光ファイバケーブル
【課題】牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)と異常張力印加時におけるケーブル破断荷重をコントロールできる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】2本以上の抗張力体4を備えた光ファイバケーブル1において、ケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、光ファイバケーブル1を引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体4を備える。そして、抗張力体4の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで、各抗張力体に破断時の差を持たせる。
【解決手段】2本以上の抗張力体4を備えた光ファイバケーブル1において、ケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、光ファイバケーブル1を引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体4を備える。そして、抗張力体4の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで、各抗張力体に破断時の差を持たせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗張力体を有した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが加入者宅内に配索されるまでには、牽引機で光ファイバケーブルを引っ張り、電柱間にある程度の弛度(弛み)を持たせて光ファイバケーブルを敷設する作業が行われる。この作業時に光ファイバケーブルの引張り荷重が高すぎると、ケーブル中の光ファイバに伸び歪みが加わり、光ファイバの寿命が低下する。そのため、牽引張力に耐え得る抗張力を付与するべく抗張力体(テンションメンバ)を、例えば光ファイバを被覆するシース等に設けている(例えば、特許文献1に記載)。
【0003】
また、電柱間に敷設後の光ファイバケーブルに乗り物等が引っ掛かる(これを、以下、異常張力印加時と定義する)と、電柱を倒してしまったり、家の外壁を引き剥がしてしまうこともあり得るので、一定荷重未満で光ファイバケーブルが破断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4844575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら2つの特性(光ファイバの伸び歪みと、光ファイバケーブルの破断)は、相反しており、抗張力体の径を太くし、弾性率の高い材料を選定すれば牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)は低く抑えられるものの、ケーブルの破断荷重が高くなってしまう。逆に、抗張力体の径を小さくし、弾性率の低い材料を選定すると、ケーブルの破断荷重は低くなるものの、牽引時のケーブル伸び、ひいては、実装している光ファイバの伸び歪みが大きくなり、破断寿命が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)と異常張力印加時におけるケーブル破断荷重をコントロールすることのできる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光ファイバと、光ファイバを内部に収容するケーブル部と、ケーブル部にケーブル長手方向に設けられた2本以上の抗張力体とを備えた光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバケーブルであって、前記抗張力体の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせて各抗張力体に破断時の差を持たせたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えることで、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)を低く抑えた上で、異常張力印加時のケーブル破断荷重をコントロールでき、光ファイバの伝送特性の損失を抑制することができると共に電柱等の倒壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は一般的な光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図2は抗張力体の余長率を説明するための図である。
【図3】図3はサンプルA〜Dの光ファイバケーブルの抗張力体に使用したガラスFRP及び鋼線それぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図4】図4はサンプルAの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図5】図5はサンプルBの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図6】図6はサンプルCの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図7】図7はサンプルDの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図8】図8は実際に試作したサンプルA〜Dの光ファイバケーブルを引っ張ったときの引張試験で得られたケーブル伸びと荷重との関係を示す特性図である。
【図9】図9は本実施形態の光ファイバケーブルの一例を示し、ガラスFRPや鋼線を抗張力体とした場合の光ファイバケーブルの断面図である。
【図10】図10は本実施形態の光ファイバケーブルの他の例を示し、テンションメンバのうち1本を中心に配置し、残りのテンションメンバ並びに光ファイバユニットを中心テンションメンバの周囲に撚りあわせた光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は一般的なルースチューブケーブルを示している。本発明は、ルースチューブケーブルに適用することができ、また、ルースチューブケーブル以外のケーブル構造にも本発明を適用することができる。
【0013】
光ファイバケーブル1は、複数本の光ファイバ2と、これら光ファイバ2を内部に収容するケーブル部3と、ケーブル部3にケーブル長手方向に設けられた2本以上(本実施形態では3本)の抗張力体4と、を備えて構成されている。
【0014】
光ファイバ2としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などがある。光ファイバ素線は、石英ガラスファイバの上に紫外線硬化樹脂を被覆したものである。光ファイバ心線は、石英ガラスファイバの上にプラスチック樹脂を被覆してその直径を光ファイバ素線よりも大としたものである。光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線を平行に数個並べて紫外線硬化樹脂で被覆したものである。図1では、光ファイバ素線又は光ファイバ心線を光ファイバ2としている。
【0015】
ケーブル部3は、断面形状を円形状としたチューブ5と、このチューブ5の外周囲を被覆するシース6とからなる。チューブ5は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなり、その内部に光ファイバ2をジェリー(樹脂は省略する)と共に収容させている。シース6は、チューブ5の外周囲全体を被覆するように押し出し成形されることにより形成されている。かかるシース6には、例えばポリオレフィン(PO)等の樹脂が使用される。
【0016】
抗張力体4は、例えばガラスFRP(ガラスファイバ(ガラスヤーンを含む))、アラミド繊維、アラミドFRP、鋼線等の線材からなり、前記光ファイバケーブル1のケーブル長手方向に撚った状態として設けられている。図1では、抗張力体4にガラスヤーンを使用している。ガラスヤーンは、ガラスを高温で溶かしたガラスを高速巻取機で連続的に巻き取った長い糸状のものをさらに束状に束ねた抗張力体であるため、シース6を成形する際の圧力で潰れて断面楕円形状となっている。
【0017】
前記構成の光ファイバケーブル1は、電柱間に敷設する場合に牽引機で引っ張られるため、必要以上にケーブル部3の内部に収納された光ファイバ2が引っ張られて伸び歪みが加わりファイバ寿命が低下しないように、前記抗張力体4が前記引っ張り力に対抗するように機能する。抗張力体4の剛性が高すぎると異常張力印加時に光ファイバケーブル自体が破断せず電柱等を倒し、この一方で抗張力体4の剛性が低すぎると光ファイバ2の伸び歪みが大きくなって破断寿命が低下する。
【0018】
そこで、本実施形態では、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブル1を引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する光ファイバケーブル1の伸びに差を持たせた抗張力体4を使用する。
【0019】
前記ケーブル最大破断荷重は、3本の抗張力体4のうち何れか1本が切断された時の光ファイバケーブル1の破断荷重と定義する。また、ケーブル敷設時の最大牽引張力は、牽引機で光ファイバケーブル1を引っ張った時の牽引機の能力値と定義する。また、目標最大破断荷重は、例えば電柱間に敷設された光ファイバケーブル1に乗り物が引っ掛かって当該光ファイバケーブル1を破断する時の荷重と定義する。ケーブル敷設時の最大牽引張力の値としては、例えば実際に使用している牽引機の能力値である660Nとされる。また、目標最大破断荷重の値としては、古い木製の電柱が倒壊されるであろう1400Nとされる。
【0020】
前記抗張力体4の破断時の差は、当該抗張力体4の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせることで、各抗張力体4に破断時の差を持たせる。
【0021】
以下に、3本の抗張力体4の弾性率、破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)、余長を適当に変えてサンプルA〜Dの光ファイバケーブル1とした場合に、それら各サンプルA〜Dのケーブル最大破断荷重を計算して求めた。条件としては、最大牽引張力を660Nとし、引っ張り試験時の光ファイバ2の付加張力及びケーブル部3の付加張力については全て同等とし、抗張力体4の張力のみで算出した。図2は、抗張力体4の余長率を説明するための図である。抗張力体4の余長率は、光ファイバケーブル1のケーブル長をA、抗張力体4の長さをBとした場合に、(B−A)/A×100(100%)で表される。
【0022】
サンプルA〜Dで使用した抗張力体4の種類を、直径Φ0.7mmのガラスFRP、直径Φ0.7mmの低破断伸び(抗張力体に傷を付けて破断伸びを低下させた)としたガラスFRP、直径Φ0.5mmの鋼線、直径Φ0.35mmの鋼線それぞれの伸びと荷重との関係を図3に示す。また、サンプルA〜Dで用いた直径Φ0.7mmのガラスFRP、直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRP、直径Φ0.5mmの鋼線、直径Φ0.35mmの鋼線それぞれの破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)、弾性率を表1にそれぞれ示した。
【表1】
【0023】
なお、サンプルA〜Dで使用した抗張力体4は、全てケーブル部3の周囲に撚りあわせた後、シース6で被覆されている。
【0024】
サンプルAの光ファイバケーブル1では、3本の抗張力体4の全てを同一の材料、余長率とした。具体的には、3本の抗張力体4(表2では抗張力体をTM1,TM2,TM3と表記)を全て、図4に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとした。表2には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルAの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表2】
【0025】
サンプルAの光ファイバケーブル1では、伸びが3.5%の時に全ての抗張力体4(TM1,TM2,TM3)が引っ張られることで何れも破断する。そのため、サンプルAの光ファイバケーブル1では、ケーブル最大破断荷重が1470Nとなる。また、サンプルAの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、1.0%である。
【0026】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図5に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRPとした。表3には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルBの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表3】
【0027】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び3.5%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び3.0%で破断する。そのため、サンプルBの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470Nよりも低い1320Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルBの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、サンプルAの光ファイバケーブル1と同じ1.0%である。このサンプルBの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.7mmのガラスFRPとした2本の抗張力体(TM1,TM2)に対して直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRPである残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(判断伸び)及び破断点の強度(破断強度)が異なっている。
【0028】
サンプルCの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図6に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.35mmの鋼線とし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.7mmのガラスFRPとした。表4には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルCの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表4】
【0029】
サンプルCの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び2.5%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び3.5%で破断する。そのため、サンプルCの光ファイバケーブル1では、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470N、1320Nよりも更に低い1100Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルCの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1と同じ1.0%である。このサンプルCの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.35mmの鋼線とした2本の抗張力体(TM1,TM2)と直径Φ0.7mmのガラスFRPとした残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率が何れも異なっている。
【0030】
サンプルDの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図7に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.5mmの鋼線とすると共に2本の抗張力体4(TM1、TM2)の長さが、光ファイバケーブル1のケーブル長に対する長さよりも長くなるように実装して余長差(余長率0.5)を持たせた。具体的には、2本の抗張力体4(TM1、TM2)が残りの抗張力体(TM3)に対して0.5%余長を持つように抗張力体を引っ張りながらシースを施した。表5には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルDの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表5】
【0031】
サンプルDの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び4.0%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び2.5%で破断する。そのため、サンプルDの光ファイバケーブル1では、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470N、1320Nよりは低くサンプルCの光ファイバケーブル1の最大破断荷重1100Nよりは高い1220Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルDの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力時のケーブル伸びは、1.0%未満とサンプルAの光ファイバケーブル1よりも良好である。このサンプルDの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.7mmのガラスFRPとした2本の抗張力体(TM1,TM2)と直径Φ0.5mmの鋼線とした残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率が何れも異なっている。
【0032】
なお、光ファイバケーブル1が伸びた際に光ファイバにスクリーニング試験におけるプルーフレベルである1.5%以上の伸びが加わると、光ファイバが切れる可能性がある。スクリーニング試験とは、光ファイバ全長にわたり一定の荷重を与え、光ファイバの強度の弱い部分を除去するものである。なお、光ファイバ心線は、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ心線を用いることが好ましい。プルーフとは、製品化する光ファイバ心線の強度の保証であり、光ファイバ製造時に、その走行ラインに張力印加区間を設けることで引張強度試験を行うものである。張力印加区間に印加する張力を任意の値に設定することにより、光ファイバの伸び率(%)をプルーフレベルとして設定することができる。これにより、所望のプルーフレベルに満たない低強度の光ファイバを破断させて、破断しない部分のみをボビン等に巻き取って製品とすることができる。
【0033】
以上の結果から分かるように、3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)のうち何れか1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重を任意にコントロールすることができる。
【0034】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち1本の抗張力体4(TM3)の破断点の伸び(破断伸び)と破断点の強度(破断強度)を小さくすることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1320Nに低減)させている。また、サンプルCの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち2本の抗張力体4(TM1、TM2)の破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率を変えることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1100Nに低減)させている。また、サンプルDの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち1本の抗張力体4(TM3)の破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率を変えると共に余長を短くすることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1220Nに低減)させている。
【0035】
このように、本発明によれば、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重を任意にコントロールすることができるため、当該ケーブル最大破断荷重を、ケーブル施設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるようにコントロールすることによって、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)と異常張力印加時におけるケーブル破断荷重をコントロールできる。その結果、電柱間に光ファイバケーブル1を敷設する際に牽引機で引っ張られる張力で光ファイバ2が高張力で引っ張られて大きな伸び歪みを受けることも回避されると共に、電柱間に敷設後の光ファイバケーブル1に乗り物が引っ掛かる等して電柱を倒すようなことも防ぐことができる。
【実施例】
【0036】
ここでは、前記したサンプルA〜Dの光ファイバケーブル1を実際に試作し、それら光ファイバケーブル1の特性評価を行った。特性評価は、光ファイバケーブル1のケーブル長を52mとし、ケーブルの片端末を固定しもう片端末をロードセルの付いた牽引機に取り付け、引っ張り速度500mm/分で引っ張った。また、ケーブル中央部に歪ゲージを取り付けて伸びをモニタした。なお、各光ファイバケーブル1に対する光ファイバ2の余長と引き抜き力(ケーブルから光ファイバ2を引き抜く力)から、該光ファイバ2の引っ張り特性に及ぼす荷重を排除して各サンプルA〜Dを比較した。その結果を表6及び図8に示す。
【表6】
【0037】
これら試験結果のケーブル最大破断荷重値は、同じ伸びでみたときに計算上の数値とほぼ近い数値となった。サンプルAの光ファイバケーブル1では、伸び3.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1470N(表2参照)であり、実測値で1474.0Nであった。サンプルBの光ファイバケーブル1では、伸び2.5%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1320N(表3参照)であり、実測値で1345.2Nであった。サンプルCの光ファイバケーブル1では、伸び2.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1100N(表4参照)であり、実測値で1029.3Nであった。サンプルDの光ファイバケーブル1では、伸び2.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1220N(表5参照)であり、実測値で1229.3Nであった。
【0038】
本実施形態の光ファイバケーブル1によれば、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで低荷重時のケーブル伸びとケーブルの最大破断荷重を任意の値にコントロールすることが可能となる。
【0039】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、抗張力体4には、ガラスFRPの他に鋼線も使用することができる。図9では、抗張力体4に鋼線を使用しているので、ガラスヤーンを使用した場合に対して、シース5を押し出し成形する時の圧力で断面が楕円形状にはならない。図10では、チューブ5内に複数本の光ファイバ2を収納させた光ファイバユニット7の複数個(2個)を、同一種類の2本の抗張力体4A、4Bとこれよりも直径が小さく種類の異なる1本の抗張力体4Cと共にシース6で被覆した光ファイバケーブル1の構造にも本発明を適用することができる。この光ファイバケーブル1では、直径の小さな抗張力体4Cをケーブル中心に配置し、残りの抗張力体4A、4B並びに光ファイバユニット7を、中心の抗張力体4Cの周囲に撚りあわせている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、抗張力体を有した光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…光ファイバケーブル
2…光ファイバ
3…ケーブル部
4…抗張力体
5…チューブ
6…シース
7…光ファイバユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗張力体を有した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが加入者宅内に配索されるまでには、牽引機で光ファイバケーブルを引っ張り、電柱間にある程度の弛度(弛み)を持たせて光ファイバケーブルを敷設する作業が行われる。この作業時に光ファイバケーブルの引張り荷重が高すぎると、ケーブル中の光ファイバに伸び歪みが加わり、光ファイバの寿命が低下する。そのため、牽引張力に耐え得る抗張力を付与するべく抗張力体(テンションメンバ)を、例えば光ファイバを被覆するシース等に設けている(例えば、特許文献1に記載)。
【0003】
また、電柱間に敷設後の光ファイバケーブルに乗り物等が引っ掛かる(これを、以下、異常張力印加時と定義する)と、電柱を倒してしまったり、家の外壁を引き剥がしてしまうこともあり得るので、一定荷重未満で光ファイバケーブルが破断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4844575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら2つの特性(光ファイバの伸び歪みと、光ファイバケーブルの破断)は、相反しており、抗張力体の径を太くし、弾性率の高い材料を選定すれば牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)は低く抑えられるものの、ケーブルの破断荷重が高くなってしまう。逆に、抗張力体の径を小さくし、弾性率の低い材料を選定すると、ケーブルの破断荷重は低くなるものの、牽引時のケーブル伸び、ひいては、実装している光ファイバの伸び歪みが大きくなり、破断寿命が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)と異常張力印加時におけるケーブル破断荷重をコントロールすることのできる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光ファイバと、光ファイバを内部に収容するケーブル部と、ケーブル部にケーブル長手方向に設けられた2本以上の抗張力体とを備えた光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバケーブルであって、前記抗張力体の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせて各抗張力体に破断時の差を持たせたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えることで、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)を低く抑えた上で、異常張力印加時のケーブル破断荷重をコントロールでき、光ファイバの伝送特性の損失を抑制することができると共に電柱等の倒壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は一般的な光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図2は抗張力体の余長率を説明するための図である。
【図3】図3はサンプルA〜Dの光ファイバケーブルの抗張力体に使用したガラスFRP及び鋼線それぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図4】図4はサンプルAの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図5】図5はサンプルBの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図6】図6はサンプルCの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図7】図7はサンプルDの光ファイバケーブルにおける3本の抗張力体及びケーブルそれぞれの伸びと破断荷重(破断強度)を示した特性図である。
【図8】図8は実際に試作したサンプルA〜Dの光ファイバケーブルを引っ張ったときの引張試験で得られたケーブル伸びと荷重との関係を示す特性図である。
【図9】図9は本実施形態の光ファイバケーブルの一例を示し、ガラスFRPや鋼線を抗張力体とした場合の光ファイバケーブルの断面図である。
【図10】図10は本実施形態の光ファイバケーブルの他の例を示し、テンションメンバのうち1本を中心に配置し、残りのテンションメンバ並びに光ファイバユニットを中心テンションメンバの周囲に撚りあわせた光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は一般的なルースチューブケーブルを示している。本発明は、ルースチューブケーブルに適用することができ、また、ルースチューブケーブル以外のケーブル構造にも本発明を適用することができる。
【0013】
光ファイバケーブル1は、複数本の光ファイバ2と、これら光ファイバ2を内部に収容するケーブル部3と、ケーブル部3にケーブル長手方向に設けられた2本以上(本実施形態では3本)の抗張力体4と、を備えて構成されている。
【0014】
光ファイバ2としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などがある。光ファイバ素線は、石英ガラスファイバの上に紫外線硬化樹脂を被覆したものである。光ファイバ心線は、石英ガラスファイバの上にプラスチック樹脂を被覆してその直径を光ファイバ素線よりも大としたものである。光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線を平行に数個並べて紫外線硬化樹脂で被覆したものである。図1では、光ファイバ素線又は光ファイバ心線を光ファイバ2としている。
【0015】
ケーブル部3は、断面形状を円形状としたチューブ5と、このチューブ5の外周囲を被覆するシース6とからなる。チューブ5は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなり、その内部に光ファイバ2をジェリー(樹脂は省略する)と共に収容させている。シース6は、チューブ5の外周囲全体を被覆するように押し出し成形されることにより形成されている。かかるシース6には、例えばポリオレフィン(PO)等の樹脂が使用される。
【0016】
抗張力体4は、例えばガラスFRP(ガラスファイバ(ガラスヤーンを含む))、アラミド繊維、アラミドFRP、鋼線等の線材からなり、前記光ファイバケーブル1のケーブル長手方向に撚った状態として設けられている。図1では、抗張力体4にガラスヤーンを使用している。ガラスヤーンは、ガラスを高温で溶かしたガラスを高速巻取機で連続的に巻き取った長い糸状のものをさらに束状に束ねた抗張力体であるため、シース6を成形する際の圧力で潰れて断面楕円形状となっている。
【0017】
前記構成の光ファイバケーブル1は、電柱間に敷設する場合に牽引機で引っ張られるため、必要以上にケーブル部3の内部に収納された光ファイバ2が引っ張られて伸び歪みが加わりファイバ寿命が低下しないように、前記抗張力体4が前記引っ張り力に対抗するように機能する。抗張力体4の剛性が高すぎると異常張力印加時に光ファイバケーブル自体が破断せず電柱等を倒し、この一方で抗張力体4の剛性が低すぎると光ファイバ2の伸び歪みが大きくなって破断寿命が低下する。
【0018】
そこで、本実施形態では、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブル1を引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する光ファイバケーブル1の伸びに差を持たせた抗張力体4を使用する。
【0019】
前記ケーブル最大破断荷重は、3本の抗張力体4のうち何れか1本が切断された時の光ファイバケーブル1の破断荷重と定義する。また、ケーブル敷設時の最大牽引張力は、牽引機で光ファイバケーブル1を引っ張った時の牽引機の能力値と定義する。また、目標最大破断荷重は、例えば電柱間に敷設された光ファイバケーブル1に乗り物が引っ掛かって当該光ファイバケーブル1を破断する時の荷重と定義する。ケーブル敷設時の最大牽引張力の値としては、例えば実際に使用している牽引機の能力値である660Nとされる。また、目標最大破断荷重の値としては、古い木製の電柱が倒壊されるであろう1400Nとされる。
【0020】
前記抗張力体4の破断時の差は、当該抗張力体4の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせることで、各抗張力体4に破断時の差を持たせる。
【0021】
以下に、3本の抗張力体4の弾性率、破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)、余長を適当に変えてサンプルA〜Dの光ファイバケーブル1とした場合に、それら各サンプルA〜Dのケーブル最大破断荷重を計算して求めた。条件としては、最大牽引張力を660Nとし、引っ張り試験時の光ファイバ2の付加張力及びケーブル部3の付加張力については全て同等とし、抗張力体4の張力のみで算出した。図2は、抗張力体4の余長率を説明するための図である。抗張力体4の余長率は、光ファイバケーブル1のケーブル長をA、抗張力体4の長さをBとした場合に、(B−A)/A×100(100%)で表される。
【0022】
サンプルA〜Dで使用した抗張力体4の種類を、直径Φ0.7mmのガラスFRP、直径Φ0.7mmの低破断伸び(抗張力体に傷を付けて破断伸びを低下させた)としたガラスFRP、直径Φ0.5mmの鋼線、直径Φ0.35mmの鋼線それぞれの伸びと荷重との関係を図3に示す。また、サンプルA〜Dで用いた直径Φ0.7mmのガラスFRP、直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRP、直径Φ0.5mmの鋼線、直径Φ0.35mmの鋼線それぞれの破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)、弾性率を表1にそれぞれ示した。
【表1】
【0023】
なお、サンプルA〜Dで使用した抗張力体4は、全てケーブル部3の周囲に撚りあわせた後、シース6で被覆されている。
【0024】
サンプルAの光ファイバケーブル1では、3本の抗張力体4の全てを同一の材料、余長率とした。具体的には、3本の抗張力体4(表2では抗張力体をTM1,TM2,TM3と表記)を全て、図4に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとした。表2には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルAの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表2】
【0025】
サンプルAの光ファイバケーブル1では、伸びが3.5%の時に全ての抗張力体4(TM1,TM2,TM3)が引っ張られることで何れも破断する。そのため、サンプルAの光ファイバケーブル1では、ケーブル最大破断荷重が1470Nとなる。また、サンプルAの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、1.0%である。
【0026】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図5に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRPとした。表3には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルBの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表3】
【0027】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び3.5%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び3.0%で破断する。そのため、サンプルBの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470Nよりも低い1320Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルBの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、サンプルAの光ファイバケーブル1と同じ1.0%である。このサンプルBの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.7mmのガラスFRPとした2本の抗張力体(TM1,TM2)に対して直径Φ0.7mmの低破断伸びとしたガラスFRPである残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(判断伸び)及び破断点の強度(破断強度)が異なっている。
【0028】
サンプルCの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図6に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.35mmの鋼線とし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.7mmのガラスFRPとした。表4には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルCの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表4】
【0029】
サンプルCの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び2.5%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び3.5%で破断する。そのため、サンプルCの光ファイバケーブル1では、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470N、1320Nよりも更に低い1100Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルCの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力が660Nの時のケーブル伸びは、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1と同じ1.0%である。このサンプルCの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.35mmの鋼線とした2本の抗張力体(TM1,TM2)と直径Φ0.7mmのガラスFRPとした残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率が何れも異なっている。
【0030】
サンプルDの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は同一の材料、余長率とし、残りの1本の抗張力体4(TM3)は前記2本の抗張力体4(TM1,TM2)のものとは異なるものとした。具体的には、2本の抗張力体4(TM1,TM2)は、図7に示す伸びと荷重の関係を有した直径Φ0.7mmのガラスFRPとし、残りの抗張力体4(TM3)は直径Φ0.5mmの鋼線とすると共に2本の抗張力体4(TM1、TM2)の長さが、光ファイバケーブル1のケーブル長に対する長さよりも長くなるように実装して余長差(余長率0.5)を持たせた。具体的には、2本の抗張力体4(TM1、TM2)が残りの抗張力体(TM3)に対して0.5%余長を持つように抗張力体を引っ張りながらシースを施した。表5には、伸びに対する3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)の各破断荷重とそれら3本の抗張力体4の破断荷重を足した合計荷重である荷重計(サンプルDの光ファイバケーブルの破断荷重)を纏めてある。
【表5】
【0031】
サンプルDの光ファイバケーブル1では、2本の抗張力体4(TM1,TM2)が何れも伸び4.0%で破断するのに対して、残りの抗張力体4(TM3)は伸び2.5%で破断する。そのため、サンプルDの光ファイバケーブル1では、サンプルA、Bの光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重1470N、1320Nよりは低くサンプルCの光ファイバケーブル1の最大破断荷重1100Nよりは高い1220Nがケーブル最大判断荷重となる。また、サンプルDの光ファイバケーブル1では、最大牽引張力時のケーブル伸びは、1.0%未満とサンプルAの光ファイバケーブル1よりも良好である。このサンプルDの光ファイバケーブル1では、表1で示されるように、直径Φ0.7mmのガラスFRPとした2本の抗張力体(TM1,TM2)と直径Φ0.5mmの鋼線とした残りの抗張力体(TM3)の弾性点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率が何れも異なっている。
【0032】
なお、光ファイバケーブル1が伸びた際に光ファイバにスクリーニング試験におけるプルーフレベルである1.5%以上の伸びが加わると、光ファイバが切れる可能性がある。スクリーニング試験とは、光ファイバ全長にわたり一定の荷重を与え、光ファイバの強度の弱い部分を除去するものである。なお、光ファイバ心線は、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ心線を用いることが好ましい。プルーフとは、製品化する光ファイバ心線の強度の保証であり、光ファイバ製造時に、その走行ラインに張力印加区間を設けることで引張強度試験を行うものである。張力印加区間に印加する張力を任意の値に設定することにより、光ファイバの伸び率(%)をプルーフレベルとして設定することができる。これにより、所望のプルーフレベルに満たない低強度の光ファイバを破断させて、破断しない部分のみをボビン等に巻き取って製品とすることができる。
【0033】
以上の結果から分かるように、3本の抗張力体4(TM1,TM2,TM3)のうち何れか1本の抗張力体4が破断する破断時と他の抗張力体4が破断する破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重を任意にコントロールすることができる。
【0034】
サンプルBの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち1本の抗張力体4(TM3)の破断点の伸び(破断伸び)と破断点の強度(破断強度)を小さくすることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1320Nに低減)させている。また、サンプルCの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち2本の抗張力体4(TM1、TM2)の破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率を変えることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1100Nに低減)させている。また、サンプルDの光ファイバケーブル1では、サンプルAの光ファイバケーブル1に対して3本の抗張力体4のうち1本の抗張力体4(TM3)の破断点の伸び(破断伸び)、破断点の強度(破断強度)及び弾性率を変えると共に余長を短くすることで、サンプルAの光ファイバケーブル1に対してそのケーブル最大破断荷重を低減(1470Nから1220Nに低減)させている。
【0035】
このように、本発明によれば、光ファイバケーブル1のケーブル最大破断荷重を任意にコントロールすることができるため、当該ケーブル最大破断荷重を、ケーブル施設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるようにコントロールすることによって、牽引時のケーブル伸び(光ファイバの伸び歪み)と異常張力印加時におけるケーブル破断荷重をコントロールできる。その結果、電柱間に光ファイバケーブル1を敷設する際に牽引機で引っ張られる張力で光ファイバ2が高張力で引っ張られて大きな伸び歪みを受けることも回避されると共に、電柱間に敷設後の光ファイバケーブル1に乗り物が引っ掛かる等して電柱を倒すようなことも防ぐことができる。
【実施例】
【0036】
ここでは、前記したサンプルA〜Dの光ファイバケーブル1を実際に試作し、それら光ファイバケーブル1の特性評価を行った。特性評価は、光ファイバケーブル1のケーブル長を52mとし、ケーブルの片端末を固定しもう片端末をロードセルの付いた牽引機に取り付け、引っ張り速度500mm/分で引っ張った。また、ケーブル中央部に歪ゲージを取り付けて伸びをモニタした。なお、各光ファイバケーブル1に対する光ファイバ2の余長と引き抜き力(ケーブルから光ファイバ2を引き抜く力)から、該光ファイバ2の引っ張り特性に及ぼす荷重を排除して各サンプルA〜Dを比較した。その結果を表6及び図8に示す。
【表6】
【0037】
これら試験結果のケーブル最大破断荷重値は、同じ伸びでみたときに計算上の数値とほぼ近い数値となった。サンプルAの光ファイバケーブル1では、伸び3.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1470N(表2参照)であり、実測値で1474.0Nであった。サンプルBの光ファイバケーブル1では、伸び2.5%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1320N(表3参照)であり、実測値で1345.2Nであった。サンプルCの光ファイバケーブル1では、伸び2.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1100N(表4参照)であり、実測値で1029.3Nであった。サンプルDの光ファイバケーブル1では、伸び2.0%のときには計算上でケーブル最大破断荷重が1220N(表5参照)であり、実測値で1229.3Nであった。
【0038】
本実施形態の光ファイバケーブル1によれば、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体4と他方の抗張力体4で異ならせることで低荷重時のケーブル伸びとケーブルの最大破断荷重を任意の値にコントロールすることが可能となる。
【0039】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、抗張力体4には、ガラスFRPの他に鋼線も使用することができる。図9では、抗張力体4に鋼線を使用しているので、ガラスヤーンを使用した場合に対して、シース5を押し出し成形する時の圧力で断面が楕円形状にはならない。図10では、チューブ5内に複数本の光ファイバ2を収納させた光ファイバユニット7の複数個(2個)を、同一種類の2本の抗張力体4A、4Bとこれよりも直径が小さく種類の異なる1本の抗張力体4Cと共にシース6で被覆した光ファイバケーブル1の構造にも本発明を適用することができる。この光ファイバケーブル1では、直径の小さな抗張力体4Cをケーブル中心に配置し、残りの抗張力体4A、4B並びに光ファイバユニット7を、中心の抗張力体4Cの周囲に撚りあわせている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、抗張力体を有した光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…光ファイバケーブル
2…光ファイバ
3…ケーブル部
4…抗張力体
5…チューブ
6…シース
7…光ファイバユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、光ファイバを内部に収容するケーブル部と、ケーブル部にケーブル長手方向に設けられた2本以上の抗張力体とを備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えている
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバケーブルであって、
前記抗張力体の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせて各抗張力体に破断時の差を持たせた
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項1】
光ファイバと、光ファイバを内部に収容するケーブル部と、ケーブル部にケーブル長手方向に設けられた2本以上の抗張力体とを備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバケーブルのケーブル最大破断荷重が、ケーブル敷設時の最大牽引張力と目標最大破断荷重の数値間に収まるように、前記光ファイバケーブルを引っ張り、その引張荷重を増加していった場合に少なくとも1本の抗張力体が破断する破断時と他の抗張力体が破断する光ファイバケーブルの伸びに差を持たせた抗張力体を備えている
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバケーブルであって、
前記抗張力体の破断時の差を、抗張力体の弾性率、破断点の伸び、破断点の強度、余長の何れか1つを一方の抗張力体と他方の抗張力体で異ならせて各抗張力体に破断時の差を持たせた
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−203199(P2012−203199A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67759(P2011−67759)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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