説明

光スイッチ

【課題】簡素な構成で、透過帯域の劣化や波長毎の透過帯域バラツキを抑制する。
【解決手段】複数の可動ミラー7aが等間隔配置されてなるミラーデバイス7と、複数の可動ミラー7aのそれぞれで反射させるべき各反射対象光を、該当する可動ミラー7aの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、当該可動ミラー7aに導くミラーインタフェース5と、をそなえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー装置および光スイッチに関し、特に、波長多重通信システム(WDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送システム)において用いて好適の、ミラー装置および光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットにおいて激増するトラフィックデータ量を処理すべく、波長分割多重通信(WDM)を中核とする光ネットワークおよび光インターフェース化の構築が急ピッチで進んでいる。現在のネットワーク(WDM伝送システム)形状は、2つの基地局(伝送端局装置)間が直接接続されたポイントツーポイント(point-to-point)型のネットワーク形状から、リング型、又はメッシュ型のネットワーク形状へと発展してきている。
【0003】
従来、光伝送装置におけるチャンネル切り替えや光信号の合波(ADD)や分波(DROP)は、光信号から電気信号へ変換したものについて電気的なスイッチングによって行なわれてきた。しかし、光信号を直接切り替える波長選択スイッチ(WSS:WavelengthSelective Switch)を用いた光スイッチにより、電気信号に変換せずにスイッチングが可能となり、切替速度の高速化およびダイナミックな経路設定や変更が可能となることから、このWSSによるチャンネル切り替え等への提供が近年検討されている。
【0004】
また、WSSを用いた光スイッチは、ユニットでのモジュール実装面積の低減やコスト低減についても一躍を担う。このような光スイッチは、入力された波長多重信号光に含まれる単波長光の経路を個別に変更し、変更したn波の単波長光を必要に応じて再度波長多重し出力することが可能となる。尚、各単波長光の波長は、ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)によって標準化されたIUTグリッドと呼ばれる仕様に規定されており、これに準じる。
【0005】
また、従来のWSSの構成においては、回折格子を使用しているものが多く、所望の特性を得るために分散をかせぐ必要があり、結果として光路長が長くなる。このためモジュールサイズも大きくなる。従って、WSSの小型化には、分散の大きい分光素子が必須である。分散を大きくする方法の一つに、分光素子への光導波路の適用がある。光導波路を用いると、光導波路のコアパターンで光路差を形成できるため、回折次数を自由に選定可能である。例えば代表的な光導波路型分光デバイスであるAWG(Arrayed Waveguide Gratings)では、回折次数が12程度のものから、回折次数74程度のものが実現されている(下記の非特許文献1参照)。AWGの分散は回折次数に比例するため、回折次数を大きくすることにより分散の大きい分光素子を実現することができるため小型化を実現できる。
【0006】
また、本願発明に関連する技術として、下記の特許文献1〜4に記載された技術もある。特許文献1にはMEMSミラーを用いた波長選択スイッチが記載され、特許文献2,3には導波路型の波長選択スイッチが記載され、特許文献4には、導波路上にフォトダイオードを搭載した構成例について記載されている。
【特許文献1】特開2005−283932号公報
【特許文献2】特開2004−117449号公報
【特許文献3】特許第2986031号公報
【特許文献4】特開2003−185866号公報
【非特許文献1】鈴木、「アレイ導波路回折格子(AWG)デバイス」、電子情報通信学会誌、Vol. 82、 No. 7、pp. 746-752(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
WSSは信号波長に応じて機能する光デバイスであるため、信号間隔は波長間隔一定が望ましい。しかしながら、信号光間隔は周波数間隔100GHz(又は50GHz)とITUで規定されているため、この周波数間隔を波長間隔換算(変換)した場合、間隔が一定とはならず、WSSをなす分波素子で分波するチャンネル毎の光の焦点像は不等間隔となる。この場合、等間隔のMEMSミラーを使用してチャンネル毎の光経路を切り替えることとすると、ミラーに対する反射面(焦点像)が異なってしまうため、透過帯域の劣化や波長毎の透過帯域バラツキの発生につながるという課題がある。
【0008】
このような透過帯域バラツキの発生を抑制するためには、MEMSミラー構造に工夫を施したり、楔状のプリズム等を使用したりすることで、波長間隔を等間隔へ変換する手法が考えられる。しかし、前者は、MEMSミラーを各波長に対し最適になるよう不等間隔に設計する必要があり、設計の難易度が増すため、MEMSとしても特殊品となり、汎用性の点で改善の余地がある。後者は、新たな光学部材としてプリズムを追加して配置するため、挿入損失が増加するほか、光学系のアライメントの調整のための作業負荷や組立ての難易度が増大し、作業工数が増加することにもなりうる。
【0009】
特許文献1〜4および非特許文献1は、いずれも、上述の課題について解決する技術を提供するものではない。
また、WSSは、次世代のネットワーク形状になると予想される、リング型、又はメッシュ型の構成においてOADM(Optical Add Drop Multiplexer)機能、OCX(Optical cross-connect)機能を有するノードに使用されることが期待される。この場合には、信号光のモニタ情報として、各ポートから出力される光について、光パワーだけではなく波長数および波長配置の情報についても得られるようにすることが、上述のごときノードに搭載される光デバイスの機能として望ましい。
【0010】
各ポートから出力される光についてモニタするには、ポートから出力される光の一部をタップカプラ等により分岐して取り出すとともに簡易型のスペクトルアナライザを用いて波長成分ごとの光パワーや波長配置等をモニタする構成が想定される。しかし、波長選択スイッチとしての構成から分離したポート外部に、光モニタのためのモジュールを形成する必要が生じ、特にMEMSのミラー角度制御にモニタ結果を用いる場合にはモジュール間での通信を行なう必要があるため、通信用IC等の回路構成を別途そなえる必要が生じることも想定され、装置規模の縮小化の観点から改善の余地がある。
【0011】
また、MEMSミラー等の光反射素子の角度変化量に対する出力光の減衰量情報等を記憶しておき、MEMSミラーの反射面角度を制御することを通じて、光レベル補正(調整)を行ない、VOA機能制御を実現するものもある。具体的には、DSP(Digital SignalProcessor)等のメモリにMEMSの角度変化量情報、その温度特性の補正情報を記録し、設定された減衰量に対し記録された角度にMEMSミラーを可動させる。しかし、MEMSミラーの角度制御は高精度化を図ることは容易ではなく、経年的に劣化する可能性もあり長期信頼性に懸念がある。このため、MEMSミラーの角度について光量に応じたフィードバック制御を行なう機能は現状においては重要である。
【0012】
特許文献1においては、波長選択スイッチにおいて、波長ごとに経路が切り替えられた複数の短波長光を波長多重して第2の波長多重光として出力するとともに、第2の波長多重光の一部を分岐するとともに分岐光を波長成分ごとに分波して、それぞれの物理量をモニタする構成について開示されている。但し、この構成においては、第2の波長多重光を再度分波する冗長な構成を採用しているため、挿入損失の低減化、部品点数の削減および実装面積の削減を図るにあたって支障をきたしている。
【0013】
そこで、本発明の目的の一つは、簡素な構成で、透過帯域の劣化や波長毎の透過帯域バラツキを抑制することにある。
また、モニタ機能を有する光スイッチの部品点数を削減し、組立工程を簡素化することも目的とすることができる。
なお、上記目的に限らず、後述する発明を実施するための最良の形態に示す各構成により導かれる効果であって、従来の技術によっては得られない効果を奏することも本発明の他の目的の1つとして位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明は、以下のミラー装置および光スイッチを特徴とするものである。
(1)すなわち、本発明の光スイッチは、光が入力又は出力される複数の光ポートをそなえるとともに該光ポートを通じて出力される光を波長単位に切り替える光スイッチであって、前記光ポートから入力される光を分光し波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子と、該分光素子から出力された波長ごとの光をそれぞれ反射させるとともに、反射面の角度を可変することにより出力先の該光ポートを切り替え可能とする複数の可動ミラーが等間隔配置されたミラーデバイスと、該可動ミラーと、該分光素子を介した前記複数の光ポートと、の間の光路上にそれぞれ介装され、該分光素子で分光されて波長毎に異なる光軸を有する各光を入力されて、前記入力された各光を、当該波長光反射用の該可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、該当可動ミラーに導く複数のミラーインタフェースと、をそなえ、該分光素子は、該複数の光ポートにそれぞれ対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスであって、各アレイ導波路格子デバイスは、基板と、該基板上に形成されたAWG導波路であって、前記分光された波長毎の光がそれぞれ伝搬する複数の出力導波路を有するAWG導波路と、をそなえ、該複数のミラーインタフェースは、それぞれ、該複数の光ポートに対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスと一体に形成され、各ミラーインタフェースは、対応する該アレイ導波路格子デバイスをなす該基板と、該基板に形成されるとともに、該AWG導波路をなす該複数の出力導波路にそれぞれ接続され該複数の出力導波路の間隔を前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応して間隔補正を行なう複数の補正導波路と、をそなえ、前記複数の補正導波路は、前記複数の出力導波路の間隔に対応した不等間隔の入力側導波路を有するとともに、前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応した等間隔の出力側導波路を有し、前記複数の光ポートは、所定の方向に並列配置され、前記複数の光ポートのうちの、中間段の光ポートは、前記光が入力される光入力ポートであり、前記複数の光ポートのうちの、前記光入力ポート以外の光ポートのそれぞれは、前記光が出力される光出力ポートであることを特徴としている。
【0015】
(2)さらに、上記(1)の場合において、該ミラーインタフェースにおける該複数の補正導波路それぞれの形成箇所に、対応する補正導波路を伝搬する光をモニタする受光素子が搭載され、かつ、該受光素子でのモニタ結果に応じて、該可動ミラーにおける前記反射面角度を制御する制御部をそなえることとしてもよい。
(3)また、該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の上部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されてもよい。
(4)さらに、該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の下部の基板領域が削られるとともに前記コア領域の下部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されてもよい。
(5)また、前記窪んだクラッド領域の箇所は1μm以下の厚さを有していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、ミラーインタフェースをそなえるという簡素な構成により、ミラーでの焦点像を最適とすることができるので、透過帯域の劣化を防止し、ひいてはチャンネルごとの透過帯域のバラツキの発生を防止することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる波長選択スイッチ(光スイッチ)を示す模式的斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる波長選択スイッチの要部構成を示す図である。
【図3】第1実施形態において解決しようとする課題について説明するための図である。
【図4】(A),(B)はともに第1実施形態における作用効果について説明するための図である。
【図5】第1実施形態における作用効果について説明するための図である。
【図6】第1実施形態にかかる波長選択スイッチが適用される光ネットワークを示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例にかかる光スイッチを示す模式的斜視図である。
【図8】図7に示す光スイッチの要部構成を示す図である。
【図9】図7に示す光スイッチの要部構成を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる波長選択スイッチ(光スイッチ)を示す模式的斜視図である。
【図11】第2実施形態にかかる波長選択スイッチの要部構成を示す図である。
【図12】第2実施形態にかかる波長選択スイッチの要部構成を示す図である。
【図13】(A),(B)はともに第2実施形態にかかる波長選択スイッチの要部構成を示す図である。
【図14】本実施形態の変形例を示す図である。
【図15】本実施形態の変形例を示す図である。
【図16】本実施形態の変形例を説明するための図である。
【図17】(A),(B)はともに本実施形態の変形例を説明するための図である。
【図18】(A),(B)はともに本実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照することにより、本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。又、上述の本願発明の目的のほか、他の技術的課題、その技術的課題を解決する手段及び作用効果についても、以下の実施の形態による開示によって明らかとなる。
〔A〕第1実施形態の説明
図1は本発明の第1実施形態にかかる波長選択スイッチ(光スイッチ)を示す模式的斜視図である。第1実施形態にかかる波長選択スイッチ1は、例えば図6に示すような光ネットワーク100をなすノード101(101−1〜101−11)に適用することができるものである。尚、この図6に示す光ネットワーク100においては、それぞれ、ノード101−1〜101−6,101−6〜101−11により、リングネットワーク100a,100bを構成する。又、ノード101−1〜101−5,101−7〜101−11はOADMノードを構成し、101−6は、リングネットワーク100a,100b間を接続するHUBノードを構成する。
【0019】
たとえば、HUBノードをなすノード101−6は、入力側および出力側の接続経路にそれぞれ光アンプ111,112をそなえるとともに、波長多重光信号についての接続経路を波長単位に相互に切り替え可能とする、上述の図1に示す構成の波長選択スイッチ1をそなえている。
波長選択スイッチ1は、光が入力又は出力される複数の光ポートをそなえるとともに光ポートを通じて出力される光を波長単位に切り替えるものである。例えば、図1に示すように、上述の光ポートとしてファイバアレイ8をなす複数の光ファイバ8aが導入され、1本の光ファイバ8aから入力される光を、波長単位に他の光ファイバ8aのいずれかに出力されるよう経路を切り替える。
【0020】
図1に示す波長選択スイッチ1は、ファイバアレイ8をなす光ファイバ8aの本数に対応した個数の光導波路デバイス5が並列配置されるとともに、集光レンズ(第1レンズ)6およびMEMSミラーアレイ7がそなえられている。図1中においては、光ファイバ8aは垂直方向に並列配置され、各光ファイバ8aに光学的に結合される光導波路デバイス5についても対応して縦方向に並列配置(又は積層配置)されている。
【0021】
ここで、光導波路デバイス5は、対応する光ポートから入力される光を分光(分波)し波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子としての機能とともに、後述するミラーインタフェースとしての機能を有するものであり、図2に示すように、基板5aとともに基板5aに形成されたAWG導波路5bおよび補正導波路5cをそなえている。
AWG導波路5bは、入力導波路5b−1,第1スラブ導波路5b−2,アレイ導波路5b−3,第2スラブ導波路5b−4および出力導波路5b−5が順次連結して構成されるものであって、入力導波路5b−1は光ポートに光学的に結合され、出力導波路5b−5は波長単位の光伝搬路として複数本が形成されて、集光レンズ6を介してMEMSミラーアレイ7に光学的に結合される。即ち、入力導波路5b−1に入力された光はこのAWG導波路5bで分光されて、分光された波長毎の光は、互いに異なる出力導波路5b−5を伝搬されるようになっている。
【0022】
第1実施形態においては、光導波路デバイス5として導波路型の分光素子を形成しているので、従来よりの回折格子に比して小型化を図ることができる。特に厚さについては例えば1mm以下とすることができるので薄型化に適している。又、回折次数を大きくして分散を大きくすることができるので、集光レンズの焦点距離を短くでき、この点からも光学系を小型化させることが可能となる。
【0023】
また、補正導波路5cは、上述の光導波路デバイス5をなす基板5aに一体に形成されて、各出力導波路5b−5に連結接続された複数の光導波路であり、出力導波路5b−5を伝搬する波長毎の光は、この補正導波路5cを通じて基板5aの出射端部から出射されるようになっている。
また、MEMSミラーアレイ7は、出力導波路5b−5および補正導波路5cを伝搬し基板5aの出射端部から出射される波長対応の光に光学的に結合される複数のミラー7aをそなえてなるものであって、これらのミラー7aは、分光素子をなす光導波路デバイス5の分光方向に対応して、図中水平方向に等間隔に配列されて、各々個別に反射角度を可変設定する可動ミラーとして構成される。従って、MEMSミラーアレイ7は、分光素子をなす光導波路デバイス5から出力された波長ごとの光をそれぞれ反射させるとともに、反射面の角度を可変することにより出力先の光ポートを切り替え可能とする複数の可動ミラー7aが等間隔配置されたミラーデバイスである。
【0024】
これにより、例えば、入力光ポートをなす図中最上段の光ファイバ8aからの光は、対応する最上段の光導波路デバイス5で分光されて、波長単位に対応するミラー7aで反射されるようになっている。そして、各ミラー7aの反射角度を個別に設定されることにより、入力された光については、いずれかの出力光ポートをなす光ファイバ8aに導かれるように光方路を波長単位に設定することができるようになる。
【0025】
なお、ミラー7aで反射された光については、出力先の光ファイバ8aに対応する光導波路デバイス5の出力導波路5b−5に結合されて、入力光とは反対に波長多重(合波)され、入力導波路5b−1から出力光ポートをなす光ファイバ8aに導かれる。尚、上述のファイバアレイ8をなす各光ファイバ8と対応する光導波路デバイス5とは、例えばバットジョイント接続により損失を最小化した構成とすることができる。
【0026】
ここで、補正導波路5cは、AWG導波路5bをなす複数の出力導波路5b−5にそれぞれ接続され複数の出力導波路5b−5の間隔を可動ミラー7aの配置間隔に対応して間隔補正されるように形成されたものである。換言すれば、上述の基板5aと基板5aに形成された補正導波路5cとにより、AWG導波路5bで分光されて波長毎に異なる光軸を有する各光を入力されて、入力された各光を、当該波長光反射用の可動ミラー7aの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、該当可動ミラー7aに導くミラーインタフェースを構成する。
【0027】
なお、出力光ポートとしての光ファイバ8a(図中最上段から2段目の光ファイバ8aから最下段の光ファイバ8a)に対応してそなえられる光導波路デバイス5の補正導波路5cについても、ミラー7aの配置間隔に対応した間隔で形成されているので、ミラー7aで反射された波長単位の光については集光レンズ6を介して対応する補正導波路5cに結合され、AWG導波路5bを通じて合波(波長多重)されて、入力導波路5b−1を通じて該当光ファイバ8aに出力されるようになる。
【0028】
また、上述の光導波路デバイス5における補正導波路5cの構成およびMEMSミラーアレイ7の構成に着目すると、複数の可動ミラー7aが等間隔配置されてなるミラーデバイスである汎用のMEMSミラーアレイ7とともに、複数の可動ミラー7aのそれぞれで反射させるべき各反射対象光を、該当する可動ミラー7aの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、当該可動ミラー7aに導くミラーインタフェースとしての光導波路デバイス5Bにより、ミラー装置を構成することができる。第1実施形態においては、分光素子をなすAWG導波路5bについても一体化して構成された光導波路デバイス5とMEMSミラーアレイ7とにより、ミラー装置を構成している。
【0029】
上述のごとく構成された光ネットワーク100においては、各ノード101において波長単位での光方路切り替えを、波長選択スイッチ1を通じて行なう。
このとき、波長選択スイッチ1においては、入力光ポートをなす光ファイバ8aから入力された光は光導波路デバイス5で分光され、MEMSミラーアレイ7に達する。このとき、出力導波路5b−5に結合される波長単位の光は、補正導波路5cにより、ミラー7aの配置間隔に対応する光軸を有するように光軸補正される。このように光軸補正された各波長の光は、集光レンズ6を介して対応するミラー7aに入射される。
【0030】
ここで、MEMSミラーアレイ7にそなわる図示しないミラー角度調整機構により、個々のミラー7aの角度を独立に調節し、ミラー7aで反射した光を図中最上段から2段目〜最下段のアレイ導波路デバイス5のいずれかに結合させるか、即ち出力先として導かれる光ファイバ8aを選択的に切り替える。このようにして、入力光ポートをなす光ファイバ8aから入射した光の出力先方路を、任意の出力光ポートをなす光ファイバ8aに、波長毎に任意に選択することが可能になる。
【0031】
ところで、前述したように、ITUで規定される波長多重光信号として適用されるチャンネル配置は、光周波数軸上において等間隔配置をそなえている。これを光波長軸上に置き換えてみると、図3に示すように不等間隔を有することになる。尚、図3においては、C+Lバンド内での100GHz間隔の周波数fに対する波長間隔につき800pm(ピコメートル)からのずれΔλとして示すものである。この図3に示すように、光周波数が低周波側(即ち長波長側)となるに従って、波長ずれΔλは大きくなることがわかる。換言すれば、波長多重光信号として適用されるチャンネル配置は、波長軸上では不等間隔である。
【0032】
AWG導波路5bをなす第2スラブ導波路5b−4での光の干渉により波長単位に光の等位相面が形成されるので、各出力導波路5b−5では、波長単位に光が結合されるようになる。ITUで規定されるチャンネル配置に光を低損失で分光させるには、第2スラブ導波路5b−4から導かれる出力導波路5b−5の間隔についても不等間隔となる。
一般的には、アレイ導波路格子デバイスとしては出力導波路をバットジョイントにより光ファイバに導く構成が一般的であるため、その限度で出力導波路間隔については規定すれば足りるものであった。
【0033】
このため、例えば上述のごとき不等間隔の出力導波路5b−5から出力される光を、そのままMEMSミラーアレイ7をなすミラー7aに入射させようとする場合、又は、従来よりの回折格子で分光されたチャンネルごとの光をミラー7aに入射させようとする場合には、図4(A)に示すように、ミラー7aの配置間隔と、チャンネルごとの信号光の光強度のピーク(P1)が一致しないことになる。
【0034】
又は、図5に示すように、レンズ6で集光されたチャンネルごとの信号光のスポット(S)がミラー7aの中心に一致しない箇所が生じることになる。例えば、図5のAに示すように、MEMSミラーアレイ7の右端部のミラー7aに入射される波長光のスポットはミラー中心に位置するが、Bに示すように、MEMSミラーアレイ7中央部のミラー7aに入射される波長光のスポットはミラー中心から外れる。
【0035】
この場合には、チャンネルごとの信号光がミラー中心から外れるため、方路切り替え先の出力光ポートへの結合効率が低下し、透過帯域の劣化や波長毎の透過帯域バラツキの発生につながる。
これに対し、第1実施形態の場合のように、波長選択スイッチ1の分光素子として光導波路デバイス5を適用する場合において、ミラーインタフェースをなす補正導波路5cを更に形成することにより、図4(B)に示すように、ミラー7aでの配置間隔に対応する光軸を有する光として出力することができるので、各ミラー7aの中心箇所に光強度のピーク(P2)を合わせてミラー7aでの反射の低損失化を図り、透過帯域の劣化を防止し、ひいてはチャンネルごとの透過帯域のバラツキの発生を防止することができるようになる。
【0036】
このように、本発明の第1実施形態によれば、ミラーインタフェースをなす基板5aおよび補正導波路5cをそなえるという簡素な構成により、ミラー7aでの焦点像を最適とすることができるので、透過帯域の劣化を防止し、ひいてはチャンネルごとの透過帯域のバラツキの発生を防止することができる利点がある。
また、従来技術のように、楔状のプリズム等のごとき特殊な光部品を追加して使用する必要がなく、光学システムを構成する光部品の点数を増やす必要がないので、光学系のアライメントの調整のための作業負荷や組立ての難易度を増大させることがない簡素な構成としながら、従来技術よりも損失を削減させることが可能となる。
【0037】
さらには、分光素子をなす光導波路デバイス5の構成を改善するのみで、MEMSミラーを各波長に対し最適になるよう不等間隔に設計する必要もなくなり、汎用のMEMSミラーアレイを適用することが可能となる。
〔A1〕第1実施形態の変形例の説明
図7は本発明の第1実施形態の変形例にかかる光スイッチ1Aを示す模式的斜視図である。この図7に示す光スイッチ1Aは、前述の第1実施形態における光導波路デバイス5を、分光素子としてのアレイ導波路格子デバイス5A(図8参照)と、ミラーインタフェースとしての光導波路デバイス5B(図9参照)と、に分離した構成とし、これらのアレイ導波路格子デバイス5Aと光導波路デバイス5Bとの間にレンズ(第2レンズ)9を介装したものである。尚、図7〜図9中において、図1,2と同一の符号はほぼ同様の部分を示している。
【0038】
ここで、アレイ導波路格子デバイス5Aは分光素子として機能するものであり、基板5Aaをそなえるとともに、基板5Aaに形成されたAWG導波路5b′をそなえて構成することができる。AWG導波路5b′は、前述の図2に示すものと異なり、図8に示すように、図2に示す第2スラブ導波路5b−4および出力導波路5b−5を省略して、アレイ導波路5b−3の出射端側を一体化する領域5b−6を形成する構成としてもよい。
【0039】
この場合には、アレイ導波路格子デバイス5Aから出射される光は従来よりの回折格子から出力される光と同様に波長ごとに分散し、レンズ9を介して光導波路デバイス5Bに出射される光は波長毎に光軸が図中水平方向に並ぶようになる。
光導波路デバイス5Bはミラーインタフェースとして機能するものであり、図9に示すように、基板5Baをそなえるとともに、基板5Baに形成された複数の補正導波路5Bbをそなえている。補正導波路5Bbは、ミラー7aで反射される対象となる光を反射対象光として基板5Baの一端面から入力されて、入力された反射対象光をミラー7aの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正する。
【0040】
すなわち、補正導波路5Bbは、基板5Baの一端面5B−1側(アレイ導波路格子デバイス5A側)は不等間隔を有するように形成される一方で基板5Baの他端面5B−2側(MEMSミラーアレイ7側)においては、ミラー7aの配置位置に対応して等間隔となるように形成されている。換言すれば、補正導波路5Bbの形成パターン自体は、前述の図2に示す補正導波路5cと実質的に同等とすることができる。
【0041】
これにより、アレイ導波路格子デバイス5Aで分光された光は、波長ごとに対応する位置に形成された補正導波路5Bbに結合されて、この補正導波路5Bbを伝搬することを通じて光軸補正される。そして、このように光軸補正された光は、基板5Baの他端面から出射されて、レンズ6を介してミラー7aに入射されるようになっている。尚、出力光ポートをなす光ファイバ8aに対応してアレイ導波路格子デバイス5Aおよび光導波路デバイス5Bが形成されている。従って、光導波路デバイス5Bにおいては、ミラー7aで反射した光についても、アレイ導波路格子デバイス5Aで波長多重されるように光軸補正することができる。
【0042】
これにより、ミラーインタフェースとしての光導波路デバイス5Bを追加するという簡素な構成により、透過帯域の劣化を防止し、ひいてはチャンネルごとの透過帯域のバラツキの発生を防止することができる。又、ミラー7aを各波長に対し最適になるよう不等間隔に設計する必要もなくなり、汎用のMEMSミラーアレイを適用することが可能となる。更に、プリズムを介装する場合に比べても、波長単位での正確な光軸設定を比較的容易に行なうことが期待できる。
【0043】
なお、上述の場合においては、アレイ導波路格子デバイス5AをなすAWG導波路5b′としては図8に示すものを適用しているが、本発明によれば、前述の図2に示すものと同様のAWG導波路5bの構成とすることもできる。
また、上述の第1実施形態においてはファイバアレイ8をなす垂直方向に並列配置される複数の光ファイバ8aのうちで、最上段の光ファイバ8aを入力光ポートとし、2段目から最下段の光ファイバ8aを出力光ファイバ8aとして構成しているが、本発明によれば、中間段の光ファイバ8aを入力光ポートとしそれ以外の光ファイバ8aを出力光ファイバ8aとして構成することとしてもよく、このようにすれば、光入力/光出力ポートに対し、ミラー7aの可変角度を均等にすることが出来るため、各ポート間での挿入損失特性を均等に(最適に)することが可能である。この場合においては、アレイ導波路格子デバイス5Aについては、従来よりの回折格子により構成することとしてもよい。
【0044】
〔B〕第2実施形態の説明
図10は本発明の第2実施形態にかかる波長選択スイッチ(光スイッチ)を示す模式的斜視図である。第2実施形態にかかる波長選択スイッチ10は、前述の第1実施形態にかかる波長選択スイッチ1と異なる構成をそなえる。即ち、この図10および図11に示すように、各入出力光ポートに対応する光導波路デバイス5をなす複数の補正導波路5cの形成箇所に、伝搬光をモニタする受光素子としてのPDアレイ3(フォトダイオード2)を搭載するとともに、図10に示すように、フォトダイオード2での伝搬光のモニタ結果に基づいてミラー7aの反射角度を制御する制御部4をそなえている。
【0045】
また、第2実施形態においては、ファイバアレイ8をなす垂直方向に配列された複数の光ファイバ8aのうちで、中間段の光ファイバ8aを入力光ポートとしそれ以外の光ファイバ8aを出力光ファイバ8aとして構成している。これにより、光入力/光出力ポートに対し、ミラー7aの可変角度を均等にし、各ポート間での挿入損失特性を均等に(最適に)している。
【0046】
なお、他の構成については第1実施形態の場合と基本的に同様であり、図10,図11中、図1,図2と同一の符号はほぼ同様の部分を示している。
ここで、フォトダイオード(PD)2は、補正導波路5cそれぞれの形成箇所に、対応する補正導波路5cを伝搬する光をモニタする受光素子である。尚、フォトダイオード2は、補正導波路5cの形成箇所にアレイ状に配置されたPDアレイ3として構成することができる。又は、隣接する補正導波路5cの間隔が狭いために複数の補正導波路5c上のフォトダイオード2を一直線上に配列することが困難な場合には、図12に示すように千鳥格子状にフォトダイオード2を配列したPDアレイ3Aとして構成して、実装効率を向上させることもできる。
【0047】
図13(A),図13(B)はともに補正導波路5cの形成箇所へのフォトダイオード2の搭載例を示す断面図であり、補正導波路5cが形成される方向に沿った断面図である。AWG導波路5bとともに補正導波路5cは光導波路を構成するものであるが、これらの光導波路は、例えば図13(A)又は図13(B)に示すように、基板5aに下部クラッド層12A,コア層13および上部クラッド層12Bが順に積層されて構成される。
【0048】
すなわち、クラッド層12A,12Bに囲まれたコア層13の領域は屈折率がクラッド層12A,12Bよりも比較的高くなるように形成されることで、光がコア層13に閉じ込められて伝搬するようになっている。換言すれば、コア層13の形状により光導波路のパターンが定められるようになっている。尚、コア層13とクラッド層12A,12Bとの間の屈折率差としては、例えばΔ=0.5程度とすることができる。
【0049】
フォトダイオード2としては、上述のごとく形成される補正導波路5cが形成されるコア層13の近傍のクラッド層12A,12Bが他の領域よりも比較的薄くなるように窪み領域14を設けて、当該窪み領域14にフォトダイオード2を搭載するようになっている。図13(A)は上部クラッド層12Bに窪み14を設けた場合であり、図13(B)は基板5aのフォトダイオード2を搭載するための一部領域を除去するとともに下部クラッド層12Aの一部に窪み領域14を設けた場合である。いずれの場合においても、フォトダイオード2の受光面が窪み14内においてコア領域13側を指向するように搭載する。これにより、コア領域13を伝搬する光の漏れ光成分を受光できるようになる。
【0050】
なお、屈折率差Δを0.5として補正導波路5cを構成した場合には、窪み領域14にかかるクラッド領域12A,12Bの箇所は1μm以下の厚さとなるように構成することで、十分なモニタ光強度を得ることができる。
また、制御部4は、フォトダイオード2でのモニタ結果に応じて、ミラー7aにおける反射面角度を制御するものである。
【0051】
すなわち、上述のように搭載されたフォトダイオード2においては、対応する補正導波路5cをなすコア領域13を伝搬する光の一部の漏れ光成分を受光する。補正導波路5cを伝搬する光は、各光ポートを入出力する波長単位の光であり、制御部4においては、各光ポートに対応する光導波路デバイス5におけるフォトダイオード2からのモニタ結果を受け取ることにより、波長選択スイッチ10におけるスイッチングにあたっての監視制御情報を取得できる。
【0052】
具体的には、制御部4では、フォトダイオード2からのモニタ情報を得ることにより(図10のA参照)、監視制御情報として、各光導波路デバイス5でのチャンネル毎の光パワー情報を得ることができる。又、光パワー情報を得ているフォトダイオード2からの検出光パワーを積分することにより、当該補正導波路5cを伝搬する光のトータルの光パワーを算出することができる。更に、光パワーを受光しているフォトダイオード2の配置(アドレス)を算出することにより、波長数情報および波長配置情報を得ることができる。
【0053】
また、第2実施形態における波長選択スイッチ10を前述の図6に示すような光ネットワーク100のノード101に適用する場合には、制御部4で取得した上述のごとき情報について、OSC(Optical Supervisor Channel)を通じてノード間でやり取りすることができるので、システム全体として波長情報の管理も可能となる。
そして、制御部4においては、出力光ポートに対応する光導波路デバイス5のフォトダイオード2からのモニタ結果に基づいて、ミラー7aでの反射角度をフィードバック制御することにより(図10のB,C参照)、ミラー7aでの反射光の、出力光ポート対応の光導波路デバイス5をなす補正導波路5cへの光の結合効率を制御し、出力光ポートをなす光ファイバ8aから出力される光のパワーを目標値としている。
【0054】
たとえば、補正導波路5cへの光の結合効率を最適となるようにしたり、可変減衰制御を行なって、波長成分ごとに補正導波路5cへ結合される光パワーを可変減衰制御したりすることができる。具体的には、波長依存特性を抑圧する制御やチルト調整制御を行なうことができる。
上述のごとく構成された第2実施形態にかかる光スイッチ10においては、前述の第1実施形態の場合と同様に、光導波路デバイス5からMEMSミラーアレイ7を構成するミラー7aへ出力する光の波長毎の光における光軸配置間隔を、ミラー7aの配置間隔に対応するように光軸補正されているので、前述の第1実施形態の場合と同様に、ミラーインタフェースをなす基板5aおよび補正導波路5cをそなえるという簡素な構成により、ミラー7aでの焦点像を最適とし、透過帯域の劣化を防止し、ひいてはチャンネルごとの透過帯域のバラツキの発生を防止することができる。
【0055】
また、光導波路デバイス5における補正導波路5cの形成箇所にフォトダイオード2を搭載しているので、波長選択スイッチ10としてのモジュール内において光モニタ機能およびミラー7aの角度制御機能を併せ持つことができるので、従来技術において想定される光スペクトルアナライザを搭載する構成と比べてはモジュール間通信を行なう必要がなくなり、前述の特許文献1に記載された冗長な構成と比べても、部品点数を削減させて、装置規模を大幅に縮小化させることができるようになる。
【0056】
なお、前述の図7に示す構成に倣い、分光素子としてのアレイ導波路格子デバイス5Aおよびミラーインタフェースとしての光導波路デバイス5Bをそなえた構成においても、同様に補正導波路5Bbの形成箇所にフォトダイオードを搭載することが可能である。
また、上述した第2実施形態においては、光導波路デバイス5として補正導波路5cがAWG導波路5bとともに形成されたものにおいてフォトダイオード2を搭載した構成について説明したが、本発明によれば、少なくとも出力導波路5b−5のように、導波路型の分光素子において、分光された各波長対応の光を伝搬する光導波路上にフォトダイオード2を搭載することとしてもよく、このようにすれば、少なくとも従来技術の構成と比べて、光スイッチとしてのモジュール内においてモニタ機能およびミラー角度制御機能を組み込むことができるので、モジュール間通信が不要となり、モニタ機能を有する波長選択スイッチにかかる装置規模を大幅に縮小化させることができるようになる。
【0057】
〔C〕その他
上述した実施形態にかかわらず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
たとえば、上述の第1,第2実施形態における波長選択スイッチ1,10においては、入力光ポートをなす光ファイバ8aの数を「1」とし、出力光ポートをなす光ファイバ8aの本数を複数(図中では「7」)としているが、本発明によれば、これ以外の入出力ポートの数の組み合わせとすることを妨げるものではない。例えば入力光ポート数を1〜M(Mは2以上の任意の整数)のいずれかとする一方で出力光ポートはN(Nは2以上の任意の整数)としたり、入力光ポート数をMとする一方で出力光ポートは1〜Nのいずれかとしたりすることができる。
【0058】
また、上述の第2実施形態における光導波路デバイス5においては、光導波路をなすコア領域に希土類元素をドープした構成とするとともに、光導波路デバイス5,5A,5Bに対して励起光を供給する構成をそなえることとすれば、光増幅器としての機能をも併せ持つことができる。この場合においては、制御部4では、ミラー7aの反射角度の制御を通じて、フォトダイオード2でモニタする光パワーの値に基づいて、該当補正導波路5cを伝搬する光について出力一定制御又は利得一定制御を実現することが可能である。
【0059】
たとえば、出力一定制御を行なう場合にあたっては、光出力値が目標値になるようにミラー7aの角度を調整する。又、利得一定制御を行なう場合には、利得(光出力モニタ値(mW)/光入力モニタ値(mW))、が目標値となるよう、ミラー7aの角度を調整した後、ミラー角度を固定する。
このような第1,第2実施形態における波長選択スイッチ1,10において、光増幅器としての機能を併せ持つ光導波路デバイスを構成要素とする波長選択スイッチを、波長選択スイッチ10′として前述の図6に示す光ネットワーク100のノード101に適用することで、例えば図14に示すように、波長選択スイッチ10′の前後段にそなえられていた光アンプ111,112としての構成を省略し、コストダウンを図ることが可能となる。
【0060】
また、上述の第1実施形態における光導波路デバイス5において、図15に示すように、補正導波路5cとミラー7aとの間の位置に、利得波長特性を平坦化するための光フィルタ15Aを介装することとしてもよい。又は、第1実施形態における光導波路デバイス5において、図13(A)又は図13(B)に示すような窪み領域14を形成するとともに、当該窪み領域14の箇所に上述の光フィルタ15Bを搭載することも可能である。
【0061】
光フィルタ15A,15Bとしては、例えば図16のA〜Fに示すように、利得波長特性を平坦化させる特性のEDF(Erbium Doped Fiber)を適用することができる。これにより、例えば図6のノード101のように、光アンプ111,112で問題となる利得偏差を波長選択スイッチにおいて抑圧させることができるようになる。なお、図16のA〜Fは反転分布率tを0.7とし、EDF長Lを変化させた場合の特性である。
また、上述の各実施形態にかかる波長選択スイッチ1,10においては、構成要素としての光部材(符号5,5A,5B,6,7,9参照)について、適宜、温度調整制御機能を更に搭載することとしてもよい。波長選択スイッチ1,10が、温度変動が比較的大きい環境で適用される場合には、図17(B)に示すように、焦点位置が温度変化によってズレが生じて、ミラー7aに入射される各波長の光の間隔が、ミラー7aの配置間隔に対応しなくなる場合も想定される。そこで、温度調整制御機能を各光部材に適宜搭載することにより(例えば図17(A)に示すように、レンズ6の温度調整を行なう温度調整制御部16を搭載することにより)、温度に依存した焦点位置の変動特性をキャンセルし、所期の反射特性を得ることができるようになる。
【0062】
さらに、図18(A),図18(B)に示すように、各光ポートをなす光ファイバ8a上に光アイソレータを介装することにより、ポート間でのクロストークを改善することが可能となる。図18(A)は1×Nの波長選択スイッチ1(10)の入力光ポートに光アイソレータ17をそなえた場合であり、図18(B)は、N×1の波長選択スイッチ1(10)の入力光ポートに光アイソレータ17をそなえた場合である。
【0063】
〔D〕付記
(付記1)
複数の可動ミラーが等間隔配置されてなるミラーデバイスと、
前記複数の可動ミラーのそれぞれで反射させるべき各反射対象光を、該当する該可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、当該可動ミラーに導くミラーインタフェースと、をそなえたことを特徴とする、ミラー装置。
【0064】
(付記2)
入力される光を分光し、波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子をそなえ、
該ミラーインタフェースは、該分光素子で分光されて波長毎に異なる光軸を有する光を前記各反射対象光として入力されて、前記入力された各反射対象光を、該当する該可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、該当可動ミラーに導くことを特徴とする、付記1記載のミラー装置。
【0065】
(付記3)
該ミラーインタフェースは、基板と、該基板に形成され、前記各反射対象光を該基板の一端面から入力されて、前記入力された反射対象光を前記複数の可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するようにそれぞれ光軸補正する複数の補正導波路と、をそなえ、該光軸補正導波路を伝搬した光が該基板の他端面から該可動ミラーに出射されるように構成されたことを特徴とする、付記1又は2記載のミラー装置。
【0066】
(付記4)
該複数の補正導波路は、該基板の一端面側は不等間隔を有するように形成される一方で該基板の他端面においては、該可動ミラーの配置位置に対応して等間隔となるように形成されたことを特徴とする、付記3記載のミラー装置。
(付記5)
該分光素子は、基板と、該基板上に形成されたAWG(Arrayed Waveguide Gratings)導波路であって、前記分光された波長毎の光がそれぞれ伝搬する複数の出力導波路を有するAWG導波路と、をそなえ、
かつ、該ミラーインタフェースは、該分光素子をなす該基板と、該基板に形成されるとともに、該AWG導波路をなす出力導波路に接続され該出力導波路の間隔を前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応して間隔補正を行なう複数の補正導波路と、をそなえ、該分光素子と一体に形成されたことを特徴とする、付記2記載のミラー装置。
【0067】
(付記6)
該ミラーインタフェースにおける該複数の補正導波路それぞれの形成位置に対応する箇所に、対応する補正導波路を伝搬する光をモニタする受光素子が搭載されたことを特徴とする、付記3〜5のいずれか1項記載のミラー装置。
(付記7)
光が入力又は出力される複数の光ポートをそなえるとともに該光ポートを通じて出力される光を波長単位に切り替える光スイッチであって、
前記光ポートから入力される光を分光し波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子と、
該分光素子から出力された波長ごとの光をそれぞれ反射させるとともに、反射面の角度を可変することにより出力先の該光ポートを切り替え可能とする複数の可動ミラーが等間隔配置されたミラーデバイスと、
該可動ミラーと、該分光素子を介した前記複数の光ポートと、の間の光路上にそれぞれ介装された複数のミラーインタフェースと、をそなえ、
各ミラーインタフェースは、該分光素子で分光されて波長毎に異なる光軸を有する各光を入力されて、前記入力された各光を、当該波長光反射用の該可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、該当可動ミラーに導くことを特徴とする、光スイッチ。
【0068】
(付記8)
該ミラーインタフェースと該複数の可動ミラーとの間には、第1レンズが介装されたことを特徴とする、付記7記載のミラー装置。
(付記9)
該分光素子と該ミラーインタフェースとの間には、第2レンズが介装されたことを特徴とする、付記7項記載のミラー装置。
【0069】
(付記10)
各ミラーインタフェースは、基板と、該基板に形成され、前記各反射対象光を該基板の一端面から入力されて、前記入力された反射対象光を前記複数の可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するようにそれぞれ光軸補正する複数の補正導波路と、をそなえ、該光軸補正導波路を伝搬した光が該基板の他端面から該可動ミラーに出射されるように構成されたことを特徴とする、付記7記載の光スイッチ。
【0070】
(付記11)
該分光素子は、
該複数の光ポートにそれぞれ対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスであって、各アレイ導波路格子デバイスは、基板と、該基板上に形成されたAWG(Arrayed Waveguide Gratings)導波路であって、前記分光された波長毎の光がそれぞれ伝搬する複数の出力導波路を有するAWG導波路と、をそなえ、
該複数のミラーインタフェースは、それぞれ、該複数の光ポートに対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスと一体に形成され、各ミラーインタフェースは、対応する該アレイ導波路格子デバイスをなす該基板と、該基板に形成されるとともに、該AWG導波路をなす該複数の出力導波路にそれぞれ接続され該複数の出力導波路の間隔を前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応して間隔補正を行なう複数の補正導波路と、をそなえたことを特徴とする、付記7記載の光スイッチ。
【0071】
(付記12)
該ミラーインタフェースにおける該複数の補正導波路それぞれの形成箇所に、対応する補正導波路を伝搬する光をモニタする受光素子が搭載され、
かつ、該受光素子でのモニタ結果に応じて、該可動ミラーにおける前記反射面角度を制御する制御部をそなえたことを特徴とする、付記10又は11記載の光スイッチ。
【0072】
(付記13)
該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の上部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されたことを特徴とする、付記12記載の光スイッチ。
(付記14)
該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の下部の基板領域が削られるとともに前記コア領域の下部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されたことを特徴とする、付記12記載の光スイッチ。
【0073】
(付記15)
前記窪んだクラッド領域の箇所は1μm以下の厚さを有することを特徴とする、付記13又は14記載の光スイッチ。
(付記16)
該受光素子は、該複数の出力導波路の形成位置の上部に千鳥格子状に配置されたことを特徴とする、付記12記載の光スイッチ。
【0074】
(付記17)
付記7〜16のいずれか1項記載の光スイッチがそなえられた光分岐挿入装置。
(付記18)
付記7〜16のいずれか1項記載の光スイッチがそなえられた光ハブ装置。
(付記19)
付記7〜16のいずれか1項記載の光スイッチがそなえられた光伝送装置。
【0075】
(付記20)
光が入力又は出力される複数の光ポートをそなえるとともに該光ポートを通じて出力される光を波長単位に切り替える光スイッチであって、
前記光ポートから入力される光を分光し波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子と、
該分光素子から出力された波長ごとの光をそれぞれ反射させるとともに、反射面の角度を可変することにより出力先の該光ポートを切り替え可能とする複数の可動ミラーが等間隔配置されたミラーデバイスと、をそなえ、
該分光素子は、該複数の光ポートにそれぞれ対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスであって、各アレイ導波路格子デバイスは、基板と、該基板上に形成されたAWG(Arrayed Waveguide Gratings)導波路であって、前記分光された波長毎の光がそれぞれ伝搬する複数の出力導波路を有するAWG導波路と、をそなえ、
かつ、該複数の出力導波路それぞれの形成位置に対応する箇所に、対応する出力導波路を伝搬する光をモニタする受光素子が搭載されたことを特徴とする、光スイッチ。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,10,10′ 波長選択スイッチ(光スイッチ)
2 フォトダイオード
3,3A PDアレイ
4 制御部
5,5B 光導波路デバイス
5A アレイ導波路格子デバイス
5a,5Aa,5Ba 基板
5Bb 補正導波路
5B−1,5B−2 端面
5b AWG導波路
5b−1 入力導波路
5b−2 第1スラブ導波路
5b−3 アレイ導波路
5b−4 第2スラブ導波路
5b−5 出力導波路
5b−6 領域
5c 補正導波路
6 レンズ(第1レンズ)
7 MEMSミラーアレイ
7a ミラー
8 ファイバアレイ
8a 光ファイバ
9 レンズ(第2レンズ)
12A,12B クラッド
13 コア
14 窪み領域
15A,15B 光フィルタ
16 温度調整制御部
17 光アイソレータ
100 光ネットワーク
101−1〜101−6,101−6〜101−11 ノード
100a,100b リングネットワーク
111,112 光アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入力又は出力される複数の光ポートをそなえるとともに該光ポートを通じて出力される光を波長単位に切り替える光スイッチであって、
前記光ポートから入力される光を分光し波長ごとに異なる光軸を有する光として出力する分光素子と、
該分光素子から出力された波長ごとの光をそれぞれ反射させるとともに、反射面の角度を可変することにより出力先の該光ポートを切り替え可能とする複数の可動ミラーが等間隔配置されたミラーデバイスと、
該可動ミラーと、該分光素子を介した前記複数の光ポートと、の間の光路上にそれぞれ介装され、該分光素子で分光されて波長毎に異なる光軸を有する各光を入力されて、前記入力された各光を、当該波長光反射用の該可動ミラーの配置位置に対応する光軸を有するように光軸補正して、該当可動ミラーに導く複数のミラーインタフェースと、をそなえ、
該分光素子は、
該複数の光ポートにそれぞれ対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスであって、
各アレイ導波路格子デバイスは、
基板と、該基板上に形成されたAWG(Arrayed Waveguide Gratings)導波路であって、前記分光された波長毎の光がそれぞれ伝搬する複数の出力導波路を有するAWG導波路と、をそなえ、
該複数のミラーインタフェースは、
それぞれ、該複数の光ポートに対応してそなえられた複数のアレイ導波路格子デバイスと一体に形成され、
各ミラーインタフェースは、
対応する該アレイ導波路格子デバイスをなす該基板と、該基板に形成されるとともに、該AWG導波路をなす該複数の出力導波路にそれぞれ接続され該複数の出力導波路の間隔を前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応して間隔補正を行なう複数の補正導波路と、をそなえ、
前記複数の補正導波路は、
前記複数の出力導波路の間隔に対応した不等間隔の入力側導波路を有するとともに、前記複数の可動ミラーの配置間隔に対応した等間隔の出力側導波路を有し、
前記複数の光ポートは、所定の方向に並列配置され、
前記複数の光ポートのうちの、中間段の光ポートは、前記光が入力される光入力ポートであり、
前記複数の光ポートのうちの、前記光入力ポート以外の光ポートのそれぞれは、前記光が出力される光出力ポートである、ことを特徴とする、光スイッチ。
【請求項2】
該ミラーインタフェースにおける該複数の補正導波路それぞれの形成箇所に、対応する補正導波路を伝搬する光をモニタする受光素子が搭載され、
かつ、該受光素子でのモニタ結果に応じて、該可動ミラーにおける前記反射面角度を制御する制御部をそなえる、ことを特徴とする、請求項1記載の光スイッチ。
【請求項3】
該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の上部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されたことを特徴とする、請求項2記載の光スイッチ。
【請求項4】
該受光素子が搭載される該複数の補正導波路の形成箇所においては、当該補正導波路をなすコア領域の下部の基板領域が削られるとともに前記コア領域の下部のクラッド領域の一部を窪んだ領域として構成されたことを特徴とする、請求項2記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記窪んだクラッド領域の箇所は1μm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項3又は4記載の光スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−101393(P2013−101393A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24128(P2013−24128)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2007−166683(P2007−166683)の分割
【原出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】