説明

光ファイバテープ心線

【課題】薄肉でありながら良好な難燃性とスクリーニング特性を実現することができる光ファイバテープ心線を提供すること。
【解決手段】ガラス光ファイバの外周に素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成した300μm以下の厚さを有する光ファイバテープ心線であって、前記素線被覆は非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、前記テープ被覆は厚さが40μm以上であって難燃性樹脂からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有する光ファイバテープ心線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、伝送機器内における信号伝送技術として、配線に光ファイバを用いた光インターコネクション方式が注目されている。このとき光ファイバは光ファイバテープ心線として用いられるのが一般的である。ここで、光ファイバテープ心線とは、ガラス光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂などの素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べ、紫外線硬化型樹脂などのテープ被覆によって一括被覆して形成したものである。光インターコネクション方式に用いられる従来の光ファイバテープ心線は、たとえば外径が125μmの石英系ガラス光ファイバの外周に、プライマリ層とセカンダリ層の2層からなる素線被覆を形成して外径が250μmの光ファイバ素線としたものを、250μmのピッチで12本平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成したもので、厚さ300μm程度、幅が3.1mm程度のものである。
【0003】
この種の光ファイバテープ心線について、伝送機器内の配線の収容性を向上する目的で、光ファイバ素線の細径化および光ファイバテープ心線の薄肉化が進んでいる。また、この種の光ファイバテープ心線の特性について、難燃性に対する要求が高まっている。たとえば特許文献1には、難燃性の紫外線硬化型樹脂をテープ被覆として用いた光ファイバテープ心線が開示されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0034575号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ファイバ素線の細径化や光ファイバテープ心線の薄肉化のために素線被覆やテープ被覆を薄くすると、良好な難燃性やスクリーニング特性が得られないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、薄肉でありながら良好な難燃性とスクリーニング特性を実現することができる光ファイバテープ心線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバテープ心線は、ガラス光ファイバの外周に素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成した300μm以下の厚さを有する光ファイバテープ心線であって、前記素線被覆は非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、前記テープ被覆は厚さが40μm以上であって難燃性樹脂からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記素線被覆は一層からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、ガラス光ファイバの外周に素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成した300μm以下の厚さを有する光ファイバテープ心線であって、前記素線被覆は厚さが30μm以上であって、ガラス光ファイバに隣接して形成した非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなる非難燃層と最外層に形成した難燃剤を含む難燃性樹脂からなる難燃層とを有し、前記テープ被覆は難燃性樹脂からなり、前記難燃層と前記テープ被覆との厚さの合計は40μm以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、200μm以下の厚さを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記ガラス光ファイバの外径は55〜90μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光ファイバテープ心線は、厚さが300μm以下の薄肉の光ファイバテープ心線でありながら、素線被覆が非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなることによって良好なスクリーニング特性を実現できるとともに、テープ被覆が厚さ40μm以上であって難燃性樹脂からなることによって良好な難燃性を実現できるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、厚さが300μm以下の薄肉の光ファイバテープ心線でありながら、素線被覆が厚さ30μm以上であって、ガラス光ファイバに隣接して形成した非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなる非難燃層と最外層に形成した難燃剤を含む難燃性樹脂からなる難燃層とを有することによって、素線に難燃層を有しながらも良好なスクリーニング特性を実現できるとともに、テープ被覆が難燃性樹脂からなり、かつ難燃層とテープ被覆との厚さの合計は40μm以上であることによって、良好な難燃性を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバテープ心線の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線10は、ガラス光ファイバ111の外周に一層の素線被覆112を形成した光ファイバ素線11を12本平行に並べ、テープ被覆12によって一括被覆して形成したものである。
【0016】
また、図2は、図1に示す光ファイバ素線11の断面図である。ガラス光ファイバ111の外径R11は55〜90μmである。したがって、外径が125μmの通常の光ファイバより細径として収容性の向上と曲げによる破断の確率の低減とを実現するとともに、伝送損失の増加しない程度の細径としている。ガラス光ファイバ111については後述する。
【0017】
また、素線被覆112はヤング率が40〜200kgfであり、難燃剤を含まない非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなるので、ガラス光ファイバ111を外傷から保護しマイクロベンドロスの発生を防止するとともに、良好なスクリーニング特性を実現する。さらに、ガラス光ファイバ111が細径であるとともに、素線被覆112は一層からなっているので、光ファイバ素線11の外径R12は従来よりも細径であり、光ファイバテープ心線10の薄肉化を確実にしている。
【0018】
また、図1に示す光ファイバテープ心線10において、テープ被覆12は難燃剤として水酸化アルミニウムを含む紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂からなり、厚さT1が40μm以上であるので良好な難燃性を実現する。
【0019】
また、光ファイバテープ心線10の厚さH1は300μm以下であり、薄肉化を実現している。さらに、光ファイバ素線11のピッチP1が従来よりも狭いので、幅D1は従来のものよりも小さく、伝送機器内の配線のフレキシビリティと収容性とを高め、省スペース化を実現する。
【0020】
つぎに、ガラス光ファイバ111について具体的に説明する。
【0021】
図3はガラス光ファイバ111の断面と対応する屈折率プロファイルを模式的に示す図である。図3に示すように、ガラス光ファイバ111は、中心コア部111aと、中心コア部111aの周囲に形成されたディプレストコア層111bと、ディプレストコア層111bの周囲に形成されたクラッド層111cとを有する。ディプレストコア層111bは中心コア部111aよりも屈折率が低く、クラッド層111cは中心コア部111aよりも屈折率が低くかつディプレストコア層111bよりも屈折率が高い。すなわち、ガラス光ファイバ111はいわゆるW型屈折率プロファイルを有するものである。
【0022】
クラッド層111cは屈折率調整用ドーパントを含まない純粋な石英からなる。そして図3に示すように、クラッド層111cに対する中心コア部111aの比屈折率差をΔ1、中心コア部111aの屈折率分布形状を表すパラメータであるα値をα、クラッド層111cに対するディプレストコア層111bの比屈折率差をΔ2、中心コア部111aの直径をa、ディプレストコア層111bの外径をbとすると、Δ1が0.8%、αが8.0であり、Δ2が−0.5%である。また、中心コア部111aの直径であるaは7.2μm、ディプレストコア層111bの外径であるbは12.0μmである。
【0023】
上記の屈折率プロファイルとした結果、光ファイバ111は、伝送機器内の信号伝送において用いられる信号光源の波長1310nmにおけるモードフィールド径が5.8μmであり、カットオフ波長が1238nmであって波長1250nmの光をシングルモード伝搬し、曲率半径1mmで曲げたときの波長1310nmにおける曲げ損失が0.6dB/ターンであり、波長1310nmにおける波長分散値が1.04ps/nm/kmであり、曲げ損失が小さく、収容性が高い光ファイバテープ心線に好適に用いることができるものとなる。
【0024】
なお、本明細書におけるカットオフ波長とはITU−T G.650.1に規定されたファイバカットオフ波長λcとする。その他、本明細書で特に定義しない用語についてはITU−T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0025】
また、Δ1、Δ2は式(1)、(2)で定義される。
【0026】
Δ1={(nc1−nc)/nc}×100 [%] (1)
Δ2={(nc2−nc)/nc}×100 [%] (2)
【0027】
ここで、nc1は中心コア部111aの最大屈折率、nc2はディプレストコア層111bの最小屈折率、ncはクラッド層111cの屈折率である。
【0028】
また、W型屈折率プロファイルにおいて、中心コア部111aの直径aは、中心コア部111aディプレストコア層111bの境界においてクラッド層111cと同じ屈折率を有する位置での径とし、ディプレストコア層111bの外径bは、ディプレストコア層111bとクラッド層111cの境界において比屈折率差Δ2の1/2の比屈折率差を有する位置での径とする。
【0029】
さらに、αは式(3)のように定義される。
【0030】
2(r)=nc12×{1−2×(Δ/100)×(2r/a)^α}
(但し、0<r<a/2) (3)
【0031】
ここで、rは光ファイバの中心からの半径方向の位置を示し、n(r)は位置rにおける屈折率を表している。また、記号「^」はべき乗を表す記号である。
【0032】
なお、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線は、以下のようにして製造できる。まず、石英ガラスを主成分とするプリフォームを線引き炉で加熱・溶融することによって線引きされた石英系ガラス光ファイバに、コーティングダイスを用いて液状の紫外線硬化型樹脂を塗布する。つぎに、塗布した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射し硬化させて素線被覆を形成し、光ファイバ素線を作製する。つぎに、作製した光ファイバ素線を12本平行に並べ、水酸化アルミニウムを含む液状の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を一括して塗布し、塗布した樹脂に紫外線を照射し硬化させてテープ被覆を形成し、ファイバテープ心線が完成する。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線10は、厚さH1が300μm以下の薄肉でありながら、素線被覆112が非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなることによって良好なスクリーニング特性を実現できるとともに、テープ被覆12が、厚さT1が40μm以上であって水酸化アルミニウムを含む難燃性の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂からなることによって良好な難燃性を実現できる。本実施の形態1ではW型屈折率プロファイルを有するガラス光ファイバを用いた場合について記述したが、必ずしもこの屈折率プロファイルである必要はなく、ステップ型やその他の屈折率プロファイルを有する光ファイバに適用可能である。さらにマルチモードファイバに適用することもできる。
【0034】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る光ファイバテープ心線について説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線20は、ガラス光ファイバ211の外周に素線被覆212を形成した光ファイバ素線21を12本平行に並べ、テープ被覆22によって一括被覆して形成したものである。
【0035】
図5は、図4に示す光ファイバ素線21の断面図である。光ファイバ素線21は、実施の形態1に係る光ファイバ素線11と同様に、ガラス光ファイバ211の外周に素線被覆212を形成したものである。また、ガラス光ファイバ211は、中心コア部211aと、中心コア部211aの周囲に形成されたクラッド層211bとを有する、通常のステップ型屈折率プロファイルを有するシングルモード光ファイバである。なお、光ファイバ211の外径R21は125μmである。
【0036】
また、素線被覆212は非難燃層212aと難燃層212bとからなる。非難燃層212aはガラス光ファイバ211に隣接して形成しており、ヤング率が0.15〜0.2kgfであって非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなるので、ガラス光ファイバ211のマイクロベンドロスの発生を確実に防止する。また、難燃層212bは素線被覆212の最外層に形成しており、ヤング率が40〜200kgfであって、難燃剤として水酸化アルミニウムを含む紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂からなるので、ガラス光ファイバ211を外傷から保護とともに、光ファイバテープ心線20の難燃性を高めている。また、図6は図4に示す光ファイバテープ心線の一部分を拡大した図であり、光ファイバテープ心線の被覆の厚さについて説明する図である。光ファイバ素線21は、図6に示す素線被覆212は非難燃層212aと難燃層212bとの合計の厚さT3が30μm以上であるから、難燃層212bに含まれる水酸化アルミニウムが製造工程などにおいて凝集し粒子化しても、この粒子が光ファイバ211の表面を傷つけることがなく、良好なスクリーニング特性を実現する。なお、非難燃層212aの外径R22は195μm、非難燃層212aの外径すなわち光ファイバ素線21の外径R23は250μmである。
【0037】
また、図4に示す光ファイバテープ心線20において、テープ被覆22は難燃剤として水酸化アルミニウムを含む紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂からなる。そして、図6に示すテープ被覆22の厚さT2と素線被覆212の難燃層212bの厚さT4の合計の厚さT5が40μm以上である。その結果、テープ被覆22と難燃層212bとの個々の厚さが40μmより薄いとしても、光ファイバテープ心線20は良好な難燃性を実現する。
【0038】
また、光ファイバテープ心線20の厚さH2は300μm以下であり、薄肉化を実現している。さらに、光ファイバ素線21のピッチP2は250μmであり、従来の光ファイバテープ心線との互換性を保ちつつ、伝送機器内の配線のフレキシビリティと収容性とを高め、省スペース化を実現する。
【0039】
なお、本実施の形態2に係る光ファイバテープ心線は、素線被覆を形成する工程において、非難燃層を形成する工程と難燃層を形成する工程を順次行う以外は、実施の形態1に係る光ファイバテープ心線と同様に製造できる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態2に係る光ファイバテープ心線20は、厚さH2が300μm以下の薄肉でありながら、素線被覆212が厚さT3が30μm以上であって、ガラス光ファイバ211に隣接して形成した非難燃層212aと最外層に形成した難燃層212bとを有することによって、素線被覆212に難燃層212bを有しながらも良好なスクリーニング特性を実現できる。それとともに、テープ被覆22が難燃性樹脂からなり、かつ難燃層212bとテープ被覆22との厚さの合計T5が40μm以上であることによって、良好な難燃性を実現できるという効果を奏する。
【0041】
本実施の形態2ではステップ型屈折率プロファイルを有するガラス光ファイバを用いた場合について記述したが、必ずしもこの屈折率プロファイルである必要はなく、その他の屈折率プロファイルを有する光ファイバに適用可能である。さらにマルチモードファイバに適用することもできる。
【0042】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
本発明の実施例1〜3および比較例1〜4として、光ファイバテープ心線を作製した。図7は、実施例および比較例に係る光ファイバテープ心線について、光ファイバ素線の特性、光ファイバ心線の特性、難燃性被覆の厚さの合計、燃焼試験及びスクリーニング試験の結果、および収容性の評価について示した図である。
【0043】
図7において、素線被覆が1層からなる実施例1、2についてはこの被覆を「セカンダリ」とし、素線被覆が非難燃層と難燃層とからなる実施例3および比較例1〜4については非難燃層を「プライマリ」、難燃層を「セカンダリ」とした。また、「UV」とは非難燃性の紫外線硬化型樹脂、「難燃」とは水酸化アルミニウムを含む難燃性の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を意味する。なお、「プライマリ」に用いた樹脂のヤング率はいずれ0.15〜0.2kgf、「セカンダリ」に用いた樹脂のヤング率はいずれも40〜200kgf、また、「難燃性の被覆の厚さの合計」とは、実施例1、2、比較例2〜4については「テープ被覆」の厚さ、実施例3および比較例1については「セカンダリ」と「テープ被覆」との合計の厚さを意味する。
【0044】
また、「燃焼試験」とは、試験規格UL1581−1080(VW−1)にしたがった試験であり、光ファイバテープ心線にこの試験を施して炎が燃え上がらなかった場合を良好な難燃性を示すとして「○」、炎が燃え上がった場合を「×」とした。また、「スクリーニング試験」とは、スクリーニング歪みが1%となる条件下での光ファイバ素線に対するスクリーニング試験であり、長さ1000m以上の良品の光ファイバ素線が得られた場合を「○」、光ファイバ素線の破断によって長さ1000m以上の良品の光ファイバ素線が得られなかった場合を「×」とした。また、収容性については、厚さ300μm以下の場合は「○」、300μmより大きい場合は「×」とした。
【0045】
なお、実施例1において用いた光ファイバは、上記実施の形態1に係る光ファイバと同様のものである。また、実施例2において用いた光ファイバは、実施の形態1に係る光ファイバと同様のW型の屈折率プロファイルを有し、Δ1が0.9%、αが8.0、Δ2が−0.5%、aが6.7μm、bが11.2μmの光ファイバである。この光ファイバの特性は、波長1310nmにおけるモードフィールド径が5.5μmであり、カットオフ波長が1236nmであり、曲率半径1mmで曲げたときの波長1310nmにおける曲げ損失が0.3dB/ターンであり、波長分散値が0.25ps/nm/kmであった。さらに、上記実施例3において用いた光ファイバは、上記実施の形態2に係る光ファイバと同様に、通常のステップ型屈折率プロファイルを有するシングルモード光ファイバである。
【0046】
一方、比較例1、2において用いた光ファイバは、実施の形態1に係る光ファイバと同様のW型の屈折率プロファイルを有し、Δ1が1.2%、αが1.5、Δ2が−0.2%、aが7.8μm、bが14.5μmである。この光ファイバの特性は、波長1310nmにおけるモードフィールド径が5.5μmであり、カットオフ波長が1244nm、曲率半径1mmで曲げたときの波長1310nmにおける曲げ損失が0.6dB/ターンであり、波長分散値が−7.4ps/nm/kmであった。さらに、比較例3、4において用いた光ファイバは、実施の形態2に係る光ファイバと同様に、通常のステップ型屈折率プロファイルを有するシングルモード光ファイバである。
【0047】
図7に示すように、実施例1、2の光ファイバテープ心線は、用いた光ファイバ素線の素線被覆が「UV」のみであり、長さ1000m以上の品の光ファイバ素線が得られ、良好なスクリーニング特性を示した。また、難燃性のテープ被覆の厚さが40μm以上の50μmであり、燃焼試験において炎が燃え上がらず、良好な難燃性を示した。また、テープの厚さが被覆の薄肉化による伝送損失の増加と配線の省スペース化を考慮した200μmであるので、十分に薄肉化しており収容性も良好であった。さらに、実施例1、2の光ファイバテープ心線は、ピッチがそれぞれ100μm、125μmであるので、光ファイバテープ心線の幅が従来の約半分程度となり、フレキシビリティが非常に高いものとなった。
【0048】
一方、実施例3の光ファイバテープ心線は、素線被覆が「UV」と「難燃」であるものの素線被覆厚さが30μm以上の62.5μmであり、長さ1000m以上の品の光ファイバ素線が得られ、良好なスクリーニング特性を示した。またテープ被覆の厚さが25μmであるものの難燃層である「セカンダリ」の厚さが27.5μmであるから難燃性の被覆の厚さの合計が40μm以上の52.5μmであり、燃焼試験において炎が燃え上がらず、良好な難燃性を示した。また、テープの厚さが300μmであるので、収容性も良好であった。
【0049】
一方、比較例1の光ファイバテープ心線は、スクリーニング試験において光ファイバ素線が長さ1000m以下で破断してしまった。また、比較例2、3の光ファイバテープ心線は、燃焼試験において光ファイバテープ心線から炎が燃え上がってしまった。さらに、比較例4の光ファイバテープ心線は、テープの厚さが300μmより大きく、収容性を満足しないものとなった。
【0050】
なお、実施例1において、光ファイバの外径を55μm、素線被覆の厚さを10μmとすれば、光ファイバ素線のピッチを75μmとさらに狭くでき、光ファイバテープ心線の幅がさらに狭くなりフレキシビリティと収容性とをさらに高めることができる。
【0051】
また、上記実施の形態において、難燃性の樹脂として水酸化アルミニウムを含む紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を用いたが、水酸化マグネシウムを含む紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を用いてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態において、素線被覆が一層からなる場合は、光ファイバの曲げ損失は、曲率半径1mmで曲げたときの波長1310nmにおいて1dB/ターン以下であることが好ましい。また、他の光ファイバとの接続を考慮すればモードフィールド径は波長1310nmにおいて5.4μm以上であることが好ましい。上記の特性を有する光ファイバは、たとえば屈折率プロファイルがW型の石英系光ファイバであって、Δ1が0.8%以上、αが1.5以上、Δ2が−0.2%以下であれば実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。
【図2】図1に示す光ファイバ素線の断面図である。
【図3】図1に示す光ファイバの断面と対応する屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。
【図5】図4に示す光ファイバ素線の断面図である。
【図6】図4に示す光ファイバテープ心線の被覆の厚さの関係について説明する図である。
【図7】本発明の実施例および比較例に係る光ファイバテープ心線について、光ファイバ素線の特性、光ファイバ心線の特性、難燃性の被覆の厚さの合計、燃焼試験及びスクリーニング試験の結果、および収容性の評価について示した図である。
【符号の説明】
【0054】
10、20 光ファイバテープ心線
11、21 光ファイバ素線
111、211 ガラス光ファイバ
111a、211a 中心コア部
111b ディプレストコア層
111c、211b クラッド層
112、212 素線被覆
12、22 テープ被覆
212a 非難燃層
212b 難燃層
D1、D2 幅
H1、H2、T1〜T5 厚さ
R11、R12、R21〜R23 外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス光ファイバの外周に素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成した300μm以下の厚さを有する光ファイバテープ心線であって、
前記素線被覆は非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、
前記テープ被覆は厚さが40μm以上であって難燃性樹脂からなることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記素線被覆は一層からなることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項3】
ガラス光ファイバの外周に素線被覆を形成した光ファイバ素線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆して形成した300μm以下の厚さを有する光ファイバテープ心線であって、
前記素線被覆は厚さが30μm以上であって、ガラス光ファイバに隣接して形成した非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなる非難燃層と最外層に形成した難燃剤を含む難燃性樹脂からなる難燃層とを有し、
前記テープ被覆は難燃性樹脂からなり、
前記難燃層と前記テープ被覆との厚さの合計は40μm以上であることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項4】
200μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ファイバテープ心線。
【請求項5】
前記ガラス光ファイバの外径は55〜90μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光ファイバテープ心線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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