説明

光ディスク記録再生装置の記録制御方法

【課題】 光学式ピックアップに組み込まれているレーザーダイオードから照射されるレーザー光にて光ディスクに信号の記録動作を行う光ディスク記録再生装置の記録制御方法を提供する。
【解決手段】 信号トラックにレーザー光のスポットを追従させるトラッキング制御動作を行うトラッキングサーボ回路19を不動作状態にさせた状態において、光ディスクDに記録されている信号を再生する場合に得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出し、検出されたレベル及びフォーカスサーボ回路20のデフォーカス値に基づいてレーザー光の信号トラックに対するスポット形状を検出し、検出されたスポット形状に基いて記録ストラテジを設定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式ピックアップに組み込まれているレーザーダイオードから照射されるレーザー光にて光ディスクに信号の記録動作を行う光ディスク記録再生装置の記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオードから照射されるレーザー光によって光ディスクへの信号の記録動作を行う光ディスク記録再生装置が普及している。光ディスク記録再生装置としては、CDと呼ばれる光ディスクを使用するものやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般的である。
【0003】
光ディスクへの信号の記録動作は、レーザー光にてピットを光ディスクに設けられている信号トラック上に形成することによって行われるが、斯かるピットの長さは、CDディスクでは、3T、4T…11Tと規定され、DVDディスクでは、3T、4T…14Tと規定されている。
【0004】
そして、光ディスクへの記録動作は、レーザーダイオードに記録信号に対応した駆動パルス、即ち図3に示すようなパルス信号を供給することによって行われるが、斯かる駆動パルスの間隔等は、光ディスクの記録特性に応じて設定されている記録ストラテジに基いて設定される。
【0005】
斯かる記録ストラテジは、光学式ピックアップより照射されるレーザー光のスポットの形状が真円やトラックの接線方向、即ちタンジェンシャル方向の径が一定であるとして設定されている。しかしながら、レーザー光のスポットの方向は、一定ではなく光学式ピックアップ毎に相違する。
【0006】
斯かる点を改良するためにレーザー光のスポット方向を光ディスク上のトラックに対して調整する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、光ディスク記録再生装置では、光学式ピックアップから照射されるレーザー光を信号トラックに追従させる動作を行う必要があり、斯かる制御動作は一般にトラッキングサーボと呼ばれる回路によって行われている。斯かるトラッキング制御動作を行うトラッキング制御方式は種々あるが、4分割光検出器の中の対角配置されている光検出器から得られる信号を加算して得られる信号間の位相差に基づいて生成されるトラッキングエラー信号を利用する方式、即ち位相差検出方式が一般的である(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−63777号公報
【特許文献2】特開2001−266373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている技術は、光学式ピックアップの製造時に正確に調整する必要があるため、製造コストの高騰を招くという問題がある。また、このように調整された光学式ピックアップを使用しても光ディスク記録再生装置へ組み込まれた場合においては、取付位置のズレやフォーカス制御動作に伴うスポット形状の変化によりトラックに対するスポット形状との関係を一定にすることは困難である。
【0009】
このように光ディスク上のトラックとレーザー光のスポット形状との関係が一定でないため、光ディスクの記録特性に合わせて前もって設定されている記録ストラテジでは、該光ディスクへの記録動作を最適な状態にて行うことが出来ないという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る記録制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、信号トラックにレーザー光のスポットを追従させるトラッキングサーボを不動作状態にさせた状態において、光ディスクに記録されている信号を再生して得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出し、検出されたレベル及びフォーカスサーボのデフォーカス値に基づいてレーザー光の信号トラックに対するスポット形状を検出し、検出されたスポット形状に基いて記録ストラテジを設定するように構成されている。
【0012】
また、本発明は、トラッキングエラー信号のレベルに対応したスポット径のデータが記憶されたスポット径データメモリー回路を設け、検出されたトラッキングエラー信号のレベルに対応したデータを読み出すことによってスポット形状を検出するように構成されている。
【0013】
そして、本発明は、スポット形状に対応した記録ストラテジデータが複数記憶された記録ストラテジメモリー回路を設け、該記録ストラテジメモリー回路に記憶されている記録ストラテジデータを検出されたスポット形状に基いて選択することにより記録ストラテジを設定するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、信号トラックにレーザー光のスポットを追従させるトラッキングサーボを不動作状態にさせた状態において、光ディスクに記録されている信号を再生して得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出し、検出されたレベル及びフォーカスサーボのデフォーカス値に基づいてレーザー光の信号トラックに対するスポット形状を検出し、検出されたスポット形状に基いて記録ストラテジを設定するようにしたので、信号トラックへの記録動作に作用するスポットの長さを認識することが出来、その結果記録動作を行うために適した記録ストラテジを正確に設定することが出来る。
【0015】
また、本発明は、トラッキングエラー信号のレベルに対応したスポット径のデータが記憶されたスポット径データメモリー回路を設け、検出されたトラッキングエラー信号のレベルに対応したデータを読み出すことによってスポット形状を検出するようにしたので、容易にスポット形状を認識することが出来る。
【0016】
そして、本発明は、スポット形状に対応した記録ストラテジデータが複数記憶された記録ストラテジメモリー回路を設け、該記録ストラテジメモリー回路に記憶されている記録ストラテジデータを検出されたスポット形状に基いて選択することにより記録ストラテジを設定するようにしたので、光ディスクへの信号の記録動作を正確に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、光学式ピックアップから照射されるレーザー光のスポットを信号トラックに追従させるトラッキングサーボを不動状態にさせた状態において、トラッキングエラー信号のレベルを検出することによってレーザー光のスポット形状を検出するようにされている。
【実施例】
【0018】
図6は、本発明に係るトラッキングエラー信号を生成する回路、即ち位相差検出方式を説明するための回路図である。同図において、1は、光ディスクDから反射されるレーザー光を受ける4分割光検出器であり、A、B、C及びDの4つの光検出器にて構成されている。
【0019】
2は前記4分割光検出器1を構成する光検出器A及びCから得られる信号を加算する第1加算回路、3は前記4分割光検出器1を構成する光検出器B及びDから得られる信号を加算する第2加算回路である。4は前記第1加算回路2から出力される第1加算信号の周波数補正を行う第1イコライザ回路、5は前記第2加算回路3から出力される第2加算信号の周波数補正を行う第2イコライザ回路である。
【0020】
6は前記第1イコライザ回路4にて周波数補正された第1加算信号が入力される第1コンパレータ回路であり、入力される信号が所定レベル以上になるとその間H(高い)レベルとなる第1パルス信号を出力するように構成されている。7は前記第2イコライザ回路5にて周波数補正された第2加算信号が入力される第2コンパレータ回路であり、入力される信号が所定レベル以上になるとその間Hレベルとなる第2パルス信号を出力するように構成されている。
【0021】
8は前記第1コンパレータ回路6から出力される第1パルス信号と第2コンパレータ回路7から出力される第2パルス信号が入力されるとともに2つのパルス信号間の位相差を検出する位相差検出回路であり、第1パルス信号の位相が第2パルス信号の位相より進んでいるときその位相差に対応した幅の第1検出パルス信号を出力する第1出力端子8A及び第2パルス信号の位相が第1パルス信号の位相より進んでいるときその位相差に対応した幅の第2検出パルス信号を出力する第2出力端子8Bを備えている。
【0022】
9は前記位相差検出回路8に設けられている第1出力端子8Aから出力される信号が入力される第1ローパスフィルター回路、10は前記位相差検出回路8に設けられている第2出力端子8Bから出力される信号が入力される第2ローパスフィルター回路、11は前記第1ローパスフィルター回路9及び第2ローパスフィルター回路10の出力信号が入力される減算回路であり、入力される信号の差信号をトラッキングエラー信号として出力端子11Aに出力するように構成されている。
【0023】
前述したように位相差検出方式のトラッキングエラー信号生成回路は構成されているが、次に検出動作について図7及び図8に示す波形図を参照して説明する。図7の(A)は第1イコライザ回路4から出力される第1加算信号及び第2イコライザ回路5から出力される第2加算信号の波形を示すものであり、実線が第1加算信号、破線が第2加算信号である。
【0024】
図7の(B)は第1コンパレータ回路6から出力される第1パルス信号の波形を示すものであり、図7の(A)に示す比較基準レベルVRを越えた期間がHレベルで示されている。図7の(C)は第2コンパレータ回路7から出力される第2パルス信号の波形を示すものであり、図7の(A)に示す比較基準レベルVRを越えた期間がHレベルで示されている。
【0025】
図7の(D)は位相差検出回路8の第1出力端子8Aに出力される第1検出パルス信号の波形を示すものであり、第1パルス信号の位相が第2パルス信号の位相より進んでいる期間がHレベルで示されている。図7の(E)は位相差検出回路8の第2出力端子8Bに出力される第2検出パルス信号の波形を示すものであり、第2パルス信号の位相が第1パルス信号の位相より進んでいる期間がHレベルで示されている。
【0026】
図8は、前記減算回路11の出力端子11Aに出力されるトラッキングエラー信号のレベル変化を示す波形図であり、光ビームの信号トラックに対するズレ、即ちオフトラックに応じて位相差量が変化するので、トラッキングエラー信号のレベルがその位相差に応じて変化することになる。
【0027】
前述した回路によって得られるトラッキングエラー信号を利用することによって本発明に係る光ディスク記録再生装置におけるトラッキング制御動作は行われるが、次に図1に示す本発明に係る光ディスク記録再生装置について説明する。
【0028】
図1において、12はレーザー光を照射するレーザーダイオード13が組み込まれている光学式ピックアップであり、レーザーダイオード13から照射されるレーザー光を光ディスクDの記録層に合焦させる対物レンズ14、光ディスクDから反射されるレーザー光を受光し電気信号に変換するとともに前述した4分割光検出器1等にて構成される光検出器15、対物レンズ14を光ディスクDの径方向に変位させるトラッキングコイル16、対物レンズ14を光ディスクDの信号面に対して垂直方向に変位させるフォーカシングコイル17が組み込まれている。
【0029】
斯かる構成において、光学式ピックアップ12の本体は、ピックアップ送り用モーター(図示せず)によって光ディスクDの径方向に変位せしめられるように構成されている。斯かる駆動機構は周知の機構を利用すればよいので、その説明は省略する。
【0030】
18は前記光検出器15から得られる電気信号が光信号として入力される光出力信号処理回路であり、前述したようなレーザー光の信号トラックに対するズレを示すトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成回路が組み込まれている。また、前記光出力信号処理回路18には、レーザー光の記録層に対するフォーカスのズレを示すフォーカスエラー信号を出力するフォーカスエラー信号生成回路(図示せず)が組み込まれている。そして、前記光出力信号処理回路18には光ディスクDに記録されている信号の再生信号を2値化した信号を生成する信号再生回路(図示せず)が組み込まれている。斯かる光出力信号処理回路18による各種信号の生成動作は周知の回路にて行われるので、その説明は省略する。
【0031】
19は前記光出力信号処理回路18に組み込まれているトラッキングエラー信号生成回路の出力端子11Aから出力されるトラッキングエラー信号が入力されるトラッキングサーボ回路であり、入力されるトラッキングエラー信号に基くトラッキングコイル駆動信号を前記トラッキングコイル16に供給することによってトラッキング制御動作を行うように構成されている。
【0032】
20は前記光出力信号処理回路18によって生成されて出力されるフォーカスエラー信号が入力されるフォーカスサーボ回路であり、入力されるフォーカスエラー信号に基くフォーカシングコイル駆動信号を前記フォーカシングコイル17に供給することによってフォーカス制御動作を行うように構成されている。
【0033】
前記フォーカスサーボ回路20からフォーカシングコイル17に供給されるフォーカシングコイル駆動信号は、対物レンズ14を光ディスクDの記録層に合焦させる位置である動作位置に変位させる直流電圧と光ディスクDの面振動に伴うフォーカスズレを補正するために対物レンズ14を高速で変位させる高周波信号とより構成されているが、斯かる信号は周知であるので説明は省略する。
【0034】
21は前記光出力信号処理回路18内に設けられている2値化回路によって2値化された再生信号が入力されるとともにデジタル信号処理を行うデジタル信号処理回路であり、
光ディスクDに記録されている同期信号、位置情報データ及び記録信号等の各種の信号を復調するように構成されている。22は光ディスク記録再生装置の各動作を制御するシステム制御回路であり、前記デジタル信号処理回路21より生成される同期信号を利用してスピンドルモーターによる光ディスクDの回転制御動作や再生信号及び記録信号の処理動作、そして外部に設けられているパーソナルコンピューター等のホスト機器との信号の送受信動作を制御するように構成されている。斯かるシステム制御回路22は、マイクロコンピューターにて構成されており、内部に設けられているフラッシユROM等に記憶されているプログラムソフトに基いて各種の制御動作を行うように構成されている。
【0035】
23はパーソナルコンピューター等から入力される記録信号やシステム制御回路22にて生成されるテスト信号が入力される信号記録用回路であり、光ディスクDの規格に合わせて記録信号をインターリーブ等のエンコード処理する作用を有している。斯かる信号記録用回路23によるエンコード処理動作等は、周知であるのでその説明は省略する。
【0036】
24は前記信号記録用回路23によってエンコード処理された記録信号が入力されるレーザー駆動信号生成回路であり、記録信号に対応して3T、4T…14Tのピットを形成するために適した駆動信号を生成するように構成されている。25は前記レーザー駆動信号生成回路24より生成出力される駆動信号に応じてレーザーダイオード13を駆動する信号を出力するレーザー駆動回路である。
【0037】
26は前記システム制御回路22によって動作が制御されるレーザー駆動信号制御回路であり、前記レーザー駆動信号生成回路24による駆動信号の生成動作を制御するように構成されている。27は前記システム制御回路22に組み込まれている記録ストラテジメモリー回路であり、後述するレーザー光のスポット径に応じたストラテジデータがテーブルデータとして記憶されている。
【0038】
前記レーザー駆動信号制御回路26によるレーザー駆動信号生成回路24に対する制御動作は、前記記録ストラテジメモリー回路27より得られるテーブルデータに基いて行われる。即ち、レーザー駆動信号生成回路24からレーザー駆動回路25に供給される駆動信号は、図3に示すようなパルス信号であり、3Tのピットを形成する場合には、先頭パルスP1のみの信号、4Tのピットを形成する場合には、先頭パルスP1及びP2よりなる信号、そして5Tのピットを形成する場合には、先頭パルスP1、P2及びP3より成る駆動信号をレーザー駆動回路25に対して出力するように行われ、パルスP1、P2、P3の幅や各パルス間の間隔を前記記録ストラテジメモリー回路27より得られるテーブルデータに基いて変更設定するように構成されている。
【0039】
28は前記光出力信号処理回路18に設けられているトラッキングエラー信号出力端子11Aから出力されるトラッキングエラー信号のレベルを検出するトラッキングエラー信号レベル検出回路であり、トラッキングエラー信号の最大レベルであるピークレベルと最低レベルであるボトムレベルとの間のレベル、即ち図8においてEVで示すレベルを検出し、その検出されたレベルを2値化してシステム制御回路22に対して出力するように構成されている。
【0040】
29は前記フォーカスサーボ回路20によるフォーカシングコイル17に供給する制御電圧であるデフォーカス値を設定するデフォーカス値設定回路であり、前記システム制御回路22によって動作が制御されるように構成されている。30は前記システム制御回路22内に組み込まれているスポット径データメモリー回路であり、デフォーカス値とエラー信号のレベルEVとスポット径との関係を示すデータがテーブルデータとして記憶されている。
【0041】
斯かる構成において、トラッキングサーボ回路19の動作不動作は、システム制御回路22によって選択制御可能に構成されており、トラッキングエラー信号レベル検出回路28によるトラッキングエラー信号のレベルEVの検出動作は、トラッキングサーボ回路19を不動作状態にさせた状態にて行うように構成されている。また、トラッキングエラー信号のレベル検出動作を行う信号は、例えば光ディスクDの内周側にレーザー出力の設定動作を行うために設けられている試し書き領域に記録されているテスト信号を利用するように構成されている。
【0042】
また、記録用の光ディスクDには、プリグルーブと呼ばれる溝が形成されており、このプリグルーブから得られるウォブル信号を復調して得られる同期信号や位置情報データに基いて光ディスクDの回転駆動動作や光学式ピックアップ12の変位動作等を制御するように構成されている。
【0043】
以上に説明したように本発明に係る光ディスク記録再生装置は構成されているが、次に動作について説明する。光ディスクDに記録されている信号の再生動作を行う場合には、スピンドルモーターの回転制御動作が行われ、光ディスクDは所定の線速度にて回転駆動されることになる。斯かる線速度を一定にするための制御動作は、光ディスクDから読み出される同期信号とシステム制御回路22により制御されるべく接続されている同期信号生成回路(図示せず)から生成される同期信号とを同期させることによって行われるが、斯かる動作は周知であるのでその説明は省略する。
【0044】
光ディスクDに記録されている信号を再生するためにレーザーダイオード13に供給される駆動信号は、再生動作を行うために必要なレーザー出力が得られる値になるように設定されている。レーザーダイオード13から照射されるレーザー光は、対物レンズ14によって集光されて光ディスクDの記録層である信号面に合焦されることになるが、斯かる合焦動作は、フォーカスサーボ回路20によるサーボ動作によって行われる。
【0045】
前記フォーカスサーボ回路20によるフォーカス制御動作は、光ディスクDの信号面から反射されるレーザー光が照射される光検出器15より得られる信号を利用して行われる。前記光検出器15より得られる信号は、光出力信号処理回路18に入力され、その信号に基いてフォーカスエラー信号が生成され、そのフォーカスエラー信号はフォーカスサーボ回路20に入力される。
【0046】
斯かるフォーカスエラー信号がフォーカスサーボ回路20に入力されると、該フォーカスサーボ回路20からフォーカシングコイル17に対してフォーカスエラー信号のレベルを小さくする方向に対物レンズ14を変位させる駆動信号が供給される。斯かる駆動信号がフォーカシングコイル17に供給される結果、レーザー光を光ディスクDの信号面に合焦させる動作、即ちフォーカス制御動作を行うことが出来る。
【0047】
前述したようにフォーカス制御動作は行われるが、トラッキング制御動作も同様に行うことが出来る。即ち、レーザーダイオード13から照射されるレーザー光のスポットが光ディスクD上の信号トラックより外れると、その外れの大きさに対応したレベルのトラッキングエラー信号が光出力信号処理回路18のトラッキングエラー信号出力端子11Aから出力される。
【0048】
斯かるトラッキングエラー信号がトラッキングサーボ回路19に入力されると、該トラッキングサーボ回路19からトラッキングコイル16に対してトラッキングエラー信号のレベルを小さくする方向に対物レンズ14を変位させる駆動信号が供給される。斯かる駆動信号がトラッキングコイル16に供給される結果、レーザー光を光ディスクDの信号面に設けられている信号トラックに追従させる動作、即ちトラッキング制御動作を行うこと
が出来る。
【0049】
前述したフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作が行われる結果、光ディスクDの信号トラック上に記録されている信号の読み取り動作を行うことが出来る。光ディスクDの信号トラックには、長さの異なる複数のピットにより信号が記録されており、斯かるピットの長さに応じたRF信号が光出力信号処理回路18にて生成されるとともに2値化された信号が出力される。
【0050】
前記光出力信号処理回路18より出力される2値化信号は、デジタル信号処理回路21に入力され、該デジタル信号処理回路21によって復調動作が行われる。前記デジタル信号処理回路21によって復調されたデータ信号は、システム制御回路22を介してパーソナルコンピューター等へ出力されることになる。
【0051】
以上に説明したように本実施例における再生動作は行われるが、次に記録動作について説明する。記録動作時におけるスピンドルモーターによる光ディスクDの回転制御動作、トラッキングサーボ回路19によるトラッキング制御動作及びフォーカスサーボ回路20によるフォーカス制御動作は前述した再生動作時と同様に行われる。
【0052】
パーソナルコンピューターより出力される記録信号は、信号記録用回路23に入力されるとともに該信号記録用回路23によってエンコード処理される。前記信号記録用回路23によってエンコード処理された記録信号は、レーザー駆動信号生成回路24に入力されるので、該レーザー駆動信号生成回路24は、入力される記録信号に応じた長さのピットを光ディスクDの信号トラックに形成するための駆動信号をレーザー駆動回路25に対して出力する。
【0053】
斯かる場合にレーザー駆動回路25に供給される駆動信号のパルス波形は、記録ストラテジメモリー回路27から選択されたストラテジデータに基くレーザー駆動信号制御回路26による制御動作によって生成されることになる。このようにして生成制御されたパルス波形の駆動信号がレーザー駆動回路25に供給されると、そのパルス波形に対応した駆動信号が該レーザー駆動回路25からレーザーダイオード13に対して供給される。
【0054】
斯かる駆動信号がレーザーダイオード13に供給されると、該レーザーダイオード13からパルスに応じたレーザー光が照射され、光ディスクDの信号トラックにピットが形成されることになる。斯かる動作によって形成されるピットの長さは、光ディスクDの信号規格に対応した3T、4T…14Tとなる。
【0055】
以上に説明したように本実施例における記録動作は行われるが、次に本発明の要旨であるレーザー光のスポット形状の認識動作について説明する。
【0056】
図2は、光ディスクDの信号トラックに形成されているピットPとレーザー光のスポットSとの関係を示すものである。図2(A)は、スポットSの形状がほぼ円形、図2(B)は、スポットSの形状が楕円であり、信号トラック方向に対して長径方向が45度程度傾いた状態にある場合、図2(C)は、スポットSの形状が楕円であり、信号トラック方向に対して長径方向が直角にある場合である。
【0057】
光ディスクDにピットPを形成するために作用するレーザー光のスポットSは、図2において、ピットPと重なっている部分であり、各状態より明らかなようにピットPの長さ方向、即ちタンジェンシャル方向の長さである有効長が相違することになる。
【0058】
本発明は、スポットSの形状の相違に起因する有効長の相違による記録特性の悪化を改
善するものである。即ち、有効長の変化に応じて記録ストラテジを変更するようにしたものである。
【0059】
次に有効長を相違させる原因となるスポットSの形状を検出する動作について説明する。斯かる検出動作は、光ディスクDに設けられている試し書き領域にレーザー出力の調整時に記録されているテスト信号を再生することにより行われるが、斯かる再生動作は、トラッキングサーボ回路19を不動作状態にさせた状態にて行われる。
【0060】
光学式ピックアップ12の試し書き領域への移動動作は、サーチと呼ばれる動作によって行うことが出来る。即ち、光ディスクDの信号トラックに記録されている位置情報を光学式ピックアップ12のトラックジャンプ動作を繰り返し行うことによって読み取ることにより該光学式ピックアップ12を所望のトラック、即ちテスト信号が記録された位置に移動させることが出来る。
【0061】
斯かる動作によって光学式ピックアップ12が所望の位置まで移動したことが認識されると、フォーカスサーボ回路20によるフォーカス制御動作を行った状態のままで、トラッキングサーボ回路19を不動作状態にする動作が行われる。斯かる状態にあるとき光ディスクDの試し書き領域に記録されているテスト信号の読み出し動作が行われるが、トラッキングサーボ回路19が不動状態にあるためテスト信号を正常に読み出すことは出来ない。また、斯かる状態では、レーザー光のスポットSと信号トラックとのズレが大きくなるため、トラッキングエラー信号出力端子11Aに出力されるトラッキングエラー信号のレベルが大きく変動することになる。
【0062】
本発明では、トラッキングエラー信号出力端子11Aから出力されるトラッキングエラー信号のレベルEVをトラッキングエラー信号レベル検出回路28が検出し、その検出されたレベル値をシステム制御回路22に対して出力する動作を行っている。従って、システム制御回路22は、トラッキングエラー信号のレベルEVを認識することが出来る。
【0063】
次に、このトラッキングエラー信号のレベルEVとレーザー光の照射形状であるスポットSのラジアル方向のスポット長L、即ちラジアル方向のスポット径との関係について図4及び図5を参照して説明する。
【0064】
図4は光学式ピックアップ12の光学系に非点収差がない場合におけるデフォーカス値、トラッキングエラー信号EVとスポット長Lとの関係を示すものである。同図において、実線Tは、フォーカスサーボ回路20のデフォーカス値の変化に対するトラッキングエラー信号のレベルEVの変化を示し、実線Lは、フォーカスサーボ回路20のデフォーカス値の変化に対するスポット長Lの変化を示すものである。
【0065】
図5は光学式ピックアップ12の光学系に非点収差がある場合におけるデフォーカス値、トラッキングエラー信号EVとスポット長Lとの関係を示すものである。同図において、実線Tは、フォーカスサーボ回路20のデフォーカス値の変化に対するトラッキングエラー信号のレベルEVの変化を示し、実線Lは、フォーカスサーボ回路20のデフォーカス値の変化に対するスポット長Lの変化を示すものである。
【0066】
図4及び図5に示すトラッキングエラー信号のレベルEVの変化とスポット長Lの変化から明らかなようにトラッキングエラー信号のレベルEVとスポット長Lとの間には、対照的に変化するという関係がある。従って、各デフォーカス値に対するトラッキングエラー信号のレベルEVとスポット長Lとの関係を示すデータをテーブルデータとしてスポット径データメモリー回路30に記憶させておけば、トラッキングエラー信号レベル検出回路28によってトラッキングエラー信号のレベルEVを検出することによってスポット長
Lを求めることが出来る。
【0067】
前述した動作によって、スポットSのラジアル方向の長さであるスポット長Lを検出することが出来るが、レーザー光のスポットSの面積は、光学式ピックアップ12の特性から略同一になるように設定されているので、スポットSの面積が略同一であるとすると、ラジアル方向の長さLの長さが長くなるに従って信号トラック方向の長さが短くなり、その結果、ピットPのトラック方向の長さに対するスポットSの有効長、即ちピットP上に位置するスポットSの長さが短くなる。
【0068】
このようにして信号トラックに対するスポットSの形状を検出することが出来るので、トラッキングエラー信号のレベルEVから有効長を認識することが出来ることになる。従って、光ディスク記録再生装置の製造時にスポットSのラジアル方向の径に応じた記録用パルスを生成するために必要な記録ストラテジのデータを記録ストラテジメモリー回路27にテーブルデータとして記憶させておくとともにそのデータを選択して使用することによって記録動作を行うために適したレーザーダイオード13の駆動信号をレーザー駆動信号生成回路24から生成させることが出来る。
【0069】
尚、本実施例では、光ディスクDに設けられている試し書き領域に記録されている信号を再生する場合に得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出するようにしたが、信号の記録領域に記録されている信号を再生する場合に得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出するように構成することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る光ディスク記録再生装置の一実施例を示すブロック回路図である。
【図2】光ディスクの信号トラックに形成されているピットとレーザー光のスポットとの関係を示す説明図である。
【図3】本発明の動作を説明するための信号波形図である。
【図4】本発明の動作を説明するための特性図である。
【図5】本発明の動作を説明するための特性図である。
【図6】本発明に使用されるトラッキングエラー信号生成回路の一実施例を示すブロック回路図である。
【図7】本発明の動作を説明するための信号波形図である。
【図8】本発明の動作を説明するための信号波形図である。
【符号の説明】
【0071】
D 光ディスク
12 光学式ピックアップ
13 レーザーダイオード
15 光検出器
16 トラッキングコイル
17 フォーカシングコイル
18 光出力信号処理回路
19 トラッキングサーボ回路
20 フォーカスサーボ回路
21 デジタル信号処理回路
22 システム制御回路
23 信号記録用回路
24 レーザー駆動信号生成回路
25 レーザー駆動回路
26 レーザー駆動信号制御回路
27 記録ストラテジメモリー回路
28 トラッキングエラー信号レベル検出回路
29 デフォーカス値設定回路
30 スポット径データメモリー回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4分割光検出器の中の対角配置されている光検出器から得られる信号を加算して得られる信号間の位相差に基づいて生成されるトラッキングエラー信号を利用してトラッキング制御動作を行うように構成された光学式ピックアップを使用する光ディスク記録再生装置の記録制御方法であり、信号トラックにレーザー光のスポットを追従させるトラッキングサーボを不動作状態にさせた状態において、光ディスクに記録されている信号を再生する場合に得られるトラッキングエラー信号のレベルを検出し、検出されたレベル及びフォーカスサーボのデフォーカス値に基づいてレーザー光の信号トラックに対するスポット形状を検出し、検出されたスポット形状に基いて記録ストラテジを設定するようにしたことを特徴とする光ディスク記録再生装置の記録制御方法。
【請求項2】
トラッキングエラー信号のレベルに対応したスポット径のデータが記憶されたスポット径データメモリー回路を設け、検出されたトラッキングエラー信号のレベルに対応したデータを読み出すことによってスポット形状を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の記録制御方法。
【請求項3】
スポット形状に対応した記録ストラテジデータが複数記憶された記録ストラテジメモリー回路を設け、該記録ストラテジメモリー回路に記憶されている記録ストラテジデータを検出されたスポット形状に基いて選択することにより記録ストラテジを設定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−155777(P2006−155777A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346346(P2004−346346)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】