説明

光ピックアップ装置、光情報記録再生装置、コンピュータ装置、および、光ディスクレコーダ

【課題】作動距離が非常に小さくてもコマ補正時に光ディスクとレンズが接触または衝突することなく良好な記録再生動作を行うことができる光ピックアップ装置を実現する。
【解決手段】積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16にそれぞれ逆極性の電圧を印可することにより、第1レンズ1に対して、第2レンズ4を傾斜駆動することができる。従って、第2レンズ4の傾斜によって光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に生じたコマ収差を補正することができる。以上により、光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突することなくコマ収差を補正することができ、良好な記録再生動作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報装置並びに、光情報装置を用いた光ディスクプレーヤ、カーナビゲーションシステム、光ディスクレコーダ及び光ディスクサーバに使用される光ディスクに対して情報を再生または記録する光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスクとしてCD、DVDやBDは広く一般的に知られているが、近年さらに記録密度を向上することが望まれている。高密度記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現するためには光源の波長を小さくするかレンズの開口数を大きくする必要がある。
【0003】
そこで、BD用光ピックアップ装置の開口数0.85より大きな開口数を実現することができるレンズとして、Solid Imamersion Lens(以下SIL)を対物レンズと組み合わせて2群レンズとして用いることが知られている。
【0004】
しかしながら、対物レンズの開口数NAを大きくすると、光ディスク記録再生面上でのレーザ光のスポットが小さくなる反面、光ディスク記録再生面に対するレンズの傾斜によって発生するコマ収差の度合いが開口数NAの3乗に比例して大きくなり、信号の記録再生特性に悪影響を及ぼす。
【0005】
従来の光ピックアップ装置として、例えば特開2001−243646号公報(特許文献1参照)に記載された光ディスク装置では、SILを傾斜駆動する傾斜駆動機構を具備している。
【0006】
また、立上げミラーと光源との間に配置されたレンズを傾斜駆動してコマ収差を補正する光ピックアップ装置として国際公開第2009/047907号(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−243646号公報
【特許文献2】国際公開第2009/047907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
まず、特開2001−243646号公報に記載された光ディスク装置では、SIL傾斜駆動機構を具備しているので、SILを傾斜駆動することによりコマ収差を補正することができる。
【0009】
しかしながら、SILを用いた光ピックアップ装置では、SILの先端平面と光ディスク表面すなわち保護層表面までの作動距離は20〜30ナノメートルであって非常に小さいので、SILの先端平面と光ディスク保護層表面とのわずかな相対角度ズレによっても、光ディスクとSILが接触または衝突してしまう。
【0010】
光ディスクの記録再生面上の光スポットでのコマ収差の発生要因として、SILと光ディスクの記録再生面との角度ズレがあるが、記録再生面と保護層表面は必ずしも平行ではなく、従ってSILと記録再生面との角度ズレによるコマ収差をSIL傾斜駆動によって補正すると、保護層表面との相対角度ズレにより光ディスクとSILが接触または衝突してしまう可能性がある。
【0011】
その他のコマ収差の発生要因として、光ピックアップ装置の集光光学系に含まれる光学素子の角度ズレや光学素子同士の光軸ずれによるものもある。これらの要因によるコマ収差をSIL傾斜駆動によって補正することによっても、保護層表面との相対角度ズレにより光ディスクとSILが接触または衝突してしまう可能性がある。
【0012】
また、国際公開第2009/047907号に記載された光ディスク装置では、立上げミラーと光源との間に配置されたレンズを傾斜駆動してコマ収差を補正することができるので、この技術を応用すれば光ディスクに直近のレンズを傾斜させずにコマ収差補正することができる。
【0013】
しかしながら、傾斜駆動してコマ収差を補正するレンズは光ピックアップの固定側に配置されており、対物レンズのトラッキング方向の駆動により対物レンズの光軸と相対的なズレを生じる。特にSILを用いた高開口数の光学系ではわずかな光軸ズレでもコマ収差の波面形状の位置ズレにより大きな補正誤差を残すことになるためレンズを傾斜駆動してもコマ収差が補正しきれない可能性がある。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、SILを用いた高開口数の光ピックアップ装置であっても、円盤状記録媒体と接触または衝突することなくコマ収差を補正することを可能とした光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光ピックアップ装置は、所定の波長の光ビームを出射する光源と、前記光ビームを第1レンズと第2レンズとにより構成される2群レンズを介して円盤状記録媒体に照射し、さらに前記円盤状記録媒体の記録面で反射された前記光ビームを前記2群レンズを介して受光し電気信号に変換する光検出器と、前記2群レンズを駆動する対物レンズアクチュエータと、を備えた光ピックアップ装置であって、前記対物レンズアクチュエータは前記第1レンズを保持する第1レンズホルダと、前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記円盤状記録媒体に垂直な方向であるフォーカシング方向と前記円盤状記録媒体の半径方向であるトラッキング方向に移動可能に支持する第1支持機構と、前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記フォーカシング方向と前記トラッキング方向に駆動する第1駆動機構と、前記第2レンズを保持する第2レンズホルダと、前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記円盤状記録媒体の接線方向回りの回動方向であるラジアルチルト方向に移動可能に支持する第2支持機構と、前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向に駆動する第2駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本構成によって、SILを用いた高開口数の光ピックアップ装置であっても、円盤状記録媒体と接触または衝突することなくコマ収差を補正することが可能となる。また、2群レンズをトラッキング駆動しても光軸ズレによるコマ収差補正誤差を最小限に抑えて良好な光スポットを得ることが可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ピックアップ装置によれば、第2レンズを保持する第2レンズホルダと第1レンズホルダに対して少なくともラジアルチルト方向に移動可能に支持する第2支持機構と、第2レンズホルダを第1レンズホルダに対して少なくともラジアルチルト方向に駆動する第2駆動機構とを備えた構成となっている。
【0018】
本構成により、SILを用いた高開口数のレンズでもラジアルコマ収差補正が可能となり、良好な高密度記録再生特性を得ることが可能となる。
【0019】
また、第2レンズを傾斜させてコマ収差補正するのでSILを用いることにより作動距離が非常に小さくてもコマ補正時に円盤状記録媒体とSILが接触または衝突することなく良好な記録再生動作を行うことができる。
【0020】
さらに、第1レンズおよび第2レンズからなる2群レンズをトラッキング方向に駆動しても、一体で駆動するので光軸の相対的なズレを生じない。従って、補正波面の位置ズレによる補正誤差を残すことなく良好なコマ収差補正が可能となる。
【0021】
以上により超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態2における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図
【図4】本発明の実施の形態2における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図
【図5】本発明の実施の形態2における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図
【図6】本発明の実施の形態1から5の光ピックアップ装置の第1レンズ1、第2レンズ4およびプラズモン共鳴素子の構成を示す模式図
【図7】本発明の実施の形態5における光情報記録再生装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態6におけるコンピュータの構成図
【図9】本発明の実施の形態7における光ディスクレコーダの構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の構成を示すブロック図、図2は本発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。
【0025】
図1において、1はSILである第1レンズ、4は第2レンズであり、本実施の形態1は第1レンズ1および第2レンズ4を組合わせた2群レンズによって生成される近接場光を用いた超高密度光記録再生に対応した光ピックアップ装置である。
【0026】
また、20はSILによる超高密度光記録再生に対応した光ディスクであり、かつ記録容量向上のため2層の記録層を備えている。ここで、光ディスク20の構造は第1レンズ1に近い側に保護層が形成されており、その奥に第1層目の記録層、更にその奥に第2層目の記録層が形成されている。
【0027】
青色半導体レーザ24から出射された光ビームはリレーレンズ23を介してビームスプリッタ22で反射しコリメートレンズ21に向かう。ここで、コリメートレンズ21は光ビームを所定の発散度に設定されている。
【0028】
光ビームはコリメートレンズ21を透過した後、立上げミラー19によって折り曲げられて第2レンズ4に向かう。第2レンズ4で絞られた光ビームは更に第1レンズ1で集光され、近接場光となって光ディスク20の情報記録面に照射される。
【0029】
そして、光ディスク20の情報記録面からの反射光は往路と同様に第1レンズ1、第2レンズを透過、立ち上げミラー19で反射し、コリメートレンズ21を透過してビームスプリッタ22に至る。復路では光ビームはビームスプリッタ22を透過し、検出用ビームスプリッタ25によって分割されて光検出器に入射され、光電変換されて光ピックアップ制御回路に出力されることにより、フォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号および光ディスク再生信号を生成する。
【0030】
次に、図2を用いて、対物レンズアクチュエータの構成について説明する。
【0031】
第1レンズ1は第1レンズホルダ2に保持されており、第1レンズホルダ2はメインホルダ3に固定されており、一体的に構成されている。メインホルダ3の接線方向Kに垂直な2つの端面にはFoコイルA8、Trコイル7、FoコイルB9が各々固着されており、トラッキング方向Tに垂直な2つの端面には端子板6が各々固着されている。
【0032】
第2レンズ4は第2レンズホルダ5に保持されており、第2レンズホルダ5は積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16によって第1レンズホルダ2と連結、支持されている。積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16は第2レンズ4の光軸を中心にトラッキング方向Tに沿う両側に対象に配置されており、第1レンズの光軸と第2レンズの光軸が一致するように連結している。積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16はいずれもフォーカシング方向Fの方向に圧電セラミックなどの圧電材料が複数積層されており、それぞれその両端に図示しない電圧印可手段により1000V程度の電圧が印可されることにより体積変化が生じてフォーカシング方向の厚みが変化する。
【0033】
メインホルダ3は一端が端子板6に、他端が固定部材12を介して固定基板13に固定された支持ワイヤ11によって支持されている。固定部材12はヨークベース14に取り付けられており、さらにヨークベース14は光ピックアップ装置の光学ベース18に取り付けられている。従って、第1レンズ1および第2レンズ4は光学ベース18に対してフォーカシング方向F、トラッキング方向Tおよびラジアルチルト方向Rtに移動可能に弾性支持されている。
【0034】
かかる構成によれば、第1レンズ1および第2レンズ4はTrコイル7に電流を印可することによりトラッキング方向Tに駆動され、FoコイルA8およびFoコイルB9に互いに逆回転の電流を印可することによりフォーカシング方向Fに、互いに同一方向の電流を印可することによりラジアルチルト方向Rtに駆動される。従って、第1レンズ1をFoコイルA8およびFoコイルB9によるフォーカシング方向Fへの駆動により光ディスクの保護層20aの表面に対して一定の距離に位置決めし、かつラジアルチルト方向Rtへの駆動により光ディスクの保護層20aの表面の傾斜と一致させることにより、光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突を防止することができる。
【0035】
そして、第2レンズ4は積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16にそれぞれ同一の電圧を印可することにより、第1レンズ1との離間距離を伸縮駆動することができる。従って、光ビームの収斂度を変化させることにより、球面収差のない良好な光スポットを光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に形成することができる。
【0036】
さらに、積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16にそれぞれ逆極性の電圧を印可することにより、第1レンズ1に対して、第2レンズ4を傾斜駆動することができる。従って、第2レンズ4の傾斜によって光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に生じたコマ収差を補正することができる。
【0037】
以上により、作動距離が非常に小さくても光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突することなくコマ収差を補正することができ、良好な記録再生動作を行うことができる。
【0038】
また、Trコイル7により第1レンズ1をトラッキング方向Tに駆動しても、第1レンズ1と第2レンズ4は一体で駆動するので光軸の相対的なズレを生じない。従って、補正波面の位置ズレによる補正誤差を残すことなく良好なコマ収差補正が可能となる。
【0039】
以上により超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【0040】
なお、本実施の形態1は第1レンズとしてSILを用いたが、図6に示すように第1レンズの先端にプラズモン共鳴素子41を配置することにより、SILによって生成した近接場光をプラズモン共鳴素子41に照射してプラズモンを励起させ、このプラズモンによって生じる電磁場を用いて光ディスクに対してさらに微小な領域の光記録再生を行うことができる。
【0041】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2の光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。図3において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0042】
図3の構成において、図2との相違箇所は第2レンズホルダ5が積層型圧電素子A15および積層型圧電素子B16に加えて積層型圧電素子C28および積層型圧電素子D29によって第1レンズホルダ2と連結、支持されていることである。
【0043】
積層型圧電素子C28および積層型圧電素子D29は第2レンズ4の光軸を中心に接線方向Kに沿う両側に対象に配置されている。
【0044】
従って、積層型圧電素子C28および積層型圧電素子D29にそれぞれ逆極性の電圧を印可することにより、第1レンズ1に対して、第2レンズ4をタンジェンシャルチルト方向Ttの傾斜駆動をすることができる。
【0045】
よって、第2レンズ4の傾斜によって光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に生じたラジアルチルト方向Rtのコマ収差に加えて、タンジェンシャルチルト方向Ttのコマ収差を補正することができる。
【0046】
以上により、より高精度のコマ収差補正が可能となりより高品質な超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【0047】
なお、本実施の形態2は第1レンズとしてSILを用いたが、図6に示すように第1レンズの先端にプラズモン共鳴素子41を配置することにより、SILによって生成した近接場光をプラズモン共鳴素子41に照射してプラズモンを励起させ、このプラズモンによって生じる電磁場を用いて光ディスクに対してさらに微小な領域の光記録再生を行うことができる。
【0048】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3の光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。図4において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0049】
図4の構成において、図2との相違箇所は第2レンズホルダ5がバイモルフ型圧電素子A30〜バイモルフ圧電素子D33によって第1レンズホルダ2と連結、支持されていることである。
【0050】
バイモルフ型圧電素子A30〜D33は板状で略U字型形状であって上下2枚組になっており、U字型の一端を第2レンズホルダ5に他端を第1レンズホルダ2にそれぞれ固着されている。また、U字型形状の折り返し部で中間部材34によって上下の組が連結されている。
【0051】
バイモルフ型圧電素子A30〜D33の両端に電圧を印可することにより、板厚方向に湾曲変形する。従って、バイモルフ型圧電素子A30〜D33をそれぞれ独立に電圧を印可して駆動することにより、第1レンズ1に対して、第2レンズ4のラジアルチルト方向Rtの傾斜、タンジェンシャルチルト方向Ttの傾斜およびフォーカシング方向Fの相対距離を任意に位置決めすることが可能となる。
【0052】
よって、第2レンズ4の第1レンズ1との離間距離を伸縮駆動することにより光ビームの収斂度を変化させて、球面収差のない良好な光スポットを光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に形成することができる。また、第2レンズ4の傾斜によって光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に生じたラジアルチルト方向Rtのコマ収差および、タンジェンシャルチルト方向Ttのコマ収差を補正することができる。
【0053】
また、バイモルフ型圧電素子を用いることにより小型で変位ストロークを大きくすることができ、対物レンズアクチュエータの小型化を実現することができる。
【0054】
以上により、作動距離が非常に小さくても光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突することなくコマ収差を補正することができ、良好な記録再生動作を行うことができる。
【0055】
また、Trコイル7により第1レンズ1をトラッキング方向Tに駆動しても、第1レンズ1と第2レンズ4は一体で駆動するので光軸の相対的なズレを生じない。従って、補正波面の位置ズレによる補正誤差を残すことなく良好なコマ収差補正が可能となる。
【0056】
従って、超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【0057】
なお、本実施の形態3は第1レンズとしてSILを用いたが、図6に示すように第1レンズの先端にプラズモン共鳴素子41を配置することにより、SILによって生成した近接場光をプラズモン共鳴素子41に照射してプラズモンを励起させ、このプラズモンによって生じる電磁場を用いて光ディスクに対してさらに微小な領域の光記録再生を行うことができる。
【0058】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態3の光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。図5において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0059】
図5の構成において、図2との相違箇所は第2レンズホルダ5がサスペンション板バネ35によって第1レンズホルダ2と連結、支持されていること、第2レンズホルダ5には4つの第2レンズ用マグネット36が固着されていること、第1レンズホルダ2が固定されるメインホルダ3に第2レンズ駆動コイルA37〜D40が固着されていることである。
【0060】
サスペンション板バネ35は略U字型形状であって上下2枚組になっており、U字型の一端を第2レンズホルダ5に他端を第1レンズホルダ2にそれぞれ固着されている。また、U字型形状の折り返し部で中間部材34によって上下の組が連結されている。
【0061】
さらに、第2レンズホルダ5に固着された4つの第2レンズ用マグネット36は、それぞれ第2レンズ駆動コイルA37〜D40の側面に対向する位置に配置されており、第2レンズ駆動コイルA37〜D40にそれぞれ独立して電流を印可することにより、それぞれの第2レンズ用マグネット36がフォーカシング方向Fに駆動されることになる。
【0062】
従って、第2レンズ駆動コイルA37〜D40をそれぞれ独立に電圧を印可して駆動することにより、第1レンズ1に対して、第2レンズ4のラジアルチルト方向Rtの傾斜、タンジェンシャルチルト方向Ttの傾斜およびフォーカシング方向Fの相対距離を任意に位置決めすることが可能となる。
【0063】
よって、第2レンズ4の第1レンズ1との離間距離を伸縮駆動することにより光ビームの収斂度を変化させて、球面収差のない良好な光スポットを光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に形成することができる。また、第2レンズ4の傾斜によって光ディスクの第1層目の記録層または第2層目の記録層に生じたラジアルチルト方向Rtのコマ収差および、タンジェンシャルチルト方向Ttのコマ収差を補正することができる。
【0064】
また、電磁駆動機構を用いることにより安価な構成で対物レンズアクチュエータを実現することができる。
【0065】
以上により、作動距離が非常に小さくても光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突することなくコマ収差を補正することができ、良好な記録再生動作を行うことができる。
【0066】
また、Trコイル7により第1レンズ1をトラッキング方向Tに駆動しても、第1レンズ1と第2レンズ4は一体で駆動するので光軸の相対的なズレを生じない。従って、補正波面の位置ズレによる補正誤差を残すことなく良好なコマ収差補正が可能となる。
【0067】
従って、超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【0068】
なお、本実施の形態4は第1レンズとしてSILを用いたが、図6に示すように第1レンズの先端にプラズモン共鳴素子41を配置することにより、SILによって生成した近接場光をプラズモン共鳴素子41に照射してプラズモンを励起させ、このプラズモンによって生じる電磁場を用いて光ディスクに対してさらに微小な領域の光記録再生を行うことができる。
【0069】
以上のように、実施形態1から4における光ピックアップ装置は、主に下記の構成を有している。
【0070】
すなわち、実施形態1から4における光ピックアップ装置は、所定の波長の光ビームを出射する光源と、前記光ビームを第1レンズと第2レンズとにより構成される2群レンズを介して円盤状記録媒体に照射し、さらに前記円盤状記録媒体の記録面で反射された前記光ビームを前記2群レンズを介して受光し電気信号に変換する光検出器と、前記2群レンズを駆動する対物レンズアクチュエータと、を備えた光ピックアップ装置である。さらに、当該光ピックアップ装置において、前記対物レンズアクチュエータは、前記第1レンズを保持する第1レンズホルダと、前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記円盤状記録媒体に垂直な方向であるフォーカシング方向と前記円盤状記録媒体の半径方向であるトラッキング方向に移動可能に支持する第1支持機構と、前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記フォーカシング方向と前記トラッキング方向に駆動する第1駆動機構と、前記第2レンズを保持する第2レンズホルダと、前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記円盤状記録媒体の接線方向回りの回動方向であるラジアルチルト方向に移動可能に支持する第2支持機構と、前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向に駆動する第2駆動機構と、を備えている。
【0071】
本構成によって、SILを用いた高開口数の光ピックアップ装置であっても、円盤状記録媒体と接触または衝突することなくコマ収差を補正することが可能となる。また、2群レンズをトラッキング駆動しても光軸ズレによるコマ収差補正誤差を最小限に抑えて良好な光スポットを得ることが可能とする光ピックアップ装置を実現することができる。
【0072】
(実施の形態5)
本発明の光記録媒体の光情報記録再生装置の実施の形態を図7に示す。
【0073】
図7において光ディスク200は、ターンテーブル605に搭載され、クランパー606により保持され、モータ604によって回転される。第1〜第4の実施形態に示した光ピックアップ装置602は、光ディスク200の所望の情報の存在するトラックのところまで、駆動装置301によって移送される。
【0074】
光ピックアップ装置602は、光ディスク200との位置関係に対応して、フォーカス信号やトラッキング信号、ギャップ信号、RF信号を電気回路603へ送る。電気回路603はこの信号に対応して、光ピックアップ装置602へ、対物レンズアクチュエータを駆動させるための信号を送る。この信号によって、光ピックアップ装置602は、光記録媒体200に対してフォーカス制御、トラッキング制御、ギャップ制御、チルト制御を行い、情報の読み出し、書き込み又は消去を行う。
【0075】
以上の説明において、搭載する光ディスク200は、近接場光により記録再生のための情報層を有する実施の形態1〜形態4で述べた光ディスク20である。本実施の形態の光情報記録再生装置607は、作動距離が非常に小さくても光ディスク20と第1レンズ1が接触または衝突することなくコマ収差を補正することができ、良好な記録再生動作を行うことができる。
【0076】
また、第1レンズ1をトラッキング方向Tに駆動しても、第1レンズ1と第2レンズ4は一体で駆動するので光軸の相対的なズレを生じない。従って、補正波面の位置ズレによる補正誤差を残すことなく良好なコマ収差補正が可能となる。
【0077】
以上により超高密度光記録再生を可能とする光ピックアップ装置を実現することができ、かつSILが光ディスク表面と衝突することを避けることができるため、情報を安定に記録・再生できるだけでなく、重要な光ディスクを傷つける可能性を低くすることができる。
【0078】
(実施の形態6)
本実施の形態は、前記実施形態5に係る光情報記録再生装置607を具備したコンピュータ装置の実施の形態である。図8は、本実施の形態に係るコンピュータの斜視図である。
【0079】
図8に示したコンピュータ609は、実施形態5に係る光情報記録再生装置607と、情報の入力を行うためのキーボード611とマウス612などの入力装置と、入力装置から入力された情報や、光情報記録再生装置607から読み出した情報などに基づいて演算を行うCPUなどの演算装置608と、演算装置608によって演算された結果の情報を表示するブラウン管や、液晶表示装置などの出力装置610とを備えている。
【0080】
本実施の形態に係るコンピュータ装置は、前記実施形態5に係る光情報記録再生装置607を具備しており、近接場光により記録再生のための情報層を持つ光記録媒体に安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
【0081】
(実施の形態7)
本実施の形態は、前記実施形態5に係る光情報記録再生装置607を具備した光ディスクレコーダの実施の形態である。図9は、本実施の形態に係る光ディスクレコーダの斜視図である。
【0082】
図9に示した光ディスクレコーダ615は、実施形態5に係る光情報記録再生装置607と、画像信号を光情報記録再生装置607によって、光記録媒体へ記録する情報信号に変換する記録信号処理回路613を備えている。
【0083】
光情報記録再生装置607から得られる情報信号を、画像信号に変換する再生信号処理回路614も有することが望ましい。この構成によれば、既に記録した部分を再生することも可能となる。更に、情報を表示するブラウン管、液晶表示装置などの出力装置610を備えてもよい。
【0084】
本実施の形態に係る光ディスクレコーダは、前記実施形態5に係る光情報記録再生装置607を具備しており、近接場光により記録再生のための情報層を持つ光記録媒体に安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明にかかる光ピックアップ装置は、及び光情報記録再生装置は、開口数が1を超えるようなSolid Imamersion Lensを使って複数の情報記録面を有する光記録媒体に高密度で、安定した情報の記録または再生が可能になる。よって、この応用機器である大容量の光ディスクレコーダやコンピュータ用メモリ装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 第1レンズ
2 第1レンズホルダ
3 メインホルダ
4 第2レンズ
5 第2レンズホルダ
6 端子板
7 Trコイル
8 FoコイルA
9 FoコイルB
10 マグネット
11 支持ワイヤ
12 固定部材
13 固定基板
14 ヨークベース
15 積層型圧電素子A
16 積層型圧電素子B
17 対物レンズアクチュエータ
18 光学ベース
19 立上げミラー
20 光ディスク
20a 光ディスクの保護層
20b 光ディスクの第1層目の記録層
20c 光ディスクの第2層目の記録層
21 コリメートレンズ
22 ビームスプリッタ
23 リレーレンズ
24 青色半導体レーザ
25 検出ビームスプリッタ
26 検出レンズ
27 光検出器
28 積層型圧電素子C
29 積層型圧電素子D
30 バイモルフ型圧電素子A
31 バイモルフ型圧電素子B
32 バイモルフ型圧電素子C
33 バイモルフ型圧電素子D
34 中間部材
35 サスペンション板バネ
36 第2レンズ用マグネット
37 第2レンズ駆動コイルA
38 第2レンズ駆動コイルB
39 第2レンズ駆動コイルC
40 第2レンズ駆動コイルD
41 プラズモン共鳴素子
F フォーカシング方向
T トラッキング方向
K 接線方向K
Rt ラジアルチルト方向
Tt タンジェンシャルチルト方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長の光ビームを出射する光源と、
前記光ビームを第1レンズと第2レンズとにより構成される2群レンズを介して円盤状記録媒体に照射し、
さらに前記円盤状記録媒体の記録面で反射された前記光ビームを前記2群レンズを介して受光し電気信号に変換する光検出器と、
前記2群レンズを駆動する対物レンズアクチュエータと、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記対物レンズアクチュエータは
前記第1レンズを保持する第1レンズホルダと、
前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記円盤状記録媒体に垂直な方向であるフォーカシング方向と前記円盤状記録媒体の半径方向であるトラッキング方向に移動可能に支持する第1支持機構と、
前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記フォーカシング方向と前記トラッキング方向に駆動する第1駆動機構と、
前記第2レンズを保持する第2レンズホルダと、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記円盤状記録媒体の接線方向回りの回動方向であるラジアルチルト方向に移動可能に支持する第2支持機構と、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向に駆動する第2駆動機構と、
を備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
第2支持機構が前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向および前記フォーカシング方向に移動可能に支持し、
第2駆動機構が前記第2レンズの光軸を含み前記トラッキング方向に垂直な平面の両側に配置された複数の駆動機構であって、
前記フォーカシング方向の駆動力を各々独立に発生する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
所定の波長の光ビームを出射する光源と、
前記光ビームを第1レンズと第2レンズとにより構成される2群レンズを介して円盤状記録媒体に照射し、
さらに前記円盤状記録媒体の記録面で反射された前記光ビームを前記2群レンズを介して受光し電気信号に変換する光検出器と、
前記2群レンズを駆動する対物レンズアクチュエータと、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記対物レンズアクチュエータは
前記第1レンズを保持する第1レンズホルダと、
前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記円盤状記録媒体に垂直な方向であるフォーカシング方向と前記円盤状記録媒体の半径方向であるトラッキング方向に移動可能に支持する第1支持機構と、
前記第1レンズホルダを前記光源に対して少なくとも前記フォーカシング方向と前記トラッキング方向に駆動する第1駆動機構と、
前記第2レンズを保持する第2レンズホルダと、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記円盤状記録媒体の接線方向回りの回動方向であるラジアルチルト方向に移動可能に支持する第2支持機構と、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記円盤状記録媒体の半径方向回りの回動方向であるタンジェンシャルチルト方向に移動可能に支持する第3支持機構と、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向に駆動する第2駆動機構と、
前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記タンジェンシャルチルト方向に駆動する第3駆動機構と、
を備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
第2支持機構が前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記ラジアルチルト方向および前記フォーカシング方向に移動可能に支持し、
かつ第3持機構が前記第2レンズホルダを前記第1レンズホルダに対して少なくとも前記タンジェンシャルチルト方向および前記フォーカシング方向に移動可能に支持し、
第2駆動機構が前記第2レンズの光軸を含み前記トラッキング方向に垂直な平面の両側に配置された複数の駆動機構であって、前記フォーカシング方向の駆動力を各々独立に発生し、
第3駆動機構が前記第2レンズの光軸を含み前記接線方向に垂直な平面の両側に配置された複数の駆動機構であって、前記フォーカシング方向の駆動力を各々独立に発生する
ことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
第2駆動機構または第3駆動機構は、
永久磁石によって発生する磁場中に配置されたコイルに通電することにより得られる電磁気力を用いて前記第2レンズを駆動する駆動機構である
ことを特徴とする請求項2または4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
第2駆動機構または第3駆動機構は、
両端に電位差を与えることにより変形する圧電素子を用いて前記第2レンズを駆動する駆動機構である
ことを特徴とする請求項2または4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
第1レンズは近接場光によって光を集光するソリッドイマージョンレンズである
ことを特徴とする請求項1から6に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
第1支持機構が
前記第1レンズホルダを前記フォーカシング方向、前記トラッキング方向および前記ラジアルチルト方向に移動可能に支持する支持機構であり、
第1駆動機構が
前記第1レンズホルダを前記フォーカシング方向、前記トラッキング方向および前記ラジアルチルト方向に駆動する駆動機構である
ことを特徴とする請求項1から7に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
第1レンズと前記円盤状記録媒体の間に配置されたプラズモン共鳴素子に前記光ビームを照射して励起されたプラズモンを用いて前記円盤状記録媒体への記録、再生を行う
ことを特徴とする請求項1から8に記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の光ピックアップ装置と、光記録媒体を回転するモータと、前記光ピックアップ装置から得られる信号に基づいて、前記モータ、前記光ピックアップ装置に用いたレンズ、及び前記光源の少なくともいずれかを制御及び駆動する電気回路とを備えたことを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光情報記録再生装置を備え、入力された情報、及び前記光情報記録再生装置から再生された情報の少なくともいずれかに基づいて演算を行う演算装置と、前記入力された情報、前記光情報記録再生装置から再生された情報、及び前記演算装置によって演算された結果の少なくともいずれかを出力する出力装置を備えたことを特徴とするコンピュータ装置。
【請求項12】
請求項10に記載の光情報記録再生装置と、画像情報を前記光情報記録再生装置に記録する情報に変換する記録用信号処理回路と、前記光情報記録再生装置から得られる信号を画像に変換する再生用信号処理回路とを備えた光ディスクレコーダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−248255(P2012−248255A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121362(P2011−121362)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】