説明

光ドロップケーブル

【課題】セミが産卵できないあるいは産卵しにくい外被構成とし、セミの産卵管で損傷を受けない信頼性の高い光ファイバケーブルであって、ニッパ使用によるノッチ間切り裂き作業を容易にするばかりでなく、ノッチ間切り裂きを確実に行い得るようにした構造を備えた光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】外被は高密度熱可塑性樹脂で形成され、ノッチはノッチの先端頂点が矩形断面の抗張力体を通る垂直線上においてファイバ心線の中心からそれぞれずれて形成され、一対のノッチの先端頂点から垂直線上にそれぞれ足を下ろした場合に、先端頂点から足までの距離をhとし、一つの足とファイバ心線の中心の間隔をlとしたときに、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルを加入者宅まで引き込むために架設される光ドロップケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ドロップケーブルは、1本もしくは近接配置の2本の光ファイバ心線と、該光ファイバ心線の両側に間隔を置いて配設される一対の抗張力体と、光ファイバ心線および一対の抗張力体を被覆し、断面がほぼ矩形をなし、両側の外被面に一対のV字状のノッチが形成された外被(外皮)を備えて形成される。
【0003】
ノッチにセミ(蝉)が産卵管を突き刺して、内部の光ファイバ心線を損傷する事故が発生することがある。この事故を防止するためにノッチの先端頂点から光ファイバ心線までの最短距離を0.2mm以上とする構成が採用される。光ファイバ心線は通常、紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)で被覆され、被覆外径は0.25mmのものが使用される。
【0004】
特許文献1には、光ファイバケーブルの中心にある一本の光ファイバ心線とその両脇に平行に配置した二本のテンションメンバを同一平面に含むように一括被覆してなる断面ほぼ矩形の外皮の、前記平面に平行な表面の前記光ファイバ心線の上部および下部に、前記光ファイバ心線に平行に長手方向に延びるノッチを設けた光ファイバケーブルであって、前記ノッチの頂点が前記光ファイバ心線の位置からずれており、前記頂点直下の前記外皮内に前記光ファイバ心線が無く、前記光ファイバ心線の中心と前記テンションメンバ中心を結ぶ直線に前記ノッチの頂点から下ろした垂線の足と、前記光ファイバ心線の中心との間の距離aが、0.325mm≦a≦0.75mmである光ファイバケーブルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3662824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許公報に記載された技術は、外皮をずれて形成されたノッチから手で引き裂いて光ファイバ心線を取り出すもので、特殊な工具は一切必要とせずに光ファイバ光線の取り出しを可能にするものである。
【0007】
光ケーブルの強度を保持し、セミが産卵しずらくするために外被に高密度熱可塑性樹脂が採用される。高密度熱可塑性樹脂製の外被の場合、切り裂き作業を容易にするためにニッパが使用される。ニッパを使用する場合、作業者はずれて配置されたノッチ間を切り裂くつもりでもどうしてもノッチの先端頂点から水平横断方向を切り裂きがちとなる。このようにして切り裂くと切り裂き面と光ファイバ光線との間に距離が残り、光ファイバ心線が取り出しづらくなって作業に支障を来たすことになる。
【0008】
また、光ドロップケーブルの設計に当っては、セミの産卵管によって損傷を受けない信頼性の高いものにする必要がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてセミが産卵できないあるいは産卵しにくい外被構成とし、セミの産卵管で損傷を受けない信頼性の高い光ファイバケーブルであって、ニッパ使用によるノッチ間切り裂き作業を容易にするばかりでなく、ノッチ間切り裂きを確実に行い得るようにした構造を備えた光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1本もしくは近接配置の2本の光ファイバ心線と、該光ファイバ心線の両側に間隔を置いて配設される一対の抗張力体と、前記光ファイバ心線および一対の抗張力体を被覆し、断面がほぼ矩形をなし、両側の外被面に一対のノッチが形成された外被を備えた光ドロップケーブルにおいて、
前記外被は高密度熱可塑性樹脂で形成され、前記ノッチはノッチの先端頂点が矩形断面の抗張力体を通る垂直線上において前記ファイバ心線の中心からそれぞれずれて形成され、一対のノッチの先端頂点から前記垂直線上にそれぞれ足を下ろした場合に、先端頂点から足までの距離をhとし、一つの足と前記ファイバ心線の中心の間隔をl(エル)としたときに、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
であること
を特徴とする光ドロップケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述のように硬度の高い高密度可塑性樹脂で外被を形成しているのでセミ産卵に対する防御を確実にして、一対のノッチを中心からずれて形成し、各ノッチの先端頂点から光ファイバ心線までの最短距離を0.2mm確保して光ドロップケーブルを形成する場合に、この光ドロップケーブルは
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされているので、ずれた配置のノッチの先端頂点間距離を近接したものとすることが出来て、ニッパによる切り裂き作業をノッチ間で確実に行って、作業が行い易い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の構成を示す縦断面図。
【図2】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【図3】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【図5】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【図6】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例の光ファイバケーブル1の縦断面を示す図である。
【0015】
この例の場合、光ドロップケーブル1は、従来と同様に近接配置の2本の光ファイバ心線2,2Aと、光ファイバ心線2の両側に間隔を置いて配設される一対の抗張力体(テンションメンバ)3,3Aと、光ファイバ心線2,2Aおよび一対の抗張力体3,3Aを被覆し、断面がほぼ矩形をなし、両側の外被面に一対のV字状のノッチ4,4Aが形成された外被5を備えて形成される。
【0016】
外被5の上部には首部6を介して上部外被7が設けられ、上部外被7の内部には鋼線である支持線8が設けられる。
【0017】
このような構成になる光ドロップケーブル1の外被5は高密度の熱可塑性樹脂が用いられて高温加熱被覆成形によって構成される。高密度熱可塑性樹脂としては高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が用いられる。
【0018】
図1に示す例では、V字状のノッチの切り込み深さは0.65mmとされ、二つの光ファイバ心線の中心(光ファイバ心線中心)と、二つの抗張力体3,3Aの中心を通る図面で垂直方向の直線Yにノッチ4,4Aの先端頂点11から下ろした足12,12A間のそれぞれの距離が0.3mmとされている。この例のノッチ4,4Aの先端頂点11と11Aとを結ぶ直線Xの水平線に対してなす角度は49.4°である。この例において、セミの産卵管による損傷を防止するために、ノッチ4,4Aの先端頂点11,11Aから光ファイバ心線2,2Aまでの最短距離は0.2mm確保(0.2mm以上)とされ、光ファイバ心線2,2AはUV樹脂で被覆され、被覆外径は0.25mmとされる。
【0019】
以上のような構成になる光ドロップケーブル1において、当該ドロップケーブル1は、外被5はデュロメータ硬度55〜70の高密度熱可塑性樹脂で形成され、ノッチ4,4Aはノッチの先端頂点11,11Aが矩形断面の抗張力体3,3Aを通る垂直線Y上においてファイバ心線2,2Aの中心からそれぞれずれて形成され、一対のノッチ4,4Aの先端頂点11,11Aから垂直線Y上にそれぞれ足12,12Aを下ろした場合に、先端頂点11,11Aから足12,12Aまでの距離をhとし、一つの足とファイバ心線間2,2Aの中心の間隔を1としたときに、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
で構成される。
【0020】
このようにすることによって、デュロメータ硬度55〜70の高密度熱可塑性樹脂を使用するためにセミの産卵に対する防御を確実に行い得、ずれた配置のノッチ4,4Aの先端頂点11,11A間距離を近接したものとすることが出来て、ニッパによる切り裂き作業を確実に行って、作業を行い易くすることができる。
【実施例2】
【0021】
図2は、本発明の第2の実施例を示す。図1に示す例と同一の構成であり、ただこの例の場合、lの距離が0.25mmとされている。直線Xの角度は57.99°となる。この場合にあっても、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされ、図1に示す例と同等の効果が得られる。
【実施例3】
【0022】
図3は、本発明の第3の実施例を示す。図1に示す例と同一の構成であり、ただ光ファイバ心線2は1つ配設される。この場合にあっても、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされ、図1に示す例と同等の効果が得られる。
【実施例4】
【0023】
図4は、本発明の第4の実施例を示す。図2に示す例と同一の構成であり、ただこの例の場合、lの距離が0.25mmとされている。直線Xの角度は57.99°となる。この場合にあっても、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされ、図2に示す例と同等の効果が得られる。
【実施例5】
【0024】
図5は、本発明の第5の実施例を示す。図1に示す例と実質同一の構成であり、ただこの例の場合、上部被覆7が形成されていない。この場合にあっても、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされ、図1に示す例と同等の効果が得られる。
【実施例6】
【0025】
図6は、本発明の第6の実施例を示す。図3に示す例と実質同一の構成であり、ただこの例の場合、上部被覆7が形成されていない。この場合にあっても、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
とされ、図3に示す例と同等の効果が得られる。
【0026】
以上のように、これらの実施例によれば、光ケーブルの強度を保護し、セミが産卵しずらくするために外被に高密度熱可塑性樹脂が採用される。高密度可塑性樹脂製の外被の切り裂き作業を容易にするためにニッパを使用するに便であり、ニッパを使用して作業者がずれて配置されたノッチ間を切り裂くつもりでもどうしてもノッチの先端頂点から水平横断方向を切り裂きがちとなるが、前述の範囲であれば切り裂きを確実に行って、このようにして切り裂くと切り裂き面と光ファイバ光線との間に距離が残らず光ファイバ心線が取り出しづらくなって作業に支障を来たすことがない。
【0027】
また、光ドロップケーブルの設計に当っては、セミの産卵管によって損傷を受けない信頼性の高いものにすることができる。
【0028】
1…光ファイバケーブル、2,2A…光ファイバケーブル心線、3,3A…抗張力体(テンションメンバ)、4,4A…ノッチ、5…外被(外皮)、6…首部、7…上部外被、8…支持線、11,11A…ノッチの先端頂点、12,12A…足。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本もしくは近接配置の2本の光ファイバ心線と、該光ファイバ心線の両側に間隔を置いて配設される一対の抗張力体と、前記光ファイバ心線および一対の抗張力体を被覆し、断面がほぼ矩形をなし、両側の外被面に一対のノッチが形成された外被を備えた光ドロップケーブルにおいて、
前記外被はデュロメータ硬度55〜70の高密度熱可塑性樹脂で形成され、前記ノッチはノッチの先端頂点が矩形断面の抗張力体を通る垂直線上において前記ファイバ心線の中心からそれぞれずれて形成され、一対のノッチの先端頂点から前記垂直線上にそれぞれ足を下ろした場合に、先端頂点から足までの距離をhとし、一つの足と前記ファイバ心線の中心の間隔をlとしたときに、
0.325<h<0.35 (mm)
0.2<l<0.32 (mm)
であること
を特徴とする光ドロップケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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