説明

光ピックアップ装置

【課題】複雑な制御を行わずにトラッキング補正を正確に行うことが出来る光ピックアップを提供する。
【解決手段】レーザ光源1から出射された往路光と光ディスクにより反射された復路光とに分離するための偏光ビームスプリッタ4と、レーザ光源と偏光ビームスプリッタとの間に配し、往路光を3ビームに分割するための回折機能素子3と、偏光ビームスプリッタから出射される往路光を、光ディスクに集光する対物レンズ7と、往路光を開口制限するための開口制限手段5とを備え、上記回折機能素子が、光ディスクのトラックピッチと、対物レンズの開口数を考慮して設定された第1の回折格子と、当該第1の回折格子の回折方向と平行して設けられ、この光ディスクとはトラックピッチが異なる光ディスクのトラックピッチと、対物レンズの開口数を考慮して設定された第2の回折格子が、光ビームの光軸方向に重なる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックピッチの異なる光記録媒体への光学的な情報の記録・再生を行う為の光ピックアップ装置に関し、特に、夫々の光記録媒体のトラックピッチ、光記録媒体にレーザ光を集光する対物レンズに対応した回折格子を備えることで、記録・再生時のトラッキング補正精度を向上させた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CDからDVD、次世代光記録媒体へと光記録媒体の進化への、記録内容の大容量化が進み、記録ピット・ランドが極小化することにより、トラッキング補正に用いるトラック間隔も極小化している。この次世代光記録媒体の規格には、保護層厚の違いから、保護層厚0.1μmのBlu−ray Disc(以後、BDとする。)と、保護層厚0.6μmのHD−DVD(以後、HDとする。)とがある。そして、今後BDとHDの互換性を併せたピックアップ装置と共に、正確な光ディスク読み取り技術が求められている。
【0003】
光ピックアップ装置は、レーザ光源から出射された所定の波長の光ビームを光ディスクに集光し、この光ディスクから反射する光ビームの大きさを受光素子で検出することで光ディスクの情報を再生し、またはレーザ光源から出射される光量を変調した光ディスクに照射する光量を変化させることで、光ディスクの情報を記録する装置として使われる。
【0004】
この光ピックアップ装置のディスク読み取り方法の一つとして、3ビーム法が知られている(例えば、特許文献1参照のこと)。この3ビーム法によれば、レーザ光源から出射した光ビームを、回折格子を用いて三本の光ビーム(メインビームと一対のサブビーム)に分離させ、光ディスクに対物レンズを用いて集光させることができる。これにより、光ディスク表面には、メインビーム(0次光)を中心とした三点の光が照射されることとなり、このメインビームにより光ディスクの情報を受光素子で読み取る。また、光ディスク表面におけるトラックに照射されるサブビームの明暗を受光素子で検出することで、光ディスクのトラッキング補正を行い、光ディスクに記録されたデータの読み取りを行うことができる様になっている。
【0005】
上述した光ピックアップ装置のディスク読み取り方法は、光ディスク上の案内溝(トラック)を用いて行われる。光記録媒体であるCDとDVD、またはHDとBDは、3ビーム法によりトラッキング補正を行う場合、夫々トラックピッチが異なることにより、最適な光ビームスポット間隔で、かつ最適なスポット角度で光ディスク上に結像しなければならない。
【0006】
この従来の光ピックアップの構成について詳細に説明する。図7は、従来の光ピックアップ装置の全体構成を示す図面である。
【0007】
図7に示すように、従来の光ピックアップ装置200は、レーザ光源1から出射される往路光束210がコリメータレンズ2で平行光に変換され、回折格子24を透過し、3本の光ビームを形成する。そして、形成された三本の光ビームは、偏光ビームスプリッタ4を透過して、反射ミラー32で反射して往路光束220となり、λ/4板6で円偏光に変換され、対物レンズ30によって第1の光ディスク11の信号記録面11dに集光する。この第1の光ディスク11の信号記録面11dから反射される復路光束230は、対物レンズ30、λ/4板6、反射ミラー32を通過し、偏光ビームスプリッタ4で反射され、集光レンズ33とシリンドリカルレンズ34を介して、第1の光ディスク11の信号記録面11dからの復路光束240を、3ビームに分けて検出部300〜302からなる受光
素子35に集める。
【0008】
なお、この光ピックアップ装置200は、トラックピッチと、信号記録面11d、12dが異なる2種類の光ディスク(第1の光ディスク11、第2の光ディスク12)に対応した、2焦点型の対物レンズ30を用いており、アクチュエータ31によって対物レンズ30を駆動して往路光束220の焦点距離を適宜切り替えることで、2種類の光ディスクの記録・再生を可能としている。
【0009】
また、上述した光ピックアップ装置200は、制御装置75で、受光素子35における検出部300〜302のそれぞれで受けた光量信号に基づき、生成された制御信号75aにより、対物レンズ30を制御して、フォーカシング、トラッキング制御を行う。
【0010】
この様に、上記回折格子24、第1の光ディスク11と第2の光ディスク12に合わせた対物レンズ30とトラッキング制御系をこの光ピックアップ装置200に搭載すれば、同一な波長で、異なるトラックピッチと、異なる信号記録面を有する光ディスクの記録/再生を行うと共に、トラッキング補正も併せて行うことが出来る。
【0011】
【特許文献1】特開平10−3673号公報(第2−9頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この光ピックアップ装置では、まだまだ複雑なトラッキング補正が必要であるという問題点を有している。その問題点について説明する。図8(a)は、3本の光ビームが光ディスクに照射される様子を示す図面であり、図8(b)は、この光ディスクに照射される3本の光ビームとトラックとの関係を示す図面である。
【0013】
先に図7にて説明したように、回折格子24は、第1の光ディスク11の信号記録面11dのトラックピッチに沿うように設計される。これにより、図8(a)左図に示す様に、一方の往路光束に対しては、回折された三本の光ビーム220a、220b、220cが、対物レンズ30に入射して第1の光ディスク11の信号記録面11dに集光される。この往路光束の各光ビーム220a〜220cは、図8(b)左図に示す様に、第1の光ディスク11の信号記録面11dのトラックピッチ40に沿った光ビームスポット(メインスポット11a、サブスポット11b、11c)を形成する。これにより、対物レンズ30に搭載されるアクチュエータをトラッキング補正するために、わざわざ動作させる必要がない。
【0014】
また、図8(a)右図に示す様に、他方の往路光束に対しては、回折された三本の光ビーム230a、230b、230cが、対物レンズ30により第2の光ディスク12の信号記録面12dにスポットを形成する。
【0015】
ところが、この往路光束230a〜230cは、図8(b)右図に示す様に、第2の光ディスク12の信号記録面12dのトラックピッチ50に沿った設計となっていない為、光ビームスポット(メインスポット12a、サブスポット12b、12c)が、第2の光ディスク12の信号記録面12dのトラックピッチ50からずれてしまうこととなる。したがって、この場合は、各往路光束230a〜230cに対して、第2の光ディスク12の信号記録面12dのトラックピッチ50に沿う様に、対物レンズ30に搭載されるアクチュエータ駆動を駆動させて、トラッキング補正をする必要がある。このアクチュエータは、この様な場合にトラッキング補正をするだけでなく、フォーカシング制御として、光ディスクのトラックに追従してビームスポットが当てて、対物レンズ30を動作させる必要があるため、これら2つの機能をアクチュエータ装置に持たせることは、その制御が複
雑となり、好ましくない。
【0016】
この様に、単一の回折格子24で、複数の光ディスクのトラッキング補正を行う光ピックアップ装置200では、複雑な制御によりアクチュエータを動作させなくてはならないという問題点を有していた。
【0017】
そこで、本発明は上記の問題点を解決し、複雑な制御を行わずにトラッキング補正を正確に行うことが出来る光ピックアップ装置の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の光ピックアップ装置は、基本的に下記記載の構成を有するものである。
【0019】
本発明の光ピックアップ装置は、光ビームの往路光を出射するレーザ光源と、往路光と、第1の光ディスクまたは当該第1の光ディスクとはトラックピッチが異なる第2の光ディスクから反射される復路光とに分離するための偏光ビームスプリッタと、レーザ光源と偏光ビームスプリッタとの間に配設し、往路光を3ビームに分割するための回折格子と、偏光ビームスプリッタから出射される往路光を、光ディスクに集光する対物レンズと、往路光を開口制限するための開口制限手段とを備え、回折格子は、第1の光ディスクのトラックピッチと、第1の光ディスクに対応した対物レンズ開口数を考慮して、回折ピッチが設定された第1の回折格子と、当該第1の回折格子の回折方向と平行して設けられ、第2の光ディスクのトラックピッチと、第2の光ディスクに対応した対物レンズ開口数を考慮して、回折ピッチが設定された第2の回折格子とが、往路光の光軸方向に重ねて配置されて構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の光ピックアップ装置は、前述した第1と第2の回折素子が、2枚の透明基板の間に液晶層を挟持する液晶回折素子であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の光ピックアップ装置は、前述した開口制限手段が、機械的に開口制限を行う機構を備えた手段であることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の光ピックアップ装置は、前述した開口制限手段に代えて、開口制限する領域に液晶を配し、当該液晶を動作することにより開口制限を行う液晶開口制限素子により構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
さらに、本発明の光ピックアップ装置は、前述した第1、第2の回折素子に、液晶開口制限素子が一体化して形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ピックアップ装置によれば、アクチュエータの複雑な制御を行わずに正確なトラッキング補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の光ピックアップの構成は、レーザ光源と偏光ビームスプリッタ間に2枚の回折機能素子を配した構成としている。以下に、本発明の光ピックアップ装置について図面を用いて詳細に説明をする。
【実施例1】
【0026】
まず、本発明の光ピックアップ装置の構成と作用について説明する。図1は、本発明の光ピックアップ装置の構成および作用を説明するための図面である。
【0027】
図1に示す本発明の光ピックアップ装置100におけるレーザ光源1は、青紫色を発光波長とする半導体レーザダイオードであり、発散角を持った単色の直線偏光光束である往路光束101を発生する。コリメートレンズ2は、この発散光束を平行光束にする。回折機能素子3は、回折機能によりこの往路光束101に対して、夫々の偏光方向に三本の光ビームを形成する。偏光ビームスプリッタ4は、この平行光束である往路光束101の光ビームを透過させるように作用し、往路光束102を出射する。偏光ビームスプリッタ4を透過した往路光束102は、開口制限手段5により、第1または第2の光ディスク11、12に応じた対物レンズ7の開口数を切換える。なお、ここで示す第2の光ディスク12は、第1の光ディスク11とは異なるトラックピッチで、異なる深さの信号記録面を有するディスクである。
【0028】
λ/4板6は、直線偏光である夫々の平行光束を、円偏光である平行光束に変換する。対物レンズ7は、この円偏光の平行光束を、第1、第2の光ディスク11、12の信号記録面11d、12dに集光する。なお、このレーザ光源1から発せられた光束の、第1、第2の光ディスク11、12に至るまでの光路を、以下「往路」と呼ぶ。
【0029】
第1、第2の光ディスク11、12から反射された発散光束は、再び対物レンズ7に入射して平行光束になり、λ/4板6透過して、円偏光から直線偏光の復路光束104、105に変換される。この直線偏光の偏光方向は、往路と直交しており、偏光ビームスプリッタ4は、このλ/4板6から出射される復路光束104、105の光路を90度回転し、復路光束106、107を、集光レンズ8によって受光素子9に集光する。この第1、第2の光ディスク11、12から反射された光束の、受光素子9に至るまでの光路を、以下「復路」と呼ぶ。
【0030】
なお、上記回折機能素子3は、第1の光ディスク11に対応した回折格子と、第2の光ディスク12に対応した回折格子を、往路光束101の光軸に沿って積層して配置されて構成している。この回折機能素子3は、2つのグレーティングを重ね合わせて配置した形態としても構わないが、本実施例では、2つの液晶回折素子を重ね合わせた形態を採用している。この様に回折素子に液晶回折素子を用いれば、多品種の光ディスクの読み込みと、書き込みの性能の両方の機能を向上させる。
【0031】
この、回折機能素子3は、受光素子9で得られる光量信号13に基づき、マイコン14で生成される液晶駆動信号15により、回折機能により発現した3ビーム(メインビームと一対のサブビーム)を生成する。このとき積層して配置される2つの液晶回折素子は、この液晶駆動信号15により液晶駆動電圧が制御され、第1、第2の光ディスク11、12の信号記録面11d、12dに集光する3ビーム(メインビームと一対のサブビーム)の回折効率を可変とすることが出来る。
【0032】
また、光ピックアップ装置100により記録/再生される光ディスクの種類により、偏光ビームスプリッタ4を通過した往路光束102を、第1または第2の光ディスク11、12に応じた対物レンズ7の開口数の切換や、復路光束104、105の光量調整が出来る様に、このマイコン14が液晶駆動信号15を生成して、回折機能素子3を制御する。
【0033】
この様に、本実施例では回折機能素子3を2つの液晶回折素子を積層して構成し、回折効率を可変にできる様にしたからこそ、第1の光ディスク11上の信号記録面11dにおける3ビーム内のメインビームに対する、一対のサブビームの光量比を選択的に変えることができるようになる。また、本構成によれば、第1、第2の光ディスク11、12を再生する時に比べて、記録する時にはサブビームに対するメインビームの光量比を向上させることができるので、光ディスクへの正確な記録を行うことができる様になる。
【0034】
ここで、対物レンズ7の開口数の切換えに用いられる開口制限手段5について説明する。ここで用いる開口制限手段5は、機械的に開口絞りを挿脱する機構を有するものである。この開口制限手段5は、往路光束102内に開口絞りを挿入しないときには、対物レンズ7に対する開口数が0.85のままで、第1の光ディスク11に対応する光束を通過させる。また、開口制限を行うときには、往路光束内に開口絞りを挿入することで、対物レンズ7に対する開口数を0.65として、開口絞りとして機能させる。このように、開口制限手段5の切換えを光ディスク種に応じて行うことにより、単一の対物レンズ7で異なる信号記録面を持つ第1、第2の光ディスク11、12の信号記録面11d、12dに、それぞれ集光することが出来る。またこれにより、第1、第2の光ディスク11、12の記録・再生を行うことを可能とする。
【0035】
次に、上述した回折機能素子3の構成および作用について詳細に説明する。図2は、本発明に係る回折機能素子の構成を説明するための図面である。図3は、この回折機能素子の作用を示す図面である。
【0036】
図2(a)に示す様に、回折機能素子3は、2つの液晶回折素子150と液晶回折素子160によって構成されている。そして、液晶回折素子150は、透明電極を有した透明基板111aと透明基板111b、およびシール材114aを介して両透明基板に挟持された液晶層115aを備えている。また、液晶回折素子160は、透明電極を有した透明基板111bと透明基板111c、およびシール材114bを介して両透明基板に挟持された液晶層115bを備えている。
【0037】
また、回折機能素子3における液晶回折素子150、160は、上述した様に、共通の透明基板111bと夫々透明基板111a、111c上に、ITO(インジウム錫酸化物)により形成された透明電極113a〜113dと配向処理が施された有機系ポリイミドからなる配向膜112a〜112dを有する。
【0038】
なお、この液晶回折素子150、160の液晶層115a、115bの液晶材料には、ポジ型の液晶を用いている。さらに、各配向膜112a〜112dの配向方向は、ホモジニアス配向とするのがよい。
【0039】
さらに、この液晶開口制限素子120の液晶層115aは、上述したポジ型の液晶材料に代えて、ネガ型の液晶材料を用いても良い。また、この有機材料からなる配向膜に代えて、無機配向膜を用い、この無機配向膜と液晶材料との組み合わせにより、ホメオトロピック配向としてもよい。
【0040】
次に、液晶回折素子150、160内の回折格子からなる透明電極113a、113cについて図2(a)(b)を用いて説明する。
【0041】
液晶回折素子150内の回折パターンは、ITOをパターニングすることにより、第1の光ディスク11の信号記録面11dのトラックピッチと、対物レンズ7の開口数に対応した回折格子からなる透明電極113a(以下、回折格子113aとする。)を作製することができる。また、液晶回折素子160内の回折パターンは、液晶回折素子150内に作製した回折格子113aの回折方向と平行な状態で、液晶回折素子150内の回折格子113aの作製方法と同様の方法により、第2の光ディスク12の信号記録面12dのトラックピッチと対物レンズ7の開口数に対応した回折格子からなる透明電極113c(以下、回折格子113cとする。)を作製することができる。なお、これら回折格子113a、113cと対向する透明電極113b、113dは、ともにベタ電極となっている。さらに、対物レンズ7の開口数は、開口制限手段5により、第1、第2の光ディスク11
、12の信号記録面11d、12dに合わせる構成としている。
【0042】
この様に回折機能素子3を構成し、回折機能素子3へ入力する液晶駆動信号15(図1参照)を制御することにより、回折機能素子3は、図3に示す様に、第1の光ディスク11または第2の光ディスク12に対して、トラックピッチの異なる夫々の光ディスク毎に三本の光ビームを形成し、第1の光ディスク11に対応したメインビーム102a、サブビーム102b、102c、および第2の光ディスク12に対応したメインビーム103a、サブビーム103b、103cを任意に生成することができる。
【0043】
なお、この回折機能素子3は、往路では、第1、第2の光ディスク11、12を判別し、第1、第2の光ディスク11、12の信号記録面11d、12d上のトラックピッチに合わせて夫々の液晶層が駆動される。
【0044】
次に、液晶回折素子150、160から出射される三本の光ビームは、液晶回折素子150、160内の回折格子113a、113cの設計パラメータである格子定数142a、142bにより、三本の光ビームの中のメインビームとサブビームの間に、ある所定の回折角度140a、140bを付けて出射させることになる。この格子定数142a、142bの設定についての説明は、後述する。
【0045】
そして、図1に示す様に、回折機能素子3を出射した往路光束102、103は、それぞれ第1の光ディスク11の信号記録面11dと第2の光ディスク12の信号記録面12dに集光し、第1、第2の光ディスク11、12を反射した復路光束104、105となって、受光素子9へ導かれる。
【0046】
ここで、第1、第2の光ディスク11、12のトラックに追随して対物レンズ7を動作(フォーカシング動作)させるために、受光素子9から発せられる補正信号19を、アクチュエータ制御部20により受けて、アクチュエータ駆動信号21を発し、アクチュエータによって対物レンズ7を駆動する。さらに、受光素子9からの光量信号16を受けて、マイコン17により駆動信号18で開口制限手段5を駆動させることで、現在セットされている光ディスクの種類を判別して開口の制限を行って、第1または第2の光ディスク11、12に合わせた対物レンズ7の開口数を切換える。このとき、回折機能素子3の液晶回折素子150と160は、開口制限手段5と同期しているマイコン14で制御されている為、光ディスク11、12に合ったどちらかの液晶回折素子の回折機能しか発現しない。
【0047】
次に、前述した液晶回折素子における回折格子の設計パラメータである回折定数の設定手法について説明する。図4は、本発明に係る光ディスクのトラックに対する光束の作用とトラックに対する作用を示す図面である。
【0048】
前述した様に、液晶回折素子150内に形成された回折格子113a(図3参照)は、第1の光ディスク11の信号記録面11a上のトラックに、往路光束102を集光する対物レンズ7の開口数を考慮した設計となっている。
【0049】
また、液晶回折素子160内に形成された回折格子113cは、第2の光ディスク12の信号記録面上のトラックに、往路光束103を集光する開口制限手段5により、光ディスク12に合わせた開口に制限された、対物レンズ7の開口数を考慮した設計となっている。
【0050】
ここで、上記した対物レンズ7は、ガラス又はプラスチックからなり、第1の光ディスク11に対応したものであり、開口数は0.85である。この時、開口制限手段5は駆動
しない。そして、この対物レンズ7は、レーザ光源1から出射された光ビームを第1の光ディスク11上に球面収差が発生しない様に集光させる。
【0051】
そこで、図3(a)、図4(a)左図に示す様に、液晶回折素子150内の回折格子113aにより形成された三本の往路光束のメインビーム102aと、サブビーム102b、102cは、格子定数142aで設定した回折角度140aに変えられて、図4(b)左図に示す、トラックピッチ40に設定された、第1の光ディスク11上のトラックに集光するメインビームスポット11aと、サブビームスポット11b、11cの間隔を変化させる。
【0052】
また、上記した対物レンズ7は、第2の光ディスク12に対応させる為に、開口制限手段5で開口を切替えることにより、開口数が0.65となる。そして、この対物レンズ7は、レーザ光源1から出射された光ビームを第1の光ディスク12上に球面収差が発生しない様に集光させる。
【0053】
そこで、図3(b)、図4(a)右図に示す様に、液晶回折素子160内の回折格子113cにより形成された三本のメインビーム103aと、サブビーム103b、103cは、格子定数142bで設定した回折角度140bに変えられて、開口制限素子5により開口を切り替えられた開口数0.65の対物レンズに入射する。この回折角度140bが変わると、開口数0.65の対物レンズ7は、入射角度によって、三本の光ビームの光路を変化させ、図4(b)右図に示す、トラックピッチ50に設定された、第2の光ディスク12上のトラックに集光するメインビームスポット12aと、サブビームスポット12b、12cの間隔を変化させる。
【0054】
この様に、第1の光ディスク11上のトラックピッチ40と、第2の光ディスク12上のトラックピッチ50と、開口制限手段5により夫々の光ディスクに対応した対物レンズ7の開口数に合わせ、夫々の開口数に合わせた格子定数142a、142bを設計する。そして、前述した2つの液晶回折素子150、160を制御することで、三本の光ビームの回折角度140a、140bを変化させ、トラックピッチの異なる光ディスクのトラックへの位置合わせを可能とする。
【0055】
以上のように、本実施の形態による回折機能素子3によれば、レーザ光源1からの出射光をトラックピッチの異なる第1、第2の光ディスク11、12のトラックへ正確に位置合わせが可能となる為、基本的には、トラッキング補正をするにあたってアクチュエータを動作させる必要がなくなる。また、これにより正確なトラッキング補正ができるので、光ディスクの高い読み取り精度、および高い書き込み精度を有する光ピックアップ装置となる。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施の形態2の光ピックアップ装置に係る、液晶開口制限素子の構成を図5を用いて説明する。
【0057】
この実施の形態2に係る液晶開口制限素子120は、図5で示すように、円環形状の透明電極を有した透明基板121aと透明基板121b、およびシール材124aを介して両透明基板121a、121bに挟持された液晶層125aを備えている。
【0058】
また、液晶開口制限素子120は、上述した様に、透明基板121aと121b上に、ITO(インジウム錫酸化物)により形成された透明電極123a、123bと配向処理が施された有機系ポリイミドからなる配向膜122a、122bを有する。この時、ITOにより形成された透明電極123aは、パターニングが施された回折領域123と電極
が形成されていない透過領域126に分割して形成される。これにより、電圧が印加されない場合、光ビームは全透過する。一方、透明電極123aに電圧が印加された場合は、パターニングされた遮光領域123のみの液晶が駆動し、遮光領域123に入射した光ビームは、回折によって光路から外れる。そして、液晶の駆動していない透過領域126を通過した光ビームのみ対物レンズに出射される。この様にして、液晶開口制限素子120は、液晶を駆動しない場合は、対物レンズの開口数を0.85とし、液晶を駆動させた場合は、対物レンズの開口数を0.65とすることができる。
【0059】
この液晶開口制限素子120の液晶層115aは、液晶材料にポジ型の液晶を用いて形成されている。また、配向膜122a、122bは、ポリイミドからなる有機配向膜を用いて、この有機配向膜と液晶材料との組み合わせにより、ホモジニアス配向に設定するのがよい。
【0060】
さらに、この液晶開口制限素子120の液晶層115aは、上述したポジ型の液晶材料に代えて、ネガ型の液晶材料を用いても良い。さらに、この有機材料からなる配向膜に代えて、無機配向膜を用い、この無機配向膜と液晶材料との組み合わせにより、ホメオトロピック配向としてもよい。
【0061】
また、開口制限素子120は、受光素子9からの光量信号16を受けて、マイコン17により駆動信号18で駆動することにより、現在セットされている光ディスクの種類を判別して開口の制限を行って、第1または第2の光ディスク11、12に合わせた対物レンズ7の開口数を切換える。このとき、回折機能素子3の液晶回折素子150と160は、開口制限手段5と同期しているマイコン14で制御されている為、第1、第2の光ディスク11、12に合ったどちらかの液晶回折素子の回折機能しか発現しない。
【0062】
上記したようにすることで、実施例1に示した開口制限手段5と同様に、第1の光ディスク11を用いる場合は、開口制限素子120の液晶を駆動させずに全透過させ、対物レンズ7の開口数を0.85とする。また、第2の光ディスク12を用いる場合は、開口制限素子120の液晶を駆動させることにより、遮光領域123で光ビームを回折し、透過領域126のみの光ビームで対物レンズ7の開口数を0.65とすることが出来る。
【0063】
このように、この実施の形態2に係る開口制限素子120は、実施例1に示したと同様に、トラッキング補正時にアクチュエータを動作させる必要がなくなるだけでなく、実施例1に示した開口制限手段5のように、駆動時に光路上を外れることが無い為、設置されている他の機能素子と一体化することが出来る。例えば、λ/4板と一体化させることにより、部品点数の削減に繋がる。さらに、従来の構成における部品点数の増加を抑えることにより、小型化を可能とした光ピックアップ装置とすることが出来る。
【実施例3】
【0064】
次に、本発明の実施の形態3の光ピックアップ装置に係る、液晶開口制限素子と回折機能素子の構成について図6を用いて説明する。図6は、本発明に係る回折機能素子の他の構成例を示す図面である。なお、この実施の形態3の説明において、上述の実施の形態1、2に示した開口制限素子と回折機能素子との同じ動作を示す箇所には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
この実施の形態3に係る回折機能素子300は、図6で示すように、開口制限素子120と、液晶回折素子150、160を組み合わせて、一体の液晶素子として構成としている。この開口制限素子120は、実施の形態1に係る液晶回折素子150の透明基板111cの液晶層115aとは反対側の面に、ITO(インジウム錫酸化物)により形成された無電極領域とパターニングされた回折領域を有した透明電極123aを配し、対向面に
ITOからなる透明電極123bを有した透明基板121b、およびシール材124aを介して透明基板111c、121bによって挟持された液晶層125aを備える。これにより、開口制限素子120と、液晶回折素子150、160を一体とした回折機能素子300とすることができる。
【0066】
このように、この実施の形態3に係る回折機能素子300は、実施例1、2に示したと同様に、トラッキング補正時にアクチュエータを動作させる必要がなくなるだけでなく、従来の構成における部品点数の増加を抑えることにより、小型化且つレーザ光源1からの往路光束101の光軸に対して、容易な光軸調整を可能とした光ピックアップ装置とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の光ピックアップ装置の構成を示す図面である。(実施例1)
【図2】本発明に係る回折機能素子の構成を示す図面である。(実施例1)
【図3】本発明に係る回折機能素子の作用を示す図面である。(実施例1)
【図4】本発明に係る光ディスクのトラックに対する光束の作用とトラックに対する作用を示す図面である。(実施例1)
【図5】本発明に係る開口制限素子の構成を示す図面である。(実施例2)
【図6】本発明に係る回折機能素子の構成を示す図面である。(実施例3)
【図7】従来の光ピックアップ装置の構成を示す図面である。
【図8】従来の光ピックアップ装置における光ディスクのトラックに対する光束の作用を示す図面である。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザ光源
2 コリメートレンズ
3 回折機能素子
4 偏光ビームスプリッタ
5 開口制限手段
6 λ/4板
7 対物レンズ
9 受光素子
11 第1の光ディスク
12 第2の光ディスク
11a、12a メインビームスポット
11b、11c、12b、12c サブビームスポット
11d、12d 信号記録面
13、16 光量信号
14、17 マイコン
15 液晶駆動信号
18 駆動信号
19 補正信号
20 アクチュエータ制御部
21 アクチュエータ駆動信号
31 アクチュエータ
40、50 トラックピッチ
100 光ピックアップ装置
101〜103 往路光束
102a、103a メインビーム
102b、102c、103b、103c サブビーム
104〜107 復路光束
111a〜111c 透明基板
112a〜112d 配向膜
113a〜113d 透明電極
114a〜114b シール材
115a〜115b 液晶層
120 液晶開口制限素子
121a、121b 透明基板
122a、122b 配向膜
123 遮光領域
123a、123b 透明電極
124a シール材
125a 液晶層
126 透過領域
140a、140b 回折角度
142a、142b 格子定数
150、160 液晶回折素子
300 回折機能素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの往路光を出射するレーザ光源と、
前記往路光と、第1の光ディスクまたは当該第1の光ディスクとはトラックピッチが異なる第2の光ディスクから反射される復路光とに分離するための偏光ビームスプリッタと、
前記レーザ光源と前記偏光ビームスプリッタとの間に配設し、前記往路光を3ビームに分割するための回折格子と、
前記偏光ビームスプリッタから出射される往路光を、前記第1、第2の光ディスクに集光する対物レンズと、
前記往路光を開口制限するための開口制限手段と、を備え、
前記回折格子は、前記第1の光ディスクのトラックピッチと、前記第1の光ディスクに対応した対物レンズ開口数を考慮して、回折ピッチが設定された第1の回折格子と、当該第1の回折格子の回折方向と平行して設けられ、前記第2の光ディスクのトラックピッチと、前記第2の光ディスクに対応した対物レンズ開口数を考慮して、回折ピッチが設定された第2の回折格子とが、前記往路光の光軸方向に重ねて配置されて構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記第1と第2の回折素子は、2枚の透明基板の間に液晶層を挟持する液晶回折素子である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1と第2の回折素子は、一体にして形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記開口制限手段は、機械的に開口制限を行う機構を備えた手段である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記開口制限手段は、開口制限する領域に液晶を配し、当該液晶を動作することにより開口制限を行う液晶開口制限素子である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記第1と第2の回折素子に、前記液晶開口制限素子が一体化して形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−199702(P2009−199702A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42929(P2008−42929)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】