説明

光偏向装置、画像形成装置および画像表示装置

【課題】簡単な光学系により、光ビームの拡散を抑制し、解像度や分解能を高めることが可能な光偏向装置を提供すること。
【解決手段】曲面により形成され、光ビームを偏向可能な反射面11と、反射面11を搭載するステージ12と、ステージ12を、支持部14に相対移動可能に連結するとともに、支持部14に対するステージ12の駆動方向を設定する複数のばね13と、ステージ12を変位させるための駆動力を提供する駆動手段と、駆動手段16を駆動させてステージ12が変位するのに伴って反射面11により偏向される光ビームを、平行光へと変換可能なコリメータ15と、を備えていることを特徴とする光偏向装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面で形成された反射面を平行移動させて光ビームを走査させる光偏向装置ならびにこの光偏向装置を備えた画像形成装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ビームを走査する光偏向装置は、電子写真方式の画像形成装置、プロジェクタやヘッドマウントディスプレイなどの画像表示装置、バーコードリーダ、距離センサ、光通信用装置と多岐にわたって用いられている。
【0003】
その中でも、回転多面鏡(ポリゴンミラー)や、振動型反射鏡(ガルバノミラー)のようなミラーによる光の反射を利用した光偏向装置は、偏向角度の波長依存性が無く、温度変化など周囲の環境の変化に強いという長所から、広く使用されている。
【0004】
最近では小型化、高速化を実現するために、マイクロマシン技術を用いて作製されたシリコン基板を用いたマイクロミラーの開発が盛んになっている。しかし、マイクロミラーは、高速で駆動させようとすると、ミラーを厚くし、トーションバーの剛性を高める必要があるため、ミラーの振れ角を大きくすることができない。
【0005】
そこで、高速化と大走査角というトレードオフの関係にある2つを同時に満たすため、曲面で形成された反射面を平行移動することで光ビームを走査する光偏向装置が、例えば、特許文献1などにより知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の曲面により形成された反射面を持つ光偏向装置は、入射光のスポット径が有限であるため、1つの反射光内でも偏向角度に違いが出て、結果として、光が広がってしまうという問題があった。
【0007】
このような光ビームの広がりは、偏向装置を、画像形成装置などに適用した場合には、画像の解像度の低下や、センサなどに適用した場合は、分解能の低下などを引き起こしてしまう。また、反射光の光路にコリメータを別途用意すると、装置が大型化し、マイクロマシン技術により小型化を実現した利点が無くなってしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、簡単な光学系により、光ビームの拡散を抑制でき、画像形成装置などに用いた場合などに解像度や分解能を高めることが可能な光偏向装置、ならびに、この光偏向装置を備えた画像形成装置および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の光偏向装置は、曲面により形成され、光ビームを偏向可能な反射面と、この反射面を搭載するステージと、このステージを、支持部に相対移動可能に連結するとともに、前記支持部に対する前記ステージの駆動方向を設定する複数の弾性支持体と、前記ステージを変位させるための駆動力を提供する駆動手段と、この駆動手段を駆動させて前記ステージが変位するのに伴って前記反射面により偏向される光ビームを、平行光へと変換可能なコリメート手段と、を備えていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光偏向装置において、前記コリメート手段が、前記ステージあるいは前記反射面が設けられたシリコン基板に一体に設けられていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光偏向装置において、前記駆動手段として、駆動力に圧電効果を用いる圧電素子を備えていることを特徴とする光偏向装置とした。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光偏向装置において、前記駆動手段として、駆動力に静電力を用いる静電アクチュエータを備えていることを特徴とする光偏向装置とした。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に光偏向装置において、前記駆動手段として、駆動力に電磁力を用いる電磁アクチュエータを備えていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光偏向装置において、前記反射面が、前記ステージを形成する材料と同じ材料をエッチングすることにより作製されていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光偏向装置において、前記反射面が、前記ステージ上に堆積、あるいは接合された材料をエッチングすることにより作製されていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の光偏向装置において、前記反射面が凸面形状に形成され、前記コリメート手段が、一面が平面で他面が凸状面の平凸レンズ状に形成されているとともに、前記反射面の反射光を、前記平面に入射し、前記凸状面から出射するよう配置されていることを特徴とする光偏向装置とした。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、光学系に、前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えていることを特徴とする画像形成装置とした。
請求項10に記載の発明は、光学系に、前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えていることを特徴とする画像表示装置とした。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の画像表示装置において、前記光偏向装置として、入射光を第1の方向に走査させる第1光偏向装置と、前記第1の方向に直交する第2の方向に走査させる第2光偏向装置と、を備えていることを特徴とする画像表示装置とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の光偏向装置にあっては、駆動手段の駆動によりステージを支持部に相対移動させることにより、反射面で偏向させる光ビームを走査させる。
この場合、本発明では、反射面で偏向された光ビームは、光偏向装置に設けたコリメート手段により平行光に変換されるため、コリメート手段を有さないものと比較して、光の広がりを抑制できる。
これにより、画像形成装置などに適用した場合、画像解像度や分解能などのスキャナ性能を向上させることが可能であり、また、光偏向装置の外部の光路にコリメータを設けたものと比較して、コンパクト化を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、コリメート手段を、ステージあるいは反射面が設けられたシリコン基板に一体に設けたため、コリメート手段をシリコン基板とは別の部材で支持するものと比較して、部品点数を抑え、構造の簡略化を図ることができる。加えて、コリメート手段を、反射面の近傍に配置させるのが容易であり、反射光の拡散をいっそう抑制することが可能である。
【0018】
請求項3に記載の発明では、ステージは、圧電素子の圧電効果により駆動される。
請求項4に記載の発明では、ステージは、静電アクチュエータの静電力で駆動される。
請求項5に記載の発明では、ステージは、電磁アクチュエータの電磁力で駆動される。
このように請求項3〜5に記載の発明では、アクチュエータの駆動源が異なっており、用途に応じアクチュエータを選択することで、最適の特性を得ることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、反射面を、ステージを形成する材料と同じ材料をエッチングすることにより作製したため、両者を別体としたものと比較して、部品点数を削減できるとともに、製造が容易となる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、反射面を、ステージ上に堆積、あるいは接合された材料をエッチングすることにより作製したため、反射面を形成する素材の自由度が高くなる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、コリメート手段が、反射面の反射光を、平面に入射し、凸状面から出射するようにしたため、凸状の反射面による反射光を平行光とすることが可能である。
【0022】
請求項9に記載の発明では、画像形成装置が、光学系に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えているため、画像解像度が向上する。
【0023】
請求項10に記載の発明では、画像表示装置が、光学系に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えているため、画像解像度が向上する。
【0024】
請求項11に記載の発明では、第1光偏向装置により、光ビームを第1の方向に走査させ、第2光偏向装置により、光ビームを第1の方向に直交する第2の方向に走査させる。したがって、曲面を有した反射面を搭載するステージを、駆動させて走査を行なう光偏向装置を備えた画像表示装置において、光ビームを、平面上の2方向に走査させて画像表示を行なう画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の光偏向装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1の光偏向装置においてコリメータを省略したものを上方から見た状態を示す平面図である。
【図3】実施例1の光偏向装置の偏向メカニズムの説明図であり、図1においてステージの平面上において駆動方向に直交する方向から見た状態を示している。
【図4】実施例1の光偏向装置を備えた画像形成装置Aの構成の概略を示す概略図である。
【図5】実施例2の第1光偏向装置1、第2光偏向装置を備えたプロジェクタBの構成の概略を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態の光偏向装置(1)は、曲面により形成され、光ビームを偏向可能な反射面(11)と、この反射面(11)を搭載するステージ(12)と、このステージ(12)を、支持部(14)に相対移動可能に連結するとともに、前記支持部(14)に対する前記ステージ(12)の駆動方向を設定する複数の弾性支持体(13)と、前記ステージ(12)を変位させるための駆動力を提供する駆動手段(16)と、この駆動手段(16)を駆動させて前記ステージ(12)が変位するのに伴って前記反射面(11)により偏向される光ビームを、平行光へと変換可能なコリメート手段(15)と、を備えていることを特徴とする光偏向装置である。
【実施例1】
【0027】
図1〜図4に基づき、この発明の実施例1の光偏向装置1について説明する。
【0028】
実施例1の光偏向装置1は、電子写真方式の画像形成装置Aに適用された例であり、まず、画像形成装置Aの構成の概略を説明する。
【0029】
図4に示すように、画像形成装置Aは、レーザ光源101、コリメートレンズ102、光偏向装置1、球面レンズ103、fθレンズ104、反射ミラー105、感光体106を備えている。
【0030】
レーザ光源101は、例えば半導体レーザであり、このレーザ光源101から出射された光ビームB1はコリメートレンズ102によって平行光B2となり光偏向装置1に入射される。
【0031】
光偏向装置1に入射された平行光B2は、曲面により形成された反射面11(図1参照)で偏向された後、平行光B4となって出射される。なお、この図では、平行光B4は、走査させた状態を示している。
【0032】
この光偏向装置1から出射された平行光B4は、球面レンズ103、fθレンズ104、反射ミラー105を経て、感光体106に到達するようになっている。
【0033】
なお、このような光偏向装置1の周辺の光学系は、ポリゴンスキャナ、ガルバノミラー、揺動方式のマイクロスキャナのような平面ミラーを用いたものと同様であり、光学系を複雑にすることなく、装置の性能を向上させることができる。
【0034】
次に、光偏向装置1の構成について説明する。
図1は光偏向装置1の構成を示す斜視図であり、光偏向装置1は、1つのシリコン基板に、反射面11、略矩形状のステージ12、ばね(弾性支持体)13、支持部14を一体に形成したものである。
【0035】
反射面11は、マイクロマシニング技術により略長方形の薄板状に制作されたステージ12の上の略中央位置に、図において上方(矢印Y1方向)に凸となった曲面形状に形成されている。
【0036】
なお、本実施例1では、反射面11は、ステージ12と一体に形成されており、ステージ12を形成する材料(本実施例1ではシリコン)と同じ材料をエッチングすることにより作製されている。
【0037】
ステージ12は、本実施例1では、2対のばね13により、支持部14に対して図において矢印Y2で示す方向に直線移動可能に連結されている。すなわち、支持部14は、図2に示すように、略長方形の枠状に形成されており、この支持部14に、矢印Y2に沿う方向に2対の棒状の支持体14a,14a,14a,14aが対向して立設されている。そして、ステージ12の矢印Y2の方向に沿う2つの辺部12a,12aの2カ所と、支持体14aとがばね(弾性支持体)13を介して矢印Y2方向に移動可能に弾性支持されている。
【0038】
これらのばね13は、反射面11、ステージ12、支持部14と共にシリコン基板に一体に形成されている。そして、ばね13は、図2に示すように、上方から見て略U字に2箇所で直角に折曲され、かつ、図1に示すように、幅方向(矢印Y2の平面方向)寸法よりも上下方向(矢印Y1方向)寸法の方が大きく形成されており、上下方向よりも平面方向に変位し易い弾性特性が与えられている。
【0039】
図2に示すように、ステージ12の矢印Y2方向に直交する方向に沿う2つの辺部12b,12bと支持部14との間には、MEMSアクチュエータ16が設けられている。なお、図1では、MEMSアクチュエータ16の図示を省略している。
【0040】
このMEMSアクチュエータ16としては、例えば、静電アクチュエータ、電磁気アクチュエータ、熱アクチュエータ、圧電アクチュエータなどを用いることができるが、本実施例1では、櫛歯状の第1電極16aおよび第2電極16bを備えた静電櫛歯アクチュエータが用いられている。すなわち、MEMSアクチュエータ16は、ステージ12から矢印Y2方向と平行方向に支持部14に向かって突出され、辺部12bに沿って一定間隔で配置された複数の第1電極16aと、支持部14の内周から矢印Y2方向と平行方向にステージ12に向かって突出され、第1電極16aの間に挿入されるように一定間隔で配置された複数の第2電極16bとを備えている。そして、両電極16a,16bの間に電位差を与えることによって静電引力を発生させ、ステージ12を、櫛歯状の両電極16a,16bの長手方向である矢印Y2方向に直線的に駆動させることができる。
【0041】
なお、このMEMSアクチュエータ16の駆動において、ステージ12の質量とばね13のばね定数とによって、ステージ12の直線運動の共振周波数が決定され、かつ、MEMSアクチュエータ16の駆動力とばね13のばね定数とによって、ステージ12の変位量が決定される。
【0042】
図1に戻って、反射面11の上方位置にコリメータ(コリメート手段)15が設けられている。コリメータ15は、光偏向装置1内に組み込まれたレンズであり、本実施例1では、反射面11やステージ12を形成したシリコン基板に接合されており、例えば、支持部14の近傍に接合されている。
【0043】
このコリメータ15は、図3に示すように、この図において下側に平面15aを有し、上側に下方(矢印Y1方向)に凸となった凸状面15bを有した平凸レンズ状に形成されているとともに、反射面11からの反射光B3が、平面15aに入射し、かつ、凸状面15bから出射するよう配置されている。そして、凸状面15bの形状は、MEMSアクチュエータ16を駆動させて反射面11が矢印Y2方向に平行移動するのに伴い、反射面11により様々な偏向角を持って反射された反射光B3を、平行光B4に変換させることができる形状に形成されている。
【0044】
なお、この平行光B4を得るためには、コリメータ15の凸状面15bの形状のみならず、反射面11の形状、反射面11とコリメータ15との距離などにも基づいて、総合的に設計するものである。
【0045】
(実施例1の作用)
次に、実施例1の作用を説明する。
図4に示すように、レーザ光源101から出射された光ビームB1は、コリメートレンズ102によって平行光B2となり、光偏向装置1に入射され、光偏向装置1では、平行光B2を偏向させた平行光B4を、実線と点線とで示す範囲で球面レンズ103の長手方向に走査させる。さらに、この走査された平行光B4は、球面レンズ103、fθレンズ104、反射ミラー105を経て感光体106に到達する。
【0046】
このときの光偏向装置1の作用を説明すると、図3に示すように、コリメートレンズ102からの平行光B2は、反射面11で反射されて反射光B3となる。このとき、MEMSアクチュエータ16の駆動によりステージ12が矢印Y2方向に平行移動すると(図において点線が平行に移動した一状態を示す)、反射面11における平行光B2の入射位置が変化する。反射面11は、その面の傾きが連続的に変化しているため、平行光B2の入射位置が変化すると、反射光B3の反射角も変化する。
【0047】
よって、ステージ12を直線駆動させることにより、反射光B3の偏向角度を変えることができ、反射光B3を走査させることができる。図3では、反射面11が、共通する平行光B2を、実線で示す位置と、点線で示す位置とで反射させた場合の反射光B4を、それぞれ、実線と点線とで示している。なお、図3は、図1の矢印Y2方向に直交する方向から見た状態を示しており、平行光B2は、コリメータ15を通らずにコリメータ15の手前を通過しているものとする。
【0048】
このような反射光B3は、有限な径を持ち、また、反射面11が凸形状であるので、反射面11において反射光B3が照射される領域内の各点において偏向角度に違いが生じるため、反射光B3が広がってしまう。従来はこれが光偏向装置1を搭載した装置の性能の低下につながった。
【0049】
それに対して、本実施例1では、図3に示すように、コリメータ15により、反射面11で反射された直後に、反射光B3が平行光B4に変換される構成であるため、この平行光B4に変換後は、長い光路を経てもその径を小さく維持できる。これにより、平面ミラーを用いた光偏向装置と同様の性能を得ることができ、従来の光学系を用いた画像形成装置Aに、曲面で形成された反射面11を有して高速化と大走査角を両立できる光偏向装置1を適用することができる。その結果、高速化と大走査角を維持しつつ、画像形成装置A全体の性能を向上させることができる。
【0050】
(実施例1の効果)
a)曲面状の反射面11で偏向される反射光B3を、コリメータ15により平行光B4に変換するため、コリメータ15を有さないものと比較して、反射光B3の拡散を抑制することができる。これにより、画像形成装置Aにおける画像解像度や分解能などの性能を向上させることが可能となる。
【0051】
b)コリメータ15を、反射面11の直後に配置したため、コリメート手段を光偏向装置1の出射部分に配置したものと比較して、反射光B3の拡散をより抑制して、上記a)の効果を高めることができる。
【0052】
c)コリメータ15は、反射面11、ステージ12と一体のシリコン基板(例えば、支持部14)に接合したため、上記b)のように、コリメータ15を反射面11の直後に配置させるのが容易である。また、コリメータ15を支持する部材を、シリコン基板とは別に設けるものと比較して、部品点数を抑え、構造の簡略化を図ることができる。
【0053】
d)駆動手段として、静電櫛歯アクチュエータから成るMEMSアクチュエータ16を用いたため、ステージ12をより高い精度で直線的に変位させることができ、走査性に優れる。
【0054】
e)反射面11は、ステージ12を形成するシリコンをエッチングすることにより形成したため、両者を別体としたものと比較して、部品点数を削減できるとともに、製造が容易となる。
【0055】
(他の実施例)
以下に、他の実施例について説明するが、これら他の実施例は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1あるいは他の実施例と共通する構成については共通する符号を付けることで説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
実施例2は、実施例1で示した光偏向装置1と同様の第1光偏向装置21および第2光偏向装置22を、画像表示装置としてのプロジェクタBに適用した例である。
【0057】
プロジェクタBは、赤色光源装置201と、青色光源装置202と、緑色光源装置203と、ダイクロイックミラー204,204,204と、両光偏向装置21,22と、スクリーン205とを備えている。
【0058】
すなわち、プロジェクタBでは、コンピュータ(図示を省略)からの画像情報に従って、各光源装置201,202,203から、赤色、青色、緑色の光が出射され、これら各色の光は、各ダイクロイックミラー204、204,204により合成される。この合成光は、まず、第1光偏向装置21により、主走査方向(図においてYy方向)に走査されて第2光偏向装置22に入射される。さらに、第2光偏向装置22に入射された光は、第2光偏向装置22により、主走査方向に直行する副走査方向(図においてYx方向)に走査され、スクリーン205で生成される。
【0059】
このように、実施例2では、第1光偏向装置21と第2偏向装置22とを用い、それぞれ、スクリーン205の縦横方向であるYy方向とYx方向とに、走査するようにしたため、長方形のスクリーン205の全面に亘って画像を生成することができる。
【0060】
この実施例2にあっても、実施例1と同様の各光偏向装置21,22を用いるため、実施例1で説明した、a)b)c)d)の効果を得ることができる。
【0061】
以上、本発明の光偏向装置を実施の形態および実施例1,2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態および実施例1,2に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0062】
例えば、実施例1では、コリメータ15は、シリコン基板に一体に形成したが、これに限定されるものではなく、光偏向装置1,21,22において、反射面11で反射された反射光が出射される位置に設けてもよい。
【0063】
また、駆動手段として、実施例1では、静電櫛歯アクチュエータを用いたMEMSアクチュエータ16を示したが、これに限定されるものではなく、駆動力に電磁力を用いる電磁気アクチュエータ、駆動力に熱歪を用いる熱アクチュエータ、駆動力に圧電効果を用いる圧電アクチュエータなどを用いてもよい。
【0064】
また、実施例1では、ステージ12を支持部14に対して変位可能に支持する手段として2対のばね13を示したが、ばね13の数は、ステージを直線的に変位させることが可能であれば、2対に限定されるものではなく、1対あるいは2以上の複数対設けてもよい。また、ばねの形状としても、ステージを直線的に変位可能であれば、実施例1で示した形状に限定されるものではない。
【0065】
また、実施例1では、反射面11、ステージ12、ばね13、支持部14、コリメータ15を、同一のシリコン基板上に一体的に形成した例を示したが、それぞれ、別体のものを接着や接合その他の手段により一体に形成してもよい。また、これら11,12,13,14,15を形成する素材は、シリコンに限定されるものではなく、ガラスや他の有機材料などを用いることができる。
【0066】
また、実施例1では、反射面11は、ステージ12を形成するシリコンをエッチングして形成した例を示したが、これに限定されるものではなく、ステージに、ステージを形成する素材とは異なる材料を堆積あるいは接合し、これをエッチングして形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 光偏向装置
11 反射面
12 ステージ
13 ばね(弾性支持体)
14 支持部
15 コリメータ(コリメート手段)
15a 平面
15b 凸状面
16 MEMSアクチュエータ(駆動手段)
21 第1光偏向装置
22 第2光偏向装置
A 画像形成装置
B プロジェクタ(画像表示装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2004−198716号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面により形成され、光ビームを偏向可能な反射面と、
この反射面を搭載するステージと、
このステージを、支持部に相対移動可能に連結するとともに、前記支持部に対する前記ステージの駆動方向を設定する複数の弾性支持体と、
前記ステージを変位させるための駆動力を提供する駆動手段と、
この駆動手段を駆動させて前記ステージが変位するのに伴って前記反射面により偏向される光ビームを、平行光へと変換可能なコリメート手段と、
を備えていることを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
前記コリメート手段が、前記ステージあるいは前記反射面が設けられたシリコン基板に一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記駆動手段として、駆動力に圧電効果を用いる圧電素子を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向装置。
【請求項4】
前記駆動手段として、駆動力に静電力を用いる静電アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向装置。
【請求項5】
前記駆動手段として、駆動力に電磁力を用いる電磁アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向装置。
【請求項6】
前記反射面が、前記ステージを形成する材料と同じ材料をエッチングすることにより作製されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光偏向装置。
【請求項7】
前記反射面が、前記ステージ上に堆積、あるいは接合された材料をエッチングすることにより作製されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光偏向装置。
【請求項8】
前記反射面が凸面形状に形成され、
前記コリメート手段が、一面が平面で他面が凸状面の平凸レンズ状に形成されているとともに、前記反射面の反射光を、前記平面に入射し、前記凸状面から出射するよう配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の光偏向装置。
【請求項9】
光学系に、前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
光学系に、前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された光偏向装置を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像表示装置において、前記光偏向装置として、入射光を第1の方向に走査させる第1光偏向装置と、前記第1の方向に直交する第2の方向に走査させる第2光偏向装置と、を備えていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281853(P2010−281853A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132690(P2009−132690)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】