説明

光ドロップケーブルの直線接続部構造

【課題】簡便な光コネクタ接続方式による光ドロップケーブルの直線接続部構造を提供する。
【解決手段】接続すべき両側の光ドロップケーブル11の先端近傍で、各光ケーブル15と支持線16とを分離する。各光ケーブル15にそれぞれ光コネクタ25を取り付け、互いに光接続する。支持線16どうしを例えば連結スリーブ28のカシメで連結する。細長いベース部材31の両端部のケーブル把持部32で光ケーブル15を把持する。光コネクタ25をベース部材31にテープ巻き33等で固定する。例えば予め一方の光ドロップケーブル11に通していた保護スリーブ22を引き寄せて、光コネクタ25、ベース部材31等の部分に被せる。保護スリーブ22の両端に端面キャップを取り付けて、保護スリーブ22の開口を閉ざす。直線接続部を容易に小型軽量化できる。組み立てが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光通信網の架空光ケーブルから各家屋に光ファイバを引き込むための光ドロップケーブルに関し、特に、光ケーブル部分と支持線とを一体化した光ドロップケーブルの直線接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信網の架空光ケーブルから各家屋に光ファイバを引き込む場合、架空光ケーブルから引き落とした光ドロップケーブルと家屋側の光ドロップケーブルとを接続する必要があるが、その場合、家屋の外壁に成端箱を固定し、その成端箱内に光ドロップケーブルどうしの接続部を収容する方法が一般的である。
また、小型の光クロージャによる直線接続構造とする場合は、図8に示すようにメカニカルスプライス4を用いる接続構造も一般的である。同図において、1は光ドロップケーブルである。図8(イ)の通り、光ドロップケーブル1は光ケーブル部分2と支持線3とを一体化した構造である。両側の光ドロップケーブル1の端部近傍を光ケーブル部分2と支持線3部分とに引き裂き、さらに光ケーブル部分2から露出させた光ファイバ心線2aどうしはメカニカルスプライス(光ファイバ接続器)4で接続し、両側の支持線3の端部は、樹脂被覆を剥いた上で連結スリーブ6に通して重ね圧着工具でカシメて連結固定している。そして、図8(ロ)のように、予め光ドロップケーブル1に通していた保護スリーブ7をスライドさせて、接続部近傍全体を覆い、かつ、同じく予め光ドロップケーブル1に通していた端面キャップ8を保護スリーブ7の両端に被せる。また、図示は省略するが、保護スリーブ7と端面キャップ8との境目、および端面キャップ8と光ドロップケーブル1の境目にはテーピング処理を施す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の光成端箱による接続方法は、光成端箱を取り付けるために家屋の壁に穴をあけることになるので、ユーザが壁に穴をあけることを望まない場合には、採用できない。
一方、メカニカルスプライスを用いた方式は、家屋の壁に穴をあけることを要しない点では好ましいが、メカニカルスプライスによる接続は基本的には永久接続でありメンテナンス性が良好でないので、着脱可能な光コネクタによる小型クロージャ方式が望まれる。
【0004】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、家屋の壁に穴をあける必要のないクロージャ方式で、かつ着脱可能な光コネクタによる光ドロップケーブルの直線接続部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する請求項1の発明構造は、光ケーブル部と支持線とを一体化した光ドロップケーブルの直線接続部構造であって、
接続すべき両側の光ケーブルの端部にそれぞれ取り付けた一対の光コネクタを互いに接続し、前記互いに接続された状態の光コネクタを細長いベース部材に固定し、このベース部材の両側に設けたケーブル把持部にて両側の光ケーブルを把持し、両側の支持線どうしを支持線固定手段により互いに固定し、前記光コネクタ、ケーブル把持部及び支持線固定部などの部分を円筒状の保護スリーブで覆い、前記保護スリーブの両端部にそれぞれ、保護スリーブの開口を閉塞するための端面キャップを被せたことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1において、互いに接続された状態の両側の光コネクタ部分と、互いに固定された両側の支持線部分とが、前記細長いベース部材に添って設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1において、保護スリーブが、一対の半割り部材からなり、両半割り部材を合体した時に全体として円筒状を呈することを特徴とする。
【0008】
請求項4は、請求項1又は2において、端面キャップが、薄肉ヒンジ部で連接された一対の半割り片からなり、両半割り片を閉ざした時に互いの縁部が係合する構造であることを特徴とする。
【0009】
請求項5は、請求項1〜4において、ベース部材の両端位置に、光ドロップケーブルを挿通させる筒状をなし外面に周溝を持つ周溝部材を配置し、端末キャップの内面に、前記周溝部材の周溝に嵌合する突条を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項6は、請求項5における周溝部材がベース部材と一体であることを特徴とする。
【0011】
請求項7は、請求項1〜6において、保護スリーブの両端近傍に周溝を形成し、端末キャップの内面に、前記保護スリーブの外周の周溝に嵌合する突条を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ドロップケーブルの直線接続部構造によれば、成端箱と異なり、壁に取り付けることなく家屋の手前に吊下げて設置することができる。したがって、壁に穴をあけることなく、光ケーブルを家屋内に引き込むことができる。
また、本発明の直線接続部構造の組み立ては、メカニカルスプライスによる従来の直線接続部構造と比べて、容易である。
また、本発明の直線接続部構造は小型かつ軽量であり、光ドロップケーブルの途中に設置するのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施した光ドロップケーブルの直線接続部構造について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
この実施例で対象とする光ドロップケーブルの一例を図7に示す。この光ドロップケーブル11は、単心の光ファイバ心線12の両側に抗張力材13を配置しポリエチレンやポリ塩化ビニル等の樹脂被覆(シース)14aを施した光ケーブル15の部分と、鋼線16aに樹脂被覆14bを施した支持線16の部分とをくびれ部14cを介して一体接続した構成である。また、光ケーブル15部分の樹脂被覆14aにはノッチ14dを入れており、このノッチ14dから裂くことで、容易に光ファイバ心線12を取り出すことができる。
【0015】
図1〜図6に本発明の一実施例の光ドロップケーブルの直線接続部構造21を得る手順を示す。
先ず、図1(イ)に示すように、両側の光ドロップケーブル11の先端から適宜長さのところまでくびれ部14cを引き裂くことで、光ケーブル15と支持線16とを互いに分離させる。そして、予め円筒状の保護スリーブ22を一方の光ドロップケーブル11に挿通させておく。また、両側の光ドロップケーブル11に、図1(ロ)にも示すように、端面キャップ係合用の周溝23aを形成したゴム等による筒状の周溝部材23を挿通させておく。
【0016】
次いで、図2に示すように、両側の各光ケーブル15に、この実施例では現場付けコネクタである外被把持SCコネクタ25を取り付け、両外被把持SCコネクタ25をそれぞれアダプタ26内に嵌入し互いに突合せて光接続する。
外被把持SCコネクタ25は、外被把持部27を一体に備えて、光ケーブル15の外被部分を把持できるようにしたものである。外被把持部27の詳細構造は省略するが、一般的な構造のものを採用することができ、例えば、側縁のヒンジ部で開閉可能に結合された基台と蓋部とで外被部分を把持しロックする構造等を採用することができる。
また、両側の支持線16を連結スリーブ(支持線固定手段)28に通しカシメをして、両支持線16を互いに固定的に連結する。
【0017】
図3(イ)は図2に続く段階を示す。31はベース部材である。このベース部材31は、図3(ロ)に示すようにスリット32aを形成したケーブル把持部32を両端に持ち、光ケーブル15をスリット32aに嵌合させて、光ケーブル15を外被部分にて把持する。
次いで、両側の外被把持SCコネクタ25をテープ巻きなどの固定手段によりベース部材31に固定する。33は固定手段であるテープ巻き部分を示す。なお、アダプタ26の部分も含めてテープ巻きする固定方法でもよい。また、他の固定方法を採用することもできる。
【0018】
次いで、図4(イ)に示すように、先に一方の光ドロップケーブル11に通していた円筒状の保護スリーブ22を、外被把持SCコネクタ25、アダプタ26、ベース部材31等の部分を覆うように引き寄せて、それらを覆う。この保護スリーブ22は、図4(ロ)にも示すように、その両端近くに、端面キャップ係合用の周溝22aを形成している。
【0019】
次いで、図5に示すように、端面キャップ34を保護スリーブ22の両端に添える。端面キャップ34は、薄肉ヒンジ部35で連接された一対の半割り片36、37からなり、各半割り片36、37の内面に、周溝部材23の周溝23aに嵌合する周方向の突条36a、37a及び、保護スリーブ22の外周の周溝22aに嵌合する周方向の突条36b、37bを形成している。また、他方の半割り片37の側縁部に係合爪37c、一方の半割り片36の側縁部に図示されぬ係合穴を有し、両半割り片36、37を閉ざした時に係合爪37cが係合穴に係合して、互い係合するようになっている。
図5は各端面キャップ34における一方の半割り片36を、突条36aが周溝部材23の周溝23aに嵌合し突条36bが保護スリーブ22側の周溝22aに嵌合するようにして、保護スリーブ22の両端部分に添わせた状態であり、次いで、他方の半割り片37を薄肉ヒンジ部35を中心にして回して一方の半割り片36の上に被せ、係合爪37cと係合穴とを係合させて、両半割り片36、37を閉じ合わせると、保護スリーブ22をその両側の周溝部材23とが端面キャップ34を介して結合する。
この場合、両側の周溝部材23が、光ケーブル15を把持しているベース部材31の両端に当たってケーブル長さ方向の移動を拘束されるので、保護スリーブ22及び周溝部材23がケーブル長さ方向に移動することはない。
また、端面キャップ34側の突条36a、37aが周溝部材23の周溝23aに嵌合する構造は、端面キャップ34の開口の水密化する作用をしている。さらに、他の水密化手段を採用することもできる。
【実施例2】
【0020】
なお、この実施例では周溝部材23をベース部材31と別部材としているが、周溝部材23をベース部材31と一体に形成してもよい。その場合には、図1の段階で周溝部材付きベース部材がセットされることになる。
【実施例3】
【0021】
上記の実施例では保護スリーブ22が円筒体であるが、一対の半割り部材からなり、両半割り部材を合体した時に全体として円筒状を呈する構造としてもよい。この場合は、保護スリーブを予め光ドロップケーブルに通しておく必要はない。
また、実施例の端面キャップ34は薄肉ヒンジ部を介して連接された一対の半割り片からなる開閉可能な構造であるが、始めから筒状体のものとすることもできる。この場合は、光ドロップケーブルに予め通しておく。
また、実施例の光コネクタは外被把持SCコネクタであるが、外被把持型に限定されず、また、コネクタ本体部分の形式も特に限定されず、適宜のタイプのものを使用できる。
また、実施例では単心の光ドロップケーブルを対象としているが、例えば2心の光ドロップケーブルなど、小心数の光ドロップケーブルを対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(イ)本発明の一実施例の光ドロップケーブルの直線接続部構造を得る際の作業工程の初期段階を示す図、(ロ)は(イ)のA−A拡大断面図である。
【図2】図1に続く段階を示す図である。
【図3】(イ)は図2に続く段階を示す図、(ロ)は(イ)の要部のB−B拡大断面図である。
【図4】(イ)は図3に続く段階を示す図、(ロ)は(イ)の保護スリーブのC−C拡大断面図である。
【図5】図4に続く段階を示す図である。
【図6】図5に続く段階であり、接続完了状態の外観を示す図である。
【図7】実施例で対象とする光ドロップケーブルの一例を示す断面図である。
【図8】従来の光ドロップケーブルの直線接続部構造の一例を示すもので、(イ)は内部構造を説明する斜視図、(ロ)は保護スリーブを被せる状況を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 光ドロップケーブル
12 光ファイバ心線
13 抗張力材
14a、14b 樹脂被覆
14c くびれ部
15 光ケーブル
16 支持線
22 保護スリーブ
22a 周溝
23 周溝部材
23a 周溝
25 外被把持SCコネクタ(光コネクタ)
26 アダプタ
27 外被把持部
28 連結スリーブ(支持線固定手段)
31 ベース部材
32 ケーブル把持部
32a スリット
33 テープ巻き(固定手段)
34 端末キャップ
35 薄肉ヒンジ部
36、37 半割り片
36a、37a 突条
36b、37b 突条
37c 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブル部と支持線とを一体化した光ドロップケーブルの直線接続部構造であって、
接続すべき両側の光ケーブルの端部にそれぞれ取り付けた一対の光コネクタを互いに接続し、前記互いに接続された状態の光コネクタを細長いベース部材に固定し、このベース部材の両側に設けたケーブル把持部にて両側の光ケーブルを把持し、両側の支持線どうしを支持線固定手段により互いに固定し、前記光コネクタ、ケーブル把持部及び支持線固定部などの部分を円筒状の保護スリーブで覆い、前記保護スリーブの両端部にそれぞれ、保護スリーブの開口を閉塞するための端面キャップを被せたことを特徴とする光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項2】
互いに接続された状態の両側の光コネクタ部分と、互いに固定された両側の支持線部分とが、前記細長いベース部材に添って設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項3】
前記保護スリーブは、一対の半割り部材からなり、両半割り部材を合体した時に全体として円筒状を呈することを特徴とする請求項1記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項4】
前記端面キャップは、薄肉ヒンジ部で連接された一対の半割り片からなり、両半割り片を閉ざした時に互いの縁部が係合する構造であることを特徴とする請求項1記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項5】
前記ベース部材の両端位置に、光ドロップケーブルを挿通させる筒状をなし外面に周溝を持つ周溝部材を配置し、端末キャップの内面に、前記周溝部材の周溝に嵌合する突条を形成したことを特徴とする請求項1〜4記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項6】
前記周溝部材がベース部材と一体であることを特徴とする請求項5記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。
【請求項7】
前記保護スリーブの両端近傍に周溝を形成し、端末キャップの内面に、前記保護スリーブの外周の周溝に嵌合する突条を形成したことを特徴とする請求項1〜6記載の光ドロップケーブルの直線接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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