説明

光ファイバケーブル、光ファイバケーブルの分岐部形成方法、および光ファイバケーブルの敷設方法

【課題】 敷設作業性に優れ、設置効率にも優れる光ファイバケーブル等を提供する。
【解決手段】 光ファイバエレメント3(被覆部9)は、略矩形断面形状であり、複数(図では2個)の光ファイバエレメント3が併設される。光ファイバエレメント3の側面同士は連結部11で連結される。連結部11は、被覆部9と同様の樹脂でも良く、または異なる樹脂であってもよい。連結部11の長さLは、隣り合う光ファイバエレメント3(被覆部9)同士の側面同士の距離を指す。連結部11の配置高さhは、被覆部9の下端(下面)から連結部11の下端(下面)までの長さをいう。本発明の連結部11としては、L(mm)≧2h(mm)+0.2mmであることが望ましい。このようにすることで、確実に光ファイバエレメント3同士を折り畳むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷設作業性に優れる光ファイバケーブル等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブルは、光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。使用時には、このような光ファイバケーブルが、複数の住居等に分岐されて配置される。
【0003】
このような光ファイバケーブルとしては、例えば、内部に光ファイバ心線およびテンションメンバが一体で被覆され、被覆部にノッチが形成された光ファイバケーブルがある(特許文献1)。
【0004】
また、内部に光ファイバ心線および抗張力体を直線状に並ぶようにして配置し、外被で一括被覆した複数のエレメントを直線状に連結部で連結した集合光ファイバケーブルがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−12832号公報
【特許文献2】特開2008−70573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の光ファイバケーブルは、複数の住居等への敷設に対して、それぞれの本数分を敷設する必要があり、敷設作業性が悪いという問題がある。特に、光ファイバケーブルを複数本敷設する場合には、光ファイバケーブルを保護管等に挿通する必要があるが、光ファイバケーブル自体の剛性が低いため、光ファイバケーブルの増設時において、保護管への光ファイバケーブルの挿通の際に、光ファイバケーブルが折れ曲がるなどにより挿通作業が困難であるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の光ファイバケーブルは、複数のエレメントが直線状に配列されており、一度に多くの光ファイバを敷設可能であるが、エレメントが直線状に配列されるため、保護管等に挿通する場合には、効率良く保護管内に挿入することができず、集合光ファイバケーブルの外接円に対応する大きさの保護管が必要となる。このため、敷設効率や設置自由度が少ないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2の光ファイバケーブルは、連結部を切断するための引き裂き紐を配設する必要があることから、製造性が悪く、コストおよび製造工数を要するという問題がある。また、引き裂き紐が破断してしまうと、エレメントの分離作業が極めて困難となり、カッター等で切断する際には内部の光心線を傷つけるなどの恐れがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、敷設作業性に優れ、設置効率にも優れる光ファイバケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、を具備し、前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳むことが可能であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0011】
ここで、連結された隣り合う光ファイバエレメント同士を折り畳むことが可能であるとは、それぞれの光ファイバエレメント同士を直線状に配列した状態から、隣り合う光ファイバエレメント同士を略180度の角度で折曲げることが可能であることをいう。
【0012】
前記連結部は、前記光ファイバエレメントの断面において、前記光ファイバエレメントの下端から高さhの位置に設けられ、前記連結部の長さLは、L≧2h+0.2mmであることが望ましい。
【0013】
ここで、光ファイバエレメントの下端とは、光ファイバエレメントの断面において、連結部が設けられる方向に対して垂直な方向を向く部位(垂直な方向の面に対応する部位)であって、連結部に近い側の端部をいう。また、下端から高さhとは、下端から連結部下面までの距離をいう。
【0014】
前記連結部の略中央部に湾曲または屈曲した山部が形成され、前記山部の高さが0.2mm以上5mm以下であってもよい。
【0015】
ここで、山部とは、前述した下端を下方に向けた際に、上方に向かう凸部をいう。
【0016】
前記連結部の略中央部の厚さが0.1mm以上0.8mm以下であってもよい。前記連結部の略中央部に、前記連結部の根本部の厚さよりも薄い凹部が形成されてもよい。
【0017】
前記光ファイバエレメントは略矩形形状であり、前記光ファイバエレメントの断面において、前記光ファイバエレメントの略中央に前記光ファイバ心線が形成され、前記光ファイバ心線の両側方にテンションメンバが設けられ、隣り合う前記光ファイバエレメントのそれぞれの前記テンションメンバが連結方向に並列するように、前記光ファイバエレメントが連結されてもよい。
【0018】
前記連結部の引張弾性率が650MPa以下であることが望ましい。
【0019】
第1の発明によれば、複数の光ファイバエレメントが連結部で連結されており、隣り合う光ファイバエレメントを連結部で折曲げることで折り畳むことが可能であるため、連結された光ファイバエレメントを任意な断面形態とすることができ、よりコンパクトな保護管等への挿通が可能である。
【0020】
また、複数の光ファイバエレメントを折り畳むことで、連結部を露出させることができるため、特殊な引き裂き紐等の配設が不要であり、ニッパ等で容易にかつ安全に切断することができる。
【0021】
また、連結部が、光ファイバエレメントの断面において、光ファイバエレメントの下端から高さhの位置に設けられ、連結部の長さLは、L≧2h+0.2mmであるため、連結部の高さに応じて連結部の長さを変化させれば、任意の部位に連結部を形成することができ、この場合でも、光ファイバエレメントを確実に折り畳むことができる。
【0022】
また、連結部の略中央部に湾曲または屈曲した山部が形成されれば、連結部を折曲げることが容易となり、この場合、山部の高さが0.2mm以上であれば、その効果が大きい。
【0023】
また、連結部の略中央部の厚さが0.1mm以上0.8mm以下であれば、確実に光ファイバエレメント同士を連結できるとともに、連結部の切断が容易である。
【0024】
また、連結部の略中央部に、連結部の根本部の厚さよりも薄い凹部が形成されれば、連結部の折曲げおよび切断がさらに容易となる。
【0025】
また、光ファイバエレメントの断面において、光ファイバ心線の両側方にテンションメンバを設け、光ファイバエレメントが連結された状態で直線状に配置した際、テンションメンバが連結方向に並列するように配置することで、光ファイバケーブルをボビン等に巻きつける際に、巻き厚さの違いにより、テンションメンバに引っ張り等の応力が生じることがない。
【0026】
また、連結部の引張弾性率が650MPa以下であれば、連結部の変形が容易であるため、連結部を折曲げることが容易である。
【0027】
第2の発明は、内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、を具備する光ファイバケーブルを敷設し、前記光ファイバケーブルの分岐形成部において、前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳み、折り曲げられた前記連結部を切断して、前記光ファイバエレメントを分離し、分離された光ファイバエレメントを分岐ケーブルとして敷設することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐部形成方法である。
【0028】
第2の発明によれば、連結部を折り畳むことで連結部を光ファイバケーブルの側方に露出させることができ、容易に連結部を切断することができる。このため、必要な光ファイバエレメントを他の光ファイバエレメントから分離し、敷設方向に分岐部を形成することが容易である。
【0029】
第3の発明は、内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、を具備する光ファイバケーブルを、前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳み、保持部材を用いて前記光ファイバケーブルが折り畳まれた状態で保持し、折り畳まれた状態の前記光ファイバケーブルを管体に挿入することを特徴とする光ファイバケーブルの敷設方法である。
【0030】
第3の発明によれば、連結部を折り畳んだ状態で保持部材によって当該断面状態で保持することにより、光ファイバケーブルの剛性を向上させるとともに、断面を任意の形態で保持するため、保護管等への挿通作業が容易である。また、既設の保護管への光ファイバケーブルの増設時においても、保護管断面における隙間形状に合わせて、光ファイバエレメントを折り畳むことで、光ファイバケーブルの挿通が容易である。このため、光ファイバケーブルの敷設作業が容易である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、敷設作業性に優れ、設置効率にも優れる光ファイバケーブル等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】光ファイバケーブル1の断面図であり、(a)は光ファイバエレメントを折り畳む前の状態、(b)は光ファイバエレメントを折り畳んだ状態を示す図。
【図2】図1(a)のA部拡大図であり、連結部11の拡大断面図。
【図3】光ファイバエレメント同士の分離方法を示す図で、(a)は図1(b)のB部拡大図であり、(b)は光ファイバエレメント同士が分離された状態を示す図。
【図4】(a)は光ファイバケーブル1aの断面図であり、(b)は(a)のE部拡大図。
【図5】(a)は光ファイバケーブル1bの断面図であり、(b)は(a)のF部拡大図であり凹部17aを示す図、(c)は(b)と同様に凹部17bを示す図。
【図6】(a)は光ファイバケーブル20aの断面図であり、(b)は光ファイバケーブル20bの断面図。
【図7】光ファイバケーブル30を折り畳んだ状態を示す断面図。
【図8】折り畳まれた状態の光ファイバケーブル30をダクト31に挿通する状態を示す図。
【図9】光ファイバケーブル40を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図であり、図1(a)は光ファイバエレメントを折り畳む前の状態を示す図、図1(b)は光ファイバエレメントを折り畳んだ状態を示す図である。光ファイバケーブル1は、光ファイバエレメント3、連結部11等により構成される。
【0034】
光ファイバエレメント3は、内部に、光ファイバ心線5およびテンションメンバ7が収容され、外部が被覆部9により被覆されて形成される。光ファイバ心線5は、単心ファイバや、単心ファイバをバンドルしたユニット等であってもよく、単心線を複数並べて一括被覆したテープ心線であっても良い。
【0035】
テンションメンバ7は、光ファイバケーブルの張力を受け持つ部位であり、光ファイバ心線5の両側方に形成される。テンションメンバ7としては、例えば鋼線、アラミド繊維等による繊維補強プラスチック等が使用できる。被覆部9は、光ファイバ心線5およびテンションメンバ7を一体で被覆する。
【0036】
光ファイバエレメント3(被覆部9)は、略矩形断面形状であり、複数(図では2個)の光ファイバエレメント3が併設される。なお、光ファイバエレメント3としては、例えば、内部に外径0.25mmの光ファイバ心線5を設け、両側方に、外径0.5mmのアラミド繊維による繊維強化プラスチック製のテンションメンバ7を設けたものである。
【0037】
光ファイバエレメント3の側面同士は連結部11で連結される。光ファイバエレメント3は、必要に応じて外周部(図中上下面方向)にノッチ等が形成される。連結部11は、被覆部9と同様の樹脂でも良く、または異なる樹脂であってもよい。また、連結部11は、被覆部9と一体で形成されてもよく、または、被覆部9とは別に形成されてもよい。
【0038】
被覆部9および連結部11としては、例えば、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂エラストマーや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムが使用できる。
【0039】
また、前記した熱可塑性樹脂等を不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体で変性した酸変性物等を用いることができる。また、これらの合成樹脂は、その1種類を単独で使用してもよく、また、これらの2種類以上を組み合わせて樹脂組成物として使用するようにしてもよい。
【0040】
なお、被覆部9および連結部11には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、前記した以外の各種の樹脂成分や各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物等からなる難燃剤、滑剤、改質剤、酸化防止剤、光安定剤、プロセスオイル、シリコンオイル、紫外線吸収剤、カーボンブラック、分散剤、顔料、染料、ブロッキング防止剤、架橋剤、架橋助剤等が挙げられ、また、用途によっては、従来から慣用されている赤リン、ポリリン酸化合物、ヒドロキシ錫酸亜鉛、錫酸亜鉛、ほう酸亜鉛、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、酸化アンチモン等の難燃助剤を添加してもよい。
【0041】
また、連結部11を構成する樹脂としては、引張弾性率が650MPa以下であることが望ましい。連結部11の引張弾性率が650MPaを超えると、連結部11の折曲げ作業が困難となるためである。なお、連結部の引張弾性率については、成形後の引張弾性率が既知である合成樹脂を1種類で使用して所望の引張弾性率を得るようにしてもよく、また、2種類以上の合成樹脂を組み合わせて、あるいは、同種のグレードの異なる樹脂を組み合わせて使用して、所望の引張弾性率を得るようにしてもよい。
【0042】
図1(a)に示すように、光ファイバエレメント3が連結部11で連結され、光ファイバエレメント3が一直線上にまっすぐ配列するように設置された状態では、テンションメンバ7は略一直線上に連結方向に並列するように配置される。
【0043】
光ファイバケーブル1は、図1(b)に示すように、連結部11で折曲げることができ、連結部11を折曲げることで、光ファイバエレメント3を折り畳むことができる(図中矢印C方向)。すなわち、光ファイバエレメント3同士を、互いに略180度回転させるように折曲げることができる。
【0044】
光ファイバエレメント3同士を折り畳むことで、光ファイバケーブル1の断面形状を変化させることができる。図1の例では、光ファイバエレメント3の長辺方向に光ファイバエレメント3が並列するように配置した横長の状態(図1(a)の状態)から、光ファイバエレメント3の短辺方向に光ファイバエレメント3が並列するように配置した縦長(または正方形に近い矩形)の状態(図1(b)の状態)へ変化させることができる。
【0045】
なお、図1(b)の状態においては、連結部11は、光ファイバケーブル1の側方に露出する。
【0046】
図2は、連結部11の拡大断面を示す図であり、図1(a)のA部拡大図である。連結部11の配置および形状は、以下のように定義される。連結部11の長さLは、隣り合う光ファイバエレメント3(被覆部9)同士の側面同士の距離を指す。この場合、図2に示すように、連結部11の上下面で被覆部9との接続部の位置が異なる場合には、連結部11と被覆部9との接続部同士の距離が短い方(図では上方)の長さをLとする。
【0047】
連結部11の厚さtは、連結部11の略中央部における連結部11の厚さをいう。連結部11の配置高さhは、被覆部9の下端(下面)から連結部11の下端(下面)までの長さをいう。なお、被覆部9の下端とは、連結部11の連結方向(図中左右方向)とは垂直な方向(図中上下方向)の面(図1の例では上下面)の内、連結部11に近い側の面(図1の例では下面)部位を指す。したがって、図1(a)に示した状態で、光ファイバケーブル1を地面等に載置した状態において、地面から連結部11の下面までの距離がhとなる。また、連結部11の下面と被覆部9の下面が一致する場合には、hは0となる。
【0048】
本発明の連結部11としては、L(mm)≧2h(mm)+0.2mmであることが望ましい。Lが2hに対して0.2mm以上長ければ、連結部11を180度変形させることが容易となり、確実に光ファイバエレメント3同士を折り畳むことができる。L=2hでは、連結部を180度折曲げる際に、連結部が引っ張られて変形が困難となる。
【0049】
また、連結部11のtは、0.1mm以上0.8mm以下であることが望ましい。tが0.1mm未満では、製造時や敷設時に容易に破断する恐れがあるためである。また、0.8mmを超えると、連結部11の折曲げおよび切断作業が困難となるためである。
【0050】
次に、光ファイバエレメント3同士の分離方法を説明する。図3は、光ファイバエレメント3の分離方法を示す図であり、図3(a)は、図1(b)のB部拡大図、図3(b)は、光ファイバエレメント3を分離した状態を示す図である。
【0051】
前述した通り、連結部11を折曲げて、光ファイバエレメント3同士を折り畳んだ状態においては、折れ曲がった連結部11が光ファイバケーブル1の側方に露出する。この状態で連結部11を切断部13で切断する。
【0052】
この状態で、光ファイバエレメント3同士を分離方向(図中D方向)に分離することで、光ファイバエレメント3の分離が完了し、分岐部が形成される。なお、分離された光ファイバエレメントは、軸方向の一部を切断し、別途コネクタ等により分岐方向の光ファイバケーブル等と接続される。
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、連結部11を折曲げることで、光ファイバエレメント3同士を折り畳むことができるため、連結部11を切断することが容易である。このため、光ファイバエレメント3の分離作業が容易である。また、光ファイバエレメントを折り畳むことで、光ファイバケーブル1の断面形状を変化させることができる。このため、敷設場所の形状に合わせて、光ファイバケーブル1の断面を変化させることができ、光ファイバケーブル1の敷設作業性に優れる。
【0054】
次に、他の実施の形態について説明する。図4は、光ファイバケーブル1aを示す図であり、図4(a)は全体断面図、図4(b)は、図4(a)のE部拡大図である。なお、以下の実施形態において、光ファイバケーブル1と同様の機能を奏する構成については、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。光ファイバケーブル1aは、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、山部15を有する連結部11aが設けられる点で異なる。
【0055】
図4(b)に示すように、連結部11aの略中央には、上方に向けて凸形状に湾曲(または屈曲)する山部15が形成される。ここで、上方とは、連結部11aの高さhの基準となる部位を下方とした場合に上側を指す。すなわち、折り畳まれた状態で連結部の露出する側の面方向に凸形状である。
【0056】
連結部11aにおいては、山部15の高さdは、連結部11aの下面と被覆部9との接続部を基準として、山部15(連結部11aの略中央位置)の下面までの高さを指す。山部15の高さdとしては、0.2mm以上5mm以下であることが望ましい。dを0.2mm以上とすることで、より容易に連結部11を折曲げることが可能となる。また、dが5mmを超えると、山部の内側同士が溶着する恐れがあるためである。
【0057】
光ファイバケーブル1aによれば、光ファイバケーブル1と同様の効果を得ることができる。また、連結部11aの折曲げが容易であるため、光ファイバエレメント3の折り畳み作業が容易である。
【0058】
図5は、さらに他の実施の形態にかかる光ファイバケーブル1bを示す図であり、図5(a)は全体断面図、図5(b)、(c)は、図5(a)のF部拡大図である。光ファイバケーブル1bは、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、凹部17aを有する連結部11bが設けられる点で異なる。
【0059】
凹部17aは、連結部11bの略中央部に形成され、連結部11bの厚さが他の部位よりも薄くなる部位である。なお、凹部17aは、連結部11bの両面に設けられてもよく、一方の面のみに設けられてもよい。ここで、連結部11bの厚さtは、凹部17a位置での厚さを指す。
【0060】
また、凹部の形状は、図5(b)に示すように、連結部11aの略中央部のみに設けられた凹部であってもよく、図5(c)に示す凹部17bのように、連結部11b全体に形成されてもよい。いずれにしても、連結部11bの略中央部において、最も厚さが薄くなるように形成されれば良い。また、凹部の断面形状は、U字状のみならずV字状など種々の形態を採用することができる。
【0061】
光ファイバケーブル1bによれば、光ファイバケーブル1と同様の効果を得ることができる。また、連結部11bの中央部に凹部が形成され、薄くなるため、光ファイバエレメント3の折り畳みおよび切断が容易である。
【0062】
次に、光ファイバエレメント同士の連結態様について、他の実施形態を説明する。図6(a)に示すように、3つ(またはそれ以上の)光ファイバエレメント3を連結部11で連結した光ファイバケーブル20aとしてもよい。また、この場合、図6(b)に示すように、連結部11の形成位置を、それぞれの連結部において一定高さとする必要はなく、それぞれ異なる位置に連結部11を設けてもよい。なお、図6(b)の例では、図中左側の光ファイバエレメント3と中央の光ファイバエレメント3の連結部11は、図中下面を基準に高さhが求められ、図中右側の光ファイバエレメント3と中央の光ファイバエレメント3の連結部11は、図中上面を基準に高さhが求められる。
【0063】
図7は、4つの光ファイバエレメント3がそれぞれ上下に異なる連結部11位置で連結された光ファイバケーブル30を折り畳んだ状態を示す図である。図7に示すように、それぞれの光ファイバエレメント3は、180度または90度に折り畳むことができる。なお、光ファイバケーブル30の折り畳み方は、図7に示した例に限られず、任意の形状に折り畳むことができる。また、さらに光ファイバエレメントの個数及び連結部11の配置を変えることで、種々の変形例に対応可能である。
【0064】
図8は、光ファイバケーブル30を保護管であるダクト31へ挿通する状態を示す図である。図7に示したように、光ファイバエレメント3を折り畳んだ状態で保持部材であるバンド33により光ファイバケーブル30の断面形状を保持することで、光ファイバケーブル30の縦方向または横方向の剛性を上げることができる。このため、光ファイバケーブル30がダクト31への挿通中に折れ曲がることがない。また、ダクト31内部に既設の光ファイバケーブルが敷設されている場合においても、敷設スペースの断面形状に応じて光ファイバエレメントを折り畳めば、より効率良く光ファイバケーブル30をダクト31内に挿通することができる。バンドの代わりにテープ等の接着部材を用いてもよい。
【0065】
なお、前述した種々の実施形態は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、光ファイバケーブルとしては、略矩形断面形状の光ファイバエレメントのみならず、円断面形状の光ファイバエレメントであってもよい。
【0066】
たとえば、図9に示すような略円断面形状の光ファイバエレメント41からなる光ファイバケーブル40でもよい。光ファイバケーブル40は、略中央に光ファイバ心線5が設けられ、その周囲にテンションメンバ7が形成されるような略円断面光ファイバエレメント41が連結部11で連結されたものである。この場合、連結部11を折曲げない状態(図9の状態)で、隣り合う光ファイバエレメント41の下方(連結部11が設けられる側)の接線との交点(すなわち図中最下端)を、連結部11の高さhの基準点とすればよい。
【実施例】
【0067】
連結部を有する各種形状の光ファイバケーブルを用い、折り畳み易さおよび切断のし易さを評価した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
評価に供した光ファイバケーブルは、図1に示すような略矩形の断面形状の光ファイバエレメントを有するものである。「エレメント高さA」は、光ファイバケーブル(光ファイバエレメント)の高さ(図1における全高さ)を指す。「エレメント幅B」は、光ファイバエレメントの全幅を指す。「連結部長さL」は、連結部の長さであり、図2のLに対応する。「連結部高さh」は、連結部の基準(被覆部下端)からの高さであり、図2のhに対応する。
【0070】
「連結部厚さt」は、連結部の略中央部における厚さであり、図2のtに対応する。「山部高さd」は、山部の高さであり、図4のdに対応する。なお、山部高さdが0であるとは、山部を有しない連結部であることを示す。
【0071】
「引張弾性率」は、連結部を構成する樹脂の引張弾性率を示す。また、「変形」は、変形のし易さを示し、図1(b)のように略180度の変形が容易であったものを「○」、変形は可能であるが容易ではないものを「△」、変形できなかったものを「×」とした。また、「切断」は、変形後の連結部を図3(a)に示すように容易に切断できたものを「○」とし、切断が困難であったもの「×」とした。
【0072】
比較例1は、特許文献2と同様に、光ファイバエレメントの略高さ中央に連結部を設けたものであり、連結部長さが連結部高さとほぼ等しい(L=1.1h)であるため、変形させることができなかった。
【0073】
実施例1は、連結部高さが0であり(連結部下面が光ファイバエレメント下面と一致しており)、L=1≧2h+0.2であるため、容易に変形させることができ、また、切断も可能であった。
【0074】
実施例2は、連結部高さhに対し、L=2hであるため、L≧2h+0.2を満足せず、このため変形が容易ではなかった。このため、切断を行うことができなかった。
【0075】
実施例3、連結部高さは実施例2と同様であるが、L≧2h+0.2を満足するため、変形も容易であり、切断も可能であった。
【0076】
実施例4は、連結部高さhを0.7としたものであるが、L=2hであるため、L≧2h+0.2を満足せず、このため変形が容易ではなかった。このため、切断を行うことができなかった。
【0077】
実施例5、連結部高さは実施例4と同様であるが、L≧2h+0.2を満足するため、変形も容易であり、切断も可能であった。
【0078】
実施例6は、連結部厚さが0.8mmであり、実施例1〜5よりも厚いが、L≧2h+0.2を満足するため、変形も容易であり、切断も可能であった。しかしながら、引張弾性率980MPaでは、連結部の強度が高すぎるため変形が容易ではなかった。
【0079】
実施例7は、L≧2h+0.2を満足するものの、連結部厚さが1.0mmと厚いため、変形が容易ではなく、また、引張弾性率980MPaでは、連結部の強度が高すぎるため変形させることがなかった。
【0080】
実施例8は、実施例7と同様に連結部厚さが1.0mmと厚いが、山部(高さ0.2mm)を有するため、変形が容易となった。山部を形成することで、より変形が容易となる。ただし、引張弾性率980MPaでは、連結部の強度が高すぎるため変形させることがなかった。
【0081】
実施例9は、L=2hであるため、L≧2h+0.2を満足しないが、山部(高さ0.2mm)を有するため、変形が容易となった。
【0082】
実施例10は、実施例9と同様にL=2hであるため、L≧2h+0.2を満足しないが、山部(高さ0.2mm)を有するため、変形が容易となった。
【0083】
以上のように、L≧2h+0.2を満足すれば、変形および切断が容易となる。また、連結部の厚さが0.8mmを超える場合には、変形が容易ではなくなる。しかしながら、山部を0.2mm以上設ければ、より変形が容易となるため、hに対するLの値や、連結部の厚さtの値の許容範囲を広げることができる。なお、dは0.2mmの例のみであるが、0.2mm以上であれば、より容易に変形が可能であることは言うまでもない。また、詳細な説明は省略するが、図9に示す光ファイバケーブルにおいても、表1に示すものと同様の結果が得られた。
【0084】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b、20a、20b、30、40………光ファイバケーブル
3、41………光ファイバエレメント
5………光ファイバ心線
7………テンションメンバ
9………被覆部
11、11a、11b………連結部
13………切断部
15………山部
17a、17b………凹部
31………ダクト
33………バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、
前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、
を具備し、
前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳むことが可能であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記連結部は、前記光ファイバエレメントの断面において、前記光ファイバエレメントの下端から高さhの位置に設けられ、
前記連結部の長さLは、L≧2h+0.2mmであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記連結部の略中央部に湾曲または屈曲した山部が形成され、前記山部の高さが0.2mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記連結部の略中央部の厚さが0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記連結部の略中央部に、前記連結部の根本部の厚さよりも薄い凹部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記光ファイバエレメントは略矩形形状であり、前記光ファイバエレメントの断面において、前記光ファイバエレメントの略中央に前記光ファイバ心線が形成され、前記光ファイバ心線の両側方にテンションメンバが設けられ、隣り合う前記光ファイバエレメントのそれぞれの前記テンションメンバが連結方向に並列するように、前記光ファイバエレメントが連結されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記連結部の引張弾性率が650MPa以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、を具備する光ファイバケーブルを敷設し、前記光ファイバケーブルの分岐形成部において、前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳み、折り曲げられた前記連結部を切断して、前記光ファイバエレメントを分離し、分離された光ファイバエレメントを分岐ケーブルとして敷設することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐部形成方法。
【請求項9】
内部に光ファイバ心線を有し、外周が被覆部で被覆された複数の光ファイバエレメントと、前記光ファイバエレメント同士を連結する連結部と、を具備する光ファイバケーブルを、前記連結部を折曲げることで、連結された隣り合う前記光ファイバエレメント同士を折り畳み、保持部材を用いて前記光ファイバケーブルが折り畳まれた状態で保持し、折り畳まれた状態の前記光ファイバケーブルを管体に挿入することを特徴とする光ファイバケーブルの敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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