説明

光分散性繊維の製造方法およびそれによって製造した繊維

制御された数および分布の小さい独立気泡を有するポリマー構造物を製造する。該ポリマー構造物は、少なくとも部分的に独立気泡の分布、即ち、少なくとも部分的に小さい独立気泡または空隙の分布によって生じる光散乱に起因する不透明な白色化外観を特徴とする。このように、光散乱は、増大した白色化作用を与える。該白色化作用は、構造物の長さおよび幅に沿って均一または不均一であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質ポリマー繊維およびそれから製造された糸であって、改質の結果として、向上した光散乱能力を有し、それにより不透明度を選択的に増大した繊維および糸に関する。そのような増大した不透明度は、繊維およびそれから製造された糸および生地の白色度を増加させる。特に、本発明は、制御された数および分布の独立気泡を繊維が有する改質繊維およびそれから製造された糸および生地に関する。また本発明は、繊維または他の前駆構造物、例えば、フィルム、シート、リボン等において、独立気泡を形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性気泡材料は、気泡または気孔が連続していない独立気泡を有するか、または気泡または気孔が連続し、それらが形成されている物質の表面まで延在して開放穴(open pits)の構造および外観を呈しうる連続気泡を有する物質として一般に説明できる。本発明の気泡繊維は、独立型の気泡を主に含有する。
【0003】
従来、気泡形成は、米国特許第2531665号、米国特許第2751627号、米国特許第4473665号および米国特許第5158986号(それらの開示は全て参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている方法を使用して、熱可塑性シート材料に使用されている。しかし、熱可塑性シート材料における気泡形成、および核生成(nucleation)を増加させるために含浸ガスの外拡散を減少させる方法に関するこれら特許に開示されている方法は、繊維の製造に適用できないと考えられる。
【0004】
従来、気泡形成は、押出前に溶融ポリマーに発泡剤を分散させることによって、繊維中に得られる。空気、窒素、塩素化フルオロカーボンおよび他のガス、ならびに溶融ポリマー温度において気体である揮発性物質、例えば塩化メチレンおよび他のハロゲン化炭化水素、分解して気体生成物を形成する物質(例えばアジ化物)、および反応して気体生成物を形成する物質、例えば酸およびカーボネートを包含する多種多様の発泡剤が使用されている。発泡剤は、前駆樹脂に添加するか、または溶融ポリマーに分散させてよい。例えば、米国特許第4164603号および部分的に関連した米国特許第4380594号(両方とも参照として本明細書に組み入れられる)は、シリコン発泡剤を使用して形成された可変気泡を有する繊維およびその製造方法に関する。米国特許第4728472号(参照として本明細書に組み入れられる)は、独立気泡を有する繊維の製造方法であって、溶融ポリマーへのフルオロカーボン発泡剤の導入を必要とする方法を開示している。繊維押出法において発泡剤を使用して、所定パーセントの独立気泡を得ることができるが、その方法は、望ましくないほど高い独立気泡の長さ/直径比(500より大きく2,000まで)を有する物質を生じることが経験により示されている。さらに、そのような方法は、望ましくないレベルの連続気泡を生じることもある。
【0005】
実際の方法において、繊維を同時に押出し発泡させて気泡構造を創製する方法には2つの重大な欠点がある。第一に、そのような方法は、方法の複雑性により、製造の困難性を増加させる。第二に、そのような方法は、低い均質性を一般に生じる。特に、発泡繊維を押出す場合、フィラメントを壊さずに小さい均質繊維を押出すことは極めて困難である。ポリマーフィラメントは、比較的低い靱性を有し、それにより、それらを適正に延伸することを困難にする。比較的低い靱性は、糸を適正に織ることをも困難にし、従って、最終生地に必要とされる腰(body)および風合い(texture)を減少させる。さらに、糸の製造中に、非発泡繊維と同じ速度および質で発泡繊維を紡糸することも困難である。さらに、製造速度を高めるために使用される多くの添加剤(例えば、シリコン油またはポリジメチルシロキサン)は、最終生地に望ましくない。そのような添加剤は、染斑を生じ、加工機械に付着物を残し、生地の燃焼性を増加させるというような有害作用を有することがある。発泡および押出を同時に行う場合、繊維の長さに沿った異なる領域において、不透明度を制御可能に変化させることも困難であると考えられる。そのような制御された変化を与える能力は、いくつかの用途に望ましいであろう。
【0006】
上記した低均質性の課題に関して、同時発泡および押出中に、気泡の形、大きさおよび分布を制御することはできない。特に、同時押出および発泡によって形成された繊維の独立気泡は、望ましくないほど高い長さ/直径(L/D)比を有する。特に、そのような先行技術の繊維において、押出ヘッドから出てくる気泡が核を形成し、繊維が所望のデニールに引落しされるにつれて、L/D(長さ/直径比)が増加する。気泡は大きい容積を有するが、単位長さ当たりの気泡の数は結果的に少なくなる。これに対して、増大した不透明度に対応するより大きい光散乱(これは、白色度を増大させるのに望ましい)は、単位長さ当たりの、より多い気泡数、従って、より大きい表面積によって得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、制御された数および分布の小さい独立気泡を有するポリマー繊維が提供される。このポリマー繊維は、少なくとも部分的に、繊維中の独立気泡の分布、即ち、少なくとも部分的に、繊維中の小さい独立気泡または空隙の分布によって生じる光散乱に起因する不透明な外観を特徴とする。このように、光散乱は、繊維における増大した白色化作用を与える。
【0008】
本発明の他の態様によれば、改質ポリマー繊維、フィルム、シート、リボン、ブロックまたは他の構造物を製造するための方法であって、改質構造物の長さおよび/または幅に沿った所定位置において不透明度を高め、増大した白色化作用を与えるために、長さに沿っておよび/または幅を横切って連続的に存在するかまたは選択領域に存在する小さい気泡の制御された分布を有する改質構造物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記および他の態様および利点は、下記の説明、添付の図面および請求の範囲を参照して、より深く理解される。本発明を上記において全般的に説明し、特定の例示の態様、方法および手順を下記に記載および開示するが、本発明は、例示および記載されているそのような特定の態様、方法および手順に、決して限定されるものではないことを理解すべきである。むしろ、本発明の真の精神および範囲に含まれる全ての代替および変更を包含することが意図される。
また本発明は、本明細書に導入され、その一部を構成する添付の図面を参照して、さらに深く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1つの態様によれば、本発明は、改質糸、特に、その糸を構成する改質繊維に関する。これに関して、本発明は、繊維または糸の基本的製造のどのような変更も条件としない。むしろ、本発明は、あらゆる種類のポリマー繊維から製造された糸に適用できる。特に、本発明は、独立気泡の所望の分布を有する改質ポリマー繊維に関する。得られた気泡の大部分が、平均して、好ましくは500未満の長さ/直径の比を特徴とし、より好ましくは50未満の長さ/直径の比を特徴とする。
【0011】
限定するものではないが、本発明によって改質しうる繊維は、熱可塑性樹脂、例えばポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、例えば、多種多様のナイロンのいずれか、およびポリオレフィン、例えば、好ましくはポリプロピレンを包含する。容器に入れた選択した繊維の糸を、液体、例えば、窒素、空気、任意の貴ガス、低級アルカン(例えば、メタンまたはエタン)、SF、クロロフルオロカーボン、または、好ましくは二酸化炭素で含浸して、発泡を誘発する。
【0012】
特に、本発明は、第一段階として、選択した繊維(繊維、糸または生地の形態であってよい)を大気圧より高い圧力において、選択した液体で含浸することを含む。即ち、標準大気圧下では維持されないレベルで、液体を繊維に入れる。所望であれば、低温において加圧含浸を行うことによって、この含浸を補助してよい。加圧環境は、繊維の内側より繊維の外側において、より高い液体の分圧を有する非平衡状態を設定する。従って、系が平衡を求めると共に、液体が繊維に入る。理解されるように、高圧環境(一定温度に維持される)において、理想気体の法則により、所定量の気体によって占められた容積が減少して密度が増加する。温度の低下は、容積をさらに減少させ、密度を増加させる。従って、そのような条件において、増加した量の気体が繊維に注入される。
【0013】
加圧注入後に、圧力を解放して、先に注入された液体を膨張させて、容積を増加させ、密度を減少させる。そのような増加した気体容積は、気泡拡張を生じる。必要であれば、温度を上げて(均質にまたは局所的に)、容積増加および気泡拡張をさらに促進することができる。しかし、減圧と組み合わせた劇的な温度増加は、ある場合に望ましくない過度のレベルの外拡散を生じることもある。
【0014】
1つの例示的方法によれば、大気圧より高い圧力において、ポリマー繊維を選択液体で含浸する。次に、圧力を大気圧に減少させる。次に、繊維を、含浸液の相転移温度またはそれより低い温度に冷却することができる。従って、例えば、含浸液が二酸化炭素である場合、二酸化炭素の凝固点である−78.5℃より低い温度に繊維を冷却する。次に、繊維を加熱して発泡を誘発し、最後に、ある温度に冷却して発泡を停止させる。
【0015】
そのような例示的方法に従って、約200psi〜約5,000psiまたはそれ以上(好ましくは約500psi〜約5,000psiまたはそれ以上)で、約1時間〜240時間以上にわたって、容器に入れた材料上で液体を加圧することによって、ポリマー繊維の糸を液体で含浸する。例示するように、実際の時間および圧力は、繊維および所望の独立気泡形成レベルに依存する。次に、繊維を、少なくとも液体の相転移温度に冷却するのが好ましい。それと同時に、圧力を大気圧に減少させる。次に、液体含浸繊維を、好ましくは大気圧に維持し、約50℃〜300℃に加熱して、発泡を誘発させる。最後に、糸を冷却し、次に、最終製品の製造のために処理する。
【0016】
発泡の程度、従って、独立気泡の大きさ、分布および量は、高分子物質が含浸される際の圧力、高圧への暴露による含浸の時間、および次の加熱条件に依存すると考えられる。上記のように、本発明の1つの態様は、光を散乱し、それによって改質前の繊維と比較して増大した不透明度の外観を有し、それによって繊維に白色化作用を与える改質繊維を提供することである。従って、例えば二酸化チタンのような不透明化添加剤を使用せずに、改質繊維を製造することができる。これに関して、気泡によって付与される白色化作用が添加剤によって付与される利益を補足すると考えられるので、必要あれば、そのような添加剤を添加してもよいと理解すべきである。
【0017】
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の発泡繊維が光を散乱させて白色外観を生じる光学現象は、以下のように理解することができる。一般に、第一物質または媒体を通過する光が第二物質の表面と遭遇する際に、2つの現象、反射および屈折が起こりうる。即ち、光は、入射角と同じ角度および反対の角度で表面から反射することができるか、または第二物質を通過することもできる。2つの物質が異なる屈折率を有する場合、光は、表面を通過する際に方向を変える(即ち、屈折する)。次に、光が第二物質を通過し、第一物質に戻る場合、光の方向が変化する。
【0018】
本発明の目的のために、反射および屈折の簡単な光学現象が、発泡繊維における液体充填独立気泡の形、大きさおよび分布によって引き出される。特に、本発明の発泡繊維は、液体を充填された多くの小さい独立気泡を含有する。透過光が繊維を通過すると共に、その光は、各ポリマー/液体界面において、および次に再び繊維の表面から出ていく際に、屈折する。従って、光を本発明の発泡繊維に適用したときに生じる拡散反射および屈折の組合せを、拡散散乱と呼ぶことができる。本質的に、光は、あらゆる可能な方向に繊維から散乱し、それによって、増大した白色度の外観を与える。
【0019】
上記のように、本発明の繊維は、比較的低い長さ/直径(L/D)比を有する多くの小さい独立気泡を特徴とする。低L/D比を有する多数のより小さい気泡は、高L/D比を有するより少ない数のより大きい気泡より、光をよく散乱することが本発明によって見出されたことに注目すべきである。上記の背景部分に記載したように、同時に押出および発泡させる先行技術の方法は、比較的少ない数の高容積の極めて細長い気泡を生じる。これに対して、本発明の繊維は、液体含浸の前に既に延伸され配向されているので、気泡はそのような工程中に伸びを受けず、従って、かなり低いアスペクト比を有する。性能に関して、より少ない数の細長い気泡を含有する繊維は、本発明の小さい気泡を有する繊維より低い光散乱度を生じる。即ち、より少ない気泡は、光の屈折のための繊維中のより少ない界面に対応する。さらに、細長い気泡は、本質的に線状の、本質的に平行な壁であり、それによって、光は、繊維中の比較的少ない蛇行路を通る。本発明の発泡繊維の独立気泡は、無秩序内部屈折路を与えるのに充分な低いL/D比を有する。しかし、本発明に係る独立気泡は、繊維の長手方向において幾分長いことに注目すべきである。この許容される程度の伸びは、部分的に配向された糸を前駆材料として使用するために生じると考えられる。
【実施例】
【0020】
本発明の種々の態様および利点を、下記の実施例によって例示するが、それらは例示を目的とし、本発明の範囲を限定するものと解すべきでない。これらの実施例に示される特定の物質およびその量ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するために使用すべきではない。
【0021】
実施例1
図1Aは、断面全体に均一に形成された独立気泡を有する改質糸を示す。図1Bは、改質糸の繊維の側面を示す光学顕微鏡図である。光学顕微鏡測定に基づいて、気泡の長さ(L)は、均一に14μm未満であり、気泡直径(D)は0.4μm未満であり、その結果、L/Dは35未満であった。改質糸は、Wilmington, Delawareに営業所を持つDuPont de Nemoursから入手した255デニール、34フィラメント部分配向ポリエチレンテレフタレートであった。その糸を、二酸化炭素で800psiに加圧し、0℃で72時間維持して、繊維に液体を含浸させた。含浸後、糸を大気圧に減圧し、ドライアイスを入れた容器中で冷却した(固体二酸化炭素、FP=−78.5℃)。アイレットを通って糸を冷却容器から引き出し、平板原糸加工機に600m/分で通した。延伸倍率は1.70であった。次に、210℃に設定した接触加熱器で熱を適用した。最後に、糸を空冷し、巻取り前に、容器において1%メリヤス仕上油で被覆した。平板原糸加工機および仕上油の使用は、糸の製造過程の一部であるが、本発明の所望される繊維改質に不可欠ではない。しかし、この処理への耐性は、改質が元の糸の強度および関連処理特性に不利な影響を与えていないことを示唆している。
【0022】
実施例2
図2Aおよび2Bはそれぞれ、フィラメントの内側中心部分に集中し、長さ全体に存在する独立気泡を有する改質糸の繊維フィラメントの側面図および端面図である。改質糸は、DuPontから入手した225デニール、200フィラメント部分配向ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸であり、これを、二酸化炭素で875psiに加圧し、0℃で216時間維持した。二酸化炭素含浸後に、糸を大気圧に減圧し、ドライアイスを入れた容器中で冷却した(固体二酸化炭素、FP=−78.5℃)。アイレットを通って糸を冷却容器から引き出し、平板原糸加工機に約521m/分で通した。延伸倍率は1.68であった。第一接触加熱器によって220℃で、第二加熱器によって150℃で、熱を適用した。図示されているように、糸におけるフィラメントは、その長さに沿って均一に、それらの中心において発泡されている。
【0023】
実施例3
この実施例は、ナイロンへの本発明の適用性を示す。DuPontから入手した1.8dpfを有するフィラメントナイロン6,6を2−プロパノールに3.5時間浸漬することによって前処理し、次に、表面を吸取紙で乾燥させた。次に、糸を二酸化炭素で760psiに加圧し、0℃で2時間維持し、次に、大気圧に減圧し、ドライアイス/アセトンで冷却した(固体二酸化炭素、FP=−78.5℃)。次に、糸をポリエチレングリコール(PEG400)浴に187℃で入れて、発泡を誘発した。最後に、材料を室温に空冷した。低いL/D比を有する独立気泡を得た。
【0024】
実施例4
この実施例は、ポリプロピレンへの本発明の適用性を示す。二酸化炭素で5000psiに加圧し、21℃で加圧状態に4時間維持した部分配向220デニール溶液染色モノフィラメントの内側中心部分に、均一に独立気泡を形成する。次に、糸を大気圧に減圧し、ジュール・トムソン冷却によって冷却した。次に、繊維を熱湯に入れて発泡を誘発し、次に、空冷によって周囲温度に冷却した。得られた改質繊維は、長さ10μm未満、幅0.2μm未満、L/D比50未満の独立気泡を含有していた。
【0025】
実施例5
改質繊維における独立気泡の分布の制御を、図3A〜Cに示す。原繊維は、DuPontから入手した255デニール、68フィラメント部分配向ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸であり、これを、二酸化炭素で750psiに加圧し、0℃においてその圧力で48時間維持し、次に、それを大気圧に減圧し、ドライアイス/アセトンで冷却した(固体二酸化炭素、FP=−78.5℃)。アイレットを通って糸を引き出し、仮撚り原糸加工機に551m/分で通した。延伸倍率は1.684であり、D/Y比は2.060であった。ポリウレタン円板および1-7-1構成(configuration)を有するポジ5フリクションユニット(posi 5 friction unit)を使用して、撚り区画において接触加熱器によって220℃で熱を適用した。硬化区画加熱器を170℃に設定した。引き出されると共に、糸が、順次に、第一加熱器に暴露され、該加熱器から除去された。得られた糸は、熱が適用されなかった実質的な数の独立気泡が存在しない領域(図3A);低レベルの熱が適用された中程度の数の独立気泡を有する領域(図3B);および、高レベルの熱が適用された高濃度の独立気泡を有する領域;を有していた。このように、独立気泡の形成ならびに濃度を任意に制御することができる。独立気泡の分布における内部の長手方向の制御された変動は、異なるレベルの不透明度(従って白色度)を長さに沿って有する最終製品(糸)を与えた。
【0026】
異なるレベルの白色度を長さに沿って有するそのような糸の使用は、生地構造物において多くの用途を見つけることができる。例示のみの目的で、図4において、高濃度の独立気泡を有する糸の区分から形成された領域12、および低濃度の独立気泡を有する同じ糸の区分から形成された共同領域14を有する環状メリヤス管10を示す。そのような構造物において、領域12および14が未染色状態において異なるレベルの白色度を有するので、2種類の糸が使用されているように見え、均一染色処理に付された際に異なる色彩(shade)を使用しているように見える。このように、異なる糸を使用せずに多糸系の外観が得られる。
【0027】
実施例6
糸の幅を横切る位置で、気泡を選択的に集中させる能力を、図5および6に示す。図5に示すように、均一に分布した独立気泡を有する外側のフィラメント、および独立気泡を実質的に有さない内側のフィラメントを有する糸を、DuPontから入手した255デニール、68フィラメント部分配向ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸から製造した。糸を、二酸化炭素で700psiに加圧し、0℃においてその圧力で48時間維持し、次に、それを大気圧に減圧し、ドライアイスで冷却した(固体二酸化炭素、FP=−78.5℃)。次に、糸をアイレットから引き出し、仮撚り原糸加工機に400m/分で通した。延伸倍率は1.648であり、D/Y比は3.0であった。ポリウレタン円板および円板構成1-7-1を有するポジ5フリクションユニットを使用して、撚り区画において接触加熱器によって220℃で熱を適用した。硬化区画加熱器を170℃に設定した。フリクションユニットの張力(tension)は0.47であった。硬化区画加熱器を170℃に設定した。上記の条件において、糸の断面は、独立気泡の断面分布における変化を示し、周辺フィラメント中に高レベルの独立気泡を有し、内側には独立気泡を有さなかった。
【0028】
糸の1つの面を指向的に加熱することによって、糸の種々の断面部分に独立気泡を発生させることも考えられる。即ち、図6において、高レベルの独立気泡が糸の約半分を占め、他の半分はそのような高レベルの独立気泡を有さない糸を示している。勿論、所望される実質的にあらゆる他の区分配置も同様に使用することができる。
【0029】
重要なことは、本発明の方法により、前駆構造物の長さに沿った、または幅を横切る、実質的にあらゆる位置で、独立気泡の発生および濃度の両方を、選択的に任意に変化させうることである。例えば、選択した位置において、より長い時間にわたり(またはより高い温度において)、熱を適用することによって、より低い温度または短い加熱時間より、高濃度の気泡がその位置に形成される。理解されるように、そのような制御の局在性は、繊維、糸または他の前駆構造物に、所望の気泡特性を付与することにおいて、大きな自由度を与える。これは、次に、複雑なパターンの変動気泡濃度が構造物中に生じることを可能にし、それによって、構造物に沿ったおよび/またはそれを横切る異なる領域が、異なるレベルの白色度を有し、染料または他の着色剤で処理したときに異なる外観を与える。
【0030】
いくつかの例示的な態様、手順および方法を示し説明したが、本明細書の検討および/または本発明の実施によって、当業者なら、それらに変更を加えることができ、本発明の原理の他の態様を当然に思い浮かぶので、本発明はそれらに決して限定されるものではないと理解すべきである。特に、予め形成した繊維および糸に関して記載した加圧含浸および次の発泡手順は、他の多くのポリマー構造物にも適用しうると考えられる。特に、本発明の方法および得られる制御された独立気泡配置は、実質的にあらゆるポリマー前駆構造物に適用しうると考えられる。例示のためだけであり、限定するものではないが、そのような前駆構造物は、繊維に適するものとして先に示した任意の高分子物質のフィルム、シート、リボンおよびブロックを包含しうると考えられる。従って、本発明は、本発明の原理および範囲を逸脱せずに使用しうる上記および他の変更および変化にも及ぶと理解すべきであり、特許請求の範囲によって、本発明の真の精神および範囲内の本発明の特徴を導入しうるあらゆるそのような変更および他の態様を包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】光学顕微鏡によるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィラメント糸の切片の顕微鏡図であり、該フィラメント糸のフィラメントにおける気泡構造を示す。
【図2】PETフィラメントの顕微鏡図であり、フィラメントの中心に集中した気泡を有するフィラメントにおける、制御された気泡形成を示す。
【図3】PETフィラメントにおける気泡形成の漸進図であり、所望の特性を得るために気泡形成を選択的に活性化、制御および不活性化する能力を示す。
【図4】生地構造物内の領域において変動レベルの不透明度を与える、変動気泡濃度を有する区分を有する連続糸から製造した環状メリヤス生地構造物を示す。
【図5】気泡濃度を糸の周辺において高めたマルチフィラメント糸構造物を示す。
【図6】気泡濃度を糸の片面において高めたマルチフィラメント糸構造物を示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に長さおよび長手方向に垂直の断面を有する改質ポリマー繊維であって、該繊維が独立気泡を含有し、該独立気泡が、ポリマー繊維の長手方向に長さおよび該繊維の長手方向に垂直の直径を有し、該独立気泡が約500未満の平均長さ/直径比を有する改質ポリマー繊維。
【請求項2】
独立気泡が、約50未満の平均長さ/直径比を有する請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項3】
ポリエステルを含んで成る請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項4】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートを含んで成る請求項3に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項5】
ポリアミドを含んで成る請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項6】
ポリオレフィンを含んで成る請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリプロピレンである請求項6に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項8】
独立気泡が、繊維の長さ全体に均一に分布している請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項9】
独立気泡が、繊維の断面全体に均一に分布している請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項10】
独立気泡が繊維の発泡区分に分布し、独立気泡を含有しない非発泡区分をも含んで成る請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項11】
繊維の長さに沿った既定領域が、異なる既定濃度の独立気泡を特徴とするように、独立気泡が繊維の長さに沿って実質的に不均一に分布している請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項12】
繊維の断面における既定領域が、異なる既定濃度の独立気泡を特徴とするように、独立気泡が繊維の断面において実質的に不均一に分布している請求項1に記載の改質ポリマー繊維。
【請求項13】
改質ポリマー繊維を含んで成る糸であって、各ポリマー繊維が、長手方向に長さおよび長手方向に垂直の断面を有し、該糸が、ポリマー繊維の長手方向に長さおよび長手方向に垂直の断面を有し、該糸の断面が、内側中心部分の繊維および外側周辺部分の繊維を含んで成り、該繊維が独立気泡を含有し、該独立気泡が、ポリマー繊維の長手方向に長さおよび該繊維の長手方向に垂直の直径を有し、該独立気泡が約500未満の平均長さ/直径比を有する糸。
【請求項14】
独立気泡が、約50未満の平均長さ/直径比を有する請求項13に記載の糸。
【請求項15】
繊維がポリエステルを含んで成る請求項13に記載の糸。
【請求項16】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートを含んで成る請求項15に記載の糸。
【請求項17】
繊維がポリアミドを含んで成る請求項13に記載の糸。
【請求項18】
繊維がポリオレフィンを含んで成る請求項13に記載の糸。
【請求項19】
ポリオレフィンがポリプロピレンを含んで成る請求項18に記載の糸。
【請求項20】
独立気泡が、繊維の長さ全体に均一に分布している請求項13に記載の糸。
【請求項21】
独立気泡が、繊維の断面全体に均一に分布している請求項13に記載の糸。
【請求項22】
独立気泡が、糸断面の繊維の外側周辺部分全体に選択的に分布している請求項13に記載の糸。
【請求項23】
独立気泡が糸の繊維の発泡区分に分布し、独立気泡を含有しない糸の繊維の非発泡区分をも含んで成る請求項13に記載の糸。
【請求項24】
糸の長さに沿った既定領域が、異なる既定濃度の独立気泡を特徴とするように、独立気泡が糸の長さに沿って実質的に不均一に分布している請求項13に記載の糸。
【請求項25】
糸の断面における既定領域が、異なる既定濃度の独立気泡を特徴とするように、独立気泡が糸の断面において実質的に不均一に分布している請求項13に記載の糸。
【請求項26】
下記の工程を含んで成る改質ポリマー構造物の製造方法:
ポリマー前駆構造物を選択し;
該前駆構造物を、大気圧より高い圧力において液体で含浸し;
該前駆構造物を、発泡温度より高い温度に加熱して、発泡を誘発し;そして
該発泡構造物を、発泡温度より低い温度に冷却して、発泡を停止する
(該方法において、発泡温度とは、含浸圧において発泡が生じる温度である)。
【請求項27】
下記の工程を含んで成る改質ポリマー繊維の製造方法:
原ポリマー繊維を選択し;
該原繊維を、大気圧より高い圧力および発泡温度より低い温度において液体で含浸し;
圧力を大気圧に下げ、同時に、発泡温度より低い温度に維持し;
液体で含浸したポリマー繊維を、大気圧において、液体の相転移温度より低い温度に冷却し;
液体で含浸したポリマー繊維を、大気圧において、発泡温度より高い温度に加熱して、発泡を誘発し;そして
発泡したポリマー繊維を、発泡温度より低い温度に冷却して、発泡を停止する
(該方法において、発泡温度とは、含浸圧において発泡が生じる温度である)。
【請求項28】
液体が二酸化炭素を含んで成る請求項27に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−501340(P2007−501340A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522623(P2006−522623)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/024514
【国際公開番号】WO2005/016612
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500524682)ミリケン・アンド・カンパニー (23)
【Fターム(参考)】