説明

光データ記憶媒体の製造方法

【課題】高品質の画像を形成するレリーフパターンを有する光データ記憶媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】光データ記憶媒体の製造方法が提供される。当該方法では、光データ記憶媒体の片面上に、実質的に未硬化の樹脂層が設けられる。この実質的に未硬化の樹脂層に、画像を形成するレリーフパターンがエンボス加工される。実質的に未硬化の樹脂層にレリーフパターンをエンボス加工することで、エンボス加工時に樹脂層に加えられる圧力を低くすることができ、それにより表面欠陥や空気混入が回避された高品質の画像を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、光データ記憶媒体の製造方法に関する。本発明の別の実施形態は、光データ記憶媒体、及び光データ記憶媒体を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、及びブルーレイディスク(BD)等の光データ記憶媒体は、その読出し/書込み面とは反対側の面に画像が描かれていることが多い。このような画像の少なくとも一部は、エンボス加工されたものであってよい。すなわち、画像の一部はレリーフパターンに基づくものであってよい。このようにして、例えばホログラムを画像として提供することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第98/08565号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第1519249号明細書
【特許文献3】欧州特許第0405568号明細書
【特許文献4】国際公開第97/27584号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4126726号明細書
【特許文献6】米国特許第4906315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高品質の画像を形成するレリーフパターンを有する光データ記憶媒体の製造方法を提供することである。さらなる目的は、当該光データ記憶媒体を提供すること、及び当該光データ記憶媒体を製造する各装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、特許請求の範囲における請求項1、11、及び15によりそれぞれ達成される。
【0006】
すなわち、本発明の一の形態に係る、光データ記憶媒体の製造方法は、光データ記憶媒体の片面上に、実質的に未硬化の樹脂層を設け、上記実質的に未硬化の樹脂層に、画像を形成するレリーフパターンをエンボス加工するものである。
【0007】
また、本発明の他の形態に係る光データ記憶媒体は、画像を形成する、エンボス加工されたレリーフパターンを有する樹脂層を具備する。
上記樹脂層の第1のレベルの分子ストレスは、硬化した樹脂層に、88.6N/cm以上の高圧力でレリーフパターンがエンボス加工される場合に生じる第2のレベルの分子ストレスよりも低い。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る装置は、支持部材と、スタンパと、光源とを有する。
上記支持部材は、光データ記憶媒体を支持するように構成された第1の面を有し、透明材料製のものである。
上記スタンパは、画像を形成するレリーフパターンを有し、当該レリーフパターンを、上記光データ記憶媒体の実質的に未硬化の樹脂層にエンボス加工するように構成される。
上記光源は、上記支持部材の上記第1の面と反対側の第2の面上に設けられ、上記支持部材を透過する硬化光を供給するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る、光データ記憶媒体の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る、光データ記憶媒体の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係る光データ記憶媒体の構造を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る、光データ記憶媒体を製造する装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
さらなる詳細は、図面及び以下の説明を考慮することにより明らかになる。
【0011】
以下で、本発明の実施形態が説明される。説明される実施形態のすべては、何らかの形で組み合わせられてもよい。すなわち、説明された或る実施形態を他の実施形態と組み合わせてはいけないという制限はない。なお、図面を通して、同一の参照符号は、同一又は同様の要素を示す。
【0012】
図1では、S100において、光データ記憶媒体が提供される。光データ記憶媒体は、ディスク形状であってよい。或いは、光データ記憶媒体は、例えばカード型等の矩形であってもよい。光データ記憶媒体は、例えばオーディオコンパクトディスク(CD)、CD−ROM、デジタルヴァーサタイルディスク(DVD)、デュアルディスク、ブルーレイディスク(BD)、又はハイディフィニションDVD(HD−DVD)等の標準フォーマットであってよい。
【0013】
光データ記憶媒体は、その非読出し/書込み面上に保護層を有する「完成品の」ディスクであってよい。或いは、光データ記憶媒体は、まだその非読出し/書込み面上に保護層がない「生の状態」であってもよい。
【0014】
図1のS102において、光データ記憶媒体の片面上に、実質的に未硬化の樹脂層が設けられる。この実質的に未硬化の樹脂層は、例えば、光データ記憶媒体の非読出し/書込み面上に設けられてよい。「実質的に未硬化」とは、大気との接触により、やがて僅かずつ硬化し始めるが、大体においては未硬化であることを意味する。別の実施形態では、樹脂層は完全に未硬化であってもよい。したがって、この樹脂層は、「ウェット」であり且つ/又は高い粘度を有するといえる。
【0015】
その後、S104において、実質的に未硬化な樹脂層に、レリーフパターンがエンボス加工される。このレリーフパターンは、例えばホログラム等の画像を形成してよい。この画像は「ピットアート」、すなわち樹脂層のピットによって実現される画像であってもよい。
【0016】
したがって、S104において、樹脂層は、未硬化の状態でレリーフパターンをエンボス加工される。したがって、エンボス加工のために用いられる力は、少ない力、例えば0.45N/cm〜8.85N/cm(5kg〜100kg)の範囲であってよい。このエンボス加工のために用いられる力は、樹脂層が硬化した状態でエンボス加工を行う場合に必要とされる力よりもかなり低い。未硬化の樹脂層は非常に柔軟(高粘度)であるため、押し付けられたスタンパ(シム)の外形を非常に忠実に再現する。したがって、レリーフパターンをエンボス加工することは、未硬化の樹脂層にレリーフパターンをプレス、インプリント又はスタンプすることであると見なすことができる。
【0017】
レリーフパターンは、わずか数キログラムの力でエンボス加工(インプリント、スタンプ)されるため、光データ記憶媒体はストレスに晒されない。さらに、樹脂層は、未硬化の状態でレリーフパターンをエンボスされるため、この未硬化の樹脂層は、エンボス加工のために用いられるスタンパのいかなる空間(型、間隙)も容易に満たすことができる。そのため、高品質(高精細)の画像を実現することができる。この結果、どんなに小さな表面欠陥及び空気混入も回避された、極めて優れた外観の画像が得られる。上記のように未硬化の樹脂層にエンボス加工を行う場合、表面欠陥は数ミクロン、例えば3ミクロン〜5ミクロンであり得る。硬化した樹脂層にエンボス加工を行う場合、スタンパ(又はシム)が、硬化した樹脂層に接触して傷付けてしまい、300ミクロン〜500ミクロンの範囲の表面欠陥が生じてしまうおそれがある。
【0018】
光データ記憶媒体の分子ストレスが小さく、高品質の画像が実現できることから、低い不良品発生率(高歩留まり)により、製造コストを低減することができる。また、光データ記憶媒体の寿命がより長くなり、より高品質になる。さらに、圧力が低いことにより、高圧力が用いられる場合に比べ、スタンパの寿命が長くなる。この理由は、高圧力においては、スタンパとデータ記憶媒体の表面との間の塵が、スタンパを破損してしまうためである。低圧力においては、塵はこのような悪影響を持たない。
【0019】
図2は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、エンボス加工のために用いられるスタンパが、実質的に未硬化の樹脂層の硬化プロセスの開始後に取り外される。図2の実施形態では、図1のブロックS100、S102及びS104に加え、S106において、樹脂層にレリーフパターンがエンボスされる間に、樹脂層が硬化される。したがって、図2の実施形態では、エンボス加工のために用いられるスタンパがエンボス位置にある、すなわち樹脂層に接触している間に、樹脂層が硬化される。この硬化は、例えば紫外線(UV)光により実現されてよい。
【0020】
こうして、エンボス加工プロセス中に、硬化プロセスを実行することができる。スタンパは、樹脂層が完全に硬化した後に取り外されてもよい。或いは、スタンパを取り外すとき、樹脂層は完全に硬化していなくてもよく、レリーフパターンが、スタンパの取り外しによって実質的に影響を受けないほど十分に安定して保持される程度に硬化していればよい。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態(図示せず)では、スタンパは、実質的に未硬化の樹脂層の硬化プロセスの開始の所定期間前に、取り外されてもよい。この所定の期間は、未硬化の樹脂層の粘度に応じて決まり、硬化プロセスの開始時に、レリーフパターンが実質的に変化しないように選択される。したがって、この所定の期間は、かなり短い期間、例えば数ミリ秒の範囲内である。
【0022】
図3及び図4は、コンパクトディスク(CD)がデータ記憶媒体として用いられる2つの実施形態を示す。
【0023】
図3において、CD300の断面図が示される。CD300は、ポリカーボネート層302を有する。このポリカーボネート層302は、CD300の読出し/書込み面304を形成する。さらに、このポリカーボネート層302に、ピット/ランド306が形成される。このピット/ランド306は、例えば、CD300がオーディオCDである場合には、オーディオコンテンツを有する。
【0024】
CD300は、反射層308と、第1の保護層309と、樹脂層310と、第2の保護層314とをさらに有する。第1の保護層309及び第2の保護層314は省略可能である。この場合、樹脂層310はポリカーボネート層302に隣接する。また、この場合、樹脂層310がピット/ランド構造306の保護層としての機能を果たすことができる。
【0025】
任意選択で、レリーフパターン312上、すなわち樹脂層310上、又は樹脂層310と第2の保護層314との間に、さらなる反射層320を設けてもよい。このさらなる反射層320は、レリーフパターン312の効果を高めることができる。レリーフパターン312がホログラムを形成する場合には、そのホログラム効果を高めることができる。また、未硬化の樹脂層310におけるエンボス加工によって得られるレリーフパターン312は高精度であるため、上記さらなる反射層320の製造に用いられる反射材料は、レリーフの外形をより精密に再現することができる。したがって、画像の品質は非常に高い。
【0026】
樹脂層310は、エンボス加工されたレリーフパターン312を有する。このレリーフパターン312は、少なくとも部分的に画像を形成する。樹脂層310は、未硬化の状態で、このレリーフパターン312をエンボス加工されている。したがって、この樹脂層310の分子ストレスのレベルは、樹脂層310が硬化した状態でレリーフパターン312がエンボス加工される場合の分子ストレスのレベルよりも低い。言い換えれば、樹脂層310には実質的に分子ストレスがないか、又は非常に低い。さらに、ポリカーボネート層302及び第1の保護層309の分子ストレスは、高圧力、例えば88.6N/cm以上(1000kg以上)でレリーフパターン312がエンボスされる場合に生じる分子ストレスと比較して、非常に低くなり得る。
【0027】
さらに、樹脂層310には、樹脂層が硬化した状態且つ高圧力でレリーフパターン312がエンボスされる場合に生じる微細な亀裂、バリ等の望ましくないエンボスアーチファクトがない。
【0028】
上述のように、CD300は、未硬化の状態の樹脂層310を設け、その未硬化の状態で、樹脂層310にレリーフパターン312をエンボス加工することにより製造されているため、ポリカーボネート層302及び第1の保護層309には、分子ストレスがないか又は非常に低く、これらの分子ストレスは、樹脂層310が硬化した状態でレリーフパターン312がエンボス加工される場合に生じる各分子ストレスよりも低い。言い換えれば、樹脂層310が硬化した状態でレリーフパターン312がエンボスされる場合、高圧力が必要となり、また樹脂層310の加熱が必要となり得る。これにより、下部層である第1の保護層309及びポリカーボネート層302にかなりのストレスがかかり、これにより分子ストレスが生じる。樹脂層310が未硬化の状態である場合、樹脂層310に対するレリーフパターン312のエンボス加工を非常に低い圧力で行うことができるため、上記のような第1の保護層309及びポリカーボネート層302における分子ストレスを避けることができる。硬化した状態の樹脂層310にレリーフパターン312がエンボスされる場合、88.6N/cm〜886N/cm(1トン〜10トン)以上の圧力が必要となる。未硬化の状態の樹脂層310にレリーフパターン312がエンボスされる場合、低い圧力、例えば0.45N/cm〜17.7N/cm(5kg〜200kg)で十分である。レリーフパターン312は、画像を形成する突起及び/又は穴を有する。この画像は、例えば第2の保護層314と樹脂層310との境界における光の屈折/反射等の光学的効果により、CD300の非読出し/書込み面316から見ることができる。この光学的効果は、反射層308の反射に基づくものである。任意選択のさらなる反射層320により、この光学的効果の向上を達成することができる。
【0029】
画像は、例えばホログラム、モノグラム等であってよい。したがって、突起/穴318は、異なる高さ/深さH1、H2を有することが可能である。
【0030】
樹脂層310の材料と同じ材料を、データを有するピット/ランドが設けられた層のために用いてもよいため、樹脂層310の材料は「ピット樹脂」と呼ばれることもある。
【0031】
図4は、本発明の別の実施形態に係るCD400の断面図を示す。図4の実施形態は図3の実施形態に類似しているが、樹脂層310と第1の保護層309との間に、さらなる樹脂層402が設けられている。
【0032】
さらなる樹脂層402は、樹脂層310と第1の保護層309とに対する良好な接着特性を有する材料で作られていてよい。言い換えれば、樹脂層310、さらなる樹脂層402、及び第1の保護層309(下部層とも呼ばれる)は、それぞれ第1の材料、第2の材料及び第3の材料を有するか又はそれらの材料からなっている。ここで、第1の材料と第2の材料との間の第1の接着力、及び第2の材料と第3の材料との間の第2の接着力は、第1の材料と第3の材料との間の第3の接着力よりも大きい。
【0033】
したがって、さらなる樹脂層402は、CD400の下部層(図4の実施形態における第1の保護層309)に対する樹脂層310の高い接着力を実現する「適合層」又は「接着層」と呼ばれることもある。
【0034】
さらに、樹脂層310と第1の保護層309との間に挟まれたさらなる樹脂層402を設けることにより、樹脂層310の材料設計がより柔軟になる。
【0035】
樹脂層310の材料に関して、この材料は、下部層に対して高い接着力を有するように選択されるべきであり、一方、樹脂層310の材料と、レリーフパターン312をエンボスする際にスタンパに用いられる材料との間の接着力は低くされるべきであることに留意されたい。
【0036】
図5は、DVD500の断面図である。DVD500は、第1のポリカーボネート層502と、第2のポリカーボネート層504と、樹脂層506と、保護層508とを有する。保護層508は任意選択であり、省略されてもよい。
【0037】
第1のポリカーボネート層502は、DVD500の読出し/書込み面510を形成する。この第1のポリカーボネート層502は、その読出し/書込み面510とは反対側の面に、ピット/ランド514を有する。このピット/ランド514には、反射層516が設けられる。
【0038】
DVD500の読出し/書込み面510と反対側の面には、保護層508により、非読出し/書込み面512が形成される。
【0039】
さらなる層が存在してもよい。例えば、第1のポリカーボネート層502と第2のポリカーボネート層504との接着力を向上させるために、第1のポリカーボネート層502と第2のポリカーボネート層504との間に接合接着層を設けてもよい。
【0040】
図3及び図4の実施形態と同様に、樹脂層506は、画像を形成するレリーフパターン518を有する。前述のように、画像はホログラム等であってよく、ここでも、レリーフパターン518の突起/穴は異なる高さ/深さを有してもよい。
【0041】
また、図3及び図4と同様に、任意選択で、レリーフパターン518上、すなわち樹脂層506上、又は樹脂層506と保護層508との間に、さらなる反射層520を設けてもよい。このさらなる反射層320は、レリーフパターン518の効果を高めることができる。レリーフパターン518がホログラムを形成する場合には、そのホログラム効果を高めることができる。また、未硬化の樹脂層506におけるエンボス加工によって得られるレリーフパターン518は高精度であるため、上記さらなる反射層520の製造に用いられる反射材料は、レリーフの外形をより精密に再現することができる。したがって、画像の品質は非常に高い。
【0042】
さらに、図3及び図4に関連して既に説明したように、樹脂層506は、未硬化の状態でレリーフパターン518をエンボス加工されるため、第1のポリカーボネート層502、第2のポリカーボネート層504、樹脂層506及び保護層508のすべてには、分子ストレスがないか又は非常に低い。したがって、エンボス加工時に高い圧力が加えられることはなく、第1のポリカーボネート層502及び第2のポリカーボネート層504における分子ストレスは低い。また、これも図3及び図4に関連して述べたように、既に上述した理由と同じ理由で、高品質の画像を実現することができる。
【0043】
図5の例では、片面1層DVD(DVD5)が示される。しかし、上述の原理を、片面2層DVD、HD−DVD、又は同じ構造若しくは少なくとも類似の構造を有するその他の光データ記憶媒体に、同様に適用可能である。
【0044】
図6は、本発明の別の実施形態に係る、さらなるDVD600の断面図を示す。図3及び図4の実施形態と同様に、図6の実施形態を図5の実施形態と比較すると、樹脂層506と第2のポリカーボネート層504との間に、さらなる樹脂層602が設けられている。図4の実施形態のように、さらなる樹脂層602は、樹脂層506とさらなる樹脂層602との間、及びさらなる樹脂層602と第2のポリカーボネート層504との間の強い接着力を実現する「適合層」と呼ばれることもある。
【0045】
図5の実施形態のように、図6において、さらなる層が存在してもよい。例えば、第1のポリカーボネート層502と第2のポリカーボネート層504との間の接着性を向上させるために、第1のポリカーボネート層502と第2のポリカーボネート層504との間に接合接着層を設けてもよい。
【0046】
図7は、ブルーレイディスク(BD)550の断面図を示す。ブルーレイディスク550は、カバー層552と、ポリカーボネート層554と、樹脂層556と、保護層558とを有する。さらに、ブルーレイディスク550は、反射層562で覆われたピット/ランド構造560を有する。
【0047】
樹脂層556は、レリーフパターン566を有する。図3〜図6の実施形態と同様に、レリーフパターン566の効果を高めるために、任意選択で、レリーフパターン566上にさらなる反射層564を設けてもよい。前述のように、レリーフパターン566がホログラムを形成する場合、そのホログラム効果を高めることができる。また、前述のように、未硬化の樹脂層556におけるエンボス加工によって得られるレリーフパターン566は高精度であるため、さらなる反射層564の製造に用いられる反射材料は、レリーフの外形をより精密に再現することができる。したがって、画像の品質は非常に高い。
【0048】
さらに、図3〜図6のように、樹脂層556は、未硬化の状態でレリーフパターン566をエンボス加工されるため、カバー層552、ポリカーボネート層554、樹脂層556、及び保護層558のすべてには、分子ストレスがないか又は非常に低い。したがって、エンボス加工時に高い圧力が加えられることはなく、これらの層における分子ストレスは低い。既に上述した理由と同じ理由で、高品質の画像を実現することができる。
【0049】
図8は、さらなるブルーレイディスク570の断面図を示す。図3及び図4の実施形態と同様に、図8の実施形態を図7の実施形態と比較すると、樹脂層556とポリカーボネート層554との間に、さらなる樹脂層568が設けられている。上述のように、さらなる樹脂層568は、樹脂層556とポリカーボネート層554との間の強い接着力を実現する「適合層」と呼ばれることもある。
【0050】
図7及び図8に示す実施形態は、25ギガバイトの記憶容量を有するブルーレイディスク(BD25)を例示的に示す。したがって、図7及び図8の実施形態には、1つのピット/ランド構造560しかない。しかし、上述の原理を、50ギガバイト、75ギガバイト、100ギガバイト又はそれ以上等のより大きい記憶容量を有するブルーレイディスク(BD50、BD75、BD100)に、同様に適用可能である。この場合、2層、3層、4層又はそれ以上のピット/ランド構造が存在するであろう。これらの層は異なる反射材料で覆われてもよい。また、ピット/ランド構造を有する、異なる層間に、それぞれのスペーサ層が配置されてもよい。
【0051】
図3〜図8は、標準的なデータ記憶媒体(CD、DVD、ブルーレイ)の例に関するものであるが、実質的に未硬化の樹脂層に、画像を形成するレリーフパターンをエンボス加工するという原理は、いかなる他のデータ記憶媒体にも適用可能であることに留意されたい。また、図3〜図6の構造は単なる例示に過ぎず、種々の異なる構造が可能である。例えば、未硬化の樹脂層は、任意の構造の下部層を有するデータ記憶媒体の片面に設けられてもよい。言い換えれば、図3〜図8における実施形態の下部層の構造は単に例に過ぎず、他の構造が可能である。
【0052】
図9は、光データ記憶媒体を製造する装置700を示す。装置700は、支持部材702を有する。この支持部材702は、さらなる支持部材704によって保持されている。支持部材702は、透明材料、例えばガラス製であってよい。さらなる支持部材704は透明である必要はなく、例えば金属製であってよい。
【0053】
任意選択で、装置700は、例えばシリコン又は同様の材料で作られた弾性支持部材706を有してもよい。弾性支持部材706は、「バネ機能」を有する。したがって、以下に説明するように、エンボス加工中にスタンパ/データ記憶媒体に加えられる力が、スタンパ/データ記憶媒体の表面に沿って均等に分散される。
【0054】
上述のようなレリーフパターンを有する光データ記憶媒体を製造する際には、光データ記憶媒体708が、弾性支持部材706上に載置され、未硬化の樹脂層710が、光データ記憶媒体708の表面上に設けられる。
【0055】
未硬化の樹脂層710にレリーフパターンをエンボス加工するために、各レリーフパターン714を有するスタンパ712が用いられる。矢印716によって示すように、スタンパ712は、エンボス加工プロセスを実現するために昇降可能である。
【0056】
図9から明らかなように、未硬化の樹脂層710に各レリーフパターンをエンボスするために、スタンパ712は下げられ、光データ記憶媒体708上に設けられた未硬化の樹脂層710に押し付けられる。スタンパ712は、0.45N/cm〜17.70N/cm(5kg〜200kg)の範囲の力で、すなわちより低い力で未硬化の樹脂層710/光データ記憶媒体708に押し付けられてよい。
【0057】
スタンパ712がエンボス位置、すなわちレリーフパターン714と未硬化の樹脂層710とが接触する低位置にある間に、未硬化の樹脂層710は、紫外線(UV)光718を供給する光源(図9には示さない)のスイッチを入れることにより硬化される。UV光718は、樹脂層710を硬化するために、支持部材702、弾性支持部材706、及び光データ記憶媒体708を透過する。
【0058】
したがって、上記のように、弾性支持部材706は、透明材料製であってよい。
【0059】
別の実施形態では、スタンパ712の第1の部品722及び/又は第2の部品724が、透明材料、例えばガラスで作られていてもよい。この場合、硬化用のUV光は、スタンパ712の内側又は上方から提供されてもよい。また、この場合、支持部材702、弾性支持部材706、及び光データ記憶媒体708は、光を透過しない材料で作られてもよい。
【0060】
弾性支持部材706を光データ記憶媒体708と支持部材702との間に設ける代わりに、弾性支持部材706を、スタンパ712の第1の部品722と第2の部品724(シムとも呼ばれる)との間に設けてもよい。
【0061】
別の実施形態では、装置700は、樹脂層710のエンボス加工/硬化プロセス中に真空状態を確立するために真空室720を有してもよい。樹脂層710を真空状態でエンボス加工することにより、樹脂中に気泡ができるのを避けることができる。さらに、樹脂層710は「ウェット」であるため、スタンパ712の第2の部品724におけるレリーフパターン714を完全に転写するために、非常に低い圧力しか必要とされない。さらに、硬化した樹脂においてエンボス加工を行う場合に必要とされる熱源等は必要ない。
【0062】
圧力が低いため、光データ記憶媒体708はいかなるストレスも受けず、完成した製品の品質も高くなる。さらに、樹脂層710は未硬化の状態でエンボス加工されるため、樹脂は、スタンパ712上のレリーフパターン714のすべての縁及び角(穴/突起)を完全に再現し、結果として、完成した光データ記憶媒体708上のレリーフパターンの外見は高品質なものとなる。画像の品質は、構造が小さく、線が細かいほど良い。
【0063】
さらに、エンボス加工中、樹脂層710は未硬化の状態であるため、スタンパ712は、樹脂層710に非常に短時間押し付けられるだけでよい。例えば、10分の数秒(0.1秒〜0.6秒)又はそれ以下の時間で十分である。硬化は、未硬化の樹脂層710の材料に応じて、0.6秒〜1.2秒かかり得る。したがって、大量生産において重要なファクターである製造スピードが向上する。
【0064】
スタンパ712は、例えばニッケル等の金属製であってよい。既に上述したように、樹脂層710の材料は、スタンパ712に「くっつく」ことがないように選択される。言い換えれば、樹脂層710のために選択される材料は、スタンパ712の材料から容易に剥離可能であるべきである。
【0065】
UV光718を当てられることにより樹脂層710が硬化された後、スタンパ712は取り外され、装置700(エンボス加工ユニット)は換気される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光データ記憶媒体の片面上に、実質的に未硬化の樹脂層を設け、
前記実質的に未硬化の樹脂層に、画像を形成するレリーフパターンをエンボス加工する
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記エンボス加工のためにスタンパが用いられ、
前記スタンパは、前記実質的に未硬化の樹脂層の硬化プロセスの開始後に取り外される
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記スタンパは、0.45N/cm〜17.70N/cmの範囲の力で前記実質的に未硬化の樹脂層に押し付けられる
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記スタンパは、前記実質的に未硬化の樹脂層の硬化プロセスの開始前に、所定の期間取り外される
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記光データ記憶媒体の前記片面は、当該光データ記憶媒体の読出し/書込み面と反対側の面である
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記エンボス加工中、前記読出し/書込み面は、透明な支持部材上に載置され、
前記硬化プロセスは、前記実質的に未硬化の樹脂層に、前記透明な支持部材を介してUV光を照射することを含む
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記エンボス加工のために前記スタンパが用いられ、
前記エンボス加工のために前記スタンパに加えられる圧力は、前記実質的に未硬化の樹脂層の粘度に応じて決められる
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記光データ記憶媒体は、ディスク形状である
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
さらなる樹脂層が、前記光データ記憶媒体の下部層上に設けられ、
前記さらなる樹脂層は、前記下部層と前記実質的に未硬化の樹脂層との間に挟まれており、
前記実質的に未硬化の樹脂層、前記さらなる樹脂層、及び前記下部層は、第1の材料、第2の材料、第3の材料をそれぞれ有し、
前記第1の材料と前記第2の材料との間の第1の接着力、及び前記第2の材料と前記第3の材料との間の第2の接着力は、前記第1の材料と前記第3の材料との間の第3の接着力よりも大きい
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体の製造方法であって、
前記エンボス加工は、少なくとも部分的に、真空下で実行される
光データ記憶媒体の製造方法。
【請求項11】
画像を形成する、エンボス加工されたレリーフパターンを有する樹脂層を具備し、
前記樹脂層の第1のレベルの分子ストレスは、硬化した樹脂層に、88.6N/cm以上の高圧力でレリーフパターンがエンボス加工される場合に生じる第2のレベルの分子ストレスよりも低い
光データ記憶媒体。
【請求項12】
請求項11に記載の光データ記憶媒体であって、
前記樹脂層は、前記光データ記憶媒体の複数のさらなる層上に設けられ、
前記複数のさらなる層は、硬化した樹脂層にレリーフパターンをエンボス加工する場合に当該複数のさらなる層に力が加わることで当該複数のさらなる層内に生じるそれぞれの分子ストレスよりも低い、第3のレベルの分子ストレスをそれぞれ有する
光データ記憶媒体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光データ記憶媒体であって、
前記樹脂層には、当該樹脂層が硬化した状態で前記レリーフパターンがエンボス加工される場合に生じる望ましくないエンボスアーチファクトが生じない
光データ記憶媒体。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の光データ記憶媒体であって、
前記樹脂層と前記下部層との間に挟まれたさらなる樹脂層を具備し、
前記樹脂層、前記さらなる樹脂層、及び前記下部層は、第1の材料、第2の材料、及び第3の材料をそれぞれ有し、
前記第1の材料と第2の材料との間の第1の接着力、及び前記第2の材料と前記第3の材料との間の第2の接着力は、前記第1の材料と前記第3の材料との間の第3の接着力よりも大きい
光データ記憶媒体。
【請求項15】
光データ記憶媒体を支持するように構成された第1の面を有する、透明材料製の支持部材と、
画像を形成するレリーフパターンを有し、当該レリーフパターンを、前記光データ記憶媒体の実質的に未硬化の樹脂層にエンボス加工するように構成されたスタンパと、
前記支持部材の前記第1の面と反対側の第2の面上に設けられ、前記支持部材を透過する硬化光を供給するように構成された光源と
を具備する装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、
前記光源は、前記スタンパが前記実質的に未硬化の樹脂層と接触するエンボス位置にあるときに、前記硬化光を供給するように構成される
装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装置であって、
前記スタンパは、前記実質的に未硬化の樹脂の硬化プロセスの開始の所定期間前に取り外されるように構成される
装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の装置であって、
エンボス加工のために前記スタンパによって加えられる圧力は、前記実質的に未硬化の樹脂層の粘度に応じて決められる
装置。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の装置であって、
前記実質的に未硬化の樹脂層を前記光データ記憶媒体上に設ける手段をさらに具備する
装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、
さらなる樹脂層を、前記光データ記憶媒体の下部層上に設ける手段をさらに具備し、
前記さらなる樹脂層は、前記下部層と前記実質的に未硬化の樹脂層との間に挟まれており、
前記実質的に未硬化の樹脂層、前記さらなる樹脂層、及び前記下部層は、第1の材料、第2の材料、及び第3の材料をそれぞれ有し、
前記第1の材料と前記第2の材料との間の第1の接着力、及び前記第2の材料と前記第3の材料との間の第2の接着力は、前記第1の材料と前記第3の材料との間の第3の接着力よりも大きい
装置。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の装置であって、
少なくとも前記スタンパと前記実質的に未硬化の樹脂層との間に真空を提供するように構成された真空室をさらに具備する
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−170084(P2009−170084A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7042(P2009−7042)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(595044111)ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
【Fターム(参考)】