説明

光ナノインプリント用硬化性組成物

【課題】光ナノインプリント法で硬化物を作製するのに適した光ナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート、(B)シランカップリング剤、(C)シリコーン化合物、(D)光ラジカル重合開始剤、および(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物を含み、前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、ヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、イソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、光ナノインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種保護膜として有用な光ナノインプリント用硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ナノインプリント法によってパターンを形成する場合、アクリレートモノマーと光重合開始剤を含む組成物の光硬化が利用できることが報告されている(非特許文献1)。光ナノインプリント法の産業への利用方法として、エッチングレジストを指向した光ナノインプリント用硬化性組成物が報告されている(特許文献1、2)。これらの報告ではパターン形成に必要な粘度、離型性に関する記述はあるものの、硬化膜の性能としてはエッチング性能が記載されているのみで、保護膜用途への展開および保護膜に必要な硬度の改良に関してはなんら記述が無い。
【0003】
また、特定のウレタンオリゴマーを用いる光学部材用光ナノインプリント樹脂組成物が報告されている(特許文献3)。該文献では硬化物の脆さを改良する手段として特定のウレタンオリゴマーを用いることが提案されている。脆さを改良する手法としてポリエチレングリコール部位の柔軟さを利用したウレタンオリゴマーを開発しているが、本手法では硬化物の硬度向上とは逆向する施策であり、硬化物の硬度を向上させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−186570号公報
【特許文献2】特開2008−19292号公報
【特許文献3】国際公開2007−124546A1号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Vac.Sci.Technol.B 16(6), Nov/Dec 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光ナノインプリント法で硬化物を作製するのに適した光ナノインプリント用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況のもと、本願発明者が、光ナノインプリント法により作製する保護膜を指向し鋭意検討した結果、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレートを必須成分とし、シランカップリング剤、シリコーン化合物(離型剤)、重合開始剤、特定のウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、インプリント法によるパターン形成に必要な諸性能(パターン転写精度、剥離性)および保護膜としての必要な諸性能(硬度(表面硬度、弾性回復率))の両方を備えた硬化物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下の手段により達成された。
【0008】
(1)(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート、
(B)シランカップリング剤、
(C)シリコーン化合物、
(D)光ラジカル重合開始剤、および
(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物を含み、
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、下記群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、下記群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、光ナノインプリント用硬化性組成物。
群(F)
下記一般式(1)で表される化合物、1,3−プロパンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,9−ノナンジオールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート
【化1】

一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、アリルオキシメチル基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を表す。
群(G)
キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート
(2)前記光ナノインプリント用硬化性組成物が実質的に溶剤を含まず、かつ、該光ナノインプリント用組成物の粘度が30mPa・s以下である、(1)に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(3)前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子、メチル基またはアリルオキシメチル基である化合物、または1,3−プロパンジオールモノアクリレートのヒドロキシル基に、前記群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(4)前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、前記群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(5)前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子、メチル基またはアリルオキシメチル基である化合物、または1,3−プロパンジオールモノアクリレートのヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(6)前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子である化合物のヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(7)前記光ナノインプリント用硬化性組成物が実質的に溶剤を含まず、かつ、該光ナノインプリント用組成物の粘度が20mPa・s以下である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(8)(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレートの合計含有量が55質量%以上である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(9)さらに、ヒンダードフェノール類および/またはヒンダードアミン類を含有する、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(10)光照射および加熱を行うことにより硬化することを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させた硬化物。
(12)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物を、光照射および加熱を行うことにより硬化させることを含む、硬化物の製造方法。
(13)(11)に記載の硬化物を用いた液晶表示装置用部材。
(14)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の組成物を、光照射および加熱を行うことにより硬化させることを含む、液晶表示装置用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、インプリント法によるパターン形成に必要な諸性能(パターン転写精度、剥離性)および保護膜としての必要な諸性能(硬度(表面硬度、弾性回復率))の両方を備えた硬化物を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、単量体とモノマーは同一である。本発明における単量体は、オリゴマー、ポリマーと区別し、質量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、官能基は重合に関与する基をいう。
なお、本発明で言うナノインプリントとは、およそ数μmから数十nmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダのものに限られるものではないことは言うまでもない。
【0012】
本発明の光ナノインプリント用硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート、(B)シランカップリング剤、(C)シリコーン化合物、(D)光ラジカル重合開始剤、および(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物を含み、前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、下記群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、下記群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする。
群(F)
下記一般式(1)で表される化合物、1,3−プロパンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,9−ノナンジオールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート
【化2】


一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、アリルオキシメチル基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を表す。
群(G)
キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート
最初にこれらの成分の詳細について説明する。
【0013】
(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート
本発明の組成物は、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよびネオペンチルグリコールジアクリレートの少なくとも一方を必須成分とし、少なくとも1,4−ブタンジオールジアクリレートを含むことが好ましい。これらの成分を含むことにより、パターン転写精度向上に必要な、組成物としての粘度とモールド離型時の剥離性および組成物硬化後の力学特性(弾性回復率)の付与が容易になる。
本発明の組成物は、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよびネオペンチルグリコールジアクリレートを、合計で、55質量%以上含むことが好ましく、60〜90質量%含むことがより好ましい。
【0014】
(B)シランカップリング剤
本発明で用いるシランカップリング剤は、カップリング反応を引き起こす基と加水分解性基を有する化合物である限り、特に定めるものではなく、公知のシランカップリング剤を広く採用できる。シランカップリング剤の分子量としては、100〜600が好ましく、200〜400がより好ましい。
シランカップリング剤が有するカップリング反応を引き起こす基としては、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、アリル基、オキセタニル基が好ましい例として挙げられ、アリル基、ビニル期、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基がさらに好ましい。
【0015】
本発明で用いるシランカップリング剤は、光重合性基を有している方が好ましい。光重合性基を有することにより、光硬化時に良好な硬化膜特性が得られる。ここでいう、光重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、エポキシ基、アリル基、オキセタニル基が挙げられる。
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネ―トプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明におけるシランカップリング剤は、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
本発明の組成物は、シランカップリング剤を、1〜40質量%の範囲で含むことが好ましく、5〜30質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0016】
(C)シリコーン化合物
本発明で用いるシリコーン化合物は、ジメチルシロキサン構造を繰り返し単位として有するシリコーン化合物である。
ジメチルシロキサン構造の繰り返し単位の単位数は特に制限はないが、繰り返し単位数(分子量)が大きくなると表面偏在性が向上し、繰り返し単位数が小さくなると、組成物との相溶性が向上する。一例を挙げると繰り返し単位数は、5〜100とすることができるが、単位数は、通常、シリコーン化合物の分子量、置換基の極性および組成物の極性を勘案して決定される。シリコーン化合物の分子量としては、600〜30000とすることができる。また、置換基としては、炭化水素基、ポリエチレンオキシド基が挙げられる。
特に、本発明では、シリコーン化合物は、光ナノインプリント用組成物の添加剤として用いることから、本発明の組成物に相溶していることを前提に、少ない添加量で表面に偏在すること(低い臨界ミセル濃度および表面張力低下能)と組成物の粘度上昇を抑制すること(小さい分子量)で選定することが望ましい。この様なシリコーン化合物としては、信越化学工業社製、変性シリコーンを用いることができる。特に、ポリエーテル変性、アラルキル変性の変性シリコーンが好ましい。
本発明の組成物は、シリコーン化合物を、0.01〜5質量%の範囲で含むことが好ましく、0.1〜3質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0017】
(D)光ラジカル重合開始剤
本発明の組成物には、光ラジカル重合開始剤が含まれる。本発明の組成物は、光ラジカル重合開始剤を含むことで、光照射後のパターン精度をより良好なものとすることができる。
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤の含有量としては、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜12質量%であり、特に好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記光重合開始剤の割合が0.1質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光ラジカル重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
さらに本発明の光ナノインプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0018】
(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物
本発明で用いる(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物は、群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物である。
群(F)
下記一般式(1)で表される化合物、1,3−プロパンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,9−ノナンジオールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート
【化3】


一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、アリルオキシメチル基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を表す。
群(G)
キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート
【0019】
群(F)は、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子、メチル基またはアリルオキシメチル基である化合物、または1,3−プロパンジオールモノアクリレートが好ましく、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子である化合物がより好ましい。
【0020】
群(G)は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。
【0021】
本発明で用いるアクリロイル基を有するウレタン化合物の分子量は1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましい。分子量が1500以下のものを用いることにより、光ナノインプリント用硬化性組成物に必要な無溶剤状態で低粘度化することが容易になる。
前記ウレタン化合物中の重合性基の数としては、硬化膜の硬度向上の観点から2個以上が好ましく、さらに、光硬化性を付与する観点で、重合性基の少なくとも1つはアクリロイル基であることがより好ましい。
本発明の組成物は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物を、1〜20質量%の範囲で含むことが好ましく、3〜10質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0022】
以下に本発明で用いることができる群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物と、群(G)から選ばれるイソシアネート化合物の組み合わせを例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【表1】

【0023】
(H)酸化防止剤
本発明の組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよく、ヒンダードフェノール類および/またはヒンダードアミン類を含んでいることがより好ましい。酸化防止剤を添加することにより、組成物の硬化膜の酸化劣化(酸化着色、熱酸化分解)をより効果的に防止することが可能になる。この様な酸化防止剤の内、ヒンダードフェノール類としては、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、Irganox1035FF(以上、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)が挙げられる。ヒンダードアミン類としては、TINUVIN144、700DF(以上、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、アデカスタブLAシリーズ((株)ADEKA製)が挙げられる。
本発明の組成物は、酸化防止剤を、0.1〜5質量%の範囲で含むことが好ましく、0.5〜3質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、前記成分の他に必要に応じて、他の重合性単量体、界面活性剤、離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加することができる。
【0025】
(X)他の重合性単量体
本発明の組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の重合性単量体を含んでいてもよく、(メタ)アクリレートモノマーを含んでいることが好ましい。本発明の組成物は、他の重合性単量体を、0〜50質量%の範囲で含むことが好ましく、5〜30質量%の範囲で含むことがより好ましい。
他の重合性単量体の具体例としては、例えば、特開平2008−105414号公報に記載のものを好ましく採用することができる。
特に、アクリロイル基を複数有する化合物、加熱時に反応し架橋構造を形成できる官能基を有する化合物を採用すると、弾性回復率が向上する傾向にあり好ましい。
【0026】
(Y)界面活性剤
本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物の粘度
本発明のナノインプリント用硬化性組成物の粘度について説明する。本発明の組成物の粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、25℃における粘度が、30mPa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは20mPa・s以下であり、特に好ましくは7〜12mPa・sである。本発明の組成物の粘度を30mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。また、本発明の組成物の粘度が20mPa・s以下であると、微細なパターンの形成に粘度が影響を与えにくい。さらに、本発明の組成物の粘度が10mPa・s以下であると、モールドを押し圧を〜2気圧程度まで下げてもパター形成が容易になる。
【0028】
(表面張力)
本発明の組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させることが可能になる。
【0029】
(水分量)
本発明の組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0030】
(調製)
本発明の組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。本発明の組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0031】
[硬化膜]
次に、本発明の組成物を用いた硬化膜(特に、微細凹凸パターン)について説明する。本発明では、本発明の組成物を塗布して硬化して硬化膜を形成することができる。
【0032】
また、基板または、支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0033】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の硬化物は、半導体集積回路、記録材料、あるいは液晶表示装置用部材として好ましく適用することができ、その中でも液晶表示装置部材であることがより好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することが特に好ましい。
【0034】
[硬化膜の製造方法]
以下において、本発明の組成物を用いた硬化膜の製造方法について述べる。
本発明の組成物は、光または、光及び熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板または、支持体上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を適用(通常は塗布)し、溶剤を乾燥させて本発明の光硬化性組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。通常、光照射および加熱は複数回に渡って行われる。本発明の硬化膜の製造方法によるナノインプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0035】
本発明の硬化物は、一般によく知られた適用方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、本発明の組成物を塗布することにより形成することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0036】
本発明の組成物を塗布するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0037】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0038】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm〜50mW/cmの範囲にすることが望ましい。1mW/cm以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm〜1000mJ/cmの範囲にすることが望ましい。5mJ/cm未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cmを超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
更に、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0039】
本発明の組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0040】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上に組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、組成物を硬化させる。また、光透過性基板上に組成物を塗布し、モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0041】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0042】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0043】
上記本発明で用いられるモールドは、本発明の組成物とモールドとの剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0044】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の本発明の組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0045】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲で行われる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0047】
[光ナノインプリント用硬化性組成物の評価]
後述する表に記載のとおり各成分を配合して、光ナノインプリント用組成物を調整した。各実施例および比較例の組成物をについて、粘度、パターン精度、剥離性、弾性回復率、硬さ、透過率、について下記評価方法に従って測定・評価を行った。
【0048】
(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート
1,4−ブタンジオールジアクリレート:ビスコート#195(大阪有機化学工業製)
ネオペンチルグリコールジアクリレート:NPGDA(日本化薬製)
【0049】
(B)シランカップリング剤
B−1:KBM−5103(信越化学工業製)
B−2:KBE−503(信越化学工業製)
【0050】
(C)シリコーン化合物
C−1:KF−352A(信越化学工業製、変性シリコーン)
C−2:KF−410(信越化学工業製、変性シリコーン)
【0051】
(D)光ラジカル重合開始剤
D−1:TPO−L(アシルホスフィンオキシド:日本シイベル製)
D−2:CGI−242(オキシムエステル:チバスペシャルティーケミカルズ製)
【0052】
(E)アクリロイル基を有するウレタン化合物の合成
ヒドロキシル基を有するアクリレート化合物とイソシアネート化合物を官能基モル等量が1対1となるように混合した。混合溶液にジブチル錫オキシド(1mol%)を加え、60℃で加熱攪拌した。ヒドロキシル基を含有するアクリレート化合物の消失を薄層クロマトグラフィーにより確認し、反応の終点とした。得られた反応物を、そのままアクリロイル基を有するウレタン化合物として用いた。尚、下記表に記載の化合物は、表1に記載の化合物に相当する。
また、比較例において用いた化合物U−1は、国際公開第2007/124546A1パンフレットの段落番号0043に記載のウレタンオリゴマー1を追試合成し得られた化合物である。重量平均分子量は6200であった。
【0053】
(H)酸化防止剤
H−1:スミライザーGA−80(ヒンダードフェノール:住友化学製)
H−2:IRGANOX1035FF(ヒンダードフェノール:チバスペシャルティケミカルズ製)
H−3:TINUVIN144(ヒンダードアミン:チバスペシャルティケミカルズ製)
【0054】
その他の成分
(X)他の重合性単量体
X−1:ビスコート#160(大阪有機化学工業製)
X−2:アロニックスM309(東亞合成製)
X−3:FA−512AS(日立化成製)
X−4:ビスコートOXE−10(大阪有機化学工業製)
X−5:4EG−A(テトラエチレングリコールジアクリレート、共栄社製)
【0055】
(Y)界面活性剤
W−1:メガファックF780F(大日本インキ製)
【0056】
<粘度測定>
粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpmで行い、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpmで行い、10mPa・s以上は30mPa・s未満は20rpmで行い、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpmで行い、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpmで行い、120mPa・s以上は1rpmもしくは0.5rpmで行った。
【0057】
<パターン転写精度の観察>
各実施例および比較例の組成物を、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜に減圧チャンバー内でモールドを圧着した後、窒素ガスにより大気圧に戻した。モールドが付着した基板を露光ボックスに移し、窒素雰囲気下でORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm)を光源とする露光機により、モールド側から190mJ/cmの条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。尚、モールドは10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、SILPOT184を80℃60分で硬化させたもの)からなる。
転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下の指針に従って評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である。
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%未満の範囲)がある。
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある。
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとが明らかに異なる、または、パターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる。
【0058】
<剥離性の評価>
パターン転写精度評価と同操作を同じモールドを用いて10回繰り返し、モールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、剥離性を以下のように評価した。
A:モールドに硬化性組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな硬化性組成物の付着が認められた。
C:モールドの硬化性組成物の付着が明らかに認められた。
【0059】
<表面硬度>
各組成物を膜厚が3〜10μmの範囲となるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cmで露光し、硬化膜を作成した。その後オーブンで230℃、30分間加熱した。硬化膜の表面硬度測定を、試験負荷力を500gとした以外は、JIS−K−5400の方法に従い、評価した。
【0060】
<弾性回復率の評価>
各組成物を膜厚が3〜10μmの範囲となるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cmで露光し、硬化膜を作成した。その後オーブンで230℃、30分間加熱した。硬化膜を、(株)島津製作所製の微小硬度計試験機によりダイナミック硬さを測定した。測定条件は三角錐圧子、負荷3mN、保持時間1秒とした。
前記硬さの評価により得られたデータから弾性回復率を下記の様に定義し評価した。
弾性回復率={(最大負荷時の変位[μm])−(抜負荷時の戻り変位[μm])}÷(最大負荷時の変位[μm])×100
A:55%以上
B:52%以上、55%未満
C:50%以上、52%未満
D:50%未満
【0061】
<光透過率の評価>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cmで露光し、硬化膜を作成した。その後オーブンで230℃、150分間加熱し。硬化膜を(株)島津製作所製のUV−2400PCにて400nmにおける光透過率を測定した。
【0062】
実施例および比較例の組成物の組成および各種評価を下記表に示す。ここで、各成分の単位は、質量%である。
【0063】
【表2】


【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレート、
(B)シランカップリング剤、
(C)シリコーン化合物、
(D)光ラジカル重合開始剤、および
(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物を含み、
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、下記群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、下記群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、光ナノインプリント用硬化性組成物。
群(F)
下記一般式(1)で表される化合物、1,3−プロパンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,9−ノナンジオールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート
【化1】

一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、アリルオキシメチル基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を表す。
群(G)
キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート
【請求項2】
前記光ナノインプリント用硬化性組成物が実質的に溶剤を含まず、かつ、該光ナノインプリント用組成物の粘度が30mPa・s以下である、請求項1に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子、メチル基またはアリルオキシメチル基である化合物、または1,3−プロパンジオールモノアクリレートのヒドロキシル基に、前記群(G)から選ばれるイソシアネート化合物のイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、前記群(F)から選ばれるヒドロキシル基を有するアクリレート化合物のヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子、メチル基またはアリルオキシメチル基である化合物、または1,3−プロパンジオールモノアクリレートのヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記(E)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物が、一般式(1)で表される化合物であって、Rが水素原子である化合物のヒドロキシル基に、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が付加した化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
前記光ナノインプリント用硬化性組成物が実質的に溶剤を含まず、かつ、該光ナノインプリント用組成物の粘度が20mPa・s以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
(A)1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび/またはネオペンチルグリコールジアクリレートの合計含有量が55質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、ヒンダードフェノール類および/またはヒンダードアミン類を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
光照射および加熱を行うことにより硬化することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させた硬化物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光ナノインプリント用硬化性組成物を、光照射および加熱を行うことにより硬化させることを含む、硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化物を用いた液晶表示装置用部材。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を、光照射および加熱を行うことにより硬化させることを含む、液晶表示装置用部材の製造方法。

【公開番号】特開2010−212392(P2010−212392A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55965(P2009−55965)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】