説明

光制御フィルム及びこれを用いたバックライト装置

【課題】ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、バックライト型液晶表示装置などのバックライト装置を薄型化かつ高輝度化できる光制御フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層12と、異方性拡散層14とにより構成されてなるものであって、前記等方性拡散層12のヘーズが、70%以上である。また、本発明のバックライト装置13は、線状光源1と、前記線状光源1上に配置される本発明の光制御フィルムとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の用途に用いられるバックライト装置を構成する部材として好適に用いられる光制御フィルム、及びこれを用いたバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネル(液晶表示モジュールなど)を裏面から照明するバックライト型表示装置(液晶表示装置)においては、表示パネルの裏面にバックライトユニットが配設されている。また、表示パネルに対する照射光を面光源として均一化し、かつ液晶表示装置の正面輝度を上げるため、拡散板、拡散シート、プリズムシート又は輝度向上シート(反射型偏光板等)などが使用されている。また、液晶表示装置において、液晶セルの構成部材として、偏光板、位相差板やカラーフィルターなども使用されている。
【0003】
具体的には、例えば、画像表示領域がフラット(平面)な面型表示装置(平面型表示装置)として、図1に示されるように、面型表示ユニット(透過型液晶表示ユニットなど)5と、このユニットを背面側から照明するためのバックライトユニットとを備えた装置が知られている。このバックライトユニットは、1又は複数の蛍光放電管(冷陰極管)1を有しており、前記蛍光放電管1の背面側には光を反射するための反射板2が配設され、蛍光放電管1と面型表示ユニット5との間には光を拡散して面型表示ユニット5を均一に照明するための拡散板3が配設され、この拡散板3の表示ユニット側にはプリズムシート4が積層されている。前記面型表示ユニット5は、液晶表示ユニットの場合、第1の偏光フィルム6a、第1のガラス基板7a、このガラス基板に形成された第1の電極8a、この電極上に積層された第1の配向膜9a、液晶層10、第2の配向膜9b、第2の電極8b、カラーフィルター11、第2のガラス基板7b、および第2の偏光フィルム6bを順次積層することにより形成されている。このような表示装置では、内蔵された蛍光管(冷陰極管)1により面型表示ユニット5を背面から直接照射できる。
【0004】
このような線状光源を使用したバックライト方式は、近年の液晶テレビの大型化に伴い、液晶表示装置における重要性が非常に高くなってきている。また、近年、このようなバックライト装置では、光源の高輝度化及び装置の薄肉化がなされる傾向にある。このような傾向のバックライト装置では、ランプイメージ(光源であるランプの形状に起因した像であり、ランプの存在がぼんやりとわかるイメージ)がより発現し易いものとなっている。
【0005】
また、バックライト方式では、線状光源の軸方向と、この軸方向に対して直交する方向での輝度分布が異なり、表示ユニットの均一な照明が困難であるため、視野角の拡大が困難である。そのため、拡散シートとして、光学的に異方的散乱特性を有する異方性光散乱シートを用い、異方性散乱特性を利用して輝度を均一化している。例えば、異方性光散乱シートを樹脂で構成された連続相と、前記連続相の樹脂とは屈折率の異なる樹脂で構成された分散相とにより構成し、当該分散相の長軸方向を線状光源の軸方向に向けて配置することにより、長軸方向と短軸方向の輝度分布が異なる光源を用いても、異方性散乱特性を利用して透過光の輝度を均一化できる方法などが知られている。しかし、このような異方性散乱特性を有する異方性光散乱シートを用いても、ランプイメージの発現を十分に抑制することができていなかった。
【0006】
さらに、バックライト方式では、線状光源が表示ユニットに近接しているため、表示ユニットが加熱され、拡散シートにも耐熱性が要求される。なお、耐熱性及び透明性の高い樹脂としてポリカーボネート系樹脂が知られている。しかし、ポリカーボネート系樹脂は溶融流動性が低いため、溶融押し出し成形などの溶融成形法により光拡散フィルムを工業的に効率よく製造することが困難である。また、ポリカーボネート系樹脂は分散相の成分との親和性もさほど高くないため、分散相との界面でボイドが生成し易く、分散相を均一に形成することも困難である。
【0007】
ここで、バックライト方式の一例として、管状光源と、この管状光源からの光を側面から入射して平坦な出射面から出射させて表示ユニットを照明するための導光部材と、前記導光部材と前記表示ユニットとの間に配設され、かつ前記管状光源からの光により前記表示ユニットを均一に照明するための少なくとも1つの異方性光散乱フィルムとを備えている面光源ユニットであって、前記異方性光散乱フィルムが、異方性散乱層の両面に透明樹脂層が積層された積層フィルムで構成され、前記異方性光散乱層が、樹脂で構成された連続相と、この連続相に平均アスペクト比5〜1000で分散し、かつ前記連続相の樹脂と屈折率が異なる樹脂で構成された分散相とで構成されているとともに、プロピレン系樹脂とスチレン系樹脂との組み合わせ、又はプロピレン系樹脂とポリカーボネート樹脂との組み合わせで構成され、前記透明樹脂層が、前記連続相と同一の樹脂であって、ガラス転移温度又は融点が130〜280℃の透明樹脂で構成され、前記導光部材と前記表示ユニットとの間に、複数の異方性光散乱フィルムが光散乱の方向性を互いに異にして配置されている面光源ユニットが開示されている(特許文献1)。
【0008】
しかし、この面光源ユニットでも、近年の高輝度化及び薄肉化されたバックライト型表示装置では、表示面での輝度の均一化が不十分であり、ランプイメージが残存する。さらに、ポリカーボネート系樹脂とポリプロピレン系樹脂との組み合わせが記載されているが、両樹脂の詳細及び具体的な調整方法は記載されていない。従って、このフィルムでは、ボイドの発生がなく、光散乱特性に優れたフィルムを作製するためには、相溶化剤の配合が必須であり、シートの調整が困難である。
【0009】
一方、光拡散性を向上させる方法としては、プラスチックシートをレンズ形状に賦形する方法も知られており、このようなレンズ形状と光拡散剤による光拡散機能とを組み合わせた方法も提案されている。例えば、直下式光源装置に用いる拡散板において、光拡散剤が配合された樹脂板の表面にプリズム列が賦形されてなり、該プリズム列の凸部と凹部がともに曲面形状であり、かつ凹部曲率半径が凸部曲率半径より小さいことを特徴とする高拡散板が開示されている(特許文献2)。また、この文献には、樹脂板の基材樹脂として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、PE、PET、SAN、脂環式アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、オレフィン・マレイミド交互共重合体、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、非晶フッ素系樹脂などが記載されている。
【0010】
しかし、この拡散板は、光拡散剤で構成された分散相が等方性であるため、輝度の均一化が十分ではない。さらに、拡散板の耐熱性が低いため、導光板を用いることなく、光源を背面から直接照射する方式(直下型)の装置など、温度の高い環境下で拡散板を使用すると、フィルムが変形したり、マトリックス相の熱安定性が低い場合には延伸を伴う歪みにより収縮や分散相の形態が変化するため、光拡散特性が変化し、透過光の輝度を均一化できなくなる。
【0011】
さらに、入射光を光の進行方向に散乱可能な光散乱フィルムであって、散乱角θと散乱光強度Fとの関係を示す散乱特性F(θ)において、フィルムのX軸方向の散乱特性をFx(θ)、Y軸方向の散乱特性をFy(θ)としたとき、θ=4〜30゜の範囲で、式:Fy(θ)/Fx(θ)>5を充足する異方性光散乱フィルムが開示されている(特許文献3)。この文献には、連続相が結晶性オレフィン系樹脂で構成され、分散相が非晶性ポリエステル系樹脂で構成されたフィルムが記載されている。さらに、フィルム表面に、フィルムのX軸方向に延びる凹凸部が形成されているフィルムも記載されている。
【0012】
しかし、この異方性散乱フィルムでも、表面の凹凸部の形状は微小であるため、レンズ効果としては十分ではなく、表示面での輝度の均一化が不十分であり、ランプイメージが残存する。さらに、この異方性光散乱フィルムも耐熱性が低いため、直下型の装置では、光拡散特性が変化し、透過光の輝度を均一化できなくなる。
【0013】
【特許文献1】特開2002−216521号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−016819号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−159704号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、バックライト型液晶表示装置などの面光源装置を薄型化かつ高輝度化できる光制御フィルム及びこれを用いたバックライト装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、高温下で使用しても光拡散特性の変化を抑制できる光制御フィルム及びこれを用いたバックライト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、等方的な拡散性を発揮する少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方的な拡散性を発揮する異方性拡散層とにより光制御フィルムを構成し、かつ、等方性拡散層のヘーズが70%以上のものとすることにより、ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、バックライト型液晶表示装置などの面光源装置を薄型化かつ高輝度化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成されてなるものであって、等方性拡散層のヘーズが70%以上であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の光制御フィルムは、異方性拡散層が、透明樹脂で構成された連続相と、この連続相と異なる屈折率を有し、かつ長軸方向が一方の方向に配向した粒子状分散相とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の光制御フィルムは、二枚以上の等方性拡散層を重ねたときのヘーズが、90%以上であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のバックライト装置は、線状光源と、線状光源上に配置される光制御フィルムとを備えたものにおいて、光制御フィルムとして、本発明の光制御フィルムを用いることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のバックライト装置は、異方性拡散層の粒子状分散相の長軸方向を、線状光源の軸方向と平行となるように配置してなることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のバックライト装置は、光制御フィルムを、線状光源側から、異方性拡散層、二枚以上の等方性拡散層の順で配置してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光制御フィルムは、等方的な光拡散性を発揮する少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方的な光拡散性を発揮する異方性拡散層とにより光制御フィルムを構成し、かつ、等方性拡散層のヘーズが70%以上であることにより、ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、バックライト型液晶表示装置などのバックライト装置の薄型化かつ高輝度化を実現することができる。
【0024】
また、本発明の光制御フィルムは、それ自体でランプイメージ(ランプ像)の発現を抑制しうるものであるため、バックライト装置に用いる際に、従来必須であった拡散板自体を省略することができる。また、本発明の光制御フィルムによれば、正面方向への輝度をも高めることができるため、光を集光させるためのプリズムシートを省略することも可能となる。従って、本発明の光制御フィルムを用いたバックライト装置によれば、従来のバックライト装置に比べ、薄型化、原材料費の削減、組み立て加工コストの削減等を図ることができ、大幅なコスト低減が達成できるだけでなく、表示体の輝度向上にも寄与することができる。
【0025】
なお、本明細書において、「フィルム」とは、厚さの如何を問わず、シートを含む意味に用いる。
【0026】
また、「ヘーズ」とは、JIS K7136:2000で規定されるヘーズをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成されてなり、かつ、等方性拡散層のヘーズが70%以上のものである。以下、本発明の光制御フィルムの実施の形態について説明する。
【0028】
異方性拡散層は、透明樹脂で構成された連続相と、この連続相と異なる屈折率を有し、かつ長軸方向が一方の方向に配向した粒子状分散相とを含んで構成されている。
【0029】
連続相を構成する透明樹脂には、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂(フッ素系樹脂を含む)、ビニルアルコール系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)など)、および熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂など)などが含まれる。これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの透明樹脂のうち、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0030】
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネートなどが含まれる。ビスフェノール類としては、例えば、ジヒドロキシビフェニルなどのビフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4−4’−ジ(ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジ(ヒドロキシフェニル)エーテル類、4−4’−ジ(ヒドロキシフェニル)ケトンなどのジ(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビスフェノールSなどのジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、9−9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビスフェノールフルオレン類などが挙げられる。これらのビスフェノール類は、C2-4アルキレンオキサイド付加体であってもよい。これらのビスフェノール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
ポリカーボネート系樹脂はジカルボン酸成分(脂肪族、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸又はその酸ハライドなど)を共重合したポリエステルカーボネート系樹脂であってもよい。これらのポリカーボネート系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいポリカーボネート系樹脂は、ビス(ヒドロキシフェニル)C1-6アルカン類をベースとする樹脂、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂である。
【0032】
ポリカーボネート系樹脂の数平均分子量は、10000〜50000(例えば、15000〜30000)程度の範囲から選択でき、例えば、12500〜30000(例えば、15000〜25000)、好ましくは17000〜25000(例えば、18000〜22000)程度である。ポリカーボネート系樹脂の分子量が小さすぎるとフィルムの強度が低下し、分子量が大きすぎると溶融流動性及び分散相の均一分散性が低下しやすい。前記ポリカーボネート系樹脂と特定のポリプロピレン系樹脂とを組み合わせると、相溶化剤を使用しなくても、ボイドを発生することなく、アスペクト比の高い分散相を形成できる。
【0033】
ポリカーボネート系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ISO1133(300℃、1.2kg荷重(11.8N))に準拠して、例えば、3〜30g/10分(例えば、4〜20g/10分)程度の範囲から選択でき、通常5〜30g/10分(例えば、5〜15g/10分)、好ましくは6〜25g/10分(例えば、7〜20g/10分)、さらに好ましくは8〜15g/10分(例えば、9〜12g/10分)程度である。
【0034】
ポリカーボネート系樹脂の融点又はガラス転移温度は、例えば、130〜280℃程度、好ましくは140〜270℃程度、さらに好ましくは150〜260℃程度である。
【0035】
このようなポリカーボネート系樹脂は、製品カタログにおいて「中粘度品」、「低粘度品」、「ハイフロー」グレードとして分類されている場合が多い。
【0036】
分散相も、前記連続相と同様の透明樹脂のうち、前記連続相を構成する樹脂と屈折率の異なる樹脂が単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの透明樹脂のうち、分散相を形成する透明樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂には、ポリプロピレン(単独重合体)、プロピレンと共重合性単量体との共重合体が含まれる。共重合性単量体としては、オレフィン類(エチレンのほか、ブテン、ペンテン、ヘプテン、ヘキセンなどのα−C4-10オレフィンなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど)、脂肪族ビニルエステル類(酢酸ビニルなど)、ジエン類などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの共重合性単量体のうちα−オレフィン類(エチレン、ブテンなど)を用いる場合が多い。
【0038】
プロピレン系共重合体において、プロピレン含量は、80モル%以上(80〜100モル%)、好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である場合が多い。プロピレン系共重合体は、ブロック共重合体などであってもよいが、通常、ランダム共重合体である場合が多い。
【0039】
好ましいポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体などである。ポリプロピレン系重合体としては、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体を用いる場合が多い。
【0040】
ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー触媒などを用いた重合体であってもよいが、メタロセン触媒を用いたメタロセン触媒系樹脂であるのが好ましい。前記メタロセン触媒系樹脂は、分子量分布が狭く低分子量成分及び低結晶成分が少ないという特色がある。そのためか、相溶化剤を用いなくても、ポリカーボネート系樹脂のマトリックス相にポリプロピレン系樹脂相(分散相)を均一に分散できる。
【0041】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、例えば、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=1〜2.5(例えば、1.2〜2.3)、好ましくは1.3〜2(例えば、1.5〜1.8)程度であり、通常、1.3〜2.5(例えば、1.5〜2.0)程度であってもよい。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば、1×104〜100×104、好ましくは2×104〜75×104(例えば、3×104〜50×104)、さらに好ましくは3×104〜30×104程度であってもよい。また、GPCにおいて、分子量10000以下の低分子量成分の含有量は、例えば、1体積%以下、好ましくは0.5体積%以下、さらに好ましくは0.3体積%以下である。なお、GPCによる分子量及び分子量分布は、装置:Waters Alliance GPCV-2000、カラム:PL20μm MIXED-A、検出器:RI、溶媒:o−ジクロロベンゼンを用い、温度:135℃で測定できる。上記分子量及び分子量分布は、基準物質として単分散ポリスチレンを用い、汎用較正曲線法により較正したポリプロピレン換算の値である。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、例えば、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重(21.2N))に準拠して、例えば、3〜20g/10分、好ましくは4〜15g/10分、さらに好ましくは5〜10g/10分程度である。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂は結晶性であってもよく、結晶性ポリプロピレン系樹脂の結晶化度は、例えば、10〜80%程度、好ましくは20〜70%程度、さらに好ましくは30〜60%程度であってもよい。ポリプロピレン系樹脂の融点(示差走査熱量計DSCでの融解ピーク温度)は、例えば、100〜140℃、好ましくは110〜135℃、さらに好ましくは115〜130℃(例えば、120〜130℃)程度である。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂として、共重合体(プロピレン−エチレンランダム共重合体など)やメタロセン触媒を用いたメタロセン系樹脂、特に、メタロセン系共重合体が好ましい。
【0045】
このようなポリプロピレン系樹脂を前記ポリカーボネート系樹脂と組み合わせると、前述のように実質的に相溶化剤を含まなくても、ボイドを発生することなく分散相(所定のアスペクト比を有する分散相など)を形成できる。
【0046】
分散相を構成する樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)と、連続相を構成する樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)との融点又はガラス転移温度の差は、例えば、10〜200℃、好ましくは、30〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃程度であってもよい。
【0047】
さらに、連続相を構成する樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の前記MFRと、分散相を構成する樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)の前記MFRとの割合は、前者/後者=0.8/1〜2.5/1(例えば、0.9/1〜2.3/1)、好ましくは1/1〜2/1、さらに好ましくは1.2/1〜1.7/1程度であってもよい。
【0048】
光拡散性を付与するため、連続相と分散相とは、互いに屈折率の異なる成分で構成されている。連続相(例えば、ポリカーボネート系樹脂)と分散相(例えば、ポリプロピレン系樹脂)との屈折率の差は、例えば、0.001以上(例えば、0.001〜0.3程度)、好ましくは0.01〜0.3程度、さらに好ましくは0.01〜0.1程度である。
【0049】
異方性拡散層において、連続相と分散相との割合は、樹脂の種類や溶融粘度、光拡散性などに応じて、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70(例えば、95/5〜40/60)程度の範囲から選択でき、例えば、99/1〜50/50(例えば、95/5〜50/50)、好ましくは99/1〜75/25(例えば、93/7〜70/30)、さらに好ましくは95/5〜60/40程度であり、特に90/10〜75/25程度であってもよい。
【0050】
前記ポリカーボネート系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを組み合わせると、実用的な熱安定性を有するだけでなく、一軸延伸温度などの配向処理温度で分散相が容易に変形し、透過光を異方的に拡散するフィルムが得られる。しかも、押出成形工程でのドロー比や一軸延伸などの配向処理により分散相粒子のアスペクト比をコントロールでき、アスペクト比の大きな分散相も容易に形成できる。さらに、連続相がポリカーボネート系樹脂で構成されているため、耐熱性や耐ブロッキング性を高めることができる。
【0051】
また、マトリックス相(連続相)をポリカーボネート系樹脂で構成し、分散相をポリプロピレン系樹脂で構成することで、耐熱性が高く、高温化で使用しても長期間に亘り光拡散特性の変化を抑制することができる。
【0052】
異方性拡散層は、必要に応じて相溶化剤を含有してもよい。相溶化剤を用いると、連続相と分散相との混和性および親和性を高めることができ、フィルムを配向処理しても欠陥(ボイドなどの欠陥)が生成するのを防止でき、フィルムの透明性の低下を防止できる。さらに、連続相と分散相との接着性を高めることができ、フィルムを一軸延伸しても、延伸装置への分散相の付着を低減できる。
【0053】
相溶化剤としては、例えば、ビスオキサゾリン化合物、変性基(カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリニル基など)で変性された変性オレフィン系樹脂、ジエン又はゴム含有重合体[例えば、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体の単独重合体、又はジエン系単量体と共重合性単量体(スチレンなどの芳香族ビニル単量体など)との共重合により得られるジエン系共重合体(ランダム共重合体など);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのジエン系グラフト共重合体;スチレン−ブタジエン(SB)ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン(SB)ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素化(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン)ブロック共重合体などのジエン系ブロック共重合体又はそれらの水素添加物など]、前記変性基(エポキシ基など)で変性したジエン又はゴム含有重合体(前記ブロック共重合体など)などが例示できる。これらの相溶化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
前記ジエン系単量体としては、共役ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエンなどの置換基を有していてもよいC4-20共役ジエンが挙げられる。共役ジエンは単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの共役ジエンのうち、ブタジエン、イソプレンが好ましい。前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン(p−メチルスチレンなど)、p−t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン類などが挙げられる。これらの芳香族ビニル単量体のうち、スチレンが好ましい。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
なお、変性は、変性基に対応する単量体(例えば、カルボキシル基変性では(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体、酸無水物基変性では無水マレイン酸、エステル基変性では(メタ)アクリル系単量体、マレイミド基変性ではマレイミド系単量体、エポキシ変性では、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体)を共重合することにより行うことができる。また、エポキシ変性は、不飽和二重結合のエポキシ化により行ってもよい。
【0056】
相溶化剤としては、通常、ポリマーブレンド系の構成樹脂と同じ又は共通する成分を有する重合体(ランダム、ブロック又はグラフト共重合体)、ポリマーブレンド系の構成樹脂に対して親和性を有する重合体(ランダム、ブロック又はグラフト共重合体)などが使用される。
【0057】
好ましい相溶化剤は、未変性又は変性ジエン系共重合体、特に変性ブロック共重合体(例えば、エポキシ化されたスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体などのエポキシ化ジエン系ブロック共重合体又はエポキシ変性ジエン系ブロック共重合体)である。エポキシ化ジエン系ブロック共重合体は、透明性が高いだけでなく、軟化温度が約70℃程度と比較的高く、連続相(例えば、ポリカーボネート系樹脂)と分散相(例えば、ポリプロピレン系樹脂)との多くの組み合わせにおいて樹脂を相溶化させ、分散相を均一に分散できる。
【0058】
前記ブロック共重合体は、例えば、共役ジエンブロック又はその部分水素添加ブロックと、芳香族ビニルブロックとで構成できる。エポキシ化ジエン系ブロック共重合体において、前記共役ジエンブロックの二重結合の一部又は全部がエポキシ化されている。芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロック(又はその水素添加ブロック)との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=5/95〜80/20程度(例えば、25/75〜80/20程度)、さらに好ましくは10/90〜70/30程度(例えば、30/70〜70/30程度)であり、通常、50/50〜80/20程度である。
【0059】
ブロック共重合体の数平均分子量は、例えば、5,000〜1,000,000程度、好ましくは7,000〜900,000程度、さらに好ましくは10,000〜800,000程度の範囲から選択できる。分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)]は、例えば、10以下(1〜10程度)、好ましくは1〜5程度である。
【0060】
ブロック共重合体の分子構造は、直線状、分岐状、放射状あるいはこれらの組み合わせであってもよい。ブロック共重合体のブロック構造としては、例えば、モノブロック構造、テレブロック構造などのマルチブロック構造、トリチェインラジアルテレブロック構造、テトラチェインラジアルテレブロック構造などが例示できる。このようなブロック構造としては、芳香族ジエンブロックをX、共役ジエンブロックをYとするとき、例えば、X−Y型、X−Y−X型、Y−X−Y型、Y−X−Y−X型、X−Y−X−Y型、X−Y−X−Y−X型、Y−X−Y−X−Y型、(X−Y−)4Si型、(Y−X−)4Si型などが例示できる。
【0061】
エポキシ化ジエン系ブロック共重合体中のエポキシ基の割合は、特に制限されないが、オキシランの酸素濃度として、例えば、0.1〜8重量%、好ましくは0.5〜6重量%、さらに好ましくは1〜5重量%程度である。エポキシ化ブロック共重合体のエポキシ当量(JIS K 7236)は、例えば、300〜1000程度、好ましくは500〜900程度、さらに好ましくは600〜800程度であってもよい。
【0062】
なお、相溶化剤(エポキシ化ブロック共重合体など)の屈折率は、分散相樹脂と略同程度(例えば、ポリプロピレン系樹脂との屈折率の差が、0〜0.01程度、好ましくは0〜0.005、特に0.001〜0.005程度)であってもよい。
【0063】
前記エポキシ化ブロック共重合体は、ジエン系ブロック共重合体(又は部分的に水素添加されたブロック共重合体)を慣用のエポキシ化方法、例えば、不活性溶媒中、エポキシ化剤(過酸類、ハイドロパーオキサイド類など)により前記ブロック共重合体をエポキシ化する方法により製造できる。
【0064】
相溶化剤の使用量は、例えば、樹脂組成物全体(例えば、ポリカーボネート系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の総量)の0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%程度の範囲から選択できる。なお、前記のように、本発明では、特定の前記ポリカーボネート系樹脂と特定のポリプロピレン系樹脂とを組み合わせることにより相溶化剤を含んでいなくても分散相を均一に分散できる。また、一軸延伸などの配向処理をしてもボイドがなく、透過率の高い異方性光拡散層を形成できる。
【0065】
好ましい異方性光拡散層において、連続相、分散相、及び相溶化剤の割合は、例えば、以下の通りである。
(1)連続相/分散相(重量比)=99/1〜50/50程度、好ましくは97/3〜60/40程度、さらに好ましくは95/5〜70/30程度、特に90/10〜80/20程度、
(2)分散相/相溶化剤(重量比)=100/0〜50/50程度、好ましくは99/1〜70/30程度、さらに好ましくは98/2〜80/20程度。
【0066】
なお、本発明では、前記ポリカーボネート系樹脂と前記ポリプロピレン系樹脂とを組み合わせることにより相溶化剤を含んでいなくても分散相を均一に分散できる。
【0067】
このような割合で各成分を用いると、予め各成分をコンパウンド化することなく、各成分のペレットを直接的に溶融混練しても、均一に分散相を分散でき、一軸延伸などの配向処理によりボイドが発生するのを防止でき、透過率が高く、異方性を有する異方性光拡散層を得ることができる。
【0068】
より具体的には、例えば、連続相としてのポリカーボネート系樹脂と、分散相としてのポリプロピレン系樹脂とを、前記割合で含む樹脂組成物を用いると、コンパウンド化が容易であり、原材料をフィードするだけで、コンパウンド化しながら溶融製膜でき、一軸延伸してもボイドのない異方性光拡散層を形成できる。
【0069】
なお、ポリプロピレン系樹脂に加えて、ポリエチレン系樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレートホモポリエステル、アルキレンアリレート単位の含有量が80モル%以上のコポリエステル、液晶性芳香族ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミドなど)などの重合体、シリカなどの無機粒子を、分散相の成分として使用してもよい。
【0070】
さらに、異方性拡散層は、慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤など)、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを含有してもよい。
【0071】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒドロキノン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが例示できる。フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−’メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのアルキルフェノール系酸化防止剤;n−オクタデシル[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC10-35アルキル[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルカンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルキレントリオール−トリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルキレンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)などのN,N’−C2-10アルキレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)などが好ましい。
【0072】
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニルナフチルアミン、N−N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0073】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2−5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれる。また、イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0074】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのサリチル酸エステル系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応性生物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン)と2−エチルヘキシルグリシド酸エステルとの反応性生物、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが例示できる。
【0075】
光安定剤(HALS)としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン骨格を有する化合物、例えば、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアゼデカン−1,10−ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニルオキシ)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリニニル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セパケート、これらのジカルボン酸エステルに対応するC4-20アルカン−ジカルボン酸エステル(マロネート、アジペートなど)やアレーンジカルボン酸エステル(テレフタレートなど)などが例示できる。
【0076】
熱安定剤としては、例えば、ホスファイト系安定剤(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのトリス(分岐アルキルフェニル)ホスファイト、ビス(アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイトなど)などのリン系安定剤(又はリン酸エステル)、イオウ系熱安定剤、ヒドロキシルアミン系熱安定剤などが挙げられる。
【0077】
これらの安定剤(例えば、光安定剤など)は低分子量タイプであってもよく高分子量タイプであってもよい。また、安定剤は単独で使用してもよく、二種以上の成分を組み合わせた形態(例えば、酸化防止剤と紫外線吸収剤との組み合わせ、紫外線吸収剤と光安定剤との組み合わせ、酸化防止剤と紫外線吸収剤と光安定剤との組み合わせなど)で使用してもよい。各安定剤の使用量は、異方性拡散層を構成する樹脂成分100重量部に対して0.01〜2.5重量部、好ましくは0.03〜2重量部(例えば、0.05〜1.5重量部)、さらに好ましくは0.07〜1重量部(例えば、0.1〜0.7重量部)程度である場合が多く、通常、0.07〜0.5重量部(例えば0.1〜0.3重量部)程度である。より具体的には、酸化防止剤は、樹脂成分100重量部に対して0.05〜1重量部(例えば、0.08〜0.3重量部)程度、紫外線吸収剤は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜2重量部(例えば、0.2〜0.7重量部)程度、光安定剤は、樹脂成分100重量部に対して0.03〜0.5重量部(例えば、0.05〜0.25重量部)程度であってもよい。なお、上記安定剤の総量は、樹脂成分100重量部に対して0.05〜3重量部(例えば、0.1〜2重量部)、好ましくは0.1〜1重量部程度であってもよい。さらに、複数種の安定剤を併用する場合、第一の安定剤(例えば、酸化防止層)と第2の安定剤(例えば、紫外線吸収剤)との割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜10/90(例えば、90/10〜30/70)程度の範囲から選択できる。
【0078】
なお、ポリカーボネート系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを組み合わせたアロイ系を溶融押出成形又はコンパウンド化すると、ダイリップ(特にダイリップの開口部に隣接する壁部)に押出物の一部が目やに状に次第に堆積し、この堆積物が成長してダイリップから押し出される溶融シートと接触し、不均一なシートを形成する。そのため、均一なシート及びフィルムを連続的に製造することができなくなる。このような場合、前記安定剤(例えば、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤)、特に酸化防止剤及び紫外線吸収剤から選択された少なくとも一方(酸化防止剤単独、紫外線吸収剤単独、酸化防止剤及び紫外線吸収剤など)を含有させると、前記堆積物の生成とその成長を顕著に防止でき、均一なシート及びフィルムを連続的に製造できる。なお、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤)、特に少なくとも酸化防止剤は、ダイリップと接触する異方性拡散層に含有させてもよく、異方性拡散層に透明樹脂層を積層させる場合では、異方性拡散層に積層された透明樹脂層に含有させてもよく、異方性拡散層及び透明樹脂層に含有させてもよい。異方性拡散層は、通常、酸化防止剤及び紫外線吸収剤から選択された少なくとも一方を含む場合が多い。
【0079】
異方性拡散層において分散相の形態は、長軸の平均長さLと短軸の平均長さWとの比(平均アスペクト比、L/W)が1より大きく、かつ分散相粒子の長軸方向は一方の方向に配向している。分散相は繊維状であってもよい。分散相のアスペクト比は、通常、1より大きく(例えば、2〜20000)、例えば、3〜20000(例えば、5〜15000)、好ましくは10〜12000(例えば、50〜10000)、さらに好ましくは100〜9000(例えば、200〜8000)程度である。特に、異方性を高めるために、分散相のアスペクト比は、50〜20000(例えば、100〜15000)程度、さらに好ましくは1000〜10000(例えば、3000〜8000)程度であってもよい。このような分散相粒子のアスペクト比が大きい程、異方的な光散乱性を高めることができる。このような分散相粒子は、フットボール型形状(回転楕円状など)、繊維形状、直方形状などであってもよい。異方性拡散層において、分散相の長軸方向がフィルムの所定の方向、すなわちX軸方向(引き取り方向又は機械方向)に配向して粒子状分散相を形成している。特に、本発明では、異方性拡散層の分散相粒子のアスペクト比を高く調整することにより高い異方散乱性を発現でき、かつ生じた異方的拡散光をプリズム部で効率よく正面方向に集光できるため、薄肉化された異方性拡散層であっても輝度の均一性を向上できる。
【0080】
なお、分散相の長軸の平均長さLは、例えば、0.1〜2000μm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜1500μm程度、好ましくは1〜1200μm程度(例えば、1.5〜1000μm程度)、特に2〜900μm程度(例えば、5〜800μm程度)であり、通常、100〜1000μm(例えば、300〜800μm)程度である。また、分散相の短軸の平均長さWは、例えば、0.01〜10μm程度の範囲から選択でき、例えば、0.01〜1μm、好ましくは0.02〜0.8μm、さらに好ましくは0.03〜0.7μm(特に、0.05〜0.5μm)程度である。
【0081】
配列度としての分散相粒子の配向係数は、例えば、0.34以上(0.34〜1程度)、好ましくは0.4〜1程度(例えば、0.5〜1)、さらに好ましくは0.7〜1程度であってもよい。分散相粒子の配向係数が高い程、散乱光に高い異方性を付与できる。なお、配向係数は、下記式に基づいて算出できる。
配向係数=(3<cos2θ>−1)/2
(式中、θは粒子状分散相の長軸とフィルムのX軸との間の角度を示し(長軸とX軸とが平行の場合、θ=0゜)、<cos2θ>は各分散相粒子について算出したcos2θの平均を示し、下記式で表される。)
<cos2θ>=∫n(θ)・cos2θ・dθ
(式中、n(θ)は、全分散相粒子中の角度θを有する分散相粒子の割合(重率)を示す。)
【0082】
異方性拡散層は、拡散光の指向性を有していてもよい。すなわち、指向性を有するとは、異方的拡散光において散乱の強い方向のうち、散乱強度が極大を示す角度があることを意味する。拡散光が指向性を有している場合、後述する図5の測定装置において、拡散光強度Fを拡散角度θに対してプロットしたとき、プロット曲線が、特定の拡散角度θの範囲(θ=0°を除く角度域)で極大又はショルダー(特に、極大などの変曲点)を有している。異方性光拡散フィルムに指向性を付与する場合、分散相粒子の長軸の平均長さは、例えば、10〜100μm程度、好ましくは20〜60μm程度である。
【0083】
異方性拡散層の厚みは、3〜500μm程度(例えば3〜300μm)、好ましくは5〜200μm(例えば、10〜200μm)程度、さらに好ましくは15〜150μm(例えば、30〜120μm)程度であってもよい。
【0084】
異方性拡散層は、例えば、透過光を異方的に光拡散させることのできる単層体であってもよく、異方性拡散層とその少なくとも一方の面に積層された透明樹脂層とで構成された積層体として構成してもよい。また、異方性拡散層を含む積層体に関しては、異方性拡散層の一方の面に限らず両面に透明樹脂層を積層してもよい。
【0085】
透明樹脂層は、透明性の高い樹脂、例えば、熱可塑性樹脂[オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂(フッ素系樹脂を含む)、ビニルアルコール系樹脂、脂肪酸ビニルエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロースエステル類、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、エラストマー(ニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマーなど)など]、および熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂など)などが含まれる。好ましい樹脂は熱可塑性樹脂である。透明性の高い樹脂は、非結晶性樹脂であってもよい。
【0086】
オレフィン系樹脂には、例えば、ポリプロピレン系樹脂、α−C2-6オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はその塩(例えば、アイオノマー樹脂)などの共重合体が挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。なお、透明樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂は、前記異方性拡散層を構成するポリプロピレン系樹脂と種類、分子量とその分布、メルトフローレートなどが異なっていてもよいが、同種又は少なくとも一部の共重合成分が共通する同系統(又は同一)の樹脂であってもよい。
【0087】
ハロゲン含有樹脂としては、ハロゲン化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライドなどのハロゲン含有単量体の単独重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのハロゲン含有単量体と共重合性単量体との共重合体など)、ハロゲン化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのハロゲン含有ビニリデン単量体と他の単量体との共重合体)などが挙げられる。
【0088】
脂肪族ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体(酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体が挙げられる。脂肪族ビニルエステル系樹脂の誘導体には、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂などが含まれる。
【0089】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体が使用できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキル;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、スチレン系単量体などが例示できる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0090】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0091】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体((メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、字エン類など)との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体などのスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などが含まれる。
【0092】
ポリエステル系樹脂には、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2-4アルキレンテレフタレートやポリC2-4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、C2-4アルキレンアリレート単位(C2-4アルキレンテレフタレート及び/又はC2-4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50モル%以上、好ましくは75〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%)として含むコポリエステルなど)などが例示できる。コポリエステルとしては、C2-4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2-4アルキレングリコール、C6-10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6-12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2-4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0093】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)およびジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)のうち少なくとも一方の成分が芳香族化合物であるポリアミド(キシリレンジアミンアジペート(MXD−6)などの芳香族ポリアミドなど)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂には、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合であってもよく、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。
【0094】
ポリカーボネート系樹脂としては、前記と同様の樹脂が例示できる。なお、透明樹脂層を構成するポリカーボネート系樹脂は、前記光拡散層を構成するポリカーボネート系樹脂と種類、分子量、メルトフローレートなどが異なっていてもよいが、同種又は骨格が共通する同系統(又は同一)の樹脂を用いると、光拡散層との密着性を向上できる場合がある。ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカンをベースとするポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0095】
セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースプチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1-6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7-12芳香族カルボン酸エステル)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。
【0096】
透明樹脂層を構成する好ましい成分には、オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが含まれる。好ましい透明樹脂層はポリカーボネート系樹脂で構成できる。透明樹脂層を構成する樹脂には、密着性や機械的特性などを損なわない限り、前記異方性拡散層を構成する連続相及び/又は分散相の樹脂と同一又は異なる樹脂が使用できるが、通常、連続相の樹脂と同一又は共通(又は同系統)の樹脂が好ましい。
【0097】
透明樹脂層を構成する透明樹脂は、耐熱性や耐ブロッキング性を高めるため、耐熱性樹脂(ガラス転移温度又は融点が高い樹脂など)、結晶性樹脂などが好ましい。透明樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度又は融点は、例えば、130〜280℃程度、好ましくは140〜270℃程度、さらに好ましくは150〜260℃程度であってもよい。
【0098】
さらに、透明樹脂層は、慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤など)、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを含有していてもよい。特に、透明樹脂層は、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤)、好ましくは紫外線吸収剤及び光安定剤から選択された少なくとも一方の成分(紫外線吸収剤単独、光安定剤単独、紫外線吸収剤及び光安定剤)、特に紫外線吸収剤及び光安定剤を含む樹脂層で構成されているのが好ましい。安定剤としては前記と同様の成分が使用でき、透明樹脂層を構成する樹脂成分100重量部に対する各安定剤の使用量及び安定剤の総量は、前記異方性拡散層を構成する樹脂成分に対する割合と同様の範囲から選択できる。また、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用する場合、両者の割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜50/50(例えば、90/10〜70/30)程度の範囲から選択できる。
【0099】
各透明樹脂層の厚みは、前記異方性拡散層と同程度であってもよく、例えば、異方性拡散層の厚みが3〜300μm程度の場合、透明樹脂層の厚みは3〜150μm程度から選択できる。異方性拡散層と各透明樹脂層との厚みの割合は、例えば、異方性拡散層/透明樹脂層=5/95〜99/1程度、好ましくは30/70〜99/1程度、さらに好ましくは40/60〜95/5程度である。積層フィルムの厚みは、例えば、6〜600μm程度、好ましくは10〜400μm程度、さらに好ましくは20〜250μm程度であってもよい。
【0100】
なお、従来、数ミリの厚みを有する拡散板が使用されていたが、本発明では、このような厚い拡散板を用いることなく、数十ミクロン単位の薄肉の異方性拡散層であっても有効に光拡散でき、表示装置の輝度を向上できる。特に、管状光源を備えたバックライト型液晶表示装置であっても、表示装置の輝度を有効に向上できる。
【0101】
異方性拡散層(又は異方性拡散層と透明樹脂層との積層体)のJIS K 7301に準拠した全光線透過率は、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは60%以上(例えば、60〜100%)であり、特に70〜95%(例えば、75〜90%)程度であってもよい。さらに、異方性拡散層(又は異方性拡散層と透明樹脂層との積層体)のヘーズ値は、80%以上(例えば、80〜99.9%)、好ましくは90%以上(例えば、90〜99.8%)、さらに好ましくは93〜99.5%、特に95〜99%程度である。全光線透過率が小さいと、輝度が低下しやすく、ヘーズ値が小さいと、光を均一に拡散できず、表示品位を低下させる。
【0102】
なお、異方性拡散層(又は異方性拡散層と透明樹脂層との積層体)の表面には、光学特性を妨げない範囲で、コロナ放電処理などの表面処理を施してもよい。
【0103】
図2は異方性拡散層の一例を示す概略断面図である。単層構造の異方性拡散層17は、互いに屈折率の異なる複数の樹脂で構成されており、連続相17a中に粒子状分散相17bが分散した相分離構造(又は海島構造)を有している。
【0104】
図3は異方性拡散層の他の例を示す概略断面図である。この例において、異方性拡散層28は、この異方性拡散層28の少なくとも一方の面に積層された透明樹脂層29とで構成された積層構造を有している。また、異方性拡散層28は、互いに屈折率の異なる複数の樹脂で構成されており、連続相27a中に粒子状分散相27bが分散した相分離構造(又は海島構造)を有している。このような異方性拡散層28を含んだ積層体では、透明樹脂層29で異方性拡散層28を保護して分散相粒子の脱落や付着を防止でき、フィルムの耐傷性や製造安定性を向上できるとともに、フィルムの強度や取扱い性を高めることができる。
【0105】
図4は光拡散の異方性を説明するための概念図である。図4に示すように、異方性拡散層37は、樹脂で構成された連続相37aと、この連続相37a中に分散した異方形状の分散相37bとで構成されている。そして、光拡散の異方性は散乱角θと散乱光強度Fとの関係を示す散乱特性F(θ)において、フィルムのX軸方向の散乱特性をFx(θ)、X軸方向と直交するY軸方向の散乱特性をFy(θ)としたとき、散乱特性Fx(θ)及びFy(θ)は、散乱角θが広角度になるにつれ、光強度がなだらかに減衰するパターンを示す。また、散乱角θ=4〜30°の範囲において、Fy(θ)/Fx(θ)の値は、1.01以上であり、例えば、1.01〜200、好ましくは1.1〜150程度である。また、散乱角θ=18°において、Fy(θ)/Fx(θ)の値は、1.1〜400(例えば、1.1〜100)であり、好ましくは1.1〜200、さらに好ましくは5〜100(特に10〜80)程度である。
【0106】
このような光学特性を有する異方性拡散層を用いると、棒状光源の軸方向に対して垂直方向に散乱するよう配置することにより、棒状光源そのものが認識されるランプイメージの消去を輝度の低下を最低限度に抑えて達成することができる。なお、Fy(θ)/Fx(θ)の値及び散乱角θ=18°でのFy(θ)/Fx(θ)の値が大きすぎると、ランプイメージの発現を抑制できるが、輝度の低下が大きく、逆にこれらの値が小さすぎる場合には、輝度の低下は抑制できるが、ランプイメージが発現する。
【0107】
このような散乱特性のフィルムを調製するためには、連続相及び分散相を構成する成分(特に樹脂)の選定、成形条件、特に押出温度、成形後のドロー比及び冷却温度が重要であり、後述する種類及び条件でフィルムを作製することにより、このような光拡散特性を有するフィルムが得られる。
【0108】
なお、異方性拡散層のX軸方向は、通常、分散相の長軸方向である。そのため、異方性拡散層のX軸方向を、バックライトユニットの線状光源の軸方向(Y軸方向)に対して略平行方向に向けて配設されている。なお、異方性拡散層のX軸方向は、バックライトユニットの線状光源の軸方向(Y軸方向)に対して、完全に平行である必要はなく、例えば、角度±15°(例えば、±10°、特に±5°)程度の範囲内で斜め方向に向けて配設してもよい。
【0109】
なお、散乱特性F(θ)は、例えば、図5に示すような測定装置を用いて測定できる。この装置は、異方性拡散層37に対してレーザ光を照射するためのレーザ光照射装置(例えば、NIHON KAGAKU ENG NEO-20MS)38と、異方性拡散層37を透過したレーザ光の強度を測定するための検出器39とを備えている。そして、異方性拡散層37の面に対して90°の角度で(垂直に)レーザ光を照射し、シートにより拡散された光の強度(散乱光強度)Fを散乱角θに対して測定(プロット)することにより光散乱特性を求めることができる。
【0110】
異方性拡散層では、光散乱の異方性が高いと、所定方向における散乱の角度依存性をより少なくでき、そのため、輝度の角度依存性もより少なくできる。前記異方性拡散層では、表示面に対して垂直な角度(90°)を0°としたとき、表示面に対する角度20°を超えて、角度40°以上の角度でも輝度の低下を抑制できる。
【0111】
次に、等方性拡散層は、光を等方的に拡散させるためのものである。本発明では、等方性拡散層としてヘーズが70%以上の等方性拡散層を、少なくとも二枚以上光制御フィルムに用いることにより、異方性拡散層と相乗して輝度の均一化を図ることができ、ランプイメージ(ランプ像)の発現を抑制させることができるだけでなく、正面輝度を向上させることもできる。
【0112】
等方性拡散層は、表面にランダムな微細凹凸形状を有するものであり、高分子樹脂と、必要に応じ添加される粒子とにより構成される。等方性拡散層に用いることができる高分子樹脂としては、光学的透明性に優れた樹脂を用いることができる。例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。これらの中でも耐光性や光学特性に優れるアクリル系樹脂が好適に使用される。
【0113】
粒子としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機微粒子の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などからなる有機微粒子を用いることができる。当該粒子は、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0114】
前記高分子樹脂に対する前記粒子の含有割合は、用いる粒子の平均粒径や等方性拡散層の厚みによって一概にはいえないが、等方的な拡散性と輝度との性能バランスを考慮しつつ、後述するヘーズを70%以上とさせ易くする観点から、高分子樹脂100重量部に対し、50重量部以上250重量部以下であることが好ましく、100重量部以上250重量部以下とすることがより好ましい。
【0115】
前記粒子の平均粒径としては、等方的な拡散性と輝度との性能バランスを考慮すると、1〜40μmの範囲内とすることが好ましい。
【0116】
等方性光拡散層の厚みは、等方的な拡散性を発揮させつつ、後述するヘーズを70%以上とさせ易くする観点から、7〜60μmとすることが好ましく、20〜35μmとすることがより好ましい。
【0117】
なお、等方性拡散層中には、上述した高分子樹脂や粒子の他、光重合開始剤、光重合促進剤、レベリング剤・消泡剤などの界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0118】
また、等方性拡散層は、当該等方性拡散層を支持体上に積層して形成したものであってもよい。支持体としては、従来公知の支持体、例えば、ガラスやプラスチックからなる板或いはフィルム等を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアリレート、アクリル、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム或いはシートが使用でき、寸法安定性の点で、延伸加工、特に二軸延伸加工されたものが好ましい。また、支持体の厚みとしては、10〜400μm程度であることが好ましい。
【0119】
本発明の等方性拡散層は、ヘーズが70%以上のものである。ヘーズが70%以上の等方性拡散層を、少なくとも二枚以上備えた光制御フィルムをバックライト装置に組み込むことにより、ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、バックライト型液晶表示装置などのバックライト装置の薄型化かつ高輝度化を実現することができるようになる。なお、輝度の向上及びランプイメージ(ランプ像)の発現をより効果的に抑制する観点からは、ヘーズを80%以上、特に90%以上とすることがより好ましい。
【0120】
また、本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層を備えてなるものであるが、二枚以上の等方性拡散層を重ねたときのヘーズが、90%以上であることが好ましく、95%以上とすることがより好ましい。二枚以上の等方性拡散層を重ねたときのヘーズを90%以上とすることにより、二枚以上の等方性拡散層を光が通過する際に、当該光が等方性拡散層の内部及び界面で正面方向へ屈折する成分が増加し、等方的な拡散性を備えつつ、正面方向への輝度を高めることができる。
【0121】
図6は本発明の光制御フィルムの一例を示す断面斜視図である。この例において、光制御フィルムは、透明樹脂層49が両面に形成されている異方性拡散層47と、支持体45上に形成されている等方性拡散層44を二枚備えている。前記異方性拡散層47は、熱可塑性樹脂で形成された連続相(マトリックス)47aと、この連続相47aの熱可塑性樹脂とは屈折率の異なる熱可塑性樹脂で形成され、かつ前記連続相47aの所定の方向に配向して分散した粒子状分散相47bとを含んでおり、粒子状分散相47bは細長状に形成されている。すなわち、粒子状分散相47bの長軸は異方性拡散層47の長手方向に配向している。なお、この例では、連続相(マトリックス)47aは、透光性又は透明性、および耐熱性の高い樹脂、例えば、ポリカーボネート系樹脂などで形成され、粒子状分散相47bは、例えば、耐熱性の高いオレフィン系樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂(メタセロン触媒を用いたポリプロピレン系樹脂)で形成されている。また、透明樹脂層49は、透明性及び耐熱性の高い樹脂、例えば、ポリカーボネート系樹脂などで形成されている。
【0122】
また、図7は、本発明の光制御フィルムの他の例を示す断面斜視図である。この例において、光制御シートは、透明樹脂層を形成することなく、連続相47aと粒子状分散相47bを含む異方性拡散層47と、二枚の等方性拡散層44とを備えている。
【0123】
このような光制御フィルムを用いると、異方性拡散層により異方的に拡散し、かつ、二枚の等方性拡散層により等方的に拡散させた拡散光を正面方向に集光でき、線状光源(蛍光管など)の直上の輝度を低下させ、輝度分布を平均化できる。そのため、正面輝度が向上しつつ、ランプイメージ(ランプ像)を消失でき、表示品質を向上できる。
【0124】
本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成されてなるものである。少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とを備えてなることにより、線状光源からの光を異方性拡散層により異方的に拡散させて輝度を均一化させつつ、二枚以上の等方性拡散層により光を等方的に拡散させ、輝度をさらに均一化させることができる。それにより、光の指向性を調整し、ランプイメージ(ランプ像)を発現させることなく、正面輝度を向上させることができる。
【0125】
特に、光制御フィルムを、異方性拡散層、二枚の等方性拡散層の順で構成し、等方性拡散層が光出射面側となるように配置することにより、より顕著にランプイメージを(ランプ像)の発現を抑制でき、正面輝度を向上させることができる。
【0126】
なお、光制御フィルムの異方性拡散層に、透明樹脂層を必ずしも形成させる必要はない。また、透明樹脂層は、異方性拡散層の両面に形成する必要はなく、異方性拡散層の少なくとも一方の面に形成すれば良い。
【0127】
また、光制御フィルムの異方性拡散層、少なくとも二枚以上の等方性拡散層は、それぞれ密着させて構成してもよいが、各層を密着させることなく空隙を介在させて構成した方がよい。各層間に空隙が存在する方が、各層と空隙部分との屈折率差を有効利用することができ、よりランプイメージを(ランプ像)を消去しつつ、高い正面輝度を達成することができる点で好ましい。
【0128】
光制御フィルムを構成する部材として、まず、異方性拡散層については、連続相を構成する樹脂中に分散相を構成する成分(樹脂成分、繊維状成分など)を分散して配向させることにより得ることができる。
【0129】
異方性拡散層の形成方法において、分散相は、通常、分散相を構成する樹脂成分を変形させて配向させる方法により得ることができる。例えば、連続相を構成する樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)と分散相を構成する成分(例えば、ポリプロピレン系樹脂)と必要により相溶化剤などの成分とを、必要に応じて慣用の方法(例えば、溶融ブレンド法、タンブラー法など)でブレンドし、溶融混合し、Tダイやリングダイなどから押出してフィルム成形することにより分散相を分散できる。また、基材フィルム上に、光散乱成分(例えば、ポリプロピレン系樹脂)とバインダー樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)とで構成された組成物を塗布するコーティング法や、前記組成物をラミネートするラミネート法、キャスティング法、押出成形法などの慣用のフィルム成形法を利用して成形することにより製造できる。通常、押出成形法によりフィルム成形し、異方性拡散層を調整する場合が多い。
【0130】
異方性拡散層の分散相の配向処理は、例えば、(1)押出成形シートをドローしながら製膜する方法、(2)押出成形シートを一軸延伸する方法、(3)前記(1)の方法と(2)の方法を組み合わせる方法などにより行うことができる。なお、(4)前記各成分を溶液ブレンドし、流延法などにより成膜することによっても形成することができる。
【0131】
溶融温度は、樹脂成分(連続相樹脂、分散相樹脂)の融点以上の温度、例えば、150〜270℃、好ましくは200〜260℃、さらに好ましくは230〜255℃程度であってよい。
【0132】
適度な異方性を実現するために、異方性拡散層、溶融製膜において押出成形シートをドローしながら製膜するのが好ましい。所定の異方性光拡散特性を発現させるためには、押出後のドロー比を調整するのが重要である。ドロー比(ドロー倍率)は、押出機のダイの開度、樹脂の種類、層構造などに応じて1.5〜50倍程度の範囲から選択でき、一義的には決定できないが、単層の場合、例えば、4〜40倍、好ましくは5〜35倍、さらに好ましくは8〜30倍(特に10〜25倍)程度の範囲から、前記異方性のパラメータが前記範囲となるように選択できる。積層体の場合は、単層よりも異方性が高まる傾向があるため、ドロー比は、例えば、3.5〜20倍、好ましくは4〜18倍、さらに好ましくは5〜16倍(特に6〜15倍)程度であってもよい。
【0133】
キャストロールなどによる冷却温度は、例えば、30〜110℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃程度であってよい。さらに、異方性拡散層は延伸(一軸又は二軸延伸、特に一軸延伸)されていてもよい。異方性拡散層の延伸倍率は、分散相のアスペクト比に応じて選択でき、例えば、一方向での延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.2〜5倍、さらに好ましくは1.5〜3倍程度であってもよい。
【0134】
次に、等方性拡散層については、支持体上に当該等方性拡散層を形成する場合に関しては、例えば、上述した高分子樹脂や粒子などの材料を適当な溶媒に溶解させた等方性拡散層用塗布液を、従来から公知の方法、例えば、バーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ダイコーター、スプレー、スクリーン印刷等により支持体上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0135】
或いは、支持体上に形成された等方性拡散層表面に対し、例えば、マット加工・ブラスト加工・エンボス加工等を行うことで物理的に粗らして構成させることができる。
【0136】
また、支持体を用いない場合には、例えば高分子樹脂や粒子を混合した組成物を押出成形機等により押出して形成させたり、鋳型を用いて形成させたりすることもできる。
【0137】
本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層、及び異方性拡散層からなり、かつ、等方性拡散層のヘーズが70%以上であるため、異方性拡散層による異方的な光拡散効果と、等方性拡散層による等方的な光拡散効果とが組み合わされることにより、輝度を高度に均一化することができる。そのため、本発明の光制御フィルムは、種々の光学的用途に利用できる。特に、表示面での輝度を高度に均一化できるため、バックライト装置を薄型化かつ高輝度化してもランプイメージの発現を抑制できる。そのため、液晶表示装置などの表示装置(特にバックライト装置)に適用すると、表示面全体を均一に照明できる。従って、本発明の光制御フィルムは、バックライト装置や表示装置(例えば、液晶表示装置などの画像表示領域がフラット(平面)な面型表示装置(平面型表示装置))の構成部材として有用である。
【0138】
次に、本発明の光制御フィルムを用いた、液晶表示装置について説明する。図8に示す液晶表示装置は、液晶が封入された液晶セルを備えた被照射体としての面型表示ユニット(透過型液晶表示ユニット又は液晶表示パネルなど)5と、この表示ユニット(又はパネル)5の背面側に配設され、前記表示ユニット5を照明するためのバックライトユニット(本発明のバックライト装置)13とで構成されている。
【0139】
前記バックライトユニット13は、前記表示ユニット5の直下に1又は並列に配設された複数の蛍光放電管(冷陰極管)などの線状光源1と、線状光源1からの光を前方方向(表示ユニット側)に反射して表示ユニット5に導くための反射板2とを備えている。前記線状光源1の前方には、必要に応じ線状光源1の前方に配置された支持板(図示せず)と、この支持板の出射面側(バックライトユニットの出光面側)に位置し、透過光を異方的に光拡散させるための異方性拡散層14と、この異方性拡散層14の光出射面側に位置し、異方性拡散層14から出射された光を等方的に光拡散させるための等方性拡散層12を二枚順次配置されている。前記線状光源1からの光は、異方性拡散層14や二枚の等方性拡散層12により拡散して輝度を均一化させ、輝度を高めて表示ユニット5を照射する。なお、前記支持板は、薄膜である異方性拡散層14を保護するために形成された透明板である。また、プリズムシートは図示していないが、用途に応じ配置しても構わない。
【0140】
なお、前記面型表示ユニット(液晶表示ユニット)5は、第1の偏光フィルム6a、第1のガラス基板7a、このガラス基板に形成された第1の電極8a、この電極上に積層された第1の配向膜9a、液晶層10、第2の配向膜9b、第2の電極8b、カラーフィルター11、第2のガラス基板7b、および第2の偏光フィルム6bを順次積層することにより形成されている。
【0141】
このような表示装置では、内蔵された蛍光放電管(冷陰極管)などの線状光源により面型表示ユニットを背面から直接照射できる。そのため、線状光源(ランプ)を使用したバックライト装置は、近年の液晶テレビジョンなどの液晶表示装置の大型化に伴い、液晶表示装置における重要性が非常に高くなってきている。
【0142】
しかし、一般に、線状光源からの出射光の輝度分布は均一ではなく、線状光源の軸方向に対して直交する方向の輝度分布が不均一である。特に、表示ユニット(液晶表示ユニット)の直下に配置された線状光源そのものが表示面側から認識され、表示面ではランプイメージ(ランプ像)が残存する。そのため、線状光源を用いても、表示面での輝度を均一化する必要がある。特に、異方性拡散層は、線状光源に近接しているため、異方性拡散層には長期間に亘り安定した光拡散性が要求される。
【0143】
そして、前記異方性拡散層をバックライトユニットに用いると表示面での輝度の均一化が図れると共に、ランプイメージ(ランプ像)の発現を抑制できる。さらに、本発明の光制御フィルムは、少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成され、かつ、等方性拡散層のヘーズが70%以上であるため、異方性散乱層による高い異方性散乱機能と、等方性拡散層による高い等方性散乱機能とにより、輝度を均一化することができる。これにより、薄肉化と高輝度化が求められているバックライトユニットでもランプイメージ(ランプ像)の発現を抑制できる。特に、本発明の光制御フィルムが、光入射面側から光出射面側に向けて、異方性拡散層、二枚の等方性拡散層の順で構成されている場合には、より顕著にランプイメージ(ランプ像)の発現を抑制しつつ、高輝度化を実現することができる。
【0144】
加えて、異方性拡散層の分散相の長軸方向と、線状光源の長軸方向とが平行するように異方性拡散層を配設すると、異方的光散乱特性により、線状光源からの光を線状光源の長さ方向に対して垂直方向に散乱させることができ、輝度の低下を最小限に抑えつつ、出射面の輝度を均一化し表示面を均一に照明できる。さらに、異方性拡散層の厚みが小さい薄肉シート(例えば、0.2mm程度)であってもバックライト型液晶表示装置の表示面での輝度を向上できる。さらに、従来必要であった拡散板を用いなくても輝度の均一化を測ることができるため、大型の液晶表示装置であっても、装置の薄型化に対応でき、簡便に装置を製造できる。すなわち、本発明の光制御フィルムは、厚みが薄くても、大面積の液晶表示装置の表示面を高い輝度で均一に照明できる。特に、連続相及び分散相が所定の樹脂で構成されているため、耐熱性が高く、線状光源に近接して位置し、高温が作用する直下型バックライトユニットであっても、長期間に亘り所定の異方的光散乱を維持できる。
【0145】
なお、前記液晶表示装置において、前記光制御フィルムは、バックライトユニットの出射面から出射する光路内、すなわちバックライトユニットと表示ユニットとの間に介在すればよく、必要により接着剤を用いて出射面に積層した積層形態で配設してもよい。より具体的には、光制御フィルムは、面光源ユニットの出射面側又は表示ユニットの入射面側に配設すればよく、バックライトユニットの出射面と表示ユニットとの間に配設してもよい。また、光制御フィルムは、プリズムシート、拡散シート、輝度向上シート、位相差フィルム、偏光フィルム、カラーフィルタなどと組み合わせて使用しても良い。特に、光制御フィルムの出射面上に、ヘーズが60%未満の拡散シートを用いると、視野角を拡大できる点で好ましい。
【0146】
さらに、バックライトユニットにおいて、線状光源は表示ユニットの直下に位置する必要はなく、側部に位置させたエッジライト型として用いることもできる。この場合、側部の線状光源からの光は、異方性拡散層の側面から入射し、当該側面に略直交する面(表示ユニットと対向する面)に光を出射させ、表示ユニットを照明してもよい。また、線状光源の数は特に制限されず、表示面のサイズなどに応じて選択できる。
【0147】
なお、上述したエッジライト型のバックライトユニットに関し、例えばLED光源等の点状光源を用いた場合には、光源付近の輝度が極めて高く、光源に離れるにつれ輝度が低下する傾向となり、輝度分布が大きく偏っている。このような場合であっても、本発明の光制御フィルムによれば、光源からの光を均一に出射させることが可能となり、表示面に対する輝度の均一化及び高輝度化を実現することができる。
【0148】
なお、光制御フィルムのX軸方向は、通常、異方性拡散層の分散相の長軸方向である。そのため、光制御フィルムは、そのX軸方向を、バックライトユニットの線状光源の軸方向(Y軸方向)に対して略平行方向に向けて配設されている。なお、光制御フィルムのX軸方向は、バックライトユニットの線状光源の軸方向(Y軸方向)に対して、完全に平行である必要はなく、例えば、角度±15°(例えば、±10°、特に±5°)程度の範囲内で斜め方向に向けて配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の光制御シートは、薄型化かつ高輝度化してもランプイメージの発現が抑制されるとともに、耐熱性が高く、高温下で使用しても長期間に亘り光散乱特性の変化を抑制でき、バックライトユニットにより表示ユニットを均一に照明できる。そのため、表示装置(液晶表示装置など)やバックライト型光源装置の部材として有用である。特に、表示ユニットの直下に光源が配設された直下型バックライトユニットでは、種々の画面サイズ、特に大画面の表示ユニットを有する表示装置に対応できるため、このような大画面の表示ユニット又はバックライトユニットの構成部材として好適である。表示ユニットの画面サイズは特に制限されず、例えば、20インチ以上(例えば23〜300インチ、好ましくは30〜220インチ)程度であっても良い。
【実施例】
【0150】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0151】
1.異方性拡散層、等方性拡散層及びレンズ層の作製
透明樹脂層用樹脂組成物として、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂(ユーピロンS-2000:三菱エンジニアリングプラスチック社、数平均分子量:18000〜20000、メルトフローレート9〜12g/10分)を用い、異方性拡散層用組成物として、連続相を構成する樹脂(マトリックス樹脂)としてのポリカーボネート系樹脂(ユーピロンS-2000:三菱エンジニアリングプラスチック社)92重量部、分散相を構成する樹脂としてのポリプロピレン系樹脂(ウィンテックWFX-4:日本ポリプロ社、メタセロン触媒を用いたプロピレン系ランダム共重合体、メルトフローレート7〜10g/10分)8重量部を用いた。各層を構成する樹脂組成物を混合し、多層押出成形機で、樹脂温度250℃、ダイ開度1.3mmでダイから溶融して共押出し、ドロー比(ドロー倍率)を7.7倍として、油温調3本キャストロール80℃で冷却することで、透明樹脂層が両面に形成された異方性拡散層を作製した(総厚み:175μm、透明樹脂層の厚み:35μm、異方性拡散層の厚み:105μm)。
【0152】
当該透明樹脂層が両面に形成された異方性拡散層について、JIS K 7301に準拠し、ヘーズメーター(NDH−500:日本電色工業社)を用いて全光線透過率を測定したところ、89%であった。また、異方度が14を有していた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)により断面を観察したところ、異方性拡散層において、ポリプロピレン系樹脂が散乱子(粒子状分散相)を形成しており、粒子状分散相の形状は、楕円体上(又は細長い線状)であり、短軸の平均長さ0.20μm及び長軸の平均長さ133.3μm(アスペクト比667)であった。
【0153】
次いで、下記処方の等方性拡散層A用塗布液を混合し撹拌した後、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60:東レ社)からなる支持体上に、乾燥後の厚みが27μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して等方性拡散層Aを作製した。
【0154】
<等方性拡散層A用塗布液>
・アクリルポリオール 110部
(アクリディックA-837:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 22部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社、固形分60%)
・アクリル樹脂粒子 110部
(平均粒径15μm、変動係数35%)
・酢酸ブチル 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0155】
また、上述した等方性拡散層A用塗布液を、下記処方の等方性拡散層B用塗布液に変更し、乾燥後の厚みが12μmとなるように調整した以外は上述と同様にして、等方性拡散層Bを作製した。
【0156】
<等方性拡散層B用塗布液>
・アクリルポリオール 162部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 32部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社、固形分60%)
・アクリル樹脂粒子 55部
(MX−1000:綜研化学社、平均粒径10μm)
・シリコーン樹脂粒子 15部
(トスパール130:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社、
平均粒径3μm)
・酢酸ブチル 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0157】
また、上述した等方性拡散層A用塗布液を、下記処方の等方性拡散層C用塗布液に変更し、乾燥後の厚みが12μmとなるように調整した以外は上述と同様にして、等方性拡散層Cを作製した。
【0158】
<等方性拡散層C用塗布液>
・アクリルポリオール 162部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 32部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社、固形分60%)
・アクリル樹脂粒子 110部
(ガンツパールGM-0605:ガンツ化成社、平均粒径6μm)
・酢酸ブチル 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0159】
また、下記処方の等方性拡散層D用塗布液を、厚み100μmのポリエステルフィルム(ダイアホイルO300E:三菱樹脂社)からなる支持体の片面に厚みが2.7μmとなるように塗布し、高圧水銀灯により紫外線を1〜2秒照射して、等方性拡散層Dを作製した。
【0160】
<等方性拡散層D用塗布液>
・紫外線硬化型アクリル樹脂 100部
(ユニディック17-813:DIC社、固形分80%)
・光重合開始剤 1部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社)
・アクリル樹脂粒子 1.6部
(MX−500KS:綜研化学社、平均粒径5μm)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
【0161】
次いで、頂角90°、ピッチが50μmの三角柱状の構造単位が複数規則的に配列されてなる型に、下記処方のレンズ層用塗布液を塗布し、厚み100μmの支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100:東洋紡績社)を密着させ、ポリエチレンテレフタレートフィルムと型との間に、型のプリズム形状とは相補的なプリズム形状が形成されたレンズ層(プリズム部(機能部)の厚み:25μm、基底域の厚み:5μm)を充填した。
【0162】
<レンズ層用塗布液>
・アクリルモノマー 50部
(メタクリル酸メチル:和光純薬社)
・多官能性アクリルモノマー 45部
(NKエステルA-TMPT-3EO:新中村化学工業社)
・光重合開始剤 5部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
【0163】
そして、型上にレンズ層、ポリエチレンテレフタレートフィルムが順に積層された状態で、ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、高圧水銀灯により紫外線を600mJ/cm2照射して機能層を硬化させ、その後、型を剥離することで支持体上に形成されたレンズ層を作製した。
【0164】
2.光制御フィルムの作製
[実施例1]
上述のように作製した異方性拡散層、等方性拡散層A、等方性拡散層Aを順に密着させることなく重ねることで、実施例1の光制御フィルムを作製した(等方性拡散層Aが光出射面側となるように配置した)。
【0165】
[実施例2]
上述のように作製した等方性拡散層A、異方性拡散層、等方性拡散層Aを順に密着させることなく重ねることで、実施例2の光制御フィルムを作製した。
【0166】
[実施例3]
上述のように作製した等方性拡散層A、等方性拡散層A、異方性拡散層を順に密着させることなく重ねることで、実施例3の光制御フィルムを作製した(異方性拡散層が光出射面側となるように配置した)。
【0167】
[実施例4]
上述のように作製した異方性拡散層、等方性拡散層B、等方性拡散層Bを順に密着させることなく重ねることで、実施例4の光制御フィルムを作製した(等方性拡散層Bが光出射面側となるように配置した)。
【0168】
[比較例1]
上述のように作製した異方性拡散層、等方性拡散層C、等方性拡散層Cを順に密着させることなく重ねることで、比較例1の光制御フィルムを作製した(等方性拡散層Cが光出射面側となるように配置した)。
【0169】
[比較例2]
上述のように作製した異方性拡散層、等方性拡散層D、等方性拡散層Dを順に密着させることなく重ねることで、比較例2の光制御フィルムを作製した(等方性拡散層Dが光出射面側となるように配置した)。
【0170】
[比較例3]
上述のように作製した異方性拡散層、等方性拡散層Aを順に密着させることなく重ねることで、比較例3の光制御フィルムを作製した(等方性拡散層Aが光出射面側となるように配置した)。
【0171】
[比較例4]
上述のように作製した異方性拡散層と、レンズ層を順に密着させることなく重ねることで、比較例4の光制御フィルムを作製した(レンズ層が光出射面側となるように配置した)。
【0172】
3.バックライト装置の作製
次に、32インチの直下型バックライト装置(冷陰極管(線状光源)16灯)の冷陰極管上に、実施例1〜4及び比較例1〜4の光制御フィルムを設置し、実施例1〜4及び比較例1〜4のバックライト装置とした。
【0173】
4.評価
(1)等方性拡散層のヘーズ
ヘーズメーター(HGM−2K:スガ試験機社)を用いて、JIS K7136:2000にしたがって、実施例1〜4及び比較例1〜3の光制御フィルムに用いられる等方性拡散層A〜Dの拡散面から光を入射させたときのヘーズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0174】
(2)等方性拡散層を重ね合わせた際のヘーズ
ヘーズメーター(HGM−2K:スガ試験機社)を用いて、JIS K7136:2000にしたがって、実施例1〜4及び比較例1〜2の光制御フィルムで用いられる二枚の等方性拡散層A〜Dを抜き出し、各実施例及び比較例ごとに重ね合わせ、当該等方性拡散層の拡散面から光を入射させたときのヘーズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0175】
(3)正面輝度
実施例1〜4及び比較例1〜4の光制御フィルムを用いた直下型バックライト装置の光出射面中心の正面輝度を測定した。測定結果を表2に示す(単位は「cd/m2」)。
【0176】
(4)ランプイメージ(ランプ像)の消去性
実施例1〜4及び比較例1〜4のバックライト装置を点灯させたときの、バックライトユニットの正面方向におけるランプイメージについて、目視にて確認した。ランプイメージがほとんど見られなかったものを「◎」、若干ランプイメージが確認できるが使用に支障が出ない程度のものであったものを「○」、ランプイメージが視認できたものを「×」とした。評価結果を表2に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
表1及び2の結果からも明らかなように、実施例1〜4の光制御フィルムは、二枚の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成されてなるものであって、前記等方性拡散層のヘーズが、いずれのものも70%以上であったため、実施例1〜4の光制御フィルムを組み込んだ実施例1〜4のバックライト装置は、いずれのものも正面輝度及びランプイメージの消去性が良好なものとなった。なお、実施例1〜4の光制御フィルムに含まれる二枚の等方性拡散層を重ね合わせた際のヘーズは、いずれのものも90%以上であった。
【0180】
特に、実施例1〜3の光制御フィルムは、等方性拡散層のヘーズが90%以上であったため、実施例1〜3の光制御フィルムを組み込んだ実施例1〜3のバックライト装置は、正面輝度とランプイメージの消去性に優れるものであった。
【0181】
また、実施例1の光制御フィルムは、光入射面から光出射面に向けて異方性拡散層、二枚の等方性拡散層の順で配置されてなるものであったため、実施例1の光制御フィルムを組み込んだ実施例1のバックライト装置は、実施例の中でも特に正面輝度とランプイメージの消去性に優れるものとなった。
【0182】
追加で、上述のように作製した異方性拡散層に関して、ドロー比を6.3倍とする以外は上述と同様にして、透明樹脂層が両面に形成された異方性拡散層を作製した(総厚み:205μm、各透明樹脂層の厚み:41μm、異方性拡散層の厚み:123μm)。当該透明樹脂層が両面に形成された異方性拡散層の全光線透過率は83%、異方度は10であった。また、粒子状分散相のアスペクト比は48.2(短軸の平均長さ0.48μm及び長軸の平均長さ23.3μm)を有していた。
【0183】
当該透明樹脂層が両面に形成された異方性拡散層を用いて、実施例1〜5と同様に光制御フィルム及びバックライト装置を作製し、正面輝度及びランプイメージの消去性について評価してみたが、上述の実施例1〜5の結果と同様に、正面輝度及びランプイメージの消去性について良好な結果が得られた。
【0184】
一方、比較例1及び2の光制御フィルムは、異方性拡散層と、二枚の等方性拡散層とにより構成されてはいるものの、前記等方性拡散層のヘーズが、いずれのものも70%未満であったため、比較例1及び2の光制御フィルムを組み込んだ比較例1及び2のバックライト装置は、正面輝度が低く、かつランプイメージの消去性に劣るものとなった。
【0185】
また、比較例3の光制御フィルムは、異方性拡散層と等方性拡散層とを備えてはいるものの、当該等方性拡散層が一枚しか備わっていないものであったため、等方性拡散層のヘーズが90%と高い数値を示すにもかかわらず、ランプイメージの消去性に劣るものとなった。
【0186】
また、比較例4の光制御フィルムは、異方性拡散層とレンズ層とを備えてはいるものの、等方性拡散層を備えていないものであったため、正面輝度は高いものの、光の拡散性が不十分な結果、ランプイメージの消去性に劣るものとなった。
【0187】
また、参考例として、実施例1の光制御フィルムのうち異方性拡散層を取り除き、冷陰極管上に厚み2mmの拡散板を配置し、当該拡散板上に実施例1で用いた二枚の等方性拡散層Aからなる光制御フィルムを配置した以外は実施例1と同様にして、異方性拡散層のない光制御フィルム及びこれを用いたバックライト装置を作製した。
【0188】
当該光制御フィルムを用いた当該バックライト装置の正面輝度及びランプイメージの消去性について確認したところ、拡散板が厚いもの(拡散層の厚み:2mm)であったため、ランプイメージの消去性については実施例1と同等であったものの、正面輝度が実施例1に比べ約一割程度低下するものとなった。また、実施例1の異方性拡散層(透明樹脂層を含む総厚み:175μm)に比べ、拡散板の厚みが2mmと格段に厚いものであったため、バックライト装置の薄型化の要求に沿わないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】従来のバックライト装置及び透過型液晶表示装置を示す図
【図2】異方性拡散層の一例を示す図
【図3】異方性拡散層の他の例を示す図
【図4】異方性拡散層の異方性散乱を説明するための図
【図5】光散乱特性の測定方法を説明するための図
【図6】本発明の光制御フィルムの一例を示す図
【図7】本発明の光制御フィルムの他の例を示す図
【図8】本発明のバックライト装置及び透過型液晶表示装置を示す図
【符号の説明】
【0190】
1・・・線状光源(冷陰極管)
2・・・反射板
3・・・拡散板
4・・・プリズムシート
5・・・面型表示ユニット
6a、6b・・・偏光フィルム
7a、7b・・・ガラス基板
8a、8b・・・電極
9a、9b・・・配向膜
10・・・液晶層
11・・・カラーフィルター
12・・・等方性拡散層
13・・・バックライトユニット
14、17、28、37、47・・・異方性拡散層
17a、27a、37a、47a・・・連続相
17b、27b、37b、47b・・・分散相
29、49・・・透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二枚以上の等方性拡散層と、異方性拡散層とにより構成されてなる光制御フィルムであって、
前記等方性拡散層のヘーズが、70%以上であることを特徴とする光制御フィルム。
【請求項2】
前記異方性拡散層は、透明樹脂で構成された連続相と、この連続相と異なる屈折率を有し、かつ長軸方向が一方の方向に配向した粒子状分散相とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光制御フィルム。
【請求項3】
前記二枚以上の等方性拡散層を重ねたときのヘーズが、90%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光制御フィルム。
【請求項4】
複数の線状光源と、
前記線状光源上に配置される光制御フィルムとを備えたバックライト装置において、
前記光制御フィルムとして、請求項1から3何れか1項に記載の光制御フィルムを用いることを特徴とするバックライト装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバックライト装置において、
前記光制御フィルムとして、請求項2に記載の光制御フィルムを用い、
かつ前記異方性拡散層の粒子状分散相の長軸方向を、前記線状光源の軸方向と平行となるように配置してなることを特徴とするバックライト装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のバックライト装置において、
前記光制御フィルムを、前記線状光源側から、異方性拡散層、二枚以上の等方性拡散層の順で配置してなることを特徴とするバックライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−44319(P2010−44319A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209790(P2008−209790)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】