説明

光デバイスユニット及び検出装置

【課題】ラマン分光法における検出感度を向上可能な光デバイスユニット等を提供する。
【解決手段】検出装置に着脱可能な光デバイスユニットであって、電気伝導体を有し、光源Aからの光を受けて生じたラマン散乱光を増強可能な光デバイス4と、前記光デバイス4に気体試料を誘導する第1の誘導部420とを含む。前記第1の誘導部420は、前記気体試料を取り込み口から取り込む第1の流路を有し、前記第1の流路は、前記取り込み口と前記光デバイス4との間に、外光の入射線を遮る内壁面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスユニット及び検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光装置は、一般に、検出対象である物質に依存するラマン散乱光を検出してラマンスペクトルを得る検出器を含み、ラマンスペクトルによる分光分析を行い、検出対象である物質を特定することができる。しかしながら、ラマン散乱光の信号強度は、一般に、微弱であり、検出感度が低かった。
【0003】
特許文献1は、ハンドヘルドラマン体液分析器を開示し、金ゾルゲル・ストリップで表面増強ラマン散乱を提供し、ラマン散乱光の信号強度を高めている。
【0004】
なお、励起光を例えば金属表面に照射することで局在プラズモンを生じさせることができ、励起光と局在プラズモンとの結合で局所的に電場を増強することができる。表面増強ラマン散乱では、ラマン散乱光は、増強電場によって増強されると考えられている。
【0005】
特許文献2は、安定した偏光面制御が可能な垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を開示し、このような垂直共振器面発光レーザー等で励起光を提供することができる。
【0006】
励起光と局在プラズモンとの結合の際に、局在プラズモン共鳴による光吸収が起こり、例えば、特許文献3には、表面に金属微粒子が固定された基板による局在表面プラズモン共鳴を利用して、センサー感度を向上する手法が開示されている。特許文献4には、長波長側にシフトする共鳴ピークと短波長側にシフトする共鳴ピークをもつ局在プラズモン共鳴センサーの技術が開示されている。また、特許文献5には、複数の波長に対して共振可能とするために複数の共振領域により微小共振器が構成された電場増強デバイスの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−529006号公報
【特許文献2】特許第3482824号公報
【特許文献3】特開2000−356587号公報
【特許文献4】特開2007−10648号公報
【特許文献5】特開2009−250951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ラマン分光装置は、一般に、検出対象である物質が吸着可能な金属ナノ構造等の電気伝導体を有する光デバイスを含む。電気伝導体に光を入射させ、標的物を光デバイス付近の増強電場に誘導することで増強電場に起因するラマン散乱光を検出できる。標的物の種類や光デバイスの種類によっては、ラマン散乱光の検出感度は、低いこともある。
【0009】
本発明の幾つかの態様によれば、検出感度を向上可能な光デバイスユニット及び検出装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、検出装置に着脱可能な光デバイスユニットであって、
電気伝導体を有し、前記検出装置の光源からの光を受けて生じたラマン散乱光を増強可能な光デバイスと、
前記光デバイスに気体試料を誘導する第1の誘導部とを含むことを特徴とする光デバイスユニットに関係する。
【0011】
本発明の一態様によれば、使用済みの光デバイスユニットを検出装置から取り外し、新しい光デバイスユニットを検出装置に取り付けることができる。このように、光デバイスユニットを交換することで、第1の誘導部及び光デバイスに付着した気体試料が、次の検出又は測定に影響することなく、検出装置の検出感度を高めることができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記第1の誘導部は、前記気体試料を取り込み口から取り込む第1の流路を有してもよく、
前記第1の流路は、前記取り込み口と前記光デバイスとの間に、外光の入射線を遮る内壁面を有してもよい。
【0013】
このようにすれば、外光が光デバイスに到達し難くなり、ラマン散乱光(信号)に対する外光(ノイズ)の割合が低下する。従って、ラマン散乱光を検出する際のS/N比(signal-to-noise ratio)が向上し、検出感度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、光デバイスユニットは、
前記第1の流路に空気中の浮遊物を除去するフィルターをさらに含んでもよく、
前記フィルターは、前記外光を遮光してもよい。
【0015】
このようにすれば、フィルターの存在により、浮遊物及び外光が光デバイスに到達し難くなり、検出感度を高めることができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、光デバイスユニットは、
前記検出装置によって読み取り可能であり、且つ前記光デバイスを識別する識別コードをさらに含んでもよい。
【0017】
このようにすれば、検出装置は、光デバイスの種類又は光デバイスで検出可能な気体試料を把握することができる。また、検出装置がラマンスペクトルによる分光分析をさらに行う場合、このような検出装置(ラマン分光装置)は、光デバイスに対応する気体試料(標的物)を検出又は特定し易い。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記第1の誘導部は、前記第1の流路と連結する第2の流路を有してもよく、
前記第2の流路は、前記光デバイスに臨む領域で、前記気体試料を旋回させてもよい。
【0019】
このようにすれば、誘導部の第2の流路の存在により、気体試料が光デバイスに入り込む確率が高くなる。従って、ラマン散乱光の信号強度が安定し、例えば、気体試料が微量である場合であっても、気体試料(標的物)を検出又は特定し易くなる。
【0020】
また、本発明の他の態様は、上記に記載の光デバイスユニットと、
前記第1の誘導部と接続可能な第2の誘導部と、
前記光源と、
前記前記光源からの前記光を前記光デバイスの前記電気伝導体に入射させる第1の光学系と、
前記電気伝導体により散乱または反射された光の中から前記ラマン散乱光を検出する検出器とを含み、
前記第2の誘導部は、前記気体試料を排出口に誘導することを特徴とする検出装置に関係する。
【0021】
本発明の他の態様によれば、光デバイスユニットの第1の誘導部と検出装置の第2の誘導部とを接続することで、光デバイスユニットを交換可能な検出装置を提供することができる。
【0022】
また、本発明の他の態様では、前記光デバイスの前記電気伝導体は、複数の突起を有する第1の突起群を有してもよく、
前記第1の突起群の前記複数の突起の各々は、前記電気伝導体の前記仮想平面に対して平行な方向に沿って、第1の周期で配列されてもよく、
前記光源からの前記光が有する偏光方向の前記仮想平面に平行な成分と前記第1の突起群の配列方向とが平行になるように、前記第1の光学系は、前記光源からの前記光を前記第1の突起群に入射させてもよい。
【0023】
このようにすれば、光デバイスにおける増強電場を第1の突起群で高めることができる。また、偏光方向の仮想平面に平行な成分が第1の突起群の配列方向と平行である直線偏光を光デバイスに入射できる。これにより、伝搬型の表面プラズモンを励起できる。
【0024】
また、本発明の他の態様では、前記第1の突起群の前記複数の突起の各々は、前記第1の突起群の頂面で、電気伝導体により形成される第2の突起群を有してもよく、
前記第1の突起群の前記複数の突起のいずれか1つに対応する前記第2の突起群の複数の突起の各々は、前記仮想平面に平行な前記方向に沿って、前記第1の周期よりも短い第2の周期で配列されてもよい。
【0025】
このようにすれば、光デバイスにおける増強電場を第2の突起群でも高めることができる。
【0026】
また、本発明の他の態様では、前記第1の突起群が配列される面であって前記第1の突起群の隣り合う突起間の面に、電気伝導体により形成される第3の突起群を有してもよく、
前記第3の突起群の複数の突起の各々は、前記第1の突起群の前記隣り合う突起間で、前記仮想平面に平行な前記方向に沿って、前記第1の周期よりも短い第3の周期で配列されてもよい。
【0027】
このようにすれば、光デバイスにおける増強電場を第3の突起群でも高めることができる。
【0028】
また、本発明の他の態様では、前記光源からの前記光の進行方向を前記仮想平面に向かう垂線に対して傾斜させた場合の表面プラズモン共鳴が、第1の共鳴ピーク波長と第2の共鳴ピーク波長の各々で生じてもよく、
前記第1の共鳴ピーク波長を有する第1の共鳴ピーク波長帯域は、
前記表面プラズモン共鳴に起因する表面増強ラマン散乱における励起波長を有してもよく、
前記第2の共鳴ピーク波長を有する第2の共鳴ピーク波長帯域は、
前記表面増強ラマン散乱におけるラマン散乱波長を有してもよい。
【0029】
このようにすれば、第1の周期で配列された第1の突起群に入射された光により、第1の共鳴ピーク波長と第2の共鳴ピーク波長の各々で表面プラズモン共鳴が生じる。このとき、第1の共鳴ピーク波長を含む第1の共鳴ピーク波長帯域には、表面増強ラマン散乱における励起波長が含まれ、第2の共鳴ピーク波長を含む第2の共鳴ピーク波長帯域には、表面増強ラマン散乱におけるラマン散乱波長が含まれるように、第1の周期と光の入射角度が設定される。これにより、励起波長における電場増強度とラマン散乱波長における電場増強度を向上すること等が可能になる。
【0030】
また、本発明の他の態様では、検出装置は、
前記ラマン散乱光を前記検出器に導く第2の光学系をさらに含んでもよく、
前記検出器は、前記第2の光学系を介して前記ラマン散乱光を受光してもよい。
【0031】
このようにすれば、第2の光学系でラマン散乱光を効率良く受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(A)、図1(B)、図1(C)、図1(D)は、本実施形態の光デバイスユニットを含む検出装置の構成例。
【図2】図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)、図2(E)は、ラマン散乱光の検出原理の説明図。
【図3】図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)は、本実施形態の光デバイスユニットを含む検出装置の具体的な構成例。
【図4】図3(A)の検出装置のブロック図の1例。
【図5】図5(A)、図5(B)は、垂直共振器面発光レーザーの構造例。
【図6】光源の特性の説明図。
【図7】図7(A)、図7(B)、図7(C)は、誘導部及び排出流路の構成例。
【図8】図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)、図8(E)は、フォトリソグラフィー法の概要説明図。
【図9】図9(A)、図9(B)、図9(C)、図9(D)、図9(E)は、金属ナノ構造の製造プロセスの概要説明図。
【図10】図10(A)、図10(B)、図10(C)は、金属ナノ構造で形成される増強電場の概要説明図。
【図11】2つの共鳴ピークの概要説明図。
【図12】センサーチップの構成例の斜視図。
【図13】図12のセンサーチップの断面図。
【図14】センサーチップの反射光強度の特性例。
【図15】表面プラズモンポラリトンの励起条件の説明図。
【図16】センサーチップの反射光強度の他の特性例。
【図17】図12のセンサーチップの変形例の斜視図。
【図18】図17のセンサーチップの断面図。
【図19】図19(A)、図19(B)は、センサーチップに入射光を傾斜させて入射させるための手法の説明図。
【図20】図20(A)、図20(B)は、電気伝導体の製造方法の概要説明図。
【図21】図21(A)、図21(B)、図21(C)は、ラマンスペクトルのピーク抽出の概要説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0034】
1.概要
1.1.基本構成
図1(A)、図1(B)、図1(C)、図1(D)は、本実施形態の光デバイスユニットを含む検出装置の構成例を示す。図1(A)に示すように、光デバイスユニットは、光デバイス4と誘導部420(第1の誘導部)とを含み、検出装置は、光デバイスユニットと、排出流路423(第2の誘導部)と、光源Aと、光学系と、検出器5とを含む。なお、光デバイスユニットは、検出装置に着脱可能であり、誘導部420と排出流路423とを接続することができる。
【0035】
光学系(第1の光学系)は、例えばハーフミラー2及び対物レンズ3で構成される。光源Aは、所与の偏光方向を有する光を放射してもよい。なお、光源Aは、図1(A)の例に限定されず、複数の光源を有してもよい。なお、光源Aは、指向性を有することができ、光源Aは、高い指向性を有する光源(例えば、レーザー)で構成することが好ましい。
【0036】
ハーフミラー2及び対物レンズ3(広義には光学系)は、光源Aからの光を光デバイス4の電気伝導体に入射させる。また、誘導部420は、光デバイス4に気体試料を誘導する。排出流路423は、光デバイス4に誘導されて気体試料を排出する。検出器5は、電気伝導体により散乱または反射された光の中からラマン散乱光を検出する。検出装置は、ラマン検出装置と呼ぶこともでき、ラマンスペクトルによる分光分析をさらに行う検出装置は、ラマン分光装置と呼ぶこともできる。
【0037】
本発明者らは、ラマン分光装置等で利用される光デバイス4及び誘導部420に気体試料が付着し続けることを認識した。また、光デバイス4の電気伝導体近傍における増強電場に起因するラマン散乱光の信号強度が安定しないこともあることを認識した。そこで、光デバイス4及び誘導部420を分離し、場合によっては誘導部420を改良して、検出器5の検出感度を高めることができる。光デバイス4及び誘導部420を検出装置から分離することで検出感度を高めることができる。また、誘導部420を改良することで、気体試料が光デバイスに入り込む確率を高め、従って、ラマン散乱光の信号強度を安定させることができる。なお、ラマン散乱光及び増強電場については、後述する。また、誘導部420についても、後述する。
【0038】
なお、図1(A)の例では、光源Aからの光Lin(入射光)の光路及び光デバイス4からの光Lout(散乱光、反射光)の光路は、実際の光路を正確に表すものではない。言い換えれば、光源Aからの光Lin(入射光)の光路の存在及び光デバイス4からの光Lout(散乱光、反射光)の光路の存在を単に示すものである。
【0039】
図1(B)の例では、検出装置は、光デバイス4と光源Aとの相対位置を可変制御する制御部7を有することができる。具体的には、制御部7は、例えば光源Aの位置を変化させることができる。なお、制御部7は、例えばXYステージ等の作動部を有してもよく、作動部への信号だけを送信してもよい。
【0040】
制御部7は、光デバイス4の位置を変化させてもよい。図1(B)の例では、光源Aの光軸Lax1を対物レンズ3の光軸Lax2(広義には光学系の光軸)を一致させるように、制御部7は、例えば光源Aの位置を変化させる。
【0041】
この場合、実際には、光源Aからの光Linは、光源Aの光軸Lax1及び対物レンズ3の光軸Lax2と重なることが予想されるが、図1(B)の例では、光源Aからの光Linが光源Aの光軸Lax1及び対物レンズ3の光軸Lax2と重ならないように示されている。図1(B)の例では、光源Aの光軸Lax1と対物レンズ3の光軸Lax2とが一致することが理解できる目的で、光源Aからの光Linは、光源Aの光軸Lax1及び対物レンズ3の光軸Lax2と重ならないように図示されている。
【0042】
図1(C)の例では、光源Aの光軸Lax1を対物レンズ3の光軸Lax2からずらすように、制御部7は、光源Aの位置を変化させる。この場合、実際には、光源Aからの光Linが、光源Aの光軸Lax1と重なることが予想されるが、図1(C)の例では、光源Aからの光Linが光源Aの光軸Lax1と重ならないように示されている。図1(C)の例では、光源Aの光軸Lax1と対物レンズ3の光軸Lax2とが一致しないことが理解できる目的で、光源Aからの光Linは、光源Aの光軸Lax1と重ならないように図示されている。
【0043】
図1(D)の例では、検出装置は、光デバイス4と光学系との相対位置を可変制御する制御部7を有することができる。具体的には、制御部7は、例えば対物レンズ3の位置を変化させることができる。対物レンズ3の位置を変化させることにより、光源Aの光軸を対物レンズ3の光軸と一致させることができるが、光源Aの光軸を対物レンズの光軸からずらしてもよい。
【0044】
1.2.検出原理
図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)、図2(E)は、ラマン散乱光の検出原理の説明図を示す。図2(A)の例では、ラマン分光について説明され、標的分子(広義には標的物)に入射光(振動数ν)が照射されると、一般に、入射光の多くは、レイリー散乱光として散乱され、レイリー散乱光の振動数ν又は波長は変化しない。入射光の一部は、ラマン散乱光として散乱され、ラマン散乱光の振動数(ν−ν’及びν+ν’)又は波長は、標的分子の振動数ν’(分子振動)が反映される。入射光の一部は、標的分子を振動させてエネルギーを失うが、標的分子の振動エネルギーがラマン散乱光の振動エネルギー又は光エネルギーに付加されることもある。このような振動数のシフト(ν’)をラマンシフトと呼ぶ。
【0045】
図2(B)の例では、標的分子が例えばアセトアルデヒド分子である場合のラマンスペクトルが示されている。言い換えれば、図2(B)に示すラマンスペクトルを分析することで、例えばアセトアルデヒド分子を特定することができる。しかしながら、標的分子が微量である場合、ラマン散乱光は、一般に微弱であり、標的分子を検出又は特定することは困難である。そこで、増強電場を提供し、ラマン散乱光を増強電場によって増強することが好ましい。なお、図2(B)のラマンスペクトルは、ラマンシフトを波数で表している。
【0046】
図2(C)の例では、金属微粒子20に入射光(照射光)を照射した時に形成される増強電場について説明される。入射光の波長よりも小さな金属微粒子20(金属ナノ粒子)に対して入射光を照射する場合、入射光の電場は、金属微粒子20の表面に存在する自由電子に作用し、共鳴を引き起こす。これにより、自由電子による電気双極子が金属微粒子20内に励起され、金属微粒子20の近傍に入射光の電場よりも強い増強電場が形成される。この現象は、入射光の波長よりも小さな金属微粒子20等の電気伝導体に特有の現象である。
【0047】
図2(D)の例では、光デバイス4に入射光を照射した時に表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)について説明される。光デバイス4は、例えば基板100を有し、基板100の凸部105に金属微粒子20を形成することで、複数の突起110を有する突起群115(広義には金属ナノ構造)を提供することができる。このような光デバイスに入射光を照射することで、突起群115の隣り合う突起110(凸部105に形成される電気伝導体)間に増強電場を形成することができる。増強電場に標的分子が入り込むと、その標的分子によるラマン散乱光は増強電場で増強されて、ラマン散乱光の信号強度は、強くなる。このような表面増強ラマン散乱では、標的分子が微量であっても、検出感度を高めることができる。
【0048】
図2(D)の例では、光デバイス4の表側(電気伝導体側)から入射光が照射されているが、図2(E)に示されるように、光デバイス4の裏側(基板100側)から入射光を照射してもよい。図2(E)の例では、光デバイス4の裏側のラマン散乱光及びレイリー散乱光を検出することができる。
【0049】
なお、図1(A)〜図1(D)で示される光デバイス4は、図2(D)等に示されるような金属ナノ構造を有することが好ましいが、図2(C)に示されるような増強電場を提供しなくてもよい。
【0050】
2.具体例
2.1.全体構成
図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)は、本実施形態の光デバイスユニットを含む検出装置の具体的な構成例を示す。以下では、図1等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。図3(A)の例では、光デバイスユニットが検出装置に組み込まれ、図3(B)の例では、光デバイスユニットが組み込まれる前の検出装置から取り出され、図3(C)の例では、交換用の光デバイスユニットが示される。図3(D)の例では、外光の進入経路が示されている。検出装置の検出感度を高めるために、光デバイスユニットは、検出装置に着脱可能である。使用済みの光デバイスユニットを検出装置から取り外し、新しい光デバイスユニットを検出装置に取り付けることで、誘導部420及び光デバイス4に付着した気体試料が、次の検出又は測定に影響しない。
【0051】
図3(A)に示される検出装置の光デバイスユニットは、センサーチップ300(広義には光デバイス4)及び誘導部420(搬送部)を含む。標的物は、吸引口400(搬入口、取り込み口)から誘導部420(第1の誘導部)及び排出流路423(第2の誘導部)の内部に導入され、排出口410から誘導部420(第1の誘導部)及び排出流路423(第2の誘導部)の外部に排出される。図3(A)の例では、検出装置は、ファン450(広義には吸引部)を排出口410付近に有し、ファン450を作動させると、誘導部420の吸引流路421(第1の流路)、センサーチップ300に臨む領域の流路422(第2の流路)及び排出流路423(第3の流路)内の圧力(気圧)が低下する。これにより、標的物(気体試料)が誘導部420に吸引される。標的物は、吸引流路421を通り、センサーチップ300付近の流路422を経由して排出流路423から排出される。このとき、標的物の一部が、センサーチップ300の表面(電気伝導体)に付着する。
【0052】
気体試料を排出口410に誘導する排出流路423は、センサーチップ300付近の流路422(広義には誘導部420)と接続可能であり、図3(A)の例では、排出流路423及び流路422は、例えばフランジ、カプラー等の接続部490を介して連結される。
【0053】
センサーチップ300は、光源Aからの光をを受けて生じたラマン散乱光を増強可能であり、気体試料がセンサーチップ300の表面に付着又は吸着する確率を高めるために、誘導部420の流路を改良することができる。単純な流路(図示せず)では気体試料がセンサーチップ300を素通りすることもあるので、導部420は、センサーチップ300の表面近傍を気体試料が旋回するような流路を有することができる。旋回する気体試料は、直接に排出口410又は排出流路423に行き難く、センサーチップ300付近の流路422に滞在することができる。
【0054】
図3(A)に示されるように、センサーチップ300付近の流路422(第2の流路)は、気体試料を旋回させることができる。旋回流の発生により、気体試料がセンサーチップ300に入り込む確率が高くなる。従って、ラマン散乱光の信号強度が安定し、例えば、気体試料が微量である場合であっても、気体試料(標的物)を検出又は特定し易くなる。
【0055】
標的物は、例えば麻薬やアルコールや残留農薬等の希薄な分子や、ウイルス等の病原体等を想定することができる。
【0056】
気体試料がセンサーチップ300の表面と接触する確率が高いことが好ましく、加えて、外光(図示せず)がセンサーチップ300にできるだけ到達しないことが好ましい。図3(A)に示されるように、誘導部420の吸引流路421(第1の流路)は、例えば折り返し構造を有することができる。ラマン散乱光(信号)に対する外光(ノイズ)の割合が低下することで、ラマン散乱光を検出する際のS/N比(signal-to-noise ratio)が向上し、検出感度を高めることができる。
【0057】
仮に、吸引流路421が直線的である場合、吸引流路421は、外光を遮光し難くなり、検出感度が低下してしまう。
【0058】
図3(D)の例では、外光が吸引流路421を介してセンサーチップ300付近の流路422に到達する時の光路が示され、例えば図3(D)に示されるように、外光は、吸引流路421の内壁で3回反射される。吸引流路421は、吸引口400(取り込み口)とセンサーチップ300との間に、外光の入射線を遮る内壁面を有する。このような折り返し構造により、吸引流路421は、遮光性を有することができる。
【0059】
図3(A)の例では、吸引流路421は、折り返し構造を有するが、流路抵抗が小さくなるように、例えば吸引流路421の内壁は、曲線的であることが好ましい。また、吸引流路421の内壁は、遮光性が高くなるように、光の反射率が小さい材料で構成することが好ましい。加えて、誘導部420の排出流路423(第3の流路)も、遮光性が高くなるような構造を有することが好ましい。
【0060】
図3(D)の例では、外光が排出流路423を介してセンサーチップ300付近の流路422に到達する時の光路(入射線)も示され、例えば図3(D)に示されるように、外光は、排出流路423の内壁で3回反射される。排出流路423は、排出口410とセンサーチップ300との間に、外光の入射線を遮る内壁面を有する。このような折り返し構造により、排出流路423は、遮光性を有することができる。
【0061】
図3(A)の例では、吸引流路421(広義には誘導部420、さらに広義には光デバイスユニット)は、空気中の浮遊物を除去するフィルター426(例えば、除塵フィルター)を有することができる。フィルター426は、外光を遮光することが好ましく、例えば除塵フィルター兼遮光フィルターで構成することができる。また、排出流路423(広義には検出装置)も、外光を遮光するフィルター427(例えば、遮光フィルター)を有することができる。
【0062】
図3(A)の例では、検出装置は、カバー440を有し、カバー440は、センサーチップ300等を格納することができる。また、検出装置は、筐体500を有し、筐体500内に例えば光源A、ハーフミラー2、対物レンズ3及び検出器5を含み、検出器5は、例えば分光素子370及び受光素子380を有する。分光素子370は、例えばエタロンで構成することができる。さらに、検出装置は、集光レンズ360、光フィルター365、処理部460、電力供給部470、通信接続口510及び電源接続口520を含むことができる。
【0063】
図3(A)の例では、検出装置は、ヒンジ部480を含み、カバー440は、ヒンジ部480を介して開閉可能である。カバー440が開いた状態で、使用済みの光デバイスユニットを取り外したり、或いは、図3(B)に示すように、カバー440が開いた状態で、新しい光デバイスユニットを検出装置に組み込むことができる。なお、検出装置は、例えば係止部(図示せず)を有し、光デバイスユニットが係止部に対応する被係止部(図示せず)を有することで、光デバイスユニットを位置決めすることができる。なお、センサーチップ検出素子310は、センサーチップ300(広義には光デバイスユニット)が検出装置に適切に組み込まれたか否かを検出することができる。図3(C)は、交換用の光デバイスユニットを示し、誘導部420及びセンサーチップ300が汚れないように、光デバイスユニットは、封止部材424,425を有することができる。光デバイスユニットは、センサーチップ300を識別する識別コード305(例えば、バーコード)を有することができ、センサーチップ検出素子310(例えば、バーコードリーダー)は、識別コード305を読み取ることができる。
【0064】
図3(A)の例では、検出装置は、光源Aに対応するコリメーターレンズ320及び偏光制御素子330をさらに有する。光源Aから出射された光は、コリメーターレンズ320により平行光にされ、偏光制御素子330により直線偏光にされる。なお、光源として例えば面発光レーザーを採用し、直線偏光を有する光を発光可能であれば、偏光制御素子330を省略することができる。
【0065】
光源Aからの光は、ハーフミラー2(ダイクロイックミラー)によりセンサーチップ300の方向に導かれ、対物レンズ3で集光され、センサーチップ300に入射する。センサーチップ300の表面には、例えば金属ナノ構造が形成される。センサーチップ300から例えば表面増強ラマン散乱によるレイリー散乱光及びラマン散乱光が放射される。センサーチップ300からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、対物レンズ3を通過し、ハーフミラー2によって検出器5の方向に導かれる。
【0066】
図3(A)の例では、光源Aからの光は、センサーチップ300の裏面から表面に到達し、例えば表面における金属ナノ構造付近から、レイリー散乱光及びラマン散乱光が発生し、レイリー散乱光及びラマン散乱光は、センサーチップ300の裏面側に放射される(図2(E)参照)。なお、光源Aからの光がセンサーチップ300表面に直接に到達するように(図2(D)参照)、図3のセンサーチップ300の配置を変更してもよい。
【0067】
図3(A)の例では、センサーチップ300からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、集光レンズ360で集光され、光フィルター365に到達する。そして、光フィルター365(例えばノッチフィルター)によりラマン散乱光が取り出され、受光素子380は、そのラマン散乱光を分光素子370を介して受光する。分光素子370を通過する光の波長は、処理部460により制御(選択)することができる。
【0068】
受光素子380は、光学系及び分光素子370を介してラマン散乱光を受光する。光学系(第2の光学系)は、例えばハーフミラー2、集光レンズ360及び光フィルター365で構成される。分光素子370及び受光素子380によって、標的物に特有のラマンスペクトルが得られ、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータと照合することで、標的物を特定することができる。
【0069】
図3(A)の例では、処理部460は、光源Aの電源をON/OFFすることができる。また、処理部460は、例えば図1(B)等に示される制御部7の機能を実行することができ、処理部460は、例えば光源Aの位置を可変制御することができる。また、処理部460は、図3に示される光源A以外の検出器5、ファン450等への命令を送ることができ、処理部460は、光源Aだけでなく、検出器5、ファン450等も制御することができる。さらに、処理部460は、ラマンスペクトルによる分光分析を実行することができ、処理部460は、標的物を特定することができる。なお、処理部460は、ラマン散乱光による検出結果、ラマンスペクトルによる分光分析結果等を例えば通信接続口510に接続される外部機器(図示せず)に送信することができる。
【0070】
図3(A)の例では、電力供給部470は、図3(A)に示される処理部460、光源A、検出器5、ファン450等への電力を供給することができる。電力供給部470は、例えば2次電池で構成することができ、1次電池、ACアダプター等で構成してもよい。電力供給部470が2次電池で構成される場合、例えば電源接続口520に接続される充電器(図示せず)は、2次電池を充電することができる。電力供給部470がACアダプターで構成される場合、ACアダプターは、検出装置の外部に配置され、電源接続口520に接続される。なお、検出装置は、例えば表示部(図4の例では表示部540)を含むことができ、表示部は、電力供給部470の状態(例えば電池切れ、充電中、充電完了、電力供給中等)を表示することができる。
【0071】
図4は、図3(A)の検出装置のブロック図の1例を示す。以下では、図3(A)等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。図4に示されるように、検出装置は、例えば表示部540、操作部550及びインターフェース530をさらに含むことができる。また、図3に示される処理部460は、例えばCPU(Central Processing Unit)461、RAM(Random Access Memory)462、ROM(Read Only Memory)463を有することができる。さらに、検出装置は、光源ドライバー15、分光ドライバー375、例えば受光回路385及びファンドライバー455を含むことができる。以下に、図4に示す検出装置の動作例を説明する。
【0072】
図4の例では、CPU461は、ラマン散乱光を検出する準備が完了したか否かを判断することができ、CPU461は、その準備が完了したことを表す信号を表示部540に送ることができる。また、CPU461は、その信号以外の信号も表示部540に送ることができ、表示部540は、CPU461からの信号(表示信号)に応じて、様々な表示をユーザーに提供することができる。
【0073】
図4の例では、検出回路315は、センサーチップ検出素子310で検出した識別コード305を電気信号として取り出すことができる。CPU461は、その電気信号をデジタル形式で受け、その値で、センサーチップ300の種類を特定することができる。その後、CPU461は、ラマン散乱光を検出する準備が完了したこと認識することができる。
【0074】
表示部540がラマン散乱光を検出する準備が完了したことを示す場合、ユーザーは、操作部550を操作して、ラマン散乱光の検出を開始することができる。操作部550からの信号(操作信号)が検出の開始を表す場合、CPU461は、光源ドライバー15を介して光源Aを起動することができる。具体的には、光源ドライバー15(広義にはCPU461)は、光源Aの電源をONさせることができる。なお、光源Aは、温度センサー(図示せず)及び光量センサー(図示せず)を有することができ、光源Aは、光源Aの温度及び光量を光源ドライバー15を介してCPU461に送ることができる。CPU461は、光源Aの温度及び光量を受け、光源Aの出力が安定しているか否かを判断することができる。光源Aの電源がONされた状態で、場合によっては光源Aの出力が安定した後に、CPU461は、ファンドライバー455を介してファン450を起動することができる。
【0075】
なお、CPU461(広義には処理部460)は、例えば図1(B)等に示される制御部7の機能を実行することができ、CPU461は、例えば光源ドライバー15を介して、例えば光源Aの位置を可変制御することができる。代替的に、CPU461は、例えば光源ドライバー15又はレンズドライバー(図示せず)を介して、例えば図1(D)等に示される対物レンズ3の位置を可変制御してもよい。
【0076】
図4の例では、ファンドライバー455は、ファン450の電源をONさせることができ、これにより、標的物(気体試料)が図3の誘導部420に吸引される。図3の光源Aの電源がONされる場合、光源Aから光がハーフミラー2を介して図3のセンサーチップ300に到達している。これに応じて、センサーチップ300からレイリー散乱光及びラマン散乱光がハーフミラー2に戻ってくる。センサーチップ300からレイリー散乱光及びラマン散乱光は、集光レンズ360を介して光フィルター365に到達する。光フィルター365は、レイリー散乱光を遮断する一方、ラマン散乱光を分光素子370に導く。以上は、吸引口400(搬入口)から誘導部420、排出口410までの流路抵抗が比較的小さい場合ファン450によって可能であるが、流路抵抗が比較的大きい場合には、ファン450に代って吸引ポンプ(図示せず)などを使用することができる。
【0077】
図4の例では、分光ドライバー375(広義にはCPU461)は、分光素子370を制御することができる。分光素子370は、例えば共振波長を可変できる可変エタロン分光器で構成することができる。分光素子370がファブリペロー共振を利用したエタロンである場合、分光ドライバー375は、互いに対向する2枚のエタロン板の距離を調整しながら、エタロンを通過する光の波長を変化(選択)することができる。具体的には、エタロンを通過する光の波長を第1の波長から第Nの波長までの範囲に設定する場合、先ずは、第1の波長を有する光が最大強度を示すように2枚のエタロン板の距離を設定する。その後、第1の波長から半値幅だけずらした第2の波長を有する光が最大強度を示すように2枚のエタロン板の距離を再度設定する。このような手法で第1の波長、第2の波長、第3の波長、・・・、第Nの波長を順次選択しながら、エタロンを通過する光を受光素子380で受光する。
【0078】
図4の例では、受光回路385(広義にはCPU461)は、受光素子380で受けた光を電気信号として取り出すことができる。CPU461は、その電気信号をデジタル形式で受け、その値をRAM462に記憶することができる。分光素子370が第1の波長〜第Nの波長までの範囲の光を選択的に受光素子380に導くことで、CPU461は、ラマンスペクトルをデジタル形式でRAM462に記憶することができる。
【0079】
図4の例では、CPU461は、RAM462に記憶される標的物に特有のラマンスペクトルデータと例えばROM463に予め記憶される既知のラマンスペクトルデータとを比較することができる。CPU461は、比較結果に基づき標的物が何の物質であるか否かを判定することができる。CPU461は、比較結果又は判定結果を表す信号を表示部540に送ることができる。これにより、表示部540は、比較結果又は判定結果をユーザーに示すことができる。また、CPU461は、比較結果又は判定結果を表すデータを通信接続口510から出力することもできる。インターフェース530は、CPU461と通信接続口510に接続される外部機器(図示せず)との間のデータの受け渡しを所与の規格で実行することができる。
【0080】
図4の例では、CPU461は、電力供給部470の状態を判定することができる。電力供給部470が例えば1次電池又は2次電池で構成される場合、CPU461は、1次電池又は2次電池の電圧を表すデータが例えばROM463に予め記憶される所与の値以下であるか否かを判定することができる。CPU461は、判定結果を表す信号を表示部540に送ることができる。これにより、表示部540は、判定結果(例えば電池切れ、充電要)又は判定結果に基づく指示をユーザーに示すことができる。また、電力供給部470が例えば2次電池で構成される場合、CPU461は、2次電池が充電されているか否か等を判定することができる。
【0081】
図4の例では、電力供給部470は、電力供給部470の状態をCPU461に送ることができる。また、電力供給部470は、CPU461等を有する処理部460に電力を供給することができる。図4に示されていないが、電力供給部470は、光源ドライバー15、受光回路385、光源群1等の検出装置を構成する部品にも電力を供給することができる。
【0082】
2.2.光源
図5(A)、図5(B)は、垂直共振器面発光レーザーの構造例を示す。図5(A)の例では、n型GaAs基板の上にn型DBR(Diffracted Bragg Reflector)層が形成される。n型DBR(Diffracted Bragg Reflector)層の中央部に活性層及び酸化狭窄層が設けられる。活性層及び酸化狭窄層の上にp型DBR層が設けられる。p型DBR層及びn型DBR層の上に絶縁層を設け、絶縁層の上に電極を形成する。n型GaAs基板の裏側にも電極を形成する。図5の例では、n型DBR層とp型DBR層との間に活性層が介在し、活性層で発生した光がn型DBR層とp型DBR層との間で共振する垂直共振器が形成される。なお、垂直共振器面発光レーザーは、図5(A)の例に限定されず、例えば酸化狭窄層を省略してもよい。
【0083】
例えば図1(A)等に示される光源Aは、基板面に対して垂直方向に光を共振させ、基板面と垂直な方向(光源の光軸Lax1)に光を放出可能な垂直共振器面発光レーザー(広義には面発光レーザー)であることが好ましい。垂直共振器面発光レーザーを利用することで、単色(単一波長)で且つ直線偏光である光源を構成することができる。また、垂直共振器面発光レーザーは、小型化することが可能であり、携帯型の検出装置への組み込みに適している。また、垂直共振器面発光レーザーの構造から、製造工程では基板を劈開せずとも共振器の形成やレーザー特性の検査が可能であり、大量生産に向いている。さらに、垂直共振器面発光レーザーは、他の半導体レーザーに比べて比較的安価に製造が可能であり、例えば2次元アレー型の垂直共振器面発光レーザーを提供することもできる。加えて、垂直共振器面発光レーザーの閾値電流が小さく、従って、検出装置の消費電力を低減させることができる。また、低電流でも垂直共振器面発光レーザーの高速変調が可能であり、垂直共振器面発光レーザーの温度変化に対する特性変化の幅が少なく、垂直共振器面発光レーザーの温度制御部を簡易化できる。
【0084】
なお、図5(A)の例を変形して、垂直共振器面発光レーザーは、安定した偏光面(広義には偏光方向)を提供することができる。この場合、図3の偏光制御素子330の代わりに、例えば光源A(垂直共振器面発光レーザー)は、例えば特許文献2で開示されるような歪み付加部を有することができる。特許文献2の例では、特許文献2の歪み付加部19は、垂直共振器面発光レーザーの共振器10Bに隣接して配置される。特許文献2の歪み付加部19は、特許文献2の共振器10Bに異方的な応力をあたえ、歪ませることによって、複屈折、利得の偏光依存性を特許文献2の共振器10A内に生じさせる。これによって、安定した偏光面を提供することができる。
【0085】
図5(B)の例では、垂直共振器面発光レーザーの平面図が示され、光源Aは、歪み付加部を有する。図5(B)の例では、光源Aは、偏光方向DAを有する光を放射可能である。
【0086】
図6は、光源の特性の説明図を示す。図6の例では、光源に利用可能なレーザーの特性を表で表している。垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)は、上述のように検出装置の光源に適しているが、検出装置は、図6に示すような他のレーザーを採用してもよく、レーザー以外の光源を採用してもよい。
【0087】
2.3.誘導部
図7(A)、図7(B)、図7(C)は、誘導部及び排出流路423の構成例を示す。図7(A)に示されるように、センサーチップ300付近の流路422は、円筒状構造を有することができる。円筒状構造は、内周面422a及び内周面に垂直な平面422bを有し、内周面422a(壁面)で、基板100(狭義には電気伝導体)の平面(広義には仮想平面)と平行な方向(水平方向)に気体試料を旋回させることができる。気体試料が電気伝導体の仮想平面(例えば横断面)と平行な方向に旋回することを水平旋回又は横旋回と称することができる。センサーチップ300付近の流路422の入口は、吸引流路421の出口と連結し、センサーチップ300付近の流路422の出口は、排出流路423の入口と連結する。吸引流路421の出口から流路422の入口への気体試料の流入方向を平面422bと平行な方向に近づけることで、気体試料は、水平方向に旋回し易くなる。なお、図7(A)に示されるように、主に水平方向の旋回流が生じ、垂直方向の旋回流が生じてもよい。気体試料は、センサーチップ300付近に滞在し、その後、排出流路423から流出する。気体試料がセンサーチップ300付近の増強電場近傍を何度も通過することで、気体試料が増強電場に入り込む確率が高まることになる。
【0088】
図7(B)に示されるように、センサーチップ300付近の流路422は、中空状構造を有することができる。中空状構造は、内側球面422cを有し、内側球面422c(壁面)で、電気伝導体の仮想平面と垂直な方向(垂直方向)に気体試料を旋回させることができる。気体試料が電気伝導体の仮想平面(例えば横断面)と垂直な方向に旋回することを垂直旋回または縦旋回と称することができる。吸引流路421の出口から流路422の入口への気体試料の流入方向を平面422bと垂直な方向に近づけることで、気体試料は、垂直方向に旋回し易くなる。なお、図7(B)に示されるように、主に垂直方向の旋回流が生じ、水平方向の旋回流が生じてもよい。
【0089】
図7(C)の例では、吸引流路421は、螺旋構造を有することができる。気体試料は、吸引流路421から流路422に入り込む。このとき、吸引流路421が螺旋構造を有するので、旋回する気体試料が流路422に入る。従って、気体試料は、流路422でさらに旋回することができ、気体試料が電気伝導体付近の増強電場に滞在する確率がさらに高くなる。また、吸引流路421は、外光を遮光することができ、吸引流路421の内壁は、遮光性が高くなるように、光の反射率が小さい材料で構成することが好ましい。図7(C)の例では、誘導部420(広義には光デバイスユニット)は、排出流路423と接続可能な中継経路423aを有することができる。
【0090】
図7(C)に示されるような螺旋構造を排出流路423が有してもよい。また、例えば図7(A)等に示される吸引流路421も、螺旋構造を有してもよい。
【0091】
2.4.光デバイス(フォトリソグラフィー法による金属ナノ構造)
図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)、図8(E)は、フォトリソグラフィー法の概要説明図を示す。図8(A)の例では、紫外レーザーを利用した光干渉露光装置の概要を示され、光源として、例えば波長266nm、出力200mWを有する連続発振(CW:Contimuous Wave)レーザー用いることができる。紫外レーザーからの光は、シャッターを経由してミラーで折り返し、ハーフミラーで両側に分岐する。ハーフミラーから分岐される2つの光の各々は、ミラーで折り返し対物レンズ及びピンホールを経由し、これにより、光のビーム径が広がる。ビーム径が広がった紫外レーザーからの光をマスクに照射させることで露光パターンを作り、レジストを塗布した基板100に露光パターンを照射させることができる。この時、両側のマスクからの露光パターンが互いに干渉することにより、干渉パターンをレジスト(基板100)に形成することが可能になる。また、露光パターンを例えばハーフミラー及びCCDカメラを介してモニタで確認することもできる。
【0092】
所与の干渉パターン(広義には所与の露光パターン)をレジスト(基板100)に露光した後、レジストを現像し、必要な部分のみのレジストを残すことができる。その後、基板100をエッチングする溶液に浸漬するか、ドライエッチングで必要な量だけエッチングすることができる。エッチング後、基板100上に残っているレジストを除去することができる。これにより、基板100の表面を微細な凹凸状に加工することができる。その後、基板100の表面に電気伝導体として例えば金属微粒子を付加し、金属ナノ構造を形成することができる。金属ナノ構造の製造プロセスの概要については、後述する(図9(A)〜図9(E)参照)。
【0093】
図8(B)の例では、金属ナノ構造を有する基板100が平面図及び断面図で示されている。この例では、基板100(金属ナノ構造)は、複数の突起110で構成される突起群115を有し、複数の突起110(金属微粒子20)は、1次元の周期で配置される。
【0094】
また、図8(C)の例でも、金属ナノ構造を有する基板100が平面図及び断面図で示されている。この例では、複数の突起110(金属微粒子20)は、2次元の周期で配置される。図8(D)の例では、金属ナノ構造を有する基板100が斜視で示される電子顕微鏡写真が示され、例えば図8(C)に対応している。図8(D)の例では、金属ナノ構造を有する基板100が平面視で示されるSEM写真が示され、例えば図8(C)に対応している。例えば金(Au)で構成される複数の突起110の周期(ピッチ)は、例えば約140nmである。
【0095】
なお、光干渉露光装置の代わりに例えば電子ビーム露光装置を用いて金属ナノ構造を形成してもよい。電子ビーム露光装置は、光干渉露光装置と比べて露光の自由度が高いという利点を有する一方、光干渉露光装置は、電子ビーム露光装置と比べて光デバイスの量産性が高いという利点を有する。
【0096】
図9(A)、図9(B)、図9(C)、図9(D)、図9(E)は、金属ナノ構造の製造プロセスの概要説明図を示す。以下では、図8(B)等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。例えば図8(C)等で示される金属ナノ構造は、具体的には、以下のように製造することができる。図9(A)で示すように、基板100は、レジスト101を有する。レジスト101は、例えばスピンコートによって基板100に塗布され、その後、乾燥される。レジスト101に所与のパターンを露光するには、例えば図8(A)で示されるような光干渉露光装置を用いることができる。レジスト101は、例えばポジ型レジストを使用することができ、レジスト101の膜厚は、例えば1μmである。図9(A)の例では、2つの方向から光をレジスト101に照射し、2つの光の各々は、例えば格子状の露光パターンを有する。2つの光が交差する角度によって、様々な干渉パターンを形成することができる。なお、干渉パターンの大きさは、光干渉露光装置の例えば紫外レーザーの波長の半分まで小さくすることができる。干渉パターンによる潜像をレジスト101内に形成し、レジスト101を現像すると、例えば図9(B)に示すようなレジストパターンを形成することができる。
【0097】
図9(B)に示されるように、基板100は、レジストパターンで保護されている部分とレジストパターンで保護されていない部分とを有する。その後、レジストパターンで保護されていない部分をエッチングして、例えば図9(C)に示されるように、基板100に凹部104が形成される。その後、基板100に残ったレジスト101を除去することで、例えば図9(D)に示すような基板100の凸部105が露出する。その後、例えばスパッター装置で金属微粒子20による金属膜を基板100に形成する。初期状態では基板100全体に薄く金属膜が形成されるが、凸部105付近に多く金属微粒子20が徐々に付着し、例えば図9(E)に示されるような金属膜で複数の突起110(金属ナノ構造)を形成することができる。
【0098】
複数の突起110(金属ナノ構造)を有する突起群115に例えば直線偏光のレーザー光を照射すると、レーザー光の偏光方向により局在プラズモンが励起され、突起群115の隣り合う突起110間のギャップに強い増強電場が形成される。突起群115の隣り合う突起110間のギャップは、金属膜の膜厚によって制御することができ、このギャップの大小が増強電場の強さを主に支配する要因となる。
【0099】
金属微粒子20又は金属膜は、例えば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)又は白金(Pt)で構成することができ、また、これらの合金(組み合わせ)で構成することができる。好ましくは、金属微粒子20又は金属膜は、金(Au)又は銀(Ag)で構成し、局在プラズモン、増強電場又は表面増強ラマン散乱を発現し易くすることができる。
【0100】
図10(A)、図10(B)、図10(C)は、金属ナノ構造で形成される増強電場の概要説明図を示す。以下では、図2(D)等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。標的分子(気体試料)は、例えば図3に示す吸引口400から誘導部420の内部に吸引され、センサーチップ300(広義には光デバイス4)付近の流路422に到達する。図10(A)の例では、光デバイス4は、金属ナノ構造を有し、金属ナノ構造に光源からの光Lin(入射光)を照射すると、凸部105のギャップに増強電場が形成される。図10(B)の例では、光Lin(入射光)の照射範囲が点線で示されている。なお、増強電場に標的分子が入った場合には、その標的分子の振動数の情報を含んだラマン散乱光が生じる。また、そのラマン散乱光が増強電場によって増強され、表面増強ラマン散乱が生じる。図10(A)の例では、光デバイス4の裏側(基板100側)から入射光が照射されているが、図10(C)に示されるように、センサーチップ300の表側(凸部105側)から入射光を照射してもよい。
【0101】
凸部105のギャップが小さく、凸部105の高さ(凹部104の深さ)が大きくなると、例えば図10(A)等で示される増強電場は、一般に、強くなる。また、光Lin(入射光)の強度が強ければ、増強電場も強くなる。但し、凸部105のギャップが狭すぎると、標的分子がギャップ(増強電場)に入る確率も低くなるので、凸部105のギャップは、例えば数nm〜10数nmに設定することができる。また、凸部105の高さ(凹部104の深さ)が大きくなると、標的分子がギャップ(増強電場)に一旦入った後に、ギャップ(増強電場)を出る時間を長くさせ、ラマン散乱光を表す検出信号又はラマンスペクトルは、安定する。
【0102】
また、金属ナノ構造の金属の種類によって光Lin(入射光)の波長を選択することができる。金属ナノ構造が例えば金(Au)で構成される場合、光Linの波長を例えば633nmに設定することができる。また、金属ナノ構造が例えば銀(Ag)で構成される場合、光Linの波長を例えば514nmに設定することができる。また、標的分子の種類によって光Linの波長を選択することもできる。なお、気体試料が標的分子以外の不純物を含む場合、不純物の蛍光を抑制するために、光Linの波長を例えば780nm程度に設定してもよい。
【0103】
2.5.表面プラズモン共鳴ピーク
例えば図10(C)等に示される光デバイス4の金属ナノ構造(広義には電気伝導体)に光Lin(入射光)を照射する時、一般には、ブロードな表面プラズモン共鳴ピークがひとつしか存在しないため、励起波長(レイリー散乱波長と等しい)とラマン散乱波長に対して、共鳴ピークの位置を適切な位置に設定する必要がある。そのため、共鳴ピーク波長を励起波長とラマン散乱波長の間に設定すれば、励起過程とラマン散乱過程の両方で電場増強効果を期待できる。しかしながら、共鳴ピークがブロードであるため、個々の過程では共鳴の強さが弱くなり、過程全体の増強度は十分とは言えないこともある。そこで、光デバイス4に入射光を斜めに入射して共鳴ピークを2つ生じさせ、その2つの共鳴ピークを励起波長とラマン散乱波長に設定することで、検出感度又はセンサー感度を向上させることができる。
【0104】
表面増強ラマン散乱を応用した高感度なセンサーチップ300(広義には光デバイス4)を実現するためには、局所電場の増強度(以下、増強度と適宜省略する)ができるだけ大きいことが望ましい。増強度αは、下式(1)で表される(M.Inoue, K.Ohtaka, J.Phys.Soc.Jpn., 52, 3853 (1983))。ここで、αrayは、励起波長における増強度であり、αramは、ラマン散乱波長における増強度である。
α=αray×αram (1)
上式(1)より、励起過程における増強度とラマン散乱過程における増強度の両方を同時に高め、表面増強ラマン散乱過程における増強度を高めることができる。そのため例えば図11に示すように、励起波長及びラマン散乱波長の近傍だけに強い2つの共鳴ピークを発生させる。これにより、両散乱過程の相乗効果によって、局所電場の増強効果を高めることができる。
【0105】
図12は、センサーチップの構成例の斜視図である。図12に示されるように、センサーチップ300は、基板100(基材)及び突起群115(第1の突起群)を含む。複数の突起110を有する突起群115は、電気伝導体で構成され、電気伝導体は、典型的には金属(例えば、金(Au))であるが、半導体(例えばポリシリコン)等でもよい。
【0106】
複数の突起110は、基板100の平面(広義には仮想平面)に沿った第1の方向D1に周期的に配置される。ここで、基板100の平面は、例えば突起群115が形成される側の基板100の表面120であり、表面120に平行な面でもよい。より具体的には、突起群115の各突起110は、突起の配列方向(第1の方向D1)の断面形状が基材100の表面120から凸形状に形成される。凸形状は、矩形や台形、円弧等であり、例えば図8(D)、図9(E)等で示されるような複雑な曲線で定義される断面形状を有してもよい。例えば、図12に示すように、突起群115は、基板100に対する平面視において、第1の方向D1に直交する第2の方向D2に平行な縞状に形成される。
【0107】
図13は、図12のセンサーチップの断面図を示す。この断面図の断面は、基板100の平面に垂直な面であり、突起群115の配列方向(第1の方向D1)に平行な面である。図13に示すように、基板100の平面の法線方向を第3の方向D3とする。
【0108】
図13の例では、基板100は、ガラス基板130と、ガラス基板130の上に形成された金属薄膜140とを有する。例えば、金属薄膜140の厚さは150nm以上である。図13の例では、突起群115の断面形状は矩形(略矩形)であり、第1の高さH1の突起110が、第1の方向D1に沿って第1の周期P1で配列される。この金属薄膜140と突起群115とにより金属格子150(周期的な金属凹凸構造)が形成される。第1の周期P1は例えば100〜1000nmの範囲に設定され、第1の高さH1は例えば10〜100nmの範囲に設定されることが望ましい。なお、ガラス基板130は、例えば石英基板、サファイア基板等でもよく。基板100は、例えば金属からなる平板を用いてもよい。
【0109】
センサーチップ300には、直線偏光を含む入射光Linを入射することができる。直線偏光の偏光方向(偏光方位)は、第1の方向D1と第3の方向D3に平行な面に対して平行な方向である。図13の例では、入射光Linは、金属薄膜140と突起群115による金属格子150(広義には電気伝導体)に対して傾斜させて入射させる。具体的には、傾斜角をθとすると、θ>0であり、図13に示す断面において入射方向と第3の方向D3の反対方向との角度(基板100の平面に向う垂線に対する角度)がθとなるように入射光を入射させる。
【0110】
好ましくは、直線偏光は、第1の方向D1と第3の方向D3に平行な面に対して平行である。しかしながら、直線偏光は、第1の方向D1と第3の方向D3に平行な面に対して非平行であってもよい。言い換えれば、直線偏光は、第1の方向D1と第3の方向D3に平行な面に平行な偏光成分を含んでいればよい。なお、直線偏光の偏光方向は、例えば図3の偏光制御素子330、図5(B)の歪み付加部等で設定することができる。
【0111】
図14は、センサーチップの反射光強度の特性例を示す。図14は、金属格子150を銀(Ag)により形成し、金属格子150に対する光の入射角度θが3度であり、光の偏光方向が金属格子150の溝方向(第2の方向D2)と直交し、突起110の断面が矩形(略矩形)であり、第1の周期P1が500nmであり、第1の高さH1が20nmである場合の特性例である。図14の例では、横軸は反射光の波長を表し、縦軸は反射光強度(入射光強度に対する比率)を表す。
【0112】
図14の例では、金属格子150には、表面プラズモンポラリトン(SPP:Surface Plasmon Polariton)の共鳴ピークが2つ存在する。例えば、1つの共鳴ピーク波長λp1は、515nm付近に位置し、もう1つの共鳴ピーク波長λp2は、555nm付近に位置する。この2つの共鳴ピーク波長λp1及びλp2を、それぞれ、励起波長λ1及びラマン散乱波長λ2の近傍に合わせる又は一致させることにより、大きな増強ラマン散乱効果が期待できる。例えば、波長515nmのアルゴンレーザーを励起波長λ1として用いた場合、波長555nm近傍のラマン散乱光(ラマンシフト1200〜1600cm−1)を強く増強させることが可能となる。
【0113】
図15は、表面プラズモンポラリトンの励起条件の説明図を示す。図15に示すC1は、表面プラズモンポラリトンの分散曲線(例えば、空気と金(Au)の境界面での分散曲線)を表し、C2は、ライトラインを表す。図15では、金属格子150の周期を第1の周期P1とし、この場合の格子ベクトルの波数2π/P1を横軸上に示す。
【0114】
まず、金属格子150と励起条件の関係について説明する。入射光Linの波数をkiとし、入射角度をθとすると、金属格子150の配列方向(図13に示す第1の方向D1、または第1の方向D1の反対方向)における1次のエバネッセント波の波数は、2π/P1±ki・sinθである。表面プラズモンポラリトンは、このエバネッセント波の波数2π/P1±ki・sinθと表面プラズモンの波数が一致した場合に励起される。すなわち、表面プラズモンポラリトンの励起条件は、エバネッセント波の生成条件を表す直線と表面プラズモンポラリトンの分散曲線との交点により表される。
【0115】
図15のC3に、比較例として、金属格子150に対して垂直(θ=0)に光を入射させた場合のエバネッセント波の生成条件を表す直線を示す。C3に示すように、この場合のエバネッセント波の波数は2π/P1で表される。この直線C3は、格子ベクトルの波数の位置から上へ延ばした線であり、表面プラズモンポラリトンの分散曲線C1と交わる。このとき、交点は1つであり、周波数ω0(角周波数)に対応する共鳴ピークが現れる。
【0116】
C4とC5に、エバネッセント波の生成条件を表す直線を示す。金属格子150に対して角度θ(θ>0)で光を入射させる場合、エバネッセント波の波数は2π/P1±ki・sinθで表される。直線C4は、2π/P1+ki・sinθに対応し、直線C5は、2π/P1−ki・sinθに対応する。これらの直線C4とC5は、格子ベクトルの波数の位置から角度θで斜め上に延ばした線であり、表面プラズモンポラリトンの分散曲線C1と2点(周波数ω+,ω−)で交わる。従って、周波数ω+,ω−に対応する2つの共鳴ピークが、共鳴ピーク波長λp1,λp2で現れる。
【0117】
表面プラズモンポラリトンの励起条件を利用して2つの共鳴ピーク波長λp1,λp2を設定し、その2つの共鳴ピーク波長λp1,λp2を表面増強ラマン散乱に利用することができる。具体的には、まず厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled Wave Analysis)により分散曲線C1を求める(L.Li and C.W.Haggans,J.Opt.Soc.Am.,A10,1184-1189(1993))。分散曲線C1は、金属の種類や、媒質の種類や、金属格子150の断面形状に固有の曲線である。次に、所与の格子周期(例えば第1の周期P1)と所与の入射角度θを、標的物のラマンシフトに応じて決定する。すなわち、第1の共鳴ピーク波長λp1を励起波長λ1(レイリー散乱波長)の近傍に設定し、第2の共鳴ピーク波長λp2(λp2>λp1)をラマン散乱波長λ2の近傍に設定する。そして、分散曲線C1とω=ω+(λ=λp1)の交点を直線C4が通り、分散曲線C1とω=ω−(λ=λp2)の交点を直線C5が通るように、所与の第1の周期P1と所与の入射角度θを設定することができる。
【0118】
図14の例では、第1の共鳴ピーク波長λp1を含む第1の共鳴ピーク波長帯域BW1は、表面増強ラマン散乱における励起波長λ1を含む。第2の共鳴ピーク波長λp2を含む第2の共鳴ピーク波長帯域BW2は、表面増強ラマン散乱におけるラマン散乱波長λ2を含む。共鳴ピーク波長帯域BW1,BW2がそれぞれ共鳴ピーク波長λ1,λ2を含むように第1の周期P1及び入射角度θ等が設定されることで、励起波長λ1における電場増強度とラマン散乱波長λ2における電場増強度を向上できる。
【0119】
ここで、共鳴ピーク波長帯域BW1,BW2は、所与の反射光強度での帯域幅であり、例えばピークの半値幅でもよい。なお、図14では、λ1=λp1、λ2=λp2としているが、λ1とλp1は異なってもよく、λ2とλp2は異なってもよい。
【0120】
図16は、センサーチップの反射光強度の他の特性例を示す。図16は、金属格子150を金(Au)により形成し、金属格子150に対する光の入射角度θが5度であり、光の偏光方向が金属格子150の溝方向(第2の方向D2)と直交し、突起110の断面が矩形(略矩形)であり、第1の周期P1が500nmであり、第1の高さH1が40nmである場合の特性例である。
【0121】
図16の例では、1つの共鳴ピーク波長λp1は、545nm付近に位置し、もう1つの共鳴ピーク波長λp2は、600nm付近に位置する。この2つの共鳴ピーク波長λp1及びλp2を、それぞれ、励起波長λ1及びラマン散乱波長λ2の近傍に合わせる又は一致させることにより、大きな増強ラマン散乱効果が期待できる。
【0122】
図16の例では、図14の例と比べて、2つの共鳴ピークがややブロードであり、且つ浅くなっている。しかしながら、共鳴ピークを1つしか利用しない場合と比べて、表面増強ラマン散乱の信号を増強する効果は優れている。また、金(Au)を用いることで、酸化や硫化等による表面劣化を抑止できる。
【0123】
図17は、図12のセンサーチップの変形例の斜視図を示す。以下では、図12等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。図12の例では、入射光Linとして、偏光方向の基板100の平面に平行な成分(偏光方向の基板100の平面に対する正射影)と第1の突起群115の配列方向(第1の方向D1)とが平行である直線偏光が入射されることが好ましい。このようにすれば、直線偏光によって自由電子プラズマの粗密波が第1の方向D1に沿った方向に誘起され、第1の突起群115の配列方向に沿って伝搬する表面プラズモンを励起できる。
【0124】
図17の例では、第1の突起群115の頂面220に、金属により形成される第2の突起群205を含むことができる。第2の突起群205の複数の突起200の各々は、基板100の平面に平行な方向(第1の方向D1)に沿って、第1の周期P1よりも短い第2の周期P2(P2<P1)で配列される。
【0125】
また、図17の例では、第1の突起群115が配列される面であって第1の突起群115の隣り合う突起110間の面(第1の突起群115の隣り合う突起110間の底面230)に、金属により形成される第3の突起群215を含むことができる。第3の突起群215の複数の突起210の各々は、基板100の平面に平行な方向(第1の方向D1)に沿って、第1の周期P1よりも短い第3の周期P3(P3<P1)で配列される。
【0126】
このようにすれば、第1の突起群115により伝搬型の表面プラズモンが励起され、その伝搬型の表面プラズモンにより第2の突起群205や第3の突起群215に局在型の表面プラズモンが励起される。これにより、励起波長λ1とラマン散乱波長λ2における電場増強度をさらに向上できる。
【0127】
第2の突起群205と第3の突起群215の各突起200,210は、突起200,210の配列方向(第1の方向D1)の断面形状が頂面220と底面230から凸形状に形成される。凸形状は、矩形や台形、円弧等である。例えば、図17に示すように、第2の突起群205や第3の突起群215は、基板100に対する平面視において、第2の方向D2に平行な縞状に形成される。この第2の突起群205と第3の突起群215は、第1の突起群115と同じ金属により形成されてもよく、異なる金属により形成されてもよい。
【0128】
図18に、図17のセンサーチップの断面図を示す。この断面図の断面は、基板100の平面に垂直な面であり、第1の方向D1に平行な面である。図18に示すように、頂面220からの第2の高さH2の突起200(第2の突起群205)が、第1の周期P1より短い第2の周期P2で配列される。底面230からの第3の高さH3の突起210(第3の突起群215)は、第1の周期P1より短い第3の周期P3で配列される。例えば、第2の周期P2や第3の周期P3は、500nm以下に設定することが望ましく、第2の高さH2や第3の高さH3は、200nm以下に設定することが望ましい。なお、第3の高さH3は、H3>H1であってもよく、H3≦H1であってもよい。
【0129】
図18の例では、第2の突起群205や第3の突起群215の配列方向が、第1の突起群115と同じ配列方向(第1の方向D1)である。しかしながら、第2の突起群205や第3の突起群215の配列方向は、第1の方向D1と異なる方向であってもよい。この場合、第2の周期P2や第3の周期P3は、第1の方向D1における配列周期となる。
【0130】
上述のように、第1の突起群115により、励起波長λ1(レイリー散乱波長)とラマン散乱波長λ2に2つの共鳴ピークをもつ伝搬型の表面プラズモンが励起される。この表面プラズモンは、金属格子150の表面に沿って伝搬し、第2の突起群205や第3の突起群215に局在型の表面プラズモンを励起する。そして、この局在型の表面プラズモンは、第2の突起群205や第3の突起群215の突起200,210間に増強電場を励起し、その増強電場と標的物との相互作用により表面増強ラマン散乱が生じる。このとき、第2の突起群205や第3の突起群215の突起200,210間隔が狭いため、突起200,210間に強い増強電場が励起される。そのため、突起200,210間に吸着した標的物が1個〜数個であっても、その増強電場によって強い表面増強ラマン散乱を生じさせることができる。
【0131】
2.6.入射角
図19(A)、図19(B)は、センサーチップに入射光を傾斜させて入射させるための手法の説明図を示す。以下では、図1(B)等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。図19(A)の例では、光源の光軸Lax1を対物レンズ3の光軸Lax2からずらすことで、センサーチップ300に対して入射光Linを傾斜させる。図19(B)の例では、光源の光軸Lax1を対物レンズ3の光軸Lax2と一致させ、対物レンズ3の光軸Lax2に対してセンサーチップ300を傾斜させて配置することで、センサーチップ300に対して入射光Linを傾斜させる。
【0132】
図19(A)の例では、対物レンズ3の光軸Lax2に対して垂直にセンサーチップ300を支持部430上に配置する。そして、有効になった1つの光源の光軸Lax1を所与の距離だけ対物レンズ3の光軸Lax2から離して、対物レンズ3の光軸Laxと平行に入射光Linを対物レンズ3に入射する。所与の距離は、センサーチップ300に対する入射光Linの入射角度が対物レンズ3の屈折によってθとなる距離である。センサーチップ300から光Loutは、対物レンズ3に入射され、対物レンズ3によって例えば図1のハーフミラー2等へ導かれる。
【0133】
図19(B)の例では、センサーチップ300の平面(基板100の平面)の法線と、対レンズ3の光軸Lax2との成す角度をθに配置する。そして、対物レンズ3の光軸Lax2に沿って、有効になった1つの光源からの入射光Linを入射させる。そうすると、入射光Linは対物レンズ3によって屈折されず、センサーチップ300に対して入射角度θで入射される。センサーチップ300を傾斜させるために、図19(B)に示すように支持部430を傾斜させることができる。なお、図19(B)の例を変形して、支持部430の支持面を傾斜面としてもよい。
【0134】
2.7.光デバイス(蒸着による金属ナノ構造)
図20(A)、図20(B)は、電気伝導体の製造方法の概要説明図を示す。例えば図8(A)等で示すフォトリソグラフィー法で作製する金属ナノ構造はトップダウン法とも言われ、金属ナノ構造は、規則的な配列構造を持ち、増強電場が形成される間隙部も揃っている。それに対して、蒸着によって形成される独立したアイランド状の金属ナノ構造は、大きさや形が均一ではなく、増強電場が形成される間隙部も均一にならない。つまり、増強電場の強いところと弱いところ、入射光Linの偏光方向も自由度がある。しかし、この蒸着による金属ナノ構造では、どこかに強い増強電場を形成する条件を含んでいるため、製造バラツキを吸収できるというメリットがある。
【0135】
例えば真空蒸着機を利用して、蒸着による金属ナノ構造を製作することができる。蒸着条件の1例は、基板100に硼珪酸ガラスを採用することができる。また、蒸着金属として、銀(Ag)を採用し、銀(Ag)を基板100に加熱蒸着させることができる。この時、基板100は、加熱する必要はなく、加熱蒸着のレートは、例えば0.03〜0.05nm/secに設定することができる。
【0136】
図20(A)には、島状のアイランドが形成されていく過程を模式的に示してある。蒸着アイランドの初期では、基板100上に銀(Ag)の核が形成される。蒸着アイランドの成長期では、核を中心に銀(Ag)が成長し大きくなる。蒸着アイランドの完成期では、隣接するアイランド同士の隣接する距離が小さくなるが、隣接するアイランドがくっ付かない段階で真空蒸着を止めることができる。
【0137】
図20(B)には実際に製作した金属ナノ構造の電子顕微鏡写真を示してある。おおよそ25nm程度のAgアイランドが形成され、それぞれが独立していることが分かる。これ以上蒸着を継続するとAgアイランド同士が繋がってきて、ついには膜状になってしまう。通常は均一な膜状に蒸着することが求まれるが、この場合にはできるだけ独立したAgアイランドが狭く高密度に形成されることが望ましい。
【0138】
このような金属ナノ構造に直線偏光の光を照射すると、蒸着アイランド間のギャップ近傍に強い増強電場が形成されるが、ギャップの位置や向きなどは一定に揃っていない。増強電場に寄与するのは、そのギャップの向きに合った入射光Linの内のp偏光波であり、偏光方向によって強く増強電場が形成される場合と、少し弱くなる場合がある。
【0139】
2.8.分光分析
図21(A)、図21(B)、図21(C)は、ラマンスペクトルのピーク抽出の概要説明図を示す。図21(A)は、ある物質に励起レーザーを照射した時に検出されるラマンスペクトルを示し、ラマンシフトを波数で表している。図21(A)の例では、第1のピーク(883cm−1)と第2のピーク(1453cm−1)が特徴的と考えられる。得られたラマンスペクトルと予め保持するデータ(第1のピークのラマンシフト及び光強度、第2のピークのラマンシフト及び光強度等)と照合することで、標的物を特定することができる。
【0140】
図21(B)は、解像度が粗い(40cm−1)分光素子370で受光素子380が第2のピークの周辺のスペクトルを検出した時の信号強度(白丸)を示す。図21(C)は、解像度が細かい(10cm−1)分光素子370で受光素子380が第2のピークの周辺のスペクトルを検出した時の信号強度(白丸)を示す。10cm−1程度で解像度が細かい場合には、第2のピークのラマンシフト(黒丸)を正確に特定し易くなる。
【0141】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光デバイス、検出装置、分析装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0142】
2 ハーフミラー、3 対物レンズ、4 光デバイス、5 検出器、7 制御部、
15 光源ドライバー、20 金属微粒子(金属ナノ粒子)、100 基板、
101 レジスト、104 凹部、105 凸部、110,210,310 突起、
115 突起群(第1の突起群)、120 表面、130 ガラス基板、
140 金属薄膜、150 金属格子、205 第2の突起群、215 第3の突起群、
220 頂面、230 底面、300 センサーチップ、305 識別コード、
310 センサーチップ検出素子、315 検出回路、320 コリメーターレンズ、
330 偏光制御素子、360 集光レンズ、365 光フィルター、
370 分光素子、375 分光ドライバー、380 受光素子、385 受光回路、
400 吸引口(搬入口)、410 排出口、420 誘導部(搬送部)、
421 吸引流路、422 センサーチップ付近の流路、422a 内周面、
422b 平面、422c 内側球面、423 排出流路、423a 中継経路、
424,425 封止部材、426,427 フィルター、430 支持部、
440 カバー、450 ファン、455 ファンドライバー、460 処理部、
461 CPU、462 RAM、463 ROM、470 電力供給部、
480 ヒンジ部、490 接続部、500 筐体、510 通信接続口、
520 電源接続口、530 インターフェース、540 表示部、550 操作部、
A 光源、BW1,BW2 共鳴ピーク波長帯域、D1 第1の方向、
D2 第2の方向、D3 第3の方向、DA 偏光方向、Lax1 光源の光軸、
Lax2 対物レンズの光軸(光学系の光軸)、Lin 光源からの光(入射光)、
Lout 光デバイスからの光(散乱光、反射光)、H1 第1の高さ、
H2 第2の高さ、P1 第1の周期、P2 第2の周期、P3 第3の周期、
λ1 励起波長、λ2 ラマン散乱波長、λp1,λp2 共鳴ピーク波長、
θ 入射角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置に着脱可能な光デバイスユニットであって、
電気伝導体を有し、前記検出装置の光源からの光を受けて生じたラマン散乱光を増強可能な光デバイスと、
前記光デバイスに気体試料を誘導する第1の誘導部とを含むことを特徴とする光デバイスユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の誘導部は、前記気体試料を取り込み口から取り込む第1の流路を有し、
前記第1の流路は、前記取り込み口と前記光デバイスとの間に、外光の入射線を遮る内壁面を有することを特徴とする光デバイスユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の流路に空気中の浮遊物を除去するフィルターをさらに含み、
前記フィルターは、前記外光を遮光することを特徴とする光デバイスユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記検出装置によって読み取り可能であり、且つ前記光デバイスを識別する識別コードをさらに含むことを特徴とする光デバイスユニット。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記第1の誘導部は、前記第1の流路と連結する第2の流路を有し、
前記第2の流路は、前記光デバイスに臨む領域で、前記気体試料を旋回させることを特徴とする光デバイスユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光デバイスユニットと、
前記第1の誘導部と接続可能な第2の誘導部と、
前記光源と、
前記前記光源からの前記光を前記光デバイスの前記電気伝導体に入射させる第1の光学系と、
前記電気伝導体により散乱または反射された光の中から前記ラマン散乱光を検出する検出器とを含み、
前記第2の誘導部は、前記気体試料を排出口に誘導することを特徴とする検出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記光デバイスの前記電気伝導体は、複数の突起を有する第1の突起群を有し、
前記第1の突起群の前記複数の突起の各々は、前記電気伝導体の前記仮想平面に対して平行な方向に沿って、第1の周期で配列され、
前記光源からの前記光が有する偏光方向の前記仮想平面に平行な成分と前記第1の突起群の配列方向とが平行になるように、前記第1の光学系は、前記光源からの前記光を前記第1の突起群に入射させることを特徴とする検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1の突起群の前記複数の突起の各々は、前記第1の突起群の頂面で、電気伝導体により形成される第2の突起群を有し、
前記第1の突起群の前記複数の突起のいずれか1つに対応する前記第2の突起群の複数の突起の各々は、前記仮想平面に平行な前記方向に沿って、前記第1の周期よりも短い第2の周期で配列されることを特徴とする検出装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記第1の突起群が配列される面であって前記第1の突起群の隣り合う突起間の面に、電気伝導体により形成される第3の突起群を有し、
前記第3の突起群の複数の突起の各々は、前記第1の突起群の前記隣り合う突起間で、前記仮想平面に平行な前記方向に沿って、前記第1の周期よりも短い第3の周期で配列されることを特徴とする検出装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかにおいて、
前記光源からの前記光の進行方向を前記仮想平面に向かう垂線に対して傾斜させた場合の表面プラズモン共鳴が、第1の共鳴ピーク波長と第2の共鳴ピーク波長の各々で生じ、
前記第1の共鳴ピーク波長を有する第1の共鳴ピーク波長帯域は、
前記表面プラズモン共鳴に起因する表面増強ラマン散乱における励起波長を有し、
前記第2の共鳴ピーク波長を有する第2の共鳴ピーク波長帯域は、
前記表面増強ラマン散乱におけるラマン散乱波長を有することを特徴とする検出装置。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれかにおいて、
前記ラマン散乱光を前記検出器に導く第2の光学系をさらに含み、
前記検出器は、前記第2の光学系を介して前記ラマン散乱光を受光することを特徴とする検出装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−63155(P2012−63155A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205510(P2010−205510)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】