説明

光ファイバ母材の製造方法

【課題】スート形成条件を最適化することにより、良質なスート体を短時間で効率的に形成し、製造コストを低減できる光ファイバ母材の製造方法を提供する。
【解決手段】マルチノズルバーナ10を用いて、OVD法によりガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させる工程を備えた光ファイバ母材の製造方法において、原料ガス噴出流路11の外側に環状配置された第1助燃性ガス噴出流路121からの助燃性ガスの流速をVis、第1助燃性ガス噴出流路121の近傍における可燃性ガスの流速をVif、第1助燃性ガス噴出流路121の外側に環状配置された第2助燃性ガス噴出流路122からの助燃性ガスの流速をVos、第2助燃性ガス噴出流路122の近傍における前記可燃性ガスの流速をVofとしたとき、|Vis−Vif|>|Vos−Vof|Vis≧Vofis≦40m/sを満たすように、助燃性ガス及び可燃性ガスの流速を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材の製造方法に関し、特に外付け気相成長法を利用した光ファイバ母材の製造方法に適用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバの製造方法としては、気相軸付け法(VAD:Vapor-phase Axial Deposition)、外付け気相成長法(OVD:Outside Vapor Deposition)、内付け化学気相成長法(MCVD:Modified Chemical Vapor Deposition)などの気相合成法、又はこれらを組み合わせた方法が知られている。
【0003】
図1に示すように、OVD法では、バーナ10により、SiCl等の原料ガス、可燃性ガスであるH及び助燃性ガスであるOが供給され、酸水素火炎101中で原料ガスが火炎加水分解反応することによりガラス微粒子102が生成される。ターゲットロッド2を軸中心に回転させながら、バーナ10とターゲットロッド2を長手方向に相対移動させることで、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子(スート)102が堆積され、スート体3が形成される。
そして、形成されたスート体3を高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化された光ファイバ母材1が製造される。また、この光ファイバ母材1を加熱して線引きすることにより、光ファイバが製造される。なお、ターゲットロッド2には、例えばVAD法により作製されたコア母材が用いられる。
【0004】
上述したOVD法に用いられるバーナとしては、可燃性ガス噴出流路の中心に原料ガス噴出流路を配置し、この原料ガス噴出流路を取り囲むように、可燃性ガス流出路内に助燃性ガス噴出流路を環状に配置したバーナ(いわゆるマルチノズルバーナ)が提案されている(例えば特許文献1〜4)。
また、特許文献5には、OVD法を利用して光ファイバ母材を製造する際に、ターゲットロッドの長手方向に複数のバーナを配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−187135号公報
【特許文献2】特開平5−323130号公報
【特許文献3】特開平6−247722号公報
【特許文献4】特開2002−29759号公報
【特許文献5】特開平3−228845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、光ファイバの需要が飛躍的に増加していることに伴い、より大型の光ファイバ母材をより短時間で製造し、低コスト化することが要求されている。さらには、環境への配慮から、廃棄する原料をできるだけ少なくすることが望まれている。しかしながら、上述した手法では、品質を損なうことなく、堆積効率(堆積されたガラス微粒子の量/供給したガラス原料から生成するガラス微粒子の量)と堆積速度の両方を向上させることには限界があり、近年の更なる低コスト化、および環境への配慮に関する要求に応えることが困難となっている。
【0007】
本発明は、スート形成条件(ガス供給条件)を最適化することにより、良質なスート体を短時間で効率的に形成し、製造コストを低減できる光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状に設けられた複数の小口径流路からなり、これらの小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路の周囲に設けられ、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路と、を備えたバーナを用いて、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより生成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させる工程を備えた光ファイバ母材の製造方法において、
前記助燃性ガス噴出流路は、前記原料ガス噴出流路の外側に環状配置された第1助燃性ガス噴出流路と、この第1助燃性ガス噴出流路の外側に環状配置された第2助燃性ガス噴出流路と、で構成され、
前記第1助燃性ガス噴出流路からの前記助燃性ガスの流速をVis(m/s)、
前記第1助燃性ガス噴出流路の近傍における前記可燃性ガスの流速をVif(m/s)、
前記第2助燃性ガス噴出流路からの前記助燃性ガスの流速をVos(m/s)、
前記第2助燃性ガス噴出流路の近傍における前記可燃性ガスの流速をVof(m/s)としたとき、
|Vis−Vif|>|Vos−Vof
is≧Vof
is≦40m/s
を満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法において、(Vis−Vif)−(Vos−Vof)>5m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法において、(Vis−Vif)≧15m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法において、(Vos−Vof)≦15m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法において、Vif<Vofを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法において、前記第1助燃性ガス噴出流路を構成する小口径流路内径を、前記第2助燃性ガス噴出流路を構成する小口径流路内径より小さくすることにより、前記Vis、Vosを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スートの形成条件(ガス供給条件)を最適化することにより、良質なスートを短時間で効率的に形成することができるので、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができる。したがって、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】OVD法によるスート形成工程の概略を示す図である。
【図2】バーナの一例を示す図である。
【図3】バーナの内側における助燃性ガスの流速Visと可燃性ガスの流速Vifの流速差(Vis−Vif)と堆積効率の関係を示す図である。
【図4】バーナの外側における助燃性ガスの流速Vosと可燃性ガスの流速Vofの流速差(Vos−Vof)と堆積効率の関係を示す図である。
【図5】バーナの内側における助燃性ガスの流速Visと可燃性ガスの流速Vifの流速差(Vis−Vif)と外側における助燃性ガスの流速Vosと可燃性ガスの流速Vofの流速差(Vos−Vof)の差と堆積効率の関係を示す図である。
【図6】バーナの他の一例(第1助燃性ガス噴出流路内径<第2助燃性ガス噴出流路内径)を示す図である。
【図7】バーナの他の一例(三重環構造の助燃性ガス噴出流路)を示す図である。
【図8】バーナの他の一例(二重構造の可燃性ガス噴出流路)を示す図である。
【図9】バーナの他の一例(二重構造の可燃性ガス噴出流路)を示す図である。
【図10】バーナの他の一例(二重構造の可燃性ガス噴出流路)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、OVD法によりターゲットロッドの外周面にスート体を形成し、これを高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する。
【0017】
図1は、OVD法によるスート形成工程の概略を示す図である。
図1に示すように、OVD法では、バーナ10がターゲットロッド2の長手方向に往復移動可能に配置される。このバーナ10により、SiCl等の原料ガス、可燃性ガス(例えばH)、助燃性ガス(例えばO)及びシールガス(例えばN)が供給される。そして、可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎(例えば酸水素火炎)101中で原料ガスが火炎加水分解反応することによりガラス微粒子(スート)102が生成される。
ターゲットロッド2を軸中心に回転させながら、バーナ10を長手方向に往復移動させることで、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102が堆積され、スート体3が形成される。そして、高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化された光ファイバ母材1が製造される。また、この光ファイバ母材1を加熱して線引きすることにより、光ファイバが製造される。なお、ターゲットロッド2には、例えばVAD法により作製されたコア母材が用いられる。
【0018】
図2は、バーナ10の一例を示す図である。図2に示すように、バーナ10は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13を備えている。
大口径の可燃性ガス噴出流路13の中心には、原料ガス噴出流路11及びシールガス噴出流路16が同心状に配置されている。また、可燃性ガス噴出流路13の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14、助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が同心状に配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar、Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
なお、各噴出流路12〜16は、例えば石英ガラスやセラミックス等の耐熱性の高い材料で構成される。後述するバーナ20〜60においても同様である。
【0019】
助燃性ガス噴出流路12は、原料ガス噴出流路11の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路121と、この第1助燃性ガス噴出流路121の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路122で構成された二重環構造となっている。第1助燃性ガス噴出流路121は、原料ガス噴出流路11及びシールガス噴出流路16を取り囲むように可燃性ガス噴出流路13内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路122は、第1助燃性ガス噴出流路121を取り囲むように可燃性ガス噴出流路13内に配置されている。
【0020】
第1助燃性ガス噴出流路121を構成する6個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から180mmの地点で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路122を構成する8個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第1助燃性ガス以上の距離として220mmの地点で焦点を結ぶようになっている。
第1助燃性ガス噴出流路121と第2助燃性ガス噴出流路122を構成する小口径流路の内径は同一とされ、第1助燃性ガス噴出流路121と第2助燃性ガス噴出流路122には別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0021】
助燃性ガス噴出流路12(第1助燃性ガス噴出流路121及び第2助燃性ガス噴出流路122を構成する小口径流路)の内径が小さいほど、少ないガス供給量で流速を速くすることができるが、内径が小さくなるに従い流速を上げることが困難となる。一方で、助燃性ガス噴出流路12の内径が大きくなると多量の助燃性ガスが必要となり非経済的である。これより、助燃性ガス噴出流路12の内径は0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmとする。
可燃性ガス噴出流路13の内径は、可燃性ガスとしてHを使用する場合には25〜55mmとするのが望ましい。可燃性ガスと助燃性ガスの適切な流速差を得る為である。
【0022】
スート体3の形成は、原料ガスの温度とスート堆積面の温度に大きく左右される。一方で、バーナ10において別々の噴出流路から供給される助燃性ガスと可燃性ガスはその界面で燃焼する。したがって、これらの速度差を制御することで、ガス界面における混合量を変化させて燃焼量を制御することができる。すなわち、助燃性ガスと可燃性ガスの速度差を制御することで、原料ガスの温度とスート堆積面の温度を適正に保持することが可能となる。
【0023】
本実施形態では、図2に示すようなバーナ10を用いてスート体3を形成する工程において、下式(1)〜(3)を満たすように、助燃性ガスと可燃性ガスの流速を制御する。
|Vis−Vif|>|Vos−Vof| ・・・(1)
is≧Vos ・・・(2)
is≦40m/s ・・・(3)
ここで、第1助燃性ガス噴出流路121からの助燃性ガスの流速をVis、第1助燃性ガス噴出流路121の近傍における可燃性ガスの流速をVif、第2助燃性ガス噴出流路122からの助燃性ガスの流速をVos、第2助燃性ガス噴出流路122の近傍における可燃性ガスの流速をVofとしている。
【0024】
なお、Vis,Vif,Vos,Vofは、各噴出流路121,122,13の噴出端における流速であり、ガス供給量/噴出端の断面積により求まる。図2に示すバーナ10では、一つの可燃性ガス噴出流路13から可燃性ガスが供給されるので、VifとVofは同じとなる。
【0025】
上式(1)〜(3)を満たすように助燃性ガス及び可燃性ガスを供給すると、バーナ10の内側における助燃性ガスと可燃性ガスの燃焼が、外側における助燃性ガスと可燃性ガスの燃焼に比べて早い燃焼となる。つまり、内側の助燃性ガスと可燃性ガスによる燃焼が原料ガス噴出流路11より噴出された直後の原料ガスのガラス微粒子化に寄与し、外側の助燃性ガスと可燃性ガスによる燃焼が更なるガラス微粒子化とスートの堆積に寄与する。
これにより、原料ガスの温度とスート堆積面の温度が適正に保持されるので、良質なスートを短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができ、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【0026】
[実施例1]
実施例1では、図2に示すバーナ10を、100mmφのターゲットロッド2から250mm離間させて対向配置した。そして、原料ガスをSiCl、可燃性ガスをH、助燃性ガスをOとして、ターゲットロッド2を回転させながらバーナ10を往復移動させ、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102を堆積させてスート体3を形成した。このとき、ターゲットロッドの回転速度を100rpm、バーナ10のトラバース速度を2000mm/min、トラバース長を2000mmとし、堆積時間は300minとした。
【0027】
実施例1では、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例1に係るガラス体を作製した。
【0028】
[比較例1]
比較例1では、スート形成工程において、上式(1)〜(3)の少なくとも一つが満たされないように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。その他のスート形成条件については、実施例1と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例1に係るガラス体を作製した。
【0029】
実施例1及び比較例1で作製されたガラス体について、堆積速度(g/min)、堆積効率(%)、スート体の外径変動を評価した結果を表1に示す。なお、外径変動はスート体3を透明ガラス化したガラス体においてレーザを用いて測定した。透明ガラス化した光ファイバ母材1においては、母材長手方向で0.2〜0.5m周期で外径変動が発生するが、この部分の外径変動が平均外径の3%以内の場合を“○”(変動なし)、3〜5%の場合を“△”(やや変動有り)、5%以上の場合を“×”(変動有り)とした。
【0030】
表1に示すように、実施例1−1,1−2では、上式(1)〜(3)を満たすように助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御したので、22g/min以上の高い堆積速度と、75%以上の高い堆積効率の両方を同時に達成することができた。また、透明ガラス化したガラス体は、外径変動がなく、良質なものであった。
これに対して、比較例1−1,1−2では、ガラス体の外径変動はなかったが、上式(1),(2)が満たされていないために、堆積速度が18g/minより遅く、堆積効率は70%未満となった。比較例1−3,1−4では、20g/min以上の堆積速度と、70%以上の堆積効率の両方を同時に達成できているが、上式(3)が満たされていないために、ガラス体の外径変動が大きくなった。
【0031】
【表1】

【0032】
このように、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御することで、スートの堆積速度及び堆積効率の向上を図ることができる。実施例1のように、可燃性ガスの流速Vif,Vofが同じとなっている場合は、内側に配置された第1助燃性ガス噴出流路121から噴出される助燃性ガスの流速Visを、外側に配置された第2助燃性ガス噴出流路122から噴出される助燃性ガスの流速Vosより速くすることで、容易に上式(1)〜(3)を満たすことができる。
ただし、流速Visが速くなり過ぎる(例えば40m/s超)と堆積速度、堆積効率のいずれも低下する傾向にあり、透明ガラス化後の光ファイバ母材の外径変動も大きくなる。
【0033】
さらに、バーナ10の内側における助燃性ガスの流速Visと可燃性ガスの流速Vifの流速差(Vis−Vif)と堆積効率の関係、外側における助燃性ガスの流速Vosと可燃性ガスの流速Vofの流速差(Vos−Vof)と堆積効率の関係を調べた。
図3は助燃性ガスの流速Visと可燃性ガスの流速Vifとの流速差と堆積効率の関係を示す図で、図4は助燃性ガスの流速Vosと可燃性ガスの流速Vofとの流速差と堆積効率の関係を示す図である。
図3より、(Vis−Vif)を15m/s以上とすることで、堆積効率を70%以上とすることができる。また、図4より、(Vos−Vof)を15m/s以下とすることで、堆積効率を70%以上とすることができる。
また、図5に示すように、バーナ10の内側における助燃性ガスの流速Visと可燃性ガスの流速Vifの流速差(Vis−Vif)と外側における助燃性ガスの流速Vosと可燃性ガスの流速Vofの流速差(Vos−Vof)の差を5.0m/s以上とすることで、堆積効率を70%以上とすることができる。
【0034】
[実施例2]
図6は、バーナの他の一例を示す図である。図6に示すように、バーナ20は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路21、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路22、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路23を備えている。
大口径の可燃性ガス噴出流路23の中心には、原料ガス噴出流路21及びシールガス噴出流路26が同心状に配置されている。また、可燃性ガス噴出流路23の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路24、助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路25が同心状に配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar,Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
【0035】
助燃性ガス噴出流路22は、原料ガス噴出流路21の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路221と、この第1助燃性ガス噴出流路221の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路222で構成された二重環構造となっている。第1助燃性ガス噴出流路221は、原料ガス噴出流路21及びシールガス噴出流路26を取り囲むように可燃性ガス噴出流路23内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路222は、第2助燃性ガス噴出流路121を取り囲むように可燃性ガス噴出流路23内に配置されている。
【0036】
第1助燃性ガス噴出流路221を構成する6個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から180mmの地点で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路222を構成する8個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第1助燃性ガス以上の距離として220mmの地点で焦点を結ぶようになっている。
第1助燃性ガス噴出流路221を構成する小口径流路の内径は、第2助燃性ガス噴出流路222を構成する小口径流路の内径よりも小さく(例えば75%程度)、第1助燃性ガス噴出流路121と第2助燃性ガス噴出流路122には別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。実施例1のバーナ10に比較すると、第1助燃性ガス噴出流路221を構成する小口径流路の内径が小さいので、第1助燃性ガス噴出流路221から噴出される助燃性ガスの流速Visを少ないガス供給量で効率よく速くすることができる。
【0037】
実施例2では、図6に示すバーナ20を用いて、実施例1と同様にスート体3を形成した。このとき、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例2に係るガラス体を作製した。
【0038】
[比較例2]
比較例2では、スート形成工程において、上式(3)が満たされないように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。その他のスート形成条件については、実施例2と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例2に係るガラス体を作製した。
【0039】
実施例2及び比較例2で作製されたガラス体について、堆積速度(g/min)、堆積効率(%)、スート体の外形変動を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例2では、上式(1)〜(3)を満たすように助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御したので、22g/min以上の堆積速度と、75%以上の堆積効率の両方を同時に達成することができた。また、透明ガラス化した光ファイバ母材1は、外径変動がなく、良質なものであった。
これに対して、比較例2では、25g/min以上の堆積速度と、75%以上の堆積効率の両方を同時に達成できているが、上式(3)が満たされていないために、ガラス体の外径変動が大きくなった。
【0040】
【表2】

【0041】
このように、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御することで、スートの堆積速度及び堆積効率の向上を図ることができる。このとき、内側に配置された第1助燃性ガス噴出流路221の内径を、外側に配置された第2助燃性ガス噴出流路222の内径よりも小さくすることで、容易に上式(1)〜(3)を満たすことができる。
また、第1助燃性ガス噴出流路221から助燃性ガスを過剰に供給することなく所望の流速Visとすることができる。したがって、助燃性ガスと可燃性ガスが堆積面で混合燃焼する際に両者の供給量が極端に異なることに起因してスートの堆積効率が低下するのを防止できる。
【0042】
[実施例3]
図7は、バーナの他の一例を示す図である。図7に示すように、バーナ30は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路31、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路32、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路33を備えている。
大口径の可燃性ガス噴出流路33の中心には、原料ガス噴出流路31及びシールガス噴出流路36が同心状に配置されている。また、可燃性ガス噴出流路33の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路34、助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路35が同心状に配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar,Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
【0043】
助燃性ガス噴出流路32は、原料ガス噴出流路31の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路321と、この第1助燃性ガス噴出流路321の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路322と、さらに第2助燃性ガス噴出流路322の外側に等間隔で環状配置された12個の小口径流路からなる第3助燃性ガス噴出流路323で構成された三重環構造となっている。
【0044】
第1助燃性ガス噴出流路321は、原料ガス噴出流路31及びシールガス噴出流路36を取り囲むように可燃性ガス噴出流路33内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路322は、第1助燃性ガス噴出流路321を取り囲むように可燃性ガス噴出流路33内に配置され、第3助燃性ガス噴出流路323は、第2助燃性ガス噴出流路322を取り囲むように可燃性ガス噴出流路33内に配置されている。
【0045】
第1助燃性ガス噴出流路321を構成する6個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から180mmの地点で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路322を構成する8個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第1助燃性ガス以上の距離として220mmの地点で焦点を結び、第3助燃性ガス噴出流路323を構成する12個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第2助燃性ガス以上の距離として240mmの地点で焦点を結ぶようになっている。
第1助燃性ガス噴出流路321、第2助燃性ガス噴出流路322及び第3助燃性ガス噴出流路323を構成する小口径流路の径は同一とされ、第1燃性ガス噴出流路321、第2助燃性ガス噴出流路322及び第3助燃性ガス噴出流路323には別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0046】
ここで、図7に示すように助燃性ガス噴出流路32が三重環構造となっている場合には、第3助燃性ガス噴出流路323も第2助燃性ガス噴出流路322と同様に、第1助燃性ガス噴出流路321を取り囲むように配置されているとみることができる。したがって、第2助燃性ガス噴出流路322からの助燃性ガスの流速をVos1、第2助燃性ガス噴出流路322の近傍における可燃性ガスの流速をVof1、第3助燃性ガス噴出流路323からの助燃性ガスの流速をVos2、第3助燃性ガス噴出流路322の近傍における可燃性ガスの流速をVof2とすれば、上式(1)は下式(4),(5)で表され、上式(2)は下式(6),(7)で表される。
|Vis−Vif|>|Vos1−Vof1| ・・・(4)
|Vis−Vif|>|Vos2−Vof2| ・・・(5)
is≧Vos1 ・・・(6)
is≧Vos2 ・・・(7)
なお、図7に示すバーナ30では、一つの可燃性ガス噴出流路33から可燃性ガスが供給されるので、Vif,Vof1及びVof2は同じとなる。
【0047】
実施例3では、図7に示すバーナ30を用いて、実施例1と同様にスート体3を形成した。このとき、上式(3),(4)〜(7)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例3に係るガラス体を作製した。
【0048】
[比較例3]
比較例3では、スート形成工程において、上式(4)〜(7)が満たされないように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。その他のスート形成条件については、実施例3と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例3に係るガラス体を作製した。
【0049】
実施例3及び比較例3で作製された光ファイバ母材1について、堆積速度(g/min)、堆積効率(%)、スート体の外形変動を評価した結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例3−1,3−2では、上式(3),(4)〜(7)を満たすように助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御したので、25g/min以上の堆積速度と、80%以上の堆積効率の両方を同時に達成することができた。また、透明ガラス化したガラス体は、外径変動がなく、良質なものであった。
これに対して、比較例3では、光ファイバ母材1の外径変動はなかったが、上式(4)〜(7)が満たされていないために、堆積速度は20g/min程度であり、堆積効率は低く60%未満となった。
【0050】
【表3】

【0051】
このように、助燃性ガス噴出流路32を三重環構造とした場合も、上式(3),(4)〜(7)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos1,Vos2及び可燃性ガスの流速Vif,Vof1,Vof2を制御することで、堆積速度及び堆積効率の向上を図ることができる。実施例3のように、可燃性ガスの流速Vif,Vof1,Vof2が同じとなっている場合は、内側に配置された第1助燃性ガス噴出流路321から噴出される助燃性ガスの流速Visを、外側に配置された第2助燃性ガス噴出流路322、第3助燃性ガス噴出流路323から噴出される助燃性ガスの流速Vos1、Vos2より速くすることで、容易に上式(3),(4)〜(7)を満たすことができる。
また、実施例3−1,3−2より、堆積速度及び堆積効率の向上を図るためには、外側に配置された第3助燃性ガス噴出流路323から噴出される助燃性ガスと可燃性ガスの流速差(Vos2−Vof2)を小さくするのが望ましい。
【0052】
[実施例4]
図8は、バーナの他の一例を示す図である。図8に示すように、バーナ40は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路41、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路42、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路43を備えている。
可燃性ガス噴出流路43は、第1可燃性ガス噴出流路431と、第2助燃性ガス噴出流路432が同心状に配置された二重構造となっており、可燃性ガスの噴出流路が分割されている。
第1可燃性ガス噴出流路431の内径は、第2可燃性ガス噴出流路432の内径のほぼ2倍とされ、第1可燃性ガス噴出流路431と第2可燃性ガス噴出流路432には別系統の供給路を通して可燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される可燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0053】
第1可燃性ガス噴出流路431の中心には、原料ガス噴出流路41及びシールガス噴出流路46が同心状に配置されている。また、第2可燃性ガス噴出流路432の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路44、助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路45が同心状に配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar,Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
【0054】
助燃性ガス噴出流路42は、原料ガス噴出流路41の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路421と、この第1助燃性ガス噴出流路421の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路422で構成された二重環構造となっている。第1助燃性ガス噴出流路421は、原料ガス噴出流路41及びシールガス噴出流路46を取り囲むように第1可燃性ガス噴出流路431内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路422は、第2可燃性ガス噴出流路432内に配置されている。
【0055】
第1助燃性ガス噴出流路421を構成する6個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から180mmの地点で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路422を構成する8個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第1助燃性ガス以上の距離として220mmの地点で焦点を結ぶようになっている。
第1助燃性ガス噴出流路421と第2助燃性ガス噴出流路422を構成する小口径流路の内径は同一とされ、第1助燃性ガス噴出流路421と第2助燃性ガス噴出流路422には別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0056】
実施例4では、図8に示すバーナ40を用いて、実施例1と同様にスート体3を形成した。このとき、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例4に係るガラス体を作製した。
【0057】
[比較例4]
比較例4では、スート形成工程において、上式(1)が満たされないように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。その他のスート形成条件については、実施例4と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例4に係るガラス体を作製した。
【0058】
実施例4及び比較例4で作製された光ファイバ母材1について、堆積速度(g/min)、堆積効率(%)、スート体の外形変動を評価した結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例4では、上式(1)〜(3)を満たすように助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御したので、25g/min以上の速い堆積速度と、80%程度の堆積効率の両方を同時に達成することができた。また、透明ガラス化した光ファイバ母材1は、外径変動がなく、良質なものであった。
これに対して、比較例4では、光ファイバ母材1の外径変動はなかったが、上式(1)が満たされていないために、堆積速度は20g/min程度であり、堆積効率は60%未満となった。
【0059】
【表4】

【0060】
このように、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御することで、堆積速度及び堆積効率の向上を図ることができる。実施例4のように、可燃性ガスの噴出流路を分割した場合、第2助燃性ガス噴出流路422の近傍に噴出される可燃性ガスの流速Vofを、第1助燃性ガス噴出流路421の近傍に噴出される可燃性ガスの流速Vifより速くすることで、容易に上式(1)〜(3)を満たすことができる。
【0061】
[実施例5]
図9は、バーナの他の一例を示す図である。図9に示すように、バーナ50は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路51、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路52、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路53を備えている。
可燃性ガス噴出流路53は、第1可燃性ガス噴出流路531と、第2可燃性ガス噴出流路532で構成されている。第2可燃性ガス噴出流路532は、大口径の可燃性ガス噴出流路(例えば、図8の第2可燃性ガス噴出流路432)の開口の一部を邪魔板532aで閉塞して構成され、後述する第2助燃性ガス噴出流路522の周囲にだけ可燃性ガスが噴出されるようになっている。邪魔板532aは、例えば、第2助燃性ガス噴出流路522と対応する位置に第2助燃性ガス噴出流路522の外径より若干大きい孔が形成された石英板であり、噴出される可燃性ガスを整流できる程度の厚みとして20mmを有する。
第1可燃性ガス噴出流路531と第2可燃性ガス噴出流路532には別系統の供給路を通して可燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される可燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0062】
第1可燃性ガス噴出流路531の中心には、原料ガス噴出流路51及びシールガス噴出流路56が同心状に配置されている。また、第2可燃性ガス噴出流路532の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路54、助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路55が同心状に配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar,Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
【0063】
助燃性ガス噴出流路52は、原料ガス噴出流路51の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路521と、この第1助燃性ガス噴出流路521の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路522で構成された二重環構造となっている。第1助燃性ガス噴出流路521は、原料ガス噴出流路51及びシールガス噴出流路56を取り囲むように第1可燃性ガス噴出流路531内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路522は、第2可燃性ガス噴出流路532内に配置されている。
【0064】
第1助燃性ガス噴出流路521を構成する6個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から180mmの地点で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路522を構成する8個の小口径流路は、噴出ガスがガス噴出端から第1助燃性ガス以上の距離として220mmの地点で焦点を結ぶようになっている。
第1助燃性ガス噴出流路521と第2助燃性ガス噴出流路522を構成する小口径流路の内径は同一とされ、第1助燃性ガス噴出流路521と第2助燃性ガス噴出流路522には別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0065】
実施例5では、図8に示すバーナ50を用いて、実施例1と同様にスート体3を形成した。このとき、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例5に係るガラス体を作製した。
【0066】
[比較例5]
比較例5では、スート形成工程において、上式(1)が満たされないように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御した。その他のスート形成条件については、実施例5と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例5に係るガラス体を作製した。
【0067】
実施例5及び比較例5で作製された光ファイバ母材1について、堆積速度(g/min)、堆積効率(%)、スート体の外形変動を評価した結果を表5に示す。
表5に示すように、実施例5では、上式(1)〜(3)を満たすように助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御したので、25g/min以上の堆積速度と、75%以上の堆積効率の両方を同時に達成することができた。また、透明ガラス化した光ファイバ母材1は、外径変動がなく、良質なものであった。
これに対して、比較例5では、光ファイバ母材1の外径変動はなかったが、上式(1)が満たされていないために、堆積速度が20g/minより遅く、堆積効率は60%未満となった。
【0068】
【表5】

【0069】
このように、上式(1)〜(3)のすべてを満たすように、助燃性ガスの流速Vis,Vos及び可燃性ガスの流速Vif,Vofを制御することで、堆積速度及び堆積効率の向上を図ることができる。実施例5のように、可燃性ガスの噴出流路を分割した場合、第2助燃性ガス噴出流路522の近傍に噴出される可燃性ガスの流速Vofを、第1助燃性ガス噴出流路521の近傍に噴出される可燃性ガスの流速Vifより速くすることで、容易に上式(1)〜(3)を満たすことができる。
また、第2可燃性ガス噴出流路532から可燃性ガスを過剰に供給することなく所望の流速Vofとすることができる。例えば、実施例5における第2可燃性ガス噴出流路532からの可燃性ガスの供給量は、実施例4における第2可燃性ガス噴出流路432からの可燃性ガスの供給量よりも少ないが、噴出流路の断面積が小さいために可燃性ガスの流速Vofは同等となっている。したがって、助燃性ガスと可燃性ガスが堆積面で混合燃焼する際に両者の供給量が極端に異なることに起因してスートの堆積効率が低下するのを防止できる。第2可燃性ガス噴出流路532から噴出される可燃性ガスの流速Vofを速くしたい場合に有効である。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0071】
例えば、本発明を適用可能なバーナは実施形態で示したものに限定されず、原料ガス噴出流路の周囲に助燃性ガス噴出流路が多重環構造で配置され、この助燃性ガス噴出流路の周囲に可燃性ガス噴出流路が配置されているバーナであればよい。
例えば、実施形態では、助燃性ガス噴出流路を二重環構造又は三重環構造とした場合について説明したが、さらに多くの多重環構造とすることができる。この場合は、三重環構造とした場合(実施例3)と同様に、バーナの外側における助燃性ガスと可燃性ガスの流速差が、最内側における助燃性ガスと可燃性ガスの速度差より小さくなるようにすればよい。
【0072】
また、実施例5(図9参照)では、大口径の可燃性ガス噴出流路の一部を邪魔板532aで閉塞することにより、噴出流路が第2助燃性ガス噴出流路522の周囲に制限された第2可燃性ガス噴出流路532を形成するようにしているが、図10に示すように、第2助燃性ガス噴出流路622に対応して第2可燃性ガス噴出流路632を設けるようにしてもよい。この場合、シールガス噴出流路64内に第2可燃性ガス噴出流路632が配置され、第2可燃性ガス噴出流路632内に第2助燃性ガス噴出流路622が配置されることとなる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 光ファイバ母材
2 ターゲットロッド
3 スート体
10 バーナ
11 原料ガス噴出流路
12 助燃性ガス噴出流路
121 第1助燃性ガス噴出流路
122 第2助燃性ガス噴出流路
13 可燃性ガス噴出流路
14 シールガス噴出流路
15 補助助燃性ガス
16 シールガス噴出流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状に設けられた複数の小口径流路からなり、これらの小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路の周囲に設けられ、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路と、を備えたバーナを用いて、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより生成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させる工程を備えた光ファイバ母材の製造方法において、
前記助燃性ガス噴出流路は、前記原料ガス噴出流路の外側に環状配置された第1助燃性ガス噴出流路と、この第1助燃性ガス噴出流路の外側に環状配置された第2助燃性ガス噴出流路と、で構成され、
前記第1助燃性ガス噴出流路からの前記助燃性ガスの流速をVis(m/s)、
前記第1助燃性ガス噴出流路の近傍における前記可燃性ガスの流速をVif(m/s)、
前記第2助燃性ガス噴出流路からの前記助燃性ガスの流速をVos(m/s)、
前記第2助燃性ガス噴出流路の近傍における前記可燃性ガスの流速をVof(m/s)としたとき、
|Vis−Vif|>|Vos−Vof
is≧Vof
is≦40m/s
を満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【請求項2】
(Vis−Vif)−(Vos−Vof)>5m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項3】
(Vis−Vif)≧15m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項4】
(Vos−Vof)≦15m/sを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項5】
if<Vofを満たすように、前記助燃性ガス及び前記可燃性ガスの流速を制御することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項6】
前記第1助燃性ガス噴出流路を構成する小口径流路内径を、前記第2助燃性ガス噴出流路を構成する小口径流路内径より小さくすることにより、前記Vis、Vosを制御することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225413(P2011−225413A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99316(P2010−99316)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】