光スイッチ、およびそれを用いたプリンター
【課題】フォトクロミック材料を用いたプリンターでは、照射光を赤、緑、青と3色利用することで、フルカラーの表示が行える。画像表示をするためには高速のスイッチング素子が必要である。赤色LDは直接高速の変調が可能であるが、青、もしくは緑はSHG(第2高調波)を用いるために、直接の高速変調が難しい。
【解決手段】例えば、ガラスを基板1として、その上に誘電多層膜2aとしてSiO2とTiO2を、光学長が変調させたい光の波長の4分の1になるような厚さで複数組積層する。その上に透明電極ITO4で挟んだ所定の厚さのPLZTからなる欠陥層3を重ね、さらに、多層膜2aと同様な多層膜2bを重ねる。所定の波長の光Liを基板1側から垂直入射させると、欠陥層3を含む多層膜は反射性を示し、透過光が生じない。欠陥層3の両面の電極に所定の電圧で変調した信号を与えると、光は信号に従って透過する。
【解決手段】例えば、ガラスを基板1として、その上に誘電多層膜2aとしてSiO2とTiO2を、光学長が変調させたい光の波長の4分の1になるような厚さで複数組積層する。その上に透明電極ITO4で挟んだ所定の厚さのPLZTからなる欠陥層3を重ね、さらに、多層膜2aと同様な多層膜2bを重ねる。所定の波長の光Liを基板1側から垂直入射させると、欠陥層3を含む多層膜は反射性を示し、透過光が生じない。欠陥層3の両面の電極に所定の電圧で変調した信号を与えると、光は信号に従って透過する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック材料用のレーザープリンターに使用可能な、光源の光出力を制御する光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フォトクロミック材料を利用した書き換え可能な(リライタブル)ペーパーの開発が進んでいる。フォトクロミック材料は光を照射することで、その光の波長と同等の波長の色に発色する。照射光を赤、緑、青と3色利用することで、フルカラーの表示が行える。この発色はUV光を照射することで消去することができる。この発色現象は繰り返し行うことができ、これをプリンター用紙として利用したものが、リライタブルペーパーである。フォトクロミック用のレーザープリンターはその光源として、波長を青、緑、赤と3種類必要であり、それぞれに変調器が必要である。通常光源はLDを用いており、赤色のレーザーであれば、電流駆動によって変調が可能である。しかし、青、もしくは緑はSHG(第2高調波)を用いるために、電流駆動ではなく、SHGの励起寿命によって、変調速度が規定される。SHGの励起寿命は非常に長くnsecオーダーの変調は難しい。
そこで、従来はAOMやPLZTの偏光を利用した光シャッターなどの外部変調器を用いていた。AOMは弾性波を利用して回折格子をつくり、光を回折することでスイッチングを行なう。弾性を発生させる素子が発熱することから、大きな冷却装置が必要とされていた。また、PLZTを用いたシャッターでは、光がPLZTで偏光することを利用してスイッチングを行なう。このシャッターでは,偏光を利用することで光の利用効率が50%となるほか、光吸収があるなど課題が多い。
【0003】
一方、液晶を誘電体多層膜に挟んだ構造の光スイッチが研究されている(例えば、非特許文献1 参照。)。誘電体多層膜は屈折率の異なる誘電体を周期的に積層したもので、SiO2とTiO2などの屈折率差が大きいペアが利用されている。この誘電体の厚みをコントロールすることで、任意の波長の光を反射する反射膜として機能する。この誘電体多層膜の間に欠陥層として、周期性を乱す層を入れることで、任意の波長だけを透過するフィルターとしての機能を持たせることができる。これはバンドパスフィルターなどとして通信分野で利用されている。この欠陥層として液晶を用い、電圧印加によって、光学的な厚みをコントロールすることが研究されている。以下では、このような誘電体多層膜に屈折率が可変な材料を挟んだものをアクティブフィルターと呼ぶ。しかし、液晶でのスイッチングでは駆動速度は50μsec程度である。
ほぼ同じ形態で、誘電体多層膜の間に半導体を挟んだ系が有る(例えば、特許文献1 参照。)。半導体の場合には、高速に反応ができることや薄膜などが精度よく作製できるといったメリットがある。しかし、半導体では、入射光の波長に自由度が無く、誘電体多層膜部分を半導体によって作製しなくては、欠陥層が作製でいないという問題がある。半導体での周期構造では屈折率差が大きくとれないことから、シャープな透過率スペクトルが作れないなど問題がある。
【0004】
誘電体多層膜に電気光学材料を挟みこんだバンドパスフィルターを開発しているものもある(例えば、特許文献2、特許文献3 参照。)。このバンドパスフィルターは入射光の波長選択を行うデバイスであり、変調器の機能は有していない。バンドパスフィルターは様々な波長の入射光を振り分けるルーターの役割をする。そのため、入射光の波長は通信のシステムで決められ、バンドパスフィルターからの制限をかける事はできない。また、これらの特許文献には、透過光を信号光として用いる構成しか示されていない。これらの特許文献では信号光の強度に対し、それほど厳しい製品システムを設定していないため、透過光でも十分に対応できている。しかし、プリンターなどに用いる光スイッチとしては、信号光の光強度が重要になり、その強度を上げる方法が必要である。信号光の光強度を上げることによって、OFF時の信号光強度を上げてしまっては問題が残る。信号光の強度を上げることで、消光比も上げる必要がある。
また、入射角を垂直方向に固定する方法がとられてきた。実装が簡便であり、単純な系であることから、入射光の方向として、垂直方向に固定していたのである。また、この誘電体多層膜に欠陥層を挟み込む構造は、欠陥層の膜厚制御が非常に難しい。それは欠陥層を電気光学材料としており、電気光学材料は一般的には引き上げ法など成膜の膜厚精度が出しにくい方法でしか成膜できない理由による。また、欠陥層の上下層には電極層が形成され、これも膜厚精度を低下させる要因である。
また、電気光学材料を用いていないパッシブ型のバンドパスフィルターでは、入射角を制御して、透過スペクトルを制御する方法が行われている(例えば、特許文献4 参照。)。この方法はアクティブに入射角を制御する方法であるが、反応時間が遅く、これを利用して光スイッチとすることは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−64277号公報
【特許文献2】特開2003−207753号公報
【特許文献3】特開2003−233046号公報
【特許文献4】特開2000−147247号公報
【非特許文献1】Ryotaro Ozaki, Masanori Ozaki and Yoshino Katumi ; J.J.A.P. 42(2003)L669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消光比が高く、高速応答を行える高品質な光スイッチを低コストで提供する。
アクティブバンドパスフィルターを利用した光スイッチ構成において、消光比の高い光スイッチを提供する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、互いに屈折率の異なる2種の誘電体を周期的に積層してなる第1の多層膜と、該第1の多層膜の上に屈折率が外部の摂動によって制御しうる欠陥層と、さらにその上に前記多層膜と同様構成の第2の多層膜を積層して1つのキャビティとし、該キャビティを少なくとも1つ、光学的に透明な基板の1面に形成することによって特定の波長光を共鳴波長とする複合薄膜からなる光スイッチにおいて、前記欠陥層の屈折率を電気光学効果により変化させることで、前記共鳴波長を移動させ、前記光スイッチに前記基板側から入射させる入射光のスペクトルと、前記屈折率の変化前、もしくは変化後の前記複合薄膜の透過率スペクトルとを整合させることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して垂直に入射することを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜を透過する光を信号光として用いることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の光スイッチにおいて、前記入射光の偏光方向に対し、反射光の偏光方向が直交する向きに偏光方向を変える手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の光スイッチにおいて、前記入射光が前記偏光方向を変える手段に入る前に、直線偏光に揃える手段を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して傾斜して入射させ、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の光スイッチにおいて、前記電気光学効果を有する欠陥層はその片面側に櫛歯電極を設けたことを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項9または10に記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は光の入射方向に対してほぼ垂直に形成されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項13に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は、反射防止コートが施されていることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記入射光の入射角をθ、ピーク位置の波長をλipとし、前記欠陥層の屈折率をnkとし、Nを任意の整数とするとき、前記欠陥層の厚さdkが次の式を満足するように構成されていることを特徴とする。
dk=2N×{(λip/cosθ)/4}/nk
【0010】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記欠陥層として用いる電気光学材料は、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTi(1−y)O3)、またはKTN(KTaxNb(1−x)O3)のいずれかであることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の光スイッチを、前記共鳴波長が赤、緑、青の3色にそれぞれ対応する3個用いたフォトクロミック用プリンターを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、構成が簡単で、高速のスイッチングが可能な光スイッチを提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、2は本発明の基本原理を説明するための図である。図1は透過性光スイッチの構成、図2は反射性光スイッチの構成をそれぞれ示す図である。
両図において符号1は基板の役割をする導光体、2は誘電体多層膜、3は欠陥層、4は電極をそれぞれ示す。
図1において、周期的に屈折率の異なる誘電体(例えば、SiO2とTiO2)を積層してなる誘電体多層膜2に、その周期性から外れた欠陥層3を挿入し、欠陥層3に電気的な入力をON、OFFさせて、欠陥層3の屈折率を電気光学効果によって変化させると、透過スペクトルが変化する。その変化を利用して、透過スペクトルを入射光のスペクトルに整合させる、すなわち、両者のピーク位置を一致させ、出射光の光量を最大にすることができる。ピーク位置がずれることによって、出射光の光量が減少する。また、透過率スペクトルの半値幅と入射光のスペクトルの半値幅との関連についても、同様に考えられる。ここで、整合性が高い状態とは、入射光のスペクトルの半値幅よりも透過率スペクトルの半値幅の方が広いことを意味する。このように入射光スペクトルと透過率スペクトルとの形状や位置の関係によって、透過光強度はさまざまに変化する。この整合性の制御によって、透過光量を制御することができる。
【0013】
図2において、周期的に屈折率の異なる誘電体を積層してなる誘電体多層膜2に、その周期性から外れた欠陥層3を挿入し、欠陥層3に電気的な入力をON、OFFさせて、欠陥層3の屈折率を電気光学効果によって変化させると、反射スペクトルが変化する。その変化を利用して、反射スペクトルを入射光のスペクトルに整合させる、すなわち、両者のピーク位置を一致させ、出射光の光量を最大にすることができる。ピーク位置がずれることによって、出射光の光量が減少する。また、反射率スペクトルの半値幅と入射光のスペクトルの半値幅との関連についても、同様に考えられる。ここで、整合性が高い状態とは、入射光のスペクトルの半値幅よりも反射率スペクトルの半値幅の方が広いことを意味する。このように入射光スペクトルと反射率スペクトルとの形状や位置の関係によって、反射光強度はさまざまに変化する。この整合性の制御によって、反射光量を制御することができる。
【0014】
図3は図1の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
同図において符号Gtoffは欠陥層3に電圧を印加しないときの透過率スペクトル、Gtonは欠陥層3に電圧を印加したときの透過率スペクトル、Giは入射光のスペクトル、Gtoは透過光のスペクトルをそれぞれ示す。
図1に示す様に誘電体多層膜2によって欠陥層3を挟むと、その欠陥層3の厚さ等に対応した波長にピークをもつ透過率スペクトルGtoffが表われる。欠陥層3に所定の電圧を印加すると、透過率スペクトルGtonのピーク位置は長波長側もしくは短波長側にずれる。透過率スペクトルGtonと透過率スペクトルGtoffの両者を区別しないで纏めて言うときは単にGtと呼ぶ。透過率スペクトルGtonのピーク位置にピーク位置を一致させた入射光スペクトルGiを入射させると、入射光スペクトルGiと透過率スペクトルGtonの積によって生ずる透過光スペクトルGtoが得られる。透過率スペクトルGtonのピーク値が理想通り100%であれば、透過光スペクトルGtoのピーク値は入射光スペクトルGiのピーク値に一致する。また、透過光スペクトルGtoの半値幅は必ず入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに等しいかそれより小さくなる。電圧をOFFにすれば、透過率スペクトルGtoffになるので、入射光スペクトルGiとの整合が取れなくなり、透過光はほとんどなくなる。
入射光スペクトルGiのピーク位置を透過率スペクトルGtoffのピーク位置に合わせる方式も構成できる。この場合は、欠陥層3に電圧印加をしないときに十分な透過光量が得られ、所定の電圧を印加すると透過光がほとんどなくなる。
【0015】
欠陥層の厚さdkは次のようにして定める。
入射光の波長のピーク位置をλip、所定の電圧を印加したときの欠陥層の屈折率をnkとし、任意の整数をNとするとき、
nk×dk=2N×(λip/4)
これをdkについて解いて、
dk=2N×(λip/4)/nk
となるようにdkを定める。すなわち、欠陥層の厚さdkは、「波長λipの4分の1波長に相当する屈折率nkの媒質中における光学的長さ」の偶数倍にする。こうすることによって、ピーク波長λipの光束が多層膜2に入射した場合、欠陥層に所定の電圧を印加すると多層膜2の透過率スペクトルのピークがλipに一致する。
【0016】
ここで、透過率スペクトルGtoffにおける半値幅をΔλtとする。半値幅Δλtは透過率スペクトルGtoffのピークからすその部分までの波長長さとほぼ同等と考えられる。つまり、このΔλtによって、透過率スペクトルGtoffにおける透過率が高い位置から低い位置までの波長幅を示すことができる。そこで、半値幅の2倍の波長幅の範囲を便宜上有効部と名付ける。入射光に関しても同様とする。有効部から外れた部分の透過率や、光量は無視しうるものと考えて良い。
透過率スペクトルGtoffは欠陥層3の光学的な厚さに対応しており、この光学的な厚さを変えることで、曲線の形状はほぼそのままでピーク位置が移動する。この移動量をΔλmとした。また、入射光のスペクトルGiにおける半値幅をΔλiとした。同図では所定の電圧印加をONとOFFとして、欠陥層3の光学的な厚さを変化させている。欠陥層としてPLZTを用いた場合、電圧を印加したときの透過率スペクトルGtonは透過率スペクトルGtoffより短波長側に移動する。
【0017】
電圧OFFのとき、透過光が生じないで、電圧ONのとき入射光が最大に透過するのが理想である。そのためには透過率スペクトルのピーク位置の移動量Δλmが、透過率スペクトルの半値幅Δλtや入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに比べて十分大きければよい。
そうすれば、ONとOFFにおける透過光スペクトルは同図に示すように、ONの時には透過光Gtoを出射し、OFFの時には光を出さない。これによって大きな消光比をとることができる。同図では、Gtoが電圧印加ONのとき生ずることを示すため(ON)の記号を付してある。以下の図においても同様である。
各分布が理想的なガウス分布に従っているとし、ΔλiとΔλtがほぼ等しく、且つ、Δλmが上記条件を満足する中で最も小さい場合、電圧ON時の透過光のピーク値(100%と仮定)に対し電圧OFF時の透過光のピーク値は6.25%になる。
【0018】
このことを、数式を用いてより詳しく説明する。
ガウス分布の式の一般形は
f(x)=Ae−(x/r)2
であるが、標準形として、A=1、r=1と置いて、
f(x)=e−x2
とする。x=0 なら f(x)=1 となる。
透過率スペクトルの半値幅Δλtは、f(x)=0.5と置いたときのxの値xhの2倍である。
e−(xh)2=0.5
両辺の自然対数を取る。
−(xh)2=ln2−1=−ln2
xh=√(ln2)=0.8325546・・
ここで、x=Δλt=2xhにおける関数の値を見る。
f(2xh)=e−(2xh)2=e−(xh)2×4={e−(xh)2}4=(0.5)4
=0.0625
入射光スペクトルの半値幅Δλiに対して、透過率スペクトルGtの移動量Δλmが等しいと仮定した場合、透過率分布スペクトルGtのピーク位置が、入射光スペクトルGiに関し上記2xhに相当する位置に一致することになる(Δλm=2xh)。したがって、透過率スペクトルGtのピーク値が100%であるとすると、移動後の透過光のピーク値100%に対して、移動前の透過光は最大値が6.25%になる。
【0019】
一般に関数の値がピーク値のα%以下になるxの値xα(透過率スペクトルの移動量Δλmに相当)を半値幅Δλh(入射光スペクトルの半値幅Δλiに相当)で表すと、kαを係数として、
xα=kαΔλh(ただし、kα=Δλm/Δλh)
f(xα)=e−(xα)2=e−(kαΔλh)2≦α/100
これを解くと、
e−kα2×(Δλh)2={e−(2xh)2}kα2={(0.5)4}kα2=(0.5)4kα2
≦α×10−2
両辺の自然対数を取って、
−4kα2ln2≦−2ln10+lnα
kα≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
となる。
ここで、例えばα=1(関数の値がピーク値の1%になる位置)とおくと、
kα≧√(2ln10/ln2)/2=1.288784・・≒1.3
となる。すなわち、透過率スペクトルGtの移動量Δλmを入射光スペクトルGiの片側に半値幅Δλiの約1.3倍以上の距離を取れば、その値はピーク値の1%程度以下になる。
逆に、関数の値がピーク値の10%になっても良ければ、
kα≧√{(2ln10−ln10)/ln2}/2
=√(ln10/ln2)/2=0.9113078・・≒0.9
すなわち、ガウス分布の片側に半値幅の約0.9倍以上の距離を取れば、その値はピーク値の10%程度以下になる。
【0020】
以上はピーク値のみで比較してきたが、実際の消光比を見るときは、透過光すべてを積算しなければならない。透過率スペクトルGtoffのとき入射光スペクトルの裾部が透過するとき、透過光スペクトルGo(OFF)は中心対称形にならず、GToffの裾引き部に対応する部分の低下が特に著しくなる。その違いを無視して、Go(ON)とGo(OFF)が相似形であると仮定して、消光比を見ると、その比はピーク値の比の二乗になる。すなわち、ピーク値の比が先に示した6.25%(α=6.25)の場合、消光比は約0.4%になる。α=10の場合でも消光比は1%になる。Go(OFF)の非対称な形状変化を加味すると、消光比はこれらよりも小さな値になる。
したがって、移動量Δλmを幾らにするのが妥当であるかは、消光比を幾らにしたいかに関わってくる。そして、その許容消光比は出射光の用途によって異なる。人が直接目で見るようなディスプレイのような用途であれば、消光比が1%以下になれば十分であろう。しかし、光通信のような用途であれば、消光比を例えば0.01%くらいに抑える必要があろう。
なお、透過率スペクトルの半値幅はなるべく入射光スペクトルの半値幅より大きいことが望ましいが、特に両者の関係を規定しない場合、上記のΔλiとΔλmとの関係は、ΔλtとΔλmとの関係にも適用できる。
【0021】
図4は図2の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
同図において符号Groffは欠陥層3に電圧を印加しないときの反射率スペクトル、Gronは欠陥層3に電圧を印加したときの反射率スペクトル、Giは入射光のスペクトル、Groは反射光のスペクトルをそれぞれ示す。
図2に示す様に誘電体多層膜2によって欠陥層3を挟むと、その欠陥層3の厚さ等に対応した波長にピークをもつ反射率スペクトルGroffが表われる。欠陥層3に所定の電圧を印加すると、反射率スペクトルGronのピーク位置は長波長側もしくは短波長側にずれる。反射率スペクトルGronのピーク位置(反射率が最も小さい位置)にピーク位置を一致させた(整合させた)入射光スペクトルGiを入射させると、入射光スペクトルGiと反射率スペクトルGronの積によって生ずる反射光スペクトルGro’が得られる。反射率スペクトルGronのピーク値が理想通り0%であれば、反射光スペクトルGro’は入射光スペクトルGiのピーク位置において0になる。電圧をOFFにすれば、反射率スペクトルGroffになり、入射光スペクトルGiに対応する波長域の反射率はほぼ100%になっているので、入射光はほとんどそのまま反射され、反射光スペクトルGroが得られる。反射光スペクトルGroの半値幅は必ず入射光スペクトルGiの半値幅Δλiより小さくなる。
入射光スペクトルGiのピーク位置を反射率スペクトルGtoffのピーク位置に合わせる(整合させる)方式も構成できる。この場合は、欠陥層3に電圧印加をしないときに透過光がほとんどなくなり、所定の電圧を印加すると十分な透過光量が得られる。
【0022】
ここで、反射率スペクトルGroffにおける半値幅をΔλrとする。半値幅Δλrは反射率スペクトルGroffのピークからすその部分までの波長長さとほぼ同等と考えられる。つまり、このΔλrによって、反射率スペクトルGroffにおける反射率が高い位置から低い位置までの波長幅を示すことができる。
反射率スペクトルGroffは欠陥層3の光学的な厚さに対応しており、この光学的な厚さを変えることで、曲線の形状はほぼそのままでピーク位置が移動する。この移動量をΔλmとした。また、入射光のスペクトルGiにおける半値幅をΔλiとした。同図では所定の電圧印加をONとOFFとして、欠陥層3の光学的な厚さを変化させている。欠陥層としてPLZTを用いた場合、電圧を印加したときの反射率スペクトルGronは反射率スペクトルGroffより短波長側に移動する。
【0023】
電圧ONのとき、反射光が生じないで、電圧OFFのとき入射光が最大に反射するのが理想である。そのためには反射率スペクトルのピーク位置の移動量Δλmが、反射率スペクトルの半値幅Δλrや入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに比べて十分大きければよい。そうすれば、ONとOFFにおける反射光スペクトルは同図に示すように、OFFの時には反射光Groを出射し、ONの時にはGro’のように光をほとんど出さない。これによって大きな消光比をとることができる。同図では、Groが電圧印加OFFのとき生ずることを示すため(OFF)の記号を付してあり、Gro’が電圧印加ONのとき生ずることを示すため(ON)の記号を付してある。以下の図においても同様である。
しかし、電圧ONのとき、入射光スペクトルのピーク位置を透過率スペクトルの(落ち込み部の)ピーク位置に合わせてその位置における反射光を0にしたとしても、ピーク位置以外では0でない反射率が存在するため、入射光スペクトルの裾部に向かって若干の反射光Gro’(ON)が生ずる。
【0024】
反射率スペクトルの落ち込み部がガウス分布に従うとすれば、反射率スペクトルの関数f(x)は
f(x)=1−e−x2
で表される。
ここでΔλiとΔλrがほぼ等しく、且つ、Δλmも同様の大きさであったとすると、上式に条件を代入すれば、電圧OFF時の反射率は入射光の波長の位置で(100%−6.25%)で約94%になることが分かる。これに対し、電圧ON時の透過光のピーク値は0%になる。しかし、この比がそのまま消光比に結びつくわけではないことは、ピーク位置以外で反射が存在するという先の説明により明らかである。ただ、Gro’(ON)の光量積分値は、入射光スペクトルGiと、反射率スペクトルGronのみで定まり、Δλmには無関係である。したがって、消光比をできるだけ大きくするためにはΔλmを大きくすればよい。
Δλmを大きくすると、先に示した94%が最大100%にまで増加しうる。この違いにより、反射光に関しては最大6.7%程度消光比を改善することができる。
特に図示はしないが、反射率スペクトルGrの半値幅Δλrを大きくすることは、入射光スペクトルGiの波長帯域の反射率を下げることになるので、反射光スペクトルGro’の積分値が小さくなり、より大きな消光比を得ることができる。
【0025】
入射光スペクトルGiの半値幅Δλiと反射率スペクトルGrの半値幅Δλrが等しいと仮定した場合、すなわち、Δλr=Δλiの場合、透過光スペクトルGro’(ON)は両スペクトルの積になるので、これを数式で表すと、
Gro’(x)=(e−x2)×(1−e−x2)
となる。詳細は省略するが、これは、x=0で0となり、両スペクトルの値が共に0.5になる位置(x≒±0.833)で最大値(極大値)0.25を示す。
これに対して、半値幅Δλrが半値幅Δλiのk倍であったとすると、一般式は、
Gro’(x)=(e−x2)×(1−e−(x/k)2)
となる。(先に示したΔλr=Δλiはk=1の場合に相当する。)
この曲線の極値を求めると、極小値(最小値でもある)はx=0において0、極大値(最大値でもある)は、
x=±k×ln(1+1/k2) のとき、(演算過程は省略)
Gro’(x)={g(k)}k2―{g(k)}(k2+1)
ただし、
g(k)=e−{ln(1+1/k2)} とする。
【0026】
例えば、k=2とすると、x≒±0.446の位置において、
g(k)=0.8 となるので、
Gro’(x)=0.4096−0.32768=0.08192
すなわち、x=0の位置を挟んで、最大値がピーク値の8.192%の二つの山ができる。このように、kを大きくするほどGro’の最大値は小さくなっていく。
仮に二つの山の形がガウス分布に相似と見なせるものとして、仮の消光比を計算すると、K=2の場合は、山が二つあることを考えて、全反射のピーク値を1として、
2×0.081922=2×0.000671≒0.01342=1.342%
となる。
移動量Δλmを大きく取るためには、欠陥層に与える電圧を大きくしなければならないが、それには限界があるので、なるべく効率の良い移動量Δλmを定める必要がある。そのため、上記のような計算によって、所望の消光比を考慮してkの値を定めるのが一番良い。
【0027】
図5は同一のデバイスの透過特性と反射特性を説明するための図である。
同図は、周期的に屈折率の異なる誘電体を積層してなる誘電体多層膜とその周期性から外れた欠陥層からなり、その欠陥層の屈折率が外部の摂動によって制御される複合薄膜において形成される透過率スペクトルGtoffを示している。反射率スペクトルGroffは、多層膜や欠陥層に吸収がないものとすれば、Gtoffとの和が100%になる関係にある。したがって、グラフ上では、Groff=100−Gtoffの関係になっている。この関係から、Groffの半値幅ΔλrとGtoffの半値幅Δλtは実質同一のものである。
透過率スペクトルGtoffは、一般的にバンドパスフィルターの透過スペクトルとほぼ同様形状であり、ガウシアン分布を取る。ガウシアン型であるため、入射光のスペクトルのピーク位置が少しでもずれることで、透過光の光量は急激に低下する。また、透過率スペクトルGtonにおいて、そのピーク値は100%の透過率(反射率として0%)にならず、誤差が大きい場合その透過率がピークの位置でも数十%となる。これは膜厚の誤差や表面の凹凸によるものであり、実際作製する際には少なからず起きる。また、後述のマルチキャビティー(欠陥層が複数層)の場合には、トップハット型のスペクトルにすることができるが、その透過率を100%近く高めるのは不可能である。つまり、透過光を利用する限りにおいて、出力光Gtoは100%に近い高い利用効率を実現することが難しい。
それに対し、反射率スペクトルGroffの落ち込み部以外の部分では、その反射率を100%近い値にすることは容易である。そのため、欠陥層に電圧を印加しなければ、反射光スペクトルGroは、入射光スペクトルGiとほぼ同程度になり、反射光量は入射光量に対し、ほぼ100%となる。つまりは、反射光を信号光として用いることで、光の利用効率はほぼ100%となる。
【0028】
図6、7はマルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。図6はデバイスの構成、図7は反射率スペクトルをそれぞれ説明するための図である。
図6において符号7はキャビティーを示す。
図7において符号Gscは単一のキャビティーによる反射率スペクトル、Gmcは複数のキャビティーによる反射率スペクトル、Gmlは誘電体多層膜の層数を多くした場合の反射率スペクトルをそれぞれ示す。
キャビティーとは、図1、2に示した誘電体多層膜2a、電極4を含む欠陥層3、誘電体多層膜2bの積層された複合層のことである。誘電体多層膜2a、2bの層数や欠陥層の厚さは目的に応じて種々変更し得る。このようなキャビティーを複数積み重ねたものをマルチキャビティーと呼んでいる。図6ではキャビティーを3層重ねて示してある。
図7において、単一キャビティーによる反射率スペクトルGscは、図4、図5に示したGron、Groffに対応している。これに対し、マルチキャビティーによる反射率スペクトルGmcは中央部に逆の極値を有するいわゆるトップハット型の分布をしている。また、誘電体多層膜の層数を特別に増加させた構成では、反射率スペクトルGmlが中央部に鋭いピークを有する半値幅の狭い分布となる。
しかし、いずれの場合もそれぞれの分布の極小値において、反射率が0%にならない。
【0029】
図8ないし11は所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
図8、9は図1、2に示したの構成において、入射光スペクトルの半値幅Δλiが移動量Δλmより大きい場合を示す。
図10、11は図1、2に示した構成において、透過率スペクトルの半値幅Δλt、あるいは反射率スペクトルの半値幅Δλrが移動量Δλmより大きい場合を示す。
図8において、電圧を印加したとき、丁度透過率スペクトルGtonのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、入射光のスペクトル幅が大きく、その半値幅Δλiがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
電圧をONにした場合、入射光スペクトルGiのうち、透過率スペクトルに一致した部分で両者の積が透過光Gtoとして出射する。
印加電圧をOFFにした場合、透過率スペクトルGtoffに入射光スペクトルGiの一部が一致するため、その一致した波長域において透過光スペクトルGto’が生ずる。透過光GtoとGto’とは僅かに波長が異なるが、出射光を利用する側においてはこのわずかな差は認識しないのが普通であるから、結果的に不完全な消光状態となる。
【0030】
図9において、電圧を印加したとき、丁度反射率スペクトルGronのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、入射光のスペクトル幅が大きく、その半値幅Δλiがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧をOFFにしたとき、入射光スペクトルGiのうち、反射率スペクトルGroffに一致した部分で両者の積が反射光Groとして出射する。すなわち、入射光スペクトルGiのピーク位置近辺は反射率100%の領域になっているため、この領域では入射光とほぼ同じスペクトルで反射する。そして、Groffのピーク位置(反射率が最も低い位置)の近辺で反射率が低下する。
印加電圧をONにしたとき、反射率スペクトルGronの高反射率領域に入射光スペクトルGiのピークから離れた一部が一致するため、その一致した波長域において反射光Gro’が生ずる。透過光GroとGro’とは一部形状が異なるが、波長域は同じなので、反射光を利用する側においてはこの形状の差は認識しないのが普通であるから、結果的に不完全な消光状態となる。
【0031】
図10において、電圧を印加したとき、丁度透過率スペクトルGtonのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、透過率スペクトル幅が大きく、その半値幅Δλtがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧をONにしたとき、入射光スペクトルGiと透過率スペクトルGtonの互いに一致した部分で両者の積が透過光スペクトルGtoとして出射する。
印加電圧をOFFにしたとき、透過率スペクトルGtoffの裾が入射光スペクトルGiに一致するため、透過光スペクトルGto’が生ずる。透過光スペクトルGtoとGto’とは波長が同じであるため、結果的に不完全な消光状態となる。
【0032】
図11において、電圧を印加したとき、丁度反射率スペクトルGronのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、反射率スペクトル幅が大きく、その半値幅Δλrがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧がOFFのとき、入射光スペクトルGiと反射率スペクトルGroffの互いに一致した部分で両者の積が反射光Groとして出射する。
印加電圧をONにしたとき、反射率スペクトルGonの裾(反射率の高い部分)が入射光スペクトルGiに一致するため、反射光スペクトルGro’が生ずる。反射光スペクトルGroとGro’とは波長が同じであるため、結果的に不完全な消光状態となる。
【0033】
図12は入射光を誘電体多層膜に対して傾斜させた実施形態を示す図である。
同図において符号8は入射角度調整用のプリズム、9はプリズム駆動装置をそれぞれ示す。
多層膜2の構成は図1に示した誘電体多層膜2の構成と基本的には同じである。
多層膜による光の透過特性は、入射光の入射角に依存する。入射角0°の垂直入射から角度を増加するにつれて、透過率スペクトルのピーク位置は長波長側に移動する。逆に言えば、同じ波長の光を傾斜角度を持たせて入射させて最大に透過させるためには、誘電体多層膜の膜厚を垂直入射用の多層膜より薄くしなければならない。その程度は、入射角をiとしたとき、cosiに比例する。
同図は所望の波長の入射光を所定の角度で入射させて、通常は多層膜で反射し、欠陥層に所定の電圧を印加したとき最大の透過光を得る構成にしてある。そして、本構成では主として反射光を利用することを目的としている。
このような構成にする利点は、入射光と反射光が同じ光路を共有しないので、光路の分岐手段が不要になり、出射光の利用に関して構成が簡単になることである。この構成の他の利点は、何らかの誤差によって、出射光の波長のピーク位置がずれた場合に光束の入射光を微調整することでピーク波長を所望の値に合わせることができる点である。
【0034】
本構成の作用を説明する。
導光体1は多層膜2に対して傾斜した面を有し、この面を光の入射面1aとして用いる。入射面1aの直前にはプリズム8が配置され、駆動装置9により、矢印Aで示すように、プリズムの面8aと入射面1aとの対面角度が変えられるようになっている。
図示しない光源からの所定の波長の光束Liがプリズム8を経て導光体1に入射する。光束は多層膜2に到ると、欠陥層3に電圧を印加していない状態ではほぼ100%反射して出射光Loが得られる。ここで欠陥層3に所定の電圧を印加すると、多層膜2は透過性となり、出射光は多層膜を透過して外部へ出ていく。
ITO電極4の一方4aに所定の電圧を変調した電気信号Siを入力し、他方の電極4bを接地して閉回路を構成すると、反射光Loが変調されて、光信号Soとして得られる。
多層膜の波長に対する透過・反射特性は光の入射角度に依存する。すなわち、多層膜は光の入射角度を変えることで、透過・反射スペクトルのピーク位置が移動する性質がある。
そこで、多層膜2や欠陥層3の製造上の誤差等で、反射光スペクトルのピーク位置が所望の位置になっていなかった場合、プリズム8を駆動装置9によって回動させ、入射光の入射角度を僅かに変えてやることで、反射光スペクトルのピーク位置を所望の位置に戻すことができる。
本構成では、出射光も多層膜2に対して傾斜した出射面1bから出るようにすることができる。
【0035】
図13、14は電極構成の変型例を説明するための図である。図13は断面図、図14は電極の平面図である。
本構成では、電極4が欠陥層3の片方の面だけに4a、4bとして形成されている。二つの電極4a、4bは図14に示すように、互いに入り組んだ櫛歯状に形成されている。同図において、電極層4a、4bに接している層4’は電極のある部分とない部分の厚さを均一にするためのダミーの透明膜であり、その厚さは光学長に換算して、電極のない部分が、電極の厚さの2倍になるよう設定してある。
一方の電極4bを接地して、他方の電極4aに所定の電圧を変調した信号を入力する。
欠陥層3は隣接した櫛歯状の電極間に所定の電圧が印加されることによって、屈折率が変化する。
【0036】
<作製方法1>
以下に本発明のデバイスの実施例を説明する。
石英からなる基板1上に誘電体多層膜2として、SiO2とTiO2とを交互に積層した。入射波長λipは633nmとして、そのスペクトルでの半値幅Δλiは約1nmとした。SiO2、TiO2の膜厚はそれぞれ光学長が入射波長λipの4分の1波長分になるよう設定した。すなわち、入射波長をそれぞれの屈折率で割った値λnのそれぞれちょうど1/4となる厚さにした。誘電体多層膜はSiO2、TiO2を6ペアとした。このペア数を変更することで、透過スペクトルの半値幅を選択することが可能である。より狭い半値幅にしたいときには、よりペア数を増やすことで可能である。6ペアとすることで、透過スペクトルの半値幅Δλtは上記のように約1nm程度となる。欠陥層には外場によって屈折率の変わるものであればよく、液晶や熱光学材料などが考えられるが、本実施例では反応スピード面から非線形結晶を利用した。非線形結晶はLN(LiNbO3)やLT(LiTaO3)、あるいは、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTI(1−y)O3)、KTN(KTaxNb(1−x)O3)などが有名である。また、光に反応するものであればコバルト酸化物などのフォトリフラクティブ材料なども利用することができる。しかし、LNなどは電気光学定数が約30pm/V程度であり、十分な屈折率変化が望めない。これに対し、PLZTやKTNであれば、LNなどと異なり屈折率変化が300pm/V以上と十分に大きい。屈折率変化が大きく取れることにより、それに対応した透過率のピーク移動量Δλmも大きくなる。これらは液晶などと異なり、無機系の材料であることから、光の照射に対する熱的変動が小さく安定性が高い。
【0037】
上記の理由により、欠陥層3には、液晶の代替として電気光学材料を利用した。液晶の応答速度は文献値で、約50μsecであるのに対し、電気光学材料ははるかに速い。また、液晶にくらべ、電気光学材料は、薄膜化しても、その膜厚方向に対し、屈折率分布が一定になる。これは、液晶のような配向膜と液晶界面が無く、原子配列が膜厚方向に対し、一定であることによっている。また、スパッタや蒸着など気相成長が可能なことから、膜厚の均一性に優れている。これにより、透過率はほぼ100%となる。
本構成例では欠陥層3にPLZTを利用する。図1に示した構成例の場合、膜厚はNを整数として、入射波長λipを屈折率で割った値の1/4の2N倍になるようにする。これにより、欠陥層に電圧を印加しないときは反射性を有し、欠陥層3に電圧を印加した場合、入射光の波長λipと透過率スペクトルのピーク位置とが一致し、透過性を有することになる。整数2Nは164として、膜厚は10.3μmとした。PLZTはその2次電気光学係数を9×10−16[m2V−2]とし、20Vの電圧印加で、その屈折率変化は約0.007程度となる。この屈折率変化で、透過率のピーク位置の移動量Δλmは約−1.0nmとなる。この移動量Δλmは、印加電圧や欠陥層3の膜厚整数Nによっても制御することができる。
図2に示した構成例の場合、図1の構成と同じにして、電圧の印加に関しても、ONとOFFを同じに作用させる。こうすることによって、電圧を印加しないとき反射性となり、電圧を印加したとき、透過性を有することになる。
欠陥層3の両面には電極として透明電極4を設けた。透明電極4はITOとし、スパッタによって形成する。入射光は垂直に入射し、図1の場合は欠陥層3に電圧を印加したとき、誘電体多層膜2を透過して出射され、図2の場合は欠陥層3に電圧を印加しないとき、誘電体多層膜2で反射されて出射される。
【0038】
<作製方法2>
欠陥層3としてのPLZTはその組成を9/35/66として、直径4インチ、厚さ500μmとして焼結作製される。このPLZT基板の両面に光学研磨を施す。この上にITO4をスパッタ成膜し、フォトリソグラフィーとドライエッチングによってパターニングする。次に、誘電体多層膜2aを蒸着する。誘電体多層膜2aはそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番はPLZT基板の次にSiO2を成膜する。次にTiO2、その次にSiO2の順である。今回はSiO2/TiO2のペアを6ペア積層した。この状態でPLZT基板を屈折率がほぼ石英と同等のUV硬化樹脂によって石英基板1に接着する。このとき、誘電体多層膜2aを成膜した側と石英基板1とを接着する。
次に誘電体多層膜のない側のPLZT基板を研磨する。研磨は膜厚を測定しながら行い、PLZTがほぼ10μmになった状態で終了する。このとき、この研磨面もできるだけ平滑になるようにする。次に、この研磨した面にITO4の成膜およびパターニングを行う。
次に誘電体多層膜2bを蒸着する。誘電体多層膜2bをパターニングし、PLZTの両面に構成されているITO4に電極をつける。これを配線して電気信号を入れる。
石英基板1の逆の面にはARコート5を施し、不所望の反射を低減する。出射光スペクトルのピーク位置が所望の波長になるように、入射光の入射角を微調整する。
【0039】
<動作>
SiO2/TiO2の6ペアとPLZTのキャビティーにより透過スペクトルはほぼ一意に決まる。透過率スペクトルは一般的なエタロン構造と同様に或る周期を以て振動するスペクトル形状となる。透過率スペクトルの入射光波長633nm近辺にピーク位置が来た。電圧を印加していない状態での透過率は約5%程度となった。このデバイスに印加する電圧を20Vとして、信号の周波数は100kHz程度とした。この信号を受けて、透過率スペクトルが約1nm程度短波長側に移動する。1nm移動することで透過率は95%となる。
【0040】
<作製方法3>
基板1を石英として、その上に誘電体多層膜2を蒸着する。誘電体多層膜2はそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番は石英基板1の次にTiO2を成膜する。次にSiO2、その次にTiO2の順である。今回はTiO2/SiO2のペアを6ペア積層した。次に欠陥層3を成膜する。欠陥層3にはPLZTを利用した。PLZTはゲル状の溶液をスピンコートし、その膜を燒結することで結晶化する。スピンコートで成膜した膜は膜厚が不均一であるため、研磨することで表面性を高める。研磨にはCMPを利用し、膜厚が300nmになるまで削る。膜厚はレーザー顕微鏡でモニターしながら行う。次ぎに電極をITOによって形成する。ITOはスパッタで行ない、フォトリソによりパターニングする。パターンは図14に示す様に櫛歯状とする。石英基板の逆の面には反射防止のためのARコートを施し、不所望な反射を低減する。入射光を入射角が適当な角度になるように微調整する。
【0041】
図15は本発明の透過型光スイッチの外観を示す図である。
同図において符号10は光スイッチ、11は電気配線をそれぞれ示す。
光スイッチの反射防止コートを施された面から、レーザー等の連続的な入射光Liを入れる。電気配線11a、11bに何も電圧を印加しないときは、入射光Liが反射されて同じ光路を戻って出てくる。電気配線11a、11b間に、欠陥層にとって必要な所定の電圧で信号Siを入力すると、信号Siに一致したタイミングで入射光Liが信号Soの形に変調されて透過光Loとして出てくる。。
【0042】
図16はフォトクロミック材料用プリンターの光学系の概要図である。
同図において符号20はプリンター、21はレーザー光源、22は光スイッチ、23はミラー、24はビームスコンバータ、25はポリゴンミラー、26はfθレンズ、27はフォトクロミック材料をそれぞれ示す。
本構成のキーパーツはこれまで説明してきた光スイッチ10である。光スイッチは透過光を利用することも反射光を利用することもできるが、本構成では透過光を利用する例で示してある。光スイッチはその構成の仕方により、透過光の波長を所望の値に定めることができるので、赤、緑、青の三原色(RGB)に相当するレーザー21R、21G、21Bの各出射光の波長に合わせて10R,10G、10Bの3種の光スイッチを作製する。
それぞれのレーザー光は対応する光スイッチ10を経てビームコンバータ24により所望の収束性を与えられながらポリゴンミラー25の方呼応に偏向される。なお、装置を小型化するために、通常は光路折り返しのためのミラー23を光路中に挿入する。少なくとも平面図上では同一光路に合成された光束は、ポリゴンミラー25によって同図の上方に折り曲げられながら、フォトクロミック材料27の表面を1次元的に走査(主走査)する。フォトクロミック材料27は、図示しない駆動装置によって主走査方向と直交する方向に移動(副走査)され、入射した光の波長と同じ波長の色に発色してフルカラー画像を形成する。ポリゴンミラー25とフォトクロミック材料27との間には、ポリゴンスキャナーの技術で常用されるfθレンズ等の光学系が配置される。
【0043】
図17は本発明の反射型光スイッチを説明するための図である。
図18は偏光分離プリズムを説明するための図である。
図17において符号30は反射型光スイッチ、31は偏光分離プリズム、32は4分の1波長板をそれぞれ示す。その他の符号は図13に示した符号と同様である。
図18も参照して、偏光分離プリズム31は、2個の直角2等辺三角柱プリズムを斜辺に相当する面で貼り合わせた形をしており、その貼り合わせ面において、入射光の特定の偏光方向に対しては透過性を示し、それと直交する偏光方向に対しては反射性を示す。
本構成では、光スイッチ30に垂直入射させる連続光束Liを、偏光分離プリズムに対して透過性となる特定方向に予め直線偏光させておく。したがって、入射光Liは偏光分離プリズム31を透過して4分の1波長板32に達する。ここを透過することによって、直線偏光の光束は円偏光と変わるが、光スイッチによって反射された光束は再び4分の1波長板32を透過することにより、入射前の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変わる。そのため、偏光分離プリズム31はこの直線偏光に対し反射性を示し、入射光の方向に対して直交する方向に出射光Loとなって出てくる。
本構成において、電極4bを接地し、電極4aに所定の電圧を変調した電気信号Siを入力すると、出射光Loが変調された光信号Soとなって出てくる。本光スイッチとして図4に示した性質を有するものを用いれば、電圧OFFのとき反射光が存在するので、光信号Soは電気信号Siを反転させた形となる。
なお、入射光Liを予め直線偏光にしておかない場合でも、偏光分離プリズムに入射したとき、透過に適した偏光方向でない光は図16の左方向に反射されて、同プリズムから出ていく。従って、予め直線偏光にしておくことは必須ではない。
【0044】
図19は斜入射用反射型光スイッチを説明するための図である。
同図において符号40は光スイッチを示す。
本構成は多層膜の面に対して傾斜させて入射光を与える構成例であり、基本形は図12に示した構成と同じである。したがって、誘電体多層膜2や欠陥層3の厚さは、角度を以て入射する光線の入射角度およびその波長によって定まる値に設定してある。
導光体1の光の入射面1aは、入射させる光束がほぼ面に垂直になるように誘電体多層膜の面に対して傾斜させておく。出射面1bも同様に傾斜させておくのがよい。それぞれの面には反射防止のためのARコート5を施しておくとなお良い。必要に応じて図12に示したような入射光の入射角度調整用のプリズムを配置しても良い。
この構成は図17に示した反射型の光スイッチに比べて偏光分離プリズムや4分の1波長板を用いないで済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の基本原理を説明するための図である。
【図2】基本原理を説明するための図である。
【図3】図1の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
【図4】図2の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
【図5】同一のデバイスの透過特性と反射特性を説明するための図である。
【図6】マルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。
【図7】マルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。
【図8】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図9】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図10】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図11】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図12】入射光を誘電体多層膜に対して傾斜させた実施形態を示す図である。
【図13】電極構成の変型例を説明するための図である。
【図14】電極構成の変型例を説明するための図である。
【図15】本発明の透過型光スイッチの外観を示す図である。
【図16】フォトクロミック材料用プリンターの光学系の概要図である。
【図17】本発明の反射型光スイッチを説明するための図である。
【図18】偏光分離プリズムを説明するための図である。
【図19】斜入射用反射型光スイッチを説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 導光体
2 誘電体多層膜
3 欠陥層
4 透明電極
5 ARコート
10 透過型光スイッチ
20 フォトクロミックプリンター
30 反射型光スイッチ
40 斜入射用反射型光スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック材料用のレーザープリンターに使用可能な、光源の光出力を制御する光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フォトクロミック材料を利用した書き換え可能な(リライタブル)ペーパーの開発が進んでいる。フォトクロミック材料は光を照射することで、その光の波長と同等の波長の色に発色する。照射光を赤、緑、青と3色利用することで、フルカラーの表示が行える。この発色はUV光を照射することで消去することができる。この発色現象は繰り返し行うことができ、これをプリンター用紙として利用したものが、リライタブルペーパーである。フォトクロミック用のレーザープリンターはその光源として、波長を青、緑、赤と3種類必要であり、それぞれに変調器が必要である。通常光源はLDを用いており、赤色のレーザーであれば、電流駆動によって変調が可能である。しかし、青、もしくは緑はSHG(第2高調波)を用いるために、電流駆動ではなく、SHGの励起寿命によって、変調速度が規定される。SHGの励起寿命は非常に長くnsecオーダーの変調は難しい。
そこで、従来はAOMやPLZTの偏光を利用した光シャッターなどの外部変調器を用いていた。AOMは弾性波を利用して回折格子をつくり、光を回折することでスイッチングを行なう。弾性を発生させる素子が発熱することから、大きな冷却装置が必要とされていた。また、PLZTを用いたシャッターでは、光がPLZTで偏光することを利用してスイッチングを行なう。このシャッターでは,偏光を利用することで光の利用効率が50%となるほか、光吸収があるなど課題が多い。
【0003】
一方、液晶を誘電体多層膜に挟んだ構造の光スイッチが研究されている(例えば、非特許文献1 参照。)。誘電体多層膜は屈折率の異なる誘電体を周期的に積層したもので、SiO2とTiO2などの屈折率差が大きいペアが利用されている。この誘電体の厚みをコントロールすることで、任意の波長の光を反射する反射膜として機能する。この誘電体多層膜の間に欠陥層として、周期性を乱す層を入れることで、任意の波長だけを透過するフィルターとしての機能を持たせることができる。これはバンドパスフィルターなどとして通信分野で利用されている。この欠陥層として液晶を用い、電圧印加によって、光学的な厚みをコントロールすることが研究されている。以下では、このような誘電体多層膜に屈折率が可変な材料を挟んだものをアクティブフィルターと呼ぶ。しかし、液晶でのスイッチングでは駆動速度は50μsec程度である。
ほぼ同じ形態で、誘電体多層膜の間に半導体を挟んだ系が有る(例えば、特許文献1 参照。)。半導体の場合には、高速に反応ができることや薄膜などが精度よく作製できるといったメリットがある。しかし、半導体では、入射光の波長に自由度が無く、誘電体多層膜部分を半導体によって作製しなくては、欠陥層が作製でいないという問題がある。半導体での周期構造では屈折率差が大きくとれないことから、シャープな透過率スペクトルが作れないなど問題がある。
【0004】
誘電体多層膜に電気光学材料を挟みこんだバンドパスフィルターを開発しているものもある(例えば、特許文献2、特許文献3 参照。)。このバンドパスフィルターは入射光の波長選択を行うデバイスであり、変調器の機能は有していない。バンドパスフィルターは様々な波長の入射光を振り分けるルーターの役割をする。そのため、入射光の波長は通信のシステムで決められ、バンドパスフィルターからの制限をかける事はできない。また、これらの特許文献には、透過光を信号光として用いる構成しか示されていない。これらの特許文献では信号光の強度に対し、それほど厳しい製品システムを設定していないため、透過光でも十分に対応できている。しかし、プリンターなどに用いる光スイッチとしては、信号光の光強度が重要になり、その強度を上げる方法が必要である。信号光の光強度を上げることによって、OFF時の信号光強度を上げてしまっては問題が残る。信号光の強度を上げることで、消光比も上げる必要がある。
また、入射角を垂直方向に固定する方法がとられてきた。実装が簡便であり、単純な系であることから、入射光の方向として、垂直方向に固定していたのである。また、この誘電体多層膜に欠陥層を挟み込む構造は、欠陥層の膜厚制御が非常に難しい。それは欠陥層を電気光学材料としており、電気光学材料は一般的には引き上げ法など成膜の膜厚精度が出しにくい方法でしか成膜できない理由による。また、欠陥層の上下層には電極層が形成され、これも膜厚精度を低下させる要因である。
また、電気光学材料を用いていないパッシブ型のバンドパスフィルターでは、入射角を制御して、透過スペクトルを制御する方法が行われている(例えば、特許文献4 参照。)。この方法はアクティブに入射角を制御する方法であるが、反応時間が遅く、これを利用して光スイッチとすることは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−64277号公報
【特許文献2】特開2003−207753号公報
【特許文献3】特開2003−233046号公報
【特許文献4】特開2000−147247号公報
【非特許文献1】Ryotaro Ozaki, Masanori Ozaki and Yoshino Katumi ; J.J.A.P. 42(2003)L669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消光比が高く、高速応答を行える高品質な光スイッチを低コストで提供する。
アクティブバンドパスフィルターを利用した光スイッチ構成において、消光比の高い光スイッチを提供する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、互いに屈折率の異なる2種の誘電体を周期的に積層してなる第1の多層膜と、該第1の多層膜の上に屈折率が外部の摂動によって制御しうる欠陥層と、さらにその上に前記多層膜と同様構成の第2の多層膜を積層して1つのキャビティとし、該キャビティを少なくとも1つ、光学的に透明な基板の1面に形成することによって特定の波長光を共鳴波長とする複合薄膜からなる光スイッチにおいて、前記欠陥層の屈折率を電気光学効果により変化させることで、前記共鳴波長を移動させ、前記光スイッチに前記基板側から入射させる入射光のスペクトルと、前記屈折率の変化前、もしくは変化後の前記複合薄膜の透過率スペクトルとを整合させることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して垂直に入射することを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜を透過する光を信号光として用いることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の光スイッチにおいて、前記入射光の偏光方向に対し、反射光の偏光方向が直交する向きに偏光方向を変える手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の光スイッチにおいて、前記入射光が前記偏光方向を変える手段に入る前に、直線偏光に揃える手段を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して傾斜して入射させ、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の光スイッチにおいて、前記電気光学効果を有する欠陥層はその片面側に櫛歯電極を設けたことを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項9または10に記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は光の入射方向に対してほぼ垂直に形成されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項13に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は、反射防止コートが施されていることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記入射光の入射角をθ、ピーク位置の波長をλipとし、前記欠陥層の屈折率をnkとし、Nを任意の整数とするとき、前記欠陥層の厚さdkが次の式を満足するように構成されていることを特徴とする。
dk=2N×{(λip/cosθ)/4}/nk
【0010】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記欠陥層として用いる電気光学材料は、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTi(1−y)O3)、またはKTN(KTaxNb(1−x)O3)のいずれかであることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の光スイッチを、前記共鳴波長が赤、緑、青の3色にそれぞれ対応する3個用いたフォトクロミック用プリンターを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、構成が簡単で、高速のスイッチングが可能な光スイッチを提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、2は本発明の基本原理を説明するための図である。図1は透過性光スイッチの構成、図2は反射性光スイッチの構成をそれぞれ示す図である。
両図において符号1は基板の役割をする導光体、2は誘電体多層膜、3は欠陥層、4は電極をそれぞれ示す。
図1において、周期的に屈折率の異なる誘電体(例えば、SiO2とTiO2)を積層してなる誘電体多層膜2に、その周期性から外れた欠陥層3を挿入し、欠陥層3に電気的な入力をON、OFFさせて、欠陥層3の屈折率を電気光学効果によって変化させると、透過スペクトルが変化する。その変化を利用して、透過スペクトルを入射光のスペクトルに整合させる、すなわち、両者のピーク位置を一致させ、出射光の光量を最大にすることができる。ピーク位置がずれることによって、出射光の光量が減少する。また、透過率スペクトルの半値幅と入射光のスペクトルの半値幅との関連についても、同様に考えられる。ここで、整合性が高い状態とは、入射光のスペクトルの半値幅よりも透過率スペクトルの半値幅の方が広いことを意味する。このように入射光スペクトルと透過率スペクトルとの形状や位置の関係によって、透過光強度はさまざまに変化する。この整合性の制御によって、透過光量を制御することができる。
【0013】
図2において、周期的に屈折率の異なる誘電体を積層してなる誘電体多層膜2に、その周期性から外れた欠陥層3を挿入し、欠陥層3に電気的な入力をON、OFFさせて、欠陥層3の屈折率を電気光学効果によって変化させると、反射スペクトルが変化する。その変化を利用して、反射スペクトルを入射光のスペクトルに整合させる、すなわち、両者のピーク位置を一致させ、出射光の光量を最大にすることができる。ピーク位置がずれることによって、出射光の光量が減少する。また、反射率スペクトルの半値幅と入射光のスペクトルの半値幅との関連についても、同様に考えられる。ここで、整合性が高い状態とは、入射光のスペクトルの半値幅よりも反射率スペクトルの半値幅の方が広いことを意味する。このように入射光スペクトルと反射率スペクトルとの形状や位置の関係によって、反射光強度はさまざまに変化する。この整合性の制御によって、反射光量を制御することができる。
【0014】
図3は図1の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
同図において符号Gtoffは欠陥層3に電圧を印加しないときの透過率スペクトル、Gtonは欠陥層3に電圧を印加したときの透過率スペクトル、Giは入射光のスペクトル、Gtoは透過光のスペクトルをそれぞれ示す。
図1に示す様に誘電体多層膜2によって欠陥層3を挟むと、その欠陥層3の厚さ等に対応した波長にピークをもつ透過率スペクトルGtoffが表われる。欠陥層3に所定の電圧を印加すると、透過率スペクトルGtonのピーク位置は長波長側もしくは短波長側にずれる。透過率スペクトルGtonと透過率スペクトルGtoffの両者を区別しないで纏めて言うときは単にGtと呼ぶ。透過率スペクトルGtonのピーク位置にピーク位置を一致させた入射光スペクトルGiを入射させると、入射光スペクトルGiと透過率スペクトルGtonの積によって生ずる透過光スペクトルGtoが得られる。透過率スペクトルGtonのピーク値が理想通り100%であれば、透過光スペクトルGtoのピーク値は入射光スペクトルGiのピーク値に一致する。また、透過光スペクトルGtoの半値幅は必ず入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに等しいかそれより小さくなる。電圧をOFFにすれば、透過率スペクトルGtoffになるので、入射光スペクトルGiとの整合が取れなくなり、透過光はほとんどなくなる。
入射光スペクトルGiのピーク位置を透過率スペクトルGtoffのピーク位置に合わせる方式も構成できる。この場合は、欠陥層3に電圧印加をしないときに十分な透過光量が得られ、所定の電圧を印加すると透過光がほとんどなくなる。
【0015】
欠陥層の厚さdkは次のようにして定める。
入射光の波長のピーク位置をλip、所定の電圧を印加したときの欠陥層の屈折率をnkとし、任意の整数をNとするとき、
nk×dk=2N×(λip/4)
これをdkについて解いて、
dk=2N×(λip/4)/nk
となるようにdkを定める。すなわち、欠陥層の厚さdkは、「波長λipの4分の1波長に相当する屈折率nkの媒質中における光学的長さ」の偶数倍にする。こうすることによって、ピーク波長λipの光束が多層膜2に入射した場合、欠陥層に所定の電圧を印加すると多層膜2の透過率スペクトルのピークがλipに一致する。
【0016】
ここで、透過率スペクトルGtoffにおける半値幅をΔλtとする。半値幅Δλtは透過率スペクトルGtoffのピークからすその部分までの波長長さとほぼ同等と考えられる。つまり、このΔλtによって、透過率スペクトルGtoffにおける透過率が高い位置から低い位置までの波長幅を示すことができる。そこで、半値幅の2倍の波長幅の範囲を便宜上有効部と名付ける。入射光に関しても同様とする。有効部から外れた部分の透過率や、光量は無視しうるものと考えて良い。
透過率スペクトルGtoffは欠陥層3の光学的な厚さに対応しており、この光学的な厚さを変えることで、曲線の形状はほぼそのままでピーク位置が移動する。この移動量をΔλmとした。また、入射光のスペクトルGiにおける半値幅をΔλiとした。同図では所定の電圧印加をONとOFFとして、欠陥層3の光学的な厚さを変化させている。欠陥層としてPLZTを用いた場合、電圧を印加したときの透過率スペクトルGtonは透過率スペクトルGtoffより短波長側に移動する。
【0017】
電圧OFFのとき、透過光が生じないで、電圧ONのとき入射光が最大に透過するのが理想である。そのためには透過率スペクトルのピーク位置の移動量Δλmが、透過率スペクトルの半値幅Δλtや入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに比べて十分大きければよい。
そうすれば、ONとOFFにおける透過光スペクトルは同図に示すように、ONの時には透過光Gtoを出射し、OFFの時には光を出さない。これによって大きな消光比をとることができる。同図では、Gtoが電圧印加ONのとき生ずることを示すため(ON)の記号を付してある。以下の図においても同様である。
各分布が理想的なガウス分布に従っているとし、ΔλiとΔλtがほぼ等しく、且つ、Δλmが上記条件を満足する中で最も小さい場合、電圧ON時の透過光のピーク値(100%と仮定)に対し電圧OFF時の透過光のピーク値は6.25%になる。
【0018】
このことを、数式を用いてより詳しく説明する。
ガウス分布の式の一般形は
f(x)=Ae−(x/r)2
であるが、標準形として、A=1、r=1と置いて、
f(x)=e−x2
とする。x=0 なら f(x)=1 となる。
透過率スペクトルの半値幅Δλtは、f(x)=0.5と置いたときのxの値xhの2倍である。
e−(xh)2=0.5
両辺の自然対数を取る。
−(xh)2=ln2−1=−ln2
xh=√(ln2)=0.8325546・・
ここで、x=Δλt=2xhにおける関数の値を見る。
f(2xh)=e−(2xh)2=e−(xh)2×4={e−(xh)2}4=(0.5)4
=0.0625
入射光スペクトルの半値幅Δλiに対して、透過率スペクトルGtの移動量Δλmが等しいと仮定した場合、透過率分布スペクトルGtのピーク位置が、入射光スペクトルGiに関し上記2xhに相当する位置に一致することになる(Δλm=2xh)。したがって、透過率スペクトルGtのピーク値が100%であるとすると、移動後の透過光のピーク値100%に対して、移動前の透過光は最大値が6.25%になる。
【0019】
一般に関数の値がピーク値のα%以下になるxの値xα(透過率スペクトルの移動量Δλmに相当)を半値幅Δλh(入射光スペクトルの半値幅Δλiに相当)で表すと、kαを係数として、
xα=kαΔλh(ただし、kα=Δλm/Δλh)
f(xα)=e−(xα)2=e−(kαΔλh)2≦α/100
これを解くと、
e−kα2×(Δλh)2={e−(2xh)2}kα2={(0.5)4}kα2=(0.5)4kα2
≦α×10−2
両辺の自然対数を取って、
−4kα2ln2≦−2ln10+lnα
kα≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
となる。
ここで、例えばα=1(関数の値がピーク値の1%になる位置)とおくと、
kα≧√(2ln10/ln2)/2=1.288784・・≒1.3
となる。すなわち、透過率スペクトルGtの移動量Δλmを入射光スペクトルGiの片側に半値幅Δλiの約1.3倍以上の距離を取れば、その値はピーク値の1%程度以下になる。
逆に、関数の値がピーク値の10%になっても良ければ、
kα≧√{(2ln10−ln10)/ln2}/2
=√(ln10/ln2)/2=0.9113078・・≒0.9
すなわち、ガウス分布の片側に半値幅の約0.9倍以上の距離を取れば、その値はピーク値の10%程度以下になる。
【0020】
以上はピーク値のみで比較してきたが、実際の消光比を見るときは、透過光すべてを積算しなければならない。透過率スペクトルGtoffのとき入射光スペクトルの裾部が透過するとき、透過光スペクトルGo(OFF)は中心対称形にならず、GToffの裾引き部に対応する部分の低下が特に著しくなる。その違いを無視して、Go(ON)とGo(OFF)が相似形であると仮定して、消光比を見ると、その比はピーク値の比の二乗になる。すなわち、ピーク値の比が先に示した6.25%(α=6.25)の場合、消光比は約0.4%になる。α=10の場合でも消光比は1%になる。Go(OFF)の非対称な形状変化を加味すると、消光比はこれらよりも小さな値になる。
したがって、移動量Δλmを幾らにするのが妥当であるかは、消光比を幾らにしたいかに関わってくる。そして、その許容消光比は出射光の用途によって異なる。人が直接目で見るようなディスプレイのような用途であれば、消光比が1%以下になれば十分であろう。しかし、光通信のような用途であれば、消光比を例えば0.01%くらいに抑える必要があろう。
なお、透過率スペクトルの半値幅はなるべく入射光スペクトルの半値幅より大きいことが望ましいが、特に両者の関係を規定しない場合、上記のΔλiとΔλmとの関係は、ΔλtとΔλmとの関係にも適用できる。
【0021】
図4は図2の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
同図において符号Groffは欠陥層3に電圧を印加しないときの反射率スペクトル、Gronは欠陥層3に電圧を印加したときの反射率スペクトル、Giは入射光のスペクトル、Groは反射光のスペクトルをそれぞれ示す。
図2に示す様に誘電体多層膜2によって欠陥層3を挟むと、その欠陥層3の厚さ等に対応した波長にピークをもつ反射率スペクトルGroffが表われる。欠陥層3に所定の電圧を印加すると、反射率スペクトルGronのピーク位置は長波長側もしくは短波長側にずれる。反射率スペクトルGronのピーク位置(反射率が最も小さい位置)にピーク位置を一致させた(整合させた)入射光スペクトルGiを入射させると、入射光スペクトルGiと反射率スペクトルGronの積によって生ずる反射光スペクトルGro’が得られる。反射率スペクトルGronのピーク値が理想通り0%であれば、反射光スペクトルGro’は入射光スペクトルGiのピーク位置において0になる。電圧をOFFにすれば、反射率スペクトルGroffになり、入射光スペクトルGiに対応する波長域の反射率はほぼ100%になっているので、入射光はほとんどそのまま反射され、反射光スペクトルGroが得られる。反射光スペクトルGroの半値幅は必ず入射光スペクトルGiの半値幅Δλiより小さくなる。
入射光スペクトルGiのピーク位置を反射率スペクトルGtoffのピーク位置に合わせる(整合させる)方式も構成できる。この場合は、欠陥層3に電圧印加をしないときに透過光がほとんどなくなり、所定の電圧を印加すると十分な透過光量が得られる。
【0022】
ここで、反射率スペクトルGroffにおける半値幅をΔλrとする。半値幅Δλrは反射率スペクトルGroffのピークからすその部分までの波長長さとほぼ同等と考えられる。つまり、このΔλrによって、反射率スペクトルGroffにおける反射率が高い位置から低い位置までの波長幅を示すことができる。
反射率スペクトルGroffは欠陥層3の光学的な厚さに対応しており、この光学的な厚さを変えることで、曲線の形状はほぼそのままでピーク位置が移動する。この移動量をΔλmとした。また、入射光のスペクトルGiにおける半値幅をΔλiとした。同図では所定の電圧印加をONとOFFとして、欠陥層3の光学的な厚さを変化させている。欠陥層としてPLZTを用いた場合、電圧を印加したときの反射率スペクトルGronは反射率スペクトルGroffより短波長側に移動する。
【0023】
電圧ONのとき、反射光が生じないで、電圧OFFのとき入射光が最大に反射するのが理想である。そのためには反射率スペクトルのピーク位置の移動量Δλmが、反射率スペクトルの半値幅Δλrや入射光スペクトルGiの半値幅Δλiに比べて十分大きければよい。そうすれば、ONとOFFにおける反射光スペクトルは同図に示すように、OFFの時には反射光Groを出射し、ONの時にはGro’のように光をほとんど出さない。これによって大きな消光比をとることができる。同図では、Groが電圧印加OFFのとき生ずることを示すため(OFF)の記号を付してあり、Gro’が電圧印加ONのとき生ずることを示すため(ON)の記号を付してある。以下の図においても同様である。
しかし、電圧ONのとき、入射光スペクトルのピーク位置を透過率スペクトルの(落ち込み部の)ピーク位置に合わせてその位置における反射光を0にしたとしても、ピーク位置以外では0でない反射率が存在するため、入射光スペクトルの裾部に向かって若干の反射光Gro’(ON)が生ずる。
【0024】
反射率スペクトルの落ち込み部がガウス分布に従うとすれば、反射率スペクトルの関数f(x)は
f(x)=1−e−x2
で表される。
ここでΔλiとΔλrがほぼ等しく、且つ、Δλmも同様の大きさであったとすると、上式に条件を代入すれば、電圧OFF時の反射率は入射光の波長の位置で(100%−6.25%)で約94%になることが分かる。これに対し、電圧ON時の透過光のピーク値は0%になる。しかし、この比がそのまま消光比に結びつくわけではないことは、ピーク位置以外で反射が存在するという先の説明により明らかである。ただ、Gro’(ON)の光量積分値は、入射光スペクトルGiと、反射率スペクトルGronのみで定まり、Δλmには無関係である。したがって、消光比をできるだけ大きくするためにはΔλmを大きくすればよい。
Δλmを大きくすると、先に示した94%が最大100%にまで増加しうる。この違いにより、反射光に関しては最大6.7%程度消光比を改善することができる。
特に図示はしないが、反射率スペクトルGrの半値幅Δλrを大きくすることは、入射光スペクトルGiの波長帯域の反射率を下げることになるので、反射光スペクトルGro’の積分値が小さくなり、より大きな消光比を得ることができる。
【0025】
入射光スペクトルGiの半値幅Δλiと反射率スペクトルGrの半値幅Δλrが等しいと仮定した場合、すなわち、Δλr=Δλiの場合、透過光スペクトルGro’(ON)は両スペクトルの積になるので、これを数式で表すと、
Gro’(x)=(e−x2)×(1−e−x2)
となる。詳細は省略するが、これは、x=0で0となり、両スペクトルの値が共に0.5になる位置(x≒±0.833)で最大値(極大値)0.25を示す。
これに対して、半値幅Δλrが半値幅Δλiのk倍であったとすると、一般式は、
Gro’(x)=(e−x2)×(1−e−(x/k)2)
となる。(先に示したΔλr=Δλiはk=1の場合に相当する。)
この曲線の極値を求めると、極小値(最小値でもある)はx=0において0、極大値(最大値でもある)は、
x=±k×ln(1+1/k2) のとき、(演算過程は省略)
Gro’(x)={g(k)}k2―{g(k)}(k2+1)
ただし、
g(k)=e−{ln(1+1/k2)} とする。
【0026】
例えば、k=2とすると、x≒±0.446の位置において、
g(k)=0.8 となるので、
Gro’(x)=0.4096−0.32768=0.08192
すなわち、x=0の位置を挟んで、最大値がピーク値の8.192%の二つの山ができる。このように、kを大きくするほどGro’の最大値は小さくなっていく。
仮に二つの山の形がガウス分布に相似と見なせるものとして、仮の消光比を計算すると、K=2の場合は、山が二つあることを考えて、全反射のピーク値を1として、
2×0.081922=2×0.000671≒0.01342=1.342%
となる。
移動量Δλmを大きく取るためには、欠陥層に与える電圧を大きくしなければならないが、それには限界があるので、なるべく効率の良い移動量Δλmを定める必要がある。そのため、上記のような計算によって、所望の消光比を考慮してkの値を定めるのが一番良い。
【0027】
図5は同一のデバイスの透過特性と反射特性を説明するための図である。
同図は、周期的に屈折率の異なる誘電体を積層してなる誘電体多層膜とその周期性から外れた欠陥層からなり、その欠陥層の屈折率が外部の摂動によって制御される複合薄膜において形成される透過率スペクトルGtoffを示している。反射率スペクトルGroffは、多層膜や欠陥層に吸収がないものとすれば、Gtoffとの和が100%になる関係にある。したがって、グラフ上では、Groff=100−Gtoffの関係になっている。この関係から、Groffの半値幅ΔλrとGtoffの半値幅Δλtは実質同一のものである。
透過率スペクトルGtoffは、一般的にバンドパスフィルターの透過スペクトルとほぼ同様形状であり、ガウシアン分布を取る。ガウシアン型であるため、入射光のスペクトルのピーク位置が少しでもずれることで、透過光の光量は急激に低下する。また、透過率スペクトルGtonにおいて、そのピーク値は100%の透過率(反射率として0%)にならず、誤差が大きい場合その透過率がピークの位置でも数十%となる。これは膜厚の誤差や表面の凹凸によるものであり、実際作製する際には少なからず起きる。また、後述のマルチキャビティー(欠陥層が複数層)の場合には、トップハット型のスペクトルにすることができるが、その透過率を100%近く高めるのは不可能である。つまり、透過光を利用する限りにおいて、出力光Gtoは100%に近い高い利用効率を実現することが難しい。
それに対し、反射率スペクトルGroffの落ち込み部以外の部分では、その反射率を100%近い値にすることは容易である。そのため、欠陥層に電圧を印加しなければ、反射光スペクトルGroは、入射光スペクトルGiとほぼ同程度になり、反射光量は入射光量に対し、ほぼ100%となる。つまりは、反射光を信号光として用いることで、光の利用効率はほぼ100%となる。
【0028】
図6、7はマルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。図6はデバイスの構成、図7は反射率スペクトルをそれぞれ説明するための図である。
図6において符号7はキャビティーを示す。
図7において符号Gscは単一のキャビティーによる反射率スペクトル、Gmcは複数のキャビティーによる反射率スペクトル、Gmlは誘電体多層膜の層数を多くした場合の反射率スペクトルをそれぞれ示す。
キャビティーとは、図1、2に示した誘電体多層膜2a、電極4を含む欠陥層3、誘電体多層膜2bの積層された複合層のことである。誘電体多層膜2a、2bの層数や欠陥層の厚さは目的に応じて種々変更し得る。このようなキャビティーを複数積み重ねたものをマルチキャビティーと呼んでいる。図6ではキャビティーを3層重ねて示してある。
図7において、単一キャビティーによる反射率スペクトルGscは、図4、図5に示したGron、Groffに対応している。これに対し、マルチキャビティーによる反射率スペクトルGmcは中央部に逆の極値を有するいわゆるトップハット型の分布をしている。また、誘電体多層膜の層数を特別に増加させた構成では、反射率スペクトルGmlが中央部に鋭いピークを有する半値幅の狭い分布となる。
しかし、いずれの場合もそれぞれの分布の極小値において、反射率が0%にならない。
【0029】
図8ないし11は所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
図8、9は図1、2に示したの構成において、入射光スペクトルの半値幅Δλiが移動量Δλmより大きい場合を示す。
図10、11は図1、2に示した構成において、透過率スペクトルの半値幅Δλt、あるいは反射率スペクトルの半値幅Δλrが移動量Δλmより大きい場合を示す。
図8において、電圧を印加したとき、丁度透過率スペクトルGtonのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、入射光のスペクトル幅が大きく、その半値幅Δλiがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
電圧をONにした場合、入射光スペクトルGiのうち、透過率スペクトルに一致した部分で両者の積が透過光Gtoとして出射する。
印加電圧をOFFにした場合、透過率スペクトルGtoffに入射光スペクトルGiの一部が一致するため、その一致した波長域において透過光スペクトルGto’が生ずる。透過光GtoとGto’とは僅かに波長が異なるが、出射光を利用する側においてはこのわずかな差は認識しないのが普通であるから、結果的に不完全な消光状態となる。
【0030】
図9において、電圧を印加したとき、丁度反射率スペクトルGronのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、入射光のスペクトル幅が大きく、その半値幅Δλiがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧をOFFにしたとき、入射光スペクトルGiのうち、反射率スペクトルGroffに一致した部分で両者の積が反射光Groとして出射する。すなわち、入射光スペクトルGiのピーク位置近辺は反射率100%の領域になっているため、この領域では入射光とほぼ同じスペクトルで反射する。そして、Groffのピーク位置(反射率が最も低い位置)の近辺で反射率が低下する。
印加電圧をONにしたとき、反射率スペクトルGronの高反射率領域に入射光スペクトルGiのピークから離れた一部が一致するため、その一致した波長域において反射光Gro’が生ずる。透過光GroとGro’とは一部形状が異なるが、波長域は同じなので、反射光を利用する側においてはこの形状の差は認識しないのが普通であるから、結果的に不完全な消光状態となる。
【0031】
図10において、電圧を印加したとき、丁度透過率スペクトルGtonのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、透過率スペクトル幅が大きく、その半値幅Δλtがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧をONにしたとき、入射光スペクトルGiと透過率スペクトルGtonの互いに一致した部分で両者の積が透過光スペクトルGtoとして出射する。
印加電圧をOFFにしたとき、透過率スペクトルGtoffの裾が入射光スペクトルGiに一致するため、透過光スペクトルGto’が生ずる。透過光スペクトルGtoとGto’とは波長が同じであるため、結果的に不完全な消光状態となる。
【0032】
図11において、電圧を印加したとき、丁度反射率スペクトルGronのピーク位置が入射光スペクトルGiのピーク位置に一致するように設定する。
このとき、反射率スペクトル幅が大きく、その半値幅Δλrがスペクトルの移動量Δλmより大きいとする。
印加電圧がOFFのとき、入射光スペクトルGiと反射率スペクトルGroffの互いに一致した部分で両者の積が反射光Groとして出射する。
印加電圧をONにしたとき、反射率スペクトルGonの裾(反射率の高い部分)が入射光スペクトルGiに一致するため、反射光スペクトルGro’が生ずる。反射光スペクトルGroとGro’とは波長が同じであるため、結果的に不完全な消光状態となる。
【0033】
図12は入射光を誘電体多層膜に対して傾斜させた実施形態を示す図である。
同図において符号8は入射角度調整用のプリズム、9はプリズム駆動装置をそれぞれ示す。
多層膜2の構成は図1に示した誘電体多層膜2の構成と基本的には同じである。
多層膜による光の透過特性は、入射光の入射角に依存する。入射角0°の垂直入射から角度を増加するにつれて、透過率スペクトルのピーク位置は長波長側に移動する。逆に言えば、同じ波長の光を傾斜角度を持たせて入射させて最大に透過させるためには、誘電体多層膜の膜厚を垂直入射用の多層膜より薄くしなければならない。その程度は、入射角をiとしたとき、cosiに比例する。
同図は所望の波長の入射光を所定の角度で入射させて、通常は多層膜で反射し、欠陥層に所定の電圧を印加したとき最大の透過光を得る構成にしてある。そして、本構成では主として反射光を利用することを目的としている。
このような構成にする利点は、入射光と反射光が同じ光路を共有しないので、光路の分岐手段が不要になり、出射光の利用に関して構成が簡単になることである。この構成の他の利点は、何らかの誤差によって、出射光の波長のピーク位置がずれた場合に光束の入射光を微調整することでピーク波長を所望の値に合わせることができる点である。
【0034】
本構成の作用を説明する。
導光体1は多層膜2に対して傾斜した面を有し、この面を光の入射面1aとして用いる。入射面1aの直前にはプリズム8が配置され、駆動装置9により、矢印Aで示すように、プリズムの面8aと入射面1aとの対面角度が変えられるようになっている。
図示しない光源からの所定の波長の光束Liがプリズム8を経て導光体1に入射する。光束は多層膜2に到ると、欠陥層3に電圧を印加していない状態ではほぼ100%反射して出射光Loが得られる。ここで欠陥層3に所定の電圧を印加すると、多層膜2は透過性となり、出射光は多層膜を透過して外部へ出ていく。
ITO電極4の一方4aに所定の電圧を変調した電気信号Siを入力し、他方の電極4bを接地して閉回路を構成すると、反射光Loが変調されて、光信号Soとして得られる。
多層膜の波長に対する透過・反射特性は光の入射角度に依存する。すなわち、多層膜は光の入射角度を変えることで、透過・反射スペクトルのピーク位置が移動する性質がある。
そこで、多層膜2や欠陥層3の製造上の誤差等で、反射光スペクトルのピーク位置が所望の位置になっていなかった場合、プリズム8を駆動装置9によって回動させ、入射光の入射角度を僅かに変えてやることで、反射光スペクトルのピーク位置を所望の位置に戻すことができる。
本構成では、出射光も多層膜2に対して傾斜した出射面1bから出るようにすることができる。
【0035】
図13、14は電極構成の変型例を説明するための図である。図13は断面図、図14は電極の平面図である。
本構成では、電極4が欠陥層3の片方の面だけに4a、4bとして形成されている。二つの電極4a、4bは図14に示すように、互いに入り組んだ櫛歯状に形成されている。同図において、電極層4a、4bに接している層4’は電極のある部分とない部分の厚さを均一にするためのダミーの透明膜であり、その厚さは光学長に換算して、電極のない部分が、電極の厚さの2倍になるよう設定してある。
一方の電極4bを接地して、他方の電極4aに所定の電圧を変調した信号を入力する。
欠陥層3は隣接した櫛歯状の電極間に所定の電圧が印加されることによって、屈折率が変化する。
【0036】
<作製方法1>
以下に本発明のデバイスの実施例を説明する。
石英からなる基板1上に誘電体多層膜2として、SiO2とTiO2とを交互に積層した。入射波長λipは633nmとして、そのスペクトルでの半値幅Δλiは約1nmとした。SiO2、TiO2の膜厚はそれぞれ光学長が入射波長λipの4分の1波長分になるよう設定した。すなわち、入射波長をそれぞれの屈折率で割った値λnのそれぞれちょうど1/4となる厚さにした。誘電体多層膜はSiO2、TiO2を6ペアとした。このペア数を変更することで、透過スペクトルの半値幅を選択することが可能である。より狭い半値幅にしたいときには、よりペア数を増やすことで可能である。6ペアとすることで、透過スペクトルの半値幅Δλtは上記のように約1nm程度となる。欠陥層には外場によって屈折率の変わるものであればよく、液晶や熱光学材料などが考えられるが、本実施例では反応スピード面から非線形結晶を利用した。非線形結晶はLN(LiNbO3)やLT(LiTaO3)、あるいは、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTI(1−y)O3)、KTN(KTaxNb(1−x)O3)などが有名である。また、光に反応するものであればコバルト酸化物などのフォトリフラクティブ材料なども利用することができる。しかし、LNなどは電気光学定数が約30pm/V程度であり、十分な屈折率変化が望めない。これに対し、PLZTやKTNであれば、LNなどと異なり屈折率変化が300pm/V以上と十分に大きい。屈折率変化が大きく取れることにより、それに対応した透過率のピーク移動量Δλmも大きくなる。これらは液晶などと異なり、無機系の材料であることから、光の照射に対する熱的変動が小さく安定性が高い。
【0037】
上記の理由により、欠陥層3には、液晶の代替として電気光学材料を利用した。液晶の応答速度は文献値で、約50μsecであるのに対し、電気光学材料ははるかに速い。また、液晶にくらべ、電気光学材料は、薄膜化しても、その膜厚方向に対し、屈折率分布が一定になる。これは、液晶のような配向膜と液晶界面が無く、原子配列が膜厚方向に対し、一定であることによっている。また、スパッタや蒸着など気相成長が可能なことから、膜厚の均一性に優れている。これにより、透過率はほぼ100%となる。
本構成例では欠陥層3にPLZTを利用する。図1に示した構成例の場合、膜厚はNを整数として、入射波長λipを屈折率で割った値の1/4の2N倍になるようにする。これにより、欠陥層に電圧を印加しないときは反射性を有し、欠陥層3に電圧を印加した場合、入射光の波長λipと透過率スペクトルのピーク位置とが一致し、透過性を有することになる。整数2Nは164として、膜厚は10.3μmとした。PLZTはその2次電気光学係数を9×10−16[m2V−2]とし、20Vの電圧印加で、その屈折率変化は約0.007程度となる。この屈折率変化で、透過率のピーク位置の移動量Δλmは約−1.0nmとなる。この移動量Δλmは、印加電圧や欠陥層3の膜厚整数Nによっても制御することができる。
図2に示した構成例の場合、図1の構成と同じにして、電圧の印加に関しても、ONとOFFを同じに作用させる。こうすることによって、電圧を印加しないとき反射性となり、電圧を印加したとき、透過性を有することになる。
欠陥層3の両面には電極として透明電極4を設けた。透明電極4はITOとし、スパッタによって形成する。入射光は垂直に入射し、図1の場合は欠陥層3に電圧を印加したとき、誘電体多層膜2を透過して出射され、図2の場合は欠陥層3に電圧を印加しないとき、誘電体多層膜2で反射されて出射される。
【0038】
<作製方法2>
欠陥層3としてのPLZTはその組成を9/35/66として、直径4インチ、厚さ500μmとして焼結作製される。このPLZT基板の両面に光学研磨を施す。この上にITO4をスパッタ成膜し、フォトリソグラフィーとドライエッチングによってパターニングする。次に、誘電体多層膜2aを蒸着する。誘電体多層膜2aはそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番はPLZT基板の次にSiO2を成膜する。次にTiO2、その次にSiO2の順である。今回はSiO2/TiO2のペアを6ペア積層した。この状態でPLZT基板を屈折率がほぼ石英と同等のUV硬化樹脂によって石英基板1に接着する。このとき、誘電体多層膜2aを成膜した側と石英基板1とを接着する。
次に誘電体多層膜のない側のPLZT基板を研磨する。研磨は膜厚を測定しながら行い、PLZTがほぼ10μmになった状態で終了する。このとき、この研磨面もできるだけ平滑になるようにする。次に、この研磨した面にITO4の成膜およびパターニングを行う。
次に誘電体多層膜2bを蒸着する。誘電体多層膜2bをパターニングし、PLZTの両面に構成されているITO4に電極をつける。これを配線して電気信号を入れる。
石英基板1の逆の面にはARコート5を施し、不所望の反射を低減する。出射光スペクトルのピーク位置が所望の波長になるように、入射光の入射角を微調整する。
【0039】
<動作>
SiO2/TiO2の6ペアとPLZTのキャビティーにより透過スペクトルはほぼ一意に決まる。透過率スペクトルは一般的なエタロン構造と同様に或る周期を以て振動するスペクトル形状となる。透過率スペクトルの入射光波長633nm近辺にピーク位置が来た。電圧を印加していない状態での透過率は約5%程度となった。このデバイスに印加する電圧を20Vとして、信号の周波数は100kHz程度とした。この信号を受けて、透過率スペクトルが約1nm程度短波長側に移動する。1nm移動することで透過率は95%となる。
【0040】
<作製方法3>
基板1を石英として、その上に誘電体多層膜2を蒸着する。誘電体多層膜2はそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番は石英基板1の次にTiO2を成膜する。次にSiO2、その次にTiO2の順である。今回はTiO2/SiO2のペアを6ペア積層した。次に欠陥層3を成膜する。欠陥層3にはPLZTを利用した。PLZTはゲル状の溶液をスピンコートし、その膜を燒結することで結晶化する。スピンコートで成膜した膜は膜厚が不均一であるため、研磨することで表面性を高める。研磨にはCMPを利用し、膜厚が300nmになるまで削る。膜厚はレーザー顕微鏡でモニターしながら行う。次ぎに電極をITOによって形成する。ITOはスパッタで行ない、フォトリソによりパターニングする。パターンは図14に示す様に櫛歯状とする。石英基板の逆の面には反射防止のためのARコートを施し、不所望な反射を低減する。入射光を入射角が適当な角度になるように微調整する。
【0041】
図15は本発明の透過型光スイッチの外観を示す図である。
同図において符号10は光スイッチ、11は電気配線をそれぞれ示す。
光スイッチの反射防止コートを施された面から、レーザー等の連続的な入射光Liを入れる。電気配線11a、11bに何も電圧を印加しないときは、入射光Liが反射されて同じ光路を戻って出てくる。電気配線11a、11b間に、欠陥層にとって必要な所定の電圧で信号Siを入力すると、信号Siに一致したタイミングで入射光Liが信号Soの形に変調されて透過光Loとして出てくる。。
【0042】
図16はフォトクロミック材料用プリンターの光学系の概要図である。
同図において符号20はプリンター、21はレーザー光源、22は光スイッチ、23はミラー、24はビームスコンバータ、25はポリゴンミラー、26はfθレンズ、27はフォトクロミック材料をそれぞれ示す。
本構成のキーパーツはこれまで説明してきた光スイッチ10である。光スイッチは透過光を利用することも反射光を利用することもできるが、本構成では透過光を利用する例で示してある。光スイッチはその構成の仕方により、透過光の波長を所望の値に定めることができるので、赤、緑、青の三原色(RGB)に相当するレーザー21R、21G、21Bの各出射光の波長に合わせて10R,10G、10Bの3種の光スイッチを作製する。
それぞれのレーザー光は対応する光スイッチ10を経てビームコンバータ24により所望の収束性を与えられながらポリゴンミラー25の方呼応に偏向される。なお、装置を小型化するために、通常は光路折り返しのためのミラー23を光路中に挿入する。少なくとも平面図上では同一光路に合成された光束は、ポリゴンミラー25によって同図の上方に折り曲げられながら、フォトクロミック材料27の表面を1次元的に走査(主走査)する。フォトクロミック材料27は、図示しない駆動装置によって主走査方向と直交する方向に移動(副走査)され、入射した光の波長と同じ波長の色に発色してフルカラー画像を形成する。ポリゴンミラー25とフォトクロミック材料27との間には、ポリゴンスキャナーの技術で常用されるfθレンズ等の光学系が配置される。
【0043】
図17は本発明の反射型光スイッチを説明するための図である。
図18は偏光分離プリズムを説明するための図である。
図17において符号30は反射型光スイッチ、31は偏光分離プリズム、32は4分の1波長板をそれぞれ示す。その他の符号は図13に示した符号と同様である。
図18も参照して、偏光分離プリズム31は、2個の直角2等辺三角柱プリズムを斜辺に相当する面で貼り合わせた形をしており、その貼り合わせ面において、入射光の特定の偏光方向に対しては透過性を示し、それと直交する偏光方向に対しては反射性を示す。
本構成では、光スイッチ30に垂直入射させる連続光束Liを、偏光分離プリズムに対して透過性となる特定方向に予め直線偏光させておく。したがって、入射光Liは偏光分離プリズム31を透過して4分の1波長板32に達する。ここを透過することによって、直線偏光の光束は円偏光と変わるが、光スイッチによって反射された光束は再び4分の1波長板32を透過することにより、入射前の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変わる。そのため、偏光分離プリズム31はこの直線偏光に対し反射性を示し、入射光の方向に対して直交する方向に出射光Loとなって出てくる。
本構成において、電極4bを接地し、電極4aに所定の電圧を変調した電気信号Siを入力すると、出射光Loが変調された光信号Soとなって出てくる。本光スイッチとして図4に示した性質を有するものを用いれば、電圧OFFのとき反射光が存在するので、光信号Soは電気信号Siを反転させた形となる。
なお、入射光Liを予め直線偏光にしておかない場合でも、偏光分離プリズムに入射したとき、透過に適した偏光方向でない光は図16の左方向に反射されて、同プリズムから出ていく。従って、予め直線偏光にしておくことは必須ではない。
【0044】
図19は斜入射用反射型光スイッチを説明するための図である。
同図において符号40は光スイッチを示す。
本構成は多層膜の面に対して傾斜させて入射光を与える構成例であり、基本形は図12に示した構成と同じである。したがって、誘電体多層膜2や欠陥層3の厚さは、角度を以て入射する光線の入射角度およびその波長によって定まる値に設定してある。
導光体1の光の入射面1aは、入射させる光束がほぼ面に垂直になるように誘電体多層膜の面に対して傾斜させておく。出射面1bも同様に傾斜させておくのがよい。それぞれの面には反射防止のためのARコート5を施しておくとなお良い。必要に応じて図12に示したような入射光の入射角度調整用のプリズムを配置しても良い。
この構成は図17に示した反射型の光スイッチに比べて偏光分離プリズムや4分の1波長板を用いないで済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の基本原理を説明するための図である。
【図2】基本原理を説明するための図である。
【図3】図1の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
【図4】図2の構成における欠陥層の作用を説明するための図である。
【図5】同一のデバイスの透過特性と反射特性を説明するための図である。
【図6】マルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。
【図7】マルチキャビティーの構成と作用を説明するための図である。
【図8】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図9】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図10】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図11】所定の条件が満足されない場合の不具合を説明するための図である。
【図12】入射光を誘電体多層膜に対して傾斜させた実施形態を示す図である。
【図13】電極構成の変型例を説明するための図である。
【図14】電極構成の変型例を説明するための図である。
【図15】本発明の透過型光スイッチの外観を示す図である。
【図16】フォトクロミック材料用プリンターの光学系の概要図である。
【図17】本発明の反射型光スイッチを説明するための図である。
【図18】偏光分離プリズムを説明するための図である。
【図19】斜入射用反射型光スイッチを説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 導光体
2 誘電体多層膜
3 欠陥層
4 透明電極
5 ARコート
10 透過型光スイッチ
20 フォトクロミックプリンター
30 反射型光スイッチ
40 斜入射用反射型光スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに屈折率の異なる2種の誘電体を周期的に積層してなる第1の多層膜と、該第1の多層膜の上に屈折率が外部の摂動によって制御しうる欠陥層と、さらにその上に前記多層膜と同様構成の第2の多層膜を積層して1つのキャビティとし、該キャビティを少なくとも1つ、光学的に透明な基板の1面に形成することによって特定の波長光を共鳴波長とする複合薄膜からなる光スイッチにおいて、前記欠陥層の屈折率を電気光学効果により変化させることで、前記共鳴波長を移動させ、前記光スイッチに前記基板側から入射させる入射光のスペクトルと、前記屈折率の変化前、もしくは変化後の前記複合薄膜の透過率スペクトルとを整合させることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して垂直に入射することを特徴とする光スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜を透過する光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項6】
請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項7】
請求項6に記載の光スイッチにおいて、前記入射光の偏光方向に対し、反射光の偏光方向が直交する向きに偏光方向を変える手段を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項8】
請求項7に記載の光スイッチにおいて、前記入射光が前記偏光方向を変える手段に入る前に、直線偏光に揃える手段を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項9】
請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して傾斜して入射させ、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項10】
請求項9に記載の光スイッチにおいて、前記電気光学効果を有する欠陥層はその片面側に櫛歯電極を設けたことを特徴とする光スイッチ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は光の入射方向に対してほぼ垂直に形成されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項13】
請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は、反射防止コートが施されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記入射光の入射角をθ、ピーク位置の波長をλipとし、前記欠陥層の屈折率をnkとし、Nを任意の整数とするとき、前記欠陥層の厚さdkが次の式を満足するように構成されていることを特徴とする光スイッチ。
dk=2N×{(λip/cosθ)/4}/nk
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記欠陥層として用いる電気光学材料は、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTi(1−y)O3)、またはKTN(KTaxNb(1−x)O3)のいずれかであることを特徴とする光スイッチ。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1つに記載の光スイッチを、前記共鳴波長が赤、緑、青の3色にそれぞれ対応する3個用いたことを特徴とするフォトクロミック用プリンター。
【請求項1】
互いに屈折率の異なる2種の誘電体を周期的に積層してなる第1の多層膜と、該第1の多層膜の上に屈折率が外部の摂動によって制御しうる欠陥層と、さらにその上に前記多層膜と同様構成の第2の多層膜を積層して1つのキャビティとし、該キャビティを少なくとも1つ、光学的に透明な基板の1面に形成することによって特定の波長光を共鳴波長とする複合薄膜からなる光スイッチにおいて、前記欠陥層の屈折率を電気光学効果により変化させることで、前記共鳴波長を移動させ、前記光スイッチに前記基板側から入射させる入射光のスペクトルと、前記屈折率の変化前、もしくは変化後の前記複合薄膜の透過率スペクトルとを整合させることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して垂直に入射することを特徴とする光スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜を透過する光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項6】
請求項2に記載の光スイッチにおいて、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項7】
請求項6に記載の光スイッチにおいて、前記入射光の偏光方向に対し、反射光の偏光方向が直交する向きに偏光方向を変える手段を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項8】
請求項7に記載の光スイッチにおいて、前記入射光が前記偏光方向を変える手段に入る前に、直線偏光に揃える手段を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項9】
請求項1に記載の光スイッチにおいて、前記入射光は前記多層膜の面に対して傾斜して入射させ、前記複合薄膜から反射される光を信号光として用いることを特徴とする光スイッチ。
【請求項10】
請求項9に記載の光スイッチにおいて、前記電気光学効果を有する欠陥層はその片面側に櫛歯電極を設けたことを特徴とする光スイッチ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は光の入射方向に対してほぼ垂直に形成されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、入射光スペクトルの半値幅をΔλi、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλi≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項13】
請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記共鳴波長の移動量をΔλmとし、反射率スペクトルの半値幅をΔλt、該入射光スペクトルの片側Δλmの位置における入射光のピーク値に対する比の許容値をα%としたとき、少なくとも次式を満足させることを特徴とする光スイッチ。
Δλm/Δλt≧√{(2ln10−lnα)/ln2}/2
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記基板の光の入射面は、反射防止コートが施されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記入射光の入射角をθ、ピーク位置の波長をλipとし、前記欠陥層の屈折率をnkとし、Nを任意の整数とするとき、前記欠陥層の厚さdkが次の式を満足するように構成されていることを特徴とする光スイッチ。
dk=2N×{(λip/cosθ)/4}/nk
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光スイッチにおいて、前記欠陥層として用いる電気光学材料は、PLZT(Pb(1−x)LaxZryTi(1−y)O3)、またはKTN(KTaxNb(1−x)O3)のいずれかであることを特徴とする光スイッチ。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1つに記載の光スイッチを、前記共鳴波長が赤、緑、青の3色にそれぞれ対応する3個用いたことを特徴とするフォトクロミック用プリンター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−113475(P2006−113475A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303177(P2004−303177)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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