説明

光伝送システム

【課題】光パス単位の波長分散量測定を低コストで可能な光伝送システムを得る。
【解決手段】エッジノード10は、測定用と通信用の波長を含む光パス設定要求を送信し、当該OK応答を受信すると、波長分散量測定開始要求を送信し、当該OK応答を受信すると、2つの固定波長光源を起動して測定用光信号を送信し、波長分散量測定完了通知を受信すると、2つの固定波長光源を停止し、測定用の波長を含む光パス解放要求を送信し、測定した波長分散量を補償するように可変波長光源を起動して通信用光信号の送信を開始し、受信側エッジノード20は、光パス設定要求を受信すると、指定された3つの波長リソースが使用可能なことを確認し、当該OK応答を送信し、波長分散量測定開始要求を受信すると、当該OK応答を送信し、測定用光信号を受信すると、波長分散量の測定を行い、測定した波長分散量を含む波長分散量測定完了通知を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光パス単位の波長分散を補償する光伝送システムに関するものである。なお、本明細書では、光通信のEnd−to−End間(送信端と受信端)の波長パスを光パスと呼んでいる。
【背景技術】
【0002】
現在の光ネットワークでは、光ファイバの分散によって生じる信号の歪みを補償するため、隣接ノード間の波長分散量に応じた分散補償ファイバを、事前の詳細設計(具体的にはノード間の波長分散量の測定結果)に基づき各ノードに搭載している。つまり、すべての隣接ノード間で、波長分散量が零となるように分散補償を行っていることになる。
【0003】
しかしながら、これは、複数のノードを中継していく一つの光パスに対して、リンク単位(ここでは、隣接するノード間をリンクと呼んでいる)に複数回の分散補償を行っていることとなり、分散補償コストが多大となる。
【0004】
そのため、各ノード間(リンク単位)の波長分散量を測定し、その情報をノード間で交換したり、波長分散量管理サーバに通知したりして、光パス全体の波長分散量を、リンク単位の波長分散量を累積することにより求める光伝送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その結果、複数のノードを中継する一つの光パスに対しては、累積した波長分散量を補償するための分散補償を受信側だけで行えばよいため、リンク単位に分散補償するよりも、分散補償コストが低減できる。
【0005】
また、光パス設定後に、設定した波長により波長分散量を測定し、光パス単位に受信側で波長分散量を補償する光伝送システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。その結果、リンク単位に分散補償するよりも、分散補償コストが低減できる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−121303号公報
【特許文献2】特開2006−74698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後、ビットレートが高速化(例えば、10Gb/sから、40Gb/sや160Gb/sに高速化)すると、より高精度な分散補償が必要となってくる。
【0008】
しかしながら、リンク単位に高精度な波長分散量測定ができても、リンク単位の波長分散量を累積する過程で、その誤差が累積されてしまう。また、リンク単位の測定では、中継するノード内の光デバイス等の波長分散量も無視できないため、光パス単位での精度の高い波長分散量結果が得られないという問題点があった。
【0009】
また、光パス単位での波長分散量測定では、設定した光パスの波長(つまり実際に通信に使用する波長)を用いて波長分散量を測定するため、送信側、受信側ともに、可変波長に対応した波長分散量測定機能が必要となり、波長分散量測定コストが高くなるという問題点があった。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、光パス単位の波長分散量測定を低コストで行うことができ、分散補償された光パスを動的に設定することができる光伝送システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る光伝送システムは、システムのエッジ部分に位置する送信側及び受信側エッジノードと、前記送信側及び受信側エッジノード間のシステムのコア部分に位置するコアノードとを設け、各ノードは、光ファイバによってそれぞれ接続され、かつ制御ネットワークによって接続されている光伝送システムであって、前記送信側エッジノードは、測定用の第1及び第2の波長番号の波長光源及び通信用の第3の波長番号の可変波長光源を有するとともに、前記第1及び第2の波長番号と、前記第3の波長番号とを含む光パス設定要求を送信し、光パス設定OK応答を受信すると、波長分散量測定開始要求を送信し、波長分散量測定開始OK応答を受信すると、前記第1及び第2の波長番号の波長光源を起動して、測定用光信号を送信し、波長分散量測定完了通知を受信すると、前記第1及び第2の波長番号の波長光源を停止し、前記第1及び第2の波長番号の波長を解放するための光パス解放要求を送信するとともに、測定した波長分散量を補償するように前記第3の波長番号の可変波長光源を起動して、通信用光信号の送信を開始し、前記受信側エッジノードは、前記光パス設定要求を受信すると、指定された3つの波長リソースが使用可能なことを確認し、前記光パス設定OK応答を送信し、前記波長分散量測定開始要求を受信すると、波長分散量測定開始OK応答を送信し、前記測定用光信号を受信すると、2つの波長の光信号の時間差に基づき波長分散量の測定を行い、測定した波長分散量を含む波長分散量測定完了通知を送信するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る光伝送システムは、光パス単位の波長分散量測定を低コストで行うことができ、分散補償された光パスを動的に設定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る光伝送システムについて図1から図4までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る光伝送システムの構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0014】
図1において、この発明の実施の形態1に係る光伝送システムは、システムのエッジ部分に位置するエッジノード(送信側エッジノード)10、エッジノード(受信側エッジノード)20と、システムのコア部分に位置するコアノード30、40、50と、システムに接続されるルータやスイッチ等のクライアント装置60、70と、ネットワーク管理サーバ80とが設けられている。
【0015】
なお、各ノード10〜50は、光ファイバ1、2、3、4、5によってそれぞれ接続されている。また、ネットワーク管理サーバ80は、光伝送システムを制御するためのもので、制御ネットワーク81によって各ノード10〜50やクライアント装置60、70に接続されている。
【0016】
図2は、この発明の実施の形態1に係る光伝送システムのエッジノードの構成を示す図である。
【0017】
図2において、この実施の形態1に係るエッジノード10は、制御ネットワーク81に接続され、本ノードを制御するためのノード制御部11と、クライアント装置60を収容し、光伝送システムを介して、所望の波長により相手ノードと通信するための複数のクライアント収容部12と、波長分散量を測定するための波長分散量測定部14と、クライアント収容部12や波長分散量測定部14から送信される、異なる波長の光信号を光ファイバ1へ合波したり、逆に光ファイバ1内を伝搬してきた複数波長の光信号を波長ごとにクライアント収容部12や波長分散量測定部14へ分波したりする光合分波器16とが設けられている。なお、エッジノード20も同様である。
【0018】
なお、各クライアント収容部12は、所望の波長を送信するための可変波長光源13(波長番号♯17)を有する。また、波長分散量測定部14は、異なる波長の伝播遅延差を測定するため、2つの固定波長光源15A(波長番号♯1)、15B(波長番号♯100)を有する。
【0019】
図3は、この発明の実施の形態1に係る光伝送システムのコアノードの構成を示す図である。
【0020】
図3において、この実施の形態1に係るコアノード30は、制御ネットワーク81に接続され、本ノードを制御するためのノード制御部31と、光合分波器で分波された光信号を交換するための光スイッチ32と、光ファイバ単位に存在する光合分波器33、34、35とが設けられている。なお、コアノード40、50も同様である。
【0021】
コアノード30は、クライアント装置60、70とは接続されず、エッジノード10やコアノード40、50と接続するための光ファイバ1、2、3と接続されている。
【0022】
つぎに、この実施の形態1に係る光伝送システムの動作について図面を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係る光伝送システムの動作(シーケンス)を示す図である。
【0023】
図1に示された光伝送システムでは、波長分散量の測定は、測定用の2つの固定波長として、波長番号♯1と♯100を使用することとし、送信側より2つの固定波長を用いて、同時に同一の信号パターンを送信し、受信側でその信号パターンの時間差を測定することにより実施する。
【0024】
また、あらかじめ各ノード10〜50には、制御ネットワーク81を介して、隣接ノードと通信するための情報(例えば、IPアドレス等)が設定されているものとする。例えば、コアノード30には、隣接ノードとしてエッジノード10、コアノード40、コアノード50の情報(例えば、IPアドレス等)が設定されている。
【0025】
また、本光伝送システムは、光伝送ネットワークを統合的に制御、管理するためのGMPLS(Generalized Multi Protocol Label Switching)プロトコルに基づいて動作しているものとする。そのため、本光伝送システムの全ノードは、ネットワーク全体の構成と各リンクで使用可能な波長リソースの情報を保持しているため、光パス設定時に、自ノードから宛先ノードまでの最短パスと、使用可能な波長を導出することが可能である。
【0026】
クライアント装置60とクライアント装置70を接続する光パスの設定、つまりエッジノード10からエッジノード20までの光パスの設定について、図4のシーケンスを用いて説明する。
【0027】
光パスの設定要求は、クライアント装置60が、制御ネットワーク81を介してエッジノード10に対して光パス設定要求を伝える場合と、ネットワーク管理サーバ80からエッジノード10に対して光パス設定要求を伝える場合があるが、以降で説明する光パスの設定シーケンスは同一である。
【0028】
まず、光パス設定要求が伝えられたエッジノード10のノード制御部11は、エッジノード20までの最短パス、および通信用に使用する波長を決定して、測定用に使用する2つの固定波長とともに、エッジノード10からエッジノード20までの光パス設定要求101を送信する。
【0029】
この光パス設定要求101には、通信用に使用する波長番号の例として♯17、測定用の2つの固定波長番号として♯1と♯100が含まれている。エッジノード10が送信した光パス設定要求101は、制御ネットワーク81を介して、コアノード30、コアノード40と中継され、指定した3つの波長リソースを予約しながら、エッジノード20に到達する。
【0030】
次に、エッジノード20のノード制御部21(図示せず)は、光パス設定要求101を受信すると、指定された3つの波長リソースが使用可能なことを確認し、光パス設定OK応答102をエッジノード10に送信する。エッジノード20が送信した光パス設定OK応答102は、制御ネットワーク81を介して、コアノード40、コアノード30と中継され、各コアノードの光スイッチ32を設定しながら、エッジノード10に到達する。
【0031】
次に、エッジノード10のノード制御部11は、光パス設定OK応答102を受信すると、エッジノード10とエッジノード20間の光パスが正常に設定されたものと判断し、波長分散量測定開始要求103を、制御ネットワーク81を介して、エッジノード20に送信する。
【0032】
次に、エッジノード20のノード制御部21は、波長分散量測定開始要求103を受信すると、波長分散量の測定準備を行い、波長分散量測定開始OK応答104を、制御ネットワーク81を介して、返信する。
【0033】
次に、波長分散量測定開始OK応答104を受信したエッジノード10のノード制御部11は、測定用の固定波長光源15Aと15Bを起動して、測定用光信号105を送信する。
【0034】
次に、測定用光信号105を受信したエッジノード20の波長分散量測定部24(図示せず)、波長分散量の測定を行い、ノード制御部21は、測定した波長分散量を波長分散量測定完了通知106により、エッジノード10に通知する。
【0035】
次に、エッジノード10のノード制御部11は、波長分散量測定完了通知106を受信すると、波長分散量の測定が完了したものと判断し、測定用の固定波長光源15A、15Bを停止し、測定用の2つの固定波長(♯1と♯100)を解放するための光パス解放要求107を送信するとともに、通知された波長分散量を送信側で事前補償するように通信用の可変波長光源13(♯17)を起動して、通信用光信号108の送信を開始する。
【0036】
なお、波長分散量測定開始要求103、波長分散量測定開始OK応答104、波長分散量測定完了通知106は、制御ネットワーク81を介して、光パスの両端点であるエッジノード10とエッジノード20との間で直接送受信される。
【0037】
また、エッジノード10が送信した光パス解放要求107は、制御ネットワーク81を介して、コアノード30、コアノード40と中継され、指定した2つの固定波長リソースを解放、つまり各コアノードの光スイッチ32の設定を解除しながら、エッジノード20に到達する。
【0038】
上記により、エッジノード10とエッジノード20の間に、通信用波長♯17を用いた分散補償された光パスが実現できる。
【0039】
なお、複数波長の光パスの設定や、特定波長の光パスの解放は、GMPLSプロトコルのシグナリングメッセージを拡張することにより実現される。
【0040】
なお、上記実施の形態では、測定用の固定波長が使用できる場合について説明したが、測定用の固定波長が使用中である場合は、未使用となるまで一定時間待つことにより実現される。
【0041】
以上のように、光パス設定時に、測定用の固定波長を用いて波長分散量の測定を行えるようにしたので、以下のような効果が得られる。
(1)波長分散量の測定を光パス単位に行うため、中継するコアノード内の光デバイス等の波長分散量も含めて正確に測定することが可能である。
(2)測定用の固定波長により波長分散量を測定するため、波長分散量測定機能が低コストに実現可能である。
(3)測定用の固定波長の速度は、波長分散量の測定精度を満足する速度でよいため、測定用の速度は通信用の速度よりも遅くでき、波長分散量測定機能が低コストに実現可能である。
(4)波長分散量を測定する波長分散量測定部14は、エッジノードに1つだけでよいので、測定用のコストを抑えることが可能である。
【0042】
上記実施の形態では、測定用の波長として固定波長を用いたが、可変波長を用いることもできる。具体的には、波長分散量測定部14の固定波長光源15A、15Bの変わりに、可変波長光源を使用する。これにより、空いている波長を用いて波長分散量を測定することができるため、測定用の固定波長が未使用になるまで待つ必要がない。
【0043】
また、上記実施の形態では、受信側ノードから送信側ノードに対して波長分散量の通知を行って送信側で分散補償を行っているが、波長分散量の通知を行わずに、受信側で分散補償を行うことも可能である。
【0044】
また、上記実施の形態では、コアノード30、40、50にはクライアント収容部12がなかったが、コアノードとエッジノードが融合したノードにおいても、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る光伝送システムのエッジノードの構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る光伝送システムのコアノードの構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る光伝送システムの動作(シーケンス)を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1−5 光ファイバ、10、20 エッジノード、11 ノード制御部、12 クライアント収容部、13 可変波長光源、14 波長分散量測定部、15A、15B 固定波長光源、16 光合分波器、20 エッジノード、30、40、50 コアノード、31 ノード制御部、32 光スイッチ、33、34、35 光合分波器、60、70 クライアント装置、80 ネットワーク管理サーバ、81 制御ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムのエッジ部分に位置する送信側及び受信側エッジノードと、
前記送信側及び受信側エッジノード間のシステムのコア部分に位置するコアノードとを備え、
各ノードは、光ファイバによってそれぞれ接続され、かつ制御ネットワークによって接続されている光伝送システムであって、
前記送信側エッジノードは、測定用の第1及び第2の波長番号の波長光源及び通信用の第3の波長番号の可変波長光源を有するとともに、
前記第1及び第2の波長番号と、前記第3の波長番号とを含む光パス設定要求を送信し、
光パス設定OK応答を受信すると、波長分散量測定開始要求を送信し、
波長分散量測定開始OK応答を受信すると、前記第1及び第2の波長番号の波長光源を起動して、測定用光信号を送信し、
波長分散量測定完了通知を受信すると、前記第1及び第2の波長番号の波長光源を停止し、前記第1及び第2の波長番号の波長を解放するための光パス解放要求を送信するとともに、測定した波長分散量を補償するように前記第3の波長番号の可変波長光源を起動して、通信用光信号の送信を開始し、
前記受信側エッジノードは、
前記光パス設定要求を受信すると、指定された3つの波長リソースが使用可能なことを確認し、前記光パス設定OK応答を送信し、
前記波長分散量測定開始要求を受信すると、波長分散量測定開始OK応答を送信し、
前記測定用光信号を受信すると、2つの波長の光信号の時間差に基づき波長分散量の測定を行い、測定した波長分散量を含む波長分散量測定完了通知を送信する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
前記測定用の第1及び第2の波長番号の波長光源は、固定波長光源である
ことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記測定用の第1及び第2の波長番号の波長光源は、可変波長光源である
ことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147545(P2010−147545A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319577(P2008−319577)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人情報通信研究機構、「高速電気信号処理技術に基づく適応制御光トランスポートネットワークの研究」委託契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】