説明

光モジュール

【課題】良好な光変調波形を得つつ、高温動作化及び低消費電力化を図ることができる光モジュールを得る。
【解決手段】本発明に係る光モジュールは、ステムと、ステムの表面に形成された凸部と、凸部上に搭載された光半導体素子と、ステムと絶縁され、ステムを貫通して設けられた給電用端子と、凸部上に搭載された第1の誘電体基板と、第1の誘電体基板上に形成され、光半導体素子と給電用端子の一端とを接続する第1の信号線と、ステムの裏面に形成された第2の誘電体基板と、第2の誘電体基板上に形成され、給電用端子の他端に接続された第2の信号線とを有し、第2の信号線の電気長は23.0〜36.2mmであり、第2の信号線のインピーダンスは21.5〜24.5Ωである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられる光半導体素子を搭載した光モジュールに関し、特に良好な光変調波形を得つつ、高温動作化及び低消費電力化を図ることができる光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子を搭載した光モジュールが光通信に用いられている。この光モジュールに、伝送速度が10Gbps以上の高周波信号を伝送すると、ステムと光半導体素子との間でインピーダンス不整合により反射が生じ、伝送特性が悪化する。そこで、従来の光モジュールでは、光半導体素子の近傍にインピーダンス整合用の抵抗体を挿入し、伝送特性を改善していた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−128545号公報
【特許文献2】特開2003−37329号公報
【特許文献3】特開2003−332667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の光モジュールでは、抵抗体を挿入していたため、高温動作化や低消費電力化に不利であった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、良好な光変調波形を得つつ、高温動作化及び低消費電力化を図ることができる光モジュールを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光モジュールは、ステムと、ステムの表面に形成された凸部と、凸部上に搭載された光半導体素子と、ステムと絶縁され、ステムを貫通して設けられた給電用端子と、凸部上に搭載された第1の誘電体基板と、第1の誘電体基板上に形成され、光半導体素子と給電用端子の一端とを接続する第1の信号線と、ステムの裏面に形成された第2の誘電体基板と、第2の誘電体基板上に形成され、給電用端子の他端に接続された第2の信号線とを有し、第2の信号線の電気長は23.0〜36.2mmであり、第2の信号線のインピーダンスは21.5〜24.5Ωである。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、インピーダンス整合を取るために抵抗体を挿入しなくても、通過特性を改善することができる。従って、良好な光変調波形を得つつ、高温動作化及び低消費電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の実施の形態に係る光モジュールを前方から見た斜視図であり、図2は後方から見た斜視図である。
【0009】
ステム1の表面に半円柱状の凸部2が形成されている。凸部2上に光半導体素子3及び誘電体基板4,5,6(第1の誘電体基板)が搭載されている。信号線7,8(第1の信号線)は誘電体基板4上に形成され、互いに接続されている。信号線9,10は誘電体基板5上に形成され、互いに離間している。信号線11,12(第1の信号線)は誘電体基板6上に形成され、互いに接続されている。
【0010】
GNDに接続された導体層13がステム1の裏面に接続され、導体層13の裏面に誘電体基板14(第2の誘電体基板)が形成されている。リードピン15,16(給電用端子)はステム1及び導体層13を貫通して設けられている。ただし、リードピン15,16は、ステム1との間にそれぞれ形成された誘電体17,18によりステム1と絶縁されている。
【0011】
光半導体素子3の一端は信号線10に接続され、他端はワイヤ19により信号線9に接続されている。信号線8と信号線9はワイヤ20により接続され、信号線10と信号線12はワイヤ21により接続されている。リードピン15の他端と信号線7は半田22により接続され、リードピン16の一端と信号線11は半田23により接続されている。即ち、信号線8,12は、それぞれリードピン15,16の一端と光半導体素子3とを接続する。
【0012】
誘電体基板14上に、信号線24,25が形成されている。リードピン15の他端と信号線25は半田26により接続され、リードピン16の他端と信号線24は半田27により接続され、ステム1とリードピン28は半田29により接続されている。
【0013】
ここで、誘電体17,18はガラスからなり、リードピン15,16は銅などの金属からなり、誘電体基板4,5,6はアルミナからなり、誘電体基板14はポリイミドからなる。信号線7,9,10,11,24,25,8,12は、厚みが0.001mmの金属膜であり、例えば銅箔である。信号線7,11は、長さが0.2mm、幅が0.7mmである。信号線9は、長さが0.3mm、インピーダンスが25Ωである。信号線10は、長さが0.7mm、インピーダンスが25Ωである。信号線8,12は、長さが1.0mm、インピーダンスが42Ωである。リードピン16が誘電体18で覆われた部分のインピーダンスが25Ωである。
【0014】
高周波信号は、信号線24からリードピン16、信号線11,12、光半導体素子3、信号線7,8、リードピン15、信号線25を経由して伝送される。ここで、信号線24、リードピン16及び信号線10,11,12のインピーダンスは25Ω程度であるのに対し、ワイヤ21のインダクタ成分と光半導体素子3の抵抗は5〜10Ω程度である。このため、信号線24の端、又は信号線25から光半導体素子3間でインピーダンスの不整合が生じ、伝送速度が10Gbps以上の高周波信号を伝送する場合、光変調波形に歪みが生じる。
【0015】
そこで、本実施の形態では、信号線24,25のインピーダンスを21.5〜24.5Ω、電気長を23.0〜36.2mmとしている。これにより、インピーダンスの整合を取るために抵抗体を挿入しなくても、通過特性が改善し、良好な光変調波形を得ることができる。これについて以下に詳細に説明する。
【0016】
まず、信号線8,12のインピーダンスを42Ωに固定し、信号線24,25の線路長を13.4mmに固定して、第2の信号線である信号線24,25のインピーダンスを変えて実験を行った。図3は、信号線24,25のインピーダンスを20Ωとした場合の通過特性を示す図であり、図4はその場合の光変調波形を示す図である。図5は、信号線24,25のインピーダンスを21.5Ωとした場合の通過特性を示す図であり、図6はその場合の光変調波形を示す図である。図7は、信号線24,25のインピーダンスを24.5Ωとした場合の通過特性を示す図であり、図8はその場合の光変調波形を示す図である。図9は、信号線24,25のインピーダンスを26Ωとした場合の通過特性を示す図であり、図10はその場合の光変調波形を示す図である。この実験結果から、信号線24,25のインピーダンスを21.5〜24.5Ωとした場合に、通過特性の平坦性が増し、通過特性が改善することが分かる。また、この場合に、アイパターンが良くなり、良好な光変調波形を得ることができることが分かる。
【0017】
次に、信号線8,12のインピーダンスを42Ωに固定し、信号線24,25のインピーダンスを23Ωに固定して、第2の信号線である信号線24,25の線路長(電気長)を変えてシミュレーションを行った。図11は、信号線24,25の線路長を9.1mm(電気長17.3mm)とした場合の通過特性を示す図であり、図12はその場合の光変調波形を示す図である。図13は、信号線24,25の線路長を12.1mm(電気長23.0mm)とした場合の通過特性を示す図であり、図14はその場合の光変調波形を示す図である。図15は、信号線24,25の線路長を19.1mm(電気長36.2mm)とした場合の通過特性を示す図であり、図16はその場合の光変調波形を示す図である。図17は、信号線24,25の線路長を29.9mm(電気長56.7mm)とした場合の通過特性を示す図であり、図18はその場合の光変調波形を示す図である。このシミュレーション結果から、信号線24,25の電気長を23.0〜36.2mmとした場合に、通過特性が改善し、良好な光変調波形を得ることができることが分かる。
【0018】
ここで、信号線24,25のインピーダンスと電気長を制御することの意味について説明する。まず、反射周波数は数式1で説明することができる。
【0019】
【数1】

ただし、fは反射周波数、L,L・・・Lは各部材の長さ、εr1,εr2・・・εrnは各部材の誘電率である。従って、信号線24,25の電気長を制御することにより、信号線24,25の端と光半導体素子3間における反射周波数が制御される。そして、信号線24,25のインピーダンスを制御することにより、その反射周波数における反射の絶対量を制御することができ、これによって通過特性が制御される。
【0020】
図19は、信号線24,25の電気長と反射周波数との関係を示す図であり、図20は、信号線24,25の線路長と反射周波数との関係を示す図である。上記のように信号線24,25の電気長を23.0〜36.2mmとした場合は、反射周波数は1.5〜2GHzとなる。従って、1.5〜2GHzにおける通過特性を制御することができ、その影響は2倍、3倍の周波数位置にも及ぶ。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態によれば、インピーダンス整合を取るために抵抗体を挿入しなくても、通過特性を改善することができる。従って、良好な光変調波形を得つつ、高温動作化及び低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る光モジュールを前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光モジュールを後方から見た斜視図である。
【図3】第2の信号線のインピーダンスを20Ωとした場合の通過特性を示す図である。
【図4】第2の信号線のインピーダンスを20Ωとした場合の光変調波形を示す図である。
【図5】第2の信号線のインピーダンスを21.5Ωとした場合の通過特性を示す図である。
【図6】第2の信号線のインピーダンスを21.5Ωとした場合の光変調波形を示す図である。
【図7】第2の信号線のインピーダンスを24.5Ωとした場合の通過特性を示す図である。
【図8】第2の信号線のインピーダンスを24.5Ωとした場合の光変調波形を示す図である。
【図9】第2の信号線のインピーダンスを26Ωとした場合の通過特性を示す図である。
【図10】第2の信号線のインピーダンスを26Ωとした場合の光変調波形を示す図である。
【図11】第2の信号線の線路長を9.1mm(電気長17.3mm)とした場合の通過特性を示す図である。
【図12】第2の信号線の線路長を9.1mm(電気長17.3mm)とした場合の光変調波形を示す図である。
【図13】第2の信号線の線路長を12.1mm(電気長23.0mm)とした場合の通過特性を示す図である。
【図14】第2の信号線の線路長を12.1mm(電気長23.0mm)とした場合の光変調波形を示す図である。
【図15】第2の信号線の線路長を19.1mm(電気長36.2mm)とした場合の通過特性を示す図である。
【図16】第2の信号線の線路長を19.1mm(電気長36.2mm)とした場合の光変調波形を示す図である。
【図17】第2の信号線の線路長を29.9mm(電気長56.7mm)とした場合の通過特性を示す図である。
【図18】第2の信号線の線路長を29.9mm(電気長56.7mm)とした場合の光変調波形を示す図である。
【図19】第2の信号線の電気長と反射周波数との関係を示す図である。
【図20】第2の信号線の線路長と反射周波数との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ステム
2 凸部
3 光半導体素子
4,5,6 誘電体基板(第1の誘電体基板)
8,12 信号線(第1の信号線)
14 誘電体基板(第2の誘電体基板)
15,16 リードピン(給電用端子)
24,25 信号線(第2の信号線)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムと、
前記ステムの表面に形成された凸部と、
前記凸部上に搭載された光半導体素子と、
前記ステムと絶縁され、前記ステムを貫通して設けられた給電用端子と、
前記凸部上に搭載された第1の誘電体基板と、
前記第1の誘電体基板上に形成され、前記光半導体素子と前記給電用端子の一端とを接続する第1の信号線と、
前記ステムの裏面に形成された第2の誘電体基板と、
前記第2の誘電体基板上に形成され、前記給電用端子の他端に接続された第2の信号線とを有し、
前記第2の信号線の電気長は23.0〜36.2mmであり、前記第2の信号線のインピーダンスは21.5〜24.5Ωであることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記光半導体素子の抵抗は5〜10Ωであることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−130619(P2008−130619A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310708(P2006−310708)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】