説明

光ポインティング装置およびそれを備える電子機器、並びに、導光体および導光方法。

【課題】光ポインティング装置の部品点数、および、各部品の組み立てまたは貼り付け等の工程数を少なくする。
【解決手段】接触面11より入射した光を水平方向へ導光すべく反射する折り曲げ素子12と、該反射した光をさらに水平方向に対して反対方向に反射するとともに結像する結像素子14と、結像素子14にて結像した光を出射部より出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置に関し、より詳細には、携帯電話等の携帯情報端末に搭載可能な光ポインティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯情報端末では、一般的に、情報を入力するユーザーインターフェースとしてキーパッドが採用されている。キーパッドは、通常、数字及び文字を入力するための複数個のボタンと方向ボタンとで構成されている。また、近年では携帯情報端末のディスプレイ部にグラフィックなどの表現が可能となることに伴い、ユーザに対する情報の表示方式として、ディスプレイ部を2次元で用いるGUI(Graphical User Interface)が採用されるようになった。
【0003】
このように携帯情報端末が高機能化し、コンピューターと同等の表示機能を備えることにより、メニューキーおよびその他の機能キーを方向キーとして用いる、従来の携帯情報端末の入力手段では、GUIで表現されたアイコン等の選択には適しておらず、不便であった。そのため、携帯情報端末においても、コンピューターに用いられているマウスやタッチパッドと同様の操作性を有するポインティング装置が求められるようになった。
【0004】
そこで、携帯情報端末に搭載可能なポインティング装置として、装置に接触する指先等の被写体の模様を撮像素子で観察し、接触面における被写体の模様の変化を抽出することによって、被写体の動きを検知する光ポインティング装置が提案されている。具体的に、光ポインティング装置では、接触面上の被写体に光を照射し、被写体の模様をレンズで撮像素子に結像させ、模様の変化を検出することで被写体の動きを検知している。
【0005】
光ポインティング装置は、接触面上の被写体から反射された光を撮像素子に結像させるために、接触面から撮像素子までの距離(被写体からの反射光の光路長)をある程度必要とする。そのため、接触面の下部にレンズおよび撮像素子を配置する光ポインティング装置では、接触面に対して垂直方向の長さを短く設計することができなかった。光ポインティング装置の垂直方向の長さは、装置の厚みである。つまり、上述の光ポインティング装置では、装置の薄型化が困難であった。しかしながら、携帯情報端末では、装置の厚みが薄いことが求められるため、光ポインティング装置においてもその厚みである垂直方向の長さを短くすることが求められる。
【0006】
このような要求を満たすため、接触面の直下にプリズム等の折り曲げ光学素子を配置し、被写体からの反射光を水平方向に折り曲げて撮像素子に結像する光ポインティング装置が提案されている。例えば、特許文献1には、光を垂直経路から水平経路に変換するプリズムと集光レンズと発光手段を備えるホルダーとが組み立てて構成されている光ポインティング装置が開示されている。また、特許文献2には、被写体から反射された光を水平方向に反射する反射鏡と、水平の光経路上に対向して垂直に設置された集光レンズおよびイメージセンサとを備える光ポインティング装置が開示されている。さらに、特許文献3には、が開示されている。
【0007】
このように、特許文献1〜3に記載の光ポインティング装置は、光路を水平方向に折り曲げているため、光路が長くなっても装置の垂直方向の長さ(厚み)には影響しない。このため、光路を長く取りながら垂直方向の長さが短い光ポインティング装置を実現できる。つまり、光ポインティング装置の薄型化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−226224号公報(2008年9月25日公開)
【特許文献2】特表2008−507787号公報(2008年3月13日公開)
【特許文献3】特表2008−510248号公報(2008年4月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術は、光ポインティング装置を構成する、外部の衝撃等から保護するカバー部、被写体からの光を水平方向に反射するプリズム(反射鏡)、光を撮像素子に結像(集光)する結像(集光)レンズ部などが複数の部品で構成されているため、光ポインティング装置の製造工程において上記複数の部品の組み立てまたは貼り付け等の工程を要する。組み立てまたは貼り付け等の工程において、各部品の位置ずれによる組立公差が発生する可能性があるため、組み立てまたは貼り付け等の工程数が増加すると、光ポインティング装置の検知精度を高く維持することが困難になる。
【0010】
また、光ポインティング装置の部品点数が増加すると、光ポインティング装置のコストが高くなるという問題がある。さらに、部品点数が増加することや、各部材において組み立てのための構造が形成されることにより、光ポインティング装置を薄型化することが困難となる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数、および、各部品の組み立てまたは貼り付け等の工程数が少ない、薄型の光ポインティング装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る導光体は、前記課題を解決するために、入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射する反射部と、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像する結像反射部とを備え、該結像反射部にて結像した光を出射部より出射することを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る導光方法は、入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射し、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像し、該反射するとともに結像した光を出射部より出射することを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、導光体が反射部と結像反射部とを備えているため、導光体と反射部と結像反射部とが1つの部品で構成することができる。よって、導光体を備える光ポインティング装置を構成する部品点数を削減することができる。よって、光ポインティング装置の製造工程において、組立工数を削減することができる。それゆえ、各部品の組み立て時に発生する組立誤差を抑えることができる。また、導光体を成形する金型を高精度で作成することにより、反射部および結像反射部を高精度に製造することができ、且つ、入射部、反射部および結像反射部の位置関係もばらつき無く高精度に配置することができる。従って、前記導光体を備える光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る光ポインティング装置は、前記課題を解決するために、被写体を照射する光源と、該被写体からの反射光を入射部より入射し、該入射した光を導光して出射部より出射する導光体と、該導光体から出射した光を受光する撮像素子とからなる光ポインティング装置であって、前記導光体は、前記入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射し、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像し、該反射するとともに結像した光を前記出射部より出射することを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、前記導光体は、前記入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射し、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像し、該反射するとともに結像した光を前記出射部より出射する。すなわち、導光体とは別に、導光方向へ導光すべく反射する部品や前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像する部品を設ける必要がない。そのため、光ポインティング装置を構成する部品点数を削減することができる。よって、光ポインティング装置の製造工程において、組立工数を削減することができる。それゆえ、各部品の組み立て時に発生する組立誤差を抑えることができる。従って、光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る光ポインティング装置は、前記導光体は前記撮像素子を保護するためのカバー部と一体で形成されていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、カバー部と、導光体とが一体で成形されているため、光ポインティング装置を構成する部品点数を削減することができる。よって、光ポインティング装置の製造工程において、組立工数を削減することができる。それゆえ、各部品の組み立て時に発生する組立誤差を抑えることができる。また、カバー部を成形する金型を高精度で作成することにより、導光体を高精度に製造することができる。従って、光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0019】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、前記光源および前記撮像素子は、基板上に配置されて、それぞれ透明樹脂で樹脂封止されているものであることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、前記光源、前記撮像素子および前記基板が一体で形成されている。そのため、光ポインティング装置を構成する部品点数を削減することができる。よって、光ポインティング装置の製造工程において、組立工数を削減することができる。それゆえ、各部品の組み立て時に発生する組立誤差を抑えることができる。従って、光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0021】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、前記光源および前記撮像素子をそれぞれ樹脂封止した透明樹脂は、それぞれ略直方体の形状であり、前記光源を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面は、前記基板の一方の側面と同一平面上に配置され、前記撮像素子を樹脂封止した他の透明樹脂の一方の側面は、前記基板の他方の側面と同一平面上に配置され、前記透明樹脂の上表面と、前記基板の両側面と、それと同一平面の前記光源および前記撮像素子を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面と、を前記導光体の位置決めの基準として、前記カバー部を前記基板の上側に配置することが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、前記透明樹脂の上表面と、前記基板の両側面と、それと同一平面上に配置されている、前記光源および前記撮像素子を樹脂風刺した透明樹脂の一方の側面と、を導光体の位置決めの基準として、前記導光体を前記基板の上側に配置している。そのため、光源、撮像素子、基板および導光体のそれぞれの位置関係を高精度に配置することができる。従って、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る導光体は、前記出射部がある前記導光体の裏面には凹部が形成されており、前記反射部は、前記凹部に形成されている斜面を有していることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、反射部は、前記導光体の出射部がある裏面に位置する、斜面を有する凹部である。そのため、前記導光体を成形する金型の形状がシンプルになるため、前記導光体の製造が容易であり、また、導光体の製造コストを削減することが容易である。
【0025】
また、本発明に係る導光体は、前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、前記反射部は、反射型回折素子であることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、前記反射部は、前記導光体の前記出射部がある裏面に位置する、反射型回折素子である。すなわち、前記導光体に前記反射部を成形するための凹部を形成することなく、前記反射部の機能を含む前記導光体を成形することができる。よって、凹部の前記反射部を含む前記導光体より、前記導光体の厚みを均一にすることができ、前記導光体の強度を上げながら、前記導光体の薄型化が実現できる。
【0027】
また、本発明に係る導光体は、前記出射部がある前記導光体の裏面には凹部が形成されており、前記結像反射部は、前記凹部に形成されている、導光方向の面の曲率と導光方向と直交する面の曲率とが異なるトロイダル面を有していることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、前記結像反射部が、前記導光体の前記出射部がある裏面の凹部に形成されているトロイダル面を有している。そのため、導光方向と、導光方向と直交する方向との焦点距離の違いで発生する非点収差(アス)を良好に補正することができる。よって、前記結像反射部の結像性能があがり、前記撮像素子が被写体の像を鮮明に撮像することができる。
【0029】
また、本発明に係る導光体は、前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、前記反射部は、反射型のフレネルレンズであることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、前記反射部は、前記導光体の前記出射部がある裏面に位置する、反射型のフレネルレンズである。すなわち、前記導光体に前記反射部を成形するための凹部を形成することなく、前記反射部の機能を含む前記導光体を成形することができる。よって、凹部の前記反射部を含む前記導光体より、前記導光体の厚みを均一にすることができ、前記導光体の強度を上げながら、前記導光体の薄型化が実現できる。
【0031】
また、本発明に係る導光体は、前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、前記反射部は、反射型のホログラムレンズであることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、前記反射部は、反射型のホログラムレンズである。そのため、通常のレンズで補正しきれない収差を補正することができる。よって、前記反射部の反射光を反射する前記結像反射部の結像性能があがり、前記撮像素子が被写体の像を鮮明に撮像することができる。
【0033】
また、本発明に係る導光体は、さらに、前記反射部で反射した光を全反射して前記結像反射部に出射する反射膜を備え、前記反射膜は、前記入射部がある前記導光体の表面の一部であり、前記入射部以外の箇所に位置するものであることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、前記反射膜は、前記入射部がある前記導光体の表面の一部であり、前記入射部以外の箇所に位置し、前記反射部で反射した光を全反射するものである。前記入射部がある前記導光体の表面は、被写体が接触する可能性があり、前記入射部以外の箇所に被写体が接しており、その被写体が接している箇所で前記反射部で反射した光を反射させると、前記反射部で反射した光が前記導光体の表面で反射するのではなく、被写体の表面で反射することになる。前記入射部以外の箇所において、被写体の表面で反射することにより、前記反射部で反射した光の経路にずれが生じる。よって、前記反射部で反射した光を全反射する反射膜を配置することによって、前記反射部で反射した光の経路のずれが発生することを抑えることができる。従って、前記結像反射部の結像性能があがり、前記撮像素子が被写体の像を鮮明に撮像することができる。
【0035】
また、本発明に係る導光体は、前記入射部より入射した光の波長は、非可視波長であり、前記反射膜は、可視波長の光を透過するものであることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、前記反射膜は、可視波長の光を透過するため、導光体の表面に形成された反射膜を肉眼では視認することができない。よって、導光体の表面に反射膜を形成する場合であっても、導光体の外観に影響がない。
【0037】
また、本発明に係る導光体は、前記入射部より入射した光が前記出射部より出射するまでの間、前記入射部より入射した光の経路は、前記導光体の中を通っていることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、前記入射部より入射した光が前記出射部より出射するまでの間、前記入射部より入射した光の経路は、前記導光体の中を通っている。つまり、前記被写体からの反射光が前記入射部を透過して前記導光体の内部に入射してから、前記反射部で反射し、前記結像反射部で反射して、前記出射部より出射するまでの間、前記入射部より入射した光は、1つの媒質内を伝播している。よって、異なる媒質の境界で発生する散乱反射および減衰を防ぐことができる。
【0039】
また、本発明に係る導光体は、前記入射部より入射した光は、前記入射部がある前記導光体の表面と前記出射部がある前記導光体の裏面との間で反射して、前記出射部より出射することが好ましい。
【0040】
上記構成によれば、前記入射部より入射した光は、前記入射部がある前記導光体の表面と前記出射部がある前記導光体の裏面との間で反射して、前記出射部より出射する。そのため、前記入射部より入射してから、前記出射部より出射するまでの光の経路を長く設計することができる。
【0041】
また、本発明に係る電子機器は、前記光ポインティング装置を備えることが好ましい。
【0042】
上記の構成によれば、前記電子機器は、薄型化が容易な前記光ポインティング装置を備えている。光ポインティング装置を搭載する場合、光ポインティング装置の厚みが電子機器の厚みに大きく影響するため、前記光ポインティング装置を備えていても、電子機器の薄型化が実現できる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明に係る導光体は、入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射する反射部と、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像する結像反射部とを備え、該結像反射部にて結像した光を出射部より出射することを特徴としている。
【0044】
従って、前記導光体を備える光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図2】反射膜における光の波長に対する透過率および反射率を示す図である。
【図3】接触面、結像素子および撮像素子の位置関係を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図5】第2の実施形態における回折素子の具体的な形状および回折素子の溝パターンを示す図である。
【図6】第2の実施形態における回折素子の具体的な形状を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置を搭載する携帯電話機の外観を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の各実施形態について、光源モジュールとしてLEDを用いた光ポインティング装置を例として説明する。本発明の光ポインティング装置は、指先等の被写体に対して光を照射し、該被写体から反射された光を受光することによって、被写体の動きを検知するものである。以下、各実施形態の光ポインティング装置の構成について具体的に説明する。また、同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0047】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について図1に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態の光ポインティング装置30の概略断面構造図である。図示のように、光ポインティング装置30は、基板部26およびカバー部(導光体)24を備える。基板部26は、回路基板21、光源16、撮像素子15および透明樹脂20・20’から成る。また、透明樹脂20は、レンズ部27を備える。カバー部24は、接触面(入射部)11、傾斜面(斜面)13を形成する折り曲げ素子(反射部)12、結像素子(結像反射部)14および反射面(反射膜)17・18を含む。カバー部24の接触面11に接触している被写体10は、指先等の被写体であり、光ポインティング装置30が動きを検知する対象物である。なお、ここでは光ポインティング装置30に対する被写体10の状態をわかりやすくするために、光ポインティング装置30に対して便宜的に小さく記載している。
【0048】
ここで、光ポインティング装置30の厚み方向(図1の縦方向)をZ軸とし、光ポインティング装置30の幅方向(図1の横方向)をY軸とする。光ポインティング装置30の下部から上部に向かう方向をZ軸の正方向とし、光源16から撮像素子15に向かう方向をY軸の正方向(導光方向)とする。また、Z軸の負方向を垂直方向、Y軸の正方向を水平方向とも称する。なお、図示していないが、光ポインティング装置30の奥行き方向をX軸とし、図1に示す光ポインティング装置30の奥側から手前側に向く方向をX軸の正方向とする。
【0049】
まず、基板部26の構成について説明する。本実施形態では、1つの回路基板21上に光源16および撮像素子15を搭載している。光源16および撮像素子15は、ワイヤボンドまたはフリップチップ実装にて回路基板21と電気的に接続されている。回路基板21には、回路が形成されている。当該回路は、光源16の発光タイミングを制御したり、撮像素子15から出力された電気信号を受けて、被写体の動きを検知したりするものである。回路基板21は、同一材料からなる平面状のものであり、例えば、プリント基板やリードフレーム等から成る。
【0050】
光源16は、カバー部24の接触面11に向けて光を照射するものである。光源16から照射された光Mは、透明樹脂20のレンズ部27を介してカバー部24の折り曲げ素子12により屈折されて進行方向が変換されて接触面11に到達する。つまり、光Mは、接触面に対して斜め方向から(接触面に対して或る入射角で)入射する。後述のようにカバー部24は、空気よりも屈折率が大きい材質であるため、接触面11に到達した光Mは、接触面11上に被写体10が無い場合、その一部が接触面11を透過し、残りの一部が接触面11で反射する。このとき、光Mの接触面11に対する入射角が全反射の条件を満たす場合、光Mは、接触面11を透過せず、全て接触面11で反射しカバー部24内に向かう。一方、接触面11上に被写体10がある場合、光Mは、接触面11と接している被写体10の表面で反射し、カバー部24に入射される。光源16は、例えばLED等の光源で実現され、特に高輝度の赤外発光ダイオードで実現されることが好ましい。
【0051】
撮像素子15は、光源16が照射した、被写体10で反射された光(L1〜L3(以下、光L1〜L3を総称して、光源16が照射した、被写体10で反射された光を光Lと称する))を受光し、受光した光に基づいて接触面11上の像を結像し、画像データに変換するものである。具体的に、撮像素子15は、CMOSやCCD等のイメージセンサである。撮像素子15は、不図示のDSP(Digital Signal Processor:算出部)を含み、受光した光をDSPに画像データとして取り込む。撮像素子15は、回路基板21の指示に従って、接触面11上の像を一定の間隔で撮影し続ける。
【0052】
接触面11上に接している被写体10が移動した場合、撮像素子15が撮影する画像は、その直前に撮影した画像とは異なる画像となる。撮像素子15は、DSPにおいて、撮影した画像データとその直前の画像データとの同一箇所の値をそれぞれ比較し、被写体10の移動量および移動方向を算出する。すなわち、接触面11上の被写体10が移動した場合、撮影した画像データは、その直前に撮影した画像データに対して所定量ずれた値を示す画像データである。撮像素子15は、DSPにおいて、該所定量に基づいて被写体10の移動量および移動方向を算出する。撮像素子15は、算出した移動量および移動方向を電気信号として回路基板21に出力する。なお、DSPは、撮像素子15内ではなく、回路基板21に含まれるものであってもよい。その場合、撮像素子15は、撮像した画像データを順番に回路基板21に送信する。
【0053】
撮像素子15の処理をまとめると、撮像素子15は、接触面11上に被写体10が無い場合、接触面11の像を撮像する。次に、接触面11上に被写体10が接触すると、撮像素子15は、接触面11と接している被写体10の表面の像を撮像する。例えば、被写体10が指先の場合、撮像素子15は、指先の指紋の像を撮像する。ここで、撮像素子15が撮像した画像データは、接触面11上に被写体10が無いときの画像データと異なる画像データとなっているため、撮像素子15のDSPは、接触面11上に被写体10が接触していることを示す信号を回路基板21に送信する。そして、被写体10が移動すると、DSPが直前に撮像した画像データと比較して、被写体10の移動量および移動方向を算出し、算出した移動量および移動方向を示す信号を回路基板21に送信する。
【0054】
光源16および撮像素子15は、透光性樹脂によって樹脂封止されており、周囲に透明樹脂20・20’が形成されている。透明樹脂20・20’の形状は、略直方体である。ただし、透明樹脂20には、透明樹脂20の上表面(天面)に半球状のレンズ部27が形成されている。レンズ部27は、光源16の上方に位置し、光源16から照射された光Mを集光するものである。透明樹脂20・20’の底面は、回路基板21の上表面と密着して接しており、光源16および撮像素子15にそれぞれ密着する凹部が形成されている。透明樹脂20のY軸の負側の側面および透明樹脂20’のY軸の正側の側面は、それぞれ回路基板21の側面と同一平面を形成している。透光性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0055】
このように、回路基板21上に搭載された光源16および撮像素子15がそれぞれ透光性樹脂によって樹脂封止されているため、回路基板21、光源16、撮像素子15および透明樹脂20・20’が一体となっている基板部26が形成されている。そのため、光ポインティング装置30の部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。よって、光ポインティング装置30の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。また、光源16および撮像素子15は、それぞれ別々に透明樹脂20および20’で封止されている。そのため、光源16から照射された光Mが透明樹脂内部を伝播して撮像素子15に漏れこむことを防ぐことができる。つまり、迷光が撮像素子15に入射することを防ぐため、光ポインティング装置30の迷光による誤動作を防ぐことができ、被写体10を高精度に検知することができる。
【0056】
次に、カバー部24の構成について説明する。カバー部24は、光源16および撮像素子15などの光ポインティング装置30を構成する各部・各素子を保護するものである。カバー部24は、基板部26の上側に位置し、基板部26の側面および上表面に密着して接している。カバー部24のZ軸の負側の表面であって、基板部26上に搭載され光ポインティング装置30として形成されているときに外部に露出していない表面部分を、カバー部24の裏面と称する。換言すると、カバー18の表面であって、基板部26に対向する面を裏面とする。すなわち、カバー部24の裏面の一部は、基板部26の側面および上表面と密着して接している。カバー部24の底面25は、基板部26の底面と同一平面を形成している。カバー部24の上表面とカバー部24の底面25および基板部26の底面とが平行であり、カバー部24の両側面がカバー部24の上表面、並びに、カバー部24の底面25および基板部26の底面に対して垂直な面を形成している。すなわち、光ポインティング装置30が略直方体の形状である。ただし、この形状に限るものではなく、カバー部24の上表面とカバー部24の底面25および基板部26の底面とが平行であればよく、カバー部24の両側面がカバー部24の上表面、並びに、カバー部24の底面25および基板部26の底面に対して垂直な面を形成していなくてもよい。例えば、図1に示すような光ポインティング装置30の断面図において、光ポインティング装置30の形状が台形状であってもよい。つまり、カバー部24の側面が平面であれば、カバー部24の上表面(光ポインティング装置30の天面)の長さと、カバー部24の底面25および基板部26の底面の合計の長さ(光ポインティング装置30の底面の長さ)とが異なっていてもよい。
【0057】
接触面11は、被写体10が光ポインティング装置30と接する面である。接触面11は、カバー部24の上表面であって、光源16の上方に位置する。
【0058】
折り曲げ素子(プリズム)12は、カバー部24の一部を構成しており、光源16の上方、且つ、接触面11の下方に位置し、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部に形成される。折り曲げ素子12には、傾斜面13が形成されており、該傾斜面13とカバー部24の上表面とがなす狭角を傾斜角度θとする。折り曲げ素子12は、光源16から照射された光Mを傾斜面13で屈折させて、被写体10に向かうように光Mの経路を変換するものである。また、折り曲げ素子12は、被写体10から反射された光Lを傾斜面13で全反射させて、カバー部24の内部であって、Y軸の正方向に光Lの経路を変換するものである。換言すると、折り曲げ素子12は、被写体10から反射されて接触面11よりカバー部24内部に入射した光を水平方向へ導光すべく反射するものである。傾斜面13で全反射された、被写体10から反射された光Lは、後述の反射面17に向かう。このように、折り曲げ素子12の傾斜面13は、光Mを透過し、光Lを全反射するものである。そのため、カバー部24には、光源16の上方であって、カバー部24と基板部26との間の空間の屈折率より大きい屈折率である材質が用いられる。例えば、カバー部24には、屈折率が1.5程度の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を用いて、上記空間は空気層とすればよい。つまり、折り曲げ素子12の傾斜面13には、光Lを全反射するために、アルミ反射膜などを蒸着していない。
【0059】
結像素子(レンズ)14は、被写体10からの反射光Lを反射して、撮像素子15上に被写体10の像を結像するものである。具体的には、折り曲げ素子12によって水平方向に反射された光を水平方向に対して反対方向(Y軸の負方向)に反射するとともに結像するものである。結像素子14にて結像した光は、カバー部24を出射して撮像素子15に入射する。ここで、結像素子14にて結像した光が撮像素子15に向かって出射する箇所を出射部と称する。出射部は、カバー部24の裏面の一部である。結像素子14は、カバー部24の一部を構成しており、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部に形成される。結像素子14には、直交する2方向の曲率が異なるトロイダル面が形成されている。結像素子14は、このトロイダル面で反射光Lを撮像素子15に結像するように反射している。結像素子14において効率的に光Lを反射させるために、結像素子14のトロイダル面には、金属(例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜など)の反射膜を蒸着させる。
【0060】
反射面17は、傾斜面13で全反射された光Lを結像素子14に入射させ、結像素子14から反射された光Lを撮像素子15に入射させるために、光Lを反射するものである。反射面17は、撮像素子15の上方であって、カバー部24の上表面に位置する。反射面17は、カバー部24の上表面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面17を形成する反射膜は、外部に露出しており使用者によく見えるため、外観上、できるだけ目立たない膜とすることが望ましい。例えば、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、反射面17を形成する反射膜は、図2(a)に示す特性を有する赤外線反射膜であればよい。図2(a)は、各波長における透過率および反射率を示す図であり、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率および反射率(%)が示されている。図示の点線が透過率を示し、実線が反射率を示す(以下、図2(b)および(c)も同様である)。反射膜の具体例として、反射面17を形成する反射膜は、光源16から照射された800nm以上の波長帯の赤外光を反射し、800nm以下の可視波長帯の光を透過するものであればよい。このように、光源16が照射する光の波長と、反射面17を形成する反射膜の反射率および透過率の特性を適宜設定することによって、被写体10からの反射光Lを効率的に反射し、且つ、外観上は目立たない反射面17を形成することができる。
【0061】
また、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、カバー部24は、図2(b)に示す特性を有する材質で形成されることが好ましい。具体的には、カバー部24の材質を赤外光のみを透過する可視光吸収型のポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂にすればよい。このような材質でカバー部24を形成することによって、カバー部24の外部から進入してくる不要光のうち、可視光成分をカバー部24で遮断することができる。そして、上述のように、赤外光を反射する反射面17を形成することによって、上記不要光のうち、赤外光成分を反射面17で遮断することができる。光ポインティング装置30に入射する不要光を遮断することによって、該不要光による誤動作を防ぐことができる。
【0062】
さらに、光ポインティング装置30の表面である、カバー部24の表面に色目を付ける場合、例えば、カバー部24の上表面および反射面17の上表面に、図2(c)に示すような所定の色(図示の例では、緑色)の波長帯のみを反射し、それ以外の波長を透過する特性を有する材料でコートすればよい。このような特性を有する材料でカバー部24の上表面および反射面17の上表面をコートすることによって、光ポインティング装置30の光学特性を損ねることなく、光ポインティング装置30の表面に所望の色を付けることができる。
【0063】
反射面18は、結像素子14から反射されて反射面17で反射された光Lを再度反射面17に向けて反射するものである。反射面18は、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面に位置する。反射面18は、カバー部24の裏面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面18を形成する反射膜は、効率的に光を反射するものが好ましい。例えば、反射面18は、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜などの金属を蒸着して形成される。
【0064】
ここで、再度、光源16から照射された光が被写体10を反射して撮像素子15に入射する経路を説明する。まず、光源16から照射された光Mが、折り曲げ素子12の傾斜面13で屈折透過されて、接触面11に到達する。接触面11上に被写体10がある場合、被写体10の接触面11に接している表面上で、光源16から照射された光Mが散乱反射する。被写体10の表面で反射された光Lは、折り曲げ素子12の傾斜面13で全反射されて、進路がY軸の正方向に変わる。傾斜面13で全反射された光Lは、反射面17で反射し、結像素子14に到達する。そして、光Lは、結像素子14で折り返し反射されて、反射面17、反射面18、反射面17で次々と反射されて撮像素子15に入射する。
【0065】
このとき、光源16から照射されて、被写体10を反射して撮像素子15に入射する光Lのうち、撮像素子15の中央に入射する光(接触面11の中央に位置する被写体10で反射する光)をL2とし、撮像素子15のY軸の正方向側の端部に入射する光(接触面11のY軸の負方向側の端部に位置する被写体10で反射する光)をL1とし、撮像素子15のY軸の負方向側の端部に入射する光(接触面11のY軸の正方向側の端部に位置する被写体10で反射する光)をL3とする。上述のように、光Lを反射して撮像素子15に結像する結像素子14を用いることによって、光L1、L2およびL3が撮像素子15に到達するまでの各光路長の差を小さく抑えることができる。そのため、撮像素子15におけるY軸方向の各光L1、L2およびL3の焦点ずれが発生しにくくすることができる。よって、撮像素子15における結像性能が向上し、被写体10の像を鮮明に取得することができる。
【0066】
本実施形態において、接触面11と撮像素子15の表面を平行に配置しながら、各光L1、L2およびL3の光路長の差を小さく抑えることができる理由について、図3に基づいて説明する。図3は、接触面11、結像素子14(または結像素子14a)および撮像素子15の位置関係を模式的に示す図である。図3は、接触面11の中心軸と結像素子14(または結像素子14a)の中心軸とがずれている場合の各光L1、L2およびL3の光路を示している。図3(a)は、本実施形態のように、光Lを反射する反射型レンズである結像素子14を用いた場合を示し、同図(b)は、光Lを透過する透過型レンズである結像素子14aを用いた場合を示す図である。
【0067】
図3(a)に示すように反射型レンズの場合、接触面11の中心軸(接触面11の中心を通る垂線)に対してレンズ中心軸を平行ではなく、傾けて結像素子14を配置する場合であっても、撮像素子15の表面を接触面11と平行に設定しながら、各光L1、L2およびL3における接触面11から撮像素子15の表面までの光路長の差を小さくすることができる。一方、図3(b)に示すように透過型レンズの場合、接触面11の中心軸に対して結像素子14aのレンズ中心軸を傾けて配置すると、各光L1、L2およびL3の接触面11から撮像素子15の表面までの光路長の差を小さくするためには、接触面11と撮像素子15の表面とを平行ではなく、交差して配置する必要がある。そのため、透過型レンズの場合、光ポインティング装置30の薄型化が困難となる。すなわち、接触面11の中心軸からレンズ中心軸を傾けて結像素子14を配置する場合、結像素子14として透過型レンズより反射型レンズを用いる方が、上記光路長の差を小さくしながら、光ポインティング装置30の薄型化を図ることが容易である。
【0068】
上述のように、本実施形態では、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14がカバー部24と一体で成形されている。そのため、光ポインティング装置30の部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。また、カバー部24を成形する金型を高精度で作成することにより、折り曲げ素子12の傾斜面13および結像素子14を高精度に製造することができ、且つ、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14の位置関係もばらつき無く高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。
【0069】
従来のように、接触面、折り曲げ素子、結像素子などが別部品であって、これらの部品を組み立てる場合、各部品間の接合箇所に、組み立て用のアタリ面や嵌合形状等の形状を形成する必要があった。また、各部品の相対的な位置関係を調整するための空間的なマージンを確保しておく必要があった。しかしながら、本願のように、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14をカバー部24と一体で成形する場合、上記形状を形成する必要がなく、また、必要最小限の光学面があれば、位置を調整する空間的なマージンも確保する必要がない。よって、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14をカバー部24と一体で成形することにより、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14を含むカバー部24の厚みを小さくすることができる。それゆえ、光ポインティング装置30の厚みを小さくすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、基板部26の側面および上表面をカバー部24の位置決めの基準として、基板部26の上方にカバー部24を組み立てている。そのため、基板部26とカバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30を構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。
【0071】
また、本実施形態では、光Lの経路(被写体10に反射されて撮像素子15を覆う透明樹脂20’に入射するまで)が1つの部材であるカバー部24内に収まっている。つまり、光Lが1つの媒質(導光体)内を伝播している。具体的には、被写体10からの反射光Lがカバー部24に入射してから、折り曲げ素子12による水平方向への全反射、結像素子14による反射、撮像素子15への出射までが1つの媒質であるカバー部24内で行われている。よって、異なる媒質の境界で発生する散乱反射および減衰を防ぐことができるため、撮像素子15が鮮明な像を撮像することができる。それゆえ、光ポインティング装置30が安定的に被写体10を高精度に検知することができる。
【0072】
また、透明樹脂20の側面上およびレンズ部を除く上表面上に遮光性樹脂を樹脂封止してもよい。また、透明樹脂20’の側面上、および被写体からの反射光Lが透過する箇所を除く透明樹脂20’の上表面上に遮光性樹脂を樹脂封止してもよい。遮光性樹脂として、透光性樹脂と同様に、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはABS等の熱可塑性樹脂が用いられる。ただし、遮光性樹脂は、透光性樹脂と異なり、カーボンブラックを含む。このように、透明樹脂20および20’の周囲に遮光性樹脂を樹脂封止することによって、光源16から照射された光が直接、または、被写体10ではない箇所で反射して、撮像素子15に入射することを防ぐことができる。いわゆる、被写体10からの反射光Lではない迷光が撮像素子15に入射することを防ぐことができる。よって、迷光による光ポインティング装置30の誤動作を防ぐことができ、高精度に被写体10を検知することができる。また、遮光性樹脂を透明樹脂20および20’の周囲に樹脂封止する代わりに、透明樹脂20の側面上およびレンズ部を除く上表面上、並びに、透明樹脂20’の側面上、および被写体からの反射光Lが透過する箇所を除く透明樹脂20’の上表面上を黒塗りにしたり、スリガラス状に荒らしたりしてもよい。
【0073】
なお、遮光性樹脂を透明樹脂20、20’の周囲に形成した場合、回路基板21の側面と遮光性樹脂で形成される面とが同一平面になるようにする。また、カバー部24の裏面と遮光性樹脂で形成される面とが密着して接している。そのため、遮光性樹脂で形成される面および回路基板21の両側面を基準として、基板部26の上方にカバー部24を組み立てる。
〔第1の実施形態の実施例〕
次に、上記の第1の実施形態に係る光ポインティング装置における或る1つの実施例について、具体的な設定・数値と共に説明する。カバー部の材質は、屈折率1.59の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂を用いた。折り曲げ素子の傾斜面がなす傾斜角度θを24度にした。また、基板部の上表面と接しているカバー部の裏面からカバー部の上表面までのZ軸上の長さz2を0.5mmとした。この長さz2をカバー部の厚みと称する。接触面の中心から結像素子14のトロイダル面の中心までのY軸上の長さy2を2.8mmとし、接触面の中心から撮像素子の中心までのY軸上の長さy1を1.4mmとした。また、カバー部の上表面から結像素子のトロイダル面の中心までのZ軸上の長さz1を0.38mmとし、カバー部の上表面から撮像素子の上表面までのZ軸上の長さz3を0.62mmとした。結像素子のトロイダル面のX−Y断面を曲率半径:-2.5644773mmの球面とし、Y−Z断面を非球面形状とし、該非球面形状を下記の非球面式(式1)で設計した。
【0074】
【数1】

【0075】
ただし、Kは円錐定数、Rは曲率半径、A、B、C、Dはそれぞれ第2次、第4次、第6次、第8次の非球面係数、Zは光軸から高さYの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さを示す。
K=0
R=-2.75963
A=0.0041215677
B=0.0042418757
C=0.0066844763
D=-0.084438065
また、K、R、A、B、C、Dには、それぞれ上記の数値を用いた。
【0076】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図4に基づいて説明する。図4は、第2の実施形態の光ポインティング装置30aの概略断面構造図である。第2の実施形態では、第1の実施形態における、反射光Lを水平方向に全反射させる折り曲げ素子12に換えて、回折素子12’を配置している。以下では、第2の実施形態において、回折素子12’を配置したことにより、第1の実施形態と異なる点について説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0077】
図4に示すように、基板部26において、透明樹脂20は、Y軸の負側の側面が回路基板21の側面と同一平面ではなく、Y軸の負側の側面が回路基板21の側面よりY軸の正側に位置している。光源16から照射された光Mは、透明樹脂20のレンズ部27を介して、カバー部24の裏面で透過屈折され接触面11に到達する。
【0078】
また、カバー部24は、接触面11、回折素子12’、結像素子14、および反射面17、18を含む。カバー部24は、基板部26の上方に位置し、回路基板21の両側面、透明樹脂20のY軸の負側の側面、並びに、透明樹脂20’のY軸の正側の側面および上表面に密着して接している。
【0079】
回折素子12’は、光源16の上方、且つ、接触面11の下方であって、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する。回折素子12’は、被写体10から反射された光Lを反射させて、カバー部24の内部であって、Y軸の正方向に光Lの経路を変換するものである。回折素子12’で反射された、被写体10から反射された光Lは、反射面17に向かう。
【0080】
回折素子12’の具体的な形状を図5に基づいて説明する。図5(a)は、回折素子12’の断面形状を示す概略構成図である。回折素子12’は、+1次の反射回折光を利用する反射型回折素子である。回折素子12’の形状は、+1次光が強く発生するように、例えば、図5(a)に示すような断面形状がブレーズ形状であることが望ましい。図5(a)に示すブレーズ形状の回折素子12’を用いることにより、光利用効率が上がるとともに、迷光となる0次光、−1次光および高次の回折光を抑えることができる。よって、光ポインティング装置30aにおいて、光学系の結像性能の劣化を防ぐことが可能となる。
【0081】
また、反射率を向上させるために、回折素子12’の外側表面(Z軸の負側の表面)に反射膜al(例えば、アルミ、銀、金、誘電体ダイクロ膜など)を蒸着していることが望ましい。ここで、図5(a)に示すように、回折素子12’のブレーズ形状の溝深さ(Z方向の長さ)をtとする。溝深さtは、+1次回折効率が最大となる深さが望ましい。例えば、カバー部24の屈折率n、光源16が照射する光の波長をλとした場合、t=λ/(2n)とすることが望ましい。
【0082】
また、回折素子12’のブレーズ形状の溝パターンは、図5(b)のように直線の等ピッチであり、回折角をできるだけ大きくするためにできるだけ細かくすることが望ましい。ただし、製造上、金型に対してバイトを用いて溝を切削加工で作製し、成形することが最もコスト的に有利である。そのため、溝を切削加工で精度よく作製できる範囲を考慮した場合、回折素子12’の溝ピッチは0.8〜3.0μmの間で設計することが望ましい。
【0083】
さらに、撮像素子15上に投影する被写体10の像を写す結像性能を向上させるために、回折素子12’の溝パターンを、図5(c)に示すように曲線とすることで、像の歪みを補正することができる。また、図5(d)に示すように回折素子12’の溝ピッチを等ピッチでなく、徐々にピッチが変化するパターンとし、或る一方向にレンズ効果を持たすように回折素子12’を設計しても良い。この場合、撮像素子15上において、X軸方向およびY軸方向で焦点距離が異なることで発生する収差を補正することができる。また、図5(e)に示すように、回折素子12’の溝パターンを曲線かつ不等ピッチのパターンとすることで、像の歪みおよび非点収差(アス)の両方を補正することができる。
【0084】
また、回折素子12’の別の具体例として、回折素子12’に反射型のフレネルレンズを用いてもよい。フレネルレンズの具体的な形状を図6に示す。図6は、図5(a)と同様に、フレネルレンズである回折素子12’の断面形状を示す概略構成図である。図示のように、フレネルレンズの断面形状がブレーズ形状である。また、反射率を向上させるために、回折素子12’の外側表面に反射膜al(例えば、アルミ、銀、金、誘電体ダイクロ膜など)が蒸着されていることが望ましい。回折素子12’にフレネルレンズを用いる場合、カバー部24の一部にプリズムやバルク型レンズを形成するのに比べて、カバー部24の厚みの均一化を図ることができる。そのため、カバー部24の強度を上げながら、光ポインティング装置30aの薄型化が実現できる。
【0085】
また、回折素子12’にホログラムレンズを用いれば、通常のレンズで補正しきれない収差を補正することができるため、結像性能があがり、撮像素子15上に被写体10の像を鮮明に映すことができる。
【0086】
このように、被写体10から反射された光Lを水平方向に反射するために回折素子12’を用いると、カバー部24に折り曲げ素子(プリズム)12を形成するのに比べて、カバー部24の厚みの均一化を図ることができる。そのため、カバー部24の強度を上げながら、薄型化が実現できる。それに加えて、光源16から照射された光を接触面11に対して均一な光強度で照射することができる。
【0087】
また、被写体10からの反射光Lを水平方向に折り曲げる光ポインティング装置(例えば、上記特許文献1、2、3の構成)において、折り曲げ素子12の大きさ、特にZ軸方向の長さが光ポインティング装置の厚みに大きく影響する。つまり、光ポインティング装置を薄型に設計するためには、折り曲げ素子12のZ軸方向の長さを小さくすることが重要である。しかしながら、折り曲げ素子12の大きさは自由に設計できるものではなく、折り曲げ素子12の大きさは接触面11の大きさに依存する。そして、接触面11上の模様を検出するためには、接触面11がある程度の面積を有していなければならない。よって、接触面11の面積を確保しようとすると、必然的に折り曲げ素子12が大きくなり、光ポインティング装置30の厚み(Z軸方向の大きさ)を小さくすることができなかった。
【0088】
第2の実施形態では、折り曲げ素子12の代わりに、折り曲げ素子12よりもZ軸方向の長さを小さくできる回折素子12’を用いることによって、第1の実施形態より光ポインティング装置30aの薄型化を図ることができる。
【0089】
また、第2の実施形態では、回路基板21の両側面、透明樹脂20のY軸の負側の側面、並びに、透明樹脂20’のY軸の正側の側面および上表面を基準として、基板部26の上方にカバー部24を組み立てている。そのため、基板部26とカバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30aを構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30aを実現することができる。
【0090】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について、図7に基づいて説明する。図7は、第3の実施形態の光ポインティング装置30bの概略断面構造図である。第3の実施形態では、第1の実施形態においてカバー部24が備えている反射面18を除去している。つまり、第3の実施形態では、カバー部24は、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14、および反射面17を含む。以下では、第3の実施形態において、反射面18を除去したことにより、第1の実施形態と異なる点について説明する。第3の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0091】
第3の実施形態では、反射面18が無いことによって、第1の実施形態における光Lの経路が異なっている。すなわち、第3の実施形態では、被写体10からの反射光Lは、折り曲げ素子12の傾斜面13で水平方向に全反射されて、反射面17に向かう。そして、光Lは、反射面17で反射されて結像素子14に到達する。光Lは、結像素子14で折り返して反射されて、さらに、反射面17で反射し、撮像素子15に入射する。
【0092】
このように、第3の実施形態では、第1の実施形態に比べて、結像素子14で反射された光Lが撮像素子15に入射するまでにおいて、1回だけ反射面17で反射する。そのため、被写体10からの反射光Lが撮像素子15に入射するまでにおいて、各素子で反射する際の反射率ロスの機会が少なくなり、光利用効率が高くなる。さらに、光Lの光路長を比較的短く設計できることにより、Fナンバーが小さい明るい光学系を実現できる効果がある。
【0093】
なお、第3の実施形態では、上述のように、第1の実施形態から反射面18を除去する場合を説明したが、第2の実施形態に対して適用して、同様に反射面18を除去することも可能である。この場合、回折素子12’の形状および位置、並びに、結像素子14および撮像素子15の位置などを適宜設計することで実現可能である。
【0094】
〔第3の実施形態の実施例〕
次に、上記の第3の実施形態に係る光ポインティング装置における或る1つの実施例について、具体的な設定・数値と共に説明する。カバー部の材質は、屈折率1.59の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂を用いた。折り曲げ素子の傾斜面がなす傾斜角度θを25度にした。また、基板部の上表面と接しているカバー部の裏面からカバー部の上表面までのZ軸上の長さz2を0.54mmとした。接触面の中心から結像素子14のトロイダル面の中心までのY軸上の長さy2を2.75mmとし、接触面の中心から撮像素子の中心までのY軸上の長さy1を2.1mmとした。また、カバー部の上表面から結像素子のトロイダル面の中心までのZ軸上の長さz1を0.43mmとし、カバー部の上表面から撮像素子の上表面までのZ軸上の長さz3を0.60mmとした。結像素子のトロイダル面のX−Y断面を曲率半径:-0.4193264mmの球面とし、Y−Z断面を非球面形状とし、該非球面形状を下記の非球面式(式2)で設計した。
【0095】
【数2】

【0096】
ただし、Kは円錐定数、Rは曲率半径、A、B、C、D、E、F、Gはそれぞれ第2次、第4次、第6次、第8次、第10次、第12次、第14次の非球面係数、Zは光軸から高さYの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さを示す。
K=0
R=-1.2404177
A=-3.6788233
B=40.005615
C=-227.22235
D=-452.94592
E=13006.864
F=-39732.885
G=-35775.58
また、K、R、A、B、C、D、E、F、Gには、それぞれ上記の数値を用いた。
【0097】
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態について、図8に基づいて説明する。図8は、第4の実施形態の光ポインティング装置30cの概略断面構造図である。第4の実施形態では、第1の実施形態におけるカバー部24の結像素子14の形状および配置を変えて、結像素子14’としている。以下では、第4の実施形態において、結像素子14から結像素子14’に変更したことにより、第1の実施形態とは異なる点について説明する。第4の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0098】
カバー部24は、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14’および反射面17、18’を含む。なお、第1の実施形態と異なり、透明樹脂20’の上表面の全面とカバー部24の裏面が密着して接しており、透明樹脂20’(撮像素子15)の上方には、カバー部24の裏面に凹部が形成されていない。
【0099】
結像素子14’は、被写体10からの反射光Lを反射して、撮像素子15上に被写体10の像を結像するものである。結像素子14’は、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の上表面と側面との角に位置する。結像素子14’は、曲面を形成している。つまり、Y軸の正方向側のカバー部24の上表面と側面との角は、R加工されている。結像素子14’において効率的に光Lを反射させるために、結像素子14’のトロイダル面には、金属(例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜など)の反射膜を蒸着させる。
【0100】
反射面17は、傾斜面13で全反射された光Lを反射面18’へ向けて反射させるものであり、結像素子14’から反射されて反射面18’で反射された光Lを撮像素子15に入射させるために、光Lを反射するものである。反射面17は、撮像素子15の上方であって、カバー部24の上表面に位置する。反射面17は、カバー部24の上表面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面17を形成する反射膜は、外部に露出しており使用者によく見えるため、外観上、できるだけ目立たない膜とすることが望ましい。
【0101】
反射面18’は、反射面17で反射された、被写体10からの反射光Lを結像素子14’に向けて反射するものであり、結像素子14’から反射された光Lを反射面17に向けて反射するものである。反射面18’は、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面に位置する。なお、反射面18’のY軸の負側の端部が撮像素子15のY軸の正側の端部の上方にあってもよい。反射面18’は、カバー部24の裏面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面18’を形成する反射膜は、効率的に光を反射するものが好ましい。例えば、反射面18’は、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜などの金属を蒸着して形成される。
【0102】
ここで、光源16から照射された光が被写体10を反射して撮像素子15に入射する経路を説明する。被写体10の表面で反射された光Lは、折り曲げ素子12の傾斜面13で全反射されて、進路がY軸の正方向に変わる。傾斜面13で全反射された光Lは、反射面17、反射面18’と反射して、結像素子14’に到達する。そして、光Lは、結像素子14’で折り返し反射されて、反射面18’、反射面17で次々と反射されて撮像素子15に入射する。
【0103】
第4の実施形態では、第1の実施形態と比較して、結像素子14’をカバー部24の裏面に形成するのではなく、Y軸の正方向側のカバー部24の上表面と側面との角に形成している。そのため、カバー部24の裏面を大きく掘り込む形状にする必要がなくなり、成形によるカバー部24の作製が容易になる。さらに、撮像素子15の上方に位置する、カバー部24の裏面に凹部を形成する必要がないため、カバー部24の厚みの均一化を図ることができる。そのため、カバー部24の強度を上げながら、光ポインティング装置30cの薄型化が実現できる。
【0104】
また、本実施形態では、基板部26の側面および上表面を基準として、基板部26の上方にカバー部24を組み立てている。そのため、基板部26とカバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30cを構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30cを実現することができる。
【0105】
なお、第4の実施形態は、第1の実施形態を変形した例として説明したが、同様に、第2の実施形態にも適用可能である。つまり、第2の実施形態の結像素子14を結像素子14’に、反射面18を反射面18’に換えて、各部・各素子の大きさおよび配置を適宜設計することで同様の効果を奏することができる。さらに、第2の実施形態に適用することにより、カバー部24の裏面に凹部が形成されず、カバー部24の裏面を平面で形成することができる。そのため、カバー部24の強度をさらに上げること、カバー部24と基板部26との組み立てをより高精度に行うこと、および、光ポインティング装置30cのさらなる薄型化を実現することができる。
【0106】
〔第5の実施形態〕
最後に、光ポインティング装置を搭載した電子機器について、図9を用いて説明する。図9は、光ポインティング装置107を搭載した携帯電話機100の外観を示す図である。図9(a)は携帯電話機100の正面図であり、(b)は携帯電話機100の背面図であり、(c)は携帯電話機100の側面図である。図9では、電子機器として携帯電話機である例を示しているがこれに限定されるものではない。電子機器として、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA、ゲーム機、テレビ等のリモコンなどであってもよい。
【0107】
図9に示すように、携帯電話機100は、モニター側筐体101および操作側筐体102を備える。モニター側筐体101は、モニター部105およびスピーカー部106を含み、操作側筐体102は、マイク部103、テンキー104および光ポインティング装置107を含む。携帯電話機100に搭載される光ポインティング装置107は、上述の第1〜4の実施形態で説明した光ポインティング装置30、30a、30b、30cの何れも適用可能である。
【0108】
なお、本実施形態において、光ポインティング装置107は、図9(a)に示すように、テンキー104の上部に配置されているが、光ポインティング装置107の配置方法およびその向きについては、これに限定されるわけではない。
【0109】
スピーカー部106は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部103は音声情報を携帯電話機100に入力するものである。モニター部105は、映像情報を出力するものであり、本実施形態においては、光ポインティング装置107からの入力情報を表示するものである。
【0110】
なお、本実施形態の携帯電話機100は、図9(a)〜図9(c)に示すように、上部の筐体(モニター側筐体101)と下部の筐体(操作側筐体102)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話機100を例として挙げている。携帯電話機100として、折りたたみ式が主流であるため、本実施形態では折りたたみ式の携帯電話機を一例として挙げているのであって、光ポインティング装置107を搭載することができる携帯電話機100は、折りたたみ式に限るものではない。
【0111】
近年、折りたたみ式の携帯電話機100において、折りたたんだ状態で厚みが10mm以下のものも登場してきている。携帯電話機100の携帯性を考慮するならば、その厚みは極めて重要な要素となっている。図9に示す操作側筐体102において、図示されない内部の回路基板等を除いて、その厚みを決定する部品は、マイク部103、テンキー104、光ポインティング装置107である。この中で、光ポインティング装置107の厚さが最も厚く、光ポインティング装置107の薄型化は、携帯電話機100の薄型化に直接繋がる。よって、上述のように薄型化可能な本発明の光ポインティング装置は、携帯電話機100のような薄型化を必要とする電子機器に対して好適な発明である。
【0112】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、PCや携帯電話機などの入力装置に利用することができ、特に小型、薄型を要求される携帯機器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
10 被写体
11 接触面(入射部)
12 折り曲げ素子(反射部)
12’ 回折素子(反射部)
13 傾斜面(斜面)
14、14’ 結像素子(結像反射部)
15 撮像素子
16 光源
17、18、18’ 反射面(反射膜)
20、20’ 透明樹脂
21 回路基板(基板)
24 カバー部(導光体)
25 底面
26 基板部
27 レンズ部
30、30a、30b、30c 光ポインティング装置
100 携帯電話機
101 モニター側筐体
102 操作側筐体
103 マイク部
104 テンキー
105 モニター部
106 スピーカー部
107 光ポインティング装置
L、L1、L2、L3 被写体からの反射光
M 光源から照射された光
y1 接触面中心と撮像素子中心のY軸方向長さ
y2 接触面中心と結像素子中心のY軸方向長さ
z1 接触面中心と結像素子中心のZ軸方向長さ
z2 カバー部の厚み
z3 接触面と撮像素子面のZ軸方向長さ
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射する反射部と、
該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像する結像反射部とを備え、
該結像反射部にて結像した光を出射部より出射することを特徴とする導光体。
【請求項2】
被写体を照射する光源と、該被写体からの反射光を入射部より入射し、該入射した光を導光して出射部より出射する導光体と、該導光体から出射した光を受光する撮像素子とからなる光ポインティング装置であって、
前記導光体は、前記入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射し、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像し、該反射するとともに結像した光を前記出射部より出射することを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項3】
前記導光体は前記撮像素子を保護するためのカバー部と一体で形成されていることを特徴とする請求項2記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
前記光源および前記撮像素子は、基板上に配置されて、それぞれ透明樹脂で樹脂封止されているものであることを特徴とする請求項2または3に記載の光ポインティング装置。
【請求項5】
前記光源および前記撮像素子をそれぞれ樹脂封止した透明樹脂は、それぞれ略直方体の形状であり、
前記光源を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面は、前記基板の一方の側面と同一平面上に配置され、
前記撮像素子を樹脂封止した他の透明樹脂の一方の側面は、前記基板の他方の側面と同一平面上に配置され、
前記透明樹脂の上表面と、前記基板の両側面と、それと同一平面の前記光源および前記撮像素子を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面と、を前記導光体の位置決めの基準として、前記導光体を前記基板の上側に配置することを特徴とする請求項4に記載の光ポインティング装置。
【請求項6】
前記出射部がある前記導光体の裏面には凹部が形成されており、
前記反射部は、前記凹部に形成されている斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の導光体。
【請求項7】
前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、
前記反射部は、反射型回折素子であることを特徴とする請求項1に記載の導光体。
【請求項8】
前記出射部がある前記導光体の裏面には凹部が形成されており、
前記結像反射部は、前記凹部に形成されている、導光方向の面の曲率と導光方向と直交する面の曲率とが異なるトロイダル面を有していることを特徴とする請求項1、6または7の何れか1項に記載の導光体。
【請求項9】
前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、
前記反射部は、反射型のフレネルレンズであることを特徴とする請求項1または8に記載の導光体。
【請求項10】
前記反射部は、前記出射部がある前記導光体の裏面に形成されており、
前記反射部は、反射型のホログラムレンズであることを特徴とする請求項1、7〜9の何れか1項に記載の導光体。
【請求項11】
前記導光体は、さらに、前記反射部で反射した光を全反射して前記結像反射部に出射する反射膜を備え、
前記反射膜は、前記入射部がある前記導光体の表面の一部であり、前記入射部以外の箇所に位置するものであることを特徴とする請求項1、6〜10の何れか1項に記載の導光体。
【請求項12】
前記入射部より入射した光の波長は、非可視波長であり、
前記反射膜は、可視波長の光を透過するものであることを特徴とする請求項11に記載の導光体。
【請求項13】
前記入射部より入射した光が前記出射部より出射するまでの間、前記入射部より入射した光の経路は、前記導光体の中を通っていることを特徴とする請求項1、6〜12の何れか1項に記載の導光体。
【請求項14】
前記入射部より入射した光は、前記入射部がある前記導光体の表面と前記出射部がある前記導光体の裏面との間で反射して、前記出射部より出射することを特徴とする請求項1、6〜13の何れか1項に記載の導光体。
【請求項15】
請求項2〜5の何れか1項に記載の光ポインティング装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
入射部より入射した光を導光方向へ導光すべく反射し、該反射した光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射するとともに結像し、該反射するとともに結像した光を出射部より出射することを特徴とする導光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−76392(P2011−76392A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227526(P2009−227526)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】