光ファイバー加工用位相マスクおよびその製造方法
【課題】格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が高い光ファイバー加工用位相マスクと、このような位相マスクを簡便に製造するための製造方法とを提供する。
【解決手段】描画工程において、透明基板12上の電子線感応型のレジスト層17に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置100を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で描画し、レジストパターン形成工程において、レジスト層17を現像してレジストパターン17′を形成し、エッチング工程において、レジストパターン17′を介して透明基板12にエッチングを施して格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンを形成する。
【解決手段】描画工程において、透明基板12上の電子線感応型のレジスト層17に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置100を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で描画し、レジストパターン形成工程において、レジスト層17を現像してレジストパターン17′を形成し、エッチング工程において、レジストパターン17′を介して透明基板12にエッチングを施して格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー加工用位相マスク、特に紫外線を用いて光ファイバー内に回折格子を作製するための位相マスクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムでは、所望の波長帯域を遮断するためにファイバーブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)を用いた光フィルタが広く使用されている。また、このFBGは、光通信システム以外にも、レーザやセンサーに使用される狭帯域の高反射ミラー、ファイバーアンプにおける余分なレーザ波長を取り除く波長選択フィルタ、温度センサー等としても利用されている。
このようなFBGは、光ファイバーの光が伝搬する領域(コア)に所定の周期で屈折率変化を形成したものであり、屈折率変化の周期をグレーティング周期という。この周期的な屈折率変化は、2光束干渉法または位相マスク法等を用いて形成される(例えば、特許文献1、2)。このような周期的な屈折率変化によって、光ファイバーのコアを伝搬される光のなかで、ブラッグ中心波長領域の光が反射され、結果的にブラッグ中心波長領域の光が遮断されることになる。
しかし、上記の2光束干渉法は、横方向のビームの品質、すなわち空間コヒーレンスに問題があった。一方、位相マスク法は、石英基板の片面に凹溝と凸条からなる格子を所定のピッチで設けた位相マスクを介してエキシマレーザを照射して、光ファイバーのコアに屈折率変化を形成するものであり、上記の2光束干渉法における問題に対応できる方法として注目されている。このような位相マスク法に使用する位相マスクは、例えば、石英基板に電子線感応型のレジストを設け、形成しようとする凹溝の軸方向に沿う方向に電子ビームの走査線を合せ、電子ビームスポットをレジスト上にラスタースキャン方式で描画することにより露光し、その後、現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンを介して石英基板をエッチングして凹溝を形成することにより作製される。
【0003】
また、幅約10nm程度の広帯域にわたって光を遮断することを目的として、光ファイバー内に形成する回折格子を、格子のピッチが光ファイバーのコアの中心軸方向(格子の繰り返し方向)の位置に応じて線形あるいは非線形に増加あるいは減少しているチャープ型FBGとすることが行われている。このようなチャープ型FBGも、上記のような電子ビーム描画で作製されたチャープ位相マスクを用いて形成することができ(特許文献2)、例えば、反射帯域を広げた高反射ミラー、遅延時間を調整する手段等として用いられる。
さらに、高密度波長多重伝送技術を導入した光通信システムでは、通信に使う波長の信号光を光通信ネットワークから取り出すフィルタが必要となり、このフィルタとして、光ファイバーのコアの中心軸に対して斜めに回折格子が形成されたスラント型FBGが使用されている(例えば、特許文献3)。通常のFBG(光の進行方向に対して垂直に回折格子が形成されている)は、導波モードからそれと逆方向に伝搬する導波モード(反射モード)への結合に比べて、後進クラッドモードへの結合が小さい。しかし、このスラント型FBGは、反射モードへの結合を抑制し、グレーティング周期で決まる特定波長の光を後進クラッドモードへ結合させることができ、後進クラッドモードに結合した光は、光ファイバー外に放出されるので、特定波長の信号光を取り出すフィルタとして機能する。また、スラント角度を最適化することで、反射モードへの結合は充分に小さくすることができ、通常のFBGで生じる透過損失リップルを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2521708号
【特許文献2】特開平7−140311号公報
【特許文献3】特開2006−133612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバー内での回折格子の形成に用いられる従来の位相マスクの製造では、上述のように、電子ビームスポットをラスタースキャン方式で走査してパターンを描画する工程を有している。しかし、電子ビームスポットのラスタースキャン方式での描画は、例えば、ライン/スペースのパターンのエッチ精度が悪く、このため、位相マスクの格子状パターンを構成する凹溝と凸条の寸法精度が悪いという問題があった。また、エッチ精度を高めるために電子ビームスポットの描画位置間隔(スキャンピッチ)の設定を小さくすると、描画に要する時間が大幅に増加してしまうという問題があった。
また、利得特性が良好なスラント型FBGを位相マスク法で作製する場合、使用する位相マスクも、その凹溝、凸条からなる格子状パターンが光ファイバーのコアの中心軸方向に対して所望の角度で傾斜するように透明基板に形成されたスラント型とする必要がある。しかし、電子ビームスポットのラスタースキャン方式による電子線描画によりスラント型位相マスクを作製すると、位相マスクの格子状パターンを構成する凹溝と凸条の寸法精度が更に悪くなるという問題があり、実用に供し得るスラント型位相マスクは未だ得られていない。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が高い光ファイバー加工用位相マスクと、このような位相マスクを簡便に製造するための製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、透明基板の一主面に格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンが設けられ、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクの製造方法において、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する描画工程と、前記レジスト層を現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成するエッチング工程と、を有するような構成とした。
【0007】
本発明の他の態様として、前記描画工程では、前記レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に、矩形のパターンエリアを該パターンエリアの対向する1組の辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように設定し、少なくとも該パターンエリア内の前記レジスト層を描画し、前記エッチング工程後に、前記パターンエリアを包含するとともに、対向する1組の辺が前記パターンエリアの前記1組の辺と平行となるように矩形領域を前記透明基板から切り出す加工工程を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、透明基板として、前記一主面が矩形である透明基板を使用し、前記レジスト層に矩形のパターンエリアを、該パターンエリアを構成する辺が前記透明基板を構成する辺と平行となるように設定し、前記描画工程では、前記パターンエリアを構成する辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように電子ビームの描画可能領域内に前記パターンエリアを位置させて、少なくともパターンエリア内の前記レジスト層を描画するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記描画工程では、前記エッチング工程で形成される凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように描画するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記透明基板と前記レジスト層との間にハードマスクを介在させ、前記エッチング工程では、形成したレジストパターンを介して前記ハードマスクをエッチングしてハードマスクパターンを形成し、該ハードマスクパターンを介して透明基板にエッチングを施すような構成とした。
【0008】
本発明は、透明基板と、該透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備え、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクにおいて、前記透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような構成とした。
【0009】
本発明の他の態様として、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して前記の格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記一主面が矩形であり、前記凹溝の軸方向に直交する方向が前記一主面の対向する1組の辺に対して所定の角度をなしているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少しているような構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法は、矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して電子線感応型のレジスト層をパターン描画するので、形成されるレジストパターンのエッチ精度が高く、これにより、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高い位相マスクの製造が可能となる。また、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法は、凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するような位相マスクの製造においても同様の効果が奏される。さらに、透明基板の長手方向に対して凹溝と凸条が傾斜するような位相マスクの製造においても同様の効果が奏されるとともに、従来の電子ビームスポットをラスタースキャン方式で走査してパターンを描画する方法に比べて大幅な製造時間の短縮が可能である。
【0011】
また、本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示される光ファイバー加工用位相マスクのI−I線における部分拡大縦断面図である。
【図3】図1に示される光ファイバー加工用位相マスクの部分拡大平面図である。
【図4】本発明の光ファイバー加工用位相マスクを用いた光ファイバー加工の一例を説明するための図である。
【図5】光ファイバーの干渉縞パターンの一例を示す図である。
【図6】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す図2相当の部分拡大縦断面図である。
【図7】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7に示される光ファイバー加工用位相マスクの部分拡大平面図である。
【図9】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図10】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法に使用する可変成形ビーム型の電子線描画装置の一例を説明するための図である。
【図11】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法における電子線ビーム描画を説明するための図である。
【図12】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図13】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図14】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図15】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図16】実施例1で作製した光ファイバー加工用位相マスクの凹溝と凸条の境界部位を示す図である。
【図17】比較例1で作製した光ファイバー加工用位相マスクの凹溝と凸条の境界部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[光ファイバー加工用位相マスク]
本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、透明基板と、透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備えるものであり、透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡(CD−SEM)を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)の3σ(σ:標準偏差)が15nm以下、好ましくは10nm以下となるものである。
このような本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなるものである。
【0014】
図1は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1の鎖線で囲まれた部位AのI−I線における部分拡大縦断面図であり、図3は図1の鎖線で囲まれた部位Aの部分拡大平面図である。図1〜図3において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク11は、透明基板12と、この透明基板12の一主面12aに設定されたパターンエリア13と、パターンエリア13内に位置する格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンと、を備えている。尚、図1に示されるパターンエリア13と部位Aの寸法比と、図2および図3に示される格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。また、図3では、凸条16に斜め鎖線を付して示している。
光ファイバー加工用位相マスク11を構成する透明基板12は、例えば、石英基板、ガラス基板等であり、厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板12の外形およびパターンエリア13の外形は矩形であることが好ましく、図示例では透明基板12の外形が長方形であり、一主面12aに設定されたパターンエリア13も長方形であり、透明基板12の長辺12A,12Aとパターンエリア13の長辺13A,13Aは平行となっている。そして、透明基板12の長辺12A,12Aと平行な方向(図示例の矢印a方向)に対して、凹溝15、凸条16の軸方向(図示例の矢印b方向)が90°となるように設定されている。また、パターンエリア13の大きさは適宜設定することができ、例えば、長辺13A,13Aの長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板12の大きさは、一主面12a内にパターンエリア13が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面12aとパターンエリア13とが一致するものであってもよい。
【0015】
この位相マスク11における格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンでは、凹溝15が一様なピッチPで形成されている。このピッチPが小さくなるほど、後述する光ファイバー加工におけるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなるので、光ファイバーに形成する干渉縞パターンのピッチに応じて凹溝15のピッチPを設定することができる。また、凹溝15の深さ(凸条16の高さ)は、光ファイバー加工(干渉縞パターン形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。
【0016】
ここで、本発明では、透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡(CD−SEM)を用いて、凹溝15もしくは凸条16の幅を凹溝15と凸条16の境界(測長用電子顕微鏡の観察画像では白く見える細線)に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)で、位相マスク11における凹溝15と凸条16の境界部位のエッジ精度を判定する。すなわち、上記の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキは、凸条16の側壁面にウネリや凹凸が存在したり、その程度に左右され、凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキが大きいほど、境界部位の幅のバラツキは大きくなり、エッジ精度が低下する。したがって、上記の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキが小さいほどエッジ精度が高いものとする。本発明の位相マスク11における凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。このような本発明の位相マスク11は、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。しかし、上記の幅バラツキの3σが15nmを超えると、光ファイバー内に作製される回折格子の精度が低下し好ましくない。
【0017】
図4は、本発明の光ファイバー加工用位相マスク11を用いた光ファイバー加工の一例を説明するための図である。図4では、光ファイバー51は、例えば、ゲルマニウム添加石英ガラスからなるコア52と、このコア52を被覆するように設けられた石英ガラスからなるクラッド53を備えたものである。この光ファイバー51に光ファイバー加工用位相マスク11を平行に配置する。すなわち、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンが位置する一主面12aが光ファイバー51と平行となるように対向し、かつ、透明基板12の長辺12A,12Aに沿った方向(格子状の凹溝15と凸条16の繰り返し方向)が光ファイバー51の軸方向と平行となるように位相マスク11を配置する。この状態で、位相マスク11を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバー51に照射する。位相マスク11に照射されたエキシマレーザ光61は、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンによって位相がπ(rad)だけ変調され、0次の光62と、プラス1次の回折光63A、マイナス1次の回折光63Bに分割される。そして、プラス1次の回折光63Aとマイナス1次の回折光63Bによる所定ピッチの干渉縞が光ファイバー51のコア52に照射され、このピッチでの屈折率変化がコア52に形成される。図5は、図4に示されるコア52の鎖線で囲まれた部位Bの干渉縞パターンを例示する図であり、エキシマレーザ光の照射方向に対して横方向の干渉縞パターン52Aが形成される。尚、図4に示されるコア52と部位Bの寸法比と、図5に示される干渉縞パターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。
【0018】
図6は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す図2相当の部分拡大縦断面図である。図6において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク21は、透明基板22と、この透明基板の一主面22aに設定されたパターンエリア(図示せず)内に位置する格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンと、を備えている。この位相マスク21は、光ファイバーにチャープ型FBG(Fiber Bragg Grating)を形成するための位相マスクであり、凹溝25のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少している。
光ファイバー加工用位相マスク21を構成する透明基板22は、上述の位相マスク11を構成する透明基板12と同様の材質であってよく、透明基板22の厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板22の外形およびパターンエリア(図示せず)の外形は矩形であることが好ましく、透明基板22の外形辺とパターンエリア(図示せず)の外形辺が平行となっていることが好ましい。そして、透明基板22の対向する1組の辺と平行な方向に対して、凹溝25、凸条26の軸方向が90°となるように設定されている。また、パターンエリア(図示せず)の大きさは適宜設定することができ、例えば、矩形の1辺の長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板22の大きさは、一主面22a内にパターンエリア(図示せず)が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面22aとパターンエリア(図示せず)とが一致するものであってもよい。
【0019】
格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンでは、凹溝25のピッチが小さくなるほど、位相マスク21から射出されるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなる。また、凹溝25の深さ(凸条26の高さ)は、光ファイバー加工(チャープ型FBG形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。したがって、光ファイバーに形成するチャープ型FBGに応じて、凹溝25の深さ(凸条26の高さ)とともに、凹溝25のピッチを線形あるいは非線形に増加あるいは減少させて設定することができる。例えば、凹溝25のピッチを、位相マスク21の中心から周辺に向けて減少するように設定し、このような設定の凹溝25の配列を、位相マスク21の中心に対して対称となるように配置することができる。
【0020】
このような位相マスク21における凹溝25もしくは凸条26の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。そして、このような本発明の位相マスク21は、格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上記の光ファイバー加工用位相マスク21を用いた光ファイバー加工では、一主面22aが光ファイバーに対向し、格子状の凹溝25と凸条26の繰り返し方向が光ファイバーの軸方向と平行となるように位相マスク21を配置する。そして、上述の図4で説明したように、位相マスク21を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバーに照射する。これにより、光ファイバーにチャープ型FBGを形成することができる。
【0021】
図7は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す平面図であり、図8は図7の鎖線で囲まれた部位Aの部分拡大平面図である。図7および図8において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク31は、外形が長方形である透明基板32と、この透明基板32の一主面32aに設定されたパターンエリア33と、パターンエリア33内に位置する格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンと、を備えている。この位相マスク31は、光ファイバーにスラント型FBGを形成するための位相マスクであり、透明基板32(一主面32a)の長辺32A,32Aに平行な方向(図8に線分L1で示される方向)に対して、凹溝35の軸方向に直交する方向(図8に線分L2で示される方向)が、角度θをなしている。尚、図7に示されるパターンエリア33と部位Aの寸法比と、図8に示される格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。また、図8では、凸条36に斜め鎖線を付して示している。
【0022】
光ファイバー加工用位相マスク31を構成する透明基板32は、上述の位相マスク11を構成する透明基板12と同様の材質であってよく、透明基板32の厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、図示例では、透明基板32の外形およびパターンエリア33の外形は長方形であり、透明基板32の外形辺とパターンエリア33の外形辺が平行となっている。また、パターンエリア33の大きさは適宜設定することができ、例えば、長辺33A,33Aの長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板32の大きさは、一主面32a内にパターンエリア33が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面32aとパターンエリア33とが一致するものであってもよい。
格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンでは、凹溝35のピッチが小さくなるほど、位相マスク31から射出されるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなる。また、凹溝35の深さ(凸条36の高さ)は、光ファイバー加工(スラント型FBG形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。したがって、光ファイバーに形成するスラント型FBGに応じて、上記の角度θ、凹溝35のピッチ、凹溝35の深さ(凸条36の高さ)を設定することができる。
【0023】
例えば、波長λのブラッグ反射を可能とするためには、コアに形成されたスラント型FGBの繰り返し方向とコアの中心軸とがなすスラント角度αと、光ファイバー加工用位相マスク31における上記の角度θと、光ファイバー加工用位相マスク31の凹溝35のピッチP(図8参照)と、コアの波長λ光に対する屈折率nと、の間に下記の関係式が成立するように設定する。すなわち、スラント角度α、角度θおよび凹溝35のピッチPのいずれか1つを予め設定し、下記の関係式が成立するように他の2つを設定することができる。
λ=2n・D・cosα、
D=(P/2cosθ)cosα
【0024】
このような光ファイバー加工用位相マスク31における凹溝35もしくは凸条36の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。そして、このような本発明の位相マスク31は、格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上記の光ファイバー加工用位相マスク31を用いた光ファイバー加工では、一主面32aが光ファイバーに対向し、透明基板32(一主面32a)の長辺32A,32Aに平行な方向(図8に線分L1で示される方向)が光ファイバーの軸方向と平行となるように位相マスク31を配置する。そして、上述の図4で説明したように、位相マスク31を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバーに照射する。これにより、光ファイバーにスラント型FBGを形成することができる。
このような本発明の光ファイバー加工用位相マスク11,21,31は、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンの精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上述の光ファイバー加工用位相マスクの実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[光ファイバー加工用位相マスクの製造方法]
図9は、上述の位相マスク11の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
本発明では、描画工程において、透明基板12の一主面12a上の電子線感応型のレジスト層17に対して、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビーム(以下、EBとも記す)をベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図9(A))。この描画工程では、後述する1つの凸条形成部位の描画を1回の矩形電子ビームの走査で行うことが好ましい。すなわち、矩形電子ビームを凸条形成部位の短辺または長辺の大きさに合わせ、凸条形成部位に長辺方向または短辺方向に沿って走査してパターンを描画することが好ましい。
透明基板12は、例えば、石英基板、ガラス基板等であり、厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、電子線感応型のレジスト層17は、公知のネガ型の電子線感応レジスト、あるいは、ポジ型の電子線感応レジストからなるものであり、このような電子線感応レジストをスピンコート法等の公知の塗布手段で塗布、乾燥したもの、あるいは、このような電子線感応レジストのフィルムをラミネートしたものであってよい。図示例では、レジスト層17はネガ型の電子線感応レジストを使用しており、レジスト層17の凸条形成部位16′に対して矩形の電子ビームで描画している。この電子線感応型のレジスト層17の厚みは、後述するレジストパターン形成工程で形成されるレジストパターンが、エッチング工程において、透明基板12に所望の深さの凹溝15を形成するためのマスクとして機能し得るように設定することができ、例えば、0.2〜2μm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板12と電子線感応型のレジスト層17との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよい。このようなハードマスクは、電子ビームを用いた描画におけるチャージアップを抑制する作用をなし、また、後述するエッチング工程において透明基板12に対するハードマスクパターンとして機能するものであり、厚みは50〜1200nmの範囲が好ましい。
【0026】
図10は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法に使用する可変成形ビーム型の電子線描画装置の一例を説明するための図である。図10において、電子線描画装置100は図示しない真空チャンバー内に配置されており、電子銃101、集光レンズ102、第1成形アパーチャ103、投影レンズ104、成形偏向器105、第2成形アパーチャ106、副偏向器107、対物レンズ108、主偏向器109を、図面の上方から下方に順次有しており、さらに、電子線感応型のレジスト層17を備えた透明基板12を載置するステージ111と、このステージ111をXY水平駆動するための駆動機構(図示せず)を備えている。このような電子線描画装置100では、電子銃101から放出された電子は集光レンズ102により集光され、所望の矩形の開口を有する第1成形アパーチャ103を通り、矩形に成形される。次いで、成形されたビームは投影レンズ104、成形偏向器105にて、第2成形アパーチャ106の所定位置に投影され、第1成形アパーチャ103による成形形状と、第2成形アパーチャ106の開口形状により、第2成形アパーチャ106を通過した時点では所望の矩形に成形される。そして、副偏向器107、主偏向器109により偏向された位置で、対物レンズ108により焦点が制御され、電子線感応型のレジスト層17に照射される。
【0027】
図11は、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画を説明するための図面である。図11(A)に示されるように、電子線感応型のレジスト層17の凸条形成部位16′の幅W1(短辺の大きさ)が矩形の電子ビーム(鎖線で示している)の成形可能な範囲内であれば、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位16′の長手方向(図示のY方向(凸条形成部位16′の長辺に沿った方向))に矩形の電子ビームを走査させて描画することができる。また、図11(B)に示されるように、電子線感応型のレジスト層17の凸条形成部位16′の幅W2が矩形の電子ビーム(鎖線で示している)の成形可能な範囲よりも大きい場合、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位16′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画するので、凸条形成部位16′の幅方向の両端における描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。
【0028】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層17を現像してレジストパターン17′を形成する(図9(B))。レジスト層17の現像は、使用する電子線感応レジストに応じて公知の手法により行うことができ、また、現像前に必要に応じてベーク処理等を施してもよい。描画工程において矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画された凸条形成部位16′の幅方向の両端における描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状であるため、形成されたレジストパターン17′は、エッジ精度が高いものとなる。
次いで、エッチング工程において、レジストパターン17′を介して透明基板12にエッチングを施して凹溝15を形成し(図9(C))、その後、レジストパターン17′を除去することにより格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク11を得ることができる(図9(D))。レジストパターン17′を介した透明基板12のエッチングは、例えば、透明基板12が石英基板の場合、エッチングガスとしてCF4ガス等を使用することができる。
【0029】
また、上述のように、透明基板12と電子線感応型のレジスト層17との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させる場合、まず、レジストパターン17′を介してハードマスクにCH2Cl2ガス等を用いてエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成し、このハードマスクパターンを介して透明基板12にエッチングを施して凹溝15を形成することができる。このように形成したハードマスクパターンのエッチ精度は、レジストパターン17′のエッジ精度を反映して高いものとなる。
このように製造された光ファイバー加工用位相マスク11では、凹溝15と凸条16のエッジ精度は、レジストパターン17′のエッジ精度、あるいは、ハードマスクパターンのエッチ精度を反映して高いものとなり、凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度が可能となる。
【0030】
図12は、上述の位相マスク21の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、描画工程において、透明基板22の一主面22a上の電子線感応型のレジスト層27に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図12(A))。電子線感応型のレジスト層27は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層27はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層27の凸条形成部位26′に対して矩形の電子ビームで描画している。この凸条形成部位26′は、後述するエッチング工程において形成される凹溝25のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように設定されている。したがって、凸条形成部位26′の幅は複数種存在することとなり、凸条形成部位26′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲であれば、上述の図11(A)に示したのと同様に、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位26′の長手方向に矩形の電子ビームを走査させて描画することができる。また、凸条形成部位26′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲よりも大きい場合、図11(B)に示したのと同様に、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位26′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式でパターンを描画するので、凸条形成部位26′の幅方向の両端の描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。尚、透明基板22と電子線感応型のレジスト層27との間に、クロム薄膜等のハードマスク用の金属層を介在させてもよいことは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
【0031】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層27を現像してレジストパターン27′を形成し(図12(B))、次いで、エッチング工程において、レジストパターン27′を介して透明基板22にエッチングを施して凹溝25を形成し(図12(C))、その後、レジストパターン27′を除去することにより格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク21を得ることができる(図12(D))。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。また、レジストパターン27′を介してハードマスクにエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成すること、このハードマスクパターンを介して透明基板22にエッチングを施して凹溝25を形成できることは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
このように製造された光ファイバー加工用位相マスク21では、凹溝25と凸条26のエッジ精度が、レジストパターン27′のエッジ精度、あるいは、ハードマスクのエッチ精度を反映して高いものとなり、凹溝25もしくは凸条26の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度が可能となる。
【0032】
図13および図14は、上述の位相マスク31の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、描画工程において、まず、透明基板32の一主面32a上の電子線感応型のレジスト層37に矩形のパターンエリア33を設定する。この矩形のパターンエリア33は、レジスト層37の電子ビームの描画可能領域38内に位置し、かつ、パターンエリア33の対向する1組の辺33A,33Aが電子ビームのスキャン方向(図示のY方向)に直交する方向(図示のX方向)に対して所定の角度θをなすように設定する(図13(A))。図示例では、描画可能領域38を二点鎖線で囲み示し、描画可能領域38内における電子ビームのスキャン方向を鎖線にて便宜的に示している。次いで、パターンエリア33内のレジスト層37に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図13(B)、図14(A))。図示例では、パターンエリア33よりも広く、描画可能領域38よりも狭い領域が描画されているが、本発明では、少なくともパターンエリア33内のレジスト層37に対して描画すればよく、したがって、パターンエリア33のみを描画してもよく、また、描画可能領域38の全域を描画してもよい。
【0033】
電子線感応型のレジスト層37は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層37はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層37の凸条形成部位36′に対して矩形の電子ビームで描画しており、図13(B)では、電子ビームの描画部位を一点鎖線で便宜的に示している。このような矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画では、凸条形成部位36′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲にある場合には、上述の図11(A)に示したのと同様に、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位36′の長手方向に矩形の電子ビームを走査させてパターンを描画することができる。また、凸条形成部位36′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲よりも大きい場合、図11(B)に示したのと同様に、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位36′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画するので、凸条形成部位36′の幅方向の両端の描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。尚、透明基板32と電子線感応型のレジスト層37との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよいことは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
【0034】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層37を現像してレジストパターン37′を形成し(図14(B))、次いで、エッチング工程において、レジストパターン37′を介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成し(図14(C))、その後、レジストパターン37′を除去することにより格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンを形成する(図14(D))。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。また、レジストパターン37′を介してハードマスクにエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成すること、このハードマスクパターンを介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成できることは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
本実施形態では、上述のエッチング工程後に、加工工程において、パターンエリア33を包含するとともに、対向する1組の辺32A,32Aがパターンエリア33の上記の1組の辺33A,33Aと平行となるように矩形領域39を透明基板32から切り出す(図13(C))。これにより、透明基板32の長辺32A,32Aに平行な方向に対して、凹溝35の軸方向に直交する方向が角度θをなす本発明の光ファイバー加工用位相マスク31を得ることができる。
【0035】
また、図15は、上述の位相マスク31の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、透明基板32として、一主面32aが矩形である透明基板32を使用し、一主面32a上の電子線感応型のレジスト層37に矩形のパターンエリア33を、パターンエリア33を構成する辺33A,33Aが透明基板32を構成する辺32A,32Aと平行となるように設定する(図15(A))。
そして、描画工程において、パターンエリア33を構成する辺33A,33Aが電子ビームのスキャン方向(図示のY方向)に直交する方向(図示のX方向)に対して所定の角度θをなすように、電子ビームの描画可能領域38内にパターンエリア33を位置させる(図15(B))。図示例では、描画可能領域38を二点鎖線で囲み示し、描画可能領域38内における電子ビームのスキャン方向を鎖線にて便宜的に示している。次いで、パターンエリア33内のレジスト層37に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図15(C))。図示例では、パターンエリア33よりも広く、描画可能領域38よりも狭い領域が描画されているが、本発明では、少なくともパターンエリア33内のレジスト層37に対して描画すればよく、したがって、パターンエリア33のみを描画してもよく、また、描画可能領域38の全域を描画してもよい。
【0036】
電子線感応型のレジスト層37は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層37はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層37の凸条形成部位36′に対して矩形の電子ビームで描画しており、図15(C)では、電子ビームの描画部位を一点鎖線で便宜的に示している。このような矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画は、図13および図14で説明した実施形態と同様とすることができる。また、透明基板32と電子線感応型のレジスト層37との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよいことも同様である。
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層37を現像してレジストパターンを形成し、次いで、エッチング工程において、レジストパターンを介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成し、その後、レジストパターンを除去することにより、格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク31を得ることができる。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の実施形態と同様とすることができる。
【0037】
このような光ファイバー加工用位相マスク31を、凹溝35の軸方向と可変成形電子ビームの走査方向とが角度θをなすような設定でベクタースキャン方式にて描画することにより製造する場合、例えば、角度θが10°であると、0°の場合に比べて電子ビームの成形図形数が10000倍以上となり、結果的に描画時間が10倍以上必要となり、あるいは、描画自体が困難となることがある。また、非描画領域との境界に位置する描画領域が多数の図形で構成されるため、境界の形状が複雑なものとなり、結果的に凹溝35と凸条36のエッジ精度が悪化することになる。図13〜図15に例示した本発明は、このようなベクタースキャン方式の描画の欠点を解消したものであり、光ファイバーにスラント型FBGを形成するための光ファイバー加工用位相マスク31を、その凹溝35もしくは凸条36の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度で製造可能としたものである。
上述の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
透明基板として、厚み6.35mmの石英基板(152mm×152mmの長方形)を準備し、この石英基板の一方の主面に電子線感応型のネガ型レジスト(住友化学(株)製 NEB22)をスピンコート法で塗布し、乾燥して厚み0.4μmのレジスト層を形成した。このレジスト層上に長方形(80mm×30mm)のパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(日本電子(株)製 JBX9000)を用いて、矩形(最大矩形サイズ2000nm×2000nm)の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。すなわち、ピッチが1100nmの回折格子を形成するための光ファイバー加工用位相マスクを作製することを目的として、550nm(X方向)×2000nm(Y方向)の矩形の電子ビームを、上記のパターンエリアの短辺に沿った方向(Y方向)を走査方向とし、1回の矩形電子ビームの走査で1つの凸条部形成部位の描画を行い、電子ビームの走査線をパターンエリアの長辺に沿った方向(X方向)で1100nm移動させるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
【0039】
(レジストパターン形成工程)
上記のように描画を行ったレジスト層に対してベーク処理(110℃、30分間)を施し、その後、アルカリ現像液でレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から、測長用電子顕微鏡(ライカ社製 LWM9000)を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界部位(図16に示した観察画像で白く見える細線部位)に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)の3σ(σ:標準偏差)は12nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に厚み500nmのクロム薄膜をスパッタリング法で成膜してハードマスクを形成し、このハードマスク上に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
実施例1と同様にして、矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0041】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CH2Cl2ガスを用いてハードマスクをドライエッチングしてハードマスクパターンを形成した。
次に、このハードマスクパターンを介して、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去し、硝酸第二セリウムアンモニウムを用いてハードマスクパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは11nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例1と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、電子ビーム描画装置(ETEC社製 MEBES4500)を用いて、電子ビームスポット(直径134nm)をレジスト層上にラスタースキャン方式で走査してパターンを描画した。すなわち、上記のパターンエリアの短辺に沿った方向をスキャン方向(スキャンピッチ134nm)とし、ラスタースキャンの走査線数を4本として1つの凸条部形成部位の描画を行い、形成される回折格子のピッチが1100nmとなるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
【0043】
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝と凸条の境界部位の幅を実施例1と同様に観察した画像を図17に示した。そして、凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、20nmであり、実施例1に比べてエッジ精度が低いものであることが確認された。
【0044】
[実施例3]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。次に、このレジスト層上に矩形のパターンエリアを設定した。この矩形のパターンエリアは、レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に位置し、かつ、パターンエリアの対向する1組の長辺が電子ビームのスキャン方向(Y方向)に直交する方向(X方向)に対して10°をなすものとした。(図13(A)参照)
(描画工程)
次いで、実施例1と同様の可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて、矩形(最大矩形サイズ2000nm×2000nm)の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。すなわち、ピッチが1100nmの回折格子を形成するための光ファイバー加工用位相マスクを作製することを目的として、550nm(X方向)×2000nm(Y方向)の矩形の電子ビームを、上記のスキャン方向(Y方向)に1回スキャンすることにより1つの凸条部形成部位の描画を行い、電子ビームの走査線を上記のスキャン方向(Y方向)に直交する方向(X方向)で1100nm移動させるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0045】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
次に、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去し、その後、上記のパターンエリアを包含するとともに、対向する長辺が上記のパターンエリアの長辺と平行となるように長方形領域(80mm×80mm)を石英基板から切り出した。これにより、石英基板の長辺に平行な方向に対して、凹溝の軸方向に直交する方向が10°傾斜した状態で格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、10nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0046】
[比較例2]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例3と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、比較例1と同様の電子ビーム描画装置を用いて、電子ビームスポット(直径135nm)をレジスト層上にラスタースキャン方式で走査してパターンを描画した。すなわち、実施例3と同様に、Y方向をスキャン方向とし、ラスタースキャンの走査線数を4本として1つの凸条部形成部位の描画を行い、形成される回折格子のピッチが1100nmとなるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0047】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを溶解除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
次に、実施例3と同様にして、長方形領域(80mm×30mm)を石英基板から切り出した。これにより、石英基板の長辺に平行な方向に対して、凹溝の軸方向に直交する方向が10°傾斜した状態で格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、30nmであり、実施例3に比べてエッジ精度が低いものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
光通信システム等に用いられる光ファイバー内への回折格子の作製に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
11,21,31…光ファイバー加工用位相マスク
12,22,32…透明基板
13,33…パターンエリア
15,25,35…凹溝
16,26,36…凸条
38…描画可能領域
100…可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー加工用位相マスク、特に紫外線を用いて光ファイバー内に回折格子を作製するための位相マスクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムでは、所望の波長帯域を遮断するためにファイバーブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)を用いた光フィルタが広く使用されている。また、このFBGは、光通信システム以外にも、レーザやセンサーに使用される狭帯域の高反射ミラー、ファイバーアンプにおける余分なレーザ波長を取り除く波長選択フィルタ、温度センサー等としても利用されている。
このようなFBGは、光ファイバーの光が伝搬する領域(コア)に所定の周期で屈折率変化を形成したものであり、屈折率変化の周期をグレーティング周期という。この周期的な屈折率変化は、2光束干渉法または位相マスク法等を用いて形成される(例えば、特許文献1、2)。このような周期的な屈折率変化によって、光ファイバーのコアを伝搬される光のなかで、ブラッグ中心波長領域の光が反射され、結果的にブラッグ中心波長領域の光が遮断されることになる。
しかし、上記の2光束干渉法は、横方向のビームの品質、すなわち空間コヒーレンスに問題があった。一方、位相マスク法は、石英基板の片面に凹溝と凸条からなる格子を所定のピッチで設けた位相マスクを介してエキシマレーザを照射して、光ファイバーのコアに屈折率変化を形成するものであり、上記の2光束干渉法における問題に対応できる方法として注目されている。このような位相マスク法に使用する位相マスクは、例えば、石英基板に電子線感応型のレジストを設け、形成しようとする凹溝の軸方向に沿う方向に電子ビームの走査線を合せ、電子ビームスポットをレジスト上にラスタースキャン方式で描画することにより露光し、その後、現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンを介して石英基板をエッチングして凹溝を形成することにより作製される。
【0003】
また、幅約10nm程度の広帯域にわたって光を遮断することを目的として、光ファイバー内に形成する回折格子を、格子のピッチが光ファイバーのコアの中心軸方向(格子の繰り返し方向)の位置に応じて線形あるいは非線形に増加あるいは減少しているチャープ型FBGとすることが行われている。このようなチャープ型FBGも、上記のような電子ビーム描画で作製されたチャープ位相マスクを用いて形成することができ(特許文献2)、例えば、反射帯域を広げた高反射ミラー、遅延時間を調整する手段等として用いられる。
さらに、高密度波長多重伝送技術を導入した光通信システムでは、通信に使う波長の信号光を光通信ネットワークから取り出すフィルタが必要となり、このフィルタとして、光ファイバーのコアの中心軸に対して斜めに回折格子が形成されたスラント型FBGが使用されている(例えば、特許文献3)。通常のFBG(光の進行方向に対して垂直に回折格子が形成されている)は、導波モードからそれと逆方向に伝搬する導波モード(反射モード)への結合に比べて、後進クラッドモードへの結合が小さい。しかし、このスラント型FBGは、反射モードへの結合を抑制し、グレーティング周期で決まる特定波長の光を後進クラッドモードへ結合させることができ、後進クラッドモードに結合した光は、光ファイバー外に放出されるので、特定波長の信号光を取り出すフィルタとして機能する。また、スラント角度を最適化することで、反射モードへの結合は充分に小さくすることができ、通常のFBGで生じる透過損失リップルを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2521708号
【特許文献2】特開平7−140311号公報
【特許文献3】特開2006−133612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバー内での回折格子の形成に用いられる従来の位相マスクの製造では、上述のように、電子ビームスポットをラスタースキャン方式で走査してパターンを描画する工程を有している。しかし、電子ビームスポットのラスタースキャン方式での描画は、例えば、ライン/スペースのパターンのエッチ精度が悪く、このため、位相マスクの格子状パターンを構成する凹溝と凸条の寸法精度が悪いという問題があった。また、エッチ精度を高めるために電子ビームスポットの描画位置間隔(スキャンピッチ)の設定を小さくすると、描画に要する時間が大幅に増加してしまうという問題があった。
また、利得特性が良好なスラント型FBGを位相マスク法で作製する場合、使用する位相マスクも、その凹溝、凸条からなる格子状パターンが光ファイバーのコアの中心軸方向に対して所望の角度で傾斜するように透明基板に形成されたスラント型とする必要がある。しかし、電子ビームスポットのラスタースキャン方式による電子線描画によりスラント型位相マスクを作製すると、位相マスクの格子状パターンを構成する凹溝と凸条の寸法精度が更に悪くなるという問題があり、実用に供し得るスラント型位相マスクは未だ得られていない。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が高い光ファイバー加工用位相マスクと、このような位相マスクを簡便に製造するための製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、透明基板の一主面に格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンが設けられ、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクの製造方法において、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する描画工程と、前記レジスト層を現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成するエッチング工程と、を有するような構成とした。
【0007】
本発明の他の態様として、前記描画工程では、前記レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に、矩形のパターンエリアを該パターンエリアの対向する1組の辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように設定し、少なくとも該パターンエリア内の前記レジスト層を描画し、前記エッチング工程後に、前記パターンエリアを包含するとともに、対向する1組の辺が前記パターンエリアの前記1組の辺と平行となるように矩形領域を前記透明基板から切り出す加工工程を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、透明基板として、前記一主面が矩形である透明基板を使用し、前記レジスト層に矩形のパターンエリアを、該パターンエリアを構成する辺が前記透明基板を構成する辺と平行となるように設定し、前記描画工程では、前記パターンエリアを構成する辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように電子ビームの描画可能領域内に前記パターンエリアを位置させて、少なくともパターンエリア内の前記レジスト層を描画するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記描画工程では、前記エッチング工程で形成される凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように描画するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記透明基板と前記レジスト層との間にハードマスクを介在させ、前記エッチング工程では、形成したレジストパターンを介して前記ハードマスクをエッチングしてハードマスクパターンを形成し、該ハードマスクパターンを介して透明基板にエッチングを施すような構成とした。
【0008】
本発明は、透明基板と、該透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備え、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクにおいて、前記透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような構成とした。
【0009】
本発明の他の態様として、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して前記の格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記一主面が矩形であり、前記凹溝の軸方向に直交する方向が前記一主面の対向する1組の辺に対して所定の角度をなしているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少しているような構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法は、矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して電子線感応型のレジスト層をパターン描画するので、形成されるレジストパターンのエッチ精度が高く、これにより、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高い位相マスクの製造が可能となる。また、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法は、凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するような位相マスクの製造においても同様の効果が奏される。さらに、透明基板の長手方向に対して凹溝と凸条が傾斜するような位相マスクの製造においても同様の効果が奏されるとともに、従来の電子ビームスポットをラスタースキャン方式で走査してパターンを描画する方法に比べて大幅な製造時間の短縮が可能である。
【0011】
また、本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示される光ファイバー加工用位相マスクのI−I線における部分拡大縦断面図である。
【図3】図1に示される光ファイバー加工用位相マスクの部分拡大平面図である。
【図4】本発明の光ファイバー加工用位相マスクを用いた光ファイバー加工の一例を説明するための図である。
【図5】光ファイバーの干渉縞パターンの一例を示す図である。
【図6】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す図2相当の部分拡大縦断面図である。
【図7】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7に示される光ファイバー加工用位相マスクの部分拡大平面図である。
【図9】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図10】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法に使用する可変成形ビーム型の電子線描画装置の一例を説明するための図である。
【図11】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法における電子線ビーム描画を説明するための図である。
【図12】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図13】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図14】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図15】本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図16】実施例1で作製した光ファイバー加工用位相マスクの凹溝と凸条の境界部位を示す図である。
【図17】比較例1で作製した光ファイバー加工用位相マスクの凹溝と凸条の境界部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[光ファイバー加工用位相マスク]
本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、透明基板と、透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備えるものであり、透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡(CD−SEM)を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)の3σ(σ:標準偏差)が15nm以下、好ましくは10nm以下となるものである。
このような本発明の光ファイバー加工用位相マスクは、透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなるものである。
【0014】
図1は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1の鎖線で囲まれた部位AのI−I線における部分拡大縦断面図であり、図3は図1の鎖線で囲まれた部位Aの部分拡大平面図である。図1〜図3において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク11は、透明基板12と、この透明基板12の一主面12aに設定されたパターンエリア13と、パターンエリア13内に位置する格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンと、を備えている。尚、図1に示されるパターンエリア13と部位Aの寸法比と、図2および図3に示される格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。また、図3では、凸条16に斜め鎖線を付して示している。
光ファイバー加工用位相マスク11を構成する透明基板12は、例えば、石英基板、ガラス基板等であり、厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板12の外形およびパターンエリア13の外形は矩形であることが好ましく、図示例では透明基板12の外形が長方形であり、一主面12aに設定されたパターンエリア13も長方形であり、透明基板12の長辺12A,12Aとパターンエリア13の長辺13A,13Aは平行となっている。そして、透明基板12の長辺12A,12Aと平行な方向(図示例の矢印a方向)に対して、凹溝15、凸条16の軸方向(図示例の矢印b方向)が90°となるように設定されている。また、パターンエリア13の大きさは適宜設定することができ、例えば、長辺13A,13Aの長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板12の大きさは、一主面12a内にパターンエリア13が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面12aとパターンエリア13とが一致するものであってもよい。
【0015】
この位相マスク11における格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンでは、凹溝15が一様なピッチPで形成されている。このピッチPが小さくなるほど、後述する光ファイバー加工におけるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなるので、光ファイバーに形成する干渉縞パターンのピッチに応じて凹溝15のピッチPを設定することができる。また、凹溝15の深さ(凸条16の高さ)は、光ファイバー加工(干渉縞パターン形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。
【0016】
ここで、本発明では、透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡(CD−SEM)を用いて、凹溝15もしくは凸条16の幅を凹溝15と凸条16の境界(測長用電子顕微鏡の観察画像では白く見える細線)に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)で、位相マスク11における凹溝15と凸条16の境界部位のエッジ精度を判定する。すなわち、上記の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキは、凸条16の側壁面にウネリや凹凸が存在したり、その程度に左右され、凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキが大きいほど、境界部位の幅のバラツキは大きくなり、エッジ精度が低下する。したがって、上記の凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキが小さいほどエッジ精度が高いものとする。本発明の位相マスク11における凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。このような本発明の位相マスク11は、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。しかし、上記の幅バラツキの3σが15nmを超えると、光ファイバー内に作製される回折格子の精度が低下し好ましくない。
【0017】
図4は、本発明の光ファイバー加工用位相マスク11を用いた光ファイバー加工の一例を説明するための図である。図4では、光ファイバー51は、例えば、ゲルマニウム添加石英ガラスからなるコア52と、このコア52を被覆するように設けられた石英ガラスからなるクラッド53を備えたものである。この光ファイバー51に光ファイバー加工用位相マスク11を平行に配置する。すなわち、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンが位置する一主面12aが光ファイバー51と平行となるように対向し、かつ、透明基板12の長辺12A,12Aに沿った方向(格子状の凹溝15と凸条16の繰り返し方向)が光ファイバー51の軸方向と平行となるように位相マスク11を配置する。この状態で、位相マスク11を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバー51に照射する。位相マスク11に照射されたエキシマレーザ光61は、格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンによって位相がπ(rad)だけ変調され、0次の光62と、プラス1次の回折光63A、マイナス1次の回折光63Bに分割される。そして、プラス1次の回折光63Aとマイナス1次の回折光63Bによる所定ピッチの干渉縞が光ファイバー51のコア52に照射され、このピッチでの屈折率変化がコア52に形成される。図5は、図4に示されるコア52の鎖線で囲まれた部位Bの干渉縞パターンを例示する図であり、エキシマレーザ光の照射方向に対して横方向の干渉縞パターン52Aが形成される。尚、図4に示されるコア52と部位Bの寸法比と、図5に示される干渉縞パターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。
【0018】
図6は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す図2相当の部分拡大縦断面図である。図6において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク21は、透明基板22と、この透明基板の一主面22aに設定されたパターンエリア(図示せず)内に位置する格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンと、を備えている。この位相マスク21は、光ファイバーにチャープ型FBG(Fiber Bragg Grating)を形成するための位相マスクであり、凹溝25のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少している。
光ファイバー加工用位相マスク21を構成する透明基板22は、上述の位相マスク11を構成する透明基板12と同様の材質であってよく、透明基板22の厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板22の外形およびパターンエリア(図示せず)の外形は矩形であることが好ましく、透明基板22の外形辺とパターンエリア(図示せず)の外形辺が平行となっていることが好ましい。そして、透明基板22の対向する1組の辺と平行な方向に対して、凹溝25、凸条26の軸方向が90°となるように設定されている。また、パターンエリア(図示せず)の大きさは適宜設定することができ、例えば、矩形の1辺の長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板22の大きさは、一主面22a内にパターンエリア(図示せず)が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面22aとパターンエリア(図示せず)とが一致するものであってもよい。
【0019】
格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンでは、凹溝25のピッチが小さくなるほど、位相マスク21から射出されるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなる。また、凹溝25の深さ(凸条26の高さ)は、光ファイバー加工(チャープ型FBG形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。したがって、光ファイバーに形成するチャープ型FBGに応じて、凹溝25の深さ(凸条26の高さ)とともに、凹溝25のピッチを線形あるいは非線形に増加あるいは減少させて設定することができる。例えば、凹溝25のピッチを、位相マスク21の中心から周辺に向けて減少するように設定し、このような設定の凹溝25の配列を、位相マスク21の中心に対して対称となるように配置することができる。
【0020】
このような位相マスク21における凹溝25もしくは凸条26の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。そして、このような本発明の位相マスク21は、格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上記の光ファイバー加工用位相マスク21を用いた光ファイバー加工では、一主面22aが光ファイバーに対向し、格子状の凹溝25と凸条26の繰り返し方向が光ファイバーの軸方向と平行となるように位相マスク21を配置する。そして、上述の図4で説明したように、位相マスク21を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバーに照射する。これにより、光ファイバーにチャープ型FBGを形成することができる。
【0021】
図7は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの他の実施形態を示す平面図であり、図8は図7の鎖線で囲まれた部位Aの部分拡大平面図である。図7および図8において、本発明の光ファイバー加工用位相マスク31は、外形が長方形である透明基板32と、この透明基板32の一主面32aに設定されたパターンエリア33と、パターンエリア33内に位置する格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンと、を備えている。この位相マスク31は、光ファイバーにスラント型FBGを形成するための位相マスクであり、透明基板32(一主面32a)の長辺32A,32Aに平行な方向(図8に線分L1で示される方向)に対して、凹溝35の軸方向に直交する方向(図8に線分L2で示される方向)が、角度θをなしている。尚、図7に示されるパターンエリア33と部位Aの寸法比と、図8に示される格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターン数との関係は便宜的に記載したものであり、これに限定されるものではない。また、図8では、凸条36に斜め鎖線を付して示している。
【0022】
光ファイバー加工用位相マスク31を構成する透明基板32は、上述の位相マスク11を構成する透明基板12と同様の材質であってよく、透明基板32の厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、図示例では、透明基板32の外形およびパターンエリア33の外形は長方形であり、透明基板32の外形辺とパターンエリア33の外形辺が平行となっている。また、パターンエリア33の大きさは適宜設定することができ、例えば、長辺33A,33Aの長さを1〜160mmの範囲内で設定することができる。また、透明基板32の大きさは、一主面32a内にパターンエリア33が収まるように適宜設定することができ、したがって、一主面32aとパターンエリア33とが一致するものであってもよい。
格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンでは、凹溝35のピッチが小さくなるほど、位相マスク31から射出されるプラス1次回折光とマイナス1次回折光のなす角度がより大きくなり、干渉縞パターンのピッチが小さくなる。また、凹溝35の深さ(凸条36の高さ)は、光ファイバー加工(スラント型FBG形成)に使用するエキシマレーザ光の位相をπ(rad)変調可能なように設定することができ、例えば、150〜250nmの範囲で適宜設定することができる。したがって、光ファイバーに形成するスラント型FBGに応じて、上記の角度θ、凹溝35のピッチ、凹溝35の深さ(凸条36の高さ)を設定することができる。
【0023】
例えば、波長λのブラッグ反射を可能とするためには、コアに形成されたスラント型FGBの繰り返し方向とコアの中心軸とがなすスラント角度αと、光ファイバー加工用位相マスク31における上記の角度θと、光ファイバー加工用位相マスク31の凹溝35のピッチP(図8参照)と、コアの波長λ光に対する屈折率nと、の間に下記の関係式が成立するように設定する。すなわち、スラント角度α、角度θおよび凹溝35のピッチPのいずれか1つを予め設定し、下記の関係式が成立するように他の2つを設定することができる。
λ=2n・D・cosα、
D=(P/2cosθ)cosα
【0024】
このような光ファイバー加工用位相マスク31における凹溝35もしくは凸条36の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)は15nm以下であり、好ましくは10nm以下の範囲である。そして、このような本発明の位相マスク31は、格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンのエッジ精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上記の光ファイバー加工用位相マスク31を用いた光ファイバー加工では、一主面32aが光ファイバーに対向し、透明基板32(一主面32a)の長辺32A,32Aに平行な方向(図8に線分L1で示される方向)が光ファイバーの軸方向と平行となるように位相マスク31を配置する。そして、上述の図4で説明したように、位相マスク31を介してKrFエキシマレーザ光(波長248nm)61を光ファイバーに照射する。これにより、光ファイバーにスラント型FBGを形成することができる。
このような本発明の光ファイバー加工用位相マスク11,21,31は、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンの精度が極めて高く、光ファイバー内に高精度で回折格子を作製することが可能である。
上述の光ファイバー加工用位相マスクの実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[光ファイバー加工用位相マスクの製造方法]
図9は、上述の位相マスク11の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
本発明では、描画工程において、透明基板12の一主面12a上の電子線感応型のレジスト層17に対して、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビーム(以下、EBとも記す)をベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図9(A))。この描画工程では、後述する1つの凸条形成部位の描画を1回の矩形電子ビームの走査で行うことが好ましい。すなわち、矩形電子ビームを凸条形成部位の短辺または長辺の大きさに合わせ、凸条形成部位に長辺方向または短辺方向に沿って走査してパターンを描画することが好ましい。
透明基板12は、例えば、石英基板、ガラス基板等であり、厚みは0.5〜10mm程度の範囲で設定することができる。また、電子線感応型のレジスト層17は、公知のネガ型の電子線感応レジスト、あるいは、ポジ型の電子線感応レジストからなるものであり、このような電子線感応レジストをスピンコート法等の公知の塗布手段で塗布、乾燥したもの、あるいは、このような電子線感応レジストのフィルムをラミネートしたものであってよい。図示例では、レジスト層17はネガ型の電子線感応レジストを使用しており、レジスト層17の凸条形成部位16′に対して矩形の電子ビームで描画している。この電子線感応型のレジスト層17の厚みは、後述するレジストパターン形成工程で形成されるレジストパターンが、エッチング工程において、透明基板12に所望の深さの凹溝15を形成するためのマスクとして機能し得るように設定することができ、例えば、0.2〜2μm程度の範囲で設定することができる。また、透明基板12と電子線感応型のレジスト層17との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよい。このようなハードマスクは、電子ビームを用いた描画におけるチャージアップを抑制する作用をなし、また、後述するエッチング工程において透明基板12に対するハードマスクパターンとして機能するものであり、厚みは50〜1200nmの範囲が好ましい。
【0026】
図10は、本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法に使用する可変成形ビーム型の電子線描画装置の一例を説明するための図である。図10において、電子線描画装置100は図示しない真空チャンバー内に配置されており、電子銃101、集光レンズ102、第1成形アパーチャ103、投影レンズ104、成形偏向器105、第2成形アパーチャ106、副偏向器107、対物レンズ108、主偏向器109を、図面の上方から下方に順次有しており、さらに、電子線感応型のレジスト層17を備えた透明基板12を載置するステージ111と、このステージ111をXY水平駆動するための駆動機構(図示せず)を備えている。このような電子線描画装置100では、電子銃101から放出された電子は集光レンズ102により集光され、所望の矩形の開口を有する第1成形アパーチャ103を通り、矩形に成形される。次いで、成形されたビームは投影レンズ104、成形偏向器105にて、第2成形アパーチャ106の所定位置に投影され、第1成形アパーチャ103による成形形状と、第2成形アパーチャ106の開口形状により、第2成形アパーチャ106を通過した時点では所望の矩形に成形される。そして、副偏向器107、主偏向器109により偏向された位置で、対物レンズ108により焦点が制御され、電子線感応型のレジスト層17に照射される。
【0027】
図11は、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画を説明するための図面である。図11(A)に示されるように、電子線感応型のレジスト層17の凸条形成部位16′の幅W1(短辺の大きさ)が矩形の電子ビーム(鎖線で示している)の成形可能な範囲内であれば、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位16′の長手方向(図示のY方向(凸条形成部位16′の長辺に沿った方向))に矩形の電子ビームを走査させて描画することができる。また、図11(B)に示されるように、電子線感応型のレジスト層17の凸条形成部位16′の幅W2が矩形の電子ビーム(鎖線で示している)の成形可能な範囲よりも大きい場合、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位16′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画するので、凸条形成部位16′の幅方向の両端における描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。
【0028】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層17を現像してレジストパターン17′を形成する(図9(B))。レジスト層17の現像は、使用する電子線感応レジストに応じて公知の手法により行うことができ、また、現像前に必要に応じてベーク処理等を施してもよい。描画工程において矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画された凸条形成部位16′の幅方向の両端における描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状であるため、形成されたレジストパターン17′は、エッジ精度が高いものとなる。
次いで、エッチング工程において、レジストパターン17′を介して透明基板12にエッチングを施して凹溝15を形成し(図9(C))、その後、レジストパターン17′を除去することにより格子状の凹溝15と凸条16の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク11を得ることができる(図9(D))。レジストパターン17′を介した透明基板12のエッチングは、例えば、透明基板12が石英基板の場合、エッチングガスとしてCF4ガス等を使用することができる。
【0029】
また、上述のように、透明基板12と電子線感応型のレジスト層17との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させる場合、まず、レジストパターン17′を介してハードマスクにCH2Cl2ガス等を用いてエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成し、このハードマスクパターンを介して透明基板12にエッチングを施して凹溝15を形成することができる。このように形成したハードマスクパターンのエッチ精度は、レジストパターン17′のエッジ精度を反映して高いものとなる。
このように製造された光ファイバー加工用位相マスク11では、凹溝15と凸条16のエッジ精度は、レジストパターン17′のエッジ精度、あるいは、ハードマスクパターンのエッチ精度を反映して高いものとなり、凹溝15もしくは凸条16の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度が可能となる。
【0030】
図12は、上述の位相マスク21の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、描画工程において、透明基板22の一主面22a上の電子線感応型のレジスト層27に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図12(A))。電子線感応型のレジスト層27は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層27はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層27の凸条形成部位26′に対して矩形の電子ビームで描画している。この凸条形成部位26′は、後述するエッチング工程において形成される凹溝25のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように設定されている。したがって、凸条形成部位26′の幅は複数種存在することとなり、凸条形成部位26′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲であれば、上述の図11(A)に示したのと同様に、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位26′の長手方向に矩形の電子ビームを走査させて描画することができる。また、凸条形成部位26′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲よりも大きい場合、図11(B)に示したのと同様に、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位26′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式でパターンを描画するので、凸条形成部位26′の幅方向の両端の描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。尚、透明基板22と電子線感応型のレジスト層27との間に、クロム薄膜等のハードマスク用の金属層を介在させてもよいことは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
【0031】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層27を現像してレジストパターン27′を形成し(図12(B))、次いで、エッチング工程において、レジストパターン27′を介して透明基板22にエッチングを施して凹溝25を形成し(図12(C))、その後、レジストパターン27′を除去することにより格子状の凹溝25と凸条26の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク21を得ることができる(図12(D))。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。また、レジストパターン27′を介してハードマスクにエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成すること、このハードマスクパターンを介して透明基板22にエッチングを施して凹溝25を形成できることは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
このように製造された光ファイバー加工用位相マスク21では、凹溝25と凸条26のエッジ精度が、レジストパターン27′のエッジ精度、あるいは、ハードマスクのエッチ精度を反映して高いものとなり、凹溝25もしくは凸条26の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度が可能となる。
【0032】
図13および図14は、上述の位相マスク31の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、描画工程において、まず、透明基板32の一主面32a上の電子線感応型のレジスト層37に矩形のパターンエリア33を設定する。この矩形のパターンエリア33は、レジスト層37の電子ビームの描画可能領域38内に位置し、かつ、パターンエリア33の対向する1組の辺33A,33Aが電子ビームのスキャン方向(図示のY方向)に直交する方向(図示のX方向)に対して所定の角度θをなすように設定する(図13(A))。図示例では、描画可能領域38を二点鎖線で囲み示し、描画可能領域38内における電子ビームのスキャン方向を鎖線にて便宜的に示している。次いで、パターンエリア33内のレジスト層37に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図13(B)、図14(A))。図示例では、パターンエリア33よりも広く、描画可能領域38よりも狭い領域が描画されているが、本発明では、少なくともパターンエリア33内のレジスト層37に対して描画すればよく、したがって、パターンエリア33のみを描画してもよく、また、描画可能領域38の全域を描画してもよい。
【0033】
電子線感応型のレジスト層37は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層37はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層37の凸条形成部位36′に対して矩形の電子ビームで描画しており、図13(B)では、電子ビームの描画部位を一点鎖線で便宜的に示している。このような矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画では、凸条形成部位36′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲にある場合には、上述の図11(A)に示したのと同様に、ステージ111をY方向に駆動させ、凸条形成部位36′の長手方向に矩形の電子ビームを走査させてパターンを描画することができる。また、凸条形成部位36′の幅が矩形の電子ビームの成形可能な範囲よりも大きい場合、図11(B)に示したのと同様に、Y方向へのステージ111の駆動と、X方向へのステージ111の移動を組み合わせて、凸条形成部位36′の全域を描画することができる。このように、本発明では、矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式で描画するので、凸条形成部位36′の幅方向の両端の描画領域と、その外側の非描画領域の境界が直線形状となる。尚、透明基板32と電子線感応型のレジスト層37との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよいことは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
【0034】
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層37を現像してレジストパターン37′を形成し(図14(B))、次いで、エッチング工程において、レジストパターン37′を介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成し(図14(C))、その後、レジストパターン37′を除去することにより格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンを形成する(図14(D))。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。また、レジストパターン37′を介してハードマスクにエッチング処理を施してハードマスクパターンを形成すること、このハードマスクパターンを介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成できることは、上述の位相マスク11の製造を例とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法と同様である。
本実施形態では、上述のエッチング工程後に、加工工程において、パターンエリア33を包含するとともに、対向する1組の辺32A,32Aがパターンエリア33の上記の1組の辺33A,33Aと平行となるように矩形領域39を透明基板32から切り出す(図13(C))。これにより、透明基板32の長辺32A,32Aに平行な方向に対して、凹溝35の軸方向に直交する方向が角度θをなす本発明の光ファイバー加工用位相マスク31を得ることができる。
【0035】
また、図15は、上述の位相マスク31の製造を例とする本発明の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、透明基板32として、一主面32aが矩形である透明基板32を使用し、一主面32a上の電子線感応型のレジスト層37に矩形のパターンエリア33を、パターンエリア33を構成する辺33A,33Aが透明基板32を構成する辺32A,32Aと平行となるように設定する(図15(A))。
そして、描画工程において、パターンエリア33を構成する辺33A,33Aが電子ビームのスキャン方向(図示のY方向)に直交する方向(図示のX方向)に対して所定の角度θをなすように、電子ビームの描画可能領域38内にパターンエリア33を位置させる(図15(B))。図示例では、描画可能領域38を二点鎖線で囲み示し、描画可能領域38内における電子ビームのスキャン方向を鎖線にて便宜的に示している。次いで、パターンエリア33内のレジスト層37に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(図示せず)を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する(図15(C))。図示例では、パターンエリア33よりも広く、描画可能領域38よりも狭い領域が描画されているが、本発明では、少なくともパターンエリア33内のレジスト層37に対して描画すればよく、したがって、パターンエリア33のみを描画してもよく、また、描画可能領域38の全域を描画してもよい。
【0036】
電子線感応型のレジスト層37は、上述の電子線感応型のレジスト層17と同様とすることができる。図示例では、レジスト層37はネガ型の電子線感応レジストを使用し、レジスト層37の凸条形成部位36′に対して矩形の電子ビームで描画しており、図15(C)では、電子ビームの描画部位を一点鎖線で便宜的に示している。このような矩形の電子ビームを用いたベクタースキャン方式での描画は、図13および図14で説明した実施形態と同様とすることができる。また、透明基板32と電子線感応型のレジスト層37との間に、クロム薄膜等のハードマスクを介在させてもよいことも同様である。
次に、レジストパターン形成工程において、電子線感応型のレジスト層37を現像してレジストパターンを形成し、次いで、エッチング工程において、レジストパターンを介して透明基板32にエッチングを施して凹溝35を形成し、その後、レジストパターンを除去することにより、格子状の凹溝35と凸条36の繰り返しパターンを備えた本発明の光ファイバー加工用位相マスク31を得ることができる。このようなレジストパターン形成工程、エッチング工程は、上述の実施形態と同様とすることができる。
【0037】
このような光ファイバー加工用位相マスク31を、凹溝35の軸方向と可変成形電子ビームの走査方向とが角度θをなすような設定でベクタースキャン方式にて描画することにより製造する場合、例えば、角度θが10°であると、0°の場合に比べて電子ビームの成形図形数が10000倍以上となり、結果的に描画時間が10倍以上必要となり、あるいは、描画自体が困難となることがある。また、非描画領域との境界に位置する描画領域が多数の図形で構成されるため、境界の形状が複雑なものとなり、結果的に凹溝35と凸条36のエッジ精度が悪化することになる。図13〜図15に例示した本発明は、このようなベクタースキャン方式の描画の欠点を解消したものであり、光ファイバーにスラント型FBGを形成するための光ファイバー加工用位相マスク31を、その凹溝35もしくは凸条36の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であるような極めて高いエッジ精度で製造可能としたものである。
上述の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
透明基板として、厚み6.35mmの石英基板(152mm×152mmの長方形)を準備し、この石英基板の一方の主面に電子線感応型のネガ型レジスト(住友化学(株)製 NEB22)をスピンコート法で塗布し、乾燥して厚み0.4μmのレジスト層を形成した。このレジスト層上に長方形(80mm×30mm)のパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置(日本電子(株)製 JBX9000)を用いて、矩形(最大矩形サイズ2000nm×2000nm)の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。すなわち、ピッチが1100nmの回折格子を形成するための光ファイバー加工用位相マスクを作製することを目的として、550nm(X方向)×2000nm(Y方向)の矩形の電子ビームを、上記のパターンエリアの短辺に沿った方向(Y方向)を走査方向とし、1回の矩形電子ビームの走査で1つの凸条部形成部位の描画を行い、電子ビームの走査線をパターンエリアの長辺に沿った方向(X方向)で1100nm移動させるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
【0039】
(レジストパターン形成工程)
上記のように描画を行ったレジスト層に対してベーク処理(110℃、30分間)を施し、その後、アルカリ現像液でレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から、測長用電子顕微鏡(ライカ社製 LWM9000)を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界部位(図16に示した観察画像で白く見える細線部位)に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキ(LWR:Line Width Roughness)の3σ(σ:標準偏差)は12nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に厚み500nmのクロム薄膜をスパッタリング法で成膜してハードマスクを形成し、このハードマスク上に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
実施例1と同様にして、矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0041】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CH2Cl2ガスを用いてハードマスクをドライエッチングしてハードマスクパターンを形成した。
次に、このハードマスクパターンを介して、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去し、硝酸第二セリウムアンモニウムを用いてハードマスクパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは11nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例1と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、電子ビーム描画装置(ETEC社製 MEBES4500)を用いて、電子ビームスポット(直径134nm)をレジスト層上にラスタースキャン方式で走査してパターンを描画した。すなわち、上記のパターンエリアの短辺に沿った方向をスキャン方向(スキャンピッチ134nm)とし、ラスタースキャンの走査線数を4本として1つの凸条部形成部位の描画を行い、形成される回折格子のピッチが1100nmとなるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
【0043】
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝と凸条の境界部位の幅を実施例1と同様に観察した画像を図17に示した。そして、凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、20nmであり、実施例1に比べてエッジ精度が低いものであることが確認された。
【0044】
[実施例3]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。次に、このレジスト層上に矩形のパターンエリアを設定した。この矩形のパターンエリアは、レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に位置し、かつ、パターンエリアの対向する1組の長辺が電子ビームのスキャン方向(Y方向)に直交する方向(X方向)に対して10°をなすものとした。(図13(A)参照)
(描画工程)
次いで、実施例1と同様の可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて、矩形(最大矩形サイズ2000nm×2000nm)の電子ビームをベクタースキャン方式で走査して、レジスト層にパターンを描画した。すなわち、ピッチが1100nmの回折格子を形成するための光ファイバー加工用位相マスクを作製することを目的として、550nm(X方向)×2000nm(Y方向)の矩形の電子ビームを、上記のスキャン方向(Y方向)に1回スキャンすることにより1つの凸条部形成部位の描画を行い、電子ビームの走査線を上記のスキャン方向(Y方向)に直交する方向(X方向)で1100nm移動させるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0045】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
次に、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを除去し、その後、上記のパターンエリアを包含するとともに、対向する長辺が上記のパターンエリアの長辺と平行となるように長方形領域(80mm×80mm)を石英基板から切り出した。これにより、石英基板の長辺に平行な方向に対して、凹溝の軸方向に直交する方向が10°傾斜した状態で格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、10nmであり、凹溝と凸条の境界部位のエッジ精度が極めて高いものであることが確認された。
【0046】
[比較例2]
実施例1と同様の石英基板を準備し、この石英基板の一方の主面に実施例1と同様にしてレジスト層を形成した。また、このレジスト層上に実施例3と同様にパターンエリアを設定した。
(描画工程)
次いで、比較例1と同様の電子ビーム描画装置を用いて、電子ビームスポット(直径135nm)をレジスト層上にラスタースキャン方式で走査してパターンを描画した。すなわち、実施例3と同様に、Y方向をスキャン方向とし、ラスタースキャンの走査線数を4本として1つの凸条部形成部位の描画を行い、形成される回折格子のピッチが1100nmとなるように制御して、レジスト層に設定した上記のパターンエリアに対して描画を行った。尚、露光量は25μC/cm2とした。
(レジストパターン形成工程)
実施例1と同様にレジスト層を現像して、レジストパターンを形成した。
【0047】
(エッチング工程)
上記のように形成したレジストパターンをマスクとして、CF4ガスを用いて石英基板を深さ180nmまでエッチングした。
その後、硫酸過水溶液を用いてレジストパターンを溶解除去して、格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
次に、実施例3と同様にして、長方形領域(80mm×30mm)を石英基板から切り出した。これにより、石英基板の長辺に平行な方向に対して、凹溝の軸方向に直交する方向が10°傾斜した状態で格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを有する光ファイバー加工用位相マスクを作製した。
この位相マスクについて、石英基板の一主面の垂線方向から凹溝もしくは凸条の幅を実施例1と同様に観察、測定した結果、幅バラツキの3σは、30nmであり、実施例3に比べてエッジ精度が低いものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
光通信システム等に用いられる光ファイバー内への回折格子の作製に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
11,21,31…光ファイバー加工用位相マスク
12,22,32…透明基板
13,33…パターンエリア
15,25,35…凹溝
16,26,36…凸条
38…描画可能領域
100…可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一主面に格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンが設けられ、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクの製造方法において、
透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する描画工程と、
前記レジスト層を現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成するエッチング工程と、を有することを特徴とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項2】
前記描画工程では、前記レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に、矩形のパターンエリアを該パターンエリアの対向する1組の辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように設定し、少なくとも該パターンエリア内の前記レジスト層を描画し、
前記エッチング工程後に、前記パターンエリアを包含するとともに、対向する1組の辺が前記パターンエリアの前記1組の辺と平行となるように矩形領域を前記透明基板から切り出す加工工程を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項3】
透明基板として、前記一主面が矩形である透明基板を使用し、前記レジスト層に矩形のパターンエリアを、該パターンエリアを構成する辺が前記透明基板を構成する辺と平行となるように設定し、前記描画工程では、前記パターンエリアを構成する辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように電子ビームの描画可能領域内に前記パターンエリアを位置させて、少なくともパターンエリア内の前記レジスト層を描画することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項4】
前記描画工程では、前記エッチング工程で形成される凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように描画することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項5】
前記透明基板と前記レジスト層との間にハードマスクを介在させ、前記エッチング工程では、形成したレジストパターンを介して前記ハードマスクをエッチングしてハードマスクパターンを形成し、該ハードマスクパターンを介して透明基板にエッチングを施すことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項6】
透明基板と、該透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備え、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクにおいて、
前記透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であることを特徴とする光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項7】
透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して前記の格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項8】
前記一主面が矩形であり、前記凹溝の軸方向に直交する方向が前記一主面の対向する1組の辺に対して所定の角度をなしていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項9】
前記凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少していることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項1】
透明基板の一主面に格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンが設けられ、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクの製造方法において、
透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画する描画工程と、
前記レジスト層を現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成するエッチング工程と、を有することを特徴とする光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項2】
前記描画工程では、前記レジスト層の電子ビームの描画可能領域内に、矩形のパターンエリアを該パターンエリアの対向する1組の辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように設定し、少なくとも該パターンエリア内の前記レジスト層を描画し、
前記エッチング工程後に、前記パターンエリアを包含するとともに、対向する1組の辺が前記パターンエリアの前記1組の辺と平行となるように矩形領域を前記透明基板から切り出す加工工程を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項3】
透明基板として、前記一主面が矩形である透明基板を使用し、前記レジスト層に矩形のパターンエリアを、該パターンエリアを構成する辺が前記透明基板を構成する辺と平行となるように設定し、前記描画工程では、前記パターンエリアを構成する辺が電子ビームのスキャン方向と直交する方向に対して所定の角度をなすように電子ビームの描画可能領域内に前記パターンエリアを位置させて、少なくともパターンエリア内の前記レジスト層を描画することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項4】
前記描画工程では、前記エッチング工程で形成される凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少するように描画することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項5】
前記透明基板と前記レジスト層との間にハードマスクを介在させ、前記エッチング工程では、形成したレジストパターンを介して前記ハードマスクをエッチングしてハードマスクパターンを形成し、該ハードマスクパターンを介して透明基板にエッチングを施すことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光ファイバー加工用位相マスクの製造方法。
【請求項6】
透明基板と、該透明基板の一主面に位置する格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンと、を備え、該繰り返しパターンによる回折光を光ファイバーに照射して異なる次数の回折光相互の干渉縞により光ファイバー内に回折格子を作製する光ファイバー加工用位相マスクにおいて、
前記透明基板の一主面の垂線方向から測長用電子顕微鏡を用いて、凹溝もしくは凸条の幅を凹溝と凸条の境界に沿って長さ2μmに亘って4nm間隔で500点観察した際の幅バラツキの3σ(σ:標準偏差)が15nm以下であることを特徴とする光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項7】
透明基板上の電子線感応型のレジスト層に対して、可変成形ビーム型の電子ビーム描画装置を用いて矩形の電子ビームをベクタースキャン方式で走査してパターンを描画し、現像して形成したレジストパターンを介して前記透明基板にエッチングを施して前記の格子状の凹溝と凸条の繰り返しパターンを形成してなることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項8】
前記一主面が矩形であり、前記凹溝の軸方向に直交する方向が前記一主面の対向する1組の辺に対して所定の角度をなしていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【請求項9】
前記凹溝のピッチが線形あるいは非線形に増加あるいは減少していることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光ファイバー加工用位相マスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−97015(P2013−97015A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236774(P2011−236774)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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