説明

光ディスク装置

【課題】DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別といったような、使用するレーザ光の波長が同じである光ディスクの判別を精度よく行う。
【解決手段】光ピックアップ2の読み取り位置を半径方向に移動させる読取位置移動手段21と、トラッキングエラー信号31のレベルが閾値を超える回数を計数する回数計数手段22と、計数結果に基づいて、2種に種類分けされた光ディスク1の種類を判別するディスク判別手段23とを備えた構成において、レーザ光の波長を、2種の光ディスク1の双方において使用される波長とし、読取位置移動手段21は、読み取り位置を所定距離分だけ移動させ、ディスク判別手段23は、読み取り位置が所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段22の計数結果に基づいて、2種の光ディスク1のうちのどちらであるのかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップの読み取り位置が半径方向に所定距離分だけ移動したときのトラッキングエラー信号のレベル変化の回数に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像音声情報の記録媒体として現在使用されているDVDには、再生専用の光ディスクであるDVD−ROMと、記録が可能な光ディスクであるDVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW、DVD−RAMとがある。また、トラッキングエラー信号の生成には、DVD−ROMの場合と、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RWの場合と、DVD−RAMの場合とで異なる方法が用いられることが多い。このため、DVDレコーダ等のように、DVDに映像音声情報を記録することが可能な装置においては、ローディングされた光ディスクが、上記した多種のDVDのうち、どのDVDであるのかを速やかに判別することが求められている。
【0003】
上記した判別を行う技術のひとつとして、以下に示す技術が提案されている(第1の従来技術とする)。すなわち、この技術では、光ディスクを回転させない状態において、光ピックアップの対物レンズをアップ/ダウンさせるとともに、対物レンズを光ディスクの半径方向にも同時に振動させ、そのときの検出素子(PD)の和信号のレベルとトラッキングエラー信号のレベルとの比率、あるいは、フォーカスエラー信号のレベルとトラッキングエラー信号のレベルとの比率を検出している。そして、検出結果に基づき、ローディングされた光ディスクが、トラックピッチの狭いDVD−RWであるのか、あるいは、トラックピッチの広いDVD−RAMであるのかを判別している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、以下に示す技術が提案されている(第2の従来技術とする)。すなわち、この技術では、フォーカスオン状態において、トラッキング用アクチュエータに振動駆動電圧を印加することにより、レーザビームの照射位置を半径方向に往復移動させている。また、光ピックアップの光源には、CD用の波長である780nmのレーザ光を用いている。そして、レーザビームの照射位置を半径方向に往復移動させつつ、トラッキングエラー信号が閾値を横切る回数を一定時間において計数している。そして、計数結果が所定値より大きいときにはCDと判別し、0となるときではDVDと判別している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−32424号公報
【特許文献2】特開2002−304748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1の従来技術を用いる場合には、以下に示す問題を生じていた。すなわち、検出素子の和信号のレベルとトラッキングエラー信号のレベルとの比率は、反射率のばらつきに影響されにくい値となるが、和信号の信号経路の増幅率のばらつきとトラッキングエラー信号の信号経路の増幅率のばらつきとの双方の影響を受ける(前記2種の信号経路は、一部が共用となることが多いが、共用されない回路部も使用される)。また、フォーカスエラー信号のレベルとトラッキングエラー信号のレベルとの比率も、同様に、反射率のばらつきに影響されにくい値となるが、フォーカスエラー信号の信号経路の増幅率のばらつきとトラッキングエラー信号の信号経路の増幅率のばらつきとの双方の影響を受ける(前記2種の信号経路は、一部が共用となることが多いが、共用されない回路部も使用される)。つまり、上記した比率は、一方の信号経路の増幅率のばらつきと、他方の信号経路の増幅率のばらつきとを掛け合わせた範囲のように、かなり広い範囲にばらつくことになる。従って、前記比率は精度の低いものとなりやすいので、判別の精度が低下するという問題を生じる。
【0006】
また、第2の従来技術を用いる場合には、以下に示す問題を生じていた。すなわち、前記技術は、光ピックアップの光源に、CD用の光源である780nmのレーザ光を用いると、光ディスクがCDであるときには、波長が適合するため、レーザビームがトラックを横切る毎に、トラッキングエラー信号に大きなレベル変化が現れ、閾値を横切ることになるが、光ディスクがDVDであるときには、波長が適合しないので、レーザビームがトラックを横切るときにも、トラッキングエラー信号には大きなレベル変化が現れず、閾値を横切らないことを利用した技術となっている。このため、例えば、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別といったように、使用するレーザ光の波長が同じなために、双方において、トラッキングエラー信号に大きなレベル変化が現れ、閾値を横切ることになるような場合では、適用することが困難な技術となっている。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するため創案されたものであり、その目的は、使用するレーザ光の波長が同じであるDVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別を精度よく行うことのでき、且つ、所定幅に変化する駆動電圧でもってトラッキング用アクチュエータを駆動したときの読み取り位置の移動距離のばらつきを少なくすることのでき、且つ、読み取り位置の移動距離の精度を高めることのできる光ディスク装置を提供することにある。
【0008】
また本発明の目的は、光ピックアップの読み取り位置が半径方向に所定距離分だけ移動する期間にトラッキングエラー信号のレベルが閾値を超える回数に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別することにより、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別といったような、使用するレーザ光の波長が同じである光ディスクの判別を精度よく行うことのできる光ディスク装置を提供することにある。
【0009】
また、上記目的に加え、読み取り位置を半径方向に移動させるときには、トラッキング用アクチュエータを駆動しないときの読み取り位置に対して、内周側と外周側との双方に読み取り位置を移動させて、トラッキング用アクチュエータの内周方向に対する感度と外周方向に対する感度とを平均化することで、所定幅に変化する駆動電圧でもってトラッキング用アクチュエータを駆動したときの読み取り位置の移動距離のばらつきを少なくすることのできる光ディスク装置を提供することにある。
【0010】
また、上記目的に加え、読み取り位置を半径方向に移動させるときには、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させて、読み取り位置の移動におけるオーバーシュートや振動の発生を防止することにより、読み取り位置の移動距離の精度を高めることのできる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、所定波長のレーザ光をDVDに照射するとともに、DVDからの反射光を検出する光ピックアップと、光ピックアップの出力からトラッキングエラー信号を生成するRF信号処理手段と、光ピックアップに設けられたトラッキング用アクチュエータを駆動することにより光ピックアップの読み取り位置をDVDの半径方向に移動させる読取位置移動手段と、トラッキングエラー信号のレベルが閾値を超える回数を計数する回数計数手段と、読み取り位置をDVDの半径方向に移動させたときの回数計数手段の計数結果に基づいて、DVD−RAMとDVD−RAMとは異なるDVDとのうち、どちらのDVDであるのかを判別するディスク判別手段とを備えた光ディスク装置に適用している。そして、前記所定波長をDVDに使用されるレーザ光の波長とし、読取位置移動手段は、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させることによって光ピックアップの読み取り位置をDVDの半径方向において所定距離分だけ移動させ、且つ、読取位置移動手段は、読み取り位置を前記所定距離分だけ移動させるときには、読み取り位置を、トラッキング用アクチュエータを駆動しないときの読み取り位置より内周側と外周側との双方に移動させ、ディスク判別手段は、読み取り位置がDVDの半径方向において前記所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果に基づいて、DVD−RAMとDVD−RAMとは異なるDVDとのうち、どちらのDVDであるのかを判別する。
【0012】
すなわち、読み取り位置が光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果は、トラックピッチが異なるために、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとでは異なる値となる。また、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させるときでは、読み取り位置のオーバーシュートや振動は発生しない。また、トラッキング用アクチュエータの内周方向に対する感度と外周方向に対する感度とが平均化される。
【0013】
また本発明に係る光ディスク装置は、所定波長のレーザ光を光ディスクに照射するとともに、光ディスクからの反射光を検出する光ピックアップと、光ピックアップの出力からトラッキングエラー信号を生成するRF信号処理手段と、光ピックアップに設けられたトラッキング用アクチュエータを駆動することにより光ピックアップの読み取り位置を光ディスクの半径方向に移動させる読取位置移動手段と、トラッキングエラー信号のレベルが閾値を超える回数を計数する回数計数手段と、読み取り位置を光ディスクの半径方向に移動させたときの回数計数手段の計数結果に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別するディスク判別手段とを備えた光ディスク装置に適用している。そして、前記所定波長を、前記2種に種類分けされた光ディスクの双方の種類において使用されるレーザ光の波長とし、読取位置移動手段は、読み取り位置を、光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動させ、ディスク判別手段は、読み取り位置が光ディスクの半径方向において前記所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別する。
【0014】
すなわち、2種の光ディスクの種類分けを、トラックピッチの差異に基づく種類分けとすると、読み取り位置が光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果は、2種の種類の一方と他方とで異なる値となる。
【0015】
また、上記構成に加え、読取位置移動手段は、読み取り位置を、トラッキング用アクチュエータを駆動しないときの読み取り位置に対して、内周側と外周側との双方に移動させる。すなわち、トラッキング用アクチュエータの内周方向に対する感度と外周方向に対する感度とが平均化される。
【0016】
また、上記構成に加え、読取位置移動手段は、読み取り位置を半径方向に移動させるときには、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させる。すなわち、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させるときでは、読み取り位置のオーバーシュートや振動は発生しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、読み取り位置が光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果は、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとでは異なる値となる。また、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させるときでは、読み取り位置のオーバーシュートや振動は発生しない。また、トラッキング用アクチュエータの内周方向に対する感度と外周方向に対する感度とが平均化される。このため、使用するレーザ光の波長が同じであるDVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別を精度よく行うことができ、且つ、所定幅に変化する駆動電圧でもってトラッキング用アクチュエータを駆動したときの読み取り位置の移動距離のばらつきを少なくすることができ、且つ、読み取り位置の移動距離の精度を高めることができる。
【0018】
また本発明によれば、2種の光ディスクの種類分けを、トラックピッチの差異に基づく種類分けとすると、読み取り位置が光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果は、2種の種類の一方と他方とで異なる値となる。このため、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別といったような、使用するレーザ光の波長が同じである光ディスクの判別を精度よく行うことができる。また、トラックオンする以前に光ディスクの種類を判別できるので、再生画像をテレビ受像機に表示するまでに要する時間を短くすることができる。
【0019】
また、さらに、トラッキング用アクチュエータの内周方向に対する感度と外周方向に対する感度とが平均化されるので、所定幅に変化する駆動電圧でもってトラッキング用アクチュエータを駆動したときの読み取り位置の移動距離のばらつきを少なくすることができる。
【0020】
また、さらに、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させるときでは、読み取り位置のオーバーシュートや振動は発生しないので、読み取り位置の移動距離の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る光ディスク装置の一実施形態であるDVDレコーダの電気的構成を示すブロック線図であり、光ピックアップに関連する部分を示している。
【0023】
図において、光ピックアップ2は、スピンドルモータ6によって回転駆動される光ディスク(CD、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW、および、DVD−RAM)1に、光ディスク1に対応した波長のレーザ光を照射するとともに、光ディスク1からの反射光を検出する。このため、トラッキング用アクチュエータ11、フォーカス用アクチュエータ12、受光素子13、DVD用レーザダイオード14、CD用レーザダイオード15を備えている。
【0024】
トラッキング用アクチュエータ11は、レーザ光の焦点位置を光ディスク1の半径方向に移動させ、フォーカス用アクチュエータ12は、レーザ光の焦点位置を、対物レンズ(図示を省略)の光軸方向に移動させる。受光素子13は、光ディスク1からの反射光を検出する(後に詳述する)。DVD用レーザダイオード14は、光ディスク1がDVDであるときに使用する波長(650nm)のレーザ光を出力する。CD用レーザダイオード15は、光ディスク1がCDであるときに使用する波長(780nm)のレーザ光を出力する。
【0025】
RF信号処理手段3は、光ピックアップ2の出力からトラッキングエラー信号31、フォーカスエラー信号32を生成し、サーボ制御手段4とマイクロコンピュータ(以下では、マイコンと称する)5とに出力する。また、RF信号33を生成し、図示されない信号処理のためのブロックに出力する。なお、トラッキングエラー信号31の生成方式については、マイコン5からの指示に従い、DPD(Differential Phase Detection)方式、DPP(Differential Push Pull)方式、PP(Push Pull)方式に切り換える(後に詳述する)。
【0026】
サーボ制御手段4は、トラッキングエラー信号31とフォーカスエラー信号32とに基づき、光ピックアップ2の読み取り位置が、光ディスク1に形成されたトラックを追従するようにサーボ制御する。また、スピンドルモータ6の回転をサーボ制御する。
【0027】
マイコン5は、DVDレコーダとしての主要動作を制御する。すなわち、図示されないリモコン等に再生の指示が入力されたときには、光ディスク1に記録されたデータを再生し、外部に設けられたテレビ受像機等に表示する制御を行う。また、記録の指示が入力されたときには、図示されないチューナ部が受信した番組を光ディスク1に記録する制御を行う。
【0028】
また、マイコン5は、ローディングされ、所定位置に装着された光ディスク1の種類が、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別する。このため、その機能の一部によって、読取位置移動手段21、回数計数手段22、および、ディスク判別手段23を構成する。なお、上記した種類分けは、DVD−RAMと、DVD−RAM以外のDVD(DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW)との2種の種類分けとなっている。
【0029】
読取位置移動手段21は、サーボ制御手段4を介して、光ピックアップ2に設けられたトラッキング用アクチュエータ11を駆動することにより、光ピックアップ2の読み取り位置(レーザ光の焦点位置)を、所定距離分だけ、光ディスク1の半径方向に移動させる。なお、読み取り位置を半径方向に移動させるときでは、トラッキング用アクチュエータ11を駆動しないときの読み取り位置に対して、内周側と外周側との双方に読み取り位置を移動させる。また、読み取り位置を半径方向に移動させるときには、トラッキング用アクチュエータ11を駆動する駆動電圧を滑らかに変化させる(後に詳述する)。
【0030】
回数計数手段22は、トラッキングエラー信号31のレベルが、所定レベルに設定された閾値(読み取り位置がトラックを横切るときに生じるレベル変化の中央値)を超える回数を計数する。ディスク判別手段23は、読み取り位置が光ディスク1の半径方向において所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果に基づいて、現在の光ディスク1が、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別する。
【0031】
図2は、受光素子13とRF信号処理手段3との電気的構成の詳細を示す説明図である。
【0032】
受光素子13は、A、B、C、Dの4つの受光領域に分割された素子42と、トラック方向に対して直角方向に、E、Fの2つの受光領域に分割された素子41と、トラック方向に対して直角方向に、G、Hの2つの受光領域に分割された素子43とを備えている。また、RF信号処理手段3は、演算回路51、DPD回路52、および、スイッチ53を備えている。なお、以下における説明では、受光領域A〜Hのそれぞれの出力を、A〜Hと称する。
【0033】
演算回路51は、「A+B+C+D」なる演算を行い、演算結果をRF信号33として出力する。また、「(A+D)−(B+C)」なる演算を行い、演算結果を、PP方式トラッキングエラー信号として、スイッチ53のa接点に出力する。また、「(A+D)−(B+C)−((E+G)−(F+H))」なる演算を行い、演算結果を、DPP方式トラッキングエラー信号として、スイッチ53のb接点に出力する。また、「(A+C)」なる演算を行うことによって得られた演算結果と、「(B+D)」なる演算を行うことによって得られた演算結果とをDPD回路52に出力する。
【0034】
DPD回路52は、(A+C)の信号の位相と(B+D)の信号の位相との差異を検出し、検出結果をDPD方式トラッキングエラー信号として、スイッチ53のc接点に出力する。スイッチ53は、マイコン5からの指示に従い、D接点より出力するトラッキングエラー信号31を、a接点に導かれたPP方式トラッキングエラー信号、または、b接点に導かれたDPP方式トラッキングエラー信号、または、c接点に導かれたDPD方式トラッキングエラー信号に切り換える。
【0035】
図3は、トラッキング用アクチュエータ11を駆動するときの駆動電圧の変化を示す説明図である。
【0036】
図3(A)におけるレベルCTは、トラッキング用アクチュエータ11を駆動しないときのレベルを示しており、レベル(+150)は、読み取り位置を内周方向に150μm移動させるためのレベルを示している。また、レベル(−150)は、読み取り位置を外周方向に150μm移動させるためのレベルを示している。
【0037】
従って、図3(A)に示したように変化する駆動電圧でもってトラッキング用アクチュエータ11を駆動した場合、光ピックアップ2の読み取り位置は、トラッキング用アクチュエータ11を駆動しないときの読み取り位置(以下では、中央位置と称する)を移動の開始点として、内周方向に向かって150μmだけ移動した後、外周方向に向かって移動を開始する。そして、中央位置から外周側に150μm離れた位置まで移動した後には、内周方向に向かって移動を開始し、中央位置まで移動したとき、移動を停止する。すなわち、読み取り位置は半径方向において600μm移動する。
【0038】
以下に補足的な説明を行うと、トラッキング用アクチュエータ11の感度については、例えば、所定の駆動周波数における駆動電圧と読み取り位置の移動距離との関係として示されている(例えば、駆動周波数が1Hzにおいて、1000mVを印加すると、読み取り位置が1000μm移動する、等)。従って、読み取り位置を中央位置から内周方向または外周方向に150μm移動させるために印加する電圧値については、上記した方法により示される感度に基づいて決定される。
【0039】
図4は、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別を行うときの実施形態の主要動作を示すフローチャートである。必要に応じて同図を参照しつつ、実施形態の動作を説明する。
【0040】
図示されないトレイがオープンされて光ディスク1が入れ換えされた後(ステップS1)、トレイがクローズされ、光ディスク1が回転可能な位置に装着されたことが検出されると(ステップS2)、マイコン5は、サーボ制御手段4によるフォーカシングのサーボ動作を開始させる(このときのレーザ光には、DVD用レーザダイオード14の出力が用いられる。また、光ディスク1の回転は停止状態にある)。サーボ動作が開始されてフォーカスオンになると(ステップS3)、RF信号処理手段3におけるトラッキングエラー信号31の生成方式をPP方式(DPP方式でもよい)に設定する(ステップS4)。
【0041】
トラッキングエラー信号31の生成方式の設定が完了すると、読取位置移動手段21は、トラッキングのサーボ制御をオフとした状態において、図3(A)に示す駆動信号を用いてトラッキング用アクチュエータ11を駆動し、読み取り位置を半径方向に600μmだけ移動させる。また、回数計数手段22は、読取位置移動手段21がトラッキング用アクチュエータ11の駆動を開始したとき(時刻T1)、トラッキングエラー信号31のレベルが閾値を超える回数の計数を開始する。そして、トラッキング用アクチュエータ11の駆動が終了したとき(時刻T2)、計数を終了するとともに、計数結果をディスク判別手段23に出力する(ステップS5)。
【0042】
装着された光ディスク1は、DVD−RAM、または、DVD−RAM以外のDVDのどちらかであるとする。また、光ピックアップ2から照射されるレーザ光の波長は、DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDの双方に共通して使用される波長となっている。このため、読取位置移動手段21が読み取り位置を半径方向に移動させたときでは、光ディスク1がDVD−RAMである場合と、DVD−RAM以外のDVDとなる場合との双方において、トラッキングエラー信号31には充分な振幅のレベル変化が現れる。
【0043】
図6(A)は、光ディスク1がDVD−RAMであるときのトラッキングエラー信号31のレベル変化を示しており、図6(B)は、光ディスク1がDVD−RAM以外のDVDであるときのレベル変化を示している。すなわち、光ディスク1がDVD−RAMであるときと、DVD−RAM以外のDVDであるときとの双方において、トラッキングエラー信号31には、読み取り位置がトラックを横切る毎に、閾値Thを横切るレベル変化が現れる。
【0044】
一方、DVD−RAMのトラックピッチは、図5(A)に示したように、1.23μmとなっており、DVD−RAM以外のDVDのトラックピッチは、0.74μmとなっている。従って、光ディスク1がDVD−RAMである場合に、読み取り位置が半径方向において600μmを移動すると、横切るトラック数N1は、
N1=600/1.23≒488[本]
となる。また、光ディスク1がDVD−RAM以外のDVDである場合に、読み取り位置が半径方向において600μmを移動すると、横切るトラック数N2は、
N2=600/0.74≒811[本]
となる。このため、ディスク判別手段23は、回数計数手段22における計数結果が650(488と811との間の中央値の近傍のその他の値とすることができる)を超えるかどうかを調べる(ステップS6)。
【0045】
計数結果が650以下となるときには、光ディスク1はDVD−RAMであると判別する。そして、このときでは、トラッキングエラー信号31の生成方式は、DVD−RAMに適合するPP方式となっているため、光ディスク1の回転を開始するとともに、サーボ制御手段4によるトラッキングサーボの制御を開始する(ステップS7〜S9)。そして後、残された初期設定の動作を行う(ステップS10)。
【0046】
一方、計数結果が650を超えるときには、光ディスク1はDVD−RAM以外のDVDであると判別する。そして、このときでは、トラッキングエラー信号31の生成方式を、DVD−RAM以外のDVDのうち、DVD−ROMを除くDVDに適合するDPP方式に設定する(ステップS7,S15)。次いで、光ディスク1の回転を開始するとともに、サーボ制御手段4によるトラッキングサーボの制御を開始して、トラックオンを行う(ステップS16,S17)。
【0047】
そして後、ディスクの種類を示す情報を読み取り、光ディスク1がDVD−ROMであるかどうかを調べる。そして、光ディスク1がDVD−ROMとは異なるDVD(DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW)であるときには、トラッキングエラー信号31の生成方式(DPP方式)は、現在装着された光ディスク1に適合する方式であるため、トラッキングエラー信号31の生成方式を変更することなく、残された初期設定の動作を行う(ステップS18,S10)。
【0048】
一方、ステップS18の判別において、光ディスク1がDVD−ROMであったときには、トラッキングエラー信号31の生成方式を、DVD−ROMに適合するDPD方式に変更した後(ステップS19)、残された初期設定の動作を行う(ステップS10)。
【0049】
以下に補足的な説明を行うと、読み取り位置を半径方向に移動させるときに、トラッキング用アクチュエータ11に印加する駆動電圧のレベル変化を、図3(B)に示したように、矩形状に変化させるときでは、駆動電圧を印加した瞬間(時刻T3)には、トラッキング用アクチュエータ11には、急激に強い力が発生する。従って、トラッキング用アクチュエータ11によって駆動される対物レンズには強い力が加わる。その結果、駆動電圧のレベルを変化させて、読み取り位置の移動方向を転換させた瞬間(時刻T4)には、読み取り位置にオーバーシュートが生じる恐れがある。また、時刻T5においては、駆動信号の急激なレベル変化のために、読み取り位置が振動する恐れがある。そして、読み取り位置のオーバーシュートや振動が生じたときでは、読み取り位置の移動距離が長くなる。その結果、横切るトラック数が多くなって、計数結果の精度が低下する。
【0050】
一方、本実施形態では、読み取り位置を半径方向に移動させるためにトラッキング用アクチュエータ11に印加する駆動電圧は、レベル変化が滑らかな三角波となっている。従って、読み取り位置のオーバーシュートや振動は発生しない。このため、読み取り位置の移動距離の精度の低下が防止されるので、計数結果を精度のよい値とすることができる。従って、判別精度の低下が防止される。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、読み取り位置の半径方向の移動距離については、その他の距離を移動させる構成(例えば、内周方向と外周方向とのそれぞれに100μm、あるいは、200μmを移動させる構成、等)とすることができる。
【0052】
また、判別対象とする2種の光ディスクについては、DVD−RAMと、DVD−RAM以外のDVDとした場合について説明したが、2種に種類分けされた光ディスクの互いの関係が、トラックピッチは異なるが、使用するレーザ光の波長が同じとなる場合では、同様に適用することができる。
【0053】
また、DVD−RAM以外のDVDについては、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RWとした場合について説明したが、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RWのうちの任意のDVDの組み合わせ(例えば、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RWからなる組み合わせ、等)とするときにも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る光ディスク装置の一実施形態であるDVDレコーダの電気的構成を示すブロック線図である。
【図2】受光素子とRF信号処理手段との電気的構成の詳細を示す説明図である。
【図3】トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧の変化を示す説明図である。
【図4】DVD−RAMとDVD−RAM以外のDVDとの判別を行うときの実施形態の主要動作を示すフローチャートである。
【図5】トラックピッチを示す説明図である。
【図6】読み取り位置を半径方向に移動させたときのトラッキングエラー信号のレベル変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 光ディスク
2 光ピックアップ
3 RF信号処理手段
11 トラッキング用アクチュエータ
21 読取位置移動手段
22 回数計数手段
23 ディスク判別手段
31 トラッキングエラー信号
32 フォーカスエラー信号
33 RF信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長のレーザ光をDVDに照射するとともに、DVDからの反射光を検出する光ピックアップと、
光ピックアップの出力からトラッキングエラー信号を生成するRF信号処理手段と、
光ピックアップに設けられたトラッキング用アクチュエータを駆動することにより光ピックアップの読み取り位置をDVDの半径方向に移動させる読取位置移動手段と、
トラッキングエラー信号のレベルが閾値を超える回数を計数する回数計数手段と、
読み取り位置をDVDの半径方向に移動させたときの回数計数手段の計数結果に基づいて、DVD−RAMとDVD−RAMとは異なるDVDとのうち、どちらのDVDであるのかを判別するディスク判別手段とを備えた光ディスク装置において、
前記所定波長をDVDに使用されるレーザ光の波長とし、
読取位置移動手段は、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させることによって光ピックアップの読み取り位置をDVDの半径方向において所定距離分だけ移動させ、
且つ、読取位置移動手段は、読み取り位置を前記所定距離分だけ移動させるときには、読み取り位置を、トラッキング用アクチュエータを駆動しないときの読み取り位置より内周側と外周側との双方に移動させ、
ディスク判別手段は、読み取り位置がDVDの半径方向において前記所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果に基づいて、DVD−RAMとDVD−RAMとは異なるDVDとのうち、どちらのDVDであるのかを判別することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
所定波長のレーザ光を光ディスクに照射するとともに、光ディスクからの反射光を検出する光ピックアップと、
光ピックアップの出力からトラッキングエラー信号を生成するRF信号処理手段と、
光ピックアップに設けられたトラッキング用アクチュエータを駆動することにより光ピックアップの読み取り位置を光ディスクの半径方向に移動させる読取位置移動手段と、
トラッキングエラー信号のレベルが閾値を超える回数を計数する回数計数手段と、
読み取り位置を光ディスクの半径方向に移動させたときの回数計数手段の計数結果に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別するディスク判別手段とを備えた光ディスク装置において、
前記所定波長を、前記2種に種類分けされた光ディスクの双方の種類において使用されるレーザ光の波長とし、
読取位置移動手段は、読み取り位置を、光ディスクの半径方向において所定距離分だけ移動させ、
ディスク判別手段は、読み取り位置が光ディスクの半径方向において前記所定距離分だけ移動する期間における回数計数手段の計数結果に基づいて、2種に種類分けされた光ディスクのうち、どちらの種類の光ディスクであるのかを判別することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
読取位置移動手段は、読み取り位置を、トラッキング用アクチュエータを駆動しないときの読み取り位置に対して、内周側と外周側との双方に移動させることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
読取位置移動手段は、読み取り位置を半径方向に移動させるときには、トラッキング用アクチュエータを駆動する駆動電圧を滑らかに変化させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−200398(P2007−200398A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15390(P2006−15390)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】