説明

光ファイバケーブル

【課題】建物の美観を保ち、心線対照が可能な色味を有する光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 光ファイバ心線10と、光ファイバ心線10に並行して配置された抗張力体12と、光ファイバ心線10及び抗張力体12を被覆する外被14とを備える。外被14は、水酸化マグネシウム、赤燐、及び酸化チタンを含有するポリオレフィン樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者用光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
加入者用光ファイバケーブルには、アクセス系光ファイバケーブルから加入者宅へ引き込む光ドロップケーブルと、加入者宅内、及びビルあるいはマンション等の構内で用いられる光インドアケーブルがある。加入者宅、及びビルあるいはマンション等の構内へのケーブルの布設においては、外観上の問題から、ケーブルの外被に用いる樹脂には、白色、灰色、あるいは茶色等の非黒色のような外壁に似合った色味が要求される。また、地球環境保護の観点から、ノンハロゲン難燃性の外被が用いられる。
【0003】
また、光ファイバケーブルの布設や保守作業に際しては、作業対象の心線を特定する心線対照が実施される。ケーブルの外被が非黒色であれば、ケーブルを折り曲げることにより、外被からの漏れ光を確認することができ、任意の心線の対照ができ、障害点の検出を行うことができる。一方、ケーブルの外被を黒色にすると、美観を損ねるだけでなく、心線対照も不可能となる。
【0004】
光ファイバケーブルの外被に用いる樹脂の色味を灰色系や茶色系のような建物の美観を損ねない非黒色にする場合、樹脂に添加する難燃剤の種類や量が限られる。赤燐は、水酸化マグネシウムとの併用で難燃性に相乗効果をもたらす。しかし、難燃剤に赤燐を配合すると、色身が濃赤色となり、所望の色味を得ることが困難となる。赤燐特有の暗赤色を抑えるために、赤燐表面を改質皮膜で被覆する処理方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、赤燐表面の処理は簡単ではなく、製造コストが大幅に増加する問題がある。
【0005】
赤燐を配合しない場合、水酸化マグネシウムや、水酸化マグネシウムと窒素系化合物を難燃剤として添加した難燃樹脂が用いられる。この場合、所望の難燃姓を得るためには多量の難燃剤が必要となる。多量の難燃剤を添加した樹脂は、引張強度等の機械的特性や、耐寒性が大幅に低下してしまう。そのため、特に寒冷地での屋外での使用に耐えられないという問題がある。
【0006】
また、ポリ燐酸メラミンのような燐窒素系化合物を主成分とする、いわゆるイントメッセント系難燃剤は、難燃性に対して高い効率を有し、樹脂への添加量を低減することができる。その結果、外被に要求される機械的特性や難燃性を満足する白色の樹脂を得ることができる。しかし、イントメッセント系難燃剤を添加した樹脂は耐水性に問題があり、屋外での使用において難燃剤のブリードアウトが発生する問題がある。
【0007】
このように、外被に用いる樹脂には、難燃性、機械的特性、耐寒性、及び耐候性を満足するために、難燃剤として赤燐を配合することが望ましい。しかしながら、赤燐を用いると、樹脂の色味が赤色系となりやすく、非黒色系の色味を実現することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3935012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、難燃性、機械的特性、耐寒性及び耐候性を保持しつつ、建物の美観を保ち、心線対照が可能な色味を有する光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、光ファイバ心線と、光ファイバ心線に並行して配置された抗張力体と、光ファイバ心線及び抗張力体を被覆する外被とを備え、外被が、水酸化マグネシウム、赤燐、及び酸化チタンを含有するポリオレフィン樹脂である光ファイバケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃性、機械的特性、耐寒性及び耐候性を保持しつつ、建物の美観を保ち、心線対照が可能な色味を有する光ファイバケーブルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの外被に用いる樹脂の配合及び試験結果の一例を示す表である。
【図4】図3に示した試験項目の試験方法及び判定基準を示す表である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの外被に用いる樹脂の茶色系の色味を示す表である。
【図6】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの茶色系外被に用いる樹脂の配合及び試験結果の一例を示す表である。
【図7】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの灰色系外被に用いる樹脂の配合及び試験結果の一例を示す表である。
【図8】図7に示した試験項目の試験方法及び判定基準を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図1に示す加入者宅の屋内配線に用いる光インドアケーブル1や、図2に示す幹線ケーブルから加入者宅まで引き込む光ドロップケーブル2等である。光インドアケーブル1は、図1に示すように、光ファイバ心線10、抗張力体12、外被14を備える。抗張力体12は、光ファイバ心線10の両側に並行して配置される。外被14は、光ファイバ心線10及び抗張力体12を一括して被覆する。外被14の外縁には、光ファイバ心線10を挟んで対向する一対のノッチ16が設けられる。
【0016】
光ドロップケーブル2は、図2に示すように、ケーブル部4、支持線部6、及びケーブル部4と支持線部6とを接続する接続部8を備える。ケーブル部4には、光ファイバ心線10及び抗張力体12が含まれる。支持線部6には、支持線18が含まれる。支持線18は、光ファイバ心線10及び抗張力体12に並行して配置される。光ファイバ心線10、抗張力体12、及び支持線18は、外被14により一括して被覆される。外被14の外縁には、光ファイバ心線10を挟んで対向する一対のノッチ16が設けられる。
【0017】
光インドアケーブル1及び光ドロップケーブル2のケーブル部4の外形は、例えば角丸長方形である。しかし、光インドアケーブル1及びケーブル部4の形状は限定されず、例えば、長円形、円形、あるいは楕円形等であってもよい。
【0018】
光ファイバ心線10として、単心型心線を用いているが、複数の心線、例えば4心テープ型心線を用いてもよい。抗張力体12として、光ファイバ心線10を挟んで互いに対向する一対の抗張力体12を用いているが、単一の抗張力体を用いてもよい。抗張力体12として、鋼線あるいは繊維強化プラスチック(FRP)が用いられる。支持線18として、鋼線が用いられる。
【0019】
外被14に用いる樹脂には、機械的特性、難燃性、耐候性等の特性が要求される。また、光インドアケーブル1や光ドロップケーブル2は、加入者宅内や、加入者宅外壁等に設置されるため、外被14には、美観を損ねない白色、灰色系、あるいは茶色系の色味が要求される。例えば、外被14の主原料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)等のポリオレフィン(PO)樹脂が用いられる。外被14には、難燃剤、対候剤、着色剤等の添加剤が添加される。
【0020】
(茶色系外被)
図3の表に、EEA(三井・デュポンポリケミカル製、エバフレックスEEA、A−701)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL,UE320)を混合したポリオレフィン樹脂を主原料として、各種の添加剤を添加した樹脂を用いて試作したケーブル外被の特性を示す。添加剤として、水酸化マグネシウム(協和化学工業、キスマ5E)、赤燐(燐化学工業社製、ノーバレット120UF)、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、IRGANOX1076)、耐候剤(チバスペシャリティケミカルズ製、TINUVIN 326)、カーボン(キャボット社製、VULCAN9A32)、及び酸化チタン(チタン工業株色会社製、KR−380N)等が用いられる。図3の表では、◎、○、及びNGはそれぞれ、優、良、及び不可であることを示している。
【0021】
また、図4の表には、図3に示した各試験項目の試験方法、判定基準を示す。図5の表には、茶色系の色味に該当する各種の色名に対する、マンセル色体系の色相、明度及び彩度の三属性による表記、並びに青赤黄黒(CMYK)による表記を示す。
【0022】
図3に示すように、樹脂Aは、一般的な光ドロップケーブル用黒色外被に用いられる配合である。樹脂B、C、D、Eは、非黒色の白色あるいは茶色系の色味を目的とした配合である。
【0023】
樹脂Aは、70重量部のEEA、及び30重量部のLLDPEに対して、水酸化マグネシウムを65重量部、赤燐を5重量部、酸化防止剤を0.15重量部、及びカーボンを1.7重量%添加している。添加されたカーボンは、黒色着色剤、耐候性付与剤、補強材として機能する。樹脂Aを用いると、強度、難燃性、耐候性等のケーブル外被に要求される特性を満足することができる。しかし、カーボンが添加されているため、黒色の外被となる。
【0024】
樹脂Cは、樹脂Aに対して、カーボンを添加しないで、0.2重量部の耐候剤を添加した配合である。樹脂Cは、非黒色ではあるが、美観を保つことが困難な濃赤色となり、耐候性も劣化する。
【0025】
樹脂Eは、更に赤燐添加をなくし、0.2重量部の酸化チタンを追加している。酸化チタンは、白色着色剤で耐候性を付与する。酸化チタンの添加により、樹脂Eは白色となるが、耐候性は改善されない。また、樹脂Eでは、酸素指数が28と低下し、難燃性が劣化する。
【0026】
樹脂Bは、樹脂Eに対して、水酸化マグネシウムの添加量を65重量部から150重量部に増加させた配合である。水酸化マグネシウムの増加で、樹脂Bでは酸素指数が樹脂Aと同じレベルとなり、難燃性が改善される。しかし、耐候性の不良に加えて、耐寒性も劣化する。
【0027】
樹脂Dは、樹脂Cに対して、3重量部の酸化チタンを追加した配合である。赤燐と白色への着色効果をもたらす酸化チタンとを併用することにより、樹脂Dは茶色となる。また、樹脂B、Eに比べて酸化チタンを増量することで、耐候性が向上する。このように、カーボンを添加しなくても、酸化チタンを添加することにより、強度、難燃性、及び耐候性の劣化を防止し、建物の美観を保つことができる茶色の外被を実現することができる。なお、酸化チタンを3重量部以上配合しても同様の効果が得られる。しかし、酸化チタンは高価であるため、10重量部より多く配合するのは製造コスト的に望ましくない。
【0028】
図6の表には、図3に示した樹脂Dを基準として、水酸化マグネシウムと赤燐の添加量を変化させた配合の樹脂を用いたケーブル外被の特性を示している。赤燐については、水酸化マグネシウムの添加量を65重量部として、2重量部から12重量部の範囲で変化させている。水酸化マグネシウムについては、赤燐の添加量を11重量部として、65重量部から150重量部の範囲で変化させている。また、茶色系に調色する着色剤として、3重量部のチタンイエロー(ピグメント社製、ピグメントイエロー53)と、1重量部の弁柄を配合している。図6の表では、◎、○、及びNGはそれぞれ、優、良、及び不可であることを示している。
【0029】
図6の表に示すように、図3の表に示した樹脂Dに弁柄及びチタンイエローを追加した樹脂D−1では、色味、難燃性、耐寒性等の各特性の全てを満たしている。水酸化マグネシウムの添加量を60重量部、赤燐の添加量を3重量部に低減させた樹脂D−2では、難燃性が不良となる。また、赤燐の添加量を2重量部に低減させた樹脂D−3でも、難燃性が不良となる。
【0030】
赤燐の添加量が6重量部及び11重量部に樹脂D−4、D−5は、色味、難燃性、耐寒性等の各特性の全てを満たしている。赤燐の添加量を更に12重量部に増加させた樹脂D6では、赤色系となり色味が不良となる。また、赤燐の添加量を樹脂D−5と同様に11重量部として、水酸化マグネシウムの添加量を150重量部に増加させた樹脂D−7では、耐寒性が不良となる。赤燐の添加量を11重量部、水酸化マグネシウムの添加量が100重量部の樹脂D−8は、色味、難燃性、耐寒性等の各特性の全てを満たしている。
【0031】
このように、赤燐の添加量としては、5重量部以上、11重量部以下の範囲が望ましい。水酸化マグネシウムの添加量としては、65重量部以上、100重量部以下の範囲が望ましい。
【0032】
実施の形態に係る光ファイバケーブルでは、外被14として、水酸化マグネシウム、赤燐、及び酸化チタンを含有するポリオレフィン樹脂を用いる。100重量部のポリオレフィン樹脂に対して、水酸化マグネシウムを65重量部以上、100重量部以下の範囲、赤燐を3重量部以上、11重量部以下の範囲、及び酸化チタンを3重量部で含有するように配合する。その結果、外被14が茶色系となり、建物等の美観を保つことができ、かつ機械的強度、難燃性、耐候性等の外被14に要求される特性の劣化を抑制することができる。また、外被14として、水酸化マグネシウム、赤燐、及び酸化チタンに加えて、弁柄及びチタンイエロー等の着色剤を配合を調整することにより、図5に示した茶色系の色味の調色が可能となる。
【0033】
また、図6の表に示すように、樹脂D−1〜D−8のそれぞれは、マンセル色体系の明度が7.7〜8である。光ファイバケーブルを折り曲げることにより、外被14からの漏れ光を容易に確認することができる。心線対照については、光ファイバケーブルに波長1.55μmの光を入力レベル−20dBm程度で導通させ、漏れ光の確認を行う。その結果、全ての樹脂D−1〜D−8について、結合効率が40dB未満となり、優れた心線対照性が確認されている。なお、心線対照性については、外被の明度が4.9以上であれば、結合効率が60dB未満となることを確認している。
【0034】
なお、ポリオレフィン樹脂として、EEA及びLLDPEを組み合わせて用いている。EEAは、耐寒性は強いが、単体では耐熱性が低く、太陽光の下でEEAの温度が上昇するとEEAが溶融してしまう。また、EEAは元来引張強度が低く、強い引張張力等により容易に破壊されてしまう。一方、LLDPE単体では、樹脂中の結晶化度がEEAに比べて高いため、添加剤の受容量が少なく、難燃剤等を多く配合できない。このように、EEA及びLLDPEを適正なバランス、例えば60重量部:40重量部〜80重量部:20重量部の範囲で配合することが望ましい。
【0035】
(灰色系外被)
図7の表に、灰色系の外被14に用いる樹脂として、試作した樹脂1〜樹脂18の配合及び特性を示す。図7の表に示すように、EEA(三井・デュポンポリケミカル製、エバフレックスEEA、A−703)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL,UE320)を混合したポリオレフィン樹脂を主原料として、各種の添加剤が添加されている。添加剤として、水酸化マグネシウム(協和化学工業、キスマ5E)、赤燐(燐化学工業社製、ノーバレット120UF)、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、IRGANOX1076)、耐候剤(チバスペシャリティケミカルズ製、TINUVIN 326)、カーボン(キャボット社製、VULCAN9A32)、及び酸化チタン(チタン工業株色会社製、KR−380N)等が用いられる。
【0036】
図7の表において、カーボン以外の各添加剤の配合は、70重量部のEEA及び30重量部のLLDPEを混合したポリオレフィン樹脂100重量部に対する重量部数で示されている。水酸化マグネシウム、赤燐、カーボン、及び酸化チタンの添加量を変化させている。酸化防止剤及び耐候剤は、全ての樹脂1〜樹脂18において一定の部数で添加している。図7の表では、◎、○、△及びNGはそれぞれ、優、良、可及び不可であることを示している。
【0037】
また、図8の表には、図7に示した各特性を評価するための試験項目の試験方法、判定基準を示す。色味については、酸化チタンの消色効果により赤燐の色味を薄めて白色に近づけ、且つカーボンを少量添加することにより、灰色とすることを目指している。ここで、図8に示すように、マンセル色体系で明度が3以上8以下、且つ彩度が0以上1.5以下であれば、灰色として認識される。
【0038】
色味に関して、図7に示すように、酸化チタンが1重量部の樹脂3、カーボンが0重量%の樹脂7、及び赤燐が30重量部の樹脂14において、赤燐の赤みが強く、灰色と認識されない。特に、樹脂3においては、酸化チタンの消色効果がないため、臙脂色となる。このように、灰色を得るには、赤燐を25重量部以下、カーボンを0.018重量%以上、また酸化チタンを3重量部以上配合する必要がある。
【0039】
水酸化マグネシウムが60重量部の樹脂1、赤燐が5重量部の樹脂2では、難燃性が不可となる。難燃性を満足させるには、難燃剤として、水酸化マグネシウムを65重量部以上、赤燐を10重量部以上配合する必要がある。水酸化マグネシウムと赤燐の相乗効果により、自己消炎することが考えられる。また、水酸化マグネシウムを80重量部以上とした樹脂15〜樹脂18では、難燃性が更に向上する。
【0040】
カーボンが0.028重量%、且つ酸化チタンが1重量部の樹脂3では、耐候性が劣る。耐候性を満足させるには、酸化チタンを3重量部以上配合する必要がある。また、カーボンを0.2重量%以上配合すると、耐候性が更に向上する。カーボン及び酸化チタンともに光、特に紫外光の遮蔽効果を有しているので、樹脂を保護する働きがある。なお、酸化チタンは高価であるため、10重量部より多く配合するのは製造コスト的に望ましくない。
【0041】
心線対照については、光ファイバケーブルに波長1.55μmの光を入力レベル−20dBm程度で導通させ、漏れ光の確認を行う。図7の表に示すように、カーボンの配合が増加すると、カーボンによる光の遮蔽効果が顕著になり、明度が低下する。カーボンが0.306重量%の樹脂13では、明度が4.8であり、漏れ光の検出が困難で、結合効率が70dB以上となる。心線対照性を満足させるには、カーボンを約0.26重量%以下で配合し、且つ明度を4.9以上にする必要がある。また、カーボンを約0.03重量%以下に低減すると、明度が6以上となり心線対照性は向上する。
【0042】
耐寒性については、水酸化マグネシウムが150重量部の樹脂18では、試験片が2分割している。水酸化マグネシウムが125重量部以下では、試料片の分割は生じない。また、水酸化マグネシウムを65重量部以下で配合すると、耐寒性が更に向上する。
【0043】
このように、灰色系の外被14に、水酸化マグネシウム、赤燐、カーボン及び酸化チタンを含有するポリオレフィン樹脂を用いる。100重量部のポリオレフィン樹脂に対して、水酸化マグネシウムを65重量部以上、125重量部以下の範囲、赤燐を10重量部以上、25重量部以下の範囲、カーボンを0.02重量%以上、0.26重量部以下の範囲、及び酸化チタンを5重量部以上、10重量部以下の範囲で含有するように配合する。その結果、外被14が灰色系となり、建物等の美観を保つことができ、かつ心線対照が可能となる。また、機械的強度、難燃性、耐候性、耐寒性等の外被14に要求される特性を保持することができる。
【0044】
なお、上述の説明では、ポリオレフィン樹脂として、30重量部のEEAと70重量部のLLDPEとの混合樹脂を用いている。EEAの耐熱性、引張強度、LLDPEの結晶化度を考慮して、EEA:LLDPEを、例えば60重量部:40重量部〜80重量部:20重量部の範囲で配合することが望ましい。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、加入者用光ファイバケーブルに適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…光インドアケーブル
2…光ドロップケーブル
4…ケーブル部
6…支持線部
8…接続部
10…光ファイバ心線
12…抗張力体
14…外被
16…ノッチ
18…支持線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線に並行して配置された抗張力体と、
前記光ファイバ心線及び前記抗張力体を被覆する外被とを備え、
前記外被が、水酸化マグネシウム、赤燐、及び酸化チタンを含有するポリオレフィン樹脂であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記外被が、100重量部のポリオレフィン樹脂に対して、水酸化マグネシウムを65重量部以上、100重量部以下の範囲、赤燐を5重量部以上、11重量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記外被が、茶色系の着色剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記茶色系の着色剤が、チタンイエロー及び弁柄を含むことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記外被が、100重量部のポリオレフィン樹脂に対して、水酸化マグネシウムを65重量部以上、125重量部以下の範囲、赤燐を10重量部以上、25重量部以下の範囲、カーボンを0.02重量%以上、0.26重量%以下の範囲、酸化チタンを3重量部以上、10重量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記外被が、マンセル色体系の明度が4.9以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−123183(P2012−123183A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273696(P2010−273696)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】