説明

光ファイバ

【課題】スリーブ等の光ファイバ固定部材との接着度を高め、外部からの張力やねじれに耐え得る光ファイバを提供する。
【解決手段】光ファイバ10の被覆部14に形成され、接着剤24を介してスリーブ20との接着度を高める少なくとも1本の帯状の起伏部15を備える。起伏部15は前記光ファイバの周方向の一部に延在する。起伏部15は、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法を用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバに関し、特に、接着剤を介して光ファイバ固定部材との接着度を高める光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器等の光モジュールは、光モジュール内に置かれた光学素子等を保護するため気密性が要求される。この気密性を維持するため、光学素子の入出力端に接続される光ファイバは金属スリーブ及びガラスフェルールなどの端末処理部材を用いた端末処理が施されている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、上記の端末処理において、従来の光ファイバ110を端末処理部材の一種であるスリーブ20に装着した状態を示す断面図である。スリーブ20の後端、前端にはそれぞれ、第1光ファイバ挿入孔21、第2光ファイバ挿入孔22が形成されている。光ファイバ110は、コア及びクラッド(図示せず)からなる裸光ファイバ113を露出させ、通常はメタライズ処理を施した状態で第1光ファイバ挿入孔21に挿入される。挿入された裸光ファイバ113は、第2光ファイバ挿入孔22を通過し、スリーブ20の前面、即ち、光ファイバ挿入孔22の開口部から露出する。
【0004】
光ファイバ挿入孔22の開口部周辺には、ハンダ等の封止部材23が充填され、これにより該開口部は気密封止(ハーメチックシール)される。一方、第1光ファイバ挿入孔21の内部および開口部には、接着剤24が充填される。接着剤24は、光ファイバ110の被覆部114をスリーブ20に固着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−263899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の光モジュールの小型化に伴い、スリーブ等の端末処理部材も小型化が要求されている。しかしながら、端末処理部材に光ファイバを固着させる場合、接着剤を用いる点に変化はない。つまり、端末処理部材の小型化は接着剤を塗布する領域の狭小化を意味する。ところが、周知のように、光ファイバの被覆部は接着性が弱い。
【0007】
このような事情から、端末処理部材の小型化は当該端末処理部材への光ファイバの強固な接着を困難にしている。図8に示す構成においても小型化が進んだ場合には、張力或いはねじれ等の外力によって、光ファイバ110が接着剤24から容易に剥離する可能性がある。このような剥離は、光ファイバの位置ズレや回転、あるいは断線を誘発しやすく、光モジュールの故障の原因となる。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものであり、接着剤を介した端末処理部材等の光ファイバ固定部材との接着度を高め、以って外部からの張力やねじれに耐え得る光ファイバの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は光ファイバであって、その一部が光ファイバ固定部材に固定されるものにおいて、光ファイバの被覆部に形成され、接着剤が塗布された場合には該接着剤を介して前記光ファイバ固定部材との接着度を高める少なくとも1本の帯状の起伏部を備え、前記起伏部は前記光ファイバの周方向の少なくとも一部に延在していることを特徴とする。
【0010】
前記起伏部は該被覆部の表面よりも内方に位置してもよい。前記起伏部は前記光ファイバの先端部に位置してもよい。前記光ファイバの周方向において、前記起伏部の長さは前記被覆部の半周よりも短いことが好ましい。前記起伏部は前記光ファイバの周方向に沿って複数設けてもよい。
【0011】
前記起伏部は、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法によって粗面処理される表面を有することが望ましい。
【0012】
前記被覆部はポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ナイロン系のうちの何れか1つからなるエラストマによって構成されていることが望ましい。
【0013】
本発明の第2の態様は光ファイバの製造方法であって、被覆部を有する光ファイバを所定の方向に固定する工程と、前記光ファイバの周方向に、接着剤を介して端末処理部材との接着度を高める少なくとも1本の帯状の起伏部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
前記起伏部の形成工程において、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着剤が起伏部に密着するので、光ファイバと光ファイバ固定部材とを強固に接合することができる。即ち、光ファイバが張力又はねじれ等の外力を受けても、光ファイバが光ファイバ固定部材から外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバの斜視図である。
【図2】図1の光ファイバの側面図である。
【図3】図2に示す光ファイバのA−A断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光ファイバを端末処理部材に装着した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る光ファイバの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る光ファイバの斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光ファイバの製造工程を示す図であり、(a)はレーザ加工による製造工程、(b)は塑性加工工具を用いた塑性加工による製造工程、(c)は切削加工工具を用いた切削加工による製造工程を示す図である。
【図8】従来の光ファイバを端末処理部材に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る光ファイバは一般的に光ファイバ心線と呼ばれる光ファイバであり、コアとクラッドからなる裸光ファイバ(bare optical fiber)に樹脂等の被覆を施したものである。以下の説明では便宜上、この光ファイバ心線を光ファイバと称する。
【0018】
図1、図2はそれぞれ、本実施形態に係る光ファイバ10の斜視図および側面図である。図3は、図2に示す光ファイバのA−A断面を示す図である。本発明に係る光ファイバは、接着剤を用いて光ファイバ固定部材に固着される。図4はその一例であり、本実施形態に係る光ファイバ10を、光ファイバ固定部材の一種で周知の端末処理部材であるスリーブ20に装着した状態を示す断面図である。
【0019】
上述の通り、光ファイバ10は、コア11と、コア11を包むクラッド12とからなる裸光ファイバ13を備える。コア11およびクラッド12は、周知の材料(石英ガラスなど)によって形成されている。
【0020】
光ファイバ10は、さらに、裸光ファイバ13を被覆する被覆部14を備える。被覆部14は、コア11及びクラッド12と共に、中心軸Oを中心とした同軸構造を形成する。被覆部14は周知の合成樹脂によって形成される。この合成樹脂は、後述するように切削性や熱可塑性を有する弾性体であることが好ましく、好適な材料としては、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ナイロン系のエラストマなどが挙げられる。
【0021】
被覆部14は異なる材質からなる同軸の多層構造を有してもよい。例えば、クラッド12の外周を紫外線硬化性樹脂(図示せず)で囲み、さらにその外周を上記のエラストマで囲んでもよい。本発明では後述する起伏部15が被覆部14の表面に形成される。起伏部15の形成や、被覆部14の機械的強度(引張強度やねじれ強度など)および裸光ファイバ13の光学的特性等に支障を来たさない限り、被覆部14の構造(即ち、階層構造など)や材質に制限はない。
【0022】
図1及び図2に示すように、被覆部14の表面には少なくとも1本の帯状の起伏部15が形成される。この帯状の起伏部15は、光ファイバ10の周方向の少なくとも一部に延在する。光ファイバ10の周方向における起伏部15の長さL1は任意である。図3に示すように、起伏部15は、被覆部14の半周L2よりも短く形成してもよいし、光ファイバ10の全周に亘って形成してもよい。
【0023】
本実施形態では、起伏部15は光ファイバ10の先端部に形成され、後述するように、接続対象である光ファイバ固定部材との接着度を向上させる。なお、ここで言う「光ファイバの先端部」とは、裸光ファイバ13を露出させた後の光ファイバ10において、被覆部14で覆われた部分のうちの先端部を意味する。図4は、上述の先端部に複数の起伏部15が設けられた例を示している。このうち、起伏部15aは光ファイバ10をスリーブ20に完全に挿入した状態において、第1光ファイバ挿入孔21内に位置する。また、起伏部15bは、スリーブ20の後端面20aの外側近傍に位置する。なお、起伏部15aまたは起伏部15bの何れかが設けられてもよい。これらの起伏部15(15a、15b)の位置から理解されるように、本実施形態で定義される(光ファイバ10の)先端部の長さは、接続対象である光ファイバ固定部材の寸法・形状に依存する。
【0024】
上述したように、起伏部15とその周囲の被覆部14には、接着剤24が塗布される。接着剤24との密着性を高めるには、接着剤24が塗布される領域の表面積を大きくすることが望ましい。従って、起伏部15は微小な凹凸を生じさせる粗面処理が施されている。この粗面処理は、後述するレーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法によって施すことが可能である。起伏部15は、中心軸Oからみて被覆部14の表面とほぼ同一面上に位置してもよいが、図3に示すように、被覆部14の表面から内方に位置していることがより好ましい。この場合、充填された接着剤24は楔状に固化する。楔状に固化した接着剤24は、光ファイバ10がスリーブ20から抜け出るのを防止する所謂アンカーとして機能する。
【0025】
起伏部15は、例えば、中心軸Oに沿って全体として凹面状に形成してもよいし、または光ファイバ10の周方向に対して断面略コの字状に形成してもよい。換言すれば、起伏部15は、その表面の粗さを平均化して得られる曲面が上記の形状を得られるように形成される。また、図3の例では、起伏部15の底部15aが光ファイバ10の周方向に沿って延在しているが、この底部15aは中心軸Oに対して垂直な方向に延在してもよい。起伏部15の全体的な形状は上記の例に限定されないが、何れの場合においても、被覆部14の機械的強度を維持する必要がある。そのため、被覆部14の外周面を基準とした上記曲面の深さDは、被覆部14の直径の10%程度までである(図3参照)。
【0026】
本実施形態に係る光ファイバ10をスリーブ20に装着した例について、図4を用いて説明する。
【0027】
スリーブ20は金属製の円筒である。スリーブ20の後端には第1光ファイバ挿入孔21が形成されている。第1光ファイバ挿入孔21は前方(図4の左方向)に向かって延伸し、第2光ファイバ挿入孔22に連通している。第2光ファイバ挿入孔22は第1光ファイバ挿入孔21の底部からスリーブ20の前方に向かって形成され、スリーブ20の前面で開口している。なお、第1光ファイバ挿入孔21は被覆部14よりも若干大きな直径を有し、第2光ファイバ挿入孔22は裸光ファイバ13のみが通過できる直径を有する。
【0028】
光ファイバ10は、裸光ファイバ13を露出させてメタライズ処理を施し、その状態で第1光ファイバ挿入孔21に挿入される。挿入された裸光ファイバ13は、第2光ファイバ挿入孔22を通過してスリーブ20の前面から露出する。このとき、第1光ファイバ挿入孔21の底部(即ち、第1光ファイバ挿入孔21と第2光ファイバ挿入孔22の境界面)に被覆部14の端面14aが当接し、被覆部14の更なる挿入を阻止する。従って、被覆部14は第1光ファイバ挿入孔21内に留まり、起伏部15は第1光ファイバ挿入孔21の内部および開口部の周辺(開口部の外側近傍)に位置する。
【0029】
第2光ファイバ挿入孔22の内部および開口部には、ハンダ等の封止部材23が充填され、これにより該開口部は気密封止(ハーメチックシール)される。図4に示す例では、この気密封止を十分に達成するために、封止部材23が第2光ファイバ挿入孔22の内部(奥)まで充填されている様子が示されている。なお、光変調器等の光モジュール(図示せず)の入出力端として光ファイバ10を適用する場合、メタライズ処理された裸光ファイバ13は、ガラスキャピラリ(図示せず)への挿通によって成端される。成端された裸光ファイバ13はガラスキャピラリと共に、紫外線硬化型接着剤等を用いて光モジュール内の光学素子(図示せず)に接着される。
【0030】
一方、スリーブ20に挿入された光ファイバ10には、被覆部14及び起伏部15(15a、15b)を覆うように接着剤24が塗布される。接着剤24は、スリーブ20の後端面20aと該後端面20aから露出した被覆部14に塗布されるだけでなく、第1光ファイバ挿入孔21内にも充填される。なお、スリーブ20の後端面20aに接着剤24を塗布した際、上述の気密封止と相まって、第1光ファイバ挿入孔21内は密閉され、空気が残留しやすい。空気が残留すると、第1光ファイバ挿入孔21内への更なる充填が困難となる。これを回避するため、接着剤24の塗布後に、例えば、排気装置(図示せず)を用いてスリーブ20の周囲を排気する。この排気により、第1光ファイバ挿入孔21内に残存した空気は、外部との差圧によって膨張し、その結果、塗布された接着剤24を通じて外部に排出される。排出によって生じた空隙には塗布された接着剤24が埋まる。以上の塗布及び排気を適宜繰り返すことで、第1光ファイバ挿入孔21内に接着剤24を充填することができる。第1光ファイバ挿入孔21の開口部に接着剤24を塗布するので、接着剤24は図4に示すように略円錐状となり、被覆部14とスリーブ20とを接合する。
【0031】
このような接着剤24の塗布・充填によって、接着剤24は起伏部15を覆う。このとき、接着剤24は起伏部15に形成された微小な凹凸に隙間無く密着する。この密着によって接着剤24と光ファイバ10との接触面積が大きくなるため、光ファイバ10とスリーブ20の接着度は向上する。
【0032】
従来技術の項でも述べたように、一般的に被覆部14はその平坦度及び材質の特性から接着剤に対する接着性が弱い。これを補うように、本発明では、起伏部15を設けて接着剤24との大きな接触面積を確保することで、光ファイバ10に対する接着剤24の密着度を向上させている。従って、光ファイバ10からの接着剤24の剥離は抑制される。
【0033】
本発明では、起伏部15の深さを被覆部14の直径の10%程度までに制限している。従って、被覆部14の本来の機械的強度は損なわれず、光ファイバ10が張力又はねじれ等による外力を受けても、光ファイバ10とスリーブ20とを強固に接合することができる。従って、起伏部15等における亀裂の発生が抑制され、光ファイバ10の断線が回避できる。
【0034】
また、起伏部15が溝状に形成された場合には、起伏部15において接着剤24が楔状に固化する。楔状に固化した接着剤24は、光ファイバ10がスリーブ20から抜け出るのを防止できる。
【0035】
以下、本発明に係る起伏部の変形例について述べる。下記の変形例において、上記と重複する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0036】
本発明に係る光ファイバ10では、図5に示すように、光ファイバの周方向において間隔をおいて起伏部15を複数設けてもよい。この図の例では、2個の起伏部15が中心軸Oに直交する同一平面上で該中心軸Oを挟むように対向して設けられている。この場合、図5の上下において接着剤24の高い密着性が得られることから、中心軸Oの周りの光ファイバ10のねじれをより効果的に防止できる。
【0037】
なお、起伏部15を光ファイバ10の周方向の異なる位置に複数設ける場合、中心軸Oの延伸方向では互いの位置が異なってもよい。即ち、当該延伸方向において離間する複数の起伏部15を中心軸Oから見た場合、それぞれの周方向における位置は互いに異なっていてもよい。この場合も接着剤24の密着度は向上し、上記と同一の効果が得られる。
【0038】
また、図6に示すように、起伏部15を中心軸Oの延伸方向に長く延在するように形成してもよい。ただし、当該延伸方向における起伏部15の長さ(幅)は、光ファイバ固定部材の構造(本実施形態では第1光ファイバ挿入孔21)に依存する。このような起伏部を形成した場合にも、接着剤24の密着度は向上し、上記と同一の効果が得られる。
【0039】
本実施形態に係る光ファイバの起伏部の加工法について説明する。変形例の説明と同様に、上記と重複する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0040】
上述の通り、起伏部15は被覆部14の表面よりも粗く形成される。この起伏部15の粗面処理には、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法を採用できる。
【0041】
図7(a)は、複数の光ファイバ10をレーザ加工する時の工程図である。この図に示すように、少なくとも1本の光ファイバ10を所定の方向S1に固定し、この方向と垂直な方向S2にレーザLAをスキャンさせる。光ファイバ10の周方向に沿って起伏部15を形成するため、光ファイバ10を適宜回転させてもよい。レーザLAは被覆部14上に集光され、被覆部を局所的に蒸発させるだけの十分なパワーを有しており、例えばCO2レーザなどのパルスレーザが利用される。レーザ加工では、レーザLAを集光できるので、微小な凹凸を有するような粗面処理が容易である。また、レーザ加工では被覆部14が一時的に溶解するので、亀裂の起因となるような鋭利な凹凸ができにくく、被覆部14の機械的強度を維持できる。また、複数の光ファイバ10を一度に加工できるので大量生産に適する。
【0042】
図7(b)は、塑性加工工具による塑性加工の一例を示す工程図である。この例では、塑性加工工具として金型Kが用いられる。金型Kは、起伏部15の形成時に被覆部14の融点以上に加熱される。図7(b)に示すように、金型Kは、被覆部14への押し当て面(刃先)30に微小な湾曲面31を有する。この湾曲面31の曲率(半径)は、被覆部14の半径から該半径の80%までの値を有することが望ましい。換言すれば、この曲率は、被覆部14の半径乃至該半径から該被覆部14の直径の10%を減じた値をとることが望ましい。また、金型Kの長手方向(即ち図7(b)の方向S2)において湾曲面31に沿った長さは、被覆部14の半周以下である。さらに、接着剤24との接触面積をより大きくするための微小な凹凸を、湾曲面31上に設けてもよい。
【0043】
起伏部15の形成時には、光ファイバ10を支持台B上で所定の方向S1に配置し固定する。次に、光ファイバ10の上方に、方向S1と直交する方向S2に沿って金型Kを配置する。その後、金型Kを支持台Bに向けて移動させ、光ファイバ10を挟むように押し当てる。金型Kの押し当て量は被覆部14の直径の10%以下である。即ち、図3に示す深さDを有する起伏部15が形成されるような押し当て量である。金型Kは既に被覆部14の融点以上に加熱されているので、押し当てられた領域は溶融し、図1や図6に示す起伏部15が形成される。その後、金型Kを押し当てた方向と逆の方向に移動させて光ファイバ10から離し、起伏部15の形成工程は終了する。なお、光ファイバ10の周方向に沿って起伏部15を形成するため、光ファイバ10を適宜回転させてもよい。
【0044】
金型等による塑性加工でもレーザ加工と同様の効果が得られる。なお、金型Kの押し当て面30は湾曲面31をもたない単純な平面でもよい。この場合も上記の押し当てによって起伏部15の形成は可能である。
【0045】
図7(c)は、切削加工工具による切削加工の一例を示す工程図である。この例では、切削加工工具としてヤスリCを用いる。この切削加工では、図7(c)に示すように、光ファイバ10は所定の方向S1に配置される。ヤスリCは方向S1に直交する方向S2に沿って、被覆部14を切削し、起伏部15を形成する。この場合、光ファイバ10の周方向に沿って起伏部15を形成するため、光ファイバ10を適宜回転させてもよい。切削深さは被覆部14の直径の10%以下である。切削された面の起伏度はヤスリの粗さに依存するが、何れの粗さにおいても接着剤との接触面積を大きくすることは可能である。ヤスリ等の切削加工工具による切削加工は簡便であり、設備投資に負担を掛けないのでコスト的に有利である。
【0046】
なお、切削加工工具はヤスリの他、カッター等のような先端に刃部を有する工具でもよい。また、砥石等のような研削面を有する研削工具を用いてもよい。このような研削工具による研削加工でも上記の工程に基づく起伏部の形成は可能である。
【0047】
以上、本発明に係る光ファイバに関して、スリーブに固着させた形態を用いて説明した。しかしながら、本発明に係る光ファイバが固着される光ファイバ固定部材は、上記の実施形態に挙げたスリーブに限定されない。即ち、光ファイバ固定部材としては、スリーブや光フェルール、光コネクタなどの光学部材に限られず、回路基板、筐体などを挙げることもできる。本発明に係る光ファイバ固定部材の材質は本実施形態で述べた金属に限られず、ガラス、樹脂等でもよい。
【0048】
さらに、本発明に係る起伏部の位置は光ファイバの先端部に限定されない。例えば、筐体に設けた貫通孔に本発明に係る光ファイバを挿通して固定する場合、当該起伏部は、貫通孔内又はその周囲に位置するように形成される。従って、起伏部の位置は引出される光ファイバの長さに依存することになる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・光ファイバ、11・・・コア、12・・・クラッド、13・・・裸光ファイバ、14・・・被覆部、15・・・起伏部、20・・・端末処理部材(スリーブ)、21・・・第1光ファイバ挿入孔、22・・・第2光ファイバ挿入孔、23・・・封止部材、24・・・接着剤、110・・・光ファイバ(従来)、113・・・裸光ファイバ(従来)、114・・・被覆部(従来)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバであって、その一部が光ファイバ固定部材に固定されるものにおいて、
光ファイバの被覆部に形成され、接着剤が塗布された場合には該接着剤を介して前記光ファイバ固定部材との接着度を高める少なくとも1本の帯状の起伏部を備え、
前記起伏部は前記光ファイバの周方向の少なくとも一部に延在していることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記起伏部は該被覆部の表面よりも内方に位置することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記起伏部は前記光ファイバの先端部に位置することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記起伏部は前記光ファイバの周方向に沿って複数設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光ファイバの周方向において、前記起伏部の長さは前記被覆部の半周よりも短いことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記起伏部は、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法によって粗面処理される表面を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記被覆部はポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ナイロン系のうちの何れか1つからなるエラストマによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
光ファイバの製造方法であって、
被覆部を有する光ファイバを所定の方向に固定する工程と、
前記光ファイバの周方向に、接着剤を介して光ファイバ固定部材との接着度を高める少なくとも1本の帯状の起伏部を形成する工程と
を有することを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項9】
前記起伏部の形成工程において、該起伏部は該被覆部の表面よりも内方に位置するように形成されることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項10】
前記起伏部は前記光ファイバの先端部に位置することを特徴とする請求項9に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項11】
前記起伏部の形成工程において、レーザ加工、塑性加工工具による塑性加工、切削加工工具による切削加工、研削加工工具による研削加工のうちの何れか1つの加工法を用いることを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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