説明

光ディスク装置

【課題】運搬時や設置時等に衝撃や振動を受け、ディスクトレイのガイド溝とスライダボスとの係合が外ずれてしまった場合であっても、分解、調整及び部品交換等を行うことなく、自動的にもとの状態に復帰させることができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】ディスクトレイと、トラバースシャーシと、トラバースシャーシを昇降させるカムスライダ3と、ディスクトレイとカムスライダ3に駆動力を伝達する駆動歯車11とを有し、ディスクトレイの摺動方向に沿う縦溝部211と、摺動方向と直交する横溝部213と、縦溝部211と横溝部213とを連結する斜行溝部212とを備えており、縦溝部211には分断された開口部230が形成されており、開口部230はディスクトレイが手前に向けて摺動するときに、カムスライダ3のスライダボス31が通過することができる位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録された情報を再生する又は光ディスクに情報を記録する光ディスク装置において、光ディスクを搬入・搬出するディスクトレイの駆動を円滑に行うことができる光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12に従来の光ディスク装置の斜視図を示す。図12に示すように光ディスク装置Dは、ハウジングOhのフロントパネルFpに設けられたスリット状の出入り口Stより、光ディスクを載置したディスクトレイ92を出入りさせる。光ディスクはディスクトレイ92に載置され、ディスクトレイ92が移動することで、光ディスク装置D内部の記録又は再生可能なローディング位置又は光ディスク装置D外部のユーザが光ディスクを交換することができるアンローディング位置に移動される。
【0003】
図13は従来の光ディスク装置の概略平面図であり、図14は従来の光ディスク装置の内部を上方から見た概略構成図である。図14においては、ディスクトレイ自体を省略し、後述のガイド溝921及びトレイラック922のみを図示している。
【0004】
図13、図14に示すように光ディスク装置Dは、メインシャーシ91と、メインシャーシ91に摺動可能に支持されたディスクトレイ92と、メインシャーシ91にディスクトレイ92の摺動方向と直交する方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダ93と、メインシャーシ91に昇降可能に取り付けられたトラバースシャーシ94と、駆動力を出力する駆動モータ98を備える駆動力伝達機構95と、トラバースシャーシ94に摺動可能に取り付けられた光ヘッド96とを有している。
【0005】
ディスクトレイ92には下面にトレイラック922が備えられている。トレイラック922はメインシャーシ91に備えられた駆動歯車911と歯合している。駆動モータ98が回動し、駆動モータ98から出力される駆動力が駆動歯車911に伝達される。駆動歯車911が回転にあわせて、駆動歯車911と歯合しているトレイラック922及びトレイラック922が備えられているディスクトレイ92が摺動する。
【0006】
トラバースシャーシ94はメインシャーシ91に昇降可能に取り付けられている。トラバースシャーシ94はディスクトレイ92が摺動するときは、摺動の邪魔にならないように最も降下した位置に配置されている。ディスクトレイ92がローディング位置に近づくにつれて上昇し、ディスクトレイ92がローディング位置にあるときには、最も上昇した位置に配置されている。トラバースシャーシ94がもっとも上昇した位置にあるときには、トラバースシャーシ94に備えられているターンテーブル971が光ディスクを持ち上げるとともに、メインシャーシ91に備えられているディスククランパ973とで光ディスクを挟着(チャッキング)する。この状態で、ターンテーブル971と接続されているスピンドルモータを駆動することで、光ディスクをしっかりと保持した状態で回転させることができる。
【0007】
メインシャーシ91にはディスクトレイ92の摺動方向と直交する方向に摺動するカムスライダ93が備えられている。カムスライダ93はディスクトレイ92とメインシャーシ91との間に配置されるものであり、駆動歯車911と歯合するカムスライダラック934を有している。
【0008】
カムスライダ93にはクランク状の貫通溝(図示省略)が形成されており、この貫通溝とトラバースシャーシ94の前面に形成されているラックボスが係合している。カムスライダ93が摺動することで、ラックボスがクランク状の貫通溝内を摺動し、トラバースシャーシ94はディスクトレイ92に対して昇降される。カムスライダ93が駆動歯車911に最も近づいたときに、トラバースシャーシ94はディスクトレイ92に最も近づいた位置に上昇する。逆にカムスライダ93が駆動歯車911から最も離れたときに、トラバースシャーシ94はディスクトレイ92に対して最も離れた位置に下降する。トラバースシャーシ94がディスクトレイ92に最も近づいたときには、トラバースシャーシ94に備えられているターンテーブル971が光ディスクを持ち上げ、メインシャーシ91に備えられているディスククランパ973とで挟着(チャッキング)する。
【0009】
ディスクトレイ92がローディング位置にあるときはトレイラック922と駆動歯車911とは歯合していない状態になる。それ以外のときは、トレイラック922は常に駆動歯車911と歯合している。カムスライダ93は駆動歯車911に対して最も近づいたとき又は最も離れたときにカムスライダラック93は駆動歯車911との歯合がはずれる。
【0010】
トラバースシャーシ94はカムスライダ93の摺動によって昇降するものである。また、上述したように、トラバースシャーシ94はディスクトレイ92の摺動を邪魔することなく、ディスクトレイ92がローディング位置に移動したときに、光ディスクをクランプしなくてはならない。そのため、トラバースシャーシ94はディスクトレイ92の摺動にあわせた正確なタイミングで昇降される必要がある。
【0011】
そこで、ディスクトレイ92の下面にガイド溝921が備えられているとともに、カムスライダ93の上面にはガイド溝921と係合するスライダボス931が立設されている。
【0012】
ガイド溝921はディスクトレイ92の摺動方向に伸びる縦溝部9211と、縦溝部92111よりも前面側に配置され一方が閉じた形状の横溝部9213と、縦溝部9211と横溝部9213とを連結する斜行溝部9212とを有している。スライダボス931が縦溝部9211にあるときは、カムスライダ93が駆動歯車911より最も離れた位置にあり、斜行溝部9212に入ると、スライダボス931が押されスライダラック934が歯合する。スライダボス931が横溝部9213にあるときは、トレイラック922と駆動歯車911との歯合が外れる。
【0013】
ディスクトレイ92の底面に形成されているガイド溝921の形状と、カムスライダ93のスライダボス31との係合位置によって、カムスライダ93の位置が決定され、それに伴ってトラバースシャーシ94の昇降のタイミングが調節されている。(特開2005−339703号公報、特開2004−288333号公報、特開平10−199206号公報等参照)
【0014】
特開2006−79690号公報には、第1ボスと第2ボスがカム壁及びギアの逃げ防止壁を挟持した状態で、トレイを駆動するものが記載されている。これは、第1ボスと第2ボスでカム壁及びギアの逃げ防止壁を挟持することで、ギアがラックから外れるのを防止している。
【特許文献1】特開2006−79690号公報
【特許文献2】特開2005−339703号公報
【特許文献3】特開2004−288333号公報
【特許文献4】特開平10−199206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
光ディスク装置Dは厚みが薄くなる傾向にあり、光ディスク装置Dを薄くすることで、各部材の厚みも薄く作らなくてはならず、ディスクトレイ92のガイド溝921の深さも浅くなってきている。ガイド溝921の深さが浅くなることで、ガイド溝921とスライダボス31との係合しろが小さくなる。
【0016】
ガイド溝921とスライダボス931との係合しろが小さくなると、ディスクトレイ92に衝撃や振動(たとえば運搬時の落下や壁面等に接触させたときの衝撃や振動等)が付与された時に、スライダボス931がガイド溝921を容易に乗り越えてしまうことがある。
【0017】
スライダボス931がガイド溝921を乗り越えた状態で光ディスク装置Dの電源が投入されると、カムスライダ93とディスクトレイ92との動作の切り替えが適正なタイミングで行われず、ディスクトレイ92がアンロード位置まで排出されなかったり、ディスクトレイ92、ターンテーブル971、駆動力伝達機構95に無理な力が付与されて、変形したり破壊されてしまったりして光ディスク装置Dが動作しない状態になってしまう場合がある。
【0018】
上述した不具合が発生した光ディスク装置は、分解して部材を組み立てなおしたり、部品を交換したりしなくてはならず、それだけ、余分な手間、時間及び部材等がかかる。
【0019】
そこで本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、運搬時や設置時等に衝撃や振動を受け、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作のタイミングがずれてしまった場合であっても、前記タイミングのずれを検出し、元の状態に復帰させることができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0020】
また本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作タイミングを分解、調整及び部品交換等を行うことなく、光ディスク装置自体が自動的にもとの状態に復帰させることができるので、不良品の発生率を低減することができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0021】
さらに本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作タイミングを初期状態に復帰させることができるようにして、光ディスク装置の製造コストの低減を図ることができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため本発明は、光ディスクを載置し往復摺動して該光ディスクを搬入・搬出するディスクトレイと、前記ディスクトレイにて搬入された光ディスクを挟着又は開放するトラバースシャーシと、前記ディスクトレイの摺動方向と直交する方向に摺動し、前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダと、前記ディスクトレイと前記カムスライダに駆動力を伝達する駆動歯車とを有し、前記ディスクトレイは、前記駆動歯車と歯合し摺動方向に延びるトレイラックと、前記カムスライダに突設された円柱形状のスライダボスが遊嵌するとともに手前側が屈曲したガイド溝とを備えており、前記カムスライダは、前記駆動歯車と歯合するためのカムスライダラックを備えており、前記光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生又は記録を行う光ディスク装置であって、前記ガイド溝は前記ディスクトレイの下面と、前記ガイド溝の屈曲外側に形成される外側ガイドリブと屈曲内側に形成される内側ガイドリブとで形成されるものであり、前記ガイド溝は前記ディスクトレイの摺動方向に沿う縦溝部と、前記摺動方向と直交する横溝部と、前記縦溝部の手前側端部と連結し前記縦溝部と前記横溝部とを連結する斜行溝部とを備えており、前記縦溝部を形成する内側ガイドリブには、前記内側ガイドリブが分断された開口部が形成されており、前記横溝部の前記縦溝部から最も離れた部分より、前記スライダボスの半径とほぼ同じ長さずれた位置の前記内側ガイドリブの前記横溝部と反対側には、前記ディスクトレイの摺動方向に沿って奥向きに延び、前記内側ガイドリブと一体的に形成されるストッパリブが備えられており、前記開口部は前記ディスクトレイが手前に向けて摺動するときに、該ディスクトレイと同時に駆動する前記カムスライダのスライダボスが通過することができる位置に形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によると、運搬時や設置時に光ディスク装置の衝撃、振動等の力が付与し、ディスクトレイのガイド溝とカムスライダのスライダラックとの遊嵌がはずれ、前記ディスクトレイ及び(又は)カムスライダが正常に動作しない状態になった場合でも、組み立てなおしたり、部品を取り替えたりすることなく、正常状態に復帰させることができる。
【0024】
このことにより、メンテナンスの手間と時間を低減することができる。また、動作不良を修正することができるので、不良品の発生率が低減する。さらに、過酷な使用条件で使用され、動作不良が発生した場合であっても修正することが可能であり、より多くの場所で使用することができる光ディスク装置を提供することが可能である。
【0025】
また、特殊な部材や従来に比べて新たな部材を用いないので、部材の設計、試作、製造に必要な、工程、時間を短縮することができ、コストアップを抑制することが可能である。
【0026】
上記構成において、前記開口部の奥側端部は手前に向けて縦溝部より離れるように形成された脱落防止部と、手前側の端部と前記横溝部を形成する内側ガイドリブと接続する引き込み部とを有するようにしてもよい。
【0027】
この構成によると、ディスクトレイのトレイラックが駆動歯車と歯合していない場合であっても、カムスライダの摺動動作によって、スライダボスが引き込み部を押し、ディスクトレイが摺動する。これにより、前記トレイラックが前記駆動歯車と歯合し、ディスクトレイが駆動歯車からの駆動力で摺動される。
【0028】
このことは、トレイラックが形成されている部分が製造誤差や組み付け誤差でずれてしまっている場合であっても、ディスクトレイとカムスライダが正常に動作するように修正することが可能である。これにより、光ディスク装置の不良の発生を低減することができる。
【0029】
また、脱落防止部にてスライダボスがガイド溝に引き込まれるので、カムスライダが十分に移動できず、駆動歯車の駆動力だけではガイド溝に戻れない場合であっても、脱落防止部に押されて戻ることが可能である。また、通常運転時も脱落防止部とスライダボスが強く接触するのを抑制することができるので、ディスクトレイの摺動時の振動や、ぶれの発生を抑制することができる。
【0030】
前記横溝部の前記ディスクトレイ摺動方向の奥側には、手前から奥に向かって前記縦溝部に接近するとともに、手前側の端部が前記ストッパリブよりも前記縦溝部から離れて形成された付勢ガイドリブが形成されていてもよい。
【0031】
この構成によると、カムスライダラックの製造誤差や組み立て誤差等によって、カムスライダが駆動歯車と歯合しない状態になった場合であっても、ディスクトレイが開く方向に移動するときに、スライダボスが付勢ガイドリブと当接し、付勢ガイドリブより縦溝部側に移動させられる。これにより、修正を可能としている。
【0032】
以上説明した光ディスク装置のさらに詳細な例は以下のように説明できる。なお、部材の後ろに括弧で示す符号は、実施形態で示す図面にあわせてつけられた番号であり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。メインシャーシ(1)と、光ディスクを載置し前記メインシャーシ(1)に対して往復摺動して該光ディスクを搬入・搬出するディスクトレイ(2)と、前記メインシャーシ(1)に取り付けられ前記ディスクトレイ(2)に対し昇降し、該ディスクトレイ(2)にて搬入された光ディスクを挟着又は開放するトラバースシャーシ(4)と、前記メインシャーシ(1)に前記ディスクトレイ(2)の摺動方向と直交する方向に摺動可能に取り付けられ、前記トラバースシャーシ(4)を昇降させるカムスライダ(3)と、前記メインシャーシ(1)に回動可能に軸支され、前記ディスクトレイ(2)と前記カムスライダ(3)に駆動力を伝達する駆動歯車(11)とを有し、前記ディスクトレイ(2)は、前記駆動歯車(11)と歯合し摺動方向に延びるトレイラック(22)と、前記カムスライダ(3)に突設された円柱形状のスライダボス(31)が遊嵌するとともに手前側が屈曲したガイド溝(21)とを備えており、前記カムスライダ(31)は、前記駆動歯車(11)と歯合するためのカムスライダラック(34)を備えており、前記光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生又は記録を行う光ディスク装置Aであって、前記ガイド溝(21)は前記ディスクトレイ(2)の下面と、該下面より一体突設された前記ガイド溝(21)の屈曲外側に形成される外側ガイドリブ(23)と屈曲内側に形成される内側ガイドリブ(23)とで形成されるものであり、前記ガイド溝(21)は前記ディスクトレイ(2)の摺動方向に沿う縦溝部(211)と、前記摺動方向と直交する横溝部(213)と、前記縦溝部(211)の手前側端部と連結し前記縦溝部(211)と前記横溝部(213)とを連結する斜行溝部(212)とを備えており、前記縦溝部(211)を形成する前記内側ガイドリブ(231)には、前記内側ガイドリブ(231)が分断された開口部(230)が形成されており、前記開口部(230)の奥側には手前に向けて前記縦溝部より遠ざかるように形成された脱落防止部(261)と、手前側の端部には前記横溝部(213)を形成する内側ガイドリブ(233)と接続する引き込み部(262)とを有しており、前記横溝部(213)の前記縦溝部(211)から最も離れた部分より、前記スライダボス(31)の半径とほぼ同じ長さずれた位置の前記内側ガイドリブ(23)のガイド溝(21)と反対側には、前記ディスクトレイ(2)の摺動方向に沿って奥向きに延び、前記内側ガイドリブ(23)と一体的に形成されたストッパリブ(24)が形成されており、前記横溝部(213)の前記ディスクトレイ摺動方向の奥側には、手前から奥に向かって前記縦溝部(211)に接近するとともに、手前側の端部が前記ストッパリブ(24)よりも前記縦溝部から離れて形成された付勢ガイドリブ(27)が形成されており、前記開口部(230、26)は前記ディスクトレイ(2)が手前に向けて摺動するときに、該ディスクトレイ(2)と同時に駆動する前記カムスライダ(3)のスライダボス(31)が通過することができる位置に形成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、運搬時や設置時等に衝撃や振動を受け、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作のタイミングがずれてしまった場合であっても、前記タイミングのずれを検出し、元の状態に復帰させることができる光ディスク装置を提供することができる。
【0034】
また本発明によると、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作タイミングを分解、調整及び部品交換等を行うことなく、光ディスク装置自体が自動的にもとの状態に復帰させることができるので、不良品の発生率を低減することができる光ディスク装置を提供することができる。
【0035】
さらに本発明によると、簡単な構成で、ディスクトレイとトラバースシャーシの動作タイミングを初期状態に復帰させることができるようにして、光ディスク装置の製造コストの低減を図ることができる光ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1〜図6は本発明にかかる光ディスク装置を示している。図1は光ディスク装置の斜視図であり、図2は上方から見た光ディスク装置の概略構成図を示している。図3は光ディスク装置の内部を上方から見た概略構成図であり、図4は下方から見た光ディスク装置内部の概略構成図である。図5及び図6はそれぞれ図3に示す光ディスク装置の内部をフロントパネル側、側方から見た概略構成図である。なお、便宜上、図3〜図6においては、ディスクトレイ自体を省略し、後述のガイド溝21及びトレイラック22のみを図示している。
【0037】
光ディスク装置Aはローディングされた光ディスクを回転させるとともに、光ディスクの記録層にレーザ光を照射し、データの再生及び(又は)記録を行うものである。図1に示すように光ディスク装置Aはディスクトレイ2が、外装ハウジングOhのフロントパネルFpに設けられたスリット状の出入り口Stから、出入りできるように配置されている。
【0038】
ディスクトレイ1が出入り口Stより光ディスク装置Aの外部に突出している状態で光ディスクを載置し、ディスクトレイ1を背面側に摺動させることで、光ディスクを再生/記録可能な位置に挿入(ローディング)することができる。また、ディスクトレイ1を正面側に摺動させ、出入り口Stより光ディスク装置Aの外部に突出させることで、内部に挿入されていた光ディスクを排出(アンローディング)することができる。
【0039】
図2、図3に示すように光ディスク装置Aは少なくとも、メインシャーシ1、ディスクトレイ2、カムスライダ3、トラバースシャーシ4、駆動力伝達機構5、光ヘッド6、光ディスク駆動機構7とを有している。
【0040】
なお、以下では便宜上、フロントパネルFpが設けられている方向を正面側(F側)、フロント側に対向する方向を背面側(B側)と表現する。また、正面側から背面側に延びる方向に対して直交するとともに平面視右方向を右側(R側)、同様に平面視左方向を左側(L側)とする。
【0041】
図2及び図3に示すように、メインシャーシ1にはディスクトレイ2が摺動可能に支持されているとともに、トラバースシャーシ4が昇降可能に支持されている。メインシャーシ1は駆動歯車11と、カムスライダ3とを備えている。
【0042】
駆動歯車11は駆動力伝達機構7より伝達される駆動力をディスクトレイ2及びカムスライダ3に伝達するための歯車であり、駆動力伝達機構7と接続されている。駆動歯車11はメインシャーシ1の底部に軸支され、ディスクトレイ2及びカムスライダ3と接続されている。
【0043】
ディスクトレイ2はメインシャーシ1に正面側と背面側とを往復摺動するように支持されている。図4に示すようにディスクトレイ2は下面に段階的に屈曲するガイド溝21と、駆動歯車11と歯合し駆動力が伝達されるトレイラック22とを有している。ガイド溝21は後述のカムスライダ3に備えられているスライダボス31と係合するものである。ガイド溝21はディスクトレイ2の下面と、ディスクトレイ2の下面より一体的に突出したガイドリブ23とに3方を囲まれた凹溝である。ガイドリブ23は第1ガイドリブ231、第2ガイドリブ232及び第3ガイドリブ233を有している。
【0044】
ガイド溝21はディスクトレイ2の摺動方向(正面側と背面側を結ぶ線に沿う方向)に延びる第1ガイドリブ231に囲まれた縦溝部211と、第1ガイドリブ231の正面側端部と連結し、第1ガイドリブ231に対して所定の角度で右側に屈曲するように形成された第2ガイドリブ232に囲まれた斜行溝部212と、第2ガイドリブ232の第1ガイドリブ231との連結部と反対側に連結し縦溝部211に対して右側に直交するように延設された第3ガイドリブ233に囲まれた横溝部213とを有している。
【0045】
第1ガイドリブ231のディスクトレイ2の右側に配置されるものの一部には、ディスクトレイ2の下面より突出しない、換言すると、凹形状に切りかかれた開口部230が形成されている。横溝部213を形成しているガイドリブ23の最も右側(最も奥)の部分は、ガイドリブ23を閉じる閉鎖部234が形成されている。
【0046】
また、横溝部213の外側には第3ガイドリブ233に連設され、第3ガイドリブ233を補強するためのストッパリブ24が形成されている。ストッパリブ24はディスクトレイ2と直交するように配置されており、ディスクトレイ2に近づくに従って広がる形状を有している。ストッパリブ24は閉鎖部234からスライダボス31の半径だけ左側に離れた部分よりも、右側(閉鎖部234側)に形成されている。
【0047】
カムスライダ3は、ディスクトレイ2の下面に形成されたガイド溝21に係合するスライダボス31(図3、5等参照)と、後述の光ヘッド6のサブラック622に設けられたラックボス623と係合するトリガーガイド32と、トラバースシャーシ4の後述する摺動ボス42と係合するカム溝33(図5参照)と、駆動歯車11と歯合するカムスライダラック34とを有している。カムスライダ3は、メインシャーシ1のフロント側に配置されており、ディスクトレイ2の移動方向に対して直交する方向(左右方向)に摺動する。また、カムスライダ3は最も右側に移動したときにストッパ(図示省略)にて左側への移動を規制されている。
【0048】
スライダボス31とガイド溝21との係合しろは小さく(それには限定されないが、たとえば、ガイド溝21の深さ約5mm、スライダボス31の高さ約5mmで係合しろが2mm〜3mmのもの)形成されている。これは、光ディスク装置Aの厚さを薄くするためと、ディスクトレイ2とカムスライダ3とが接触しないようにするためである。
【0049】
トリガーガイド32はカムスライダ3の摺動方向に対して斜めに形成された斜行部321と、摺動方向と平行に延びるサイド部322とを有している。トラバースシャーシ4が待機位置に移動するために光ヘッド6が正面側に移動すると、ラックボス623とトリガーガイド32とが係合する。
【0050】
また、カム溝33は、上側カム溝331と下側カム溝332とを有しており、上側カム溝331と下側カム溝332とを連結する傾斜カム溝333とを有している。カム溝33には、トラバースシャーシ4の摺動ボス42が貫通されている。
【0051】
図3に示すようにトラバースシャーシ4には、駆動力伝達機構5、光ヘッド6及び光ディスク駆動機構7が備えられている。トラバースシャーシ4は、背面側に備えられている回転軸がメインシャーシ1に回動可能に支持されており、回転軸を中心に回動することでディスクトレイ2に対して昇降する。フローティングゴム、ボス及び取付孔を利用し、ボスと取付孔との隙間を利用してメインシャーシ1に対してトラバースシャーシ4が昇降可能に取り付けられるものであってもよい。
【0052】
トラバースシャーシ4は回転軸を支点として回転移動が可能である。データの再生又は記録を行う場合には、上昇して光ディスクを挟持する位置(チャッキングする、チャッキング位置)に移動する。また、光ディスクを排出する場合には、トラバースシャーシ4は下降し、光ディスクがディスクトレイ1に載置される位置(光ディスクと後述のターンテーブルが離れている、待機位置)に移動する。
【0053】
駆動力伝達機構5は、第1歯車51、第2歯車52、第3歯車53及び駆動モータ54を有している。各歯車はトラバースシャーシ4に回動可能に軸支持されている。駆動力伝達機構5は駆動モータ54より出力される駆動力を、ディスクトレイ2の往復摺動、光ヘッド5の往復摺動及びカムスライダ3の摺動及びトラバースシャーシ4の昇降のために伝達するものである。駆動モータ54の出力軸541にはウォームギア542が取り付けられている。
【0054】
第1歯車51は、駆動モータ54のウォームギア542と歯合し、駆動力が伝達される第1大歯車511と、下部(メインシャーシ1に近い方)に設けられ、第2歯車52と歯合する第1小歯車512と、さらに下部に光ヘッド6のラック62に駆動力を伝達する第1ピニオンギア513とを有している。すなわち、第1大歯車511が上方に、第1小歯車512が下方にさらに下方に第1ピニオンギア513が同一中心軸を有するように一体で形成されている。第2歯車52は、第3歯車53と歯合し、第3歯車53は駆動歯車11と歯合している。第2歯車52及び第3歯車53は第1小歯車512から駆動歯車11に駆動力を伝達するための歯車であり、トラバースシャーシ4上に回動可能に軸支されている。本実施例で用いられる、駆動力伝達機構5は異なる3軸の歯車を備えているものであるが、3個に限定されるものではなく、駆動モータ54より出力される駆動力を駆動歯車11に伝達できるものを広く採用することができる。
【0055】
光ヘッド6は光ディスクにレーザ光を照射してデータを読出し又は記録するものであり、光ディスクに対してレーザ光を照射する対物レンズ61と、駆動力伝達機構5より駆動力が伝達されるラック62とを備えている。また、図示を省略しているが、レーザ光を出射するレーザ光源、光ディスクで反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子等の光学部品が配置されている。トラバースシャーシ4には、スイッチが配置されている。光ヘッド6が最も前面側に移動したときに、スイッチは押され、背面側に移動したときにスイッチは開放される。
【0056】
ラック62は下部に光ヘッド6に一体的に形成されるメインラック621と、メインラック621と重なるように上部に配置されるサブラック622とを有している。つまり、ラック62はメインラック621とサブラック622が重なったダブルラックとなっている。
【0057】
メインラック621は第1歯車51の第1ピニオンギア513と歯合している。第1ピニオンギア513からメインラック621に駆動力が伝達されることで光ヘッド6の摺動を行う。また、サブラック622はメインラック621に対してスライド可能に取り付けられている。メインラック621とサブラック622はコイルばね(図示省略)にて、各ラックのギア歯が平面視でずれるように付勢されている。メインラック621とサブラック622のギア歯が上述のとおりずれるように付勢されることで、第1ピニオンギア513のギア歯を挟み、第1ピニオンギア513とメインラッ621及びサブラック622とのギア歯の遊びによるバックラッシュを取り除くことができる。
【0058】
ラック62では、サブラック622のギア歯が形成されている部分がメインラック621のギア歯が形成されている部分よりも長い。サブラック622のギア歯が形成されている部分がメインラック621のギア歯が形成されている部分よりも背面側に長くなるように重ねて配置されている。これにより、光ヘッド6の位置によっては、メインラック621とサブラック622とが第1ピニオンギア513と歯合している状態、サブラック622のみが第1ピニオンギア513と歯合している状態及びメインラック621、サブラック622いずれもが第1ピニオンギア513と歯合しない状態を取り得る。
【0059】
また、サブラック622のフロント側の先端には、カムスライダ3のトリガーガイド32と摺動可能に係合するラックボス623と、ギア歯が形成されているのと反対側に形成されトラバースシャーシ4が待機位置にあるときに、メインシャーシ1に形成された係止部と係合するための突出部とが形成されている。ラックボス623はディスクトレイ1方向に立設されている。
【0060】
トラバースシャーシ4は、カムスライダ3のカム溝33に係合する摺動ボス42を有しており、カムスライダ3の移動に連動して、摺動ボス42はカム溝33内を摺動され、トラバースシャーシ4は昇降される。すなわち、カムスライダ3が摺動させ、摺動ボス42が上側カム溝331を貫通するように移動するとトラバースシャーシ4は上昇し、下側カム溝332を貫通するように移動するとトラバースシャーシ4は下降する。
【0061】
係止部はメインシャーシ1の底部より突出しており、左右方向に伸びる直方体形状を有している。トラバースシャーシ4が昇降するときは、光ヘッド6は最も正面側に配置されている。この状態で、トラバースシャーシ4が待機位置に移動するときは、サブラック622に形成されている突出部が係止部と係合され、光ヘッド6の背面側への動きが規制される。また、トラバースシャーシ4が上昇しチャッキング位置に移動すると、係止部と突出部との係合がはずれ、光ヘッド6は背面側に移動可能になる。
【0062】
光ディスク駆動機構7は光ディスクを支持するためのターンテーブル71と、ターンテーブル71を駆動するためのスピンドルモータ72と、メインシャーシ1に設けられたクランプ73とを有している。トラバースシャーシ4が上昇することで、ターンテーブル71は光ディスクの中央に形成されている貫通孔を貫通するとともに光ディスクを持ち上げる。このとき、クランプ73には図示を省略した永久磁石が、ターンテーブル71には磁力を受ける図示を省略したヨークとを有しており、磁力にて互いに引き合って、光ディスクを強固に挟着(チャッキング)する。スピンドルモータ72はチャッキングされた光ディスクを回転させるモータである。
【0063】
<光ヘッドの移動について>
本発明の光ディスク装置Aにおける光ヘッド6の移動について説明する。例えば、DVD等の光ディスクの再生等を終了し、光ディスクを光ディスク装置Aから取り出す(アンロード)場合、すなわち、ディスクトレイ2をオープンさせる場合を考える。トラバースシャーシ4が移動するとは、光ヘッド6は光ディスクに対して最も内周側(光ディスク装置のフロント側)に退避する。
【0064】
駆動モータ54がウォームギア542が歯合する第1大歯車511をA1方向に回転させるように駆動される。第1大歯車511と連なっている(連設されている)第1ピニオンギア513もA1方向に回転し、この第1ピニオンギア513と歯合するラック62(メインラック621、サブラック622)がB1方向に移動する。ラック62の移動にあわせて、ラック62を備えている光ヘッド6もB1方向に移動する。
【0065】
ウォームギア542と第1大歯車511、第1小歯車512と第2歯車52、第2歯車52と第3歯車53及び第3歯車53と駆動歯車11とは常時歯合しており、駆動歯車11には常に駆動モータ54からの駆動力が伝達され、駆動歯車11はD1方向に回転している。このとき、カムスライダ3は図示を省略したストッパにて左右方向の移動は規制されている。このとき、カムスライダラック34は駆動歯車11と歯合しておらず、カムスライダ3は停止している。
【0066】
<光ディスクの駆動からトラバースユニットの移動の切り替えについて>
光ヘッド6が光ディスクの内周側(フロント側)の所定の位置に到達すると、ラック62のメインラック621と第1小歯車512との歯合は外れ、サブラック622と第1小歯車512とが歯合している状態になる。この状態でさらに駆動モータ54を駆動すると、サブラック622のみがフロント側に移動する。
【0067】
サブラック622に立設されたラックボス623がトリガーガイド32に係合され、サブラック622が移動することで、トリガーガイド32の斜行部321を押す。これにより、カムスライダ3が移動しカムスライダラック34と駆動歯車11が歯合し、駆動歯車11の駆動力がカムスライダラック34伝達され、カムスライダ3がC1方向移動する。
【0068】
カムスライダ3が移動することで、ラックボス623がトリガーガイド32の斜行部321に押されてサブラック622は正面側に移動し、サブラック622と第1ピニオンギア513との歯合が外れる。さらにカムスライダ3が移動すると、ラックボス623はサイド部322に移動し、サブラック622の背面側方向への移動を規制する。すなわち、メインラック621と第1ピニオンギア513との歯合が外れ、そのあとでサブラック622がさらに正面側(光ディスクの内周側)に移動し、カムスライダ3が動作開始するとともに、サブラック622と第1ピニオンギア513との歯合が外れ、光ヘッド6は完全に停止する。
【0069】
<トラバースユニットの待機位置への移動(降下)について>
駆動歯車11とカムスライダラック34とが歯合することで、駆動力がカムスライダラック3に伝達される。これにより、カムスライダ3は駆動歯車11から遠ざかる方向(C1方向)に移動する。
【0070】
カムスライダ3のカム溝33にはトラバースシャーシ4の摺動ボス42が貫通しており、カムスライダ3の移動に連動して、摺動ボス42が上側カム溝331、傾斜カム溝333、下側カム溝332の順で移動する。摺動ボス42の移動に伴って、トラバースシャーシ4がE1方向へ降下する。その結果、トラバースシャーシ4が降下する。このとき、光ヘッド6のサブラック622はトラバースシャーシ4のフロント側端部より突出している。
【0071】
カムスライダ3が駆動歯車11より伝達された駆動力で移動し始めたとき、サブラック622に形成されたラックボス623はトリガーガイド32のサイド部322に係合されている。カムスライダ3が移動し、トラバースシャーシ4が降下すると、ラックボス623とトリガーガイド32のサイド部322との係合は外れる。しかしながら、トラバースシャーシ4が降下するときに、サブラック622に形成されている突出部が、メインシャーシ1の底面より突出する係止部と係合して、サブラック622及び光ヘッド6の背面方向への移動を制限する。
【0072】
<トラバースユニットの移動からディスクトレイの移動への切り替えについて>
カムスライダ3のスライダボス31はトラバースシャーシ4が待機位置へ移動するまでの間、ガイド溝21の横溝部213と係合し、カムスライダ3のC1方向への移動にあわせて、横溝部213内をC1方向へ移動する。トラバースシャーシ4が待機位置に移動したのと略同時に、スライダボス31はガイド溝21の横溝部213と斜行溝部212との接続部へ到達する。トラバースシャーシ4が待機位置まで降下した後も、カムスライダ3は、下側カム溝332の端部が摺動ボス42と接近又は接触するまで、C1方向にスライドする。
【0073】
カムスライダ3の移動によって、スライダボス31がガイド溝21の斜行溝部212を押す。斜行溝部212が押されると、ディスクトレイ2はF1方向(前面方向)に移動する。ディスクトレイ2がスライダボス31に押されてF1方向に移動すると、トレイラック22も同時に移動し、駆動歯車11と歯合する。トレイラック22と駆動歯車11が歯合すると同時に、カムスライダ3のカムスライダラック34と駆動歯車11との歯合が外れる。
【0074】
<ディスクトレイの移動(トレイオープン)について(図13参照)>
トレイラック22と駆動歯車11とが歯合すると、駆動歯車11のD1方向の回転に伴い、トレイラック12もF1方向に移動する。すなわち、ディスクトレイ2が正面側へと移動し、フロントパネルFpのスリット状の出入り口Stからディスクトレイ2が排出される。このとき、カムスライダ3のスライダボス31はガイド溝21の縦溝部211と係合しており、カムスライダ3のサイド方向の移動を制限している。
【0075】
以上のように、ディスク装置Aでは1つの駆動モータ54の回転によって、ディスクトレイ2、トラバースシャーシ4、光ヘッド6を動作させることが可能になっている。なお、上記例では、ディスクトレイ2のオープン、トラバースシャーシ4の降下及び光ヘッド6の光ディスクの内周側への移動に係る一連の動作について説明したが、駆動モータ54を上記とは逆方向に回転させることで、各部分は上記A1〜F1方向とは逆方向に回転又は移動する。これにより、ディスクトレイ2のクローズ、トラバースシャーシ4の上昇、光ヘッド6の光ディスクの外周側への移動にかかる動作も可能となっている。
【0076】
次に運搬時や設置時等に衝撃や振動が付与されて、ガイド溝とスライダボスとの係合が外れた場合の動作について説明する。図7、図8、図9に図2に示す光ディスク装置のスライダボスがガイド溝から外れた状態からスライダボスがガイド溝に戻る工程の概略図を示す。図7、図8、図9にはディスクトレイ2、カムスライダ3及び駆動歯車11とが示されており、便宜上ディスクトレイ2はディスクトレイ自体を省略し、後述のガイド溝21及びトレイラック22のみを図示している。
【0077】
光ディスク装置Aは運搬、設置等で移動するときには、通常、ディスクトレイ2はメインシャーシ1ないに収納された状態(図2等参照)の状態で行われる。光ディスク装置Aには図示を省略したストッパが備えられており、ディスクトレイ2がさらに背面側に移動するのを抑制している。このとき、光ディスク装置Aの外部から衝撃及び(又は)振動等が加えられると、ディスクトレイ2は正面側に付勢され図7に示すように、スライダボス31が第3ガイドリブ233を背面側に乗り越える。
【0078】
ディスクトレイ2が最も背面側にある(光ディスク装置Aに収納されている)ときは、スライドラック3は最も右側に移動している。このときカムスライダ3は図示を省略した停止部材と当接しており、カムスライダ3はこれ以上右側に移動しない。この状態でスライダボス31が第3ガイドリブ233を乗り越えると(図7参照)、スライダボス31は第3ガイドリブ233の横溝部213の外側に形成されたストッパリブ24と当接する。カムスライダ3はこれ以上右側に移動することはないので、スライダボス31がストッパリブ24に押され、カムスライダ3は左側に移動した状態で停止する。このとき、カムスライダラック34が駆動歯車11と歯合されている。
【0079】
また、スライダボス31が第3ガイドリブ233を背面側に乗り越えるので、ディスクトレイ2はスライダボス31に押され、正面側に移動した状態で停止している。このとき、ディスクトレイ2のトレイラック22が駆動歯車11と歯合されている。
【0080】
この状態で、光ディスク装置Aに電源が投入されると、駆動モータ54は光ヘッド6が背面側に移動する方向に回転される。スライダボス31がストッパリブ234に阻まれており、カムスライダ3の左側への移動が規制される。このとき、トリガーガイド32がラックボス623と係合しておりラックボス623の背面方向への移動が規制されているので、光ヘッド6は背面側に移動できずスイッチが開放されない。駆動モータ54が駆動し始めてから、スイッチが開放されない状態で所定時間経過すると、光ディスク装置Aはスライダボス31が第3ガイドリブ233を乗り越えていると認識し、ディスクトレイ2を前面側に摺動させるように、駆動モータ54を駆動させる(ディスクトレイオープン動作)。
【0081】
トレイラック22及びカムスライダラック34は駆動歯車11と歯合しており、ディスクトレイ2は正面側に、カムスライダラック34は左側にそれぞれ摺動する(図8参照)。第1ガイドリブ231の開口部230は第1ガイドリブ231のカムスライダ3の移動にあわせてスライダボス31が通過できる位置に形成されている。カムスライダ3の移動とディスクトレイ2の移動は同期しており、カムスライダ3が左に移動したときにスライダボス31が開口部230を通って縦溝部211に収納される(図9参照)。
【0082】
上述したように、光ディスク装置Aはスライダボス31がガイドリブ23を乗り越えていても、乗り越えていることを自動的に検出し、ディスクトレイ2を正面側に摺動させることで、スライダボス31がガイド溝21内を摺動するように修正することができる。
【0083】
また、開口部230の長さは、スライダボス31がガイド溝21に戻るときに、ディスクトレイ2とカムスライダ3の動作のタイミングが多少ずれている場合であっても、スライダボス31がガイド溝21に戻れる長さで、且つ、スライダボス31がガイド溝21内を摺動する通常運転時には開口部よりスライダボス31が脱落しにくい長さのものが望ましい。
【0084】
通常運転時にスライダボス31がガイド溝21から外れた場合であっても、スライダボス31が補助リブ24と当接し、スライダラック3がそれ以上右側に移動しない。このとき、ラックボス623がトリガーガイド32と係合しており、光ヘッド6が背面側に移動しないので、スイッチが開放されず、所定時間経過後、光ディスク装置Aはディスクトレイ2を閉じるクローズ動作が終了せず、スライダボス31がガイドリブ23を乗り越えたと判断する。その後、上述した方法を利用してスライダボス31をガイド溝21内に戻るように駆動する。
【0085】
図10に本発明にかかる光ディスク装置の他の例の平面図を示す。図10に示す光ディスク装置はガイドリブが異なる以外は図2等に示す光ディスク装置Aと同じ構成を有するものであり、実質上同一の部分には同じ符号が付してある。
【0086】
図10に示す光ディスク装置Bの縦溝部211を囲む第1ガイドリブ251には、開口部26の背面側は正面側に向かって広がるように形成された脱落防止部261と、正面側の端部より折り返し、横溝部213を囲む第3ガイドリブ253と当接するように形成された引き込み部262とを有している。
【0087】
スライダボス31が第3ガイドリブ253を乗り越えてしまい、カムスライダラック34は駆動歯車11と歯合しているが、トレイラック22は駆動歯車11と歯合していない場合、カムスライダ3はカムスライダラック34が駆動歯車11からの駆動力を受けて左側に摺動するが、トレイラック22は駆動歯車11と歯合していないのでディスクトレイ2は停止したままである。カムスライダ3が左に摺動しスライダボス31が引き込み部262に当接し、スライダボス31が引き込み部262を押すことで、ディスクトレイ2は正面側に押される。これにより、トレイラック22が駆動歯車11と歯合する。ディスクトレイ2は駆動歯車11からの駆動力を受けて正面側に摺動する。
【0088】
また、カムスライダ3はスライダボス31が縦溝部21に近づいたときにカムスライダラック34と駆動歯車11との歯合が外れるように構成されている。カムスライダ3はカムスライダラック34との歯合が外れたのちは惰性で移動するが、スライダボス31は引き込み部262と常に当接した状態で移動するので惰性によってあまり移動できず、第1ガイド溝211まで到達できない。この状態で、ディスクトレイ2が正面側に摺動すると、スライダボス31は脱落防止部261と当接し左側に押され、第1ガイド溝211に引き込まれる。このようにして、スライダボス31はガイド溝21に戻り、ディスクトレイ2、カムスライダ3及びトラバースシャーシ4の駆動は正常に行われるようになる。
【0089】
さらに、脱落防止部261は、ディスクトレイ2が前面側に摺動するときに、スライダボス31が開口部26の端部と当接し、ディスクトレイ2が左右にぶれるのを防ぐ効果も有している。図10に示す脱落防止部261及び引き込み部262は直線状に形成されているものであるが、それに限定されるものではなく、曲線状に形成されるもの、折れ線状に形成されるもの等、スライダボス31が開口部26を通ってガイド溝21に円滑に復帰できる形状を広く採用することができる。
【0090】
図11に本発明にかかる光ディスク装置のさらに他の例の平面図を示す。図11に示す光ディスク装置Cは付勢ガイドリブ27が備えられている以外は図2等に示す光ディスク装置Aと実質上同じ構成であり、実質上同一の部分には同じ符号が付してある。付勢ガイドリブ27はディスクトレイ2の下面より一体的に突出している。付勢ガイドリブ27は正面側から背面側に向けて、第1ガイドリブ231に近づくように形成されている。また、付勢ガイドリブ27は、正面側の先端がストッパリブ24よりも右側に位置するように形成されている。
【0091】
スライダボス31が第3ガイドリブ253を乗り越えてしまい、カムスライダラック34は駆動歯車11と歯合しておらず、トレイラック22は駆動歯車11と歯合している場合を考える。このとき、駆動歯車11が回動すると、ディスクトレイ2はトレイラック22が駆動歯車11からの駆動力を受けて正面側に摺動するが、カムスライダ3は停止したままである。ディスクトレイ2が正面側に摺動するときに、スライダボス31は付勢ガイドリブ27と当接する。付勢ガイドリブ27とスライダボス31が当接した状態でディスクトレイ2が正面側に摺動すると、スライダボス31は左側に向けて付勢され、カムスライダ3は左側に向けて摺動し、カムスライダラック34が駆動歯車11と歯合する。
【0092】
カムスライダラック34が駆動歯車11と歯合したことで、駆動歯車11の駆動力にてカムスライダ3は左側に摺動する。その後は、光ディスク装置Aの動作と同じように、ディスクトレイ2が正面側に、カムスライダ3が左側にそれぞれ摺動し、スライダボス31がガイド溝21の内部に復帰する。
【0093】
上述のようにディスクトレイ2のトレイラック22及びカムスライダ3のカムスライダラック34の製造誤差や組み付け誤差によって、設計どおりのタイミングで動作しない場合であっても、光ディスク装置Bに示す脱落防止部261、引き込み部262や光ディスク装置Cに示す付勢ガイドリブ27を取り付けることで、誤差による動作ミスを低減することが可能である。
【0094】
上述したような、光ディスク装置A、B、Cを用いることで、スライドボス31がガイド溝21から外れてしまった場合にも、光ディスク装置自体が不具合を検出し、自動的に修正するので、メンテナンスの手間と時間を低減することができる。また、動作不良を自動的に修正するので、不良品の発生率が低減する。さらに、過酷な使用条件で使用され、上述のようにスライドボス31がガイド溝21から外れる場合があっても、自動的に修正するので、より多くの場所で使用することができる光ディスク装置を提供することが可能である。
【0095】
また、新たな部材を用いないので、新たな部材の設計、試作、製造に必要な、工程、時間を短縮することができ、コストアップを抑制しつつ、上記のようなスライドボス31をガイド溝21に復帰させる修正を行うことができる光ディスク装置を提供することが可能である。
【0096】
以上、発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施形態に記載した特徴のうち複数を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、DVD、CD等の光ディスクを記録媒体とする光ディスク装置において適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明にかかる光ディスク装置の斜視図である。
【図2】本発明にかかる光ディスク装置内部の概略平面図である。
【図3】図2に示す光ディスク装置からメインシャーシ、ディスクトレイを省略した概略構成図である。
【図4】下方から見た光ディスク装置内部の概略構成図である。
【図5】フロントパネル側から見た光ディスク装置内部の概略構成図である。
【図6】側方から見た光ディスク装置内部の概略構成図である。
【図7】光ディスク装置のスライダボスがガイド溝から外れた状態の図である。
【図8】スライダボスがガイド溝に戻る状態を示す図である。
【図9】スライダボスがガイド溝に戻った状態を示す図である。
【図10】本発明にかかる光ディスク装置の他の例の平面図である。
【図11】本発明にかかる光ディスク装置のさらに他の例の平面図である。
【図12】従来の光ディスク装置の斜視図である。
【図13】従来の光ディスク装置の概略平面図である。
【図14】従来の光ディスク装置の内部を上方から見た概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
A、B、C 光ディスク装置
1 メインシャーシ
11 駆動歯車
2 ディスクトレイ
21 ガイド溝
22 トレイラック
3 カムスライダ
31 スライダボス
32 トリガーガイド
33 カム溝
34 カムスライダ
4 トラバースシャーシ
42 摺動ボス
5 駆動力伝達機構
51 第1歯車
511 第1大歯車
512 第1小歯車
513 第1ピニオンギア
52 第2歯車
53 第3歯車
54 駆動モータ
541 出力軸
542 ウォームギア
6 光ヘッド
61 対物レンズ
62 ラック
621 メインラック
622 サブラック
623 ラックボス
7 光ディスク駆動機構
71 ターンテーブル
72 スピンドルモータ
73 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシャーシと、
光ディスクを載置し前記メインシャーシに対して往復摺動して該光ディスクを搬入・搬出するディスクトレイと、
前記メインシャーシに取り付けられ前記ディスクトレイに対し昇降し、該ディスクトレイにて搬入された光ディスクを挟着又は開放するトラバースシャーシと、
前記メインシャーシに前記ディスクトレイの摺動方向と直交する方向に摺動可能に取り付けられ、前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダと、
前記メインシャーシに回動可能に軸支され、前記ディスクトレイと前記カムスライダに駆動力を伝達する駆動歯車とを有し、
前記ディスクトレイは、前記駆動歯車と歯合し摺動方向に延びるトレイラックと、前記カムスライダに突設された円柱形状のスライダボスが遊嵌するとともに手前側が屈曲したガイド溝とを備えており、
前記カムスライダは、前記駆動歯車と歯合するためのカムスライダラックを備えており、前記光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生又は記録を行う光ディスク装置であって、
前記ガイド溝は前記ディスクトレイの下面と、該下面より一体突設された前記ガイド溝の屈曲外側に形成される外側ガイドリブと屈曲内側に形成される内側ガイドリブとで形成されるものであり、前記ガイド溝は前記ディスクトレイの摺動方向に沿う縦溝部と、前記摺動方向と直交する横溝部と、前記縦溝部の手前側端部と連結し前記縦溝部と前記横溝部とを連結する斜行溝部とを備えており、
前記縦溝部を形成する前記内側ガイドリブには、前記内側ガイドリブが分断された開口部が形成されており、前記開口部の奥側には手前に向けて前記縦溝部より遠ざかるように形成された脱落防止部と、手前側の端部には前記横溝部を形成する内側ガイドリブと接続する引き込み部とを有しており、
前記横溝部の前記縦溝部から最も離れた部分より、前記スライダボスの半径とほぼ同じ長さずれた位置の前記内側ガイドリブのガイド溝と反対側には、前記ディスクトレイの摺動方向に沿って奥向きに延び、前記内側ガイドリブと一体的に形成されたストッパリブが形成されており、
前記横溝部の前記ディスクトレイ摺動方向の奥側には、手前から奥に向かって前記縦溝部に接近するとともに、手前側の端部が前記ストッパリブよりも前記縦溝部から離れて形成された付勢ガイドリブが形成されており、
前記開口部は前記ディスクトレイが手前に向けて摺動するときに、該ディスクトレイと同時に駆動する前記カムスライダのスライダボスが通過することができる位置に形成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクを載置し往復摺動して該光ディスクを搬入・搬出するディスクトレイと、
前記ディスクトレイにて搬入された光ディスクを挟着又は開放するトラバースシャーシと、
前記ディスクトレイの摺動方向と直交する方向に摺動し、前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダと、
前記ディスクトレイと前記カムスライダに駆動力を伝達する駆動歯車とを有し、前記ディスクトレイは、前記駆動歯車と歯合し摺動方向に延びるトレイラックと、前記カムスライダに突設された円柱形状のスライダボスが遊嵌するとともに手前側が屈曲したガイド溝とを備えており、
前記カムスライダは、前記駆動歯車と歯合するためのカムスライダラックを備えており、前記光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生又は記録を行う光ディスク装置であって、
前記ガイド溝は前記ディスクトレイの下面と、前記ガイド溝の屈曲外側に形成される外側ガイドリブと屈曲内側に形成される内側ガイドリブとで形成されるものであり、前記ガイド溝は前記ディスクトレイの摺動方向に沿う縦溝部と、前記摺動方向と直交する横溝部と、前記縦溝部の手前側端部と連結し前記縦溝部と前記横溝部とを連結する斜行溝部とを備えており、
前記縦溝部を形成する内側ガイドリブには、前記内側ガイドリブが分断された開口部が形成されており、
前記横溝部の前記縦溝部から最も離れた部分より、前記スライダボスの半径とほぼ同じ長さずれた位置の前記内側ガイドリブの前記横溝部と反対側には、前記ディスクトレイの摺動方向に沿って奥向きに延び、前記内側ガイドリブと一体的に形成されるストッパリブが備えられており、
前記開口部は前記ディスクトレイが手前に向けて摺動するときに、該ディスクトレイと同時に駆動する前記カムスライダのスライダボスが通過することができる位置に形成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記開口部の奥側端部は手前に向けて縦溝部より離れるように形成された脱落防止部と、手前側の端部と前記横溝部を形成する内側ガイドリブと接続する引き込み部とを有することを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記横溝部の前記ディスクトレイ摺動方向の奥側には、手前から奥に向かって前記縦溝部に接近するとともに、手前側の端部が前記ストッパリブよりも前記縦溝部から離れて形成された付勢ガイドリブが形成されていることを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−90882(P2008−90882A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267685(P2006−267685)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】