説明

光ファイバコード折曲部及びその製造方法

【課題】2芯POFコードをPOF素線の並列面内で、一定した曲率で簡単に折り曲げる。
【解決手段】2本のPOF素線11,12を並列に並べて第2被覆層21により被覆したPOFコード10に、分断線表示マーク25,26を設ける。分断線表示マーク25を基準にして、カッタにより第2被覆層21に分断線33を形成する。分断線33により、2芯POFコード10を部分的に単芯POFコード状の分断POFコード10a,10bにする。分断された部位で2芯POFコード10をPOF素線11,12の並列面内で折り曲げる。折り曲げ時に内側となる内側分断POFコード10aに対して、折り曲げ時に外側となる外側分断POFコード10bが前記並列面内に交差する方向で重ねられ、一定した曲率となる。内側のPOF素線12の折り曲げによる曲率半径が小さくなることがなく、折り曲げによる伝送損失を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ素線を並列に並べて被覆部で被覆した光ファイバコードを用いて並列面内で折り曲げた光ファイバコード折曲部及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の情報を伝送する伝送媒体として光ファイバが知られている。光ファイバは、屋内や構内などの短距離の光通信から、国間や都市間を結ぶ長距離の光通信まで広く用いられている。
【0003】
屋内や構内などの短距離の光通信に用いられる場合には、光ファイバは、光ファイバ素線に被覆を施して機械的強度を増加させた光ファイバコードの形態で配線される。この光ファイバコードの端部には光コネクタが取り付けられ、この光コネクタを介して他の光ファイバコードや他の機器に光ファイバコードが着脱自在に取り付けられる。光コネクタには、光ファイバコードの終端に取り付けられる光プラグ、送信回路または受信回路との接続を行うリセプタクル、光プラグ同士を接続するアダプタなどがある。
【0004】
屋内や構内などの短距離の光通信に用いられる場合には、例えば特許文献1に開示されているように、光ファイバ素線にはプラスチック光ファイバ(以下、単にPOFと称する)が多く用いられる。POF素線は、コアとクラッドが共にプラスチックで形成されている。POF素線は、石英系光ファイバと比較して、伝送損失がやや大きいものの、端末加工容易性、周辺機器との接続容易性、低価格等のメリットを有している。
【特許文献1】特開2006−139209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、短距離の光通信に用いられる光ファイバコードとして、図9(A)に示すように、例えば2芯POFコード2が多く使用されている。この2芯POFコード2は、コア3とクラッド4からなるPOF素線5,6を所定間隔で離間させ2本並列に配置して、被覆層7で覆って、例えば全体が帯状に形成されている。
【0006】
このような2芯POFコード2や3芯以上の複芯POFコードを屋内で配線する場合に、電設管内を通して配線する場合には、伝送損失の影響が少ない曲率でPOFコード2が曲げられるように、電設管の曲率を規定することで対処が可能である。ところが、この電設管を出た後に、所定の各種機器に2芯POFコード2を接続するためには、室内の壁面などに2芯POFコード2を沿わせて配置する必要がある。
【0007】
2芯POFコード2は2本のPOF素線5,6がY方向に並列に配置されるため、被覆層7により全体外観が帯状になっている。このため、図9(B)に矢印A1で示すように、POF素線5,6の並列面(XY面)に交差する方向(Z方向)への2芯POFコード2の折り曲げは容易に行うことができる。反面、図9(C)に矢印A2で示すように、2芯POFコード2を、並列面(XY面)内で折り曲げようとすると、内側のPOF素線6は曲率半径が小さくなり、外側のPOF素線5は曲率半径が大きくなるため、2芯POFコード2を簡単には折り曲げることができず、大きな湾曲半径として取り付けざるを得ない。このため、壁面に沿って2芯POFコード2を配置することが困難になる。また、湾曲度合も一定しておらず、施工美観を損ねてしまうという問題がある。
【0008】
また、無理に壁や床に沿わせようと2芯POFコード2を並列面内で折り曲げる場合には、折曲部の内側に位置するPOF素線6の曲率半径が小さくなって、このPOF素線6の伝送効率に影響を与え、伝送損失が大きくなるおそれがある。なお、このような問題は2芯POFコード2に限られず、3芯以上の複芯POFコードでも同様に発生する。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、複芯POFコードを複芯の並列面内に交差する方向のみでなく、並列面内でも簡単にしかも一定した曲率で折り曲げることができるようにした光ファイバコード折曲部及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の光ファイバ素線を並列に並べて被覆部により被覆してなる光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面内で折り曲げてなる光ファイバコード折曲部の製造方法であって、前記光ファイバコードの折曲対象位置に、前記複数の光ファイバ素線を並列方向に分断する分断線を前記光ファイバ素線の間の被覆部に前記光ファイバ素線に平行に入れる分断線形成工程と、前記分断線形成工程で分断された部位で前記光ファイバ素線の並列面内で前記光ファイバコードを折り曲げて、各分断線で分断された分断光ファイバコードの内、折り曲げ時に内側となる内側光ファイバコードに対して、折り曲げ時に外側となる外側光ファイバコードを前記並列面内に交差する方向で重ねる重ね折り曲げ工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数の光ファイバ素線を並列に並べて被覆部により被覆してなる光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面内で折り曲げてなる光ファイバコード折曲部であって、前記光ファイバコードの前記複数の光ファイバ素線の間で、各光ファイバ素線を並列方向で分離するために、前記各光ファイバ素線の間で前記被覆部に入れられる分断線と、前記分断線で分断された各分断光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面に交差する方向で重ねて、前記光ファイバコードを前記並列面内で折り曲げ可能にする重ね折曲部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記光ファイバコードの外表面に、前記分断線を形成するために、分断線の長さを表示するための分断線表示マークが形成されていることを特徴とする。そして、前記折り曲げ工程における折曲部の最小曲率半径に対応させて前記分断線表示マークの分断線長さが決定されている。また、前記折曲部の曲率半径を複数としたときに、前記複数分の曲率半径に対応させて各分断線表示マークの分断線長さが形成されている。前記折曲部の曲率半径からなる円周の四分の一の長さに、前記光ファイバ素線の並列方向における前記光ファイバコードの長さを加えた長さを、前記分断線長さとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバコードに分断線を形成し、この分断線を用いて複芯の光ファイバ素線を並列方向に分断し、分断光ファイバ素線の一方を分断光ファイバ素線の他方に並列面に交差する方向で重ねて、光ファイバコードを並列面内で折り曲げることにより、簡単に光ファイバコードを並列面内で折り曲げることができる。したがって、室内等の壁や床、天井などに光ファイバコードを沿わせて配線を行う際に、比較的折り曲げが容易な並列面に交差する方向での曲げの他に、折り曲げが困難な並列面内での折り曲げも容易に行うことができ、光ファイバコードの配線施工を容易に行うことができる。
【0014】
また、分断線の長さを、例えば分断線表示マークによって一定に形成することにより、折り曲げる際の曲率をほぼ一定にすることができる。これにより、配線施工時の折曲部の曲率が一定になるため、見栄えが良くなる他に、折曲部の曲率半径が小さい場合に発生する伝送損失の影響が少なくなる。
【0015】
光ファイバコードを折曲部で折り曲げる際に、複数の曲率半径から選択して折り曲げる場合に、複数の曲率半径に対応させて分断線表示マークを複数設けることによって、曲率半径に合わせて最適な分断線を形成することができ、この分断線を用いて並列面内で光ファイバコードを複数の曲率半径にて選択して折り曲げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すように、本発明を実施する2芯POFコード10は、2本のPOF素線11,12を並列に配置し、被覆部13で被覆して構成されており、図2及び図3に示すように、全体外観が帯状に形成されている。
【0017】
POF素線11,12は、光を通すコア15と、外殻部であるクラッド16とから構成される。本実施形態では、2本のPOF素線11,12は、屈折率が径方向において中心に向かうに従い次第に高くなるグレートインデックス(GI)型であるが、一方をステップインデックス(SI)型としてもよく、または両方をSI型としてもよい。これらの選択は使用目的に応じて決定される。また、POFコード10の他に、石英系光ファイバコードに本発明を実施してもよい。
【0018】
クラッド16は例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)製であり、厚みが均一の管形状になっている。なお、クラッド16は、PVDF共重合体、PMMA等の重合体を用いてもよいし、他の材料を用いてもよい。また、重合体の混合物を用いてもよい。なお、クラッド16の外側に保護層を設けてもよい。保護層としては、例えばPMMA、PVDF等の重合体やPVDF共重合体を用いてもよいし、他の材料を用いてもよい。
【0019】
コア15は、内側のインナコアと外側のアウタコアとから構成されている。コア15はインナコア及びアウタコア構造以外に、公知の他の構造としてもよい。アウターコアは、厚みが均一の管形状となっている。インナーコアは、径が均一の円柱形状とされている。インナーコアは、屈折率が、アウターコアとの境界でアウターコアと同一とされており、アウターコアの境界から中心に向かうに従い次第に高くなるようにされている。コア15の直径は特に限定されないが、50〜980μmの範囲内にすることが好ましい。コア15には、例えば、PMMA等の重合体やフッ素重合体が材料として用いられるが、他の材料を用いてもよい。
【0020】
POF素線11,12は、複数の伝播モードを有するマルチモード光ファイバとして用いられる。POF素線11,12の開口数は特に限定されないが、0.15以上とすることが好ましいが、より好ましくは、0.20以上であり、特に好ましくは0.28以上である。
【0021】
被覆部13は、各POF素線11,12を個別に覆う第1被覆層20と、この第1被覆層20により覆われた各POF素線11,12を並列に並べた状態で覆う第2被覆層21とから構成されている。
【0022】
第1被覆層20は、厚みが均一の管形状とされており、内周面がPOF素線11,12に密着している。第1被覆層20には、例えば、黒色に着色されたポリエチレンが材料として用いられる。なお、第1被覆層20は、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド製でもよいし、その他の材料から構成してもよい。
【0023】
第2被覆層21は、第1被覆層20の外周面に密着し、これらを覆うようにして断面が円形状に形成されており、これらが円周の一部で密着した形状となっている。したがって、密着している部分が括れとなって、この括れ部分が溝部23となっている。なお、第2被覆層21の外形の断面形状は、これに限定されず、例えば、長円形状、楕円形状、矩形状であってもよい。これらの形状にする場合には、断面が円形状の場合と同じように、各POF素線11,12の中間位置でその外周部分に断面三角形状の溝を形成してもよい。第2被覆層21には、例えば、塩化ビニルが材料として用いられる。第2被覆層21には、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド等を材料として用いてもよく、それ以外の他のプラスチック材料を用いてもよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、第2被覆層21の外周面には、前記溝部23に沿って、二つの分断線表示マーク25,26が形成されている。これら分断線表示マーク25,26は、図4に示すように、分断線33の形成長さを表示するためのものである。例えば、分断線表示マーク25に沿って溝部23にカッタ31を当てて、分断線表示マーク25で規定された長さL1だけカッタ31を移動させることで、2芯POFコード10の第2被覆層21の溝部23に対応する連結部分21aを切断することができ、分断線33を形成することができる。
【0025】
図2に示すように、第1分断線表示マーク25、及び第2分断線表示マーク26は、2芯POFコード10をPOF素線11,12の並列面内で折り曲げる際の曲率半径C1(図5参照)に応じて複数形成されている。本実施形態では曲率半径C1が30mmと50mmの2種類に対応させた2種類の長さL1,L2で、分断線表示マーク25,26が形成されている。
【0026】
分断線の長さは、おおよそ曲率半径C1からなる円周の四分の一の長さに当該コードの長径L3(図1参照)を加えた長さ(=(π・C1/2)+L3)が好ましく、それ未満の場合は所定の曲げ半径を保ちにくくなり、それよりも大幅に長い場合は多芯コードとしての直線部分での配線のし易さが損なわれる。
【0027】
第1分断線表示マーク25は曲率半径C1が30mmの重ね折曲部34を形成するときに用いられるものであり、溝部23を境にして一方のPOF素線11側の第2被覆層21の表面に形成される。第2分断線表示マーク26は曲率半径C1が50mmの重ね折曲部34を形成するときに用いられるものであり、溝部を境にして他方のPOF素線12側の第2被覆層21の表面に形成される。なお、ここでいう曲率半径C1は分断線33で分断されたPOFコード(以下、単に分断POFコードという)10a,10bの内、重ね折曲部34の内側に位置することとなる内側分断POFコード10aの曲率半径である。
【0028】
図2に示すように、第1分断線表示マーク25は、中央三角マーク35aと、両端三角マーク36aと、分断線表示ライン37aと、曲率半径表示部38aとからなる。中央三角マーク35aは、重ね折曲部34の中央位置を示すもので、この中央三角マーク35aを2芯POFコード10を取り付ける壁面の角部に合わせるためのものである。両端三角マーク36aは、分断線33の両端を示している。分断線表示ライン37aは、両端三角マーク36aを結ぶ直線から形成され、分断線33の具体的長さを表示している。曲率半径表示部38aは、各三角マーク35a,36aに近接して設けられる。この曲率半径表示部38aには、分断線33を用いて得られる曲率半径を示す数値「30」が表示されている。
【0029】
第2分断線表示マーク26も、第1分断線表示マーク25と同様に、中央三角マーク35b、両端三角マーク36b、分断線表示ライン37b、曲率半径表示部38bを有する。これら分断線表示マーク25,26は、第2被覆層21の表面に印刷で形成され、例えば100mmピッチで形成される。
【0030】
分断線表示マーク25,26は、所定の長さの分断線33を形成することができるものであればよく、図示のものに限定されない。例えば、三角マークのみのもの、分断線表示ラインのみのものでもよい。更には、単に、分断線形成用として目盛りを有するスケールを全長にわたって形成して、分断線表示マークとしてもよい。この場合には、所定ピッチで、曲率半径C1が30mmで分断線長さL1が例えば55mm、曲率半径C1が50mmで分断線長さL2が例えば75mmのように、分断線の長さ表示部をスケールの近くに所定ピッチで印刷により形成しておく。また、スケールの近くに印刷する代わりに、曲率半径と分断線長さの組み合わせ表を、2芯POFコードに添付してもよい。
【0031】
分断線表示マーク25,26は、第2被覆層21への印刷により形成してあるが、印刷方法は特に限定されない。例えば、インクジェット方式やその他の方式を用いることができる。また、印刷に代えて又は加えて、スタンプや、凹部や凸部によって形成してもよい。
【0032】
また、図6に示すように、シール39に上記分断線表示マーク25,26を設けておき、折曲する部位に、分断線表示マーク25,26が形成されているシール39を貼り付けて、この分断線表示マーク25,26を基準にして分断線33を形成してもよい。この場合には、取付面の角部などに合わせて、分断線33を正確に形成することができる。なお、シール39は透明なものが好ましく、貼付位置の特定が容易になる。なお、シール39の代わりに、転写シールを用いて、分断線表示マーク25,26を第2被覆層21に転写してもよい。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。2芯POFコード10を壁などに沿って敷設する際には、コードクランプや粘着テープなどを用いて、壁、床、天井などの取付面に取り付ける。このとき、POF素線11,12の並列面方向に2芯POFコード10を折り曲げる必要がある場合には、重ね折曲部34の曲率半径に応じて、用いる分断線表示マーク25,26を特定し、図4に示すように、例えば第1分断線表示マーク25を用いて、カッタ31により分断線33を第2被覆層21に形成する。この分断線33の形成により、2芯POFコード10は、部分的に分断POFコード10a,10bに分けられる。
【0034】
なお、分断線表示マーク25,26の中央三角マークは、2芯POFコード10を敷設する取付面の角部の中心に、位置合わせする必要がある。したがって、所定ピッチで分断線表示マーク25,26を第2被覆層21に形成している場合には、分断線表示マークの中央三角マーク35aと、実際に取り付ける角部の中央とが一致しなくなる場合が発生する。この場合には、近くに表示されている分断線表示マーク25,26を参考にして、角部の中央を中心として振り分けるように、近くに表示されている分断線表示マーク25,26の長さL1,L2を参考にして、分断線33を分断線表示マーク25,26からずれた位置で形成する。
【0035】
次に、図5に示すように、2芯POFコード10をPOF素線11,12の並列面(XY面)内で折り曲げると、分断線33で分断された内側分断POFコード10aに外側分断POFコード10bが重なるようになり、重ね折曲部34が形成される。この重ね折曲部34により、簡単に且つ各POF素線11,12に無理な力を加えることなく、所定の例えば30mmの曲率半径C1に一律に2芯POFコード10が折り曲げられる。従って、曲率半径C1を一定にして2芯POFコード10を敷設することができる。なお、POF素線11,12の並列面(XY面)に交差する方向での折り曲げは、通常の単芯POFコードと同様の取り扱いとなるため、簡単に行うことができる。
【0036】
したがって、室内等の壁や床、天井などに2芯POFコード10を沿わせて配線を行う際に、比較的折り曲げが容易なPOF素線の並列面(XY面)に交差する方向での曲げの他に、折り曲げが困難な並列面(XY面)内での折り曲げも容易に行うことができ、2芯POFコード10の配線施工が容易に行える。また、分断線33の長さを、例えば分断線表示マーク25,26によって一定に形成することができるため、折り曲げる際の曲率半径C1が一律にほぼ一定になる。これにより、見栄えの良い配管敷設が可能になる他に、重ね折曲部34の曲率半径が小さい場合に発生する伝送損失の影響が少なくなる。
【0037】
しかも、複数の曲率半径C1に対応させた分断線表示マーク25,26を用いることにより、敷設環境に合わせて最適な曲率半径を選択して、2芯POFコード10を敷設することができる。
【0038】
上記実施形態では、2芯POFコード10に分断線表示マーク25,26を形成して、これを基準にして分断線33を形成するようにしたが、これに代えて、または加えて、図7に示すように、分断線形成治具40を用いて分断線33を形成してもよい。分断線形成治具40は、挟持体41と、スリット42とから構成されている。挟持体41は、1対の挟持板41a,41bをヒンジ41cにより開閉自在に取り付けて構成されている。挟持板41a,41bの内面には、2芯POFコード10の第2被覆層21の外周面に合致する保持溝44が形成されている。また、上挟持板41aは透明材料から構成されており、2芯POFコード10の溝部23に対応する位置で、所定長さのスリット42が形成されている。このスリット42の長さは、分断線33の長さと一致している。
【0039】
使用に際しては、重ね折曲部34の中央となる位置をスリット42の中央三角マーク43に合わせた状態で、2芯POFコード10を挟み込む。この後、スリット42内にカッタ31を挿入し、スリット42の一端から他端までカッタ31を移動することで、分断線33を形成することができる。なお、曲率半径C1となる分断線長さL1に合わせたスリット42を形成しておく代わりに、最も大きな曲率半径に合わせた長さを有するスリットを形成し、小さな曲率半径に対しては、各曲率半径に対応する分断線長さL1となる分断線表示マークをスリット42に沿って形成しておくことで、所望の長さの複数種類の分断線33を形成することができる。このような分断線形成治具40を用いることにより、2芯POFコード10の外周面に分断線表示マーク25,26を印刷する必要がなくなる。
【0040】
また、図8に示すように、カッタ50を一体に有する分断線形成治具51を用いてもよい。カッタ50は、カッタ保持体52内で昇降自在に取り付けられている。また、カッタ50には、係止ピン53が取り付けられており、この係止ピン53にワッシャ54を介して、コイルバネ55の上端が当接している。コイルバネ55の付勢によりカッタ50は、通常は上方に持ち上げられた退避位置に付勢されており、使用する際にカッタ50の上部の押しボタン56を押し込むことで、第2被覆層21の連結部分21aを切断する。そして、スリット57内でカッタ保持体52を一端(図8(A))から他端(図8(B))に移動させることで、図8(C)に示すように、カッタ50により第2被覆層21の連結部分21aに簡単に分断線33を形成することができる。このカッタ内蔵タイプの分断線形成治具51では、別途にカッタ31を用いる必要がなく、またカッタ刃が剥き出しになることがないので、作業時の安全性が向上する他に、簡単に分断線33を形成することができる。なお、スリット57の下部にはガイド溝58が形成されており、このガイド溝58内でカッタ保持体52が保持された状態でスリット57内を平行移動する。
【0041】
また、上記実施形態では、分断線33を折曲部に合わせて形成するようにしているが、これに代えて、図示は省略したが、所定ピッチで分断線33を予め2芯POFコード10に形成しておいてもよい。分断線33の形成は、第2被覆層21の形成直後であってもよく、または、2芯POFコード10の巻取り工程の途中で分断線形成工程を入れることで形成してもよい。
【0042】
なお、上記実施形態では2芯POFコード10を用いる場合について説明したが、3芯以上の光ファイバコードを用いる場合にも同様にして本発明を適用することができる。この場合には、各POF素線の間の被覆層にそれぞれ分断線を形成することで、同様に、各POF素線の並列面内で光ファイバコードを容易に折り曲げることができる。この場合に、POF素線の並列面内で折り曲げる際に、内側になる第1分断線の長さを、外側になる第2分断線の長さよりも短くすることが好ましい。
【0043】
また、一つ以上のPOF素線の代わりに抗張力線を配置した光ファイバコードに対しても、同様にして分断線を形成することにより、POF素線や抗張力線の並列面内で光ファイバコードを折り曲げることができる。なお、抗張力線としては、例えば、アラミド繊維を樹脂で被覆したFRP(Fiber Reinforced Plastic)が用いられる他に、ポリマー抗張力線、ピアノ線等の鋼線、金属の単線、撚り線、ガラス繊維等が用いられる。
【実施例】
【0044】
本発明による効果を検証するため、2芯POFコードの90度曲げによる損失増加を、曲率半径C1の円周の四分の一の長さに当該2芯POFコードの長径L3を加えた長さで2芯POFコードを分断して曲げた場合(実施例:図5参照)と、分断せずに曲げた場合(比較例:図9(C)参照)とで比較した。当該コードのPOFはコアの直径が0.73mm、クラッドの直径が0.75mmのステップインデックス形POFであり、コアはPMMAからなり、クラッドは含フッ素アクリル樹脂からなる。なお、図1に示すように、第1被覆層として厚みが0.375mmのポリエチレン、第2被覆層として厚みが0.35mmのポリエチレンを用いた。また、光コードの外径を2.2mm、長径L3を4.4mmとした。
【0045】
【表1】

表1から明らかなように、分断部を形成しない比較例の場合、建物内配線に要求される25mmの曲げ半径で、曲げ損失の目安とされる0.5dBを超えているが、分断部を形成した本実施例では、より厳しい曲げ条件である半径15mmでも曲げによる損失は0.5dB未満に収まっていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明で用いる2芯POFコードの断面図である。
【図2】本発明の分断線表示マークを有する2芯POFコードを示す平面図である。
【図3】カッタを用いて分断線を形成する状態を示す斜視図である。
【図4】第1分断線表示マークにより形成された分断線を示す平面図である。
【図5】分断線を用いて折り曲げた状態を示す平面図である。
【図6】シールを用いて分断線を形成する別の実施形態を示す斜視図である。
【図7】分断線形成治具を用いて分断線を形成する別の実施形態を示す斜視図である。
【図8】カッタ内蔵の分断線形成治具を用いて分断線を形成する別の実施形態を示す斜視図である。
【図9】2芯POFコードの従来の折り曲げ方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 POFコード
10a,10b 分断POFコード
11,12 POF素線11
13 被覆層
21 第2被覆層
21a 連結部分
23 溝部
25,26 分断線表示マーク
31 カッタ
33 分断線
40,51 分断線形成治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ素線を並列に並べて被覆部により被覆してなる光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面内で折り曲げてなる光ファイバコード折曲部の製造方法において、
前記光ファイバコードの折曲対象位置に、前記複数の光ファイバ素線を並列方向に分断する分断線を前記光ファイバ素線の間の被覆部に前記光ファイバ素線に平行に入れる分断線形成工程と、
前記分断線形成工程で分断された部位で前記光ファイバ素線の並列面内で前記光ファイバコードを折り曲げて、各分断線で分断された分断光ファイバコードの内、折り曲げ時に内側となる内側光ファイバコードに対して、折り曲げ時に外側となる外側光ファイバコードを前記並列面内に交差する方向で重ねる重ね折り曲げ工程とを有することを特徴とする光ファイバコード折曲部の製造方法。
【請求項2】
前記光ファイバコードの外表面に、前記分断線を形成するために、分断線の長さを表示するための分断線表示マークが形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバコード折曲部の製造方法。
【請求項3】
前記折り曲げ工程における折曲部の最小曲率半径に対応させて前記分断線表示マークの分断線長さが決定されていることを特徴とする請求項2記載の光ファイバコード折曲部の製造方法。
【請求項4】
前記折曲部の曲率半径を複数としたときに、前記複数分の曲率半径に対応させて各分断線表示マークの分断線長さが形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の光ファイバコード折曲部の製造方法。
【請求項5】
前記折曲部の曲率半径からなる円周の四分の一の長さに、前記光ファイバ素線の並列方向における前記光ファイバコードの長さを加えた長さを、前記分断線長さとすることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の光ファイバコード折曲部の製造方法。
【請求項6】
複数の光ファイバ素線を並列に並べて被覆部により被覆してなる光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面内で折り曲げてなる光ファイバコード折曲部において、
前記光ファイバコードの前記複数の光ファイバ素線の間で、各光ファイバ素線を並列方向で分離するために、前記各光ファイバ素線の間で前記被覆部に入れられる分断線と、
前記分断線で分断された各分断光ファイバコードを前記光ファイバ素線の並列面に交差する方向で重ねて、前記光ファイバコードを前記並列面内で折り曲げ可能にする重ね折曲部とを備えることを特徴とする光ファイバコード折曲部。
【請求項7】
前記光ファイバコードの外表面に形成され、前記分断線の形成長さを表示するための分断線表示マークを備えることを特徴とする請求項6記載の光ファイバコード折曲部。
【請求項8】
前記分断線表示マークの分断線長さは、前記折曲部の最小曲率半径に対応して決定されていることを特徴とする請求項7記載の光ファイバコード折曲部。
【請求項9】
前記重ね折曲部の曲率半径を複数としたときに、前記複数分の曲率半径に対応させて前記分断線表示マークの分断線長さが形成されていることを特徴とする請求項7または8記載の光ファイバコード折曲部。
【請求項10】
前記折曲部の曲率半径からなる円周の四分の一の長さに、前記光ファイバ素線の並列方向における前記光ファイバコードの長さを加えた長さを、前記分断線長さとすることを特徴とする請求項6から9いずれか1項記載の光ファイバコード折曲部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−258350(P2009−258350A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106701(P2008−106701)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】