光ファイバケーブル、光ファイバケーブルの分岐方法
【課題】 保護層にテンションメンバ等が埋設される場合であっても分岐作業が容易な光ファイバケーブル等を提供する。
【解決手段】 光ファイバケーブル１の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線３が配置される。光ファイバ心線３の外周には、光ファイバ保持部５が設けられる。光ファイバ保持部５は、ポリプロピレンヤーンなどの繊維等であり、光ファイバ心線３を保持する部位である。光ファイバ保持部５の外周には保護層１１が設けられる。保護層１１は、複数の分割片１１ａ、１１ｂに分割されており、分割片同士が分割部１２で組み合わさった状態で略筒状の形状となる。保護層１１（一方の分割片１１ａ）の内部にはテンションメンバ９が埋設される。保護層１１の外周には、シース７が設けられる。
【解決手段】 光ファイバケーブル１の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線３が配置される。光ファイバ心線３の外周には、光ファイバ保持部５が設けられる。光ファイバ保持部５は、ポリプロピレンヤーンなどの繊維等であり、光ファイバ心線３を保持する部位である。光ファイバ保持部５の外周には保護層１１が設けられる。保護層１１は、複数の分割片１１ａ、１１ｂに分割されており、分割片同士が分割部１２で組み合わさった状態で略筒状の形状となる。保護層１１（一方の分割片１１ａ）の内部にはテンションメンバ９が埋設される。保護層１１の外周には、シース７が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、光ファイバケーブルは、光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。使用時には、このような光ファイバケーブルが分岐され、複数の住居等に配線される。
【０００３】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、光テープ心線を複数枚設置可能な溝が複数外周に形成されるスロットロッドを用い、スロットロッドの中心にテンションメンバを配置したスロット型の光ファイバケーブルがある（特許文献１）。
【０００４】
また、複数の光ファイバ心線を収納したルースチューブを複数配置し、中心にテンションメンバを配置したルース型の光ファイバケーブルがある（特許文献２）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平８−２６２２９４号公報
【特許文献２】特開２００９−８６６３７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、従来の略円断面形状の光ファイバケーブルに対し、内部の光ファイバ心線を分岐させる場合には、外部のシースを除去する必要がある。シースの除去は、ニッパやカッタ等が用いられるが、作業が危険であり、また、内部の心線を傷つける恐れがある。
【０００７】
一方、略円断面形状の光ファイバケーブルのシースを除去する工具として、外周から周方向に所定の深さでシースに刃を入れ、シースを切断するものがある（例えば古河電気工業社製「Ｆｉｎｅシースストリッパ」（以下単に「シースストリッパ」と称する））。このようなシースストリッパを光ファイバケーブルの外周にセットし、光ファイバケーブルの外周を周方向に一周させることで、シースに周方向の切り込みを入れることができるものである。したがって、作業が安全である。
【０００８】
しかしながら、特許文献１、２に示すような、中心にテンションメンバを有するケーブルに対して「Ｆｉｎｅシースストリッパ」のような冶具を用いると、刃の切れ込み代を知ることが困難である。また、シース断面の一部にテンションメンバなどが配置される場合（セントラルコアケーブル）には、周方向にわたって切り込みを入れることができない。このため、内部から光ファイバ心線を取り出す際には、前述のニッパやカッタ等を用いる必要がある。
【０００９】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、分岐作業が容易な光ファイバケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前述した目的を達するために第１の発明は、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する保護層と、前記保護層の外周に形成されるシースとを具備する光ファイバケーブルの断面において、前記保護層にはテンションメンバが埋設されており、前記保護層は、長手方向に連続して分割部を有し、前記保護層が断面において複数に分割可能であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【００１１】
前記分割部は、断面において少なくとも２箇所に形成され、任意の２箇所の前記分割部が互いに平行ではなく、角度をもって形成されることが望ましい。前記分割部には、断面において凹凸形状が形成され、複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片同士が、互いの前記凹凸形状で噛み合わさることが可能であってもよい。
【００１２】
複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片は、テンションメンバが設けられる分割片と、テンションメンバが設けられない分割片とに分割可能であってもよい。
【００１３】
前記保護層は、前記シースを構成する樹脂の融点よりも高い融点の樹脂で構成されることが望ましい。前記保護層と前記シースとの間に、剥離部材が設けられてもよい。
【００１４】
前記保護層の外周には、前記シースを構成する樹脂の融点以下の融点を有する樹脂テープが巻きつけられ、前記樹脂テープと前記シースとが融着して一体化されていてもよい。前記光ファイバ心線は、前記保護層の内部で、保持部材によって保持されてもよい。
【００１５】
第１の発明によれば、保護層の内部にテンションメンバが埋設されているため、外周から前述のシースストリッパを用いて切断を行っても、テンションメンバの深さまでしかシース外面から周方向の切り込みを入れることができず、保護層内部の光ファイバ心線を傷つけることがない。また、保護層は断面において複数に分割されているため、外部のシースを剥離すれば、容易に保護層の分割部から、内部の光ファイ心線を取り出すことができる。
【００１６】
特に、分割部に凹凸形状が形成されてこれらが噛み合わせることで、当該光ファイバケーブルが曲げられた際にも、分割部同士の間のずれ等を防止することができ、これによる分割部の口あき等を防止することができる。したがって、分割部に内部の光ファイバ心線等が挟まることがない。
【００１７】
また、複数に分割される分割片の一部にテンションメンバが設けられ、他方にテンションメンバが設けられないように分割することで、テンションメンバの設けられない側の分割片を容易に変形させることができ、また、この分割片を部分的に切除することも可能である。したがって、光ファイバ心線の取り出し性に優れる。
【００１８】
また、保護層を構成する樹脂の融点がシース融点よりも高ければ、シースの押出被覆の際に、シースと保護層とが融着することがなく、シースの剥離が容易である。また、保護層とシースとの間に、樹脂フィルム等の剥離部材を設けることで、シースと保護層との剥離を容易にすることが可能である。
【００１９】
また、保護層の外周に樹脂テープが設けられることで、光ファイバケーブルの製造時に、保護層が樹脂テープによって押さえられ、分割片がバラけることがない。また、樹脂テープがシースと融着することで、解体作業性にも優れる。
【００２０】
また、保護層の内部に保持部材が設けられることで、光ファイバ心線が分割部に挟まることを防止することができる。
【００２１】
第２の発明は、第１の発明にかかる光ファイバケーブルを用い、前記光ファイバケーブルの外周側から前記シースの周方向に刃の先端が前記テンションメンバに接触する深さまで切れ込みを入れ、当該切り込み深さと略同一切り込み深さとなるように、前記シースを前記光ファイバの長手方向に沿って切れ込みを入れることで、前記保護層を露出させ、前記保護層を分割部で分割させ、分割部から内部の光ファイバ心線を取り出して分岐させることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
【００２２】
光ファイバ心線を取り出し後、前記保護層には、分岐された前記光ファイバ心線が貫通可能な孔が形成され、分岐された光ファイバ心線を前記孔を通して外部に分岐後、分岐部全体を防水処理してもよい。
【００２３】
第２の発明によれば、保護層の内部側に刃が入ることがないため、内部の光ファイバ心線が刃で損傷を受けることがなく、容易に分岐を行うことができる。また、取り出した光ファイバ心線を確実に分岐させることができる。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、保護層にテンションメンバ等が埋設される場合であっても分岐作業が容易な光ファイバケーブル等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】光ファイバケーブル１の断面図。
【図２】光ファイバケーブル１に刃１９を入れた状態を示す図。
【図３】切れ込み２１ａ、２１ｂが設けられた光ファイバケーブル１を示す図。
【図４】分割部１２を分割した状態を示す図。
【図５】保護層１１に孔２３を設けて分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図。
【図６】保護層１１に通線部材２５を設けて分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図。
【図７】（ａ）は保護層１１の外周に樹脂テープ２７を巻き付けた状態を示す図、（ｂ）は保護層１１上にシース７を被覆した状態を示す図、（ｃ）はシースの一部を除去した状態を示す図。
【図８】（ａ）は光ファイバケーブル１ａの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｂの断面図。
【図９】（ａ）は光ファイバケーブル１ｃの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｄの断面図。
【図１０】（ａ）は光ファイバケーブル１ｅの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｆの断面図。
【図１１】切れ込み２１ｂの部位の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図１は、光ファイバケーブル１の断面図である。光ファイバケーブル１は、光ファイバ心線３、光ファイバ保持部５、シース７、テンションメンバ９、保護層１１等により構成される。
【００２７】
光ファイバケーブル１の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線３が配置される。光ファイバ心線３は、単心ファイバや、単心ファイバをバンドルしたユニット等であってもよく、テープ心線であっても良い。また、後述する保護層内部に単心ファイバやテープ心線等の光ファイバ心線を入れる際に、さらにフィルムやテープ部材（不織布、ＰＥＴ等のテープ状のもの）によって光ファイバ心線全体を縦添え巻きして一体化してもよい。その他に、所定間隔でＵＶ材等により光ファイバ心線３を固定してもよく、また、吸水性の介在や吸水パウダーを混入させてもよく、さらに、テープ部材自体を吸水テープ部材とすることもできる。
【００２８】
光ファイバ心線３の外周には必要に応じて、光ファイバ保持部５が設けられる。光ファイバ保持部５は、ポリプロピレンヤーンなどの繊維やＵＶ樹脂等で構成され、光ファイバ心線３を保持する部位である。なお、光ファイバ保持部５は、単に光ファイバ心線３の外周に配置されているのみであり、容易に除去することが可能である。
【００２９】
光ファイバ保持部５の外周には保護層１１が設けられる。保護層１１は例えば高密度ポリエチレン等の樹脂製である。保護層１１は、複数（図では分割片１１ａ、１１ｂの２つ）に分割されており、分割片同士が分割部１２で組み合わさった状態で略筒状の形状となる。なお、分割片１１ｂは分割片１１ａに対して小さい（保護層１１の断面において、全体の１／３程度）。また、断面において、２箇所に形成される分割部１２は、互いに平行ではなく、角度をもって形成される。すなわち、分割部１２は、一つの直線上に形成されず、異なる角度（位置）で構成される。このようにすることで、外部から力が加わった際に、分割部１２で分割片同士が開く方向に変形することを防止することができる。したがって、分割片同士の開いた部位に内部のファイバが挟まることがない。
これに対し、仮に分割部１２が一直線上に形成されると（平行に形成されると）、当該直線方向に力が加わった際に、分割部が開く方向に分割片が変形する（またはずれる）恐れがある。したがって、分割部１２は互いに平行ではなく角度を有することが望ましい。
なお、図１に示すように、分割部１２が山形（断面における分割部の延長方向がケーブルの中心方向に向かない方向）に角度を有することが望ましい。例えば図１の左右方向または上下方向に荷重をかけると、分割片１１ａの開口部が内側に閉じる方向に変形する。このため、分割部１２に隙間が生じにくい。一方、分割部１２が逆方向の角度で形成される場合（ケーブル中心から放射状に向けて分割部が形成される場合）には、荷重を受けた際に、一方の分割片が内部に押し込まれる方向に分割片が変形する。したがって、分割部１２は、図に示すように、山形に形成されることが望ましい。
【００３０】
保護層１１（一方の分割片１１ａ）の内部にはテンションメンバ９が埋設される。すなわち、テンションメンバ９は他方の分割片１１ｂには設けられない。したがって、複数の分割片の内、テンションメンバ９が設けられる分割片と設けられない分割片とに区分することができる。なお、テンションメンバ９は、光ファイバケーブル１の張力を受け持つ部位である。テンションメンバ９としては、例えば鋼線、モノフィラメント、アラミド繊維等による繊維補強プラスチック等が使用できる。また、テンションメンバ９は、保護層１１およびシース７に対して十分に硬い部材である。
【００３１】
保護層１１の外周には、シース７が設けられる。シース７としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂が使用できる。シース７のテンションメンバ９に対応する外表面には、マーク部１３が設けられる。マーク部１３は、例えば着色された樹脂で形成される。なお、マーク部１３は、外周からテンションメンバ９の位置が判別できれば、凹部や凸部で形成してもよい。
【００３２】
次に、本発明にかかる光ファイバケーブル１を用いた分岐方法について説明する。まず、図２に示すように、光ファイバケーブル１の外周に工具１７により切り込みを入れる。工具１７は、前述したシースストリッパを用いることができる。すなわち、工具１７は、刃１９の出代を調整可能であるとともに、所定量の刃の出代を保持したまま、シース７の外周に対して周方向に容易に当該刃の出代に応じた深さの切り込みを入れることができる。
【００３３】
図２は、刃１９の出代をＢとしてシース７の外周を一周させることで（図中矢印Ａ方向）、シース７に所定深さ（Ｂ）の切り込みを入れる例を示す。なお、切り込み深さの設定は、以下のように行う。まず、工具１７からわずかに刃１９を出して、シース７の外周に切り込みを入れる。全周に対して切り込みが入ったら、刃１９をさらに出して再度シース７全周に切り込みを入れる。以上の作業を、刃１９の先端がテンションメンバ９に接触するまで繰り返す。
【００３４】
なお、テンションメンバ９の位置は、マーク部１３によって外部より視認可能であるため、マーク部１３の位置でテンションメンバ９に刃１９の先端が接触するように刃の出代を調整した後、全周に渡って切り込みを入れてもよい。いずれにしても、刃１９の先端がテンションメンバ９に接触すると、それ以上深くには刃１９が入らない。このため、切り込み深さＢは、概ね、テンションメンバ９の配置深さとなる。
【００３５】
図３は、前述の方法でシース７の外周に周方向の切り込み２１ａを入れた状態を示す図である。切れ込み２１ａは、例えば、分岐作業を行う範囲の両端に２箇所に設けてもよい。
【００３６】
次に、図に示すように、光ファイバケーブル１の長手方向に切れ込み２１ｂを設ける。切れ込み２１ｂの切れ込み位置は、例えば、シース７の外周のマーク部１３位置である。切れ込み２１ｂは、前述した切れ込み２１ａを形成する際に用いた工具１７をそのまま用いて形成する。すなわち、切れ込み２１ｂの切れ込み深さは、テンションメンバ９の配置深さであり、図２における深さＢとほぼ一致する。
【００３７】
光ファイバケーブル１の両側部のそれぞれに切れ込み２１ｂを設けることで、図４（ａ）に示すように、シース７を切除することができる。この状態で、光ファイバケーブル１を曲げるなどすることで、露出した保護層１１の一部に口あけ部を形成することができる。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂを分割部１２で分離させて隙間を形成することができる。この隙間から、内部の光ファイバ心線３を取り出すことで光ファイバ心線を分岐させることができる。
【００３８】
なお、シース７を完全に切除しなくても、図４（ｂ）に示すように、切れ込み２１ａを一か所として、シース７を剥離させてもよい。この場合でも、露出した保護層１１の分割部１２に隙間を形成することで、内部の光ファイバ心線３を取り出すことができる。なお、分割片１１ｂにはテンションメンバ９が設けられないため、より変形が容易である。このため、分割片１１ｂ側に光ファイバケーブル１を多少曲げることで、容易に隙間を形成することができる。
【００３９】
図５は、分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図である。図５（ａ）に示すように、分割片１１ｂの一部には孔２３が設けられる。なお、孔２３は保護層１１にあらかじめ形成されていてもよい。分岐光ファイバ３ａは孔２３から外部に取り出され、保護層１１（分割片１１ａ、１１ｂ）は分割部で一体化されて筒状に戻される。さらに、切除したシース７を戻すか、または他の方法で分岐部の防水を施すことにより、光ファイバの分岐が完了する。
【００４０】
なお、図５（ｂ）に示すように、分割片１１ｂの一部を一度切除して、この部位で分岐作業を行った後、当該切除された分割片１１ｃに設けられた孔２３から分岐光ファイバ３ａを取り出してもよい。分割片１１ｂにはテンションメンバが設けられないため、容易に切除することが可能である。
【００４１】
また、図６に示すように、分割片１１ａ、１１ｂの間（分割部１２）に別途通線部材２５を挟み込んで、内部の分岐光ファイバ３ａを取り出してもよい。なお、図６（ｂ）は図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００４２】
通線部材２５は、例えば２分割されたＬ字状の部材であり、一部には切欠きが形成される。Ｌ字状部材を組み合わせることで、略Ｔ字状断面の棒状部材となり、切欠き部同士が付合わさることで孔２３が形成される。
【００４３】
孔２３より内部の分岐光ファイバ３ａを取り出した後、通線部材２５とともに、外部に切除したシース７を戻すか、または他の方法で分岐部の防水を施すこともできる。なお、保護層１１から分岐光ファイバ３ａを取り出す手法としては、上述した例には限られない。例えば、保護層１１に対して用いる手法を、保護層１１の一部が除去された状態でシース７に形成してもよい。また、保護層１１およびシース７を除去した状態で、他の部材に当該手法を用い、当該他の部材で分岐部の全体を保護してもよい。
【００４４】
なお、光ファイバケーブル１を以下のように構成してもよい。図７は、光ファイバケーブル１の製造方法を示す一例である。まず、図７（ａ）に示すように、あらかじめ複数の光ファイバ心線を保護層１１内部に配置する。次いで、分割片１１ａ、１１ｂを組み合わせた状態で、樹脂テープ２７で保護層１１の外周を巻き付ける。樹脂テープ２７によって、分割片１１ａ、１１ｂがずれたり分割部１２で隙間が生じたりすることを防止することができる。
【００４５】
この状態から、図７（ｂ）に示すように、外周にシース７を押出被覆する。ここで、樹脂テープ２７を構成する樹脂の融点は、シース７を構成する樹脂の融点以下である。したがって、シース７を押出被覆する際に、樹脂テープ２７は溶融してシース７と融着する。なお、保護層１１を構成する樹脂は、シース７を構成する樹脂の融点よりも高い。このため、シース７と保護層１１とは融着することがない。なお、より確実にシース７と保護層１１との融着を防止するために、保護層１１の外周に剥離部材である樹脂フィルム等を設けてもよい。剥離部材を設けることで、より確実にシース７と保護層１１との融着を防止することができる。なお、上述したように、保護層１１を構成する樹脂の融点は、シース７を構成する樹脂の融点よりも高いことが望ましいが、本発明はこれに限られない。前述した分岐部の形成を行うことが可能であれば、保護層１１を構成する樹脂の融点と、シース７を構成する樹脂の融点とが略同じものであってもよく、この場合、同じ系統の樹脂材量で構成することもできる。
【００４６】
このようにすることで、シース７を剥離した際、シース７と保護層１１とは剥離が容易であるとともに、樹脂テープ２７はシース７と一体化して除去されるため、分割片１１ａ、１１ｂを分離することも容易である。
【００４７】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内部の光ファイバ心線を傷つけることなく、容易に光ファイバケーブル１に対して分岐を行うことができる。この際、保護層１１があらかじめ複数に分割されているため、シース７を除去した後、保護層１１内部から光ファイバ心線を取り出すことが容易である。
【００４８】
また、分割片１１ｂにはテンションメンバ９が設けられないため、分割片１１ａ、１１ｂの分離が容易であるとともに、分割片１１ｂを切除することも可能である。また、分割片１１ａ、１１ｂとの分割部１２が一直線上に形成されないため、光ファイバケーブル１を曲げた際に、分割部１２が開く方向に分割片が変形することがなく、分割部１２で分割片同士が開く方向に変形することを防止することができる。また、光ファイバ保持部５が設けられるため、分割部１２に内部の光ファイバ心線３が挟まることもない。
【００４９】
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図１に示した光ファイバケーブル１と同様の機能を奏する構成については、図１と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【００５０】
図８（ａ）は、光ファイバケーブル１ａを示す断面図である。光ファイバケーブル１ａは、光ファイバケーブル１に対し、分割部１２が断面において一直線上に形成される点で異なる。このように形成しても、例えば前述した樹脂テープ２７等を用いれば、製造時に分割片１１ａ、１１ｂ同士が横方向にずれることを防止することができる。また、保護層１１やケーブルに外部から力が働いた際に、分割部が開いて内部の光ファイバ心線が当該隙間に挟まることを防止するためには、分割部にフィルムやテープを配置してもよく、光ファイバ保持部５により、保護層１１の略中心に光ファイバを保持させてもよい。
【００５１】
図８（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｂを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｂは、光ファイバケーブル１に対して、テンションメンバ９および分割部１２の配置が異なる。光ファイバケーブル１ｂでは、テンションメンバ９が１か所にのみ設けられる。また、分割部１２は、保護層１１を半分に分割するように形成される。このように、分割片１１ａ、１１ｂは必ずしも大きさを変える必要はない。また、分割部１２を光ファイバケーブル１ｂの中心から径方向に向けて形成してもよい。
【００５２】
図９（ａ）は、光ファイバケーブル１ｃを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｃは、光ファイバケーブル１に対して、分割部１２の形態が異なる。光ファイバケーブル１ｃでは、分割部１２が断面において直線で形成されず凹凸形状を有する。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂは分割部１２の凹凸形状が互いに噛み合わさることで筒状となる。このようにすることで、より確実に分割片１１ａ、１１ｂのずれを防止することができ、光ファイバケーブル１ｃに変形させる力が加わった際に、分割部１２に隙間が形成されることをより防止することができる。
【００５３】
図９（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｄを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｄは、光ファイバケーブル１に対して、分割片１１ｂ側にも抗張力体９ａが形成される。このようにすることで、分割片１１ｂ側でも、光ファイバケーブルの張力を保持することが可能である。その際、それぞれの分割片で抗張力体（テンションメンバ）のサイズや材質を変えてもよい。後分岐性能を高める場合には、分割片１１ｂ側の抗張力体は分割片１１ａ側のものよりもサイズが小さいないしは抗張力強度が低いものを用いるとよい。
【００５４】
図１０（ａ）は、光ファイバケーブル１ｅを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｅは、光ファイバケーブル１に対して、分割部１２の態様が異なる。光ファイバケーブル１ｅでは、分割部１２が断面において直線で形成されず凹凸形状を有する。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂは分割部１２の凹凸形状が互いに噛み合わさることで筒状となる。なお、光ファイバケーブル１ｃでは、凹凸形状が分割面に対して三角波形状であったが、ファイバケーブル１ｅでは、保護層１１の筒形状に対して同心円上の分割面が形成される。したがって、分割片同士の接触部が大きく、より確実にずれや分割部の隙間の発生を防止することができる。
【００５５】
図１０（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｆを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｆは、光ファイバケーブル１に対して、保護層１１の筒の内部形状が異なる。すなわち、光ファイバケーブル１ｆは、保護層１１の内部の空間が断面で円形ではなく、略矩形形状である。本発明では、保護層１１の内部形状は任意に設定することができる。
【００５６】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【００５７】
たとえば、上記各実施形態で述べた各構成は、当然にそれぞれを組み合わせることができる。また、分割片は３分割以上としてもよく、各分割片の形状は任意に設定することができる。また、断面におけるテンションメンバ等の配置や形状は図示した例に限られず、本発明の課題を解決可能な範囲で、適宜変更することが可能である。
【００５８】
また、前述の実施形態では、切れ込み２１ｂをケーブルの対角位置に形成したが、本発明はこれに限られない。例えば、図１１（ａ）に示すように、切れ込み２１ｂをケーブル断面において角度をもって形成してもよい。また、シース７を完全に切除しなくても、図１１（ｂ）に示すように、一箇所のみに切れ込み２１ｂを形成してもよい。また。図１１（ｃ）に示すように、切れ込み２１ｂを形成する部位は、必ずしもテンションメンバ９の位置でなくてもよい。
【符号の説明】
【００５９】
１、１ａ、１ｂ、１ｃ、１ｄ、１ｅ、１ｆ………光ファイバケーブル
３………光ファイバ心線
５………光ファイバ保持部
７………シース
９………テンションメンバ
９ａ………抗張力体
１１………保護層
１１ａ、１１ｂ………分割片
１２………分割部
１３………マーク部
１７………工具
１９………刃
２１ａ、２１ｂ………切れ込み
２３………孔
２５………通線部材
２７………樹脂テープ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、光ファイバケーブルは、光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。使用時には、このような光ファイバケーブルが分岐され、複数の住居等に配線される。
【０００３】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、光テープ心線を複数枚設置可能な溝が複数外周に形成されるスロットロッドを用い、スロットロッドの中心にテンションメンバを配置したスロット型の光ファイバケーブルがある（特許文献１）。
【０００４】
また、複数の光ファイバ心線を収納したルースチューブを複数配置し、中心にテンションメンバを配置したルース型の光ファイバケーブルがある（特許文献２）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平８−２６２２９４号公報
【特許文献２】特開２００９−８６６３７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、従来の略円断面形状の光ファイバケーブルに対し、内部の光ファイバ心線を分岐させる場合には、外部のシースを除去する必要がある。シースの除去は、ニッパやカッタ等が用いられるが、作業が危険であり、また、内部の心線を傷つける恐れがある。
【０００７】
一方、略円断面形状の光ファイバケーブルのシースを除去する工具として、外周から周方向に所定の深さでシースに刃を入れ、シースを切断するものがある（例えば古河電気工業社製「Ｆｉｎｅシースストリッパ」（以下単に「シースストリッパ」と称する））。このようなシースストリッパを光ファイバケーブルの外周にセットし、光ファイバケーブルの外周を周方向に一周させることで、シースに周方向の切り込みを入れることができるものである。したがって、作業が安全である。
【０００８】
しかしながら、特許文献１、２に示すような、中心にテンションメンバを有するケーブルに対して「Ｆｉｎｅシースストリッパ」のような冶具を用いると、刃の切れ込み代を知ることが困難である。また、シース断面の一部にテンションメンバなどが配置される場合（セントラルコアケーブル）には、周方向にわたって切り込みを入れることができない。このため、内部から光ファイバ心線を取り出す際には、前述のニッパやカッタ等を用いる必要がある。
【０００９】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、分岐作業が容易な光ファイバケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前述した目的を達するために第１の発明は、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する保護層と、前記保護層の外周に形成されるシースとを具備する光ファイバケーブルの断面において、前記保護層にはテンションメンバが埋設されており、前記保護層は、長手方向に連続して分割部を有し、前記保護層が断面において複数に分割可能であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【００１１】
前記分割部は、断面において少なくとも２箇所に形成され、任意の２箇所の前記分割部が互いに平行ではなく、角度をもって形成されることが望ましい。前記分割部には、断面において凹凸形状が形成され、複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片同士が、互いの前記凹凸形状で噛み合わさることが可能であってもよい。
【００１２】
複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片は、テンションメンバが設けられる分割片と、テンションメンバが設けられない分割片とに分割可能であってもよい。
【００１３】
前記保護層は、前記シースを構成する樹脂の融点よりも高い融点の樹脂で構成されることが望ましい。前記保護層と前記シースとの間に、剥離部材が設けられてもよい。
【００１４】
前記保護層の外周には、前記シースを構成する樹脂の融点以下の融点を有する樹脂テープが巻きつけられ、前記樹脂テープと前記シースとが融着して一体化されていてもよい。前記光ファイバ心線は、前記保護層の内部で、保持部材によって保持されてもよい。
【００１５】
第１の発明によれば、保護層の内部にテンションメンバが埋設されているため、外周から前述のシースストリッパを用いて切断を行っても、テンションメンバの深さまでしかシース外面から周方向の切り込みを入れることができず、保護層内部の光ファイバ心線を傷つけることがない。また、保護層は断面において複数に分割されているため、外部のシースを剥離すれば、容易に保護層の分割部から、内部の光ファイ心線を取り出すことができる。
【００１６】
特に、分割部に凹凸形状が形成されてこれらが噛み合わせることで、当該光ファイバケーブルが曲げられた際にも、分割部同士の間のずれ等を防止することができ、これによる分割部の口あき等を防止することができる。したがって、分割部に内部の光ファイバ心線等が挟まることがない。
【００１７】
また、複数に分割される分割片の一部にテンションメンバが設けられ、他方にテンションメンバが設けられないように分割することで、テンションメンバの設けられない側の分割片を容易に変形させることができ、また、この分割片を部分的に切除することも可能である。したがって、光ファイバ心線の取り出し性に優れる。
【００１８】
また、保護層を構成する樹脂の融点がシース融点よりも高ければ、シースの押出被覆の際に、シースと保護層とが融着することがなく、シースの剥離が容易である。また、保護層とシースとの間に、樹脂フィルム等の剥離部材を設けることで、シースと保護層との剥離を容易にすることが可能である。
【００１９】
また、保護層の外周に樹脂テープが設けられることで、光ファイバケーブルの製造時に、保護層が樹脂テープによって押さえられ、分割片がバラけることがない。また、樹脂テープがシースと融着することで、解体作業性にも優れる。
【００２０】
また、保護層の内部に保持部材が設けられることで、光ファイバ心線が分割部に挟まることを防止することができる。
【００２１】
第２の発明は、第１の発明にかかる光ファイバケーブルを用い、前記光ファイバケーブルの外周側から前記シースの周方向に刃の先端が前記テンションメンバに接触する深さまで切れ込みを入れ、当該切り込み深さと略同一切り込み深さとなるように、前記シースを前記光ファイバの長手方向に沿って切れ込みを入れることで、前記保護層を露出させ、前記保護層を分割部で分割させ、分割部から内部の光ファイバ心線を取り出して分岐させることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
【００２２】
光ファイバ心線を取り出し後、前記保護層には、分岐された前記光ファイバ心線が貫通可能な孔が形成され、分岐された光ファイバ心線を前記孔を通して外部に分岐後、分岐部全体を防水処理してもよい。
【００２３】
第２の発明によれば、保護層の内部側に刃が入ることがないため、内部の光ファイバ心線が刃で損傷を受けることがなく、容易に分岐を行うことができる。また、取り出した光ファイバ心線を確実に分岐させることができる。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、保護層にテンションメンバ等が埋設される場合であっても分岐作業が容易な光ファイバケーブル等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】光ファイバケーブル１の断面図。
【図２】光ファイバケーブル１に刃１９を入れた状態を示す図。
【図３】切れ込み２１ａ、２１ｂが設けられた光ファイバケーブル１を示す図。
【図４】分割部１２を分割した状態を示す図。
【図５】保護層１１に孔２３を設けて分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図。
【図６】保護層１１に通線部材２５を設けて分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図。
【図７】（ａ）は保護層１１の外周に樹脂テープ２７を巻き付けた状態を示す図、（ｂ）は保護層１１上にシース７を被覆した状態を示す図、（ｃ）はシースの一部を除去した状態を示す図。
【図８】（ａ）は光ファイバケーブル１ａの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｂの断面図。
【図９】（ａ）は光ファイバケーブル１ｃの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｄの断面図。
【図１０】（ａ）は光ファイバケーブル１ｅの断面図、（ｂ）は光ファイバケーブル１ｆの断面図。
【図１１】切れ込み２１ｂの部位の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図１は、光ファイバケーブル１の断面図である。光ファイバケーブル１は、光ファイバ心線３、光ファイバ保持部５、シース７、テンションメンバ９、保護層１１等により構成される。
【００２７】
光ファイバケーブル１の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線３が配置される。光ファイバ心線３は、単心ファイバや、単心ファイバをバンドルしたユニット等であってもよく、テープ心線であっても良い。また、後述する保護層内部に単心ファイバやテープ心線等の光ファイバ心線を入れる際に、さらにフィルムやテープ部材（不織布、ＰＥＴ等のテープ状のもの）によって光ファイバ心線全体を縦添え巻きして一体化してもよい。その他に、所定間隔でＵＶ材等により光ファイバ心線３を固定してもよく、また、吸水性の介在や吸水パウダーを混入させてもよく、さらに、テープ部材自体を吸水テープ部材とすることもできる。
【００２８】
光ファイバ心線３の外周には必要に応じて、光ファイバ保持部５が設けられる。光ファイバ保持部５は、ポリプロピレンヤーンなどの繊維やＵＶ樹脂等で構成され、光ファイバ心線３を保持する部位である。なお、光ファイバ保持部５は、単に光ファイバ心線３の外周に配置されているのみであり、容易に除去することが可能である。
【００２９】
光ファイバ保持部５の外周には保護層１１が設けられる。保護層１１は例えば高密度ポリエチレン等の樹脂製である。保護層１１は、複数（図では分割片１１ａ、１１ｂの２つ）に分割されており、分割片同士が分割部１２で組み合わさった状態で略筒状の形状となる。なお、分割片１１ｂは分割片１１ａに対して小さい（保護層１１の断面において、全体の１／３程度）。また、断面において、２箇所に形成される分割部１２は、互いに平行ではなく、角度をもって形成される。すなわち、分割部１２は、一つの直線上に形成されず、異なる角度（位置）で構成される。このようにすることで、外部から力が加わった際に、分割部１２で分割片同士が開く方向に変形することを防止することができる。したがって、分割片同士の開いた部位に内部のファイバが挟まることがない。
これに対し、仮に分割部１２が一直線上に形成されると（平行に形成されると）、当該直線方向に力が加わった際に、分割部が開く方向に分割片が変形する（またはずれる）恐れがある。したがって、分割部１２は互いに平行ではなく角度を有することが望ましい。
なお、図１に示すように、分割部１２が山形（断面における分割部の延長方向がケーブルの中心方向に向かない方向）に角度を有することが望ましい。例えば図１の左右方向または上下方向に荷重をかけると、分割片１１ａの開口部が内側に閉じる方向に変形する。このため、分割部１２に隙間が生じにくい。一方、分割部１２が逆方向の角度で形成される場合（ケーブル中心から放射状に向けて分割部が形成される場合）には、荷重を受けた際に、一方の分割片が内部に押し込まれる方向に分割片が変形する。したがって、分割部１２は、図に示すように、山形に形成されることが望ましい。
【００３０】
保護層１１（一方の分割片１１ａ）の内部にはテンションメンバ９が埋設される。すなわち、テンションメンバ９は他方の分割片１１ｂには設けられない。したがって、複数の分割片の内、テンションメンバ９が設けられる分割片と設けられない分割片とに区分することができる。なお、テンションメンバ９は、光ファイバケーブル１の張力を受け持つ部位である。テンションメンバ９としては、例えば鋼線、モノフィラメント、アラミド繊維等による繊維補強プラスチック等が使用できる。また、テンションメンバ９は、保護層１１およびシース７に対して十分に硬い部材である。
【００３１】
保護層１１の外周には、シース７が設けられる。シース７としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂が使用できる。シース７のテンションメンバ９に対応する外表面には、マーク部１３が設けられる。マーク部１３は、例えば着色された樹脂で形成される。なお、マーク部１３は、外周からテンションメンバ９の位置が判別できれば、凹部や凸部で形成してもよい。
【００３２】
次に、本発明にかかる光ファイバケーブル１を用いた分岐方法について説明する。まず、図２に示すように、光ファイバケーブル１の外周に工具１７により切り込みを入れる。工具１７は、前述したシースストリッパを用いることができる。すなわち、工具１７は、刃１９の出代を調整可能であるとともに、所定量の刃の出代を保持したまま、シース７の外周に対して周方向に容易に当該刃の出代に応じた深さの切り込みを入れることができる。
【００３３】
図２は、刃１９の出代をＢとしてシース７の外周を一周させることで（図中矢印Ａ方向）、シース７に所定深さ（Ｂ）の切り込みを入れる例を示す。なお、切り込み深さの設定は、以下のように行う。まず、工具１７からわずかに刃１９を出して、シース７の外周に切り込みを入れる。全周に対して切り込みが入ったら、刃１９をさらに出して再度シース７全周に切り込みを入れる。以上の作業を、刃１９の先端がテンションメンバ９に接触するまで繰り返す。
【００３４】
なお、テンションメンバ９の位置は、マーク部１３によって外部より視認可能であるため、マーク部１３の位置でテンションメンバ９に刃１９の先端が接触するように刃の出代を調整した後、全周に渡って切り込みを入れてもよい。いずれにしても、刃１９の先端がテンションメンバ９に接触すると、それ以上深くには刃１９が入らない。このため、切り込み深さＢは、概ね、テンションメンバ９の配置深さとなる。
【００３５】
図３は、前述の方法でシース７の外周に周方向の切り込み２１ａを入れた状態を示す図である。切れ込み２１ａは、例えば、分岐作業を行う範囲の両端に２箇所に設けてもよい。
【００３６】
次に、図に示すように、光ファイバケーブル１の長手方向に切れ込み２１ｂを設ける。切れ込み２１ｂの切れ込み位置は、例えば、シース７の外周のマーク部１３位置である。切れ込み２１ｂは、前述した切れ込み２１ａを形成する際に用いた工具１７をそのまま用いて形成する。すなわち、切れ込み２１ｂの切れ込み深さは、テンションメンバ９の配置深さであり、図２における深さＢとほぼ一致する。
【００３７】
光ファイバケーブル１の両側部のそれぞれに切れ込み２１ｂを設けることで、図４（ａ）に示すように、シース７を切除することができる。この状態で、光ファイバケーブル１を曲げるなどすることで、露出した保護層１１の一部に口あけ部を形成することができる。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂを分割部１２で分離させて隙間を形成することができる。この隙間から、内部の光ファイバ心線３を取り出すことで光ファイバ心線を分岐させることができる。
【００３８】
なお、シース７を完全に切除しなくても、図４（ｂ）に示すように、切れ込み２１ａを一か所として、シース７を剥離させてもよい。この場合でも、露出した保護層１１の分割部１２に隙間を形成することで、内部の光ファイバ心線３を取り出すことができる。なお、分割片１１ｂにはテンションメンバ９が設けられないため、より変形が容易である。このため、分割片１１ｂ側に光ファイバケーブル１を多少曲げることで、容易に隙間を形成することができる。
【００３９】
図５は、分岐光ファイバ３ａを取り出した状態を示す図である。図５（ａ）に示すように、分割片１１ｂの一部には孔２３が設けられる。なお、孔２３は保護層１１にあらかじめ形成されていてもよい。分岐光ファイバ３ａは孔２３から外部に取り出され、保護層１１（分割片１１ａ、１１ｂ）は分割部で一体化されて筒状に戻される。さらに、切除したシース７を戻すか、または他の方法で分岐部の防水を施すことにより、光ファイバの分岐が完了する。
【００４０】
なお、図５（ｂ）に示すように、分割片１１ｂの一部を一度切除して、この部位で分岐作業を行った後、当該切除された分割片１１ｃに設けられた孔２３から分岐光ファイバ３ａを取り出してもよい。分割片１１ｂにはテンションメンバが設けられないため、容易に切除することが可能である。
【００４１】
また、図６に示すように、分割片１１ａ、１１ｂの間（分割部１２）に別途通線部材２５を挟み込んで、内部の分岐光ファイバ３ａを取り出してもよい。なお、図６（ｂ）は図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００４２】
通線部材２５は、例えば２分割されたＬ字状の部材であり、一部には切欠きが形成される。Ｌ字状部材を組み合わせることで、略Ｔ字状断面の棒状部材となり、切欠き部同士が付合わさることで孔２３が形成される。
【００４３】
孔２３より内部の分岐光ファイバ３ａを取り出した後、通線部材２５とともに、外部に切除したシース７を戻すか、または他の方法で分岐部の防水を施すこともできる。なお、保護層１１から分岐光ファイバ３ａを取り出す手法としては、上述した例には限られない。例えば、保護層１１に対して用いる手法を、保護層１１の一部が除去された状態でシース７に形成してもよい。また、保護層１１およびシース７を除去した状態で、他の部材に当該手法を用い、当該他の部材で分岐部の全体を保護してもよい。
【００４４】
なお、光ファイバケーブル１を以下のように構成してもよい。図７は、光ファイバケーブル１の製造方法を示す一例である。まず、図７（ａ）に示すように、あらかじめ複数の光ファイバ心線を保護層１１内部に配置する。次いで、分割片１１ａ、１１ｂを組み合わせた状態で、樹脂テープ２７で保護層１１の外周を巻き付ける。樹脂テープ２７によって、分割片１１ａ、１１ｂがずれたり分割部１２で隙間が生じたりすることを防止することができる。
【００４５】
この状態から、図７（ｂ）に示すように、外周にシース７を押出被覆する。ここで、樹脂テープ２７を構成する樹脂の融点は、シース７を構成する樹脂の融点以下である。したがって、シース７を押出被覆する際に、樹脂テープ２７は溶融してシース７と融着する。なお、保護層１１を構成する樹脂は、シース７を構成する樹脂の融点よりも高い。このため、シース７と保護層１１とは融着することがない。なお、より確実にシース７と保護層１１との融着を防止するために、保護層１１の外周に剥離部材である樹脂フィルム等を設けてもよい。剥離部材を設けることで、より確実にシース７と保護層１１との融着を防止することができる。なお、上述したように、保護層１１を構成する樹脂の融点は、シース７を構成する樹脂の融点よりも高いことが望ましいが、本発明はこれに限られない。前述した分岐部の形成を行うことが可能であれば、保護層１１を構成する樹脂の融点と、シース７を構成する樹脂の融点とが略同じものであってもよく、この場合、同じ系統の樹脂材量で構成することもできる。
【００４６】
このようにすることで、シース７を剥離した際、シース７と保護層１１とは剥離が容易であるとともに、樹脂テープ２７はシース７と一体化して除去されるため、分割片１１ａ、１１ｂを分離することも容易である。
【００４７】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内部の光ファイバ心線を傷つけることなく、容易に光ファイバケーブル１に対して分岐を行うことができる。この際、保護層１１があらかじめ複数に分割されているため、シース７を除去した後、保護層１１内部から光ファイバ心線を取り出すことが容易である。
【００４８】
また、分割片１１ｂにはテンションメンバ９が設けられないため、分割片１１ａ、１１ｂの分離が容易であるとともに、分割片１１ｂを切除することも可能である。また、分割片１１ａ、１１ｂとの分割部１２が一直線上に形成されないため、光ファイバケーブル１を曲げた際に、分割部１２が開く方向に分割片が変形することがなく、分割部１２で分割片同士が開く方向に変形することを防止することができる。また、光ファイバ保持部５が設けられるため、分割部１２に内部の光ファイバ心線３が挟まることもない。
【００４９】
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図１に示した光ファイバケーブル１と同様の機能を奏する構成については、図１と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【００５０】
図８（ａ）は、光ファイバケーブル１ａを示す断面図である。光ファイバケーブル１ａは、光ファイバケーブル１に対し、分割部１２が断面において一直線上に形成される点で異なる。このように形成しても、例えば前述した樹脂テープ２７等を用いれば、製造時に分割片１１ａ、１１ｂ同士が横方向にずれることを防止することができる。また、保護層１１やケーブルに外部から力が働いた際に、分割部が開いて内部の光ファイバ心線が当該隙間に挟まることを防止するためには、分割部にフィルムやテープを配置してもよく、光ファイバ保持部５により、保護層１１の略中心に光ファイバを保持させてもよい。
【００５１】
図８（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｂを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｂは、光ファイバケーブル１に対して、テンションメンバ９および分割部１２の配置が異なる。光ファイバケーブル１ｂでは、テンションメンバ９が１か所にのみ設けられる。また、分割部１２は、保護層１１を半分に分割するように形成される。このように、分割片１１ａ、１１ｂは必ずしも大きさを変える必要はない。また、分割部１２を光ファイバケーブル１ｂの中心から径方向に向けて形成してもよい。
【００５２】
図９（ａ）は、光ファイバケーブル１ｃを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｃは、光ファイバケーブル１に対して、分割部１２の形態が異なる。光ファイバケーブル１ｃでは、分割部１２が断面において直線で形成されず凹凸形状を有する。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂは分割部１２の凹凸形状が互いに噛み合わさることで筒状となる。このようにすることで、より確実に分割片１１ａ、１１ｂのずれを防止することができ、光ファイバケーブル１ｃに変形させる力が加わった際に、分割部１２に隙間が形成されることをより防止することができる。
【００５３】
図９（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｄを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｄは、光ファイバケーブル１に対して、分割片１１ｂ側にも抗張力体９ａが形成される。このようにすることで、分割片１１ｂ側でも、光ファイバケーブルの張力を保持することが可能である。その際、それぞれの分割片で抗張力体（テンションメンバ）のサイズや材質を変えてもよい。後分岐性能を高める場合には、分割片１１ｂ側の抗張力体は分割片１１ａ側のものよりもサイズが小さいないしは抗張力強度が低いものを用いるとよい。
【００５４】
図１０（ａ）は、光ファイバケーブル１ｅを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｅは、光ファイバケーブル１に対して、分割部１２の態様が異なる。光ファイバケーブル１ｅでは、分割部１２が断面において直線で形成されず凹凸形状を有する。すなわち、分割片１１ａ、１１ｂは分割部１２の凹凸形状が互いに噛み合わさることで筒状となる。なお、光ファイバケーブル１ｃでは、凹凸形状が分割面に対して三角波形状であったが、ファイバケーブル１ｅでは、保護層１１の筒形状に対して同心円上の分割面が形成される。したがって、分割片同士の接触部が大きく、より確実にずれや分割部の隙間の発生を防止することができる。
【００５５】
図１０（ｂ）は、光ファイバケーブル１ｆを示す断面図である。光ファイバケーブル１ｆは、光ファイバケーブル１に対して、保護層１１の筒の内部形状が異なる。すなわち、光ファイバケーブル１ｆは、保護層１１の内部の空間が断面で円形ではなく、略矩形形状である。本発明では、保護層１１の内部形状は任意に設定することができる。
【００５６】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【００５７】
たとえば、上記各実施形態で述べた各構成は、当然にそれぞれを組み合わせることができる。また、分割片は３分割以上としてもよく、各分割片の形状は任意に設定することができる。また、断面におけるテンションメンバ等の配置や形状は図示した例に限られず、本発明の課題を解決可能な範囲で、適宜変更することが可能である。
【００５８】
また、前述の実施形態では、切れ込み２１ｂをケーブルの対角位置に形成したが、本発明はこれに限られない。例えば、図１１（ａ）に示すように、切れ込み２１ｂをケーブル断面において角度をもって形成してもよい。また、シース７を完全に切除しなくても、図１１（ｂ）に示すように、一箇所のみに切れ込み２１ｂを形成してもよい。また。図１１（ｃ）に示すように、切れ込み２１ｂを形成する部位は、必ずしもテンションメンバ９の位置でなくてもよい。
【符号の説明】
【００５９】
１、１ａ、１ｂ、１ｃ、１ｄ、１ｅ、１ｆ………光ファイバケーブル
３………光ファイバ心線
５………光ファイバ保持部
７………シース
９………テンションメンバ
９ａ………抗張力体
１１………保護層
１１ａ、１１ｂ………分割片
１２………分割部
１３………マーク部
１７………工具
１９………刃
２１ａ、２１ｂ………切れ込み
２３………孔
２５………通線部材
２７………樹脂テープ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する保護層と、前記保護層の外周に形成されるシースとを具備する光ファイバケーブルの断面において、
前記保護層にはテンションメンバが埋設されており、
前記保護層は、長手方向に連続して分割部を有し、前記保護層が断面において複数に分割可能であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項２】
前記分割部は、断面において少なくとも２箇所に形成され、任意の２箇所の前記分割部が互いに平行ではなく、角度をもって形成されることを特徴とする請求項１記載の光ファイバケーブル。
【請求項３】
前記分割部には、断面において凹凸形状が形成され、複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片同士が、互いの前記凹凸形状で噛み合わさることが可能であることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の光ファイバケーブル。
【請求項４】
複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片は、テンションメンバが設けられる分割片と、テンションメンバが設けられない分割片とに分割可能であることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項５】
前記保護層は、前記シースを構成する樹脂の融点よりも高い融点の樹脂で構成されることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項６】
前記保護層と前記シースとの間に、剥離部材が設けられることを特徴とする請求項１から請求項５のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項７】
前記保護層の外周には、前記シースを構成する樹脂の融点以下の融点を有する樹脂テープが巻きつけられ、前記樹脂テープと前記シースとが融着して一体化されていることを特徴とする請求項１から請求項６のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項８】
前記光ファイバ心線は、前記保護層の内部で、保持部材によって保持されることを特徴とする請求項１から請求項７のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項９】
請求項１から請求項８のいずれかに記載の光ファイバケーブルを用い、
前記光ファイバケーブルの外周側から前記シースの周方向に刃の先端が前記テンションメンバに接触する深さまで切れ込みを入れ、当該切り込み深さと略同一切り込み深さとなるように、前記シースを前記光ファイバケーブルの長手方向に沿って切れ込みを入れることで、前記保護層を露出させ、前記保護層を分割部で分割させ、前記分割部から内部の光ファイバ心線を取り出して分岐させることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項１０】
光ファイバ心線を取り出し後、前記保護層には、分岐された前記光ファイバ心線が貫通可能な孔が形成され、分岐された光ファイバ心線を前記孔を通して外部に分岐後、分岐部全体を防水処理することを特徴とする請求項９記載の光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項１】
光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する保護層と、前記保護層の外周に形成されるシースとを具備する光ファイバケーブルの断面において、
前記保護層にはテンションメンバが埋設されており、
前記保護層は、長手方向に連続して分割部を有し、前記保護層が断面において複数に分割可能であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項２】
前記分割部は、断面において少なくとも２箇所に形成され、任意の２箇所の前記分割部が互いに平行ではなく、角度をもって形成されることを特徴とする請求項１記載の光ファイバケーブル。
【請求項３】
前記分割部には、断面において凹凸形状が形成され、複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片同士が、互いの前記凹凸形状で噛み合わさることが可能であることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の光ファイバケーブル。
【請求項４】
複数に分割されるそれぞれの前記保護層の分割片は、テンションメンバが設けられる分割片と、テンションメンバが設けられない分割片とに分割可能であることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項５】
前記保護層は、前記シースを構成する樹脂の融点よりも高い融点の樹脂で構成されることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項６】
前記保護層と前記シースとの間に、剥離部材が設けられることを特徴とする請求項１から請求項５のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項７】
前記保護層の外周には、前記シースを構成する樹脂の融点以下の融点を有する樹脂テープが巻きつけられ、前記樹脂テープと前記シースとが融着して一体化されていることを特徴とする請求項１から請求項６のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項８】
前記光ファイバ心線は、前記保護層の内部で、保持部材によって保持されることを特徴とする請求項１から請求項７のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項９】
請求項１から請求項８のいずれかに記載の光ファイバケーブルを用い、
前記光ファイバケーブルの外周側から前記シースの周方向に刃の先端が前記テンションメンバに接触する深さまで切れ込みを入れ、当該切り込み深さと略同一切り込み深さとなるように、前記シースを前記光ファイバケーブルの長手方向に沿って切れ込みを入れることで、前記保護層を露出させ、前記保護層を分割部で分割させ、前記分割部から内部の光ファイバ心線を取り出して分岐させることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項１０】
光ファイバ心線を取り出し後、前記保護層には、分岐された前記光ファイバ心線が貫通可能な孔が形成され、分岐された光ファイバ心線を前記孔を通して外部に分岐後、分岐部全体を防水処理することを特徴とする請求項９記載の光ファイバケーブルの分岐方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【公開番号】特開２０１２−２２６０２４（Ｐ２０１２−２２６０２４Ａ）
【公開日】平成２４年１１月１５日（２０１２．１１．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−９１６５４（Ｐ２０１１−９１６５４）
【出願日】平成２３年４月１８日（２０１１．４．１８）
【出願人】（０００００５２９０）古河電気工業株式会社 (4,457)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１１月１５日（２０１２．１１．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年４月１８日（２０１１．４．１８）
【出願人】（０００００５２９０）古河電気工業株式会社 (4,457)
【Ｆターム（参考）】
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