説明

光ファイバケーブル

【課題】蝉の産卵管から光ファイバを防護し、接続作業の低下を防止する。
【解決手段】中心部に配した1本以上の光ファイバ3と、光ファイバの長手方向に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ光ファイバの中心をとおる直線上の光ファイバ3の両側に一対の抗張力体5と、光ファイバと一対の抗張力体との外周上を一体的に被覆したショアD硬度が45〜53からなる外層外被7と、2方向のうちの他方向に平行で、かつ光ファイバ3の中心をとおる直線上の外層外被の表面に形成された外層外被用ノッチ部9と、からなる長尺の光エレメント部11を構成する光ファイバケーブルであって、一対の抗張力体との間の外層外被内にあって、光ファイバの周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被13が形成されていると共に、この内層外被の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部に対応して内層外被用ノッチ15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルに関し、特に1本以上の例えば光ファイバ心線などからなる光ファイバを小規模ビル或いは一般家庭に引き込む際の電柱間に架設する少心架空光ファイバケーブル或いは小規模ビル或いは一般家庭に引き込みための光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FTTH(Fiber to the Home)すなわち、家庭またはオフィスでも超高速データ等の高速広帯域情報を送受できるようにするために、電話局から延線されたアクセス系の光ファイバケーブルから、ビルあるいは一般住宅などの加入者宅へ例えば光ファイバ心線などからなる光ファイバが引き落とされて、これを配線するために光ファイバドロップケーブルが用いられている。つまり、光ファイバドロップケーブルは電柱上の幹線ケーブルの分岐クロージャから家庭内へ光ファイバを引き込む際に用いられ、主に、光ファイバドロップケーブル(屋外線)や、より長い布設径間長に適用するために支持線サイズをUPした少心光架空ケーブルが使用されている。
【0003】
特許文献1,非特許文献1で知られているように、例えば、図7を参照するに、従来の光ファイバドロップケーブル101としては、例えば光ファイバ心線などからなる光ファイバ103と、この光ファイバ103の長手方向(図7において紙面に対して直交する方向)に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバ103の中心をとおる直線上の前記光ファイバ103の両側に前記光ファイバ103の長手方向と同方向へ延伸して配置した例えばアラミド繊維FRPなどからなる一対の抗張力体105と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105との外周上を被覆した例えば断面形状が矩形形状でノンハロゲン難燃シースなどの樹脂からなる外被107と、からなる長尺の光エレメント部109を構成している。
【0004】
この光エレメント部109において、前記光ファイバ103の上、下の前記外被107内に前記光ファイバ103の一定の距離をおいて平板状の介在物111が設けられている。
【0005】
前記長尺の光エレメント部109と、この光エレメント部109における前記外被107の図7において左側に首部113を介して例えば鋼線などからなる支持線115を被覆した樹脂からなる外被117で一体化された支持線部119と、で長尺の光ファイバドロップケーブル101が構成されている。
【0006】
前記介在物111を前記光ファイバ103の上、下の前記外被107内に前記光ファイバ103の一定の距離をおいて設けていることで、クマゼミが産卵管を前記外被107に刺し、光ファイバ103を断線させる障害が発生するのを防いでいる。
【0007】
また、クマゼミの産卵管被害を対策した光ファイバドロップケーブル121としては、図8に示されているものが使用されている。図8において、光ファイバドロップケーブル121としては、例えば光ファイバ心線などからなる光ファイバ103と、この光ファイバ103の長手方向(図8において紙面に対して直交する方向)に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバ103の中心をとおる直線上の前記光ファイバ103の両側に前記光ファイバ103の長手方向へ延伸して配置した例えばアラミド繊維FRPなどからなる一対の抗張力体105と、前記光ファイバ103と一対の抗張力体105との外周上を被覆した例えば断面形状が矩形形状で低摩擦性、耐磨耗性を有する高強度の樹脂からなる外被107と、からなる長尺の光エレメント部109を構成している。
【0008】
この光エレメント部109において、前記光ファイバ103の上、下の前記外被107の表面にはノッチ部123が形成されている。
【0009】
前記長尺の光エレメント部109と、この光エレメント部109における前記外被107の図8において左側に首部113を介して例えば鋼線などからなる支持線115を被覆した樹脂からなる外被117で一体化された支持線部119と、で長尺の光ファイバドロップケーブル121が構成されている。
【0010】
前記外被107が低摩擦性、耐磨耗性を有する高強度の樹脂からなっていることにより、産卵管が外被107に刺さらないように対策を講じたものである。
【0011】
また、特許文献2に知られているように、外被を2層構造とし、内層の外被の硬度ショアDを65以上、厚さを0.15mm以上とした構造もすでに知られている。
【特許文献1】特開2002−90591号公報
【特許文献2】特開2007−127848号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会講演論文集 2007年ソサイエティ大会B−10−7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した特許文献1、非特許文献1のごとき、図7に示した光ファイバケーブル101では、光ファイバ103の取り出し作業時に介在物111が邪魔となる。また、光ファイバ103の取り出しに外被107より出てきた介在物111を切断除去するなどの手間が掛かるなどの問題がある。
【0013】
また、上述した図8に示した光ファイバケーブル121では、高強度の外被107を使用しているため、樹脂製外被把持部材のオニ目、楔が、高強度の外被107に充分に噛み込むことができず、外被107の把持強度が低下するという問題がある。また、外被107が硬くなるため、外被107を引き裂く際に要する引き裂き力が上昇し、光ファイバ103の口出し性、支持線部119と光エレメント部109の分離性などの作業性が低下する。外被把持部材の取り付け性や口出し作業性を考慮して外被材の強度を選定すると、耐クマゼミ性効果が低減してしまう。
【0014】
さらに、特許文献2においては、保護材として、ポリアミド系熱可塑性樹脂のほか、ABS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、ABS/PVCアロイ、ASA樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合体、フッ素系樹脂、ポリアミドイミド、ポリアリレート、オレフィンビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ノルボルネン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニルなどが挙げられている。一方、光ファイバドロップケーブルの外被材は、紫外線に対する耐候性や耐燃焼性の要求、ノンハロゲン化の要求などから、オレフィン系熱可塑性樹脂(ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体など)を主成分として、カーボンブラック、難燃剤として水酸化マグネシウムなどを配合したものが一般的に使用されている。特許文献2に好適事例として適用されているポリアミド系樹脂をはじめとするこれら保護材は、光ファイバドロップケーブルの外被材として使用されておる難燃オレフィン系樹脂と相溶性に乏しく、融点が異なることから、押出し加工時に熱融着させることが困難である。また、特許文献2の事例のように、保護材の短径面にノッチを設けた構造は、ケーブル部本体の外被材の長幅方向の中央部にノッチを設けても、外層外被材のノッチ部を引裂くと同時に保護材を引裂いて、ファイバ心線を取り出すことが不可能であり、外層外被を引裂いた後に、さらに保護材を引裂いて、光ファイバ心線を取り出す必要があり、従来の光ファイバドロップケーブルに比べて作業性が悪くなるという問題がある。
【0015】
この発明は上述の課題を解決するために、蝉の産卵管から光ファイバを防護し、接続作業の低下を防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバケーブルは、中心部に配置した1本以上の光ファイバと、
この光ファイバの長手方向に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線上の前記光ファイバの両側に前記光ファイバの長手方向と同方向へ延伸して配置した一対の抗張力体と、
前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を一体的に被覆したショアD硬度が45〜53からなる外層外被と、
前記2方向のうちの他方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線の上、下の前記外層外被の表面に形成された外層外被用ノッチ部と、からなる長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルであって、
前記一対の抗張力体との間の外層外被内にあって、前記光ファイバの周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被が形成されていると共に、この内層外被の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部に対応して内層外被用ノッチが形成され、前記外層外被と内層外被とが熱融着により一体化されており、外層外被に設けた外層外被用ノッチ部から一括して内層外被が引裂けることを特徴とするものである。
【0017】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメント部に、支持線へ外被で被覆した長尺の支持線部が互いに平行に一体化されていることが好ましい。
【0018】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、内層外被材用ノッチ部の最小厚さを含む前記光ファイバの表面から前記内層外被の表面までの距離が0.25mm以上で、前記内層外被用ノッチ部の開口部端を結んだ線の内側に、前記外層外被用ノッチ部のノッチ先端が位置していることが好ましい。
【0019】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記内層外被の表面に、多数の突起部が設けられていることが好ましい。
【0020】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記内層外被の断面形状が、各辺を湾曲させた矩形形状からなっていることが好ましい。
【0021】
この発明の光ファイバケーブルは、中心部に配置した1本以上の光ファイバと、
この光ファイバの長手方向に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線上の前記光ファイバの両側に前記光ファイバの長手方向と同方向へ延伸して配置した一対の抗張力体と、
前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を一体的に被覆したショアD硬度が45〜53からなる外層外被と、
前記2方向のうちの他方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線の上、下の前記外層外被の表面に形成された外層外被用ノッチ部と、からなる長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルであって、
前記外層外被内にあって、前記光ファイバと一対の抗張力体の周囲に、前記光ファイバの周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被が形成されていると共に、この内層外被の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部に対応して内層外被用ノッチが形成され、前記外層外被と内層外被とが熱融着により一体化されており、外層外被に設けた外層外被用ノッチ部から一括して内層外被が引裂けることを特徴とするものである。
【0022】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメント部に支持線を外被で被覆した長尺の支持線部が互いに平行に一体化されていることが好ましい。
【0023】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、内層外被用ノッチ部の最小厚さを含む前記光ファイバの表面から前記内層外被の表面までの距離が0.25mm以上で、前記内層外被用ノッチ部の開口部端を結んだ線の内側に、前記外層外被用ノッチ部のノッチ先端が位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、一対の抗張力体との間のショアD硬度が45〜53からなる外層被覆内にあって光ファイバの周囲に、または、外層被覆内にあって、光ファイバおよび一対の抗張力体の周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被が被覆されていることから、この内層外被によりクマゼミなどのセミの産卵管から光ファイバを保護することができる。また、外層外被のショアD硬度が53以下であるので、クロージャ、コネクタにより外層外被を把持する際、そのオニ目、楔が容易に外層外被に刺さり、安定した把持力を確保することが出来る。
【0025】
従来のような介在物を用いていないため、光ファイバ取り出し作業時に、介在物により作業性が低下することがない。さらに、内層外被と外層外被が熱融着によりくっついて一体化し、内層外被の内層外被用ノッチ部と外層外被の外層外被用ノッチ部位置を揃えることにより、外層外被の外層外被用ノッチ部を引裂くと同時に、内層外被の内層外被用ノッチ部が引裂けることにより、外層外被の外層外被用ノッチ部を引き裂くことで一括して内層外被を引裂いで光ファイバ心線の取り出しが可能となり、端末作業性に優れた光ファイバドロップケーブルを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1を参照するに、光ファイバドロップケーブル1としては、中心部に配置した1本以上の例えば光ファイバ心線などからなる光ファイバ3と、この光ファイバ3の長手方向(図1において紙面に対して直交する方向)に直交した2方向のうちの一方方向(図1において左右方向)に平行で、かつ、前記光ファイバ3の中心をとおる直線上の光ファイバ3の両側に前記光ファイバ3の長手方向と同方向へ延伸して配置した例えばアラミド繊維FRPなどからなる一対の抗張力体5と、前記光ファイバ3と一対の抗張力体5との外周上一体的に被覆したノンハロゲン難燃シースからなる外層外被7と、前記光ファイバ3の前記2方向のうちの他方方向(図1において上下方向)の上、下にあって、前記外層外被7の上、下表面に形成された外層外被用ノッチ部9と、からなる長尺の光エレメント部11で構成されている。
【0028】
前記一対の抗張力体5との間の外層外被7内にあって、前記光ファイバ3の周囲に前記外層外被よりも高硬度の内層外被13が形成されていると共に、この内層外被13の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部11に対応して内層外被用ノッチ部15が形成されていて、前記外層外被7と内層外被13とが熱融着によりくっついて一体化されている。外層外被7の材料としては、紫外線に対する耐候性や耐燃焼性の要求、ノンハロゲン化の要求などから、オレフィン系熱可塑性ノンハロゲン難燃樹脂(ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体など)を主成分として、紫外線劣化対策としてカーボンブラック、難燃剤として水酸化マグネシウムなどのノンハロゲン系難燃剤を配合したもの)が好適である。内層外被13を構成する硬度(ショアD)55以上の材料としては、外層外被7の材料と押出し時の熱で融着する材料として、高密度ポリエチレン、或いはオレフィン系熱可塑性樹脂に、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリプリプロピレンなどを配合して、高硬度化したものが好適である。
【0029】
前記光エレメント部11には、首部17を介して例えば鋼線などからなる支持線19を被覆した外被21からなる長尺の支持線部23が互いに平行に一体化されている。なお、この実施の形態では前記外被21は前記外層外被7の材料と同じものが使用されている。
【0030】
上記構成により、クマゼミが産卵管を外層外被7に刺した場合でも、前記光ファイバ3の周囲に前記外層外被7よりも高硬度の内層外被13が形成されていることにより、クマゼミの産卵管から光ファイバ3を断線させることなく、保護することができる。また、外層外被7としてノンハロゲン難燃シースを用いていることにより、クロージャ、コネクタにより外層外被7を把持する際、そのオニ目、楔等が容易に外層外被7に刺さり、安定した把持力を確保できる。
【0031】
この実施の形態において、内層外被13は、クマゼミの産卵管が光ファイバ3に到達しないように充分な硬さを有していることが重要である。また、光ファイバ3の口出しを容易にするためには、外層外被7と内層外被13が熱融着によりくっついており、外層外被7の外層外被用ノッチ部9から外層外被7を引き裂いたときに外層外被7と内層外被13が一括して容易に引き裂けることが重要である。さらに、外層外被7の外被材は、従来の樹脂製外被把持部材の楔が充分に噛み込める硬さでなければならない。
【0032】
そこで、クマゼミの産卵管より光ファイバ3を保護するための内層外被13の材料の硬さと厚さにといて検討した結果を説明する。
【0033】
ショアD硬度の異なる樹脂A、B、Cを用いて、光ファイバケーブル1を作製し、クマゼミが出現するフィールドに設置して、クマゼミの産卵管よる被害状況を調査した。その調査は表1の通りである。
【表1】

【0034】
表1の結果から分かるように、内層外被13の材料の硬度をショアD硬度55以上とし、内層外被用ノッチ部15の最小厚さを含む厚さを0.25mm以上とすることで、クマゼミの産卵管による外傷数を大幅に低減し、光ファイバ3を保護することが可能であることが確認された。さらに、硬度が高い方が耐クマゼミ効果が高く、ショアD硬度63以上の内層外被13がより好ましいものである。なお、内層外被13のショアD硬度は、70以下である。70を超えると硬すぎて内層外被用ノッチ部15を引裂く時に要する引き裂き力が15N以上となり、光ファイバ103をコネクタ取付けの為の規定長に合わせて口出しする際の作業性が悪くなるからである。
【0035】
次に、ノッチ引き裂き性(光ファイバ3の口出し性)について説明すると、容易に光ファイバ3を取り出すことを可能とするためには、外層外被7と内層外被13が熱融着によりくっついていて、外層外被7に設けた外層外被用ノッチ部11から外層外被7を引き裂いたときに、一括して内層外被13が引き裂けて光ファイバ3が取出せることが重要である。一括して外層外被7の外層外被用ノッチ部9を結んだ線が、図2に示されているように、内層外被13の内層外被用ノッチ部15の開口部を結んだ線上の内側にくる必要がある。
【0036】
この外層外被7を引き裂く際には、図3に示したように、工具25A、25Bを用いて行われる。内層外被13の材料は、上述したように、耐クマゼミ性の観点から、硬度を高くする必要があるため引き裂き力が高い。このため、外層外被7の外層外被用ノッチ部11を結んだ線が、内層外被13の内層外被用ノッチ部15の開口部を結んだ線上の内側にあっても、外層外被7の材料が柔らかいと外層外被7のみが破壊(引きちぎれてしまう)され、内層外被13が引裂けずに光ファイバ3の口出しができなくなる。また、外層外被7の材料が硬すぎると、外被把持部材の楔が刺さらなくなる。実際に表1に示した樹脂Dの厚さを0.3mmを内層外被13の外被材として、図1に示した光ファイバケーブル1を試作し、外層外被7の硬度を種々変えた樹脂を使用して、光ファイバ3の口出し性、コネクタの外被把持部材の取り付け性を確認した。その結果は、表2のとおりである。
【表2】

【0037】
この表2の結果から分かるように、ショアD硬度45〜53が適正範囲であることが確認された。そして、厚さは、0.1mm以上で0.35mm以下がよい。光エレメント部11の短径方向の寸法を従来の光ファイバケーブルと同じく1.8〜2.2mmの公差内とし、外層外被7と内層外被13をくっつけて一体化させ、一括して引裂くためには、外層外被7の厚さを0.1mm以上とする必要があり、且つ、効果的な耐クマゼミ性を得るために内層外被用ノッチ部15の最小厚さを含む厚さを0.25mm以上とするには、外層外被7の厚さを0.35mm以下にするのが望ましい。
【0038】
以上のことから、内層外被13の材料の硬度をショアD硬度を55以上とし、内層外被用ノッチ部15の最小厚さを含む0.25mm以上とし、外層外被7をノンハロゲン難燃シースとすることで、光ファイバ3の周囲の高強度の内層外被13によりクマゼミの産卵管から光ファイバ3を保護することができる。外層外被7、内層外被13共に外層外被用ノッチ部9、内層外被用ノッチ部15を付けた構造であって、それぞれの外層外被用ノッチ部9、内層外被用ノッチ部15は、内層外被用ノッチ部15の開口部端をそれぞれ結んだ線の内側に外層外被用ノッチ部9の先端が位置する。さらに、外層外被7と内層外被13はくっついて一体化されており、外層外被7の材料のショアD硬度が45〜53の範囲とすることで、外層外被7と内層外被13が一括して外層外被用ノッチ部11、内層外被用ノッチ部15より引き裂くことが可能となり、クロージャ、コネクタ等の外被把持部材の取り付けが可能である光ファイバドロップケーブル1を実現させることができる。
【0039】
上記の光ファイバドロップケーブル1の作用を述べると、次のとおりである。
【0040】
(1)光ファイバ3の周囲に高硬度の内層外被13を被覆しているので、この高硬度の内層外被13によりクマゼミの産卵管から光ファイバ3を保護することができる。
【0041】
(2)従来の光ファイバドロップケーブル1のような介在物を用いていないため、光ファイバ3の取り出し性が良好である。
【0042】
(3)高硬度の内層外被13上にショアD硬度が45〜53のノンハロゲン難燃シースからなる外層外被7を被覆しているため、高強度の内層外被13を紫外線などの経年劣化から保護することができる。このため、クマゼミから長期的に光ファイバ3を保護することが可能となる。
【0043】
(4)高硬度の内層外被13を押出し成形により施すことが可能であり、被覆形状の設計自由度が高い。
【0044】
(5)外層外被7と内層外被13が外層外被用ノッチ部11から、一括して引き裂くことが可能であり、光ファイバ3の取り出し性が優れている。
【0045】
図4には、図1に代わる他の実施形態の光ファイバドロップケーブル27の断面図が示されている。図4において、図1における部材と同じ部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図4において、図1における内層外被13の代わりに、断面が矩形状からなる内層外被29とし、この内層外被29の表面に、多数の突起部31が設けられている。それ以外は図1と同じであるため、詳細な説明は省略する。内層外被13の材料に用いる高密度ポリエチレンは、一般的に、外層外被7の材料に用いているオレフィン系熱可塑性ノンハロゲン難燃樹脂より融点が高いため、押出し時の外層外被材の樹脂温が充分に高くないと、両者を充分に熱融着させることが困難な場合がある。図4は、このような状態を鑑みた構造である。
【0047】
上記構成により、表面に多数の突起部31が設けられた内層外被29とすることにより、外層外被7との接触面積を増やすことになり、外層外被7と内層外被29との密着力を高めて一体化させることができる。また、突起部は断面積が小さい為に押出し時に外層外被7に触れることにより容易に溶融し、外層外被7の材料に融着させることが出来る。それ以外の作用、効果は、上述したものと同様である。
【0048】
図5には、図1に代わる他の実施形態の光ファイバドロップケーブル33の断面図が示されている。図4において、図1における部材と同じ部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図5において、図1における内層外被13の代わりに、断面形状が各辺を湾曲させた矩形形状からなっている内層外被35としたものである。それ以外は図1と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
上記構成により、断面形状が各辺を湾曲させた矩形形状からなっている内層外被35とすることにより、外層外被7との接触面積を増やすことになり、光ファイバ3への周囲へよりクマゼミの産卵管から保護する面積を増やすことができる。それ以外の作用、効果は、上述したものと同様である。
【0051】
図6には、図1に代わる他の実施形態の光ファイバドロップケーブル37の断面図が示されている。図6において、図1における部材と同じ部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
図6において、図1における内層外被13の代わりに、前記外層外被7内にあって、前記光ファイバ3と一対の抗張力体5の周囲に内層外被39が形成されているものである。それ以外は図1と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
上記構成により、断面形状が前記外層外被7内にあって、前記光ファイバ3と一対の抗張力体5の周囲に形成されている高強度の内層外被39とすることにより、この高強度の内層外被39でクマゼミの産卵管から保護できる面積を増加する効果と、内層外被39内に抗張力体5を配置することにより、内層外被39の被覆後、外層外被7を被覆するまでの間に、内層外被39の収縮等により光ファイバ3の損失増加を防ぐ効果がある。それ以外の作用、効果は、上述したものと同様である。
【0054】
なお、上述した図1〜図6の実施の形態の例は、光ファイバドロップケーブルの例で説明したが、インドア光ファイバケーブルであっても適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】図1における光ファイバケーブルの引き裂き状態を説明するための説明図である。
【図3】図2において、引き裂き工具で外層外被を引き裂く一例を説明するための説明図である。
【図4】この発明の図1に代わる他の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図5】この発明の図1に代わる他の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図6】この発明の図1に代わる他の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図7】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図8】従来の他の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 光ファイバドロップケーブル
3 光ファイバ
5 抗張力体
7 外層外被
9 外層外被用ノッチ部
11 光エレメント部
13 内層外被
15 内層外被用ノッチ部
17 首部
19 支持線
21 外被
23 支持線部
25A、25B 工具
27 光ファイバドロップケーブル
29 内層外被
31 突起
33 光ファイバドロップケーブル
35 内層外被
37 光ファイバドロップケーブル
39 内層外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に配置した1本以上の光ファイバと、
この光ファイバの長手方向に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線上の前記光ファイバの両側に前記光ファイバの長手方向と同方向へ延伸して配置した一対の抗張力体と、
前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を一体的に被覆したショアD硬度が45〜53からなる外層外被と、
前記2方向のうちの他方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線の上、下の前記外層外被の表面に形成された外層外被用ノッチ部と、からなる長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルであって、
前記一対の抗張力体との間の外層外被内にあって、前記光ファイバの周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被が形成されていると共に、この内層外被の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部に対応して内層外被用ノッチが形成され、前記外層外被材と内層外被材とが熱融着により一体化されており、外層外被に設けた外層外被用ノッチ部から一括して内層外被が引裂けることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記光エレメント部に、支持線を外被で被覆した長尺の支持線部が互いに平行に一体化されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
内層外被用ノッチ部の最小厚さを含む前記光ファイバの表面から前記内層外被の表面までの距離が、0.25mm以上で、前記内層外被用ノッチ部の開口部端を結んだ線の内側に、前記外層外被用ノッチ部のノッチ先端が位置していることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記内層外被の表面に、多数の突起部が設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記内層外被の断面形状が、各辺を湾曲させた矩形形状からなっていることを特徴とする請求項1、2または3記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
中心部に配置した1本以上の光ファイバと、
この光ファイバの長手方向に直交した2方向のうちの一方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線上の前記光ファイバの両側に前記光ファイバの長手方向と同方向へ延伸して配置した一対の抗張力体と、
前記光ファイバと一対の抗張力体との外周上を一体的に被覆したショアD硬度が45〜53からなる外層外被と、
前記2方向のうちの他方向に平行で、かつ前記光ファイバの中心をとおる直線の上、下の前記外層外被の表面に形成された外層外被用ノッチ部と、からなる長尺の光エレメント部を構成する光ファイバケーブルであって、
前記外層外被内にあって、前記光ファイバと一対の抗張力体の周囲に、前記光ファイバの周囲にショアD硬度が55以上からなる内層外被が形成されていると共に、この内層外被の上、下表面に前記外層外被用ノッチ部に対応して内層外被用ノッチが形成され、前記外層外被と内層外被とが熱融着により一体化されており、外層外被に設けた外層外被用ノッチ部から一括して内層外被が引裂けることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記光エレメント部に支持線を外被で被覆した長尺の支持線部が互いに平行に一体化されていることを特徴とする請求項6記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
内層外被用ノッチ部の最小厚さを含む前記光ファイバの表面から前記内層外被の表面までの距離が、0.25mm以上で、前記内層外被用ノッチ部の開口部端を結んだ線の内側に、前記外層外被用ノッチ部のノッチ先端が位置していることを特徴とする請求項6または7記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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