説明

光スイッチ及び光スイッチの製造方法

【課題】従来と比較して応答速度が速い光スイッチを提供する。
【解決手段】第1の方向性結合器10と、第1の方向性結合器10に接続され、第1の分岐光を伝達する第1の導波路20と、第1の方向性結合器10に接続され、第1の導波路20とは長さが異なり、かつ第2の分岐光を伝達する第2の導波路20と、第1の導波路20上に形成された第1の強誘電性液晶層22と、第1の強誘電性液晶層22に電圧を印加して、該第1の強誘電性液晶層22の配向方向を制御する第1の電極24と、第1及び第2の出力端子3,4を有しており、第1の導波路20及び第2の導波路30から第1及び第2の分岐光が入力される第2の方向性結合器40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチ及び光スイッチの製造方法に関する。特に本発明は、従来と比較して応答速度が速い光スイッチ及び光スイッチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM)ネットワークにおいて、光の経路を波長別に切り替える光スイッチが必須である。光スイッチの従来例としては、回折格子を用いたものがある(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の光スイッチの他の例として、印加電圧によって透過する光の偏光を制御する液晶偏光制御素子と、光の偏光方向によって光を透過又は反射する偏光ビームスプリッタを組み合わせるたものがある。液晶偏光制御素子にはネマティック液晶が用いられる。
【0004】
また、従来の光スイッチの他の例として、導波路をヒータで加熱することによりこの導波路の屈折率を変更し、これによって光の出力先を波長別に切り替えるものがある。
【非特許文献1】鈴木扇太、「アレー導波路回折格子(AWG)デバイス」、電気情報通信学会誌、1999年7月、Vol.82、No7、p.746−752
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した液晶偏光制御素子を用いた光スイッチは、ネマティック液晶の配向方向が切り替わることにより、光の経路が切り替わる。このため、応答速度は、ネマティック液晶の配向方向の切り替わり速度によって律速されている。従って、第1の例に係る光スイッチでは、十分な応答速度を得ることが難しい。
【0006】
また、ヒータ加熱を用いた光スイッチは、導波路の温度によって光の経路が切り替わるが、導波路の温度が変化するまでにある程度の時間を要するため、十分な応答速度を得ることが難しい。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、従来と比較して応答速度が速い光スイッチ及び光スイッチの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る光スイッチは、入力光を第1の分岐光及び第2の分岐光に分岐する第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の分岐光を伝達する第1の導波路と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の導波路とは長さが異なり、かつ前記第2の分岐光を伝達する第2の導波路と、
前記第1の導波路上に形成された第1の強誘電性液晶層と、
前記第1の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第1の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第1の電極と、
第1及び第2の出力端子を有しており、前記第1の導波路及び前記第2の導波路から前記第1及び第2の分岐光が入力され、前記第1の分岐光を第3の分岐光及び第4の分岐光に分岐するとともに、前記第2の分岐光を第5の分岐光及び第6の分岐光に分岐し、かつ前記第3の分岐光と前記第5の分岐光を合成して前記第1の出力端子から出力するとともに、前記第4の分岐光を前記第6の分岐光を合成して前記第2の出力端子から出力する第2の方向性結合器とを具備する。
【0009】
この光スイッチにおいて、前記第1の強誘電性液晶の配向方向を変化させることにより、前記第1の強誘電体層の下に位置する前記第1の導波路の等価屈折率を変化させることができる。前記第1の導波路の等価屈折率が変化すると、前記第1の導波路によって伝達された光の位相が変化する。このため、前記電極に加える電圧を変化させることにより、光をスイッチングすることができる。
【0010】
この光スイッチの応答性は、前記強誘電性液晶の配向方向の応答性によって律速されるが、前記強誘電性液晶の配向方向の応答性は、100μ秒程度と速い。従って、従来と比較して光スイッチの応答速度が速くなる。
【0011】
前記第2の導波路が前記第1の導波路より長くてもよいし、前記第1の導波路が前記第2の導波路より長くてもよい。
【0012】
前記入力光は波長λの光と波長λの光を有している場合、前記第1の導波路と前記第2の導波路の長さの差は、λ×(n+1/2)、かつλ×mであるのが好ましい。ただし、n、mはともに整数である。
【0013】
前記第1の電極と前記強誘電性液晶の間に位置する配向膜を更に具備し、前記強誘電性液晶は前記第1の導波路と直接接していてもよい。
前記第2の導波路上に形成された第2の強誘電性液晶層と、前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極とを更に具備してもよい。
前記第1の導波路に導電性を持たせ、前記第1の電極とともに前記第1の強誘電性液晶の配向方向を制御させてもよい。
【0014】
本発明に係る光スイッチの製造方法は、下地膜上に光を透過する透光膜を形成する工程と、
前記透光膜を選択的に除去することにより、前記下地膜上に位置する第1の導波路、及び前記第1の導波路とは長さが異なる第2の導波路を形成する工程と、
前記第1の導波路の一部上に強誘電性液晶層を形成する工程と、
前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極を形成する工程と、
を具備し、
前記第1及び第2の導波路を形成する工程において、前記第1の導波路のうち、前記強誘電体層が形成された部分の前及び後それぞれで前記第2の導波路に近接させることにより、前記強誘電体層が形成された部分の前及び後それぞれに位置する方向性結合器を形成する。
前記透光膜は、例えば半導体膜である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光スイッチの構成を説明する為の概略図である。この光スイッチにおいて、第1の方向性結合器10が有する2つの出力ポートと、第2の方向性結合器40が有する2つの入力ポートが、第1の導波路20及び第2の導波路30を用いて接続されている。第1の方向性結合器10の入力ポート1,2は光スイッチの入力ポートとして機能し、第2の方向性結合器40の出力ポート3,4は光スイッチの出力ポートとして機能する。なお、第1の導波路20及び第2の導波路30は、例えば不純物が導入されていて導電性を有する半導体膜によって形成されている。
【0016】
第1の導波路20上には強誘電性液晶22が配置されている。強誘電性液晶22は、強誘電性液晶22上に設けられた上部電極24と第1の導波路20の間に印加される電圧によって、配向方向が制御される。また、第2の導波路30上には強誘電性液晶32が配置されている。強誘電性液晶32は、強誘電性液晶32上に設けられた上部電極34と第2の導波路30の間に印加される電圧によって、配向方向が制御される。なお、強誘電性液晶22,32の配向方向を制御する電圧は、電圧制御部50によって制御されている。
【0017】
入力ポート1には、波長λの光aと、波長λの光bが入力される。第1の方向性結合器10を通過する際に、光a,bは第1の導波路20及び第2の導波路30にそれぞれ分岐する。分岐した光の強度は略同じであるが、これらの間には位相差π/2が生じる。
【0018】
第2の導波路30は第1の導波路20より長いが、その長さの差は、λ×(n+1/2)、かつλ×mである。ただし、n、mはともに整数である。このため、第1の導波路20を通過する光aと第2の導波路30を通過する光aの間は、更にπほど位相がずれるが、第1の導波路20を通過する光bと第2の導波路30を通過する光bの間の位相差は変化しない。
【0019】
また、強誘電性液晶22の配向方向が変化すると、詳細を後述するように、第1の導波路20のうち、強誘電性液晶22の下方に位置する部分の屈折率が変化する。このため、強誘電性液晶22の配向方向が変化すると、第1の導波路20から出力される光の位相が変化する。同様の作用により、このため、強誘電性液晶32の配向方向が変化すると、第2の導波路30から出力される光の位相が変化する。
【0020】
第1の導波路20を通過した光a,b、及び第2の導波路30を通過した光a,bは、第2の方向性結合器40でそれぞれ出力ポート3,4に略同じ強度に分岐される。分岐後の光が出力ポート3,4で合成されることにより、出力ポート3,4から出力される光が定まる。
【0021】
出力ポート3,4からいずれの光が出力されるかは、上記した光の位相差の合計によって定まる。光の位相差の合計は、強誘電性液晶22,32の配向方向によって変化する。このため、詳細を後述するように、強誘電性液晶22,32の配向方向を制御することにより、出力ポート3,4から出力される光の種類を制御することができる。
【0022】
図2のグラフは、導波路を透過している光のうちTE基本モードの強度分布を示すシミュレーション結果を示している。本シミュレーションにおいて、導波路はSi(厚さは0.5μm)で形成されており、下地膜はSiO(厚さは∞)で形成されている。強誘電性液晶は、等価屈折率が1.615、厚さが∞として扱われている。本グラフから、導波路から強誘電性液晶に光の一部が染み出ていることが分かる。強誘電性液晶の配向方向が変化すると、強誘電性液晶の等価屈折率(誘電率)が変化する。この等価屈折率の変化は、導波路から強誘電性液晶に染み出た光の伝搬に影響を与える。この結果、導波路の等価屈折率が変化する。
【0023】
従って、電圧制御部50が上部電極24と第1の導波路20の間の電圧を制御することにより、強誘電性液晶22の配向方向を変化させ、強誘電性液晶22の下方に位置する第1の導波路20の等価屈折率を変化させることができる。同様の作用により、上部電極34と第2の導波路30の間の電圧を変化させることにより、強誘電性液晶32の下方に位置する第2の導波路30の等価屈折率を変化させることができる。
【0024】
図3のグラフは、導波路の等価屈折率の変化Δnが導波路の厚さによってどのように変化するかシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションでは、導波路がSiで形成されており、下地膜がSiOで形成されており、かつ光の波長λ=1550nmとしている。本図に示すように、導波路の厚さが薄いほどΔnが大きくなる。
【0025】
図4のグラフは、位相差πを得るために必要な導波路長が、導波路の厚さによってどのように変化するかを計算したグラフである。本グラフは、図3のグラフを前提としている。このように、導波路の厚さが薄くなるにつれて、位相差πを得るために必要な導波路長が短くなる。
【0026】
図5の各図は、強誘電性液晶22,32に印加される電圧によって出力ポート3,4から出力される光が切り替わる理由を説明する為の図である。図5において、強誘電性液晶22の配向方向が切り替わると、第1の導波路20を通過する光a,bの位相はπずれる。また、強誘電性液晶32の配向方向が切り替わると、第2の導波路30を通過する光a,bの位相はπずれる。このような状態は、第1の導波路20及び第2の導波路30のうち強誘電性液晶22,32の下方に位置する部分の長さ、及び第1の導波路20及び第2の導波路30の厚さを調節することにより実現できる。
【0027】
図5(A)は、強誘電性液晶22,32の下方を通過する際に光a,bの位相が変化しない方向に、強誘電性液晶22,32が配向している場合を示している。第1の方向性結合器10を通過すると、光a,bは第1の導波路20及び第2の導波路30に同じ強度に分岐されるが、第2の導波路30に分岐された光a,bは、それぞれ第1の導波路20に分岐された光に対してπ/2ほど位相が遅れる。
【0028】
その後、光a,bは強誘電性液晶22,32の下方を通り、第2の方向性結合器40に入力される。上記したように、第1の導波路20と第2の導波路30の長さの差は、λ×(n+1/2)、かつλ×mである。このため、第1の導波路20を伝送した光aに対して第2の導波路30を伝送した光aは更にπほど位相が遅れるが、第1の導波路20を伝送した光bと第2の導波路30を伝送した光bの間には更なる位相差が生じない。
【0029】
そして、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光a,bが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐され、かつ第2の導波路30によって伝送された光a,bが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光a,bは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光a,bに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光a,bは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光a,bに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0030】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差が生じないが、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光bと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光bとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート3からは光aが出力されるが、光bは出力されない。
【0031】
また、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差πが生じるが、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光bと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光bとの間には位相差が生じない。このため、出力ポート4からは光bが出力されるが、光aは出力されない。
【0032】
図5(B)は、強誘電性液晶22の下方を通過する際に光a,bの位相がπほど遅れる方向に、強誘電性液晶22が配向している場合を示している。このような状態は、強誘電性液晶22に印加する電圧を図5(A)に示した場合から変化させることにより、実現できる。
【0033】
図5(A)の場合と同様に、第1の方向性結合器10によって光a,bは、略同じ強度で第1の導波路20と第2の導波路30に分岐される。そして、第2の導波路30に分岐された光a,bは、それぞれ第1の導波路20に分岐された光に対してπ/2ほど位相が遅れる。
【0034】
そして、光a,bは強誘電性液晶22,32の下方を通る。この際に、第1の導波路20に分岐された光a,bは、それぞれ入力時の状態と比較してπほど位相が遅れる。
【0035】
その後、第1の導波路20によって伝達された光a,b、及び第2の導波路30によって伝達された光a,bそれぞれは、第2の方向性結合器40に入力される。図5(A)の場合と同様に、第1の導波路20を伝送した光aに対して第2の導波路30を伝送した光aは更にπほど位相が遅れるが、第1の導波路20を伝送した光bと第2の導波路30を伝送した光bの間には更なる位相差が生じない。
【0036】
そして、図5(A)の場合と同様に、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光a,b、及び2の導波路30によって伝送された光a,bが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光a,bは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光a,bに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光a,bは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光a,bに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0037】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差πが生じるが、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光bと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光bとの間には位相差が生じない。このため、出力ポート3からは光bが出力されるが、光aは出力されない。
【0038】
また、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差が生じないが、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光bと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光bとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート4からは光aが出力されるが、光bは出力されない。
【0039】
なお、図5(B)のようにして光をスイッチングする場合、強誘電性液晶32及び上部電極34を設けなくても良い。
【0040】
また、強誘電性液晶22に印加する電圧を変化させる代わりに、強誘電性液晶32に印加する電圧を図5(A)に示した場合から変化させることで、第2の導波路30に分岐された光a,bが、強誘電性液晶32の下方を通過する際にπほど位相が遅れるようにしてもよい。このようにしても、出力ポート3から光bが出力され、出力ポート4から光aが出力される。この場合は、強誘電性液晶22及び上部電極24を設けなくても良い。
【0041】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、強誘電性液晶22又は強誘電性液晶32の配向方向を制御することにより、出力ポート3から出力される光と、出力ポート4から出力される光を入れ替えることができる。強誘電性液晶22の応答時間はネマティック液晶よりも一桁以上速い100μ秒程度である。従って、光スイッチの応答速度は従来と比較して速くなる。
【0042】
また、強誘電性液晶は双安定性(自己保持性)を有しており、印加電圧を切った後にも配向方向が保持される。従って、本実施形態に係る光スイッチの消費電力は低い。
【0043】
また、強誘電性液晶22,32の等価屈折率変化は大きいため、第1の導波路20及び第2の導波路30のうち強誘電性液晶22,32の下方に位置する部分を短くしても、光スイッチの動作に必要な位相変化を得ることができる。従って、光スイッチを小型化することができる。
【0044】
また、入力ポート1に光a,bを入力すると同時に入力ポート2から光c,dを入力してもよい。この場合、光cの波長をλ3、光dの波長をλ4とすると、第2の導波路30と第1の導波路20の長さの差は、λ×(n+λ/2)、かつλ×m、かつλ×(n+λ/2)、かつλ×mである。ただし、n、m、n、mはともに整数である。
【0045】
また、第1の導波路20及び第2の導波路30の厚さ、及びこれら導波路のうち強誘電性液晶22,32の下方に位置する部分の長さ等を調節することにより、強誘電性液晶22,32に印加する電圧によって光a〜dの位相がそれぞれπずれるようにする。
【0046】
このようにすると、強誘電性液晶22,32に印加する電圧を変化させることにより、出力ポート3から光a,cが出力され、かつ出力ポート4から光b,dが出力される状態と、出力ポート3から光b、dが出力され、かつ出力ポート4から光a,cが出力される状態とが切り替わる光スイッチが実現される。
【0047】
図6及び図7は、本発明の第2の実施形態に係る光スイッチの製造方法を説明する為の図である。各図において(A)は平面図であり、(B)は(A)のA−A断面図である。
【0048】
まず、図6に示すように基板100上に酸化シリコン膜102を形成し、さらに酸化シリコン膜102上に半導体膜104をCVD法により形成する。基板100は、例えばシリコン基板である。半導体膜104は、例えば単結晶シリコン膜であるが、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜、GaAs系の半導体膜、又はGaInAsP系の半導体膜であっても良い。その後、半導体膜104に不純物を導入し、導電性を持たせる。不純物は、n型の不純物及びp型の不純物のいずれであってもよい。
【0049】
次いで、半導体膜104上にクロム膜200をスパッタリング法により形成し、さらにクロム膜200上にフォトレジスト膜210を塗布する。次いで、フォトレジスト膜210を露光及び現像する。これにより、フォトレジスト膜210には開口パターンが形成される。
【0050】
次いで、フォトレジスト膜210をマスクとしてクロム膜200をエッチングし、クロム膜200に開口パターンを形成する。次いで、クロム膜200をマスクとして半導体膜104をドライエッチングする。これにより、半導体膜104は選択的に除去され、導波路110,120が形成される。導波路110,120は、2箇所で近接しているが、他の部分では離間している。
【0051】
導波路110,120のうち相互に近接している部分は、それぞれ方向性結合器132,134として機能するが、これら方向性結合器132,134は第1の実施形態における方向性結合器10,40に相当する。また、導波路110,120の一方の端部110a,120aは第1の実施形態における入力ポート1,2に相当し、他方の端部110b,120bは第1の実施形態における出力ポート3,4に相当する。また、導波路110,120のうち方向性結合器132,134の相互間に位置する部分は、第1の実施形態における第1の導波路20及び第2の導波路30に相当し、互いの長さが異なる。
【0052】
なお、半導体膜104は、下部電極として使用されるため、このドライエッチング工程において全面に薄く残される。
【0053】
その後、図7に示すようにフォトレジスト膜210及びクロム膜200を除去する。次いで、導波路110,120上及び半導体膜104上に酸化シリコン膜142を形成し、レジストパターンを用いたドライエッチングにより、導波路110,120上から酸化シリコン膜142を除去する。
【0054】
次いで、基板100の上方に、上部電極152、154及び配向膜146がこの順に積層された対向基板160を配置する。上部電極152,154は、第1の実施形態における上部電極24,34に相当する。
【0055】
このとき、配向膜146が導波路110,120と向き合うようにする。なお、基板100と対向基板160の間隔は、スペーサー144aによって維持されているが、この間隔は0.2μm以上2.0μm以下であるのが好ましい。また、上部電極152,154は、例えばITO膜を選択的に除去することにより同一工程で形成される。
【0056】
次いで、基板100と対向基板160の空間に強誘電性液晶144を注入する。強誘電性液晶144は、第1の実施形態における強誘電性液晶22,32に相当する。このようにして光スイッチが形成される。
【0057】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、導波路110,120を、レジストパターンを用いたエッチングにより形成しているため、光スイッチの小型化及び高集積化を容易に行える。また、複数の光スイッチの相互間を接続する導波路の曲率を小さくすることができるため、高集積化に有利となる。
【0058】
また、半導体膜104をエッチングすることにより導波路110,120を形成しているため、導波路110,120を形成する工程を、トランジスタ等の半導体素子を形成する工程の一部に含ませることができる。またこの場合、同一の基板100上に光スイッチと半導体素子を形成することができるため、モノリシックな集積化が可能になる。
【0059】
また、半導体膜104及び導波路110,120を下部電極として使用しており、かつ導波路110,120は直接強誘電性液晶144に接している。従って、導波路110,120と強誘電性液晶144の間に配向膜を配置する場合と比較して、導波路110,120の等価屈折率変化が大きくなり、光スイッチを高性能にすることができる。
【0060】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば第1の実施形態において、第1及び第2の方向性結合器10,40の代わりに多モード干渉結合器を用いても良い。また、基板100はシリコン基板以外の半導体基板であってもよく、またガラス等他の材質で形成された基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態に係る光スイッチの構成を説明する為の概略図。
【図2】導波路を透過している光のうちTE基本モードの強度分布を示すシミュレーション結果を示すグラフ。
【図3】導波路の等価屈折率の変化Δnが導波路の厚さによってどのように変化するかシミュレーションした結果を示すグラフ。
【図4】位相差πを得るために必要な導波路長が、導波路の厚さによってどのように変化するかを計算したグラフ。
【図5】強誘電性液晶22,32に印加される電圧によって出力ポート3,4から出力される光が切り替わる理由を説明する為の図。
【図6】第2の実施形態に係る光スイッチの製造方法を説明する為の図。
【図7】図6の次の工程を説明する為の図。
【符号の説明】
【0062】
1,2…入力ポート、3,4…出力ポート、10,20,110,120…導波路、10,40,132,134…方向性結合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を第1の分岐光及び第2の分岐光に分岐する第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の分岐光を伝達する第1の導波路と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の導波路とは長さが異なり、かつ前記第2の分岐光を伝達する第2の導波路と、
前記第1の導波路上に形成された第1の強誘電性液晶層と、
前記第1の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第1の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第1の電極と、
第1及び第2の出力端子を有しており、前記第1の導波路及び前記第2の導波路から前記第1及び第2の分岐光が入力され、前記第1の分岐光を第3の分岐光及び第4の分岐光に分岐するとともに、前記第2の分岐光を第5の分岐光及び第6の分岐光に分岐し、かつ前記第3の分岐光と前記第5の分岐光を合成して前記第1の出力端子から出力するとともに、前記第4の分岐光を前記第6の分岐光を合成して前記第2の出力端子から出力する第2の方向性結合器と、
を具備する光スイッチ。
【請求項2】
前記第2の導波路は前記第1の導波路より長い請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記第1の導波路は前記第2の導波路より長い請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記入力光は波長λの光と波長λの光を有しており、
前記第1の導波路と前記第2の導波路の長さの差は、λ×(n+1/2)、かつλ×mである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光スイッチ。ただし、n、mはともに整数である。
【請求項5】
前記第1の電極と前記強誘電性液晶の間に位置する配向膜を更に具備し、
前記強誘電性液晶は前記第1の導波路と直接接している請求項1〜4のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記第2の導波路上に形成された第2の強誘電性液晶層と、
前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極と、
を具備する請求項1〜5のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項7】
前記第1の導波路は導電性を有しており、前記第1の電極とともに前記第1の強誘電性液晶の配向方向を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項8】
下地膜上に光を透過する透光膜を形成する工程と、
前記透光膜を選択的に除去することにより、前記下地膜上に位置する第1の導波路、及び前記第1の導波路とは長さが異なる第2の導波路を形成する工程と、
前記第1の導波路の一部上に強誘電性液晶層を形成する工程と、
前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して、該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極を形成する工程と、
を具備し、
前記第1及び第2の導波路を形成する工程において、前記第1の導波路のうち、前記強誘電体層が形成された部分の前及び後それぞれで前記第2の導波路に近接させることにより、前記強誘電体層が形成された部分の前及び後それぞれに位置する方向性結合器を形成する光スイッチの製造方法。
【請求項9】
前記透光膜は半導体膜である請求項8に記載の光スイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−171733(P2007−171733A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371514(P2005−371514)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月7日にCD−ROMにて発行の2005年電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】