説明

光ファイバケーブル用スペーサ及びそれを有する光ファイバケーブル

【課題】光ファイバケーブルの外径を小さくする主因であるリブの厚さの最適設計に、溝深さのパラメータを求めて当パラメータを考慮に入れた光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】溝深さをh複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隔間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量を表わされる溝深さのクリアランスをLとして、Lが固定された設定値とされ、かつhが1.8mmから4.5mm未満範囲の固定値に設定された時に、bはhにたいして、b>または=Ah3/(L−B)であって、ここでA、Bは定数とされて、0.95mm以内とされる領域内の値に0が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルの外径を小さくすることが求められている。
【0003】
特許文献1には、中空パイプの外周面に金属と樹脂とをラミベート加工した金属ラミネートテープを用いて光ファイバケーブルの外径を小さくすることが提案されている。
【0004】
特許文献2には、複数本の光ファイバからなる心線を2列以上並列に積層してスペーサの溝内に収納することによって光ファイバケーブルの外径を小さくすることが提案されている。
【0005】
特許文献3には、ケーブルコアの断面を囲う円Cが最小径の円になるようにして、光ファイバ心線に対する光ファイバケーブルの外径を小さくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−317586号公報
【特許文献2】特開平10−123381号公報
【特許文献3】特開2002−341201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、光ファイバケーブルの外径を小さくするためにケーブルコアを小型化するための種々の提案がなされて来た。
【0008】
また、従来、側圧加重によるケーブル変形量がリブの厚さに直接的な関係があるとしてケーブル変形量が大きいと想定される場合に大きなリブの厚さを採用する設計思想が適用されて来た。
【0009】
本出願の発明者等の実験によれば、各スロットで比較すると外径が大きい方がリブが倒れ易いという結果が得られ、リブが厚い方が側圧に弱いという結果が得られた。この結果は、リブの厚さ=側圧保持特性という従来の考え方は再検討されるべきで、リブの厚さの最適設計には、溝深さのパラメータも考慮に入れることが必要であることが判った。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みて光ファイバケーブルの外径を小さくする主因であるリブの厚さの最適設計に、溝深さのパラメータを求めて当パラメータを考慮に入れた光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、光ファイバケーブルの外径を小さくするためにリブの厚さおよび溝深さとの関係を考慮に入れてケーブル許容変形量である溝深さクリアランスを最適化した光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、Lが固定された設定値とされ、かつ
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.5mm未満範囲の固定値に設定された時に、
bはhに対して、
b>または=Ah/(L−B)
であって、ここでA,Bは定数とされて、0.95mm以内とされる領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0013】
本発明は、円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、Lが固定された設定値とされ、かつ
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.0mm未満範囲の固定値に設定された時に、
bはhに対して、
b>または=Ah/(L−B)
であって、ここでA,Bは定数とされて、0.85mm以内とされる領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0014】
本発明は、円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.5mm未満範囲の固定値に設定され、かつ
bが
b>または=Ah/(L−B)
であって、(ここでBは定数)0.95mm以内の固定値とされるときに、
L<または=A・(h/b)+B
で求める領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0015】
本発明は、円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.0mm未満範囲の固定値に設定され、かつ
bが
b>または=Ah/(L−B)
であって、(ここでBは定数)0.85mm以内の固定値とされるときに、
L<または=A・(h/b)+B
で求める領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の光ファイバケーブルの設計では採用されていないhを1.8から4.5mm望ましくは1.8から4.0mm以内の範囲の固定値に設定し、今回求められたbとhとの関係、すなわちbは、hにAh/(L−B)の式で表わされる関係式を用いて、この曲線で表わされる曲線上、もしくは曲線上の上側であって、0.95mm、望ましくは0.85mm以内に設定することができる。この値の採用によってケーブル外径を22.0mmから25.0mmという小径にすることができる。上述の例はLが固定された設定値とされた場合であるが、反対にbおよびhが上述の関係で固定されたような場合には、上述した関係でLの値を設定した光ファイバケーブルを設計することができ、同様にケーブル外径を小径にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光ファイバケーブルの断面を示す図で図1(a)は1つの浅い収納溝を備えた例の断面を示す図、図1(b)はすべて深い収納溝で形成した例の断面を示す図。
【図2】収納溝の各部の定義を示す図。
【図3】溝深さhの定義について他の例を示す図。
【図4】ケーブル外径の計算支援装置の構成を示す図。
【図5】側圧加重を加えたことによるケーブルコアの変形の状況を示す図。
【図6】実験結果を示す図。
【図7】同一の光ファイバケーブルについてのリブ厚さと単位加重当たりの変形量を示す図。
【図8】光ファイバ変形量とh3/bとの関係を示す図。
【図9】溝深さとの許容最小リブ厚さとの関係を示す図。
【図10】図1(a)の変形例の断面を示す図。
【図11】図1(a)の変形例の断面を示す図。
【図12】図1(b)の変形例の断面を示す図。
【図13】図1(b)の変形例の断面を示す図。
【図14】図10の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、スペーサ型の光ファイバケーブル100の断面を示す。
図1において、光ファイバケーブル100はケーブルコアとなる円径状のスペーサ1の中央部にテンションメンバ2が配置され、リブ10に中心方向に向けて光ファイバテープ心線収納溝3(以下、収納溝という)が等間隔で設けられ、光ファイバテープ心線4がそれぞれの収納溝3内に収納され、ケーブルコアの周囲に押え巻5が巻かれ、その外側に外皮(外被)となるシース6を設けて構成される。図1には13個の収納溝を形成した例を示してある。
【0020】
図1(a)には、13個の収納溝3の内、12個の収納溝3Aについては同一形状、同一溝深さの深溝の収納溝とされ、1個のみが浅い収納溝3Bとされ、この浅い収納溝3Bには、12個の深溝の収納溝3Aに収納される光ファイバ心線4Aの数に比べて小さい数の光ファイバ心線4Bが収納されるものとしている。このような光ファイバケーブルは浅い溝の収納溝を備えているために、通常、12.5溝と呼ばれる。図1(b)は、13個の深溝の収納溝が同一溝深さで形成された例を示している。
【0021】
図1(a)に示す本実施例は、1個の浅い収納溝3Bを含んで、浅い収納溝を除いて他の複数個の収納溝が同一形状、同一溝深さで形成される光ファイバケーブルとこの浅い収納溝3Bを含まず、複数個の収納溝が同一形状、同一溝深さで形成される光ファイバを含む。いずれの場合にあっても後述するようにリブ底間のリブ間隔は同じ長さbを備える。従って、全体的に見て、円径状のテーブルコアの周囲に中心方向に向けて複数個の収納溝3が等間隔で設けられた形状をなす。以下、図1(a)に示す形状のものを例にとって説明するが、本発明はこの例あるいは図1(b)に示す例に限定せずに適用可能である。
【0022】
図2は、図1に示す光ファイバケーブル100(図2(a))について、A部拡大(図2(b))およびB部拡大(図2(c))を示す。図2(b)において、収納溝3Aの溝深さはhで示され、溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスはLで示され、収納溝4A内に収納される光ファイバテープの枚数はNで示され、収納溝の底部隅間の間隔、すなわちリブ10の最小間隔がbで示される。図2(b)に示すように、深い収納溝間に浅い収納溝が設けられるよう場合には、浅い溝の溝底隅から隣りの深い溝までの最短幅がリブ厚さbで示される。
【0023】
図2(b)に示す例では、溝底部においてリブ10が最肉薄となる場合を示した。図3に示すように、リブ10の最肉薄部がリブ10の高さ途中である場合がある。このような場合には、本実施例の溝深さhは最肉薄部の位置から溝トップまでの高さとなる。このように、hは溝底から溝トップまでの高さHではない。
【0024】
本実施例で、溝深さhは、複数個の光ファイバ心線の大部分あるいは全部を占める上述の例で深い溝の収納溝の溝深さを示し、クリアランスLはこれらの溝についてのクリアランスを示し、リブ厚さは上述の例で深い収納溝の底部隅間の間隔および浅い溝の溝底隅から隣りの収納溝までの最短幅を示す。
【0025】
クリアランスLは、L=h−N・t(またはh=L+N・t)で表わされる。ここで、本実施例では、Nは深い溝深さの収納溝に収納される光ファイバテープ心線4の枚数、tは光ファイバテープ心線4の厚さを示す。
【0026】
更に本実施例では、Nは5〜10の範囲内の枚数、またtは0.26〜0.30の範囲内にある数値に設定される。
【0027】
そして、ケーブル許容変形量は光ケーブル1に側圧を掛けた場合に変形(つぶれる)量は、溝深さのクリアランス分だけ許容された量として定義される。
【0028】
図4はケーブル外径の計算支援装置200をブロックで示す図である。
図4において、ケーブルの外径の計算支援装置200は演算装置11と格納装置(記憶装置)12から構成され、演算装置11は入力手段13、演算手段14および出力手段15を備える。
【0029】
入力手段13はケーブルコア(スペーサ1)を構成する材料(樹脂)およびケーブル許容変形量0もしくは溝深さhおよびリブ厚さbを入力することができる。
【0030】
演算手段14はケーブルコアを構成する試料毎に形成された算定式を選定する手段21および演算処理手段22を備え、演算処理手段22は後述するようにして求められた次の式に基づく演算処理を行うことができる。


3)bまたはLの範囲
AおよびBは材料(樹脂)ごとに定まる定数であり、ケーブル外径の計算支援装置200はリブの厚さbあるいは/および溝深さのクリアランスLの計算支援装置である。
【0031】
以下、これらの式が有する技術的意味について説明する。
発明者等は12.5溝を例にとって機械特性を調べた。機械特性を図5(a)に示す光ファイバ構成について図5(b)に示すように側圧加重を加えることによって調べた。図5(a)に溝深さhとリブの厚さbとを示し、図5(b)に側圧荷重を加えたことによるケーブルコアの変形の状況を示す。
【0032】
図5(b)に示すように、ケーブルコアにシース被覆したケーブルに上下方向から側圧荷重を加えるとケーブルコアは変形する。変形量は上下にそれぞれ発生する。従って、トータルの変形量は片側の変形量の2倍となる。側圧荷重は押え巻5が光ファイバケーブル心線4の上端面に接触するまで加えるので、片側の変形量は溝深さクリアランスLに実質的に等しくなる。従って、ここでは溝深さクリアランスLをケーブル許容変形量を指す。ケーブル許容変形量を溝深さのクリアランスL以内に設定することが出来るがL以上に大きくすることは理論的に光伝達のロスが反応し始めるので、許されず、ここでは溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスLとすることができる。
【0033】
側圧加重に対する変形量を調べるためにスペーサ1が高密度熱可塑樹脂で形成された光ファイバケーブルが4種選定された。
【0034】
図6にその実験結果を示す。No.1〜No.4は選定された4種の光ファイバケーブルを示す。図6はX軸に側圧加重N〔N/100mm〕を示し、Y軸にケーブル変形量(mm)を示す。それぞれのスペーサの外径が図6に示される。ケーブル外径はテープやシース被覆をしているので、ケーブル外径とスペーサ外径の関係に1:1の比例関係になる。各線について〇印を付している。〇印が付された点が変形量がクリアランスLに達して理論的にロスが反応し始めた点である。図6によれば、ケーブル変形量が大きい程リブが倒れやすく、小さいほどリブが倒れにくいことが示される。
【0035】
図6に示す側圧加重とケーブル変形量との関係において、各スロットで比較すると外径が大きい方がリブが倒れ易いことが示される。
【0036】
図7に同一の光ファイバケーブルについてのリブ厚さと単位加重当たりの変形量を示す。X軸はリブの厚さbを示し、Y軸はケーブル変形量を示す。
【0037】
図7に示すリブ厚さと単位加重当たりのケーブル変形量について図に示すように1つの直線を引くことができ、これによればリブが厚い方が側圧に弱いという結果が得られた。この結果は、リブ厚さ=側圧特性という従来の考え方は再検討されるべきことを示し、リブ厚さの最適設計には、溝深さのパラメータも考慮しなければならないことを示している。すなわち、図6において、各スロットのロスが増加し始める側圧加重は、図中に〇印で示したが、理論的にロスが増加し始める変形量は溝のクリアランスL×2となる。従って、良好な側圧特定を得るためには、クリアランスLを大きくするか、倒れ難いリブ厚さと溝深さを最適化するということの関係を究明することが求められる。ここで、クリアランスLを所定量としてリブ厚さと溝深さパラメータとの関係について究明することとする。
【0038】
図8は、光ファイバ変形量とh/bとの関係を示す。X軸にh/bを示し、Y軸に光ケーブル変形量をとり、4種の光ファイバケーブルについてプロットとし、これらのプロット近傍を通って1つの直線が描ける。これによれば、光ケーブル変形量はh/bに比例関係にあることが判った。この結果によれば、光ケーブル変形量は図8に示すリブの厚さと溝深さの式に比例する。変形量をyで示すと、図8に示す直線は、
y=A´X+B´ …(1)
で表わされる。A´とB´は定数である。
【0039】
変形量を算定するのに、溝深さhは3乗で効いてくるので、溝深さの影響に比べるとリブの厚さbはケーブルの側圧強度に対して影響が少ない。このことから溝深さhを小さく設定することによって、リブの厚さbを従来の考え方に比べて小さく設計し得ることが判る。これらの関係から最小限のリブの厚さbを算出することができる。
【0040】
解析によれば、光ファイバ変形量yを溝深さのクリアランスLに一致する設計にすると(1)式は次のようになる。


(1)式を変形すると


となる。
【0041】
ファイバ種類によって必要な溝深さクリアランスLがある。従って、溝深さクリアランスLを設定すれば最小リブ厚が算出される。
【0042】
図9は、溝深さhと許容最小リブ厚bとの関係を示す。X軸は溝深さhを示し、Y軸は最小リブ厚bを示す。この線図によれば、4種の光ファイバケーブルの溝深さにおいて、上記線の上側の値をとっている(図9の曲線の上に位置している)ため、最小リブ厚bを十分満足する。これらの例の場合、リブの厚さを図9の曲線に近づけることで、
さらなる、ケーブル外径の細径化が図られる。
【0043】
図9から溝深さhとして、4.5mm最小から更に短くしてもhとの関係でリブの厚さbを設定してリブ厚bを画期的に小さくし、引いては光ファイバケーブルの外径を小さくすることができる好ましい範囲として設定することができることが判る。
【0044】
発明者等の実験によれば、溝深さ1.8〜4.5mm以下(4.5mm未満)の範囲において上述の曲線特性から画期的な効果を得ることが出来ることが判った。これによって、ケーブル外形を小形化することに有効であることが判る。
【0045】
図9において、h=L+N・tであって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、又は当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とする光ファイバケーブルにおいて、ケーブル外形を小型化するに画期的に効果のある範囲は領域Pで表わされる。この領域Pは、溝深さをh複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隔間の各リブ厚さをb、そして溝深さケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、
Lが固定された設定値とされ、かつ
hが1.8から4.5mm、望ましくは1.8mmから4.0mm未満範囲の固定値に設定された時に、
bはhに対して、
b>または=Ah3/(L−B)
の範囲にあって、ここでA,Bは定数とされて、0.95mm、望ましくは0.85mm以内とされて設定される領域である。
従って、bはこのP領域内の値で設定される、
そして、望ましくは
b=Ah3/(L−B)
の線上の近傍に設定するのがよい。
【0046】
また、この領域Pは、溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隔間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとしてhが1.8から4.5mm、望ましくは1.8mmから4.0mm未満範囲の固定値に設定され、かつbが
b>または=Ah3/(L−B)
であって、(ここでA、Bは定数)0.95mm、望ましくは0.85mm以内とされる領域内にある固定値に設定された時に、
L<または=A・(h3/b)+B
で求める値に設定される領域である。従って、LはこのP領域内の値で設定される。そして望ましいこの式上の近傍に設定されるのがよい。採用される設定値は予め定めたルールに従って図4に示す演算手段によって決定すればよい。
【0047】
上述した式において、1つの高密度熱可塑性材料において、A=0.0265,B=0.7215が採用される。こえらの値は、他の高密度熱可塑性材料,中密度熱可塑性材料,
低密度熱可塑性材料についてそれぞれ実験に基づいて設定されればよい。
【0048】
ちなみに、図9に示す線上の値は、溝深さが1.8mmのとき、リブ厚さは0.6mm,溝深さが3.0mmのとき、リブ厚さは0.7mm,溝深さが3.5mmのときリブ厚さが0.73mm,溝深さが4.0mmのときリブ厚さが0.86mm、溝深さが4.5mmのときリブ厚さが0.95mm、望ましくは4.0mmのとき、リブ厚さが0.85mm近辺の値をとる。リブ厚さは、上述のP領域で、図9に示す線上近辺に設定されるのが望ましい。溝深さおよびリブ厚さが設定されたときには、同様にしてクリアランスの値が設定されることになる。これらの値は従来例に比べて充分に小さな値となる。
【0049】
図10から図14は、図1に示す実施例の変形例を示し、本発明はこれらの変形例についても適用できることを示す。図10は図1(a)に示す実施例の変形例を示す。図1(a)に示す例にあっては、収納溝の内、1個のみ(収納溝3B)が浅い収納溝とされた。これに対しては、図10に示す例では、浅い収納溝3Bと深い収納溝とは同じ数としたスペーサ1を示す。この例では収納溝を浅い収納溝3Bと深い収納溝3Aとのトータル10個としているが、他のトータル数であってもよい。従って、この例では、浅い収納溝3Bと深い収納溝3Aとが各ペア(計5ペア)を構成する構成上の特徴を有する。
【0050】
図11は、図10に示す例と同様であって、計10ペアを構成した例を示す。
【0051】
図12は、図1(b)に示す実施例の変形例を示す。図1(b)に示す例にあっては、13個の深い収納溝3で形成されていたが、図12に示す例にあっては12個の深い収納溝3のみで形成される。他の個数であってもよい。図13も、図1(b)の変形例を示し、25個の深い収納溝3のみで形成される。
【0052】
図14は、図10に示す実施例の変形例、すなわち図1(a)の更なる変形例を示す。図10に示す例にあっては、図1(a)に示すと同様に各収納溝の溝幅は同一のものであったが、図14の例では深い収納溝4Aの溝幅は浅い収納溝4Bの溝幅よりも大きなものとして形成してある。
【符号の説明】
【0053】
1…スペーサ,2…テンションメンバ,3…光ファイバテープ心線収納溝(収納溝),3A…深溝の収納溝,3B…浅溝の収納溝,4…光ファイバテープ心線,4A…深溝の収納溝に収納された光ファイバテープ心線,4B…浅溝の収納溝に収納された光ファイバテープ心線,10…リブ,100…光ファイバケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、Lが固定された設定値とされ、かつ
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.5mm未満範囲の固定値に設定された時に、
bはhに対して、
b>または=Ah/(L−B)
であって、ここでA,Bは定数とされて、0.95mm以内とされる領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、Lが固定された設定値とされ、かつ
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.0mm未満範囲の固定値に設定された時に、
bはhに対して、
b>または=Ah/(L−B)
であって、ここでA,Bは定数とされて、0.85mm以内とされる領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.5mm未満範囲の固定値に設定され、かつ
bが
b>または=Ah/(L−B)
であって、(ここでBは定数)0.95mm以内の固定値とされるときに、
L<または=A・(h/b)+B
で求める領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
円径状のケーブルコアの周囲に中心方向に向けた複数個の光ファイバテープ心線収納溝が設けられ、光ファイバテープ心線がそれぞれの光ファイバテープ心線収納溝に収納され、該光ファイバテープ心線収納溝の溝底端間にリブが形成される光ファイバケーブルにおいて、
複数個の光ファイバテープ心線収納溝は、少なくとも1個の浅い光ファイバテープ心線収納溝を含んで、もしくは含まないで構成され、当該浅い光ファイバテープ心線収納溝を外いて同形、同一溝深さに形成され、これらの溝深さをh、複数個の光ファイバテープ心線収納溝の溝底隅間の各リブ厚さをb、そして溝深さのケーブル許容変形量で表わされる溝深さのクリアランスをLとして、
h=L+N・t
であって、ここでNは同一溝深さの光ファイバテープ心線収納溝に収納される光ファイバ心線の枚数で5〜10の範囲にある固定値、tは当該溝に収納する光ファイバ心線の厚さmmで0.26〜0.30の範囲内における固定値とされ、
hが1.8から4.0mm未満範囲の固定値に設定され、かつ
bが
b>または=Ah/(L−B)
であって、(ここでBは定数)0.85mm以内の固定値とされるときに、
L<または=A・(h/b)+B
で求める領域内の値に設定されること
を特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−191085(P2010−191085A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34159(P2009−34159)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(504026856)株式会社アドバンスト・ケーブル・システムズ (64)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】