説明

光スペクトラム測定装置

【課題】簡易な構成で、複数の異なる種類の光ファイバを用いて測定を行なえる光スペクトラム測定装置を提供する。
【解決手段】光バンドパスフィルタの中心波長を変化させ、被測定光の光スペクトラムを測定する光スペクトラム測定装置であって、異なる種類の光ファイバに対応した複数個の光コネクタと、分岐側の各光ファイバが複数個の光コネクタとそれぞれ接続し、バンドル側が光バンドパスフィルタの光入力端に接続したバンドル光ファイバと、を備えた光スペクトラム測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スペクトラム測定装置の光ファイバ接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光スペクトラム測定装置は、各波長に対応した光パワーを分光により測定し、分析を行なう測定装置であり、発光素子の発光波長やスペクトル幅の測定、光ファイバの損失波長特性測定、光フィルタなどの減衰特性や透過特性・カットオフ波長の測定等に用いられている。
【0003】
光スペクトラム測定装置では、光コネクタに接続された光ファイバから入射された光を、光バンドパスフィルタを用いて、狭い波長スロットに分割し、フォトダイオードで電気信号に置き換える。そして、光バンドパスフィルタの中心波長をスイープさせながら得られる電気信号をプロットしていくことで光スペクトラムを得ている。光バンドパスフィルタは、モノクロメータ(分光器)と呼ばれる光学的なプリズムを使用したメカニカルな装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−125562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、FTTH(Fiber To The Home)回線に代表される光ファイバネットワークの普及等に伴い、光スペクトラム測定装置の測定対象も、光トランシーバの光スペクトル評価や光ファイバアンプの利得評価、WDM(Wave Division Multiplexing)伝送方式における信号品質評価等多岐に渡るようになっている。
【0006】
これらの測定に用いられる光ファイバは、口径、マルチモード/シングルモード、心線種等が異なる多様な種類が用いられている。異なる種類の光ファイバは、サイズや構造が異なっていたり、波長特性が異なっているため、共通の光コネクタに接続することができない。このため、従来は、光ファイバの種類に対応した光スペクトラム測定装置を用意しなければならないこともあり、ユーザの負担が大きかった。
【0007】
光スイッチに異なる種類の光ファイバを接続し、光スイッチを切り換えることで異なる種類の光ファイバに対応することも考えられるが、光スイッチは高価であることに加え、切り換え制御が必要となる。また、光スイッチ自身が波長特性を有するため、マルチモードの光ファイバとシングルモードの光ファイバとを1つの光スイッチに接続して切り換えることはできない。
【0008】
そこで、本発明は、簡易な構成で、複数の異なる種類の光ファイバを用いて測定を行なえる光スペクトラム測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である光スペクトラム測定装置は、光バンドパスフィルタの中心波長を変化させ、被測定光の光スペクトラムを測定する光スペクトラム測定装置であって、異なる種類の光ファイバに対応した複数個の光コネクタと、分岐側の各光ファイバが前記複数個の光コネクタとそれぞれ接続し、バンドル側が前記光バンドパスフィルタの光入力端に接続したバンドル光ファイバと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である光スペクトラム測定装置は、アレイ状に並べた受光素子を備えたポリクロメータにより被測定光の光スペクトラムを測定する光スペクトラム測定装置であって、異なる種類の光ファイバに対応した複数個の光コネクタと、分岐側の各光ファイバが前記複数個の光コネクタとそれぞれ接続し、バンドル側が前記ポリクロメータの光入力端に接続したバンドル光ファイバとを備えたことを特徴とする。
【0011】
いずれの態様においても、前記バンドル光ファイバを構成する光ファイバは、接続する光コネクタが対応する種類の光ファイバを用いることができる。
【0012】
また、前記複数個の光コネクタのうち、被測定光を入射する光ファイバが接続された光コネクタを検出する検出部と、前記検出された光コネクタが対応する光ファイバの種類に応じた校正処理を行なう校正部と、を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、複数の異なる種類の光ファイバを用いて測定を行なえる光スペクトラム測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る光スペクトラム測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】モノクロメータの構成を示す図である。
【図3】バンドル光ファイバの端面例を示す図である。
【図4】光スペクトラム測定装置の正面図である。
【図5】光スペクトラム測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】ポリクロメータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光スペクトラム測定装置の構成を示すブロック図である。本図に示すように、光スペクトラム測定装置100は、モノクロメータ110、制御部120、出力・表示部130、操作受付部140、入力光コネクタ部150、バンドル光ファイバ160を備えている。
【0016】
バンドル光ファイバ160は、複数本の独立した光ファイバが一端側において束ねられた分岐型である。バンドル光ファイバ160を構成する各光ファイバは、分岐している他端側において、入力光コネクタ部150が備える複数の光コネクタと接続している。
【0017】
入力光コネクタ部150が備える複数の光コネクタは、それぞれ異なる種類の光ファイバが接続できる形状となっている。すなわち、口径、マルチモード/シングルモード、心線種等が異なる光ファイバが接続できるようになっている。
【0018】
バンドル光ファイバ160は、各光コネクタが対応した種類の光ファイバと同種の光ファイバを用いて構成する。そして、バンドル光ファイバ160を構成する各光ファイバは、その光ファイバの種類と同種の光ファイバに対応した光コネクタに接続する。例えば、大口径用の光ファイバを接続する光コネクタには、バンドル光ファイバ160を構成する光ファイバのうち、大口径の光ファイバを接続し、シングルモードの光ファイバを接続する光コネクタには、バンドル光ファイバ160を構成する光ファイバのうち、シングルモードの光ファイバを接続する。
【0019】
入力光コネクタ部150には、どの光コネクタに光ファイバが接続されているかを検出するセンサ151が備えられている。センサ151は、例えば、機械式スイッチや光学センサを用いて構成することができる。
【0020】
モノクロメータ110は、入力された光を狭い波長スロットごとに分ける光バンドパスフィルタとして機能する。図2は、モノクロメータの構成を示す図である。本図に示すように、モノクロメータ110は、2つの放物面鏡(コリメーティングミラー111、フォーカシングミラー112)と、回折格子(グレーティング)113と、出射スリット114と、フォトダイオード115とを備えている。
【0021】
回折格子113は、鏡の上に非常に細かい溝が切られており、いろいろな波長の混ざった光から特定の波長の光を取り出す光学素子である。すなわち、さまざまな波長が混ざった光が回折格子113に入射すると、それぞれの波長によって決まった角度に回折が起きるため、回折格子113から回折される角度に基づいて、波長を特定することができる。
【0022】
モノクロメータ110において、バンドル光ファイバ160のバンドル側の端面161から入射した光は、コリメーティングミラー111で平行光線となり、回折格子113に導かれる。回折格子113で回折された光は、フォーカシングミラー112によって、出射スリット114を中心に分散方向にスペクトルを結像する。したがって、スペクトルの中で出射スリット114上に集光した波長の光だけがフォトダイオード115で検出されることになる。検出する光の波長、すなわち、光バンドパスフィルタの中心波長は、回折格子113を回転することによって変えることができる。
【0023】
なお、バンドル光ファイバ160のバンドル側の端面161は、図3(a)に示すように、各光ファイバを高密度で環状に束ねた形状としてもよいし、図3(b)に示すように、各光ファイバをライン状に束ねた形状としてもよい。回折格子113の回転平面に対して垂直方向のライン状に束ねることで、それぞれの光ファイバから入力された被測定光を相対的な波長誤差が少ない状態で測定することができるようになる。
【0024】
図1のブロック図の説明に戻って、制御部120は、光スペクトラム測定装置100における各種動作を制御し、測定を行なうブロックであり、測定制御部121、信号処理部122、校正部123を備えている。
【0025】
測定制御部121は、モノクロメータ110の回折格子113の回転制御を始めとした、光スペクトラムの測定制御を行なう。信号処理部122は、モノクロメータ110のフォトダイオード115が検出した電気信号の増幅、A/D変換等の信号処理を行なう。
【0026】
校正部123は、測定用光ファイバが接続された光コネクタを検出するセンサ151の検出結果に応じた校正処理を行なう。一般に、接続される光ファイバの種類に応じて、校正値が異なることが多い。例えば、シングルモード光ファイバが接続されることを想定して校正された光スペクトラム測定装置に、マルチモードファイバを接続した場合、測定精度が低下する場合がある。
【0027】
このため、校正部123は、あらかじめ光ファイバの種類ごとの校正値を取得し、記憶しておく。そして、測定に用いられた光ファイバをセンサ151から取得し、その光ファイバに対応した校正値を読み出して信号処理部122の測定値の校正を行なう。
【0028】
出力・表示部130は、制御部120の測定結果を表示画面に表示したり、電子データとして外部に出力する。操作受付部140は、回転ノブ、スイッチ等の操作子を複数個備え、ユーザからの操作を受け付ける。
【0029】
なお、バンドル光ファイバ160と入力光コネクタ部150とは、光スペクトラム測定装置100の筐体外部に設けるようにしてもよい。このとき、より多くの光ファイバの種類に対応できるように、バンドル光ファイバ160と入力光コネクタ部150とを置換可能としてもよい。また、光ファイバで伝送するレーザの波長帯に応じた光コネクタを設けるようにしてもよい。
【0030】
図4は、本実施形態に係る光スペクトラム測定装置100の正面図の一例である。本図に示すように、光スペクトラム測定装置100の正面には、出力・表示部130の表示画面、操作受付部140の操作子に加え、複数種類の測定用光ファイバを接続するための複数個の光コネクタを備えた入力光コネクタ部150が配置されている。入力光コネクタ部150のそれぞれの光コネクタの近傍には、光コネクタが対応する光ファイバの種類を表示しておくことが望ましい。
【0031】
図5は、本実施形態に係る光スペクトラム測定装置100の測定手順を示すフローチャートである。光スペクトラムの測定にあたっては、ユーザから測定用光ファイバの接続を受け付ける(S101)。この際に、ユーザは、測定に用いる光ファイバの種類に対応した光コネクタに接続するようにする。また、測定条件の設定、解析内容の設定等は、従来の光スペクトラム測定装置と同様に行なうことができる。
【0032】
光ファイバが接続されると、センサ151が、光ファイバが接続された光コネクタを検出する(S102)。すると、校正部123が検出された光コネクタに応じた校正値を設定する(S103)。
【0033】
そして、測定用の光ファイバから入射される光に対して光スペクトラムの測定を実行する(S104)。この際に、校正部123が設定した校正値を用いて校正処理を行なう。測定は複数回繰り返して、平均値を算出するようにしてもよい。
【0034】
測定が終了すると、測定結果、解析結果等を出力・表示部130から出力する(S105)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の光スペクトラム測定装置100は、分岐側を光コネクタに接続し、バンドル側をモノクロメータ110に接続したバンドル光ファイバ160を用いているため、簡易な構成で、コスト高を招くことなく複数の異なる種類の光ファイバを用いた測定を実現することができる。
【0036】
なお、上記の実施形態では、回折格子113を回転させることで、光スペクトラム測定を行なうモノクロメータ110を用いた例を説明したが、本発明は、回折格子113を固定し、アレイ状に並べたフォトダイオードで受光することにより光スペクトラム測定を行なうポリクロメータを用いてもよい。
【0037】
図6は、ポリクロメータの構成を示す図である。図2に示したモノクロメータ110と同じ構成部位については同じ符号を付している。本図に示すように、ポリクロメータ170は、2つの放物面鏡(コリメーティングミラー111、フォーカシングミラー112)と、回折格子(グレーティング)113と、アレイ状に並べたフォトダイオード116とを備えている。ポリクロメータ170では、回折格子113は、スペクトラム測定時に回転させずに固定とする。このため、測定制御部121によるスペクトラム測定時の回転制御は不要である。
【0038】
ポリクロメータ170において、バンドル光ファイバ160のバンドル側の端面161から入射した光は、コリメーティングミラー111で平行光線となり、回折格子113に導かれる。回折格子113で回折された光は、フォーカシングミラー112によって、アレイ状に並べたフォトダイオード116のいずれかの位置でスペクトルを結像する。結像する位置は、回折格子113における回折角度、すなわち、波長に応じるため、アレイ状に並べたフォトダイオードのそれぞれの受光強度を測定することで、光スペクトラムを取得することができる。
【符号の説明】
【0039】
100…光スペクトラム測定装置
110…モノクロメータ
111…コリメーティングミラー
112…フォーカシングミラー
113…回折格子
114…出射スリット
115…フォトダイオード
116…アレイ状に並べたフォトダイオード
120…制御部
121…測定制御部
122…信号処理部
123…校正部
130…出力・表示部
140…操作受付部
150…入力光コネクタ部
151…センサ
160…バンドル光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光バンドパスフィルタの中心波長を変化させ、被測定光の光スペクトラムを測定する光スペクトラム測定装置であって、
異なる種類の光ファイバに対応した複数個の光コネクタと、
分岐側の各光ファイバが前記複数個の光コネクタとそれぞれ接続し、バンドル側が前記光バンドパスフィルタの光入力端に接続したバンドル光ファイバと、
を備えたことを特徴とする光スペクトラム測定装置。
【請求項2】
アレイ状に並べた受光素子を備えたポリクロメータにより被測定光の光スペクトラムを測定する光スペクトラム測定装置であって、
異なる種類の光ファイバに対応した複数個の光コネクタと、
分岐側の各光ファイバが前記複数個の光コネクタとそれぞれ接続し、バンドル側が前記ポリクロメータの光入力端に接続したバンドル光ファイバと、
を備えたことを特徴とする光スペクトラム測定装置。
【請求項3】
前記バンドル光ファイバを構成する光ファイバは、接続する光コネクタが対応する種類の光ファイバが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光スペクトラム測定装置。
【請求項4】
前記複数個の光コネクタのうち、被測定光を入射する光ファイバが接続された光コネクタを検出する検出部と、
前記検出された光コネクタが対応する光ファイバの種類に応じた校正処理を行なう校正部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光スペクトラム測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61315(P2013−61315A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201727(P2011−201727)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【Fターム(参考)】