説明

光ディスク装置

【課題】
光ディスク装置において、ローディングモータの駆動力の伝達系におけるギヤ間で歯相互間の脱着を行うことなく、エマージェンシーイジェクト動作を行えるようにする。
【解決手段】
ローディングモータとディスク移動機構との間で伝達系を構成するギヤ列中のギヤユニットのうちの少なくとも1つを、大径の従動用ギヤの内径側において原動用ギヤが軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能に結合されると共に、該原動用ギヤは、該従動用ギヤに対して軸方向に移動変位することにより、次段のギヤとの係合を保持したまま該従動用ギヤとの上記結合を解除される構成とし、エマージェンシーイジェクト時、手動による外力によって上記結合を解除して上記伝達系を切断状態とし、上記ディスク移動機構に該外力によるディスク排出動作を行わせ、光ディスクを装置外に排出させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の構成に係り、特に、非常時に光ディスクを排出するすなわちエマージェンシーイジェクトを行うための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した従来技術であって特許文献に記載された技術としては、例えば、特開平6−180918号公報(特許文献1)、特開2004−310813号公報(特許文献2)及び特開2007−220276号公報(特許文献3)に記載されたものがある。特開平6−180918号公報には、記録再生装置において、緊急時に、装置から記録媒体のカートリッジを取出す(=エマージェンシーイジェクト)ための構成として、水平移動部に設けたラックに着脱自在に噛合する最終歯車を、移動部材によって軸方向に移動させて、該ラック部との噛合を外すとした構成が記載され、特開2004−310813号公報には、ディスク装置において、エマージェンシーイジェクトを行うとき、エマージェンシーピンPによりスライダー部材31を押圧して、ローディングモータの回転出力軸に固定されたウォームギヤ22と、該ウォームギヤ22によって駆動されるダブルギヤ23との間の噛合を解除し、該解除状態で、エマージェンシーピンPによりギヤ部材36を押し、ダブルギヤ38を介してラック主体34を後退移動させて排出レバー17を揺動させ、光ディスクを排出するとした構成が記載され、また、特開2007−220276号公報には、光機器装置において、エマージェンシーイジェクトを行うとき、ピン700により、解除レバー600のギア移動部630を介して、ギア305cを軸方向に押し上げてラック355から離脱させ、ギア305c、ラック355間の噛合を解除し、メインスライダ350を手動で作動可能にするとした構成が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−180918号公報
【特許文献2】特開2004−310813号公報
【特許文献3】特開2007−220276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報記載の従来技術は、非常時においてディスクの排出を行う(以下、エマージェンシーイジェクトという)ときには、ラックの歯とギヤの歯との間の噛合や、ウォームギヤの歯とギヤの歯との間の噛合を解除し、その後、エマージェンシーイジェクト動作が終了して、装置を再び初期の状態に戻すときには、これらギヤの歯を再び噛合状態にする構成である。このため、特に、ギヤ間で歯を噛合状態にするときには、噛合状態になる前に歯の頭部どうしが接触するなどして、それぞれの歯が損傷するおそれがあるし、また、適正な噛合状態とするために、両方の歯の位置関係を適正にする必要があり、そのためには、該噛合のために移動させる方のギヤの移動方向や停止位置などを正確に規制する必要がある。また、噛合の解除を行うときには、ギヤが移動するためのスペースとして、ギヤの回転軸に対して直角な方向のスペースが必要であり、これが装置寸法の増大につながり易いと考えられる。
【0005】
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、光ディスク装置において、ローディングモータとディスク移動機構との間で伝達系を構成するギヤ列中の異軸ギヤ間で歯相互の脱着を行うことなく、エマージェンシーイジェクト動作を行えるようにすることである。
本発明の目的は、上記課題点を解決し、信頼性が確保された光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題点を解決するために、本発明では、光ディスク装置において、ローディングモータ(該当実施例:符号350)とディスク移動機構との間で伝達系を構成するギヤ列(該当実施例:符号360)中のギヤユニットのうちの少なくとも1つを、大径の従動用ギヤ(該当実施例:符号3601)の内径側において該従動用ギヤと同軸に配された原動用ギヤ(該当実施例:符号3602)が軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能に結合されると共に、該原動用ギヤ(該当実施例:符号3602)は、該従動用ギヤ(該当実施例:符号3601)に対して軸方向に移動変位することにより、次段のギヤ(該当実施例:符号3603)との係合(歯どうしの噛合)を保持したままの状態で該従動用ギヤとの上記結合を解除される構成とし、エマージェンシーイジェクト時、手動による外力によって上記結合を解除して上記伝達系を切断状態(オフ状態)とし、上記ディスク移動機構に該外力によるディスク排出動作を行わせ、光ディスクを装置外に排出させる構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ディスク装置において、ローディングモータとディスク移動機構との間のギヤ列における異軸ギヤ間での係合を解除せずに、エマージェンシーイジェクト動作を行うことができる。この結果、ギヤ間における歯相互間の脱着動作に起因した歯の損傷や劣化などをなくすことができ、光ディスク装置としての信頼性を確保することができる。また、ギヤの軸位置調整用の機構や軸移動案内用の機構も不要となり、ギヤ列の小型化や薄型化も図り易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1〜図12は本発明の実施例としての光ディスク装置の説明図である。図1は、本発明の実施例としての光ディスク装置の外観図、図2は、図1の光ディスク装置においてトップカバーを外したときの構成を示す図、図3は、図1の光ディスク装置においてボトムケースを外したときの構成を示す図、図4は、図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作前の状態を示す図、図5は、図4のエマージェンシーイジェクト機構を構成するギヤユニットの斜視図、図6は、図5のギヤユニットを構成する原動用ギヤの斜視図、図7は、図4のギヤユニットの軸方向断面図であって、従動用ギヤと原動用ギヤが結合された状態にあるときの構成を示す図、図8は、図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作中の状態を示す図、図9は、図8の構成において押圧部材を除いたときの状態を示す図、図10は、図4のギヤユニットの軸方向断面図であって、図8の状態にあるときの構成を示す図、図11は、図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構のアーム部材の動作説明図、図12は、図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構のエマージェンシーイジェクト動作における各部の変位状態を示す図である。
【0009】
図1において、1は、本発明の実施例としての薄型スロットイン方式の光ディスク装置、11は、光ディスク装置1において装置上面側(Z軸方向側)を覆うトップカバー、11aは、トップカバー11の平面内に設けられた孔、12は、装置底面側(−Z軸方向側)を覆うボトムケース、13は、装置前面のフロントパネル、13aは、光ディスク(図示なし)を装置内に挿入(Y軸方向に挿入)したり、装置内から取出したりするためのフロントパネル13の開口、14はイジェクトボタン、15は、装置の動作状態を表示するLED、16は、光ディスク装置1にエマージェンシーイジェクト動作を行わせるときにエマージェンシーイジェクト用のピン(図示なし)を挿入するためのピン挿入孔、20は、チャッキング時、光ディスクの中心孔内に挿入され該光ディスクをその半径方向に支持してチャッキングするクランパである。光ディスクは、光ディスク装置1内において、クランパ20によりチャッキングされている状態、すなわちクランパ20が光ディスクの中心孔内に挿入されている状態からエマージェンシーイジェクト動作が可能であり、エマージェンシーイジェクトによって、フロントパネル13の開口13aから排出される。
以下、説明中で用いる図1の光ディスク装置における構成要素には、図1の場合と同じ符号を付して用いる。
【0010】
図2は、トップカバー11を外したときの光ディスク装置1の表面側(光ディスク装填側)の構成を示す平面図、図3は、ボトムケースを外したときの光ディスク装置1の裏面側の構成を示す平面図である。
図2において、22は、光ディスク(図示なし)を回転駆動するスピンドルモータ、20は、スピンドルモータ22の回転部上に同心状に固定されたクランパ、21は、スピンドルモータ22の回転部上にあってクランパ20の周囲に同心状に配され、該クランパ20が光ディスクの中心孔内に挿入された状態で該光ディスクの中心孔周囲の平面部(記録または再生される側の平面部)を支持するターンテーブル、23は、記録または再生時に光ディスクの略半径方向に移動し、光ディスク面にレーザ光を照射する光ピックアップ、23aは対物レンズ、24は、上記スピンドルモータ22、上記光ピックアップ23、該光ディスクの略半径方向の移動を行う移動・案内機構部(図示なし)などが固定されるメカデッキ部材、200は、該メカデッキ部材24、上記クランパ20、上記ターンテーブル21、上記スピンドルモータ22、上記光ピックアップ23、上記移動・案内機構部などを備えて成るトラバースユニットである。該トラバースユニット200は、点Q、Qの位置を支点位置として光ディスク装置1内の基準面に対して回動変位し、クランパ20をZ軸方向に上昇変位させて光ディスクをチャッキングしたり、該チャッキング後はクランパ20を−Z軸方向に下降変位させて、光ディスクを、記録または再生動作のために回転可能な状態にしたりする。
【0011】
また、図2において、320は、装置基盤を構成するシャーシ、350は、該シャーシ320に固定されたローディングモータ、301は、フロントパネル13の開口13aから挿入された光ディスクの外周に当接するインサートローラ、305は、該インサートローラ301が回転可能に取付けられシャーシ320上の支点周りに回動可能に取付けられ、回動変位により、インサートローラ301とともに、光ディスクをさらに装置内に引き込むすなわちY軸方向に移動させてローディングするインサートアーム、302は、光ディスクの外周に当接して該光ディスクが装置内を移動するときに該光ディスクをガイド面で支持するガイド部材、308は、該ガイド部材302が揺動可能に連結され、シャーシ320上の支点周りに回動可能な回動リンク、303は、光ディスクのローディング時にディスク外周を支持すると共に、アンローディング時(イジェクト時)及びエマージェンシーイジェクト時に光ディスクの外周を押圧するイジェクトローラ、309は、該イジェクトローラ303が回転可能に取付けられシャーシ320上の支点周りに回動可能に取付けられ、アンローディング時(イジェクト時)及びエマージェンシーイジェクト時に、イジェクトローラ303とともに、光ディスクを−Y軸方向に移動させてアンローディング(イジェクト)またはエマージェンシーイジェクトするイジェクトアーム、304は、光ディスクのローディング時及びアンローディング時、該光ディスクの外周に当接して光ディスクを支持するディスクローラ、310は、該ディスクローラ304が回転可能に取付けられシャーシ320上の支点周りに回動可能に取付けられ、光ディスクのローディング時及びアンローディング時に、ディスクローラ304とともに、該光ディスクを支持するディスクレバー、306は、インサートアーム305と結合され、支点周りに回動可能な構成を有し、光ディスクのローディング時、ローディングモータ350の駆動力に基づき回動変位して該インサートアーム305を回動変位させるアクションレバーである。
【0012】
また、図3において、26は、表面にねじが設けられ、該ねじの回転により光ピックアップ23を光ディスクの略半径方向に移動させるリードスクリュー部材、27は、該リードスクリュー部材26を回転駆動するスライドモータ、28a、28bは、光ピックアップ23の移動を案内するガイド部材、351は、ローディングモータ350の出力軸に固定されたウォームギヤ、360は、前段のギヤから駆動力を受ける従動用ギヤと次段のギヤに駆動力を与える原動用ギヤとを同軸上に有するギヤユニットが複数個(3個)配されたギヤ列、370は、ギヤ列360によって駆動されるファンクションレバー、370rは、ギヤ列360の最終段のギヤユニットから駆動力を伝達されるファンクションレバー370上のラック部、324は、ローディングモータ350をオン、オフするローディングスイッチ、325は、ファンクションレバー370がイジェクト位置に移動したことを検出するイジェクトスイッチ、326は、ファンクションレバー370が、光ディスク装置1がイニシャル状態(ディスク挿入待ち受け状態)及び記録または再生動作が可能な位置に移動したことを検出するメカモードスイッチ、380は、Y軸方向の移動変位により、上記ギヤ列360内の1つのギヤユニット内の原動用ギヤ(第2のギヤ)を押圧して軸方向に変位させる押圧部材、381は、押圧部材380に回動可能に取付けられ該押圧部材380の移動動作を規制するアーム部材、340は、カム溝を備え、ファンクションレバー370の移動変位に基づき±X軸方向に移動変位可能なカムスライダーである。
【0013】
上記構成において、ファンクションレバー370、カムスライダー340、インサートローラ301、インサートアーム305、アクションレバー306、イジェクトローラ303、イジェクトアーム309、ディスクローラ304、ディスクレバー310、ガイド部材302及び回動リンク308は、光ディスクを、装置内に引き込んだり(ローディングしたり)、装置内から外部に向かって排出(アンローディング(イジェクト)またはエマージェンシーイジェクト)したりするディスク移動機構を構成する。また、リードスクリュー部材26、スライドモータ27及びガイド部材28a、28bは、光ピックアップ23を光ディスクの略半径方向に移動かつ案内する移動・案内機構部を構成する。また、ギヤ列360、押圧部材380及びアーム部材381は、エマージェンシーイジェクト時に上記ディスク移動機構を駆動するエマージェンシーイジェクト機構を構成する。
【0014】
上記ディスク移動機構は、ローディング時及びアンローディング時(イジェクト時)には、ローディングモータ350の駆動力に基づき駆動され、エマージェンシーイジェクト時には、手動による外力すなわちフロントパネル13のピン挿入孔16から装置内に挿入されたピン(図示なし)による押圧力に基づき駆動される。
【0015】
アンローディング時(イジェクト時)、イジェクトボタン14が押されると、光ディスク装置1内の制御回路(図示なし)に電気信号が入力され、該制御回路によって光ディスク装置1内のモータ駆動回路(図示なし)が制御され、スピンドルモータ22の回転が停止され、その後、ローディングモータ350が、ローディング動作の場合とは逆の方向に回転駆動される。該ローディングモータ350の駆動力に基づきディスク移動機構が作動する。すなわち、該ローディングモータ350の駆動力はファンクションレバー370をY軸方向に移動変位させる。該ファンクションレバー370のY軸方向への移動変位により、カムスライダー340を含めたメカ部品が、ローディング時とは逆方向に作動する。ファンクションレバー370がY軸方向に移動変位してイジェクト位置に達すると、イジェクトスイッチ325がこれ(ファンクションレバー370がイジェクト位置に移動したこと)を検出し、該検出信号が制御回路に入力され、該制御回路によってモータ駆動回路が制御されてローディングモータ350の回転が停止される。また、ファンクションレバー370がY軸方向に移動変位してイジェクト位置に達したとき、該ファンクションレバー370の移動変位に基づき、イジェクトアーム309が支点周りにディスク排出方向に回動される。イジェクトアーム309の該回動によりイジェクトローラ303が光ディスク2を−Y軸方向に押す。これによって、光ディスク2が光ディスク装置1から排出される。
【0016】
エマージェンシーイジェクト時には、スピンドルモータ22やローディングモータ350は電気入力が断たれてオフ状態とされる。該電気入力オフ状態において、フロントパネル13のピン挿入孔16から装置内に挿入されたピン(図示なし)の移動による押圧力に基づいてディスク移動機構が作動される。すなわち、ピンの移動とともにファンクションレバー370がY軸方向に移動変位し、該ファンクションレバー370がイジェクト位置に達したとき、該ファンクションレバー370の移動変位に基づいてイジェクトアーム309が支点周りにディスク排出方向に回動される。イジェクトアーム309の該回動によりイジェクトローラ303が光ディスク2を−Y軸方向に押し、光ディスク2が光ディスク装置1から排出される。
【0017】
上記エマージェンシーイジェクト時、ギヤ列360における伝達系は切断状態(オフ状態)とされ、ディスク移動機構はローディングモータ350の負荷にならないようにされる。すなわち、ファンクションレバー370側からみて、ローディングモータ350は機械的に切離された状態とされる。光ディスク装置1においては、ギヤ列360を構成する3個のギヤユニットのうち、ウォームギヤ351に係合された第1段目のギヤユニット内において、ウォームギヤ351から駆動力を受ける大径の従動用ギヤ(第1のギヤ)に対し、該従動用ギヤと同軸上に配され次段のギヤユニットの従動用ギヤに駆動力を与える小径の原動用ギヤ(第2のギヤ)を軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能な構成とすると共に、エマージェンシーイジェクト時には、該原動用ギヤ(第2のギヤ)を軸方向に移動させることにより、該従動用ギヤ(第1のギヤ)と一体で回転可能な結合状態を切離し、該原動用ギヤ(第2のギヤ)が該従動用ギヤ(第1のギヤ)に対して独立して回転することができる構成としている。
以下、説明中で用いる図2、図3に記載の構成における各構成要素には、図2、図3の場合と同じ符号を付して用いる。
【0018】
図4は、図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作を行う前の状態にあるときの構成を示す図である。
図4において、3601は、第1段目のギヤユニット内の大径の従動用ギヤ、3602は、第1段目のギヤユニット内の小径の原動用ギヤ、3603は、第2段目のギヤユニット内の大径の従動用ギヤ、3604は、第2段目のギヤユニット内の小径の原動用ギヤ、3605は、第3段目のギヤユニット内の大径の従動用ギヤである。第3段目のギヤユニット内の小径の原動用ギヤは図4には図示されていない。従動用ギヤ3601と原動用ギヤ3602は、第1段目のギヤユニット内で同軸上に配され、従動用ギヤ3603と原動用ギヤ3604は、第2段目のギヤユニット内で同軸上に配され、第3段目のギヤユニット内においても、従動用ギヤ3605と原動用ギヤは同軸上に配されている。第1段目のギヤユニット、第2段目のギヤユニット及び第3段目のギヤユニットは連結されており、従動用ギヤ3601は、ウォームギヤ351に係合され、該ウォームギヤ351から駆動力を受けて回転し、従動用ギヤ3603は、原動用ギヤ3602に係合され、該原動用ギヤ3602から駆動力を受けて回転し、従動用ギヤ3605は、原動用ギヤ3604に係合され該原動用ギヤ3604から駆動力を受けて回転する。第3段目のギヤユニット内の原動用ギヤ(図示せず)はファンクションレバー370のラック部370rに係合されている。第1段目のギヤユニット内において、第1のギヤとしての従動用ギヤ3601と第2のギヤとしての原動用ギヤ3602は、従動用ギヤ3601の内径(歯の形成された部分よりも中心軸寄りの意)側に設けた結合部において該従動用ギヤ3601に対し、軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能な状態で結合されると共に、該原動用ギヤ3602は、エマージェンシーイジェクト時に、軸方向に移動変位することにより、第2段目のギヤユニットの従動用ギヤ3603との係合を保持したまま、該従動用ギヤ3601に対し、上記結合部における上記結合を解除されて回転可能となる。
【0019】
また、図4において、3602sは、第1段目のギヤユニットの軸すなわち従動用ギヤ(第1のギヤ)3601と原動用ギヤ(第2のギヤ)3602に共通の軸、390は、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の−Z軸方向の上部に設けられ、全周にわたって傾斜面が形成された被押圧部、390aは、該被押圧部390の表面のうち、軸3602sに近い側に形成され該軸3602sに直角な表面部分(以下、平面部分という)、390bは、部材390の表面のうち、傾斜面が形成された傾斜面部分、380aは、押圧部材380の押圧部380aの第1の部分、380aは、同じく第2の部分、380aは、同じく第3の部分である。押圧部材380の押圧部380aの第1の部分380a及び第3の部分380aはいずれも、Z軸方向の面が、軸3602sに対して略直角な面であり、第2の部分380aは、軸3602sに対し傾斜した面となっている。また、381aは、押圧部材380上に設けられたアーム部材381の回動支点、160は、シャーシ320上において、フロントパネル13のピン挿入孔16と一致する位置に設けられたピン挿入孔、382は、押圧部材380とシャーシ320との間に接続され該押圧部材380に−Y軸方向の弾性復元力を作用させる引張りコイルばね、320sは、シャーシ320の−Z軸方向の側壁、320sは、該側壁320sの内面、400は、エマージェンシーイジェクト時に、ピン挿入孔16、160から挿入されるピンである。
【0020】
図4の構成において、エマージェンシーイジェクトのために、ピン400がピン挿入孔160から挿入され、Y軸方向に移動するとき、アーム部材381の、押圧部材380上に設けられた回動支点381aよりもX軸方向側にあるアーム部(一方のアーム部)をY軸方向に押す。該押されることで、アーム部材381は、引張りコイルばね382の弾性復元力に抗してY軸方向に移動変位しながら回動支点381a周りに時計方向に回動する。このとき、アーム部材381の、回動支点381aよりも−X軸方向側にあるアーム部(他方のアーム部)が上記シャーシ320の−Z軸方向の側壁320sの内面320s側に当接したまま、該当接部が該内面320s側の面上を摺動してX軸方向に移動する。アーム部材381がY軸方向に移動することで、押圧部材380もY軸方向に移動し、その押圧部380aが第1段目のギヤユニット内の被押圧部390を、傾斜面部分390b、平面部分390aの順で押し、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602を該被押圧部390とともにZ軸方向に移動変位させる。原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の該移動により、該原動用ギヤ3602は、従動用ギヤ3601の内径側の結合部における該従動用ギヤ3601との一体で回転可能な結合を解除される。該結合が解除されることで、ギヤ列360における伝達系が切断状態(オフ状態)とされる。また、この時、原動用ギヤ3602は、第2段目のギヤユニットの従動用ギヤ3603と係合された状態のまま上記Z軸方向に移動変位する。
以下、説明中で用いる図4の構成の構成要素には、図4の場合と同じ符号を付して用いる。
【0021】
図5は、図4のエマージェンシーイジェクト機構を構成する第1段目のギヤユニットの斜視図である。
図5において、3601bは、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の内径側において結合部を構成する複数の第1の突出部、3602bは、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602上にあって、上記従動用ギヤ3601の上記第1の突出部3601bとともに上記結合部を構成する複数の第2の突出部である。第1の突出部3601bは、従動用ギヤ3601の内径側部分において半径方向内側に突出された構成であり、第2の突出部3602bは、原動用ギヤ3602上にあって半径方向外側に突出されかつそれぞれの周方向幅寸法を、上記第1の突出部3601b間の周方向の間隔よりも若干小さくした構成となっている。
以下、説明中で用いる図5の構成の構成要素には、図5の場合と同じ符号を付して用いる。
【0022】
図6は、図5の第1段目のギヤユニットを構成する原動用ギヤ3602の斜視図である。
図6において、3602aは、原動用ギヤ3602の歯、3602dは、原動用ギヤ3602における第2の突出部3602bが、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bと結合した状態において、原動用ギヤ3602の−Z軸方向の高さ位置を保持するための高さ位置保持用突出部である。該高さ位置保持用突出部3602dは、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bの下面(Z軸方向面)と係合することにより、原動用ギヤ3602の−Z軸方向の高さ位置を保持する。
以下、説明中で用いる図6の構成の構成要素には、図6の場合と同じ符号を付して用いる。
【0023】
図7は、図4のギヤユニットのうち第1段目のギヤユニットの軸方向断面図であって、従動用ギヤ3601と原動用ギヤ3602が、一体で回転可能な状態に、結合部において結合されているときの構成を示す図である。
図7において、391は、従動用ギヤ3601と原動用ギヤ3602との間に配され−Z軸方向の弾性復元力を生ずる圧縮コイルばね、380a1iは、押圧部材380の押圧部380aの第1の部分380aにおけるZ軸方向側の面、380a2iは、押圧部材380の押圧部380aの傾斜した第2の部分380aにおけるZ軸方向側の面、380a3iは、押圧部材380の押圧部380aの第3の部分380aにおけるZ軸方向側の面、3601eは、従動用ギヤ3601の中心部のカラー部、3602cは、軸3602sの中心を通る中心軸である。従動用ギヤ(第1のギヤ)3601は、カラー部3601eにおいて軸3602sに回転可能に軸支され、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602は、カラー部3601eに対し回転可能で、かつ、軸3602sの方向すなわちZ軸方向に移動変位可能な状態とされている。圧縮コイルばね391は、カラー部3601e周辺に図示の如くはめ込まれ、原動用ギヤ3602に対して−Z軸方向の弾性復元力を作用させている。原動用ギヤ3602の高さ位置保持用突出部3602dは、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bの下面(Z軸方向面)と係合している。該係合された状態において、原動用ギヤ3602の第2の突出部3602bは、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601b間の空間部に入り込んだ状態で該従動用ギヤ3601の回転方向にある第1の突出部3601bの周方向側面に当接している。該当接部(軸方向に重なる部分)のZ軸方向の長さは0.5×10−3m程度としている。また、該当接状態により従動用ギヤ3601と原動用ギヤ3602は一体で回転可能となっている。従動用ギヤ3603の歯のZ軸方向の長さと原動用ギヤ3602の歯3602aのZ軸方向の長さとの関係は、原動用ギヤ3602がZ軸方向に移動変位して、該原動用ギヤ3602の第2の突出部3602bと、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bとの一体で回転可能な結合(上記当接状態)が解除された場合にも、原動用ギヤ3602の歯3602aと従動用ギヤ3603の歯との噛合(係合)が保持される関係となっている。
以下、説明中で用いる図7の構成の構成要素には、図7の場合と同じ符号を付して用いる。
【0024】
図8は、図1の光ディスク装置1におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作中の状態を示す図である。
図8において、エマージェンシーイジェクトのために、ピン400がピン挿入孔160から挿入され、Y軸方向に移動するとき、アーム部材381の、押圧部材380上に設けられた回動支点381aよりもX軸方向側にあるアーム部(一方のアーム部)をY軸方向に押す。アーム部材381は、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力に抗してY軸方向に移動変位しながら回動支点381a周りに時計方向に回動する。このとき、アーム部材381の、回動支点381aよりも−X軸方向側にあるアーム部(他方のアーム部)が上記シャーシ320の−Z軸方向の側壁320sの内面320s側に当接したまま、該当接部が該内面320s側の面上を摺動してX軸方向に移動する。アーム部材381がY軸方向に移動することで、回動支点381aでアーム部材381と結合されている押圧部材380もY軸方向に移動し、その押圧部380aが第1段目のギヤユニット内の被押圧部390を、傾斜面部分390b、平面部分390aの順で押し、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602を該被押圧部390とともにZ軸方向に移動変位させる。原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の該移動により、該原動用ギヤ3602は、従動用ギヤ3601の内径側の結合部における該従動用ギヤ3601との一体で回転可能な結合(当接状態)が解除される。すなわち、原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の第2の突出部3602bと、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bとの結合(当接状態)が解除される。該結合が解除されることで、ギヤ列360における伝達系が切断状態(オフ状態)とされる。原動用ギヤ3602は、上記Z軸方向に移動変位するとき、第2段目のギヤユニットの従動用ギヤ3603と係合された状態のまま移動変位し、上記結合が解除された状態においても、該従動用ギヤ3603との係合状態を保持する。原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の第2の突出部3602bと、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bとの結合が解除された後、アーム部材381の回動に伴い、Y軸方向に移動するピン400の先端が、アーム部材381の回動支点381aよりもX軸方向側にあるアーム部(一方のアーム部)から外れる。該外れることによって、該アーム部材381は、ピン400によって押されなくなり、回動支点381a周りの回動及びY軸方向への移動を停止する。
【0025】
アーム部材381が回動及び移動を停止した後も、ピン400はY軸方向に移動される。該移動によって、ピン400の先端がファンクションレバー370を押し、該ファンクションレバー370を含むディスク移動機構が、エマージェンシーイジェクトとしての光ディスクの排出を行う。ピン400が、アーム部材381の停止後、該移動を行うとき、アーム部材381の一方のアーム部はピン400の側面部に当接され、他方のアーム部は、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に当接された状態になっている。このとき、該それぞれのアーム部は、引張りコイルばね382の弾性復元力によって、ピン400の側面部やシャーシ320の側壁320sの内面320s側に、該それぞれのアーム部が押し付けられた状態で当接保持される。アーム部材381は、かかる当接保持状態とされることで、−Y軸方向への戻り移動動作と、回動支点381a周りの反時計方向の戻り回動動作とを阻止され、押圧部材380の押圧部380aの−Y軸方向への戻り移動が防止される。
以下、説明中で図8の構成の構成要素を用いる場合には、図8の場合と同じ符号を付して用いる。
【0026】
図9は、図8の構成において押圧部材380を除いたときの状態を示す図である。
図9において、381bは、アーム部材381の、回動支点381aよりもX軸方向側にあるアーム部すなわち一方のアーム部、381bは、アーム部材381の、回動支点381aよりも−X軸方向側にあるアーム部すなわち他方のアーム部である。図9では、ピン400の先端が既に、アーム部材381の一方のアーム381bから外れ、さらにY軸方向に移動して、ファンクションレバー370をY軸方向に押しているときの状態を示す。原動用ギヤ(第2のギヤ)3602は既に、Z軸方向に移動変位され、その第2の突出部3602bと、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bとの結合(当接状態)が解除されている。また、アーム部材381は、一方のアーム部381bがピン400の側面部に当接され、他方のアーム部381bがシャーシ320の側壁320sの内面320s側に当接されている。回動支点381aは上記両当接位置間にある。なお、他方のアーム部381bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に対し、直接当接されてもよいし、または、板状部材などを介して間接的に当接されてもよい。
以下、説明中で図9の構成の構成要素を用いる場合には、図9の場合と同じ符号を付して用いる。
【0027】
図10は、第1段目のギヤユニットの軸方向断面図であって、該第1段目のギヤユニットが上記図8の状態にあるときの構成を示す図である。
図10において、押圧部材380の押圧部380aの第1の部分380aのZ軸方向側の面380a1iが被押圧部390の平面部分390aを、圧縮コイルばね391の弾性復元力に抗してZ軸方向に押している。該状態は、押圧部材380の押圧部380aが、図7の状態における位置からY軸方向に移動変位することにより形成される。押圧部380aは最初、Y軸方向の移動変位により、第3の部分380aのZ軸方向側の面380a3iが、被押圧部390の傾斜面部分390bに当接し、該傾斜面部分390b上をすべりながら該傾斜面部分390bをZ軸方向に押す。次に、該押圧部380aの第2の部分380aのZ軸方向側の面380a2iが、被押圧部390の傾斜面部分390bに当接し、該傾斜面部分390b上をすべりながら該傾斜面部分390bをZ軸方向に押す。次に、該押圧部380aの第1の部分380aのZ軸方向側の面380a1iが、被押圧部390の傾斜面部分390bに当接し、該傾斜面部分390b上をすべりながら該傾斜面部分390bをZ軸方向に押す。最後に、該押圧部380aの第1の部分380aのZ軸方向側の面380a1iが、被押圧部390の平面部分390aに当接し、該平面部分390aをZ軸方向に押す。このように、押圧部材380の押圧部380aがY軸方向に移動変位することによって、被押圧部390がZ軸方向に押されて移動し、被押圧部390の該移動によって原動用ギヤ3602がZ軸方向に移動変位し、該原動用ギヤ3602の第2の突出部3602bと、従動ギヤ3601の第1の突出部3601bとの結合(当接状態)が解除され、これによって、原動用ギヤ3602は、従動ギヤ3601に対して、一体状態を解かれ独立して回転可能となる。該第2の突出部3602bと、該第1の突出部3601bとの結合が解除された場合にも、原動用ギヤ3602の歯3602aと従動用ギヤ3603の歯との間の噛合(係合)は保持されている。
【0028】
図11は、図1の光ディスク装置1におけるエマージェンシーイジェクト機構のアーム部材381の動作説明図である。
図11において、37はディスク移動機構、400aは、ピン400の表面である。エマージェンシーイジェクト時、ピン400が、フロントパネル13のピン挿入孔16及びシャーシ320のピン挿入孔160を通って装置内にY軸方向に挿入されると、該ピン400の先端は、Y軸方向に移動することにより、アーム部材381を押し、該アーム部材381の状態を状態A、状態B、状態Cの順で変化させる。
【0029】
(状態A):ピン400の先端は、Y軸方向位置Pにおいて、アーム部材381の、回動支点381aよりもX軸方向側にある一方のアーム部381bに点aで当接し、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力に抗して該アーム部材381をY軸方向に押す。このとき、アーム部材381の、回動支点381aよりも−X軸方向側にある他方のアーム部381bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に点aにおいて当接する。点aにおいても、アーム部材381は、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力によりシャーシ320の側壁320sの内面320s側に押し付けられる。
【0030】
(状態B):ピン400がさらにY軸方向に移動して、その先端がアーム部材381の一方のアーム部381bを押し、該一方のアーム部381bをY軸方向に移動変位させるとともに回動支点381a周りにも時計方向に回動させる。ピン400の先端は、Y軸方向位置Pにおいて、アーム部材381の一方のアーム部381bに点bで当接し、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力に抗して該アーム部材381をY軸方向に押す。このとき、アーム部材381の他方のアーム部381bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に点bにおいて当接する。点bにおいても、アーム部材381は、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力によりシャーシ320の側壁320sの内面320s側に押し付けられる。点bは、アーム部材381の一方のアーム部381b上において、上記状態Aにおける点aよりもアーム部381bの先端に近い位置にあり、点bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側において、上記状態Aにおける点aよりもピン400に近い位置にある。本状態Bのとき、押圧部材380の押圧部380aは、原動用ギヤ3602の被押圧部390を押し始める。
【0031】
(状態C)ピン400がさらにY軸方向に移動して、その先端がアーム部材381の一方のアーム部381bから外れ、該一方のアーム部381bのY軸方向への移動及び回動支点381a周りの回動が停止される。ピン400に対してはその側面に、Y軸方向位置Pにおいて、アーム部材381の一方のアーム部381bが点cで当接し、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力で該アーム部材381の一方のアーム部381bをピン400の側面に押し付ける。このとき、アーム部材381の他方のアーム部381bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に点cにおいて当接する。点cにおいても、アーム部材381は、引張りコイルばね382(図4)の弾性復元力によりシャーシ320の側壁320sの内面320s側に押し付けられる。点cは、アーム部材381の一方のアーム部381b上において、上記状態Bにおける点bよりもアーム部381bの先端に近い位置にあり、点cは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側において、上記状態Bにおける点bよりもピン400に近い位置にある。本状態Cのとき、押圧部材380の押圧部380aは、原動用ギヤ3602の被押圧部390を押してZ軸方向に移動変位させ、該原動用ギヤ3602の従動用ギヤ3601との結合(当接状態)を解除した状態にしている。
【0032】
ピン400は、その表面400aにアーム部材381の一方のアーム部381bが押し付けられたままY軸方向に移動して、Y軸方向位置Pにおいて、その先端がファンクションレバー370を押す。ピン400はさらにY軸方向に移動して、該ファンクションレバー370をY軸方向に移動変位させ、ディスク移動機構37に光ディスクを排出(エマージェンシーイジェクト)させる。q−qは、アーム部材381の回動支点381aの移動方向を示す直線である。
【0033】
図12は、図1の光ディスク装置1におけるエマージェンシーイジェクト機構のエマージェンシーイジェクト動作における各部の変位状態を示す図である。
図12において、(a)は、ピン400のY軸方向の移動変位ζ、(b)は、アーム部材381のY軸方向の移動変位ζ、(c)は、押圧部材380のY軸方向の移動変位ζ、(d)は、第2のギヤである原動用ギヤ3602のZ軸方向の移動変位ζ、(e)は、第1段目のギヤユニットにおける従動用ギヤ(第1のギヤ)3601と原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の結合が解除される位置、(f)は、ディスク移動機構37としてのファンクションレバー370のY軸方向の移動変位ζ、(g)は、光ディスクの−Y軸方向の移動変位ζを、それぞれ示す。図12においては、フロントパネル13のピン挿入孔16に挿入され始める(エマージェンシーイジェクトされ始める)ときのピン400の先端のY軸方向位置をPとしている。
【0034】
ピン400がピン挿入孔16から挿入されると、該ピン400の先端は、Y軸方向位置Pでアーム部材381のアーム部381bに当接し、該アーム部381bをY軸方向に押す。この結果、アーム部材381は、Y軸方向位置PでY軸方向に変位ζの特性での移動変位を開始する((b))。回動支点381aにおいて該アーム部材381と結合されている押圧部材380もY軸方向位置PでY軸方向に変位ζの特性での移動変位を開始する((c))。ピン400の先端がさらにY軸方向に移動し、Y軸方向位置Pにきたとき、押圧部材380の押圧部380aは、第1段目のギヤユニット内の原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の被押圧部390をZ軸方向に押す。この結果、該Y軸方向位置Pにおいて、該原動用ギヤ(第2のギヤ)3602はZ軸方向に変位ζの特性での移動変位を開始する。その後、該原動用ギヤ(第2のギヤ)3602がZ軸方向に変位ζdzだけ移動変位したY軸方向位置Pで、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bと原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の第2の突出部3602bの結合がオフされる((d))。該両突出部3601b、3602bの結合がオフされることにより、該Y軸方向位置Pで、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601と原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の結合が解除される((e))。
【0035】
ピン400の先端がさらにY軸方向に移動し、Y軸方向位置Pにきたとき、該ピン400の先端はアーム部材381の一方のアーム部381bから外れる(図11における状態C)。この結果、アーム部材381及び押圧部材380のY軸方向への移動が停止される。アーム部材381及び押圧部材380は該停止位置に保持される。ピン400の先端がさらにY軸方向に移動し、Y軸方向位置Pにきたとき、ディスク移動機構37としてのファンクションレバー370に当接するが、この時は既に原動用ギヤ3602は従動ギヤ3601との結合が解除されているため、該ピン400は、ローディングモータ350側の負荷を、ファンクションレバー370や原動用ギヤ3602などを介して、従動ギヤ3601から受けることなく、該ファンクションレバー370をY軸方向に変位ζの特性で移動変位させることができる((f))。ファンクションレバー370の該移動変位により、装置内の光ディスクは、ピン400の先端がY軸方向位置Pにきたとき、ディスク移動機構37により、−Y軸方向に変位ζの特性での排出移動を開始する((g))。ピン400の先端がY軸方向位置Pにきたとき、ディスク移動機構37によって光ディスクが、フロントパネル13の開口13aから排出され、エマージェンシーイジェクトが終了する。
【0036】
エマージェンシーイジェクトの終了後、ピン400はピン挿入孔160、16から抜かれる。ピン400が抜かれると、引張りコイルばね382の弾性復元力によって、アーム部材381がピン400の表面400aとの当接状態を解かれ、回動支点381a周りに反時計方向に回動するとともに、押圧部材380が−Y軸方向に移動して、押圧部380aを原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の被押圧部390上から−Y軸方向に退避させる。このとき、従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bと原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の第2の突出部3602bとがXY平面内でオーバーラップしていなければ、該原動用ギヤ3602は、次段のギヤユニットの従動用ギヤ3603に係合されたまま、圧縮コイルばね391の弾性復元力で−Z軸方向に移動変位し、隣接する第1の突出部3601b間の空間部に第2の突出部3602bが入り込み、該両突出部3601b、3602bが互いに結合された状態に復帰する。この状態において、原動用ギヤ3602上の高さ位置保持用突出部3602dは従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bと係合された状態となっている。従動用ギヤ(第1のギヤ)3601の第1の突出部3601bと原動用ギヤ(第2のギヤ)3602の第2の突出部3602bとがXY平面内でオーバーラップしている場合は、その後、光ディスク装置1の電源がオン状態にされ、ローディングモータ350が回転駆動されると、該ローディングモータ350の回転により、ウォームギヤ351を介して従動用ギヤ3601が回転し、隣接する第1の突出部3601b間の空間部に第2の突出部3602bが入り込み、該両突出部3601b、3602bが互いに結合された状態に復帰する。該復帰動作を円滑に行う為に原動用ギヤ3602の第2の突出部3602bは、従動用ギヤ3601の第1の突出部3601b間の周方向の間隔よりも若干(中心軸3602cに対する開角で5度程度)小さくした構成としている。次に、該従動用ギヤ3601の第1の突出部3601bが原動用ギヤ3602の第2の突出部3602bに当接して、原動用ギヤ3602が回転し、駆動力が、従動用ギヤ3603、原動用ギヤ3604、従動用ギヤ3605などを経てファンクションレバー370に伝達される。これによって、ファンクションレバー370が移動変位し、ディスク移動機構37は初期状態に戻る。
【0037】
本発明の実施例としての上記光ディスク装置1によれば、ローディングモータ350とディスク移動機構37との間のギヤ列360における異軸ギヤ間すなわち原動用ギヤ3602と次段の従動用ギヤ3603と間の係合を保持したまま、エマージェンシーイジェクトを行うことができる。この結果、ギヤ間における歯相互間の脱着動作に起因した歯の損傷や劣化をなくすことができ、光ディスク装置としての信頼性を確保することができる。また、ギヤの軸位置調整用の機構や軸移動案内用の機構も不要となり、ギヤ列の小型化や薄型化も図り易くなる。
【0038】
なお、押圧部材380における押圧部380aは、該押圧部材380と一体状に構成されてもよいし、該押圧部材380と別個の部品として構成されてもよい。また、原動用ギヤ3602の被押圧部390も、該原動用ギヤ3602と一体状に構成されてもよいし、該原動用ギヤ3602と別個の部品として構成されてもよい。また、アーム部材381のアーム部381bは、シャーシ320の側壁320sの内面320s側に対し、直接当接してもよいし、または板状部材やシート状部材などを介して間接的に当接してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例としての光ディスク装置の外観図である。
【図2】図1の光ディスク装置においてトップカバーを外したときの構成を示す図である。
【図3】図1の光ディスク装置においてボトムケースを外したときの構成を示す図である。
【図4】図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作前の状態を示す図である。
【図5】図4のエマージェンシーイジェクト機構を構成するギヤユニットの斜視図である。
【図6】図5のギヤユニットを構成する原動用ギヤの斜視図である。
【図7】図4のギヤユニットの軸方向断面図であって、従動用ギヤと原動用ギヤが結合された状態にあるときの構成を示す図である。
【図8】図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構の構成を示す斜視図であって、エマージェンシーイジェクト動作中の状態を示す図である。
【図9】図8の構成において押圧部材を除いたときの状態を示す図である。
【図10】図4のギヤユニットの軸方向断面図であって、図8の状態にあるときの構成を示す図である。
【図11】図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構のアーム部材の動作説明図である。
【図12】図1の光ディスク装置におけるエマージェンシーイジェクト機構のエマージェンシーイジェクト動作における各部の変位状態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…光ディスク装置、
11…トップカバー、
11a…孔、
12…ボトムケース、
13…フロントパネル、
13a…開口、
14…イジェクトボタン、
15…LED、
16、160…ピン挿入孔、
200…トラバースユニット、
20…クランパ、
21…ターンテーブル、
22…スピンドルモータ、
23…光ピックアップ、
24…メカデッキ部材、
26…リードスクリュー、
27…スライドモータ、
28a、28b…ガイド部材、
301…インサートローラ、
302…ガイド部材、
303…イジェクトローラ、
304…ディスクローラ、
305…インサートアーム、
306…アクションレバー、
308…回動リンク、
309…イジェクトアーム、
310…ディスクレバー、
320…シャーシ、
324…ローディングスイッチ、
325…イジェクトスイッチ、
326…メカモードスイッチ、
340…カムスライダー、
350…ローディングモータ、
351…ウォームギヤ、
360…ギア列、
3601、3603、3605…従動用ギヤ、
3601b…第1の突出部、
3602、3604…原動用ギヤ、
3602b…第2の突出部、
3602d…高さ位置保持用突出部、
37…ディスク移動機構、
370…ファンクションレバー、
370r…ラック部、
380…押圧部材、
380a…押圧部、
381…アーム部材、
381a…回動支点、
382…引張りコイルばね、
390…被押圧部、
391…圧縮コイルばね、
400…ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクのエマージェンシーイジェクト動作が可能な光ディスク装置であって、
上記光ディスクを装置内部で移動させるディスク移動機構と、
上記ディスク移動機構を駆動するための駆動力を発生するローディングモータと、
ギヤを備えて構成され、上記ローディングモータの駆動力を上記ディスク移動機構に伝達する伝達系と、
を備え、
上記伝達系には、前段のギヤから駆動力を受ける従動用ギヤと、該従動用ギヤと同軸に配されて次段のギヤに駆動力を与える原動用ギヤとが設けられ、該従動用ギヤの内径側において該原動用ギヤが軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能に結合されると共に、該原動用ギヤは、該従動用ギヤに対して軸方向に移動変位することにより、次段のギヤと係合されたままの状態で該従動用ギヤとの上記結合を解除される構成であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクのエマージェンシーイジェクト動作が可能な光ディスク装置であって、
上記光ディスクを装置内部で移動させるディスク移動機構と、
上記ディスク移動機構を駆動するための駆動力を発生するローディングモータと、
上記ローディングモータの駆動力を上記ディスク移動機構に伝達する伝達系を形成するギヤ列と、
を備え、
上記ギヤ列が、前段のギヤから駆動力を受ける従動用ギヤと、該従動用ギヤと同軸に配されて次段のギヤに駆動力を与える原動用ギヤとを有するギヤユニットを複数個設けた構成であり、
上記複数個のギヤユニットのうち少なくとも1つが、従動用ギヤである第1のギヤの内径側において原動用ギヤである第2のギヤが軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能に結合されると共に、該第2のギヤは、該第1のギヤに対して軸方向に移動変位することにより、次段のギヤと係合されたままの状態で該第1のギヤとの上記結合を解除される構成であり、
エマージェンシーイジェクト時、外力によって、上記第2のギヤを軸方向に移動変位させて上記第1のギヤとの上記結合を解除し、上記伝達系を切断状態にして、上記ディスク移動機構にディスク排出動作を行わせ上記光ディスクを装置外に排出させる構成としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクのエマージェンシーイジェクト動作が可能な光ディスク装置であって、
上記光ディスクを装置内部で移動させるディスク移動機構と、
上記ディスク移動機構を駆動する駆動力を発生するローディングモータと、
上記ローディングモータと上記ディスク移動機構との間に配され、該ローディングモータの駆動力を該ディスク移動機構に伝達する伝達系を形成するギヤ列と、
光ディスクが引き込まれる方向と同方向に移動して上記ギヤ列中の少なくとも1つのギヤに軸方向の押圧力を与える押圧部材と、
上記押圧部材上に設けられた回動支点において該押圧部材に結合され、該回動支点の両側に伸びたアーム部が該回動支点周りに回動可能なアーム部材と、
上記押圧部材に対し上記移動に抗する方向の弾性復元力を作用させるばねと、
上記ディスク移動機構、上記ローディングモータ及び上記ギヤ列が取付けられたシャーシと、
を備え、
上記ギヤ列は、前段のギヤから駆動力を受ける従動用ギヤと、該従動用ギヤと同軸に配されて次段のギヤに駆動力を与える原動用ギヤとを有するギヤユニットを複数個設けた構成であり、かつ、該複数個のギヤユニットのうち少なくとも1つが、従動用ギヤである第1のギヤの内径側において原動用ギヤである第2のギヤが軸方向に移動可能かつ該従動用ギヤと一体で回転可能に結合されると共に、該第2のギヤは、該第1のギヤに対して軸方向に移動変位することにより、次段のギヤと係合されたままの状態で該第1のギヤとの上記結合を解除される構成であり、
上記アーム部材は、装置内にエマージェンシーイジェクト動作用のピンが差し込まれたとき、上記アーム部のうち、一方のアーム部が該ピンの先端によって押され、他方のアーム部が上記シャーシの内面側に当接した状態のまま、上記ばねの弾性復元力に抗して光ディスクの引き込まれる方向と同方向に移動しながら上記回動支点周りに回動し、上記ピンの先端が上記一方のアーム部から外れたとき移動及び回動を停止する構成であり、
上記押圧部材は、装置内に上記ピンが差し込まれたとき、上記アーム部材の上記移動により上記ばねの弾性復元力に抗して光ディスクの引き込まれる方向と同方向に移動し、該移動によって、上記1つのギヤユニットの上記第2のギヤに軸方向の押圧力を与えて該第2のギヤを該軸方向に移動変位させ、上記第1のギヤとの上記結合を解除させる構成であり、
上記第2のギヤの上記第1のギヤとの上記結合が解除され、上記伝達系が切断状態とされているとき、上記ピンがさらに移動して上記ディスク移動機構にディスク排出動作を行わせ上記光ディスクを装置外に排出させる構成としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
上記第1のギヤは、上記第2のギヤと結合される内径側の部分に半径方向内側に突出した複数の第1の突出部を有し、また、上記第2のギヤは、上記第1のギヤと結合される部分に、半径方向外側に突出しかつ上記第1の突出部間の周方向の間隔よりも周方向の幅寸法を小さくされた複数の第2の突出部を有し、該第2のギヤが軸方向に移動変位して該第2の突出部が該第1の突出部に対し軸方向に重ならなくなったとき、該第1、第2のギヤ間の上記結合が解除されて、上記ギヤ列による伝達系が切断状態とされる構成である請求項2または請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第1のギヤは、上記ローディングモータの回転軸に結合されたギヤと係合される構成である請求項2から4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
上記第2のギヤは、上記押圧部材で押される位置に、全周に傾斜面が形成された被押圧部を備えた構成である請求項2または請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
上記1つのギヤユニットは、上記第1のギヤと上記第2のギヤとの間にばねを備え、該第2のギヤが該ばねの弾性復元力により軸方向に押された構成である請求項2または請求項3のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項8】
上記アーム部材は、上記移動及び回動を停止した状態のとき、上記一方のアーム部が上記ピンの側面に当接し、上記他方のアーム部が上記シャーシの内面側に当接し、上記回動支点が該両当接位置間にある構成である請求項3に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−80034(P2010−80034A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250694(P2008−250694)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】