光ファイバケーブル
【課題】 蝉の産卵管による光ファイバの損傷を防止し、光ファイバの取り出しを容易にする。
【解決手段】 光ファイバドロップケーブル1としては、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバ3と、この光ファイバ3を挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体7と、前記光ファイバ3と一対の抗張力体7との外周上を被覆した外被9と、から長尺の光エレメント部11を構成している。さらに、前記光ファイバ3と一対の抗張力体7との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバ3に対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバ3から距離をおいて挟み込む保護材5が、前記外被9の内部に配設されていることを特徴とする。
【解決手段】 光ファイバドロップケーブル1としては、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバ3と、この光ファイバ3を挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体7と、前記光ファイバ3と一対の抗張力体7との外周上を被覆した外被9と、から長尺の光エレメント部11を構成している。さらに、前記光ファイバ3と一対の抗張力体7との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバ3に対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバ3から距離をおいて挟み込む保護材5が、前記外被9の内部に配設されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバを小規模ビル或いは一般家庭に引き込む際の電柱間に架設する光ファイバドロップケーブルあるいは小規模ビル或いは一般家庭に引き込むためのインドアケーブルなどの光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FTTH(Fiber to the Home)すなわち家庭またはオフィスでも超高速データ等の高速広帯域情報を送受できるようにするために、電話局から延線されたアクセス系の光ファイバケーブルから、ビルあるいは一般住宅などの加入者宅へ光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線からなる光ファイバが引き落とされて、これを配線するために光ファイバドロップケーブルが用いられている。つまり、光ファイバドロップケーブルは電柱上の幹線ケーブルの分岐クロージャから家庭内へ光ファイバを引き込む際に用いられ、主に、光ファイバドロップケーブル(屋外線)や、より長い布設径間長に適用するために支持線サイズをUPした少心光架空ケーブルが使用されている。また、インドアケーブルは、家庭あるいはオフィスビル内の各部屋に光ファイバを引き込む際に用いられる光ファイバケーブルである。
【0003】
図8を参照するに、従来の光ファイバドロップケーブル101としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線からなる光ファイバ103と、この光ファイバ103を挟んでその両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体105と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105との外周上を被覆した例えば断面形状が矩形形状で樹脂からなる外被107と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105の中心軸(X軸)を通る第1平面109と垂直で、かつ前記光ファイバ103の中心軸(Y軸)を通る第2平面111の両側の離れた前記外被107の表面に形成されたノッチ113と、から長尺の光エレメント部115を構成している。
【0004】
この長尺の光エレメント部115と、この光エレメント部115における外被107の左側に首部117を介して、吊り線119を被覆した樹脂からなる外被121で一体化されたケーブル支持線部123と、で光ファイバドロップケーブル101が構成されている。しかも、前記吊り線119の中心軸(X軸)を通る平面は前記第1平面109と一致している。
【0005】
上記構成により、従来の光ファイバドロップケーブル101は、図9に示されているように両側端部の首部117を一部切り裂いて光エレメント部115とケーブル支持線部123とが分離され、この分離された一方のケーブル支持線部123の端部123Aが電柱125の屋外線引き留め具127に固定され、他方の端部123Bが家屋の一部に引き留め具127を介して固定される。
【0006】
そして、前記光エレメント部115の一方の端部115Aは切り裂かれて内部から光ファイバ103を取り出し、この光ファイバ103が電柱125上の分岐クロージャ129に接続される。この分岐クロージャ129では、電柱125上のアクセス系の光ファイバケーブル131から分岐された光ファイバと上記の光エレメント部115の端部115Aから取り出された光ファイバ103が接続される。一方、前記光エレメント部115の他方の端部115Bは切り裂かれて内部から光ファイバ103を取り出し、この光ファイバ103が屋内のOE変換器または成端箱133に接続される。この際に、前記光エレメント部115を引き裂いた際の光ファイバ103の取り出し性が重要となる。
【0007】
また、上記の光ファイバドロップケーブル101では、先端が尖ったものが光エレメント部115に突き当てられた場合、先端が尖ったものがノッチ113に沿って光ファイバ103へ向かって突き刺さり、実際にクマ蝉などの昆虫の産卵管がノッチ113に突き刺し産卵し、前記光ファイバ103を断線させる事故が発生している。
【0008】
この対策として、ノッチ113を無くすことや、ノッチ113をずらすことや、防護層を施すことなどの対策がとられている。
【0009】
上記のノッチ113を無くすことやノッチ113をずらすことなどの対策は、ノッチ113から当該ノッチ113の下にある光ファイバ103に産卵管が誘引されることを防ぐことで、産卵管が光ファイバ103に当たらないようにするものである。
【0010】
一方、防護層を施す対策は、例えば、特許文献1では、図8の光エレメント部115に該当する部分において、蝉の産卵管から光ファイバ103を保護するため、外被107より硬い材料の保護材で光ファイバ103を囲うことが記載されている。囲う方法としては、(1)パイプ状保護材の中に光ファイバ103を入れる、(2)2つ割りのパイプで光ファイバ103を挟むように覆う、(3)図10に示されているように平板形の保護材135で光ファイバ103を挟むように覆う、などがある。
【0011】
また、特許文献2では、粟鼠、げっ歯類動物に光ファイバケーブル101が噛まれることにより、光ファイバ103が損傷することを防ぐため、テンションメンバ(抗張力体105に該当)間の隙間を塞ぐように保護材135として金属テープが埋設されている。
【0012】
また、光ファイバ103の取り出し性を高める目的で、前記金属テープはその中央部で2分割されたものを使用する方法がある。また、波付き加工した金属テープのほか、金属線を編んでテープ状としたもの、FRPを板状にしたものが記載されている。
【0013】
また、特許文献3では、例えば、図8に該当する部分において、外被107の表面におけるノッチの断面形状が、図8のようなV字形状ではなく、外被107の表面でほぼ平行しているスリットを形成した菱形の空洞部としている。
【0014】
また、特許文献4では、例えば、図8におけるV字形状のノッチ113に変えて、ノッチの外側に当該ノッチを埋める形状の蓋部材を設けることにより、1対のV字あるいはL字状のスリットを配設している。
【0015】
また、特許文献5では、例えば、図8におけるV字形状のノッチ113に変えて、1対の切裂き溝を配設し、光ファイバ103を取り出しやすくしている。
【特許文献1】特開2002−90591号公報
【特許文献2】特開2006−11166号公報
【特許文献3】特開2002−90594号公報
【特許文献4】特開2006−30909号公報
【特許文献5】特開2006−30335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来の光ファイバケーブル101においてノッチ113を無くすことやノッチ113をずらすことなどの対策では、複数の光ファイバ103を実装する場合は、そのいずれかに産卵管が接触し、光ファイバ103の外傷や断線障害を起こす確率が増加するという問題点があった。
【0017】
一方、従来の光ファイバケーブル101において防護層(保護材)を施す対策では、例えば、特許文献1では、保護材としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属や硬質プラスチックで形成されている。しかし、パイプ状保護材は、ケーブルの曲げ剛性が高くなることや、ケーブルを小径に曲げた場合にパイプ状保護材が座屈し光ファイバ103に傷を与える可能性があるなどの問題があった。
【0018】
また、平板形の保護材135の場合は、図10に示されているように産卵管137が外被107の表面の斜め方向から挿入された場合に、産卵管137が光ファイバ103に接触する可能性があるという問題点があった。
【0019】
また、特許文献2では、テープ状の保護材135が縦添えされると、光ファイバ103の口出し性が悪くなるという問題点があった。そこで、光ファイバ103の取り出し性を高める目的で、テープ状の保護材135の中央部で2分割されたものを使用する方法は、支持線119に使用する鋼線、テンションメンバに使用する銅線あるいはFRPなどの抗張力体105、複数の光ファイバ103に加えて、さらに、光ファイバ103を挟んで両側の合計4本の保護材135を押出成形機に導かなければならず、材料を送出する装置数が増えることや、作業段取りや材料交換に時間を要するために、作業性が悪いなどの問題点があった。
【0020】
また、2分割されたテープ状の保護材135の間に隙間があると、蝉の産卵管を前記隙間に誘引し、光ファイバ103を傷つける恐れがあるため、高精度に位置合わせをして製造しなければならないために、作業性が悪いという問題点があった。
【0021】
また、2心以上の光ファイバ103を実装する光ファイバケーブル101においては、外被107の表面の斜め方向から蝉の産卵管が挿入された場合をも想定して幅の広いテープ状の保護材135を縦添えすると、光ファイバ103の取り出しが困難となる。例えば、図11に示されているように、ノッチ139(或いは工具により付与した切裂き部)から外被107を左右に開いたとき、ノッチ139(或いは工具により付与した切裂き部)から発生する亀裂は、複数の光ファイバ103の列の一端を通過する。すなわち、亀裂が通過する一端とは反対端に位置する光ファイバ103は、外被107に埋もれて取り出せない、或いは著しく取り出し難い状況となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバケーブルは、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバと、この光ファイバを挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体と、前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を被覆した外被と、から長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバと一対の抗張力体との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバに対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバから距離をおいて前記光ファイバを挟み込む保護材が、前記外被の内部に配設されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記各保護材の菱形状の長対角線が前記X軸とほぼ平行に配置されていることが好ましい。
【0024】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバが2心以上の光ファイバ列であるとき、前記両側の保護材のうちの一方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の一端の1心にかかる位置に配置され、かつ、前記両側の保護材のうちの他方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の他端の1心にかかる位置に配置されていることが好ましい。
【0025】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記X軸の平面と垂直な断面において前記外被の表面に突出する突出部が形成され、かつ、前記保護材の菱形状の短対角線上の角が前記突出部の内部に位置していることが好ましい。
【0026】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメント部に、支持線を外被で被覆した長尺のケーブル支持線部が互いに平行に一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、光ファイバに対してX軸方向に直交するY軸方向の両側に光ファイバを挟んで配置した保護材を菱形状とすることにより、蝉の産卵管による光ファイバの損傷を防止することができ、かつ、保護材における光ファイバ側の菱形状の頂点がノッチの役目をなすので、外被内に配設された光ファイバの取り出しを容易にできる。また、外被から保護材を引き出し、この保護材を引裂き紐として長手方向に前記外被を容易に引き裂くことができる。
【0028】
また、上記の理由で、菱形状の保護材により、光ファイバの口出し性を向上できるので、保護材を幅広くすることが可能となる。その結果、蝉に産卵管を外被の表面の斜め方向から刺された場合でも、光ファイバを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル1としては、複数の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線を一列に並列して配置してなる光ファイバ3と、この光ファイバ3を挟んでその厚さ方向の両側に距離をおいて配置した保護材5と、前記光ファイバ3を挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体7と、前記光ファイバ3と保護材5と一対の抗張力体7との外周上を被覆した断面形状が例えば矩形形状で樹脂からなる外被9と、から長尺の光エレメント部11を構成している。
【0031】
また、前記一対の抗張力体7の中心軸(X軸)を通る平面13と垂直な断面において前記X軸に直交するY軸方向で前記保護材5の両側における前記外被9の表面には、小さなノッチ部15が形成されている。図1では2つのノッチ部15がY軸上に位置している。
【0032】
なお、図1では、外被9にノッチ部15を形成したものを示しているが、このノッチ部15を付けずにフラットな形状の外被9としても構わない。この場合は、ニッパ等の切込み工具により切り込みを入れることができる。
【0033】
なお、上記の保護材5についてより詳しく説明すると、保護材5は前記平面13と垂直な断面において菱形状の断面を有するものであり、前記光ファイバ3に対して前記Y軸方向の両側(図1において上下側)に前記光ファイバ3から距離をおいて前記光ファイバ3を挟み込むように配置されている。また、前記外被9の表面の斜め方向から挿入される蝉の産卵管に対して光ファイバ3を保護するために、前記菱形状の長対角線5Aが例えば複数心からなる光ファイバ3の列とほぼ平行にして前記光ファイバ列の幅より充分に広い幅で構成されて配置されている。さらに、光ファイバ3の口出し性を向上させるために、菱形状の短対角線5Bがノッチ部15を結ぶ線上(Y軸)に位置するように配置されている。
【0034】
また、上記の菱形状の保護材5は、ステンレスなどの金属も使用可能であるが、光ファイバケーブル1の可撓性を保ち、かつ、菱形状に成形することが容易であるという点で硬質プラスチックが望ましい。
【0035】
また、上記の長尺の光エレメント部11と、この光エレメント部11における外被9の左側に首部17を介して、支持線としての例えば吊り線19を被覆した樹脂からなる外被21で一体化されたケーブル支持線部23と、で光ファイバドロップケーブル1が構成されている。しかも、前記吊り線19の中心軸(X軸)を通る平面は前記平面13と一致している。なお、この第1の実施の形態では上記の光エレメント部11の外被9とケーブル支持線部23の外被21は同じ樹脂で構成されている。
【0036】
上記構成により、図2に示されているように、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1の外被9をノッチ部15から左右に引き裂くと、ノッチ部15の先端から発生した亀裂は、図2において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点5Cに達し、さらに保護材5の菱形状の外周を沿って、菱形状の短対角線5B上の頂点5Dから光ファイバ列の中央付近を通過して、もう一方の図2において下側の保護材5の頂点5Eに達する。したがって、図2に示されているように、左右どちらの光ファイバ3も容易に取り出すことができる。
【0037】
次に、この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル25について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバドロップケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
図3を参照するに、この光ファイバドロップケーブル25が前述した光ファイバドロップケーブル1と異なる点は、前記平面13と垂直な断面において外被9の表面に突出する突出部27が光ファイバケーブル25の長手方向に伸びるように形成されており、かつ、保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が前記突出部27の内部に位置している。したがって、保護材5の菱形状の短対角線5B上の角の外周付近が外被9で被覆された状態で、外被9の表面に出っ張らせた形状としたものである。
【0039】
上記の光ファイバケーブル25の口出し作業方法としては、図4(A)に示されているように、外被9の突出部27にニッパ等の切込み工具29で切り込んで保護材5が取り出される。図4(B)に示されているように、前記取り出された保護材5が引裂き紐のようにして光ファイバケーブル25の長手方向に引っ張られることにより、外被9が長手方向に引き裂かれる。次に、図4(C)に示されているように△の部分、すなわち保護材5の菱形状の短対角線5B上の角がケーブル引き裂きのノッチとして利用されて光ファイバ3が取り出されることとなる。
【0040】
次に、この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル31について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバドロップケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
図5を参照するに、この光ファイバドロップケーブル31が前述した光ファイバケーブル1と異なる点は、前記光ファイバ3が2心以上の光ファイバ列である場合、この第3の実施の形態では4心の光ファイバ列であるとき、光ファイバ列に対してY軸方向で両側の保護材5のうちの一方の保護材5(図5において上側)の菱形状の短対角線5B上の角が、X軸方向において前記光ファイバ列の一端(図5において右端)の1心(光ファイバ3)にかかる位置に配置されている。一方、前記両側の保護材5のうちの他方の保護材5(図5において下側)の菱形状の短対角線5B上の角が、X軸方向において前記光ファイバ列の他端(図5において左端)の1心(光ファイバ3)にかかる位置に配置されている。
【0042】
上記構成により、図5では、外被9をノッチ部15から左右に引裂いたときの亀裂の発生状態が示されている。すなわち、光ファイバドロップケーブル31の外被9をノッチ部15から左右に引き裂くと、ノッチ部15の先端から発生した亀裂が両側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において左右の両端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。
【0043】
すなわち、図5において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において右端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。一方、図5において下側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において左端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。その結果、光ファイバ列の全ての光ファイバ3が取り出し易くなる。
【0044】
次に、前述した第1の実施の形態に基づいて、実際に、図6に示されている光ファイバドロップケーブル33を試作し、光ファイバ3の口出し性と特性を確認した。
【0045】
図6の光ファイバドロップケーブル33は、吊り線19が例えばφ1.2mmの亜鉛メッキ鋼線であり、抗張力体7がアラミド繊維強化プラスチックであり、光ファイバ3が例えばφ0.25mmのSM形光ファイバ×2心であり、保護材5がナイロン製であり、外被9は難燃ポリオレフィンである。また、保護材5は、長対角線5A×短対角線5Bが例えば1.2mm×0.3mmである菱形状をなしており、光ファイバドロップケーブル33は長径×短径が例えば5.3mm×2.0mmである。
【0046】
その結果、光ファイバドロップケーブル33は、外被9をノッチ部15から左右に引き裂くことにより、光ファイバ3は2心ともに容易に取り出しが可能であった。また、波長1.55μmにおける伝送損失は、0.25dB/km以下であった。また、−30℃〜+70℃における損失温度変動は、0.05dB/km以下であり、良好な特性を有していることが確認された。
【0047】
次に、前述した第3の実施の形態に基づいて、実際に、図7に示されている光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル35を試作し、光ファイバ3の口出し性と特性を確認した。
【0048】
図7の光ファイバドロップケーブル35は、吊り線19が例えばφ1.2mmの亜鉛メッキ鋼線であり、抗張力体7がアラミド繊維強化プラスチックであり、光ファイバ3が例えばφ0.25mmのSM形光ファイバ×4心であり、保護材5がナイロン製であり、外被9は難燃ポリオレフィンである。また、保護材5は、長対角線5A×短対角線5Bが例えば1.8mm×0.3mmである菱形状をなしており、Y軸から左右に約0.3mmずつ、ずらした位置に配置した。すなわち、図7において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が、図7において右端の光ファイバ3にかかる位置に配置され、図7において下側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が、図7において左端の光ファイバ3にかかる位置に配置される。また、光ファイバドロップケーブル35は長径×短径が例えば6.0mm×2.0mmである。
【0049】
その結果、光ファイバドロップケーブル35は、外被9をノッチ部15から左右に引き裂くことにより、光ファイバ3は4心ともに容易に取り出しが可能であった。また、波長1.55μmにおける伝送損失は、0.25dB/km以下であった。また、−30℃〜+70℃における損失温度変動は、0.05dB/km以下であり、良好な特性を有していることが確認された。
【0050】
以上のことから、下記の効果を奏する。
【0051】
(1)保護材5を光ファイバ3の図1、図3および図5において上下に配置した構造の光ファイバケーブル1,25,31において、前記保護材5を菱形状とすることにより、蝉の産卵管から光ファイバ3を保護でき、かつ、保護材5の菱形状の頂点(角)が光ファイバ列の上のノッチの役割を果たすために、光ファイバ3の口出し性を向上させることができる。
【0052】
(2)上記の(1)の理由で、菱形状の保護材5を用いたことにより、光ファイバ3の口出し性を向上させることができることから、保護材5を幅広くすることが可能となるので、蝉に産卵管を外被9の表面の斜め方向から刺された場合でも、光ファイバ3を保護することができる。
【0053】
(3)菱形状の保護材5を光ファイバ列の中心から光ファイバ3の列方向(X軸方向)において左右にずらすことにより、外被9を引き裂いた時に光ファイバ列の両端に亀製を到達させることができるので、多心を実装した光ファイバケーブルであっても光ファイバ3の取出し性を良くすることができる。
【0054】
(4)平面13と垂直な断面において外被9の表面に突出した突出部27の内部に保護材5の菱形状の角を配置することにより、前記突出部27から外被9に切り込みを入れて保護材5を容易に取り出すことができ、取り出された保護材5を引裂き紐として、光ファイバケーブル25の長手方向に外被9を引き裂くことができる。
【0055】
なお、この発明の他の実施の形態のとしては、前述した第1〜第3の実施の形態の光ファイバケーブル1,25,31におけるケーブル支持線部23を無くした光エレメント部15のみのインドアドロップケーブルなどの光ファイバケーブルであっても構わない。この光エレメント部15のみの光ファイバケーブルは架空集合ドロップケーブルの光エレメント部としても適用される。この場合の光ファイバケーブルの作用、効果は前述した光ファイバドロップケーブル1,25,31と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図2】図1の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルから光ファイバを口出しするときの状態を示す断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図4】(A)〜(C)は、図3の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルから光ファイバを口出しするときの状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図6】第1の実施の形態に基づいて試作した光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図7】第3の実施の形態に基づいて試作した光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図8】従来の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図9】図8の光ファイバドロップケーブルを用いて各加入者宅に引き込むときの状態説明図である。
【図10】従来の他の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図11】従来の別の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第1の実施の形態の)
3 光ファイバ
5 保護材
7 抗張力体
9 外被(光エレメント部11の)
11 光エレメント部
13 平面
15 ノッチ部
17 首部
19 吊り線(支持線)
21 外被(ケーブル支持線部23の)
23 ケーブル支持線部
25 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第2の実施の形態の)
27 突出部
29 切込み工具
31 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第3の実施の形態の)
33 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第1の実施の形態の試作)
35 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第3の実施の形態の試作)
【技術分野】
【0001】
この発明は、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバを小規模ビル或いは一般家庭に引き込む際の電柱間に架設する光ファイバドロップケーブルあるいは小規模ビル或いは一般家庭に引き込むためのインドアケーブルなどの光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FTTH(Fiber to the Home)すなわち家庭またはオフィスでも超高速データ等の高速広帯域情報を送受できるようにするために、電話局から延線されたアクセス系の光ファイバケーブルから、ビルあるいは一般住宅などの加入者宅へ光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線からなる光ファイバが引き落とされて、これを配線するために光ファイバドロップケーブルが用いられている。つまり、光ファイバドロップケーブルは電柱上の幹線ケーブルの分岐クロージャから家庭内へ光ファイバを引き込む際に用いられ、主に、光ファイバドロップケーブル(屋外線)や、より長い布設径間長に適用するために支持線サイズをUPした少心光架空ケーブルが使用されている。また、インドアケーブルは、家庭あるいはオフィスビル内の各部屋に光ファイバを引き込む際に用いられる光ファイバケーブルである。
【0003】
図8を参照するに、従来の光ファイバドロップケーブル101としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線からなる光ファイバ103と、この光ファイバ103を挟んでその両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体105と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105との外周上を被覆した例えば断面形状が矩形形状で樹脂からなる外被107と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105の中心軸(X軸)を通る第1平面109と垂直で、かつ前記光ファイバ103の中心軸(Y軸)を通る第2平面111の両側の離れた前記外被107の表面に形成されたノッチ113と、から長尺の光エレメント部115を構成している。
【0004】
この長尺の光エレメント部115と、この光エレメント部115における外被107の左側に首部117を介して、吊り線119を被覆した樹脂からなる外被121で一体化されたケーブル支持線部123と、で光ファイバドロップケーブル101が構成されている。しかも、前記吊り線119の中心軸(X軸)を通る平面は前記第1平面109と一致している。
【0005】
上記構成により、従来の光ファイバドロップケーブル101は、図9に示されているように両側端部の首部117を一部切り裂いて光エレメント部115とケーブル支持線部123とが分離され、この分離された一方のケーブル支持線部123の端部123Aが電柱125の屋外線引き留め具127に固定され、他方の端部123Bが家屋の一部に引き留め具127を介して固定される。
【0006】
そして、前記光エレメント部115の一方の端部115Aは切り裂かれて内部から光ファイバ103を取り出し、この光ファイバ103が電柱125上の分岐クロージャ129に接続される。この分岐クロージャ129では、電柱125上のアクセス系の光ファイバケーブル131から分岐された光ファイバと上記の光エレメント部115の端部115Aから取り出された光ファイバ103が接続される。一方、前記光エレメント部115の他方の端部115Bは切り裂かれて内部から光ファイバ103を取り出し、この光ファイバ103が屋内のOE変換器または成端箱133に接続される。この際に、前記光エレメント部115を引き裂いた際の光ファイバ103の取り出し性が重要となる。
【0007】
また、上記の光ファイバドロップケーブル101では、先端が尖ったものが光エレメント部115に突き当てられた場合、先端が尖ったものがノッチ113に沿って光ファイバ103へ向かって突き刺さり、実際にクマ蝉などの昆虫の産卵管がノッチ113に突き刺し産卵し、前記光ファイバ103を断線させる事故が発生している。
【0008】
この対策として、ノッチ113を無くすことや、ノッチ113をずらすことや、防護層を施すことなどの対策がとられている。
【0009】
上記のノッチ113を無くすことやノッチ113をずらすことなどの対策は、ノッチ113から当該ノッチ113の下にある光ファイバ103に産卵管が誘引されることを防ぐことで、産卵管が光ファイバ103に当たらないようにするものである。
【0010】
一方、防護層を施す対策は、例えば、特許文献1では、図8の光エレメント部115に該当する部分において、蝉の産卵管から光ファイバ103を保護するため、外被107より硬い材料の保護材で光ファイバ103を囲うことが記載されている。囲う方法としては、(1)パイプ状保護材の中に光ファイバ103を入れる、(2)2つ割りのパイプで光ファイバ103を挟むように覆う、(3)図10に示されているように平板形の保護材135で光ファイバ103を挟むように覆う、などがある。
【0011】
また、特許文献2では、粟鼠、げっ歯類動物に光ファイバケーブル101が噛まれることにより、光ファイバ103が損傷することを防ぐため、テンションメンバ(抗張力体105に該当)間の隙間を塞ぐように保護材135として金属テープが埋設されている。
【0012】
また、光ファイバ103の取り出し性を高める目的で、前記金属テープはその中央部で2分割されたものを使用する方法がある。また、波付き加工した金属テープのほか、金属線を編んでテープ状としたもの、FRPを板状にしたものが記載されている。
【0013】
また、特許文献3では、例えば、図8に該当する部分において、外被107の表面におけるノッチの断面形状が、図8のようなV字形状ではなく、外被107の表面でほぼ平行しているスリットを形成した菱形の空洞部としている。
【0014】
また、特許文献4では、例えば、図8におけるV字形状のノッチ113に変えて、ノッチの外側に当該ノッチを埋める形状の蓋部材を設けることにより、1対のV字あるいはL字状のスリットを配設している。
【0015】
また、特許文献5では、例えば、図8におけるV字形状のノッチ113に変えて、1対の切裂き溝を配設し、光ファイバ103を取り出しやすくしている。
【特許文献1】特開2002−90591号公報
【特許文献2】特開2006−11166号公報
【特許文献3】特開2002−90594号公報
【特許文献4】特開2006−30909号公報
【特許文献5】特開2006−30335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来の光ファイバケーブル101においてノッチ113を無くすことやノッチ113をずらすことなどの対策では、複数の光ファイバ103を実装する場合は、そのいずれかに産卵管が接触し、光ファイバ103の外傷や断線障害を起こす確率が増加するという問題点があった。
【0017】
一方、従来の光ファイバケーブル101において防護層(保護材)を施す対策では、例えば、特許文献1では、保護材としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属や硬質プラスチックで形成されている。しかし、パイプ状保護材は、ケーブルの曲げ剛性が高くなることや、ケーブルを小径に曲げた場合にパイプ状保護材が座屈し光ファイバ103に傷を与える可能性があるなどの問題があった。
【0018】
また、平板形の保護材135の場合は、図10に示されているように産卵管137が外被107の表面の斜め方向から挿入された場合に、産卵管137が光ファイバ103に接触する可能性があるという問題点があった。
【0019】
また、特許文献2では、テープ状の保護材135が縦添えされると、光ファイバ103の口出し性が悪くなるという問題点があった。そこで、光ファイバ103の取り出し性を高める目的で、テープ状の保護材135の中央部で2分割されたものを使用する方法は、支持線119に使用する鋼線、テンションメンバに使用する銅線あるいはFRPなどの抗張力体105、複数の光ファイバ103に加えて、さらに、光ファイバ103を挟んで両側の合計4本の保護材135を押出成形機に導かなければならず、材料を送出する装置数が増えることや、作業段取りや材料交換に時間を要するために、作業性が悪いなどの問題点があった。
【0020】
また、2分割されたテープ状の保護材135の間に隙間があると、蝉の産卵管を前記隙間に誘引し、光ファイバ103を傷つける恐れがあるため、高精度に位置合わせをして製造しなければならないために、作業性が悪いという問題点があった。
【0021】
また、2心以上の光ファイバ103を実装する光ファイバケーブル101においては、外被107の表面の斜め方向から蝉の産卵管が挿入された場合をも想定して幅の広いテープ状の保護材135を縦添えすると、光ファイバ103の取り出しが困難となる。例えば、図11に示されているように、ノッチ139(或いは工具により付与した切裂き部)から外被107を左右に開いたとき、ノッチ139(或いは工具により付与した切裂き部)から発生する亀裂は、複数の光ファイバ103の列の一端を通過する。すなわち、亀裂が通過する一端とは反対端に位置する光ファイバ103は、外被107に埋もれて取り出せない、或いは著しく取り出し難い状況となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバケーブルは、1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバと、この光ファイバを挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体と、前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を被覆した外被と、から長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバと一対の抗張力体との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバに対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバから距離をおいて前記光ファイバを挟み込む保護材が、前記外被の内部に配設されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記各保護材の菱形状の長対角線が前記X軸とほぼ平行に配置されていることが好ましい。
【0024】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバが2心以上の光ファイバ列であるとき、前記両側の保護材のうちの一方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の一端の1心にかかる位置に配置され、かつ、前記両側の保護材のうちの他方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の他端の1心にかかる位置に配置されていることが好ましい。
【0025】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記X軸の平面と垂直な断面において前記外被の表面に突出する突出部が形成され、かつ、前記保護材の菱形状の短対角線上の角が前記突出部の内部に位置していることが好ましい。
【0026】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメント部に、支持線を外被で被覆した長尺のケーブル支持線部が互いに平行に一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、光ファイバに対してX軸方向に直交するY軸方向の両側に光ファイバを挟んで配置した保護材を菱形状とすることにより、蝉の産卵管による光ファイバの損傷を防止することができ、かつ、保護材における光ファイバ側の菱形状の頂点がノッチの役目をなすので、外被内に配設された光ファイバの取り出しを容易にできる。また、外被から保護材を引き出し、この保護材を引裂き紐として長手方向に前記外被を容易に引き裂くことができる。
【0028】
また、上記の理由で、菱形状の保護材により、光ファイバの口出し性を向上できるので、保護材を幅広くすることが可能となる。その結果、蝉に産卵管を外被の表面の斜め方向から刺された場合でも、光ファイバを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル1としては、複数の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線を一列に並列して配置してなる光ファイバ3と、この光ファイバ3を挟んでその厚さ方向の両側に距離をおいて配置した保護材5と、前記光ファイバ3を挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体7と、前記光ファイバ3と保護材5と一対の抗張力体7との外周上を被覆した断面形状が例えば矩形形状で樹脂からなる外被9と、から長尺の光エレメント部11を構成している。
【0031】
また、前記一対の抗張力体7の中心軸(X軸)を通る平面13と垂直な断面において前記X軸に直交するY軸方向で前記保護材5の両側における前記外被9の表面には、小さなノッチ部15が形成されている。図1では2つのノッチ部15がY軸上に位置している。
【0032】
なお、図1では、外被9にノッチ部15を形成したものを示しているが、このノッチ部15を付けずにフラットな形状の外被9としても構わない。この場合は、ニッパ等の切込み工具により切り込みを入れることができる。
【0033】
なお、上記の保護材5についてより詳しく説明すると、保護材5は前記平面13と垂直な断面において菱形状の断面を有するものであり、前記光ファイバ3に対して前記Y軸方向の両側(図1において上下側)に前記光ファイバ3から距離をおいて前記光ファイバ3を挟み込むように配置されている。また、前記外被9の表面の斜め方向から挿入される蝉の産卵管に対して光ファイバ3を保護するために、前記菱形状の長対角線5Aが例えば複数心からなる光ファイバ3の列とほぼ平行にして前記光ファイバ列の幅より充分に広い幅で構成されて配置されている。さらに、光ファイバ3の口出し性を向上させるために、菱形状の短対角線5Bがノッチ部15を結ぶ線上(Y軸)に位置するように配置されている。
【0034】
また、上記の菱形状の保護材5は、ステンレスなどの金属も使用可能であるが、光ファイバケーブル1の可撓性を保ち、かつ、菱形状に成形することが容易であるという点で硬質プラスチックが望ましい。
【0035】
また、上記の長尺の光エレメント部11と、この光エレメント部11における外被9の左側に首部17を介して、支持線としての例えば吊り線19を被覆した樹脂からなる外被21で一体化されたケーブル支持線部23と、で光ファイバドロップケーブル1が構成されている。しかも、前記吊り線19の中心軸(X軸)を通る平面は前記平面13と一致している。なお、この第1の実施の形態では上記の光エレメント部11の外被9とケーブル支持線部23の外被21は同じ樹脂で構成されている。
【0036】
上記構成により、図2に示されているように、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1の外被9をノッチ部15から左右に引き裂くと、ノッチ部15の先端から発生した亀裂は、図2において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点5Cに達し、さらに保護材5の菱形状の外周を沿って、菱形状の短対角線5B上の頂点5Dから光ファイバ列の中央付近を通過して、もう一方の図2において下側の保護材5の頂点5Eに達する。したがって、図2に示されているように、左右どちらの光ファイバ3も容易に取り出すことができる。
【0037】
次に、この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル25について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバドロップケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
図3を参照するに、この光ファイバドロップケーブル25が前述した光ファイバドロップケーブル1と異なる点は、前記平面13と垂直な断面において外被9の表面に突出する突出部27が光ファイバケーブル25の長手方向に伸びるように形成されており、かつ、保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が前記突出部27の内部に位置している。したがって、保護材5の菱形状の短対角線5B上の角の外周付近が外被9で被覆された状態で、外被9の表面に出っ張らせた形状としたものである。
【0039】
上記の光ファイバケーブル25の口出し作業方法としては、図4(A)に示されているように、外被9の突出部27にニッパ等の切込み工具29で切り込んで保護材5が取り出される。図4(B)に示されているように、前記取り出された保護材5が引裂き紐のようにして光ファイバケーブル25の長手方向に引っ張られることにより、外被9が長手方向に引き裂かれる。次に、図4(C)に示されているように△の部分、すなわち保護材5の菱形状の短対角線5B上の角がケーブル引き裂きのノッチとして利用されて光ファイバ3が取り出されることとなる。
【0040】
次に、この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル31について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバドロップケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
図5を参照するに、この光ファイバドロップケーブル31が前述した光ファイバケーブル1と異なる点は、前記光ファイバ3が2心以上の光ファイバ列である場合、この第3の実施の形態では4心の光ファイバ列であるとき、光ファイバ列に対してY軸方向で両側の保護材5のうちの一方の保護材5(図5において上側)の菱形状の短対角線5B上の角が、X軸方向において前記光ファイバ列の一端(図5において右端)の1心(光ファイバ3)にかかる位置に配置されている。一方、前記両側の保護材5のうちの他方の保護材5(図5において下側)の菱形状の短対角線5B上の角が、X軸方向において前記光ファイバ列の他端(図5において左端)の1心(光ファイバ3)にかかる位置に配置されている。
【0042】
上記構成により、図5では、外被9をノッチ部15から左右に引裂いたときの亀裂の発生状態が示されている。すなわち、光ファイバドロップケーブル31の外被9をノッチ部15から左右に引き裂くと、ノッチ部15の先端から発生した亀裂が両側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において左右の両端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。
【0043】
すなわち、図5において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において右端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。一方、図5において下側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の頂点から光ファイバ列の図5において左端の光ファイバ3に達する亀裂が入る。その結果、光ファイバ列の全ての光ファイバ3が取り出し易くなる。
【0044】
次に、前述した第1の実施の形態に基づいて、実際に、図6に示されている光ファイバドロップケーブル33を試作し、光ファイバ3の口出し性と特性を確認した。
【0045】
図6の光ファイバドロップケーブル33は、吊り線19が例えばφ1.2mmの亜鉛メッキ鋼線であり、抗張力体7がアラミド繊維強化プラスチックであり、光ファイバ3が例えばφ0.25mmのSM形光ファイバ×2心であり、保護材5がナイロン製であり、外被9は難燃ポリオレフィンである。また、保護材5は、長対角線5A×短対角線5Bが例えば1.2mm×0.3mmである菱形状をなしており、光ファイバドロップケーブル33は長径×短径が例えば5.3mm×2.0mmである。
【0046】
その結果、光ファイバドロップケーブル33は、外被9をノッチ部15から左右に引き裂くことにより、光ファイバ3は2心ともに容易に取り出しが可能であった。また、波長1.55μmにおける伝送損失は、0.25dB/km以下であった。また、−30℃〜+70℃における損失温度変動は、0.05dB/km以下であり、良好な特性を有していることが確認された。
【0047】
次に、前述した第3の実施の形態に基づいて、実際に、図7に示されている光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブル35を試作し、光ファイバ3の口出し性と特性を確認した。
【0048】
図7の光ファイバドロップケーブル35は、吊り線19が例えばφ1.2mmの亜鉛メッキ鋼線であり、抗張力体7がアラミド繊維強化プラスチックであり、光ファイバ3が例えばφ0.25mmのSM形光ファイバ×4心であり、保護材5がナイロン製であり、外被9は難燃ポリオレフィンである。また、保護材5は、長対角線5A×短対角線5Bが例えば1.8mm×0.3mmである菱形状をなしており、Y軸から左右に約0.3mmずつ、ずらした位置に配置した。すなわち、図7において上側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が、図7において右端の光ファイバ3にかかる位置に配置され、図7において下側の保護材5の菱形状の短対角線5B上の角が、図7において左端の光ファイバ3にかかる位置に配置される。また、光ファイバドロップケーブル35は長径×短径が例えば6.0mm×2.0mmである。
【0049】
その結果、光ファイバドロップケーブル35は、外被9をノッチ部15から左右に引き裂くことにより、光ファイバ3は4心ともに容易に取り出しが可能であった。また、波長1.55μmにおける伝送損失は、0.25dB/km以下であった。また、−30℃〜+70℃における損失温度変動は、0.05dB/km以下であり、良好な特性を有していることが確認された。
【0050】
以上のことから、下記の効果を奏する。
【0051】
(1)保護材5を光ファイバ3の図1、図3および図5において上下に配置した構造の光ファイバケーブル1,25,31において、前記保護材5を菱形状とすることにより、蝉の産卵管から光ファイバ3を保護でき、かつ、保護材5の菱形状の頂点(角)が光ファイバ列の上のノッチの役割を果たすために、光ファイバ3の口出し性を向上させることができる。
【0052】
(2)上記の(1)の理由で、菱形状の保護材5を用いたことにより、光ファイバ3の口出し性を向上させることができることから、保護材5を幅広くすることが可能となるので、蝉に産卵管を外被9の表面の斜め方向から刺された場合でも、光ファイバ3を保護することができる。
【0053】
(3)菱形状の保護材5を光ファイバ列の中心から光ファイバ3の列方向(X軸方向)において左右にずらすことにより、外被9を引き裂いた時に光ファイバ列の両端に亀製を到達させることができるので、多心を実装した光ファイバケーブルであっても光ファイバ3の取出し性を良くすることができる。
【0054】
(4)平面13と垂直な断面において外被9の表面に突出した突出部27の内部に保護材5の菱形状の角を配置することにより、前記突出部27から外被9に切り込みを入れて保護材5を容易に取り出すことができ、取り出された保護材5を引裂き紐として、光ファイバケーブル25の長手方向に外被9を引き裂くことができる。
【0055】
なお、この発明の他の実施の形態のとしては、前述した第1〜第3の実施の形態の光ファイバケーブル1,25,31におけるケーブル支持線部23を無くした光エレメント部15のみのインドアドロップケーブルなどの光ファイバケーブルであっても構わない。この光エレメント部15のみの光ファイバケーブルは架空集合ドロップケーブルの光エレメント部としても適用される。この場合の光ファイバケーブルの作用、効果は前述した光ファイバドロップケーブル1,25,31と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図2】図1の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルから光ファイバを口出しするときの状態を示す断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図4】(A)〜(C)は、図3の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルから光ファイバを口出しするときの状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図6】第1の実施の形態に基づいて試作した光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図7】第3の実施の形態に基づいて試作した光ファイバケーブルとしての例えば光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図8】従来の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図9】図8の光ファイバドロップケーブルを用いて各加入者宅に引き込むときの状態説明図である。
【図10】従来の他の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【図11】従来の別の光ファイバドロップケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第1の実施の形態の)
3 光ファイバ
5 保護材
7 抗張力体
9 外被(光エレメント部11の)
11 光エレメント部
13 平面
15 ノッチ部
17 首部
19 吊り線(支持線)
21 外被(ケーブル支持線部23の)
23 ケーブル支持線部
25 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第2の実施の形態の)
27 突出部
29 切込み工具
31 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第3の実施の形態の)
33 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第1の実施の形態の試作)
35 光ファイバドロップケーブル(光ファイバケーブル、第3の実施の形態の試作)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバと、この光ファイバを挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体と、前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を被覆した外被と、から長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバと一対の抗張力体との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバに対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバから距離をおいて前記光ファイバを挟み込む保護材が、前記外被の内部に配設されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記各保護材の菱形状の長対角線が前記X軸とほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバが2心以上の光ファイバ列であるとき、前記両側の保護材のうちの一方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の一端の1心にかかる位置に配置され、かつ、前記両側の保護材のうちの他方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の他端の1心にかかる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記X軸の平面と垂直な断面において前記外被の表面に突出する突出部が形成され、かつ、前記保護材の菱形状の短対角線上の角が前記突出部の内部に位置していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光エレメント部に、支持線を外被で被覆した長尺のケーブル支持線部が互いに平行に一体化されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光ファイバケーブル。
【請求項1】
1以上の光ファイバ素線又は光ファイバ心線、あるいは光ファイバテープ心線からなる光ファイバと、この光ファイバを挟んでその幅方向の両側に平行に配置された少なくとも一対の抗張力体と、前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を被覆した外被と、から長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバと一対の抗張力体との中心を通るX軸の平面と垂直な断面において菱形状の断面を有し、かつ前記光ファイバに対して前記X軸に直交するY軸方向の両側に前記光ファイバから距離をおいて前記光ファイバを挟み込む保護材が、前記外被の内部に配設されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記各保護材の菱形状の長対角線が前記X軸とほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバが2心以上の光ファイバ列であるとき、前記両側の保護材のうちの一方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の一端の1心にかかる位置に配置され、かつ、前記両側の保護材のうちの他方の保護材の菱形状の短対角線上の角が、前記X軸方向で前記光ファイバ列の他端の1心にかかる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記X軸の平面と垂直な断面において前記外被の表面に突出する突出部が形成され、かつ、前記保護材の菱形状の短対角線上の角が前記突出部の内部に位置していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光エレメント部に、支持線を外被で被覆した長尺のケーブル支持線部が互いに平行に一体化されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−32837(P2008−32837A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203617(P2006−203617)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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