説明

光ファイバケーブル

【課題】スロットレス型光ファイバケーブルにおいてテンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線と、光ファイバ心線の周囲に形成された緩衝層と、緩衝層の周囲に形成された外被と、外被内に設けられたテンションメンバと、を備えたスロットレス型光ファイバケーブルにおいて、テンションメンバを、モノフィラメント若しくは繊維強化プラスチック(FRP)からなる複数のロッドで構成し、緩衝層の周囲に均等に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関し、特に、スロットレス型の光ファイバケーブルに内設されるテンションメンバの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ心線を溝型のスロットスペーサに集合したスロット型光ファイバケーブルに対して、スロットレス型と呼ばれる光ファイバケーブルが知られている(例えば、特許文献1)。スロットレス型光ファイバケーブルは、スロットスペーサを用いないため、光ファイバケーブルの細径化を図ることができる。
図4は、24心スロットレス型光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
図4に示すスロットレス型光ファイバケーブル10は、6枚の4心光ファイバテープ心線11が光ファイバケーブル10の中心部に積層されて配置されている。光ファイバテープ心線11の周囲には、PPヤーン(ポリプロピレン・ヤーン)などからなる緩衝層12が配置され、その周囲に押え巻きテープ13が巻回されている。そして、押え巻きテープ13の外側にポリエチレンなどからなる外被(シース)14が押出成形により形成されている。
さらに、外被14内には、2本のテンションメンバ(抗張力体)31,31が光ファイバケーブル10の長手方向と平行に埋設されている。テンションメンバ31,31は、ケーブル敷設時に作用する張力或いは敷設後に生ずる温度変化に起因する応力等により光ファイバテープ心線11が損傷するのを防止するために設けられる。したがって、テンションメンバ31には引張に対する高い耐性が要求されるため、一般に、鋼線等の金属が用いられる。
また、外被14内には、中間後分岐を容易にすべく、2本の引裂紐15,15が押え巻きテープ13に添って光ファイバケーブル10の長手方向と平行に埋設されている。
【0003】
特許文献2では、光ファイバ心線及び緩衝層の周囲にロッド状ではなくテープ状の抗張力体を配置した光ファイバケーブルが開示されている。これにより、光ファイバケーブルの曲げの方向性はなくなると考えられる。
【特許文献1】特許第3592569号公報
【特許文献2】特開2004−117675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示す従来のスロットレス型光ファイバケーブル10において、テンションメンバ31を鋼等の金属で構成することは、光ファイバケーブル10の軽量化に対して障害となる。
また、2本のテンションメンバ31,31は、一般に中心に関して対称位置に配置されるため、テンションメンバ31,31を結んだ軸が必然的に曲げの中心となる。そのため、光ファイバケーブル10に曲げの方向性が出てしまい、ケーブルの取り回し性が低下する要因となっている。
さらに、スロットレス型光ファイバケーブル10においては、中間後分岐で外被除去をする際に鋭利な工具を使用して引裂紐15を取り出すために、誤って光ファイバ心線を断線させてしまう危険性がある。したがって、外被除去作業は、慎重に行う必要があり、工数が多く時間がかかるものとなっている。
【0005】
特許文献2に記載の光ファイバケーブルによれば、取り回し性が改善されることが期待されるが、テープ状抗張力体が光ファイバケーブルの中心から離れた位置にある場合には、ケーブルを曲げるときの可撓性が阻害されてしまう。
また、テープ状抗張力体は、SUSやアルミニウム等の金属又は硬質樹脂で構成されているため融点が高く、外被の押出成形時の熱により溶融されにくいため、外被との密着性が低くなる。ケーブルを細径化していく際には、当然外被厚を薄くする必要があるが、その場合、外被の押出成形時にテープ状抗張力体に伝達される熱量が少なくなるため、さらに密着性が低下してしまう。そして、テープ状抗張力体と外被の密着性が弱いと、温度変動がある場合において、テープ状抗張力体と外被が剥がれてしまいテープ状抗張力体が抗張力体として機能しなくなり、ケーブル特性が低下することとなる。
【0006】
本発明は、スロットレス型光ファイバケーブルにおいてテンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線の周囲に形成された緩衝層と、
前記緩衝層の周囲に形成された外被と、
前記外被内に設けられたテンションメンバと、を備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記テンションメンバは、モノフィラメント若しくは繊維強化プラスチック(FRP)からなる複数のロッドで構成され、前記緩衝層の周囲に均等配置されていることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記テンションメンバは、ヤング率が8000MPa以上の材料で構成される。
【0009】
好ましくは、前記テンションメンバは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ガラス繊維強化樹脂、アラミド繊維強化樹脂、PBO繊維強化樹脂のうちから選定された材料で構成される。
【0010】
さらに好ましくは、前記テンションメンバは、周囲に接着層を有し、この接着層を介して前記外被と密着する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スロットレス型光ファイバケーブルにおいてテンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る24心スロットレス型光ファイバケーブルの断面図である。
図1に示すスロットレス型光ファイバケーブル1は、6枚の4心光ファイバテープ心線11が光ファイバケーブル1の中心部に積層されて配置されている。なお、4心光ファイバテープ心線とは、4本の光ファイバ心線からなる光ファイバテープ心線を意味する。光ファイバテープ心線11の周囲には、PPヤーン(ポリプロピレン・ヤーン)などからなる緩衝層12が配置されている。そして、その外側にポリエチレンなどからなる外被(シース)14が押出成形により形成されている。
【0013】
外被14内には、8本のロッドからなるテンションメンバ(抗張力体)21,21,・・が光ファイバケーブル1の長手方向と平行に埋設されている。ここで、ロッドとは、線状部材を意味する。
このテンションメンバ21は、モノフィラメント若しくは繊維強化樹脂(以降、FRPと呼ぶ。)からなり、緩衝層12の周囲に等間隔で均等配置されている。また、光ファイバケーブル1を曲げたときの可撓性を確保するために、テンションメンバ21はなるべく内側に配置されている。
なお、ここでいうモノフィラメントとは1本のフィラメントからなる糸を指し、FRPとは数本から数十本のフィラメントをプラスチックで補強した物を意味する。
【0014】
テンションメンバ21は、ヤング率が8000MPa以上の材料で構成されることが好ましい。テンションメンバ21は規定の許容張力を要求されるが、ヤング率が8000MPaよりも小さい材料でこれを実現しようとすると、テンションメンバ21の断面積が大きくなってしまい、ケーブルの細径化が困難となるためである。
【0015】
テンションメンバ21を構成するロッドとしては、例えば、表1に示すものが挙げられる。すなわち、テンションメンバ21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等からなるモノフィラメント、若しくはガラス繊維強化樹脂(GFRP)、アラミド繊維強化樹脂(KFRP)、PBO繊維強化樹脂(PBOFRP)等のFRPから選定された材料で構成される。
また、各ロッドの寸法は、テンションメンバ21を構成するロッドの本数やヤング率により適宜選択されるが、光ファイバケーブル1の細径化の観点から直径0.3mm〜1.0mmが好ましい。
【0016】
【表1】

【0017】
表1における「0.1%伸び時の張力」とは、表1に記載の材料で構成した1本のロッドが0.1%伸びるときの張力であり、ヤング率×断面積で算出される。したがって、この値にテンションメンバ21を構成するロッドの本数を乗じた値が0.1%伸びを想定した場合のテンションメンバ21の許容張力の限界値となる。
第1実施形態では、テンションメンバ21を8本のロッドで構成しているので、例えば、寸法φ0.5mmのPETを選定した場合、許容張力1.92kgfを実現できる。言い換えると、光ファイバケーブル1に要求される許容張力に基づいて、テンションメンバ21を構成する材料、寸法、及び本数を適宜設計することができる。
【0018】
ところで、テンションメンバ21がテンションメンバとしての機能を発揮するには、外被14と適切な強度で密着していることが要求される。例えば、テンションメンバ21と外被14との密着が弱すぎると、光ファイバケーブル1の曲げや温度変化によってテンションメンバ21と外被14がはがれてしまい、テンションメンバとして機能しなくなる。
そこで、個々のテンションメンバ21において、それぞれの表面積の50%以上が外被14と接触するようにすることが好ましい。このようにすることでたとえば−30℃〜70℃の温度変化を光ファイバケーブル1に与えたとしてもテンションメンバ21と外被14が剥離することがなく、温度変化の大きい環境下で使用しても問題が生じにくい光ファイバケーブルとなる。なお、図1に示すテンションメンバ21は、外被14との接触面積は表面積のほぼ100%となっている。
【0019】
本実施形態に係る光ファイバケーブル1によれば、スロットレス型の構造とすることで光ファイバケーブル1の細径化を図ることができるとともに、テンションメンバ21が金属に比べて比重の小さいモノフィラメント若しくはFRPからなる複数のロッドで構成されているので光ファイバケーブル1の軽量化を図ることができる。
テンションメンバ21は、光ファイバテープ心線11を囲繞する緩衝層12の周方向に均等配置されているので、曲げの方向性がなくなり、取り回し性が改善される。
外被14を除去するとき、工具の刃は必ずいずれかのテンションメンバ21に到達し止まるので、外被除去作業により光ファイバテープ心線11が損傷するのを防止できる。さらに、パイプカッタを使用できるようになるので外被除去工程に係る作業性が格段に改善される。
【0020】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
図2に示す光ファイバケーブル2では、緩衝層12の周囲に押え巻きテープ13が巻回され、その外側の外被14内に、14本のロッドからなるテンションメンバ22,22,・・が互いに接触した状態で光ファイバケーブル2の長手方向と平行に埋設されている。
このような構造によれば、個々のテンションメンバ22の断面積を小さくしてもテンションメンバ22,22,・・の総断面積を維持できるので、光ファイバケーブル2の細径化を図ることができる。ただし、テンションメンバ22の本数が増加する分だけ製造工程が複雑になるため、12本以下で構成することが好ましい。
また、このようにテンションメンバ22,22,・・が互いに接触した状態とすることにより、それぞれのテンションメンバ22,22,・・が互いに干渉することで側圧に対する耐性が上がるうえ、外皮除去の際に最も刃が入りづらい構成とできる。さらに、断面積が等しいテンションメンバ22を用いた場合で比較すると、光ファイバケーブルの最も中心近くにテンションメンバ22配置できることになり、可撓性が向上する。
なお、図2に示す光ファイバケーブル2においても、図1に示す光ファイバケーブル1と同様の効果が得られる。
【0021】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
図3に示す光ファイバケーブル3では、円弧帯状の3個のテンションメンバ23,23,23を組み合わせることで、全体としてパイプ形状のテンションメンバ23を構成している。
テンションメンバ23,23の間隙には外被14が入り込んでいる。したがって、個々のテンションメンバ23において、それぞれの表面積の50%以上が外被14と接触していることになるので、テンションメンバ23と外被14との密着性は高い。
【0022】
このような構造によれば、緩衝層12の周囲にテンションメンバ23を効率よく配置できるので、個々のテンションメンバ23,23,23の断面積(厚み)を小さくでき、光ファイバケーブル2の細径化を図ることができる。また、テンションメンバ23の本数を少なくできるので、製造工程が簡略化される。
なお、図3に示す光ファイバケーブル2においても、図1に示す光ファイバケーブル1と同様の効果が得られる。
【0023】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態において、テンションメンバ21,22,23の最外層に外被14との接着層(例えば、変性ポリオレフィン樹脂)を形成するようにしてもよい。これにより、外被14の押出成形時に接着層が溶融されるので、テンションメンバ21,22,23と外被14との密着性を向上することができる。
テンションメンバ21,22,23の表面(少なくとも外被14との接触面)に凹凸を設けるようにすれば、外被14との接触面積が拡大されるので、テンションメンバ21,22,23と外被14との密着性をさらに向上することができる。
【0024】
また、本発明は、光ファイバテープ心線を収容した光ファイバケーブルに限定されず、1本あるいは複数の光ファイバ単心線を収容したスロットレス型光ファイバケーブルにも適用できる。
さらに、上記実施形態に係る光ファイバケーブル1,2,3において、外被14内に引裂線を埋設するようにしてもよい。光ファイバケーブル1,2においては、テンションメンバ21,22を引裂線として利用することもできる。
【0025】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【図2】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【図3】第3実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【図4】従来の光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 光ファイバケーブル
11 光ファイバテープ心線
12 緩衝層
13 押え巻きテープ
14 外被(シース)
15 引裂き線
21 テンションメンバ(抗張力体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線の周囲に形成された緩衝層と、
前記緩衝層の周囲に形成された外被と、
前記外被内に設けられたテンションメンバと、を備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記テンションメンバは、モノフィラメント若しくは繊維強化プラスチック(FRP)からなる複数のロッドで構成され、前記緩衝層の周囲に均等配置されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記テンションメンバは、ヤング率が8000MPa以上の材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記テンションメンバは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ガラス繊維強化樹脂、アラミド繊維強化樹脂、PBO繊維強化樹脂のうちから選定された材料で構成されることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記テンションメンバは、周囲に接着層を有し、この接着層を介して前記外被と密着することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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