファイバ素線101,103とは、コアとその周囲を覆うクラッドとを有する光ファイバをいい、光ファイバのクラッドの外面に軟質の被覆を施したものを光ファイバ心線という。また、単心または多心の光ファイバ心線を抗張力体とともにシース(一般に樹脂外被)に内蔵したもの光ファイバケーブルといい、これには広義で光ファイバコードも含む。
【0013】
光コネクタ100は、前後方向に中空細長形状の本体1と、本体1の前端部に設置され、所定長さの組込光ファイバ素線101を突出して支持するフェルール2と、フェルール2に近接して本体1に設置され、組込光ファイバ素線101と導入光ファイバ素線103とを先端突き合せ接続状態で固定するスプライス部3と、本体1の後方に配設されたエンドキャップ7とを有する。エンドキャップ7には略コ字状のクリップ8が側方から取り付けられ、クリップ8の把持力により、外部から導入された光ファイバケーブル102の先端部がエンドキャップ7内で固定される。
【0014】
本体1の後端部にはコイルばね6が設置され、このコイルばね6によりフェルール2は、スプライス部3と一体に本体1に対して前方に付勢される(図4(b)参照)。この前方への付勢により、フェルール2は他の光コネクタ104のフェルール105と先端突合せ状態となり、光コネクタ100,104同士が接続される。スプライス部3における組込光ファイバ素線101と導入光ファイバ素線103との固定は、後述する光コネクタ用治具200を用いて解除できる。
【0015】
図2は、光コネクタ100の組立状態における要部断面図(図4の貫通孔34,35を通る縦断面図)であり、図3(a)〜(d)は、それぞれ本体1の上面図、側面図、底面図および前面図である。なお、図3には、エンドキャップ7も併せて示している。図3に示すように本体1は、前後方向に細長の略直方体形状をなすフレーム10と、フレーム10の外表面に前後方向にスライド可能に取り付けられたカバースライダ20と、フレーム10内に前後方向に沿って収容されたバックボーン30とを有する。なお、図3は、カバースライダ20を前方に最大にスライドさせた状態である。これらフレーム10、カバースライダ20およびバックボーン30はそれぞれ樹脂成形により形成されている。
【0016】
図4(a)は、バックボーン30の構成を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のb−b線断面図(中央軸線を通る縦断面図)である。なお、図4(a)にはスプライス部3を構成するエレメント40およびキャップ50を併せて示している。バックボーン30は、前後方向に延在する第一円柱部31と、第一円柱部31に連なり、第一円柱部31と同軸上を後方に延在し、かつ、第一円柱部31よりも小径の第二円柱部32とを有する。第一円柱部31の上面には、略矩形状の所定深さの収容凹部33が形成され、収容凹部33にエレメント40とキャップ50がそれぞれ収容される。バックボーン30は、中心軸線に対して全体がほぼ左右対称形状をなしている。
【0017】
収容凹部33の底面には、第一円柱部31の外周部まで貫通する前後方向に細長の貫通孔34,35が前後方向に互いに離間して設けられ、各貫通孔34,35はそれぞれ中心軸線を挟んで左右に設けられている。貫通孔34,35の位置は、キャップ50の脚部52、53(図10参照)の位置に対応し、前側に2つの貫通孔34が、後側に2つの貫通孔35がそれぞれ設けられている。収容凹部33の底面には、収容凹部33の前端面から後端面にかけて中心軸上にスリット溝36が形成されている。さらに、収容凹部33の左右側壁には、左右内側に突出する突起部37がそれぞれ形成されている。スリット溝36にはエレメント40の底部の折り曲げ部41が嵌合される。このとき、エレメント40の左右方向の倒れは突起部37により阻止され、エレメント40はバックボーン30の中心軸上に鉛直に立設する。
【0018】
第一円柱部31の前面中央には、後方にかけて所定深さの嵌合凹部38が設けられ、嵌合凹部38の中央には中心軸に沿って貫通孔38aが開口されている。嵌合凹部38はフェルール2の外形形状に対応した円筒面形状をなし、嵌合凹部38にフェルール2の後端部が嵌合される。また、第一円柱部31の前側外周面には、その周方向所定位置に位置決め用の凸部39が突設されている。
【0019】
第二円柱部32の内部には、貫通孔38aと同軸上に、収容凹部33から第二円柱部32にかけて貫通孔32aが形成されている。第二円柱部32の後端部外周面には周方向に係合溝32bが形成されている。
【0020】
図5(a)、(b)は、それぞれフェルール2の外観形状を示す斜視図および断面図である。フェルール2は、全体が略円柱形状をなし、その中心軸上にはフェルール2の前後端面を貫通して素線保持孔2aが開口されている。フェルール2の前端面には相手方コネクタ104のフェルール105(図1)に衝合する衝合端面が形成され、フェルール2の後端面には素線保持孔2aに向けてテーパ状の案内面2bが形成されている。フェルール2は、セラミックスや樹脂等により構成できる。
【0021】
フェルール2の素線保持孔2aには、所定長さの組込光ファイバ素線101の一部が挿入され、光ファイバ素線101は接着剤により素線保持孔2aに固定されている。組込光ファイバ素線101の前後両端面には、予め工場等により所定のカッティング仕上げが施されている。すなわち、組込光ファイバ素線101の前端面は、フェルール2の前端面と同一平面上にあり、フェルール2の軸線に直交する平坦面とされている。また、組込光ファイバ素線101の後端面は、フェルール2の後端部から所定長さだけ突出し、軸線に直交する平坦面とされている。
【0022】
フェルール2の後端部は、図4のバックボーン30の収容凹部33にエレメント40が配置された後、嵌合凹部38に嵌合され、接着剤等により固定される。このとき、組込光ファイバ素線101は、嵌合凹部38の中央の貫通孔38aを貫通して収容凹部33の前端面33aから所定長さだけ後方に突出し、組込光ファイバ素線101の後端は、エレメント40内の、前側の貫通孔36の前後方向中央部を通る鉛直面上に位置し、貫通孔32a後方から挿通された導入光ファイバ素線103(図1)の先端(前端)が、組込光ファイバ素線101の先端(後端)に、エレメント40の内部にて当接される。
【0023】
図6はフレーム10の斜視図である。フレーム10は、前面および後面が開口された枠部材であり、全体がほぼ左右対称形状をなしている。フレーム10の前側開口部11の内周面には、図3(d)に示すように、バックボーン30の前端部外周の凸部39に対応し、前後方向に係合溝12が形成されている。バックボーン30は、フレーム10の前側開口部11から挿入される。この際、フレーム10の係合溝12にバックボーン30の凸部39が嵌合してフレーム10に対するバックボーン30の周方向位置が規制され、バックボーン30の収容凹部33が鉛直上方を向く。
【0024】
フレーム10の後端部内周面には、図4(b)、図6に示すように、内周面に対して垂直に壁部13が形成され、壁部13の中央には貫通孔13aが開口されている。壁部13の前面とバックボーン30の第一円柱部31の後端面との間には、コイルばね6が配設される。バックボーン30は、フレーム10への挿入時にコイルばね6の内側を通って貫通孔13aを貫通し、バックボーン30の後端部の係合溝32bは、エンドキャップ7の前端部に設けられた係合突起部71に係合される(図2参照)。これによりバックボーン30とエンドキャップ7とが一体化され、バックボーン30はコイルばね6によりフレーム10に対し前方に付勢される。
【0025】
フレーム10の上面には、図3(a)、図6に示すように、バックボーン30の収容凹部33の開口面とほぼ同形状の略矩形状の開口部16が設けられ、収容凹部33の上方空間は開放されている。また、フレーム10の底面には、バックボーン30の貫通孔34,35と同位置に、各貫通孔34,35と同形状の貫通孔14,15(図2参照)が開口されている。
【0026】
フレーム10の左右側壁には、図6に示すように、上下方向にかけて突起部17が延設されている。突起部17には、図1に示す相手方コネクタ104の左右側壁に設けられた係合爪104aが係合され、これにより光コネクタ100が相手方コネクタ104に係止される。さらにフレーム10の左右側壁には、突起部17の後方において上端面から下端面にかけて凹部19が形成されている。凹部19の略中央部には上下方向に細長の突起19aが形成され、凹部19は突起19aの前側の前凹部19bと突起19aの後側の後凹部19cとに区画されている。凹部19には、後述する光コネクタ用治具200の大突起230が係合される。
【0027】
カバースライダ20は、図3に示すように、前面および後面が開口された枠部材であり、フレーム10の前端部から中央部やや後方までを覆っている。フレーム10の上面には、図3(b)に示すように、段部18が設けられ、カバースライダ20は、その上面後端部21が段部18に当接するまでフレーム10に沿って後方にスライド可能となっている。
【0028】
カバースライダ20の左右側面には開口部22が設けられ、開口部22を介してフレーム10の突起部17が露出している。カバースライダ20の後方へのスライドにより、突起部17と係合爪104aとの係合が解除され、光コネクタ100がコネクタ104から取り外し可能となる。
【0029】
カバースライダ20の上面には、図3(a)に示すように、フレーム10の開口部16と左右方向同一幅を有する略矩形状の開口部28が設けられている。開口部28の前後方向長さは、カバースライダ20のスライド量の分だけ開口部16の前後方向長さよりも長い。このため、図3に示すようにカバースライダ20を前方に最大にスライドさせた状態では、開口部28の前端面は開口部16の前端面よりも前方に位置し、開口部28の後端面が開口部16の後端面と面位置となる。一方、カバースライダ20を後方に最大にスライドさせた状態では、開口部28の後端面は開口部16の後端面よりも後方に位置し、開口部28の前端面が開口部16の前端面と面位置となる。
【0030】
カバースライダ20の左右側面には、図3(a)に示すように、外側に膨出した膨出部23が形成され、膨出部23の外表面にはカバースライダ20の把持用の凹凸面23aが形成されている。各膨出部23には、フレーム10の左右外側を上下方向に貫通するガイド孔24,25が設けられている。各ガイド孔24,25は、それぞれ前後方向に細長の略矩形状を呈し、ガイド孔24とガイド孔25とは前後方向に互いに離間して開口されている。
【0031】
ガイド孔24,25は、カバースライダ20を前方に最大にスライドさせた状態で、フレーム10の凹部19に対応した位置に設けられ、ガイド孔24,25と前凹部19b,後凹部19cの前後方向長さは互いに等しい。このため、図3(a)では、フレーム10の突起19aはガイド孔24とガイド孔25との間に位置する。さらに図3(c)に示すようにカバースライダ20の底面には、カバースライダ20を前方に最大にスライドさせた状態で、フレーム10の底面の貫通孔14,15に対応した位置に、貫通孔14,15と同形状の貫通孔26,27が設けられている。なお、貫通孔27はガイド孔25と前後方向ほぼ同一位置にあり、貫通孔26はガイド孔24の斜め前方に位置する。
【0032】
エンドキャップ7は、外部から本体1に導入ファイバ素線103を導くための枠部材であり、前面、後面および上面が開口され、樹脂成形により形成されている。エンドキャップ7の前部は、図3(c)に示すように、フレーム10内に嵌合し、後部がフレーム10から突出している。エンドキャップ7の底面の前後方向中央部は、その両側よりも一段低くなっており、前後方向中央部に下段面7aが、その両側に上段面7bがそれぞれ形成されている。下段面7aの前部および後部には左右方向にかけてスリット状の一対の貫通孔72が開口され、これら貫通孔72の間において下段面7aの左右両端部には、下方に突出する突起部73がそれぞれ形成されている。突起部73は左側がテーパ状に立ち上がり、右側が直角に立ち上がっている。一方、下段面7aの両側の上段面7bには、左右方向にかけてそれぞれスリット状の貫通孔74が開口されている。
【0033】
エンドキャップ7の上面は、図3(a)に示すように、導入光ファイバ素線103の挿入を容易にするために、左右方向中央部が前後方向にわたって切断され、開口部7cが形成されている。この開口部7cがある点を除き、エンドキャップ7の上面形状は底面形状と同一であり、エンドキャップ上面の下段面7aには、上方に突出する一対の突起部75が設けられている。
【0034】
エンドキャップ7の左側面には、図3(b)に示すように、各貫通孔74と前後方向同一位置に、上下方向にかけてスリット状の一対の貫通孔76が開口されている。各貫通孔76は、略矩形状の平坦部77と、その平坦部77の角部に面なるコ字状の枠部78との間に形成され、図3(c)に示すように平坦部77と枠部78との間には段差が設けられている。
【0035】
図7は、光コネクタ100に導入される光ファイバケーブル102の先端部の構成を示す側面図である。光ファイバケーブル102の先端部には外被把持部材106が取り付けられ、外被把持部材106の先端から光ファイバ心線107が突出され、さらに光ファイバ心線107の先端から導入光ファイバ素線103が突出されている。外被把持部材106の表面は段付き形状を呈し、中央部106aを挟んで前後両端部106bの高さ(上下方向長さ)および幅(左右方向長さ)は小さくなっている。外被把持部材106は、前面および後面が開口された枠形状であり、エンドキャップ7内に収容される。
【0036】
図8(a)は、クリップ8の斜視図であり、図8(b)は、図8(a)の矢視b図(後方から見た図)である。クリップ8は、予め所定形状に加工された銅やアルミニウム等の薄板の金属を折り曲げて形成され、前後方向の中心軸線L1に関しては上下対称形状であり、上下方向の中心軸線L2に関しては左右対称形状である。クリップ8は、略矩形状のベース部81と、ベース部81の上下端部からそれぞれ略直角に折り曲げて右方に延設される一対の把持プレート82と、ベース部81の前後端部から略直角に折り曲げて右方に延設される一対の差込プレート83とを有する。
【0037】
把持プレート82は、エンドキャップ7の上下の下段面7a(図3(a))と同一幅に形成されている。把持プレート82の先端側には、エンドキャップ7の突起部73,75に係合するための略矩形状の開口部84が設けられ、基端側には左側の突起部73,75との干渉を避けるための略矩形状の開口部85が設けられている。開口部85は、開口部84よりも左右方向に長い。
【0038】
差込プレート83は、図8(b)に示すように、略コ字状に形成され、上下に差込部83a、83bが設けられている。上側の差込部(上差込部83a)の上端面は直線形状であるのに対し、下端面は先端がテーパ形状をなし、テーパ部83cが形成されている。下側の差込部(下差込部83b)の下端面は直線形状であるのに対し、上端面は先端がテーパ形状をなし、テーパ部83dが形成されている。差込プレート83はエンドキャップ7の左側方の貫通孔76(図3(b))に差し込まれ、外部から導入された光ファイバーケーブル102の外被把持部材106(図7)の上下両端部106bを挟持する。このとき、把持プレート82は、エンドキャップ7上下の下段面7aに装着され、突起部73,75がそれぞれ開口部84に係合される。
【0039】
図9(a)は、エレメント40の斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のb−b線断面図である。エレメント40は、予め所定形状に加工された銅やアルミニウム等の薄板の金属を、前後方向に延在する折り曲げ部41を支点にして、左右対称形状となるようにV字状に折り曲げて形成される。エレメント40は、中心軸線の左右両側に配置される一対の翼部42,43を有し、一方(右側)の翼部43の基端部内側面には、光ファイバ素線101,103を収容支持するための略三角形状の素線保持溝44(図11(c)参照)が前後方向にかけて形成されている。後述するように、外部からの押込力によりエレメント40の上方からキャップ50が完全に嵌入されると、折り曲げ部41の近傍が変形し、これにより折り曲げ部41を支点にして翼部42,43が折り畳まれる。
【0040】
各翼部42,43の前端部、後端部および前後方向中央部には、それぞれ凹状に切り欠き45が形成され、各翼部42,43は切り欠き45を境にして前後に二分割されている。前側の翼部(前翼部)42a,43aと後側の翼部(後翼部)42b,43bとを比較すると、前翼部42a,43aの方が後翼部42b、43bよりも前後方向の長さが短く、かつ、左右の翼部間の間隔は、後翼部42b,43bの方が前翼部42a,43aよりも大きい。このように左右の翼部間の間隔を後翼部42b,43b側で拡げることで、後方からの導入光ファイバ素線103の挿入が容易になるとともに、前翼部42a,43aの内側で光ファイバ素線101,103の先端部を強固に挟持できる。なお、前翼部42a,43aと後翼部42b,43bとが互いに独立して変形可能となるように切り欠き45の底部には上下方向にスリット46が設けられている。
【0041】
図10(a)は、キャップ50の斜視図(斜め下方から見た図)であり、図10(b)は、図10(a)の矢視b図である。キャップ50は、樹脂成形により形成され、基部51と、基部51の底面から突設される左右一対の脚部52,53とを有し、全体が左右対称形状をなしている。各脚部52,53は、キャップ50とバックボーン30の突起部37(図4)との干渉を避けるため、前後方向に離間して基部51から突設され、前側の脚部(前脚部)52a,53aの前後方向長さは後側の脚部(後脚部)52b,53bの前後方向長さよりも短い。また、後脚部52b,53bの前端部には、キャップ50とバックボーン30の底部との干渉を避けるために退避部54が設けられている。
【0042】
図10(b)に示すように、左右の脚部52,53の内側面にはそれぞれテーパ部52c,53cが設けられ、テーパ部52c,53cを境にして左右の脚部52,53の内側の間隔が変化している。すなわち、下側の脚部52,53の間隔は、上側の脚部52,53の間隔よりも大きい。基部51の下面51aは、バックボーン30の外形形状に合せて円弧状に形成され、基部51の上面51bは平坦面とされている。左右の脚部52,53の下端面52d,53dは平坦面とされている。
【0043】
本実施形態に係る光コネクタ用冶具に対応した光コネクタ100は、例えば以下のようにして組み立てられる。まず、フレーム10の外側に、前方からカバースライダ20を押し込んで、フレーム10に対しスライド可能にカバースライダ20を取り付ける。次いで、フレーム10内に前方からコイルばね6を収容した後、フレーム10の前方からバックボーン30を挿入してコイルばね6をフレーム内の壁部13(図4(a))に押し当て、バックボーン30の後端部の係合溝32bにエンドキャップ7の係合突起部71を係合する。これにより、フレーム10とカバースライダ20とバックボーン30とが一体化され、本体1が形成される。このとき、フレーム10の内周面の係合溝12(図3(d))にバックバーン30の凸部39が嵌合するため、バックボーン30が周方向に位置決めされ、バックボーン30の収容凹部33が上方に向けられる。
【0044】
次いで、カバースライダ20の上面の開口部28およびフレーム10の上面の開口部16を介して、バックボーン30の収容凹部33に上方からエレメント40を挿入し、エレメント40の底部の折り曲げ部41を、収容凹部33の底面のスリット溝36(図4)に設置する。このとき、エレメント40の倒れは、収容凹部33に突設された突起部37により阻止され、エレメント40は左右外側を突起部37に支持されて鉛直方向に起立する。この状態で、所定長さの組込光ファイバ素線101を有するフェルール2を、バックボーン30の前端部の嵌合凹部38に嵌入して接着し、組込光ファイバ素線101を、エレメント40の前翼部42a,43aの内側の素線保持溝44(図9)に沿って配置する。
【0045】
さらに、カバースライダ20上面の開口部28およびフレーム10上面の開口部16を介して、バックボーン30の収容凹部33に上方からキャップ50を半嵌入する。これにより図11(a)に示すように、キャップ50の脚部52,53の内側にエレメント40の翼部42,43が挟まれ、翼部42がテーパ部52c,53cに当接する。この状態では、キャップ50は完全に嵌入されていない半嵌入状態のため、エレメント40の翼部42,43は開放姿勢にある。このため、光コネクタ100の外部からエレメント40内に容易に光ファイバ素線103を導入することができる。ここまでの組立は工場等で行われ、キャップ50は、半嵌入状態のまま製品として出荷される。
【0046】
光伝送路の敷設現場等で、作業者が光コネクタ100に光ファイバを接続する場合、まず、光ファイバケーブル先端部のシースを所定長さ除去し、光ファイバ心線107を露出させた上で、シース先端部に外被把持部材106を取り付ける。その後、光ファイバ心線107から被覆を所定長さ除去して光ファイバ素線103を露出させ、所定長さに切断することで、図7に示すような、光ファイバケーブル102の先端部を得る。
【0047】
次いで、エンドキャップ7およびバックボーン30を介して後方からエレメント40内に光ファイバ素線103を導入し、導入光ファイバ素線103の先端部を組込光ファイバ素線101の先端部に突き当て、先端突き合わせ状態とする。この場合、エレメント40の翼部42,43の間隔は後側で拡大しているため、導入光ファイバ素線103の挿入が容易である。導入光ファイバ素線103を挿入した状態では、光ファイバケーブル102先端に設けられた外被把持部材106がエンドキャップ7内に収容される。
【0048】
次に、キャップ50の基部上面51bに外部から押込力を付与し、図11(b)に示すようにキャップ50を下方に押し込む。これにより、キャップ50の脚部52,53の間隔が狭くなって翼部42,43が閉じられ、光ファイバ素線101,103に対し圧接力が作用し、光ファイバ素線101,103は突き合わせ接続状態で固定される。素線保持溝44は、断面略三角形状に形成されているため、光ファイバ素線101,103の固定時においては、図11(c)に示すように、光ファイバ素線101,103に自己調心機能が作用し、光ファイバ素線101,103には、素線保持溝44の一対のテーパ面44aと翼部42の内面42cから均等に圧接力が作用する。
【0049】
光ファイバ素線101,103の固定が終了すると、エンドキャップ7に左側方からクリップ8(図8)を取り付ける。すなわち、差込プレート83をエンドキャップ7の貫通孔76(図3(b))に挿入し、エンドキャップ7の上下面の突起部73,75に把持プレート82の開口部84,85を係合する。これにより光ファイバケーブル102先端部の外被把持部材106の前後両端部106b(図7)が上下の差込プレート83の間に挟持され、エンドキャップ7内に外被把持部材106が固定される。
【0050】
以上で、一対の光ファイバ素線101,103の接続を終了する。接続が終了した状態では、図2に示すようにキャップ50はバックボーン30の突起部37およびバックボーン30の中央底部30aを退避して押し込まれており、キャップ50の上面51bがカバースライダ20の上面よりも下側に位置する。このため、キャップ50が光コネクタ100の表面から出っ張ることなく、光コネクタ100をコンパクトに構成できる。
【0051】
このとき、キャップ50の脚部52,53の下端面52d,53dは、バックボーン30の貫通孔34,35、フレーム10の貫通孔14,15およびカバースライダ20の貫通孔26,27を介して露出している。本実施の形態では、これら貫通孔34,35,14,15,26,27を利用し、以下のような光コネクタ用治具200によりキャップ50の押し出しを行う。
【0052】
図12(a)は、本実施の形態に係る光コネクタ用冶具200の斜視図であり、図12(b)は図12(a)の矢視b図(前方から見た図)、図12(c)は図12(a)の矢視c図(側方から見た図)である。本実施形態に係る治具200は、クリップ8の開放部200bを有する。開放部200bは、図12(a)に示すように、基部210の後端部に二股に形成された左右一対のアーム240を有し、アーム240の内側には平面視略矩形状の空隙241が形成されている。各アーム240の左右内側面は前後方向に直線状に形成されている。一方、各アーム240の左右外側面は後端にかけてテーパ状に形成され、アーム240の後端部には先端が鋭角に突出したテーパ部242が設けられている。
【0053】
空隙241の左右方向長さは、エンドキャップ上面の下段面7a(図3(b))からエンドキャップ下面の下段面7aまでの長さにほぼ等しいが下回ることはなく、各アーム240の上下方向の厚さは、エンドキャップ7の下段面7aの前後方向長さにほぼ等しいが上回ることはない。各アーム240の左右内側面には、その厚さ方向中央部に、先端部から基端部にかけて空隙241に面して溝243が設けられている。溝243は、エンドキャップ7の突起部73,75と干渉しないような深さに形成されている。これによりアーム240の内側の空隙241に、エンドキャップ7の上下の下段面7aを嵌合することができる。両テーパ部240の先端部の間隔は、クリップ8の一対の把持プレート82の内面の間隔よりも小さく、各テーパ部の先端部の左右方向の幅は、把持プレート82の内面とエンドキャップ7の下段面7aとの間に形成される空隙よりも小さい。
【0054】
光コネクタ用冶具200は、クリップ8の開放時だけではなく、さらにキャップ50の押し出し時、および嵌入時にも用いることができる。治具200は、略矩形の薄板状の基部210と、基部210の上面から垂直に立設された小突起220および大突起230とを有する。この治具200は、左右対称形状をなし、樹脂成形により一体に形成される。
【0055】
小突起220は前後方向に細長の板形状をなし、カバースライダ20の貫通孔26,27の位置に対応して基部上面の左右方向中央部に設けられている。すなわち、基部210の上面には、前小突起221および後小突起222が同一直線上を前後方向に互いに離間して設けられるとともに、前小突起221および後小突起222はそれぞれ左右に1つづつ設けられ、計4個の小突起220が突設されている。さらに基部210の上面には、小突起220の左右外側面に沿って前後方向に左右一対のリブ225が延設され、小突起220はリブ225よりも上方に突出している。
【0056】
小突起220は側面視略長方形形状をなし、前小突起221は後小突起222よりも前後方向に長尺である。各小突起220の厚さ(左右方向長さ)および長さ(前後方向長さ)は、対応する貫通孔26,27の幅および長さとほぼ等しく、小突起220は貫通孔26,27にそれぞれ挿入可能である。これら小突起220の高さ(上下方向長さ)は互いに等しく、小突起220の上端面は基部210の上端面と平行な平坦面とされている。
【0057】
大突起230は前後方向に細長の板形状をなし、カバースライダ20の膨出部23におけるガイド孔24,25の位置に対応して、基部上面のリブ225の左右外側に設けられている。すなわち、基部210の上面には、前大突起231および後大突起232が同一直線状を前後方向に互いに離間して設けられるとともに、前大突起231および後大突起232はそれぞれ左右に1つづつ設けられ、計4個の大突起230が突設されている。
【0058】
大突起230の高さは、図12(c)に示すように、小突起220の高さよりも高く、さらに前大突起231の高さは後大突起232の高さよりも高い。前大突起231と後大突起232はそれぞれ先端部が後面にかけてテーパ状に形成され、各大突起230の先端は鋭角に突出している。図では、後大突起232のテーパ面232aが前大突起231のテーパ面231aよりも上方にシフトしており、テーパ面231a,232aは同一直線上にないが、テーパ面231a,232aを同一直線状に形成してもよい。以上の小突起220および大突起230はキャップ50の押し出し部200aを構成する。
【0059】
以上の光コネクタ用治具200を用いてキャップ50を取り外す場合の手順について説明する。まず、図13に示すように、カバースライダ20をフレーム10に対し前方にスライドさせた状態で、カバースライダ20のガイド孔24,25に、前大突起231および後大突起232をそれぞれ挿入する。また、カバースライダ20がフレーム10に対し前方にスライドさせた状態ではない場合であっても、テーパ状の前大突起231の先端部をガイド孔24と、フレーム10の突起19aとによって形成される貫通孔に挿入することにより、カバースライダ20は前大突起231のテーパ面231aによりフレーム10に対し前方に押し出される。このとき、前大突起231および後大突起232はそれぞれフレーム10の側面の前凹部19b(図6)および後凹部19cに装着される。これによりフレーム10に対する治具200の位置が規制される。前大突起231と後大突起232は互いに異なる高さを有し、かつ、先端部はそれぞれテーパ状に形成されているため、ガイド孔24,25への大突起231,232の挿入が容易である。
【0060】
ガイド孔24,25に大突起231,232を挿入した状態では、図14に示すように、各小突起221,222は、カバースライダ20の底面の貫通孔26,27、フレーム10の底面の貫通孔14,15、およびバックボーン30の底面の貫通孔34,35をそれぞれ貫通し、各小突起221,222の上端面はキャップ50の脚部52a,52b,53a,53bの下端面52d,53dにそれぞれ当接する。この状態で、例えば図13に示すように治具200を親指で押し上げる。これによりキャップ50に押出力が作用してキャップ50が押し上げられ、図11(a)に示すようにエレメント40が開放状態となり、光ファイバ素線101,103に作用していた圧接力が除去される。
【0061】
次いで、治具200の開放部200bを用いてエンドキャップ7からクリップ8を開放する。図15(a)は、開放部200bの使用例を示す斜視図であり、図15(b)は、図15(a)のb−b線断面図である。クリップ8を開放する場合には、図15(a)に示すように治具200を立てた状態として、エンドキャップ7の右方から治具200を近づけ、エンドキャップ7の下段面7aとクリップ8の把持プレート82との間に形成された空隙にアーム先端のテーパ部242を挿入する。さらに、図15(b)に示すようにエンドキャップ7の上下の下段面7aに沿って治具200を左方にスライドさせる。
【0062】
これによりクリップ8の把持プレート82の先端部が上下に押し広げられて、クリップ8の開口部84とエンドキャップ7の突起部73,75との係合が解除される。このとき、突起部73,75は、アーム内側面の溝243に収容されるため、アーム240と突起部73,75とが干渉することなく、アーム240を左方にスライドさせることができ、アーム240のスライドによりクリップ8を左方に移動することができる。クリップ8が左に移動すると、差込プレート83から外被把持部材106に作用する挟持力が低減もしくは除去される。これにより光コネクタ100から光ファイバケーブル102を容易に引き抜くことができ、導入光ファイバ素線103の端面仕上げの修正等を行うことができる。
【0063】
本実施の形態に係る光コネクタ用冶具200は、キャップ50の押し出し時およびクリップ8の開放時、キャップ50の嵌入時にも用いることができる。その場合には、図11(a)に示すようにキャップ50の下部が収容凹部33に挿入された状態で、治具200の大突起230を、カバースライダ20のガイド孔24,25に上方から挿入する。このとき、各小突起220の先端部は、キャップ50の上面51bにそれぞれ当接する。この状態で、例えば親指によりキャップ上面51bに対し押込力を付与する。
【0064】
これにより図11(b)に示すように収容凹部33にキャップ50を完全に押し込むことができる。この場合、キャップ50はガイド孔24,25に沿って移動するため、キャップ上面51bに対し垂直に押込力を付与することができるとともに、4個の小突起220によりキャップ全体に均等に押込力を作用することができ、キャップ50をスムーズに押し込むことができる。
【0065】
以上、本実施の形態によれば、治具200の端部にクリップ8の開放用のアーム240を設けるようにしたので、クリップ8の開放も容易であり、外部から導入された光ファイバケーブル102を容易に引き抜くことができる。さらにカバースライダ20のガイド孔24,25に対応して基部210に先端部がテーパ状の大突起230を設けるようにしたので、カバースライダの位置に関わりなくガイド孔に大突起を挿入することができ、その結果、光コネクタ100の本体1に対して治具200を位置決めすることができ、貫通孔34,35,14,15,26,27に正確に小突起220を挿入することができる。これにより光コネクタ100に一旦組み込まれた光ファイバケーブル102を容易に引き抜くことができ、導入光ファイバ素線103の端面仕上げに不良があった場合に、光コネクタ100を破壊することなく、また、導入光ファイバ素線103を切断することなく、端面仕上げをやり直すことができ、材料費を節約できる。
【0066】
また、キャップ50の上面51bに小突起220を当接してキャップ50を押し込むこともでき、キャップ50の押し出し用としてだけでなく、キャップ50の押し込み用としても治具200を用いることができる。このように治具200は複数の着脱機能を有するので、光ファイバ素線101,103の接続作業時に複数の治具を準備する必要がなく、作業コストを低減できる。
【0067】
なお、上記実施の形態では、アーム240の後端にテーパ部242を設けることでエンドキャップ7とクリップ8との係合を解除することができるようにしたが、アーム240の後端部の構成、エンドキャップ7とクリップ8との係合部の構成は上述したものに限らない。また、エンドキャップ7の突起部73,75とアーム240とが干渉しないよう溝243を設けたが、エンドキャップ7の突起部73,75とアーム240とが干渉しなければ、アーム240の構成は上述したものに限らない。
【0068】
キャップ押し込み時には、治具200を用いてキャップ50の上面51bに押込力を付与し、キャップ押し出し時には、治具200を用いて脚部52,53の下端面52d,53dに押出力を付与するようにしたが、押込力が付与される被押込部の構成、および押出力が付与される被押出部の構成は上述したものに限らない。
【0069】
キャップ50の基部51に4本の脚部52,53を形成し、この脚部52,53の配置に合せてバックボーン30とフレーム10とカバースライダ20にそれぞれ貫通孔34,35,14,15,26,27を設けるようにしたが、作動部材としてのキャップ50の構成は上述したものに限らない。したがって、脚部52,53の下端面52d,53dに対向する貫通孔34,35,14,15,26,27の位置、および治具200の小突起220の配置も上述したものに限らない。
【0070】
例えば、図16(a)に示すように基部210に細長の2本の小突起220を設けるようにしてもよい。図16(b)、(c)に示すように3本の小突起220を設けるようにしてもよい。図16(d)に示すように小突起220をコ字状に形成してもよい。すなわち、キャップ50の下端面52d,53dに押出力を付与するための押出部の構成は種々のものを採用できる。キャップ50の着脱機能とクリップ8の開放機能とを有するように治具200を構成したが、キャップ50の押し出し機能のみを有するものとしてもよい。大突起230の先端部をテーパ状に形成したが、ガイド部の構成はこれに限らない。
【0071】
フレーム10にカバースライダ20をスライド可能に取り付け、カバースライダ20のガイド孔24,25に治具20の大突起230を嵌入するようにしたが、図17に示すようにカバースライダ20を省略して、フレーム10の側面の凹部19に直接治具200を取り付けるようにしてもよい。フレーム10内にバックボーン30を配設するようにしたが、バックボーン30を省略して本体1を構成してもよい。すなわちキャップ50が嵌入される嵌合部(収容凹部33、開口部16,28)と、キャップ脚部52,53の下端面52d,53dに対向した貫通孔34,35,14,15,26,27とを有するのであれば、本体1の構成は上述したものに限らない。
【0072】
本発明は、作動部材の押し込みにより光ファイバ素線101,103を接続するのであれば、上述したストレートタイプの光コネクタだけでなく、L字状に折り曲げられたタイプの光コネクタ等、種々の光コネクタに適用することができ、相手方の光コネクタ104にも適用可能である。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の光コネクタに限定されない。
【符号の説明】
【0073】
1 本体
2 フェルール
3 スプライス部
7 エンドキャップ
8 クリップ
10 フレーム
14,15 貫通孔
16 開口部
20 カバースライダ
26,27 貫通孔
28 開口部
30 バックボーン
33 収容凹部
34,35 貫通孔
40 エレメント
50 キャップ
51 基部
52,52 脚部
101 組込光ファイバ素線
103 導入光ファイバ素線
106 外被把持部材
200 治具
210 基部
220 小突起
230 大突起
240 アーム
242 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体後端に設置されるエンドキャップと、前記エンドキャップに装着される、一対の把持プレートと一対の差込プレートとを有するクリップを有する光コネクタであって、前記エンドキャップは、前記光コネクタ外部から導入される光ファイバケーブル先端部に設置された外被把持部材を収納し、前記外被把持部材が前記一対の差込プレートによって狭持されることで光ファイバケーブルが前記本体に対して固定される、光コネクタに用いられる光コネクタ用冶具であって、
基部と、
前記基部の後端部に二股に形成された左右一対のアームと、
前記アームの後端部に先端が鋭角に突出したテーパ部とを有する、光コネクタ用冶具。
【請求項2】
本体と、前記本体に設置され、所定長さの第1の光ファイバ素線を予め突出して支持するフェルールと、前記フェルールに近接して前記本体に設置され、前記フェルールから突出する前記第1の光ファイバ素線および前記本体の外部から導入された第2の光ファイバ素線にそれぞれ圧接力を付与して、前記第1の光ファイバ素線と前記第2の光ファイバ素線とを先端突き合わせ接続状態で固定するスプライス部とを備え、前記スプライス部は、外部からの押込力により前記本体に嵌入されて、前記圧接力を発生させる作動部材を有し、前記作動部材は、前記押込力が付与される被押込部と、前記作動部材を押し出すときに押出力が付与される被押出部と、前記本体は、前後方向にスライドするカバースライダと、前記作動部材が嵌入される嵌合部と、前記作動部材の前記被押出部に対向した貫通孔とを有する光コネクタに用いられる光コネクタ用冶具であって、
基部と、
前記基部から突設され、前記本体の前記貫通孔に挿入されて前記作動部材の前記被押出部に前記押出力を付与するための押出部と、
前記本体に嵌合し、前記本体に対して前記押出部を位置決めするとともに、前記本体に嵌合する際に、前記貫通孔が露出される位置に前記カバースライダを移動させるガイド部とを有する、光コネクタ用冶具。
【請求項3】
前記光コネクタは、前記本体後端に設置されるエンドキャップと、前記エンドキャップに装着される、一対の把持プレートと一対の差込プレートとを有するクリップをさらに有し、前記エンドキャップは、前記光コネクタ外部から導入される光ファイバケーブル先端部に設置された外被把持部材を収納し、前記外被把持部材が前記一対の差込プレートによって狭持されることで光ファイバケーブルが前記本体に対して固定され、
前記基部の後端部に二股に形成された左右一対のアームと、
前記アームの後端部に先端が鋭角に突出したテーパ部とをさらに有する、請求項2に記載の光コネクタ用冶具。
【請求項4】
前記一対のアームの左右内側面の間隔は、前記エンドキャップの底面に設けられた下段面と、前記エンドキャップの上面に設けられた下段面との間隔よりも大きく、
前記テーパ部の左右先端部の間隔は、前記クリップに設けられた前記一対の把持プレートの内面の間隔よりも小さい、請求項1または3に記載の光コネクタ用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−203485(P2011−203485A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70676(P2010−70676)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】