説明

光モジュールの製造方法

【課題】リードフレームに搭載された半導体光素子を透明樹脂でモールドして封止する際に、ワイヤが破断されたり、ワイヤのリード端子部や半導体光素子との接合部が壊れたりする虞のない光モジュールの製造方法を提供。
【解決手段】本発明の光モジュールの製造方法は、半導体光素子である発光素子2及び受光素子3が搭載され、該半導体光素子にワイヤ接続されたリード端子部4aを備えたリードフレーム4の半導体光素子の搭載部分を、透明樹脂でモールドして封止する方法であって、透明樹脂でモールドする前に、リード端子部4aのワイヤ7の接続面と反対側の面に、リード端子部4aの変位を抑制する透明樹脂ブロック6を固定しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信の送受信に用いられる半導体光素子を搭載し、樹脂によりモールド封止したモールドパッケージを備えた光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の送受信等に用いられる光モジュールとしては、リードピンを埋設したステムに半導体光素子を搭載し、その外側を、集光レンズを取り付けた金属製のキャップで覆って封止するCANパッケージ型のものが知られている。しかしながら、この形態のパッケージは、部品数が多く、組み付け工程が複雑で製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
このため、CANパッケージ型に代えて、リードフレームに半導体光素子を搭載し、該搭載部分を透明樹脂でモールドして封止した構造のモールドパッケージ型が知られている(例えば、特許文献1)。図4を参照して、特許文献1に開示のモールドパッケージ型の光モジュール101を説明する。光モジュール101は、リードフレーム102に半導体光素子103が搭載され、これをトランスファモールド成形により透明樹脂104で樹脂モールドしている。また、半導体光素子103とリード端子部102aとの電気接続にワイヤ105が用いられる。なお、トランスファモールド成形による樹脂モールドは、キャビティ内に高温の溶融樹脂が流動状態で流し込まれて行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−192737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示す特許文献1に係る光モジュール101では、樹脂モールドに際し高い粘度を有する溶融樹脂を流し込んだ際、半導体光素子103との電気接続のためのワイヤ105が予め張られたリード端子部102aが動きうる状態にある。したがって、溶融樹脂を流し込んだ際、リード端子部102aが変位し、その結果、ワイヤ105が破断したり、ワイヤ105のリード端子部102aや半導体光素子103との接合部が壊れたりすることがある。
この点に関し、特許文献1には開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明の目的は、上述を鑑み、リードフレームに搭載された半導体光素子を透明樹脂でモールドして封止する際に、ワイヤが破断されたり、ワイヤのリード端子部や半導体光素子との接合部が壊れたりする虞のない光モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の光モジュールの製造方法は、半導体光素子が搭載され、該半導体光素子にワイヤ接続されたリード端子部を備えたリードフレームの半導体光素子の搭載部分を、透明樹脂でモールドして封止する方法であって、透明樹脂でモールドする前に、リード端子部のワイヤ接続面と反対側の面に、リード端子部の変位を抑制する透明樹脂ブロックを固定しておくことを特徴とする。
【0008】
透明樹脂ブロックとモールドに用いる透明樹脂の材料が同一、或いは、屈折率が実質的に同じ値を示し、且つ、当該透明樹脂を構成するベース樹脂が同種の材料であるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リード端子のワイヤ接合面と反対側の面に、リード端子が変位しないように透明樹脂ブロックが予め固定されているので、樹脂モールドに際し流れ込む溶融樹脂によりワイヤが破断されたりワイヤ接合面が破壊されたりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による作製方法で作製された光モジュールの一例を説明する図である。
【図2】透明樹脂による樹脂モールドを行なう前の図1の光モジュールの様子を半導体光素子側から示した図である。
【図3】透明樹脂による樹脂モールドを行なう前の図1の光モジュールの半導体光素子側とは反対側から示した図である。
【図4】従来の光モジュールを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図3を参照して、本発明による作製方法で作製された光モジュールを説明する。図1では、光モジュールの透明樹脂パッケージを仮想線で図示し、図2及び図3では、光モジュールの要部の様子を示すため透明パッケージの図示を省略した上で拡大して示している。
光モジュール1は、図示するように、例えば、発光素子2と、受光素子3と、リードフレーム4と、透明樹脂パッケージ(以下、パッケージと省略)5と、透明樹脂ブロック体6とを備える。
【0012】
発光素子2は、半導体光素子であって、例えば、アルミコーティングされた量子井戸レーザ等の半導体発光素子である。受光素子3は、発光素子2をモニタするための半導体光素子である。
リードフレーム4は、銅合金等の金属材料から形成されるもので、サブマウント2aを介して発光素子2が搭載され、また、受光素子3も搭載される。このリードフレーム4は、発光素子2を駆動させるための電気配線や受光素子3からの電気信号を取り出すための電気配線として機能するリード端子部4aを複数有する。これらリード端子部4aと、発光素子2や受光素子3とは、ワイヤ7により電気接続される。また、リードフレーム4は、発光素子2の光軸を挟んだ両側に貫通孔4bを有する。貫通孔4bの機能については後述する。
【0013】
パッケージ5は、エポキシ等の透明樹脂をモールドすることにより、少なくとも、リードフレーム4の発光素子2が搭載された部分と受光素子3が搭載された部分とを一括して封止するもので、例えば、外径が5〜20mmで長さが5〜20mmに成形される。なお、透明樹脂として、例えば、日東電工製のNTシリーズ(屈折率:1.50〜1.55、主成分:変性エポキシ樹脂と酸無水化物硬化剤)を用いることができる。
このパッケージ5には、略円錐台形状を刳り抜いた形状の穴5aが一方に2つ形成されている。これら穴5aは樹脂モールドの際に成形金型によって形成されている。
【0014】
また、パッケージ5の一端側には、樹脂レンズ部5bが一体に成形されている。樹脂レンズ部5bは、集光型の非球面レンズであり、その光軸が発光素子2の光軸と合致するような位置に形成されている。
【0015】
透明樹脂ブロック体6は、樹脂モールドの際にリード端子部4aが変位することを防ぐもので、リード端子部4aのワイヤ接合面と反対側の面(以下、背面)に、樹脂モールドに先立って貼り付け固定される。なお、透明樹脂ブロック体6の貼り付けは、例えば、既に固化(硬化)した透明樹脂ブロック体6をリードフレーム4のリード端子部4a部分の背面に載置し、その状態でホットプレート等で加熱することにより行なわれ、これによりリードフレーム端子4aが互いに繋ぎ止められる。加熱条件は、例えば、硬化温度が150〜180℃、硬化時間が30〜60秒である。
【0016】
以上のような部材からなる光モジュール1は、外部電気回路によってリード端子部4aを介して駆動された発光素子2から光を出射し、樹脂レンズ部5cにより外部の光ファイバ(図示省略)に集光させる。
【0017】
次に、樹脂モールドによるパッケージ5の成形方法すなわち発光素子2の封止方法について説明する。パッケージ5のように発光素子2の封止を行うことができる成形方法としては、射出成形・トランスファモールド成形等を挙げることができ、例えば、住友重機製の成形機(MY−20)を用いて、トランスファモールド成形により所望性能のパッケージを得ることができる。
【0018】
トランスファモールド成形の際は、まず、図3のように透明樹脂ブロック体6が鉛直方向上になるようにした状態でリードフレーム4を下側の金型(キャビティ)にセットする。その際、下側の金型に設けられた上方に突出するピンの凸部が、リードフレーム4の貫通孔4bが挿通されるようにセットする。これにより、リードフレーム3上の発光素子2に対してガラスレンズ部材4が位置決めされる。次いで、上側の金型に形成されたガイドピンが下側の金型のガイドピン用孔に嵌るように上側の金型を閉じ、リードフレーム4を上下の金型により狭持する。
【0019】
そして、成形金型を図示しないトランスファモールド成形機内部に装着し、後述する成形条件でパッケージ5の成形を行う。なお、この成形の際、空孔発生を抑制するため、成形金型のキャビティを真空状態にし、その後、キャビティに加熱され流動状態になった溶融透明樹脂を圧入する。
成形条件は、例えば、型締め力が1.0〜1.6×10kg(好ましくは、1.0〜1.2×10kg)、硬化時間が3〜10分(好ましくは、5〜7分)、硬化温度が150〜190℃(好ましくは、160〜185℃)である。
【0020】
その後、上述のようにして硬化させたものを成形金型から取り出す。このとき、下金型と上金型が撥水処理された金属であるため成形金型から容易に取り出すことができる。
その後、パッケージ5の硬化状態をより完全なものとするために、例えば150〜165℃で2〜3時間、熱養生させる。
【0021】
以上のように、光モジュール1では、リードフレーム4のリード端子部4aが互いに変位しないように、当該リード端子部4aのワイヤ7が張られているのとは反対側の表面に透明樹脂ブロック体6をモールド成形前に予め貼り付け固定している。したがって、モールド成形の際に、高い溶融粘度を有する透明樹脂がリードフレームの周囲を流動しても、透明樹脂ブロック体6がリード端子部4aを背面からサポートするため、樹脂流動によるリード端子部4aの変位の余地はなくなり、リード端子部4aと発光素子2や受光素子3とを結び付けるワイヤ7に過大な力が付与されることがない。そのため、ワイヤ7が破断したり、ワイヤ7の発光素子2や受光素子3との接合部が破壊されたりすることがない。
【0022】
透明樹脂ブロック体6の材料としては、パッケージ5の材料と同じもの、或いは当該透明樹脂ブロック体6を構成するベース樹脂が、パッケージ5を構成するベース樹脂と同一種の材料であって、両者が略同じ屈折率を示す材料を用いるのが好ましい。同一の材質、或いはベース樹脂が同系統の材料であれば、パッケージ化後におけるパッケージ品質・信頼性等に関して影響はない、というメリットがある。なお、同じ材質を用いることで、樹脂同士が高い親和性を示し、最終的には、上記ブロック体6がパッケージ5と一体となる。
【0023】
上述のような光モジュール1は、光ファイバを接続するためのレセプタクルスリーブを結合して光サブアセンブリとして用いられることが多い。その際、レセプタクルスリーブとしては、SUS材料等を用いた金属製であってもよいし、ポリエーテルイミドやLCP等を用いた樹脂製であってもよく、また、形状としては、パッケージ5の全体を覆う構造にすることが好ましい。なお、レセプタクルスリーブをパッケージ5に固定する場合には、エポキシ系接着剤で樹脂固定する。エポキシ系接着剤としては、光硬化と熱硬化を併用する接着剤(例えば、EMI社の光学接着剤3400シリーズ等)が好適である。
【0024】
また、この光モジュールは、シングルモード光ファイバにもマルチモード光ファイバにも適用可能であり、非通信用途に用いることも可能である。
上述の例は、レンズが透明パッケージに内蔵されない形態であったが、内蔵される形態であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…光モジュール、2…発光素子、3…受光素子、4…リードフレーム、5…パッケージ、6…透明樹脂ブロック体、7…ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光素子が搭載され、該半導体光素子にワイヤ接続されたリード端子部を備えたリードフレームの前記半導体光素子の搭載部分を、透明樹脂でモールドして封止する光モジュールの製造方法であって、
前記透明樹脂でモールドする前に、前記リード端子部のワイヤ接続面と反対側の面に、前記リード端子部の変位を抑制する透明樹脂ブロックを固定しておくことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記透明樹脂ブロックと前記モールドに用いる前記透明樹脂の材料が同一、或いは、屈折率が実質的に同じ値を示し、且つ、当該透明樹脂を構成するベース樹脂が同種の材料であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−74225(P2013−74225A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213791(P2011−213791)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】