説明

光伝送システム、送信装置および受信装置

【課題】電波不感地対策システムなどのカバーエリア拡大のために伝送距離の長距離化を可能とした光伝送システム、送信装置および受信装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる光伝送システム1においては、RF信号を周波数変換したIF信号に対応する電気信号を送信装置2側の分割部28で分割後に光信号に変換してから2本の光ファイバ6A,6Bを用いて伝送しており、受信装置4側では、各光ファイバ6A,6Bが伝送された各光信号をIF信号に対応する電気信号にそれぞれ変換し、変換後の複数の電気信号を時間合成してからRF信号に周波数変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システム、該光伝送システムにおける送信装置および受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話システムに代表される移動体通信システムにおいて、地下街、トンネル内およびビルの高層階などの電波不感地帯での通信を補うための技術の一つに、RoF(Radio on Fiber)と呼ばれるアナログ光伝送技術が知られている。このRoF伝送方式は、RF信号で光の強度変調信号を生成し、光ファイバで信号を伝送する方式であり、比較的簡易な構成でシステムを構築できる。このRoF伝送方式はアナログでの伝送方式であるため、システムとして高い線形性、低い雑音特性が要求される。特に、光半導体レーザのようなデバイスなどによって構成される光伝送装置部に対しては、高い線形性、低い雑音特性が要求される。また、RoF伝送方式では、伝送する信号の搬送波周波数で光を強度変調するため、高速応答特性も要求される。
【0003】
したがって、いわゆる第4世代携帯電話(LTE−Advanced)のような高い搬送波周波数(4〜5GHz)、広い帯域幅(〜100MHz)、および、大きなダイナミックレンジ(OFDMA)を持つ信号をRoF方式において伝送する場合、高速応答特性のみならず、広い帯域に渡り、非常に高い線形性と非常に低い雑音特性が要求される。一般的に、このような特性を持つデバイスを使用する場合、部品コストが増加し、システムとして高価なものになるという問題が発生する。
【0004】
そこで、従来、図9に示す光伝送システム401の送信装置402のように、高周波(RF)信号を中間周波(IF)信号に変換したものと、周波数変換に使用する無変調信号(あるいはクロック信号)とをそれぞれ電気/光(E/O)変換器421,422において光信号に変換し、多重器423で多重化させてから光ファイバ406で伝送する方式が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この場合、受信装置404においては、多重化された光信号を分波器424でIF信号と無変調波とに分波してからそれぞれ光/電気(O/E)変換器425,426で電気信号に変換する。無変調波は、さらに、逓倍器407でn逓倍され、帯域制限フィルタ408を通してから、周波数変換器410に入力されたIF信号と混合されてRF信号が生成される。RF信号は、帯域制限フィルタ411、増幅器412を介してアンテナ413に送られて無線電波として発信される。
【0005】
この方式によれば、光デバイスは、高速応答特性を必要とせず、線形特性および雑音特性に優れるIF周波数帯での使用が可能となる。しかしながら、この方式においても、第4世代携帯電話信号等、広帯域、高ダイナミックレンジ信号への適用を想定した場合、十分な光変調度を確保することができないため、十分なCNR(Carrier to Noise Ratio)やACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)等が確保できるとは言い難い。
【0006】
また、図10に示す光伝送システム501のように、送信装置502が、入力端子511から入力されたRF信号を、混合器523および低域通過フィルタ524を有する第1周波数変換部521において変換したIF信号をA/D変換器525にてサンプリングし、デジタル信号にしてから、E/O変換器512で光信号に変換してから光ファイバ513で光伝送する方式(Digitized RoF:DRoF方式)も提案されている(たとえば、非特許文献1および特許文献2参照)。なお、周波数変換を行うために必要となる局部信号は、基準発振器528からの基準信号をもとに局部発振器522において生成され、E/O変換器534で光信号に変換された後に光ファイバ535で伝送される。受信装置504では、光ファイバ513,535で伝送された光信号をそれぞれO/E変換器514,536で電気信号に変換する。D/A変換器532において再生されたIF信号は、第2周波数変換部533における増幅回路537で増幅されてから、混合器538に入力された局部信号と周波数混合され、帯域通過フィルタ539によるフィルタリングによってRF信号として選別されて出力端子515から出力される。このDRoF方式によれば、RoF方式で大きな問題となる光デバイスへの高直線性や低雑音特性、高速応答特性と言った要求仕様が劇的に緩和される。
【0007】
ここで、このDRoF方式で第4世代携帯電話信号への適用を想定し、通常のデジタルサンプリング(オーバーサンプリング)を行う場合、A/D変換器に14bit、300MSps、転送プロトコルとして8b/10bを適用すると、光回線の伝送容量は最低でも6Gbps必要となる。この高速光信号をSMF(シングルモード光ファイバ:Single Mode Fiber)で伝送する際、1チャネルの光回線で伝送する場合は波長1.3μm帯のゼロ分散波長を用いれば光ファイバ中の波長分散の影響はほぼ無視できる。
【0008】
ただし、図11に示す光伝送システム601の光送信部602ように、複数の周波数帯f1〜fiの高周波信号を、クロック発生部D1〜Diによるクロック信号に基づいて、周波数変換部A1〜Aiと、A/D変換部E1〜EiおよびP/S変換部F1〜Fiを有するデジタル変換部B1〜Biと、E/O変換部C1〜Ciとを介して、異なる波長λ1〜λiを有する複数の光信号に変換し、これらの光信号をWDM合波カプラ612で合波させて光ファイバ606で伝送する場合(たとえば、特許文献3参照)、一般的には波長選別規格が設けられている1.5μm帯前後の半導体レーザが使用されるため、波長分散の影響が無視できなくなる。具体的には、光信号の伝送レートが大きくなるにつれて、光パルス信号は波長分散の影響を受け、パルス波形が劣化し、「1」あるいは「0」の判定が不可能になり、伝送距離の制限が発生する。一般的に、低コスト化が可能である直接変調型レーザを使用した場合、6Gbpsの伝送容量である場合、最大伝送距離はおよそ8.7km程度に制限される。なお、図11において、光受信部604は、光ファイバ606を介して入力された光信号をWDM合波カプラ632で各波長λ1〜λiに分波してから、O/E変換部J1〜Jiと、S/P変換部N1〜NiおよびD/A変換部O1〜Oiを有するアナログ変換部K1〜Kiと、周波数変換部L1〜Liと、クロック再生部M1〜Miとをそれぞれ有する受信系統1〜iを介して、各周波数帯f1〜fiの高周波信号に再生している。
【0009】
このように、第4世代携帯電話信号における電波不感地対策システムへの適用を検討した場合、そのカバーエリアの最大距離は、光ファイバ中を伝送する信号の伝送速度に大きく影響を受けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3162215号公報
【特許文献2】特開平08−316908号公報
【特許文献3】特許第4280551号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】伊東、外、「帯域信号/デジタル変換法(BDC)を用いた高ダイナミックレンジ800MHz帯光マイクロ波伝送」、電子情報通信学会、技術研究報告、MW97−26、pp.61−66、1997−05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、第4世代携帯電話信号における電波不感地対策システムを構築する場合、従来の方式によれば、そのカバーエリアの最大距離は、光回線の伝送レートとして必要となる6Gbpsが設定された場合、前述したように、およそ8.7km程度に制限される。
【0013】
しかしながら、近年、長距離トンネル等での携帯電話等の使用が可能となるように、第4世代携帯電話信号における電波不感地対策システムとして、20km以上の距離をカバーできるシステムが要望されている。
【0014】
この発明は、前記に鑑みてなされたものであって、電波不感地対策システムなどのカバーエリア拡大のために伝送距離の長距離化を可能とした光伝送システム、送信装置および受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる光伝送システムは、光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、前記送信装置は、前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、を備え、前記光ファイバは、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、複数の前記電気/光変換手段が変換した光信号をそれぞれ伝送し、前記受信装置は、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、複数の前記光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間合成し、前記A/D変換手段において生成されたデジタル信号を再生する第2信号処理手段と、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この発明にかかる光伝送システムは、光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、前記送信装置は、前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、を備え、前記受信装置は、前記光ファイバで伝送された光信号を前記それぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間合成し、前記A/D変換手段において生成されたデジタル信号を再生する第2信号処理手段と、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする。
【0018】
この発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記受信装置は、前記送信装置内の基準発振周波数信号および局部信号を再生し、前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を前記再生された局部信号を用いて周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする。
【0019】
この発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記複数の光ファイバ間の経路長差を検出し、該検出した経路長差に基づいて前記送信装置で前記複数の電気/光変換手段が前記光信号を送信するタイミングを調整する、または、前記受信装置で前記複数のデジタル信号を時間合成するタイミングを調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明にかかる送信装置は、高周波信号を光信号に変換し、複数の光ファイバを通して受信装置に伝送する送信装置であって、前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この発明にかかる送信装置は、上記発明において、前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする。
【0022】
この発明にかかる受信装置は、複数の光ファイバを通して伝送された高周波信号に対応する光信号を受信する受信装置であって、前記光ファイバの本数と同数設けられ、前記複数の光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタル信号を生成する複数の光/電気変換手段と、前記複数の光/電気変換手段によって生成された複数のデジタル信号を時間合成する第2信号処理手段と、前記第2信号処理手段によって時間合成されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この発明にかかる受信装置は、上記発明において、前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする。
【0024】
この発明にかかる送信装置は、高周波信号を光信号に変換し、光ファイバを通して受信装置に伝送する送信装置であって、前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
この発明にかかる送信装置は、上記発明において、前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする。
【0026】
この発明にかかる受信装置は、光ファイバを通して伝送された高周波信号に対応する光信号であって複数の光信号が多重化された光信号を受信する受信装置であって、前記光ファイバで伝送された光信号をそれぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、前記光信号分波手段による分波数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタル信号を生成する光/電気変換手段と、前記光/電気変換手段によって生成された複数のデジタル信号を時間合成する第2信号処理手段と、前記第2信号処理手段によって時間合成されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
この発明にかかる受信装置は、上記発明において、前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする。
【0028】
この発明にかかる光伝送システムは、光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、前記送信装置は、前記高周波信号を複数のアナログ信号に分配し、該分割したアナログ信号を同一タイミングでサンプリングした複数のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、前記A/D変換手段によって分割された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、を備え、前記光ファイバは、前記第A/D変換手段による分配数と同数設けられ、複数の前記電気/光変換手段が変換した光信号をそれぞれ伝送し、前記受信装置は、前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、複数の前記光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間的に同期させて累積加算して前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
この発明にかかる光伝送システムは、光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、前記送信装置は、前記高周波信号を複数のアナログ信号に分配し、該分配したアナログ信号を同一タイミングでサンプリングした複数のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、前記A/D変換手段によって分配された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、を備え、前記受信装置は、前記光ファイバで伝送された光信号を前記それぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、前記A/D変換手段による分配割数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間的に同期させて累積加算して前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、高周波信号を周波数変換した中間周波信号に対応する電気信号を送信装置側で分割し光信号に変換してから光ファイバを用いて伝送しているため、光ファイバ1本あたりの伝送容量を減らすことができ、伝送距離を伸ばすことが可能になる。また、本発明によれば、受信装置側において、送信装置側で分割された電気信号を時間合成してから高周波信号に周波数変換するため、送信対象の信号を適切に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の第一実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、光信号の伝送容量と最大伝送距離を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施の形態の変形例1にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施の形態の変形例2にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4に示す分割部の分割処理の一実施例を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の第二実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第三実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第四実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、従来技術にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、従来技術にかかる他の光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、従来技術にかかる他の光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、移動体通信のような無線通信信号を光信号として伝送する光伝送システム、送信装置および受信装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0033】
(第一実施の形態)
まず、本発明の第一実施の形態について説明する。図1は、本発明の第一実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0034】
図1に示すように、本発明の第一実施の形態にかかる光伝送システム1は、複数の光ファイバ6A,6Bを通して、電波不感地帯に設置される受信装置4に高周波信号を伝送する送信装置2を有する。送信装置2は、いわゆる親局装置であり、RF信号を光信号に変換して光ファイバ6A,6Bに出力する。受信装置4は、いわゆる子局装置であり、光ファイバ6A,6Bが伝送した光信号を処理し、RF信号に再生して、アンテナ53から無線電波として発信する。
【0035】
送信装置2は、周波数変換器22、帯域制限フィルタ23、増幅器24、A/D変換器25、第1信号処理回路26、E/O変換器30A,30B、基準発振器31、分配器32、PLL回路33および局部信号発振回路34を有する。
【0036】
周波数変換器22は、入力端子21から入力したRF信号を周波数変換する。帯域制限フィルタ23は、周波数変換器22が周波数変換した信号からIF信号を抽出する。増幅器24は、帯域制限フィルタ23が抽出したIF信号を増幅してA/D変換器25に出力する。周波数変換器22および帯域制限フィルタ23は、RF信号をIF信号に変換する機能を有する。
【0037】
A/D変換器25は、周波数変換器22および帯域制限フィルタ23によって変換されたIF信号をサンプリングし、デジタルパラレル信号に変換する。
【0038】
第1信号処理回路26は、たとえば、いわゆるFPGA回路によって形成されており、パラレル/シリアル(P/S)変換器27、分割部28および2つの送信部29A,29Bを有する。
【0039】
P/S変換器27は、入力されたデジタルパラレル信号(たとえば14ビット)をデジタルシリアル信号に変換する。分割部28は、P/S変換器27によって変換されたデジタルシリアル信号を複数のデジタルシリアル信号に分割する。図1に示す例では、分割部28は、P/S変換器27によって変換されたデジタルシリアル信号を2つのデジタルシリアル信号に分割して、分割した各デジタルシリアル信号をそれぞれ送信部29A,29Bに出力する。たとえば、分割部28は、14ビットのデジタルシリアル信号のうち、前半の7ビットを送信部29Aに出力し、後半の7ビットを送信部29Bに出力する。あるいは、分割部28は、14ビットのデジタルシリアル信号のうち奇数ビットを送信部29Aに出力し、偶数ビットを送信部29Bに出力しても良い。分割方法としては、14ビット毎に送信部29A、29Bに出力してもよい。送信部29A,29Bは、分割された各デジタルシリアル信号を、例えば8b/10bのようにエンコードし、E/O変換器30A,30Bにそれぞれ送信する。
【0040】
E/O変換器30A,30Bは、第1信号処理回路26の分割部28によるデジタルシリアル信号の分割数と同数設けられ、分割部28によって分割され送信部29A,29Bによって送信されたデジタルシリアル信号を光信号にそれぞれ変換する。E/O変換器30Aは、分割部28によって分割されたデジタル信号のうち送信部29Aによって送信されたデジタルシリアル信号を光信号に変換する。E/O変換器30Bは、分割部28によって分割されたデジタル信号のうち送信部29Bによって送信されたデジタルシリアル信号を光信号に変換する。
【0041】
基準発振器31から出力されたクロック信号(基準発振周波数信号)は、分配器32によって分配され、A/D変換器25、第1信号処理回路26およびPLL回路33に出力される。PLL回路33は、入力されたクロック信号の位相を同期させて局部信号を生成し、局部信号発振回路34を介して周波数変換器22に入力する。そして、局部信号を用いて、入力端子21から入力したRF信号を周波数変換する。
【0042】
光ファイバ6A,6Bは、第1信号処理回路26の分割部28によるデジタルシリアル信号の分割数と同数設けられ、複数のE/O変換器30A,30Bが変換した光信号をそれぞれ伝送する。光ファイバ6Aは、E/O変換器30Aが変換した光信号を伝送する。光ファイバ6Bは、E/O変換器30Bが変換した光信号を伝送する。
【0043】
受信装置4は、O/E変換器41A,41B、第2信号処理回路42、D/A変換器46、周波数変換器47、帯域制限フィルタ48、増幅器49、除去器50、PLL回路51、局部信号発振回路52およびアンテナ53を有する。
【0044】
O/E変換器41A,41Bは、第1信号処理回路26の分割部28によるデジタルシリアル信号の分割数と光ファイバ6A,6Bの本数と同数設けられる。すなわち、O/E変換器41A,41Bは、光ファイバ6A,6Bの本数と同数設けられる。O/E変換器41A,41Bは、光ファイバ6A,6Bで伝送された光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタルシリアル信号を再生する。O/E変換器41Aは、光ファイバ6Aで伝送された光信号をデジタルシリアル信号に変換する。O/E変換器41Bは、光ファイバ6Bで伝送された光信号をデジタルシリアル信号に変換する。
【0045】
第2信号処理回路42は、たとえば、いわゆるFPGA回路によって形成されており、2つの受信部43A,43B、合成部44およびシリアル/パラレル(S/P)変換器45を有する。
【0046】
受信部43A,43Bは、O/E変換器41A,41Bによって変換されたデジタルシリアル信号を受信し、デコードした後、合成部44にそれぞれ出力する。合成部44は、O/E変換器41A,41Bによって再生された複数のデジタルシリアル信号を時間合成し、第1信号処理回路26において生成されたデジタルシリアル信号を再生する。S/P変換器45は、合成部44によって再生されたデジタルシリアル信号をデジタルパラレル信号に変換する。
【0047】
D/A変換器46は、第2信号処理回路42によって再生されたデジタルパラレル信号をアナログ信号に変換してIF信号を再生する。
【0048】
除去器50は、O/E変換器41A,41Bによって変換されたデジタルシリアル信号から再生した基準発振器31と同クロックの信号に対してジッター除去処理を行い、PLL回路51に除去後のクロック信号を出力する。PLL回路51は、入力されたクロック信号の位相を同期させて局部信号を再生し、局部信号発振回路52を介して周波数変換器47に入力する。
【0049】
周波数変換器47は、D/A変換器46によって再生されたIF信号を、送信装置2より送信されるとともに受信装置4側で再生された局部信号を用いて周波数変換する。帯域制限フィルタ48は、周波数変換器47によって変換された信号からRF信号を抽出する。周波数変換器47および帯域制限フィルタ48は、D/A変換器46によって再生されたIF信号を送信装置2内で生成させた局部信号と同一周波数の局部信号を用いて周波数変換してRF信号を再生する。増幅器49は、帯域制限フィルタ48が抽出したRF信号を増幅する。増幅器49によって増幅されたRF信号は、アンテナ53から無線電波として発信される。
【0050】
ここで、図2は、光ファイバ中を伝送させる伝送容量B[Gbps]と、その最大伝送距離L[Km]の関係を表したもので、光伝送部の光源のαパラメータの依存性を示す図である。なお、この最大伝送距離は、分散ペナルティが1dBとなる距離としている。
【0051】
図2に示すように、αパラメータがほぼ0とみなせる曲線L1に示されるMach−Zehnder型およびαパラメータがたとえば0.5程度である曲線L2に示されるEA型の外部光変調器搭載光送信器を使用すると、6Gbpsの伝送容量で伝送する場合は、光ファイバ中の波長分散の影響という点では50Km以上伝送することが可能であるものの、高コストとなる。したがって、低コスト化が可能である曲線L3に示される直接変調型(αパラメータがたとえば5程度であるDFB型)光送信器の適用が望ましい。しかしながら、この直接変調型によれば、6Gbpsの伝送容量の光信号を伝送する場合、8.7Km程度の距離Laしか伝送できない。
【0052】
これに対し、本第一実施の形態においては、送信装置側で伝送する信号を分割して、分割数に応じて設けた複数の光ファイバを用いて伝送している。図1の例では、送信装置2側で送信する信号を二つに分割して、分割した信号を光信号に変換した後に2本の光ファイバ6A,6Bで受信装置4側に伝送している。したがって、本実施の形態1によれば、分割せずに1本の光ファイバでそのまま伝送した場合と比較して、光ファイバ1本あたりの伝送容量を半分に減らすことができる。このため、図2に示すように、一つの送信装置2から6Gbpsの伝送容量の光信号を伝送する場合、2本の光ファイバ6A,6Bに伝送容量を振り分けているため、転送プロトコルに8b/10bを使用した場合、1本あたりの光ファイバの伝送容量を3.0Gbpsまで下げることができ、35Km程度の距離Lbまで伝送距離を伸ばすことができる。
【0053】
このように、本第一実施の形態によれば、伝送する信号を送信装置側で分割して、複数の光ファイバを用いて伝送しているため、1本の光ファイバでそのまま伝送した場合と比較し、光ファイバ1本あたりの伝送容量を減らすことができ、伝送距離を伸ばすことが可能になる。
【0054】
なお、本第一実施の形態においては、送信装置2側で送信する信号を二つに分割して、2本の光ファイバ6A,6Bで受信装置4側に伝送する例を説明したが、もちろん、これに限らず、送信装置の分割部による分割数を三以上に設定してもよい。この場合、分割部の分割数と同数の送信部およびE/O変換器を送信装置に設け、分割部の分割数と同数のO/E変換器および受信部を受信装置に設ければよい。
【0055】
(第一実施の形態の変形例1)
次に、本発明の第一実施の形態の変形例1について説明する。図3は、本発明の第一実施の形態の変形例1にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0056】
図3に示すように、変形例1にかかる光伝送システム201は、入力された複数の光信号を多重化して光ファイバに入射する合波部235をさらに備えた送信装置202と、光ファイバで伝送された光信号をそれぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する分波部240をさらに備えた受信装置204とを1本の光ファイバ206で接続する構成を有する。なお、送信装置202は、図1に示すE/O変換器30A,30Bに代えて、入力されたデジタルシリアル信号を、それぞれ異なる波長の光信号に変換するE/O変換器230A,230Bを備える。E/O変換器230A,230Bは、入力されたデジタルシリアル信号を、分波部240で分波される光信号の各波長のいずれかに対応した波長の光信号に変換する。また、受信装置204は、O/E変換器41A,41Bに代えて、分波部240によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタルシリアル信号を再生するO/E変換器241A,241Bを備える。O/E変換器241A,241Bは、分波部240による光信号の分波数と同数設けられる。O/E変換器241A,241Bは、分波部240で分波される光信号の各波長のいずれかに対応した波長の光信号に対して、変換処理を行う。
【0057】
このように、本変形例1では、波長多重技術を用いることによって、光ファイバの本数を減らすことができる。
【0058】
(第一実施の形態の変形例2)
次に、本発明の第一実施の形態の変形例2について説明する。図4は、本発明の第一実施の形態の変形例2にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0059】
図4に示すように、変形例2にかかる光伝送システム301は、デジタルシリアル信号化処理よりも分割処理を先に実行する第1信号処理回路326を備えた送信装置302と、デジタルパラレル信号化処理よりも合成処理を後に実行する第2信号処理回路342を備えた受信装置304とを備える。
【0060】
第1信号処理回路326は、第1信号処理回路26と比して、P/S変換器27および分割部28に代えて、分割部328、および、分割部328の分割数と同数設けられたP/S変換器327A,327Bを有する。
【0061】
分割部328は、A/D変換器25によって変換されたデジタルパラレル信号を複数のデジタルパラレル信号に分割する。P/S変換器327A,327Bは、分割部328によって分割された複数のデジタルパラレル信号をデジタルシリアル信号にそれぞれ変換する。分割部328は、A/D変換器25から入力されるデジタルパラレル信号を、構成単位の14ビットごとにP/S変換器327A,327Bに交互に振り分ける。たとえば、図5の矢印Y1のように、分割部328は、14ビットのデジタルパラレル信号DP−1を、P/S変換器327Aに振り分ける。続いて、分割部328は、デジタルパラレル信号DP−1の次にA/D変換器25から入力された14ビットのデジタルパラレル信号DP−2については、矢印Y2のようにP/S変換器327Bに振り分ける。ここでの分割例は、14ビット毎のみならず、7ビット毎の分割でもよいとする。
【0062】
第2信号処理回路342は、第2信号処理回路42と比して、合成部44およびS/P変換器45に代えて、分割部328の分割数と同数設けられたS/P変換器345A,345B、および、合成部344を有する。
【0063】
S/P変換器345A,345Bは、O/E変換器41A,41Bによって再生された複数のデジタルシリアル信号をそれぞれデジタルパラレル信号に変換する。合成部344は、変換した複数のデジタルパラレル信号を時間合成してA/D変換器25において生成されたデジタルパラレル信号を再生する。送信装置302側において分割部328が14ビット単位でデジタルパラレル信号を分割しているため、S/P変換器345A,345Bは、14ビット単位のデジタルパラレル信号に対応するデジタルシリアル信号をそれぞれ処理しており、合成部344は、複数の14ビット単位のデジタルパラレル信号を合成する。
【0064】
したがって、本変形例2においては、デジタルパラレル信号を構成する14ビットを一単位として、送信装置302側での分割、光ファイバ6A,6Bにおける伝送および受信装置304側での合成を実行している。このため、伝送遅延による受信タイミングがずれても、第2信号処理回路342においては、受信タイミングのずれ補正をビット単位ごとに厳密に行わずとも各処理が可能である。
【0065】
なお、本変形例においても、送信装置の分割部による分割数を三以上に設定してもよい。この場合、分割部の分割数と同数のP/S変換器、送信部およびE/O変換器を送信装置に設け、分割部の分割数と同数のO/E変換器、受信部およびS/P変換器を受信装置に設ければよい。
【0066】
また、本変形例2においても、第一実施の形態の変形例1における図3のように、光信号を波長多重化し、1本の光ファイバで伝送するように構成することも可能である。
【0067】
また、本第一実施の形態、変形例1,2においては、親局装置から子局装置への、いわゆる下り回線の適用例を示したが、子局装置から親局装置への、上り回線への適用も可能である。
【0068】
また、本第一実施の形態および変形例1,2においては、送信装置2,202,302側にP/S変換器27,327A,327B、受信装置4,204,304側にS/P変換器45,345A,345Bをそれぞれ設け、デジタル信号をシリアルに変換する場合およびパラレルに変換する場合を例に説明したが、送信装置2,202,302側のA/D変換器25の出力および受信装置4,204,304側のD/A変換器46の入力が1出力、1入力にそれぞれ対応しているものであれば、送信装置側のS/P変換器および受信装置側のP/S変換器は必ずしも設けずともよい。また、転送プロトコルとしては8b/10bの例を示したが、データをフレーム化し、ヘッダを追加して伝送する方式としてもよい。
【0069】
(第二実施の形態)
本発明の第二実施の形態について説明する。図6は、本発明の第二実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0070】
本第二実施の形態にかかる光伝送システム1Aは、図1に示す光伝送システム1において、送信装置2、受信装置4を、それぞれ送信装置2A、受信装置4Aに置き換えたものである。
【0071】
送信装置2Aは、送信装置2において、周波数変換器22、帯域制限フィルタ23、増幅器24を削除し、A/D変換器25をA/D変換器25Aに置き換えたものである。A/D変換器25Aは、入力端子21から入力したRF信号をサンプリングし、中間周波のデジタルパラレル信号に変換する。ここで、サンプリング周波数を、RF信号の帯域幅の二倍以上とすることで、RF信号を、直接的に中間周波のデジタルパラレル信号に変換することができる。
【0072】
受信装置4Aは、受信装置4において、周波数変換器47、除去器50、PLL回路51、局部信号発振回路52を削除し、D/A変換器46をD/A変換器46Aに置き換えたものである。D/A変換器46Aは、第2信号処理回路42によって再生されたデジタルパラレル信号からアナログ信号を再生し、帯域制限フィルタ28の通過帯域を所望のRF信号帯域に設定することでRF信号を再生する。D/A変換器46Aのサンプリング周波数もRF信号の帯域幅の二倍以上に設定されている。
【0073】
本第二実施の形態によれば、光ファイバ1本あたりの伝送容量を減らすことができ、伝送距離を伸ばすことが可能になるという第一実施の形態の効果を奏することができ、かつ構成を簡略化することができる。
【0074】
(第三実施の形態)
本発明の第三実施の形態について説明する。図7は、本発明の第三実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0075】
本第三実施の形態にかかる光伝送システム1Bは、図1に示す光伝送システム1において、送信装置2、受信装置4を、それぞれ送信装置2B、受信装置4Bに置き換えたものである。
【0076】
送信装置2Bは、送信装置2において、第1信号処理回路26を第1信号処理回路26Bに置き換えたものである。第1信号処理回路26Bは第1信号処理回路26に調整部26B1を付加したものである。一方、受信装置4Bは、受信装置4において、第2信号処理回路42を第2信号処理回路42Bに置き換えたものである。第2信号処理回路42Bは第2信号処理回路42に調整部42B1を付加したものである。
【0077】
ここで、複数本の光伝送路である光ファイバ6A,6Bを用いて並列伝送をする際、各光ファイバ6A,6B間の経路長差により、受信装置内で元データが復元できなくなるという問題が発生する場合がある。
【0078】
これに対して、本第三実施の形態では、調整部26B1、42B1が、初動時(あるいはリセットコマンドなどの入力時)に、光ファイバ6A,6B間の経路長差を認識するようなキャリブレーションを行う。具体的には、調整部26B1もしくは調整部42B1が、光ファイバ6A,6B間の経路長差を検出し、検出した経路長差を時間のずれに換算して、送信部29A,29B側で、E/O変換器30A,30Bが光信号を送信するタイミングを調整する、もしくは、受信部43A,43B側で、受信した信号を合成部44が合成するタイミングを調整する。なお、8b/10bのエンコードを行っている場合には、時間のずれは10ビット分の信号のずれの範囲内に収めればよい。上記経路長差の検出には、例えば、装置および光ファイバ敷設後の初動時などに、送信装置から受信装置へ同時に光パルスを出力し、受信装置での到達時間差を計測し、その時間差を送信装置あるいは受信装置に認識させた状態で実運用する等のキャリブレーションモードを設けても良い。
【0079】
このようなタイミング調整によって、経路長差が補償され、第2信号処理回路42Bでは、複数系列の受信データをどのタイミングでどの順番で処理すれば元データを復元できるのかが認識可能となる。また、本第三実施の形態によれば、データ列にタイムスタンプのようなヘッダ処理を施す方法と比較しても、光伝送速度の増加を抑制することが可能となる。
【0080】
本第三実施の形態では、送信装置2Bおよび受信装置4Bの両方に調整部が設けてあるが、どちらか一方に設けるようにしてもよい。
【0081】
(第四実施の形態)
本発明の第四実施の形態について説明する。図8は、本発明の第四実施の形態にかかる光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0082】
本第四実施の形態にかかる光伝送システム301Aは、図4に示す光伝送システム301において、送信装置302、受信装置304を、それぞれ送信装置302A、受信装置304Aに置き換えたものである。
【0083】
送信装置302Aは、送信装置302において、A/D変換器25を2つのA/D変換器25B,25Cに置き換え、第1信号処理回路326を第1信号処理回路326Aに置き換え、増幅器24とA/D変換器25B,25Cとの間に分配部328Aを設けたものである。第1信号処理回路326Aは、第1信号処理回路326から分割部328を削除したものである。また、A/D変換器25B,25Cは、それぞれ第1信号処理回路326AのP/S変換器327A,327Bに接続している。
【0084】
受信装置304Aは、受信装置304において、A/D変換器46をA/D変換器46Bに置き換え、第2信号処理回路342を第2信号処理回路342Aに置き換えたものである。第2信号処理回路342Aは、第2信号処理回路342から合成部344を削除したものである。また、S/P変換器345A,345Bは、A/D変換器46Bに接続している。
【0085】
送信装置302Aでは、分配部328AはIF信号を複数(本実施の形態では2つ)のアナログ信号に等分割し、A/D変換器25B,25Cに出力する。
【0086】
A/D変換器25B,25Cは、分配して入力されたIF信号を同じタイミングでサンプリングし、デジタルパラレル信号に変換する。P/S変換器327A,327Bは、それぞれ入力されたデジタルパラレル信号をデジタルシリアル信号に変換する。送信部29A,29Bは各デジタルシリアル信号をE/O変換器30A,30Bにそれぞれ送信し、E/O変換器30A,30Bは各デジタルシリアル信号を光信号に変換して送信する。送信される各光信号の伝送速度は等しくなる。
【0087】
一方、受信装置304Aでは、O/E変換器41A,41Bは、受信した各光信号から、デジタルシリアル信号を再生し、S/P変換器345A,345Bは、再生された各デジタルシリアル信号をそれぞれデジタルパラレル信号に変換し、D/A変換器46Bに出力する。D/A変換器46Bは、入力されたデジタルパラレル信号を時間的に同期させて累積加算し、高周波信号を再生する。
【0088】
ここで、一般に、A/D変換器の最下位ビット(Least Significant Bit:LSB)側の1または2ビットは、A/D変換器自身の量子化雑音やDNL(Differential Non Linearity:微分非直線性)誤差、あるいは入力信号の熱雑音等により、データとしての信頼性は非常に低いものとなる。よって、広いダイナミックレンジに対応する場合、必要な分解能よりもより高分解能のA/D変換器が必要となり、結果的に光伝送速度が増加するという問題が発生する場合がある。例えば、信号のダイナミックレンジからは14ビットのA/D変換器で対応可能であるものが、実際には上記雑音等の影響を考慮して16ビットのA/D変換器が必要になることがある。
【0089】
これに対して、本第四実施の形態では、送信装置302AではIF信号を複数のアナログ信号に等分配し、これをA/D変換器25B,25Cで同じタイミングでサンプリングし、受信装置304Aでは、再生されたデジタルパラレル信号を時間的に同期させて累積加算している。これによって、A/D変換器25B,25Cでサンプリングしたデジタル信号を等価的に積算処理したことと同等のSNR改善効果が得られるため、A/D変換器25B,25Cの実効的な分解能を増やすことができる。その結果、A/D変換器25B,25Cは雑音等の影響を無視した、よりビット数の低いもの(例えば上記例では14ビットのA/D変換器)を使用することができ、光信号の伝送速度増加を抑制することができる。
【0090】
なお、本第四実施の形態と、第三実施の形態の経路長差を補償するタイミング調整の技術とを組み合わせれば、受信装置304Aにおける累積加算をより適正に行うことができる。
【0091】
本第四実施の形態では、分割器328AはIF信号を複数のアナログ信号に等分割しているが、分配部328Aと周波数変換器22との順番を入れ換えて、RF信号を等分割してからIF信号に周波数変換するようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,1A,1B,201,301,301A 光伝送システム
2,2A,2B,202,302,302A 送信装置
4,4A,4B,204,304,04A 受信装置
6A,6B,206 光ファイバ
21 入力端子
22,47 周波数変換器
23,48 帯域制限フィルタ
24,49 増幅器
25,25A A/D変換器
26,26B,326 第1信号処理回路
26B1,42B1 調整部
27,327A,327B P/S変換器
28,328 分割部
328A 分配部
29A,29B 送信部
30A,30B,230A,230B E/O変換器
31 基準発振器
32 分配器
33,51 PLL回路
34,52 局部信号発振回路
41A,41B,241A,241B O/E変換器
42,42B,342 第2信号処理回路
43A,43B 受信部
44,344 合成部
45,345A,345B S/P変換器
46,46A D/A変換器
50 除去器
53 アンテナ
235 合波部
240 分波部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
を備え、
前記光ファイバは、前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、複数の前記電気/光変換手段が変換した光信号をそれぞれ伝送し、
前記受信装置は、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、複数の前記光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、
前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間合成し、前記A/D変換手段において生成されたデジタル信号を再生する第2信号処理手段と、
前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、
を備え、
前記受信装置は、
前記光ファイバで伝送された光信号を前記それぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、
前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間合成し、前記A/D変換手段において生成されたデジタル信号を再生する第2信号処理手段と、
前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記受信装置は、前記送信装置内の基準発振周波数信号および局部信号を再生し、
前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を前記再生された局部信号を用いて周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記複数の光ファイバ間の経路長差を検出し、該検出した経路長差に基づいて前記送信装置で前記複数の電気/光変換手段が前記光信号を送信するタイミングを調整する、または、前記受信装置で前記複数のデジタル信号を時間合成するタイミングを調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項2を引用する請求項1〜4のいずれか一つに記載の光伝送システム。
【請求項6】
高周波信号を光信号に変換し、複数の光ファイバを通して受信装置に伝送する送信装置であって、
前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
を備えたことを特徴とする送信装置。
【請求項7】
前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする請求項6に記載の送信装置。
【請求項8】
複数の光ファイバを通して伝送された高周波信号に対応する光信号を受信する受信装置であって、
前記光ファイバの本数と同数設けられ、前記複数の光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタル信号を生成する複数の光/電気変換手段と、
前記複数の光/電気変換手段によって生成された複数のデジタル信号を時間合成する第2信号処理手段と、
前記第2信号処理手段によって時間合成されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項9】
前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
高周波信号を光信号に変換し、光ファイバを通して受信装置に伝送する送信装置であって、
前記高周波信号を中間周波のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によって変換されたデジタル信号を複数のデジタル信号に分割する第1信号処理手段と、
前記第1信号処理手段による分割数と同数設けられ、前記第1信号処理手段によって分割された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、
を備えたことを特徴とする送信装置。
【請求項11】
前記A/D変換手段は、前記高周波信号を中間周波信号に変換する第1周波数変換部と、前記第1周波数変換部によって変換された中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備えることを特徴とする請求項10に記載の送信装置。
【請求項12】
光ファイバを通して伝送された高周波信号に対応する光信号であって複数の光信号が多重化された光信号を受信する受信装置であって、
前記光ファイバで伝送された光信号をそれぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、
前記光信号分波手段による分波数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して複数のデジタル信号を生成する光/電気変換手段と、
前記光/電気変換手段によって生成された複数のデジタル信号を時間合成する第2信号処理手段と、
前記第2信号処理手段によって時間合成されたデジタル信号から前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項13】
前記D/A変換手段は、前記第2信号処理手段によって再生されたデジタル信号をアナログ信号に変換して中間周波信号を再生するD/A変換部と、前記D/A変換部によって再生された中間周波信号を周波数変換して前記高周波信号を再生する第2周波数変換部とを備えることを特徴とする請求項12に記載の受信装置。
【請求項14】
光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記高周波信号を複数のアナログ信号に分配し、該分配したアナログ信号を同一タイミングでサンプリングした複数のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、前記A/D変換手段によって分配された複数のデジタル信号を光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
を備え、
前記光ファイバは、前記第A/D変換手段による分配数と同数設けられ、複数の前記電気/光変換手段が変換した光信号をそれぞれ伝送し、
前記受信装置は、
前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、複数の前記光ファイバで伝送された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、
前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間的に同期させて累積加算して前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項15】
光ファイバを通して受信装置に高周波信号を伝送する送信装置を備えた光伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記高周波信号を複数のアナログ信号に分配し、該分割したアナログ信号を同一タイミングでサンプリングした複数のデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段による分配数と同数設けられ、前記A/D変換手段によって分配された複数のデジタル信号を、それぞれ異なる波長を有する光信号にそれぞれ変換する電気/光変換手段と、
複数の前記電気/光変換手段から入力された複数の光信号を多重化して前記光ファイバに入射する光信号多重化手段と、
を備え、
前記受信装置は、
前記光ファイバで伝送された光信号を前記それぞれ異なる波長を有する複数の光信号に分波する光信号分波手段と、
前記A/D変換手段による分割数と同数設けられ、前記光信号分波手段によって分波された各光信号を電気信号にそれぞれ変換して前記複数のデジタル信号を再生する光/電気変換手段と、
前記光/電気変換手段によって再生された前記複数のデジタル信号を時間的に同期させて累積加算して前記高周波信号を再生するD/A変換手段と、
を備えたことを特徴とする光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217173(P2012−217173A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82750(P2012−82750)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】