説明

光力学治療用の非極性光増感剤

【課題】光力学治療(PDT)に使用される改善された光増感剤処方物の提供。
【解決手段】燐脂質から実質的になるリポソーム二重層、並びに治療上有効な量の非極性光増感剤を含む光力学治療用の製薬リポソーム処方物。リポソーム膜中に非極性光増感剤を配合し、それにより非極性および極性の物質を同じベシクルを使用して輸送させる。凍結防止剤として単糖またはポリアルコールを添加することにより凍結乾燥中配合された非極性光増感剤を有するリポソーム構成物の構造およびサイズを保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テモポルフィン(Temoporfin)または他の非極性光増感剤を含むリポソーム処方物の製造、および特に静脈内注入を使用する治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、水コンパートメントにより分離されている同心状の脂質二重層からなる人工のベシクルであり、そして医薬伝達ベシクルとして広く検討されてきている。それらのすべては製造方法によりうまくコントロールできる構造、化学的組成およびコロイドのサイズにより、リポソームは、種々の応用に有用であるいくつかの性質を示す。最も重要な性質は、コロイドのサイズ(すなわち、20nm−10μmの範囲のやや均一な粒子のサイズ)、特殊な膜および表面の特徴である。
【0003】
リポソームは、それらがいくつかの異なる目的を果たすことができるために、医薬および抗原用の担体として使用される(非特許文献1)。リポソームに囲まれた医薬は、代謝酵素と接触することがない。逆に、身体の構成成分(例えば赤血球または注入部位の組織)は、医薬の投与物全体に直接曝されない。医薬が作用する持続時間は、身体内の医薬の放出が遅いために、リポソームにより延長できる。ターゲティングの選択を意味する方向付けの可能性を有するリポソームは、身体全体で医薬の分布を変化させる。細胞は、エンドサイトーシスまたは食作用のメカニズムを使用してリポソームをサイトゾル中に取り入れる。その上、リポソームは、分解(例えば、代謝分解)に対して医薬を保護できる。ときには成功することがあるが、リポソームには限界がある。リポソームは、医薬を疾患のある組織に伝達するばかりか、肝臓、脾臓、腎臓および細網内皮系にも急速に入り、そして循環している間に医薬を放す(非特許文献2)。
【0004】
ペギレーション(pegylation)は、これらの欠陥を克服する別の方法である。まず、ペギレーションは、長期間治療領域内に医薬のレベルを維持し、そして医薬は、より小さい、さらに活性なおよび/または容易に純粋になるフラグメントに次第に分解する長期にわたって循環する部分になる。第二に、それは、長期にわたって循環する医薬を含む微粒子または大きな分子が、病気に冒された脈管構造または受容体が発現する病理学的部位に徐々に蓄積するのを可能にし、そしてこれらの領域における医薬の伝達を改善または増大させる。第三に、それは、減少した血流または低濃度のターゲット抗原で病理学的領域の到達するものと思われるこれらのターゲットされた医薬および医薬担体にさらによいターゲッティング効果を達成するのを助けることができる。ペギレーションの利益は、代表的に特に、増加した安定性(温度、pH、溶媒など)、顕著に低下した免疫原性および抗原性、プロテアーゼに対する抵抗性、触媒的活性の維持、並びに溶解性における改善、そして生成物の液体安定性の増大および攪拌により誘発される凝集の減少をもたらすことである。
【0005】
二重層と融和できる種を含むリポソーム膜例えばポリ(エチレングリコール)結合脂質(PEG−脂質)またはガングリオシドは、ステルスリポソームを製造するのに使用されている(非特許文献3)。ステルスリポソームは、血液循環において比較的長い半減期を有し、そして生体内で別の生体内分布を示す。Vaageら(非特許文献4)は、ドキソルビシンのステルスリポソームを製造し、そしてそれらを使用して新しく移植されかつ十分に定着した成長する一次マウスがん腫を治療しそして乳房内腫瘍移植物からの自発性転移の発生を阻害した。かれらは、ドキソルビシン処方物のステルスリポソームの長い循環時間がその優れた治療の有効性に関係があると結論した。立体配位的に安定化したリポソームの二重層中のMPEG誘導体化(ペギレート化)脂質の存在は、血漿蛋白および細胞表面受容体との相互反応(従来のリポソームの静脈内投与後に見られるRESクリアランスおよび急速な血管内の不安定化/破壊に関係する)に対する立体配位バリヤをもたらす。その結果、ペギレート化リポソームは、長期の循環半減期を有し、そして任意の封入剤の薬剤動力学は、捕捉された薬剤のそれらよりむしろリポソーム担体のそれらに従うように変えられる(非特許文献5)。ペギレート化リポソームの腫瘍の局在性のメカニズムは、腫瘍における漏れやすい血管を通る管外遊出によるため(非特許文献6および7)、長期に及ぶ循環は、腫瘍の脈管構造を通るペギレート化リポソームによりなされる通過の合計数を増やすことにより、腫瘍中の蓄積に有利であると思われる。
【0006】
光力学治療(PDT)は、種々の医学上の応用に使用するために開発された最も将来性のある技術の1つであり、そして腫瘍をなくすための十分に認められた治療として周知である(非特許文献8)。PDTの他の重要な応用は、皮膚、歯科、化膿、呼吸器、胃腸、性器および他の感染症を含む病原性微生物による感染症の治療である。
【0007】
感染症の治療において常に生ずる問題は、疾患の治療に使用される剤が特異性を失うことであり、それによりその治療から患者は新しい群の疾病にかかることになる場合がある。
【0008】
種々のタイプの疾患の治療に関するPDTの使用は、光増感剤の固有の特徴により制限される。これらは、それらの高いコスト、宿主生物における延長された保持、皮膚のかなりの光毒性、バックグラウンド毒性、生理学的溶液における低い溶解度(それが血栓塞栓の事故を生ずるため、血管内投与へのその有用性を低下する)、そして低いターゲティング有効性を含む。これらの不利益さは、光増感剤の非常に高い投与量の投与を導き、それは損傷をうけていない組織における光増感剤の蓄積および損傷していない部位を冒す付随して生ずるリスクの可能性を劇的に増大させる。
【0009】
光増感剤の特異性およびPDTの有効性を増大させる有望なアプローチの1つは、光増感剤とリガンド−ベクターとの融合であり、それは、目標細胞の表面上の受容体に特異的に結合する。目標細胞により認識される多数の天然および合成の分子は、これらのベクターとして使用できる。このアプローチは、腫瘍の治療用の光増感剤の新しい世代のデザインに現在使用されている(非特許文献9)。
【0010】
光増感剤を腫瘍細胞に向けることにより腫瘍の選択性を増加させる他のアプローチは、リポソーム例えばトラスフェリン共役リポソームを使用することである(非特許文献10)。非共役リポソームが、しばしば、細網内皮系により容易に認識され排除されるため、PEG化リポソームが使用された(非特許文献11および12)。
【0011】
ガンおよび他の疾患の疾患における光力学治療の適用が急速に増大しているため、新しい光増感剤処方物への要求が増加している。これらの新しい光増感剤処方物には、さらに安定であり、製造が容易でありさらに取り扱いが容易であることが求められる。その上、特に疎水性かつ非極性の光増感剤は、能率的かつ選択的な方法で組織に向かうことができなくてはならない。
【0012】
【非特許文献1】Storm and Crommelin,Pharmaceutical Science and Technology Today,1,19−31,1998
【非特許文献2】Harris and Chess,Nature,March 2003,2,214−221
【非特許文献3】Papahadjopoulos et al,PNAS,88,11460−4,1991
【非特許文献4】Vaage et al,Int.J.of Cancer,51,942−8,1992
【非特許文献5】Stewart et al,J.Clin.Oncol.16,683−691,1998
【非特許文献6】Northfelt et al,J.Clin.Oncol.16,2445−2451,1998
【非特許文献7】Muggia et al,J.Clin.Oncol.15,987−993,1997
【非特許文献8】「Pharmaceutical development and medical applications of porphyrin−type macrocycles」T.D.Mody,J.Porphyrins Phthalocyanines,4,362−367,2000
【非特許文献9】「Porphyrin−based photosensitizers for use in photodynamic therapy」E.D.Sternberg、D.Dolphin,C.Brueckner,Tetrahedron,54,4151−4202,1998
【非特許文献10】Derycke and DeWitte,Int.J.Oncology,20,181−187,2002
【非特許文献11】Woodle and Lasie、Sterically stabilized liposomes,Biochim Biophys Acta,1113,171−199,1992
【非特許文献12】Dass et al,Enhanced anticancer therapy mediated by specialized liposomes,J.Pharm.Pharmacol.49,972−975,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
光力学治療(PDT)に使用される改善された光増感剤処方物を提供するのが本発明の目的である。
リポソーム膜中に非極性光増感剤を配合し、それにより非極性および極性の物質を同じベシクルを使用して輸送するのが本発明の他の目的である。
【0014】
凍結防止剤として単糖またはポリアルコールを添加することにより凍結乾燥中配合された非極性光増感剤を有するリポソーム構成物の構造およびサイズを保存するのが本発明の他の目的である。
【0015】
改善された薬剤動力学の性質を有する光増感剤処方物を提供するのが本発明の他の目的である。
細胞膜を通る非極性光増感剤の輸送を改善しそのためPDTの能率を増大させるのが本発明の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、非極性ポルフィリン光増感剤および1つ以上の燐脂質を含む光力学治療用の製薬リポソーム処方物に関し、それらは凍結乾燥を要することなく安定に貯蔵できる。リポソーム処方物は、静脈内投与のための治療上有効な量の光増感剤を提供する。燐脂質は、ペギレーションにより改変でき、すなわちそれらは燐脂質の統合された部分としてポリエチレングリコールを含む。形成されたリポソームは、膜内に非極性光増感剤を含み、そして非極性光増感剤および第二の極性の物質の組み合わされたターゲティングに有用である。処方物が単糖またはポリアルコールの存在を含むとき、それは、リポソームベシクルのサイズおよび治療上有効な量の光増感剤の含量を保存しつつ、有効に凍結乾燥できる。本発明は、また水性ベシクルによる再構成で形成されるリポソーム組成物に関する。好適な水性ベシクルによる再構成での凍結乾燥された処方物は、また静脈内投与に有用なリポソームを形成する。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、図とともに読まれる以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】リポソーム処方されたmTHPCのゲル濾過曲線である。脂質成分およびmTHPCの両者は、集めたすべてのフラクションにわたって同じ分布を示す。
【図2】注入後の時間の関数として腫瘍中の蓄積を与える、mTHPC、生成物AおよびBの静脈内注入(0.5mg/kg)でのSwiss nu/nuマウスの無処理皮膚のColo26腫瘍の光誘発蛍光(LIF)の測定を示す。
【図3】生成物A、BおよびmTHPCの静脈内注入6時間後のPDT効果を示す。マウスは、PDT処理直後Evansブルー(1%)を腹腔内に注入され(0.25mL)、そして24時間後殺された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
凍結乾燥を要することなく貯蔵して安定な、非極性ポルフィリン光増感剤および1つ以上の燐脂質を含む光力学治療用の製薬リポソーム処方物は、以下に記述される。リポソーム処方物は、静脈内投与のための治療上有効な量の光増感剤を提供する。燐脂質は、ペギレーションにより改変でき、すなわちそれらは燐脂質の統合した部分としてポリエチレングリコールを含む。形成されたリポソームは、膜内に非極性光増感剤を含みそして非極性光増感剤および第二の極性物質の組み合わさったターゲティングに有用である。
【0019】
処方物は、単糖またはポリアルコールを使用する凍結乾燥工程により保存でき、かなり安定な貯蔵期間を有する必要がない。工程のサイクルは、リポソームベシクルのサイズ並びに光増感化合物の膜含量を保存する。
【0020】
本発明の非極性光増感剤は、周知のポルフィリンに基づく化合物を含む。本発明の実施に有利に使用される特定の光増感剤は、ポルフィリン単環光増感剤に基づくものであり、ジュウテリオポルフィリン、エチオポルフィリン、プロトポルフィン、ヘマトポルフィリン、フェオホルバイド並びにそれらの誘導体、特にジ−およびテトラ−ヒドロポルフィリン誘導体(640−780ナノメートルの範囲で最大の光吸収を有する)を含む。
【0021】
燐脂質は、ペギレーションにより改変されても(統合する部分としてポリエチレングリコールを含む)、またはされなくてもよい。形成されたリポソームは、膜内に非極性光増感剤を含み、そして非極性光増感剤および第二の極性物質の組み合わさったターゲティングに有用である。
【0022】
光増感剤処方物は、望ましくない細胞または組織または他の望まない材料へ非極性光増感剤分子を向かわせるのに有用であり、そして適切な光源による照射後ターゲットを損傷するのに有用である。光増感剤処方物は、また、光増感剤の制限された光化学活性化によりまたはそれなしで蛍光イメージング法を使用することによって望ましくない細胞または組織または他の望まない材料をモニターするのに有用である。
【0023】
特に、本発明のリポソーム処方物は、非極性光増感剤を輸送するのに有用である。非極性物質は、ベシクルの膜内に一体化され、それによってより容易に開放する構造を生成して、細胞膜への直接の作用のために光増感剤を放す。このメカニズムは、作用の1つの好ましい場所である細胞膜系に直接光増感剤を伝達する。そのため、適切な外部の光源による照明により有効に活性化される光増感剤は、望ましくない細胞、組織または他の構造を不可逆的に損傷できる。
【0024】
従来構築されたリポソーム処方物は、ベシクルのルミナール(luminal)部分中に捕捉されるいくつかの化合物を輸送するのに使用されている。本発明は、1つのリポソーム内の2つの異なる輸送コンパートメントの組み合わせに焦点をあてており、非極性および極性の物質の組み合わさった輸送を可能にする。この方法で、膜内に光増感剤を存在させることによって、光増感剤は、それらの作用点に有効に向けられるが、リポソーム粒子内のルミナール部分は、他の物質(治療に有益な効果を有する医薬を含む)を包含するために、自由のままである。
【0025】
さらに、グルコースのような単糖および燐脂質へ付着した光増感剤の組み合わせは、二糖の代わりに生理学的に普通の炭水化物を使用して凍結乾燥および再水和中、リポソームのサイズを保存するのに優れた手段である。
【0026】
この多面的な概念は、治療に有益な効果を有すると思われる物質の添加を可能にする。1つのベシクル内の膜に結合した光増感剤とともに2つ以上の物質を組み合わせることは、ターゲティング細胞治療の酸素含量に直接または間接に影響し、光力学治療の有効性に影響する。例えば、これらの効果は、哺乳動物のチオレドキシンレダクターゼ(TrxR)の阻害剤のような酵素の活性の阻害剤を添加することにより達成できる。そのため、目標とした細胞の細胞質に到達した後にのみ有効なため、阻害剤は、抗酸化剤として通常作用するTrx/TrxR経路をブロックするだろう。
〔実施例〕
【実施例1】
【0027】
m−THPCを含むリポソームの製造
mTHPC(Temoporfin)は、参考として本明細書に引用される米国特許4992257および5162519に記述されている通りに合成された。
リポソームは、以下の一般的な方法で製造された。
【0028】
非極性光増感剤、アスコルビン酸パルミテートおよび燐脂質をクロロホルム/メタノールに溶解する。溶液を、次にクロロホルム/メタノール混合物がガスクロマトグラフィーにより検出できなくなるまで、回転蒸発器を使用して真空下乾燥する。注入用の水を添加して少なくとも2時間50℃の温度で脂質フィルムを再水和する。混合物を次に最後に100ナノメートルの穴のサイズを使用する
【0029】
ホモゲナイザーフィルター系を通す。好ましくは、再水和の水に単糖またはポリアルコールを補給する。濾液を集め、バイアルに入れ、好ましくは凍結乾燥する。凍結乾燥した組成物を、投与前に注入用の水により再構成する。
前記の方法を使用して、リポソーム処方物のいくつかの異なる調製物を以下のように製造した。
【0030】
実施例 1a
成分 量(%w/v)
mTHPC 0.05−0.15
ジパルミトイルホスファチジルコリン 0.5−2.0
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 0.05−0.2
ペギレート化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン 0.05−0.2
アスコルビン酸パルミテート 0.002−0004
注入用の水 加えて上記濃度にする
【0031】
実施例 1b
成分 量(%w/v)
mTHPC 0.05−0.15
ジパルミトイルホスファチジルコリン 0.5−2.0
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 0.05−0.2
アスコルビン酸パルミテート 0.002−0004
注入用の水 加えて上記濃度にする
【0032】
実施例 1c
成分 量(%w/v)
mTHPC 0.05−0.15
ジパルミトイルホスファチジルコリン 0.5−2.0
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 0.05−0.2
グリコース 2.0−12.0
アスコルビン酸パルミテート 0.002−0004
注入用の水 加えて上記濃度にする
すべては、本発明によるそれらの使用で十分に機能することが分かった。
【実施例2】
【0033】
リポソームm−THPCの物理的および化学的安定性
リポソーム処方物の物理的安定性は、光子相関スペクトル分析により粒子サイズの分布をモニターすることにより測定された。
【0034】
リポソームmTHPCの安定性
貯蔵条件 平均粒子サイズ分布(nm)
最初 166
23℃−1ヶ月 177
23℃−4ヶ月 167
【実施例3】
【0035】
処方物のリポソーム二重層内のmTHPCの局在化
リポソーム処方物のゲル濾過は、セファデックスG50カラムで行われた。図1に示されるように、脂質およびmTHPCは、すべてのフラクションにわたって同じ分布を示し、両者の成分の物理的な相互作用すなわち膜二重層中へのmTHPCの一体化を示す。分布は、表1および2に示されるように、超音波処理によりリポソーム構造を破壊した後でも著しく変化しない。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【実施例4】
【0038】
マウスにおける製剤動力学
Balb/cマウスに同系間の非転移マウス結腸直腸腫瘍細胞系であるColo26を使用した。
細胞を、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、1%ストレプトマイシン−ペニシリンおよび200mMのL−グルタミンを補ったRosewell Park Memorial Institute(RPMI)−1640培地で、95%空気および5%CO中で37℃で単層培養として維持した。6週令の無胸腺雌マウス(Swiss,nu/nu)に、2×10Colo26細胞を右後ろ足の皮下に接種した。2週後、腫瘍が5−7mmの直径に達したとき、m−THPCの処方物(0.5mg/kg)を静脈内に注入した。
【0039】
非侵襲性LIF測定を、医薬投与後異なる時間で3つの異なる部位、すなわち皮膚が重なった腫瘍、左後ろ足上の皮膚が重なった対称的な正常の組織および隆起した皮膚で行った。選択された時点で、マウスを殺し、そして腫瘍および正常の組織からの蛍光信号を直接接触して測定した。
【0040】
図2は、4匹のマウスで測定された注入後の時間の関数として、mTHPC、生成物AおよびBの蓄積を示す。非侵襲性測定は、24時間で最適な比(1.3)で正常な組織に比べて腫瘍中のmTHPCのよりよい蓄積の傾向を立証した。注入24時間および48時間後の腫瘍および筋肉との直接接触で行われた侵襲性測定は、それぞれ2.7および3.0の比を示した。
【0041】
生成物Aに関する測定は、投与後0.5時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間および72時間で1匹のマウスでなされた。生成物Aは、mTHPCと同様な薬剤動力学の傾向を示した。mTHPCに比べて、腫瘍組織の最高の蛍光強度は、注入4時間後既に達した。
【0042】
生成物Bに関する測定は、投与後0.5時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間および72時間で1匹のマウスでなされた。腫瘍の最高の蛍光強度は、静脈内注入8時間後に測定された。mTHPCに比べて、生成物Bは、完全に異なる製剤動力学の性質を示している。生成物Bの濃度は、mTHPCより遙かに早く(16時間)腫瘍中で増加した。
【実施例5】
【0043】
リポソームm−THPCの抗腫瘍活性
Balb/cマウスに同系間の非転移マウス結腸直腸腫瘍細胞系であるColo26を使用した。
細胞を、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、1%ストレプトマイシン−ペニシリンおよび200mMのL−グルタミンを補ったRosewell Park Memorial Institute(RPMI)−1640培地で、95%空気および5%CO中で37℃で単層培養の無胸腺雌マウス(Swiss,nu/nu)に、2×10Colo26細胞を右後ろ足の皮下に接種した。2−3週後、腫瘍が10−13mmの直径に達したとき、m−THPCの処方物(0.5mg/kg)を静脈内に注入した。他に示されない限り、1つの生成物あたり1群3匹のマウスを、それぞれのPDT処理後に使用した。
【0044】
a.光力学治療
0.5時間、4時間、6時間、72時間の医薬−光の間隔(DLI)を、mTHPC、生成物A(リポソームおよびm−THPC)および生成物B(PEG化リポソームおよびm−THPC)としての生成物に使用した。それぞれの動物は、ケタミン(12.5mg/mL)の筋肉内注入により麻酔にかけられ、次に光ダイオードレーザーを使用して100mW/cmで10J/cmにより652nmで光照射された。
【0045】
b.PDT効果の評価
形態学的方法
PDT処理後の腫瘍組織壊死を評価するために、Evans Blue染色法を使用した。
マウスに、PDT処理直後Evansブルー(1%)を腹腔内に0.25mL注入した。
24時間後、マウスをハロタンの過剰投与により殺し、腫瘍を取り出しそして縦に切開した。図3に例示されているように、腫瘍全体および腫瘍の切片の写真をとった。
【0046】
染色されない壊死領域を腫瘍の損傷と考えた。
1.医薬−光の間隔(DLI)=0.5時間。壊死は、使用された生成物に関係なく観察されなかった。
2.医薬−光の間隔(DLI)=4時間。mTHPC−PDTにより処理された2匹のマウスは、部分的な腫瘍の壊死を立証した。生成物Aにより処理された2匹のマウスは、部分的な壊死を生じ、一方三番目のマウスの腫瘍は、変化がなかった。生成物B−PDTにより処理された3匹のマウスは、腫瘍の壊死を立証し、2匹のマウスでは、明確な腫瘍の壊死が観察され、一方1匹のマウスでは、腫瘍の壊死は部分的であった。
【0047】
3.医薬−光の間隔(DLI)=6時間。6匹のマウスを生成物Aについて使用した。明確な壊死が、生成物Aにより処理された2匹のマウスの腫瘍に認められ、そして4匹の他のものは、変化がなかった。生成物Bでは、明確な腫瘍壊死がすべてのマウスに観察された。mTHPC−PDTにより処理された2つの腫瘍は、明確な壊死を立証し、1つの腫瘍は壊死がなかった。壊死を示すmTHPC−PDT腫瘍は、肉眼による観察により確認された。
【0048】
図に関連して本発明の好ましい態様を記述したが、本発明が記述された態様に限定されず、そして種々の変化および改変が、請求の範囲に規定された本発明の範囲または趣旨から離れることなく当業者により行われうることを理解すべきである。
【0049】
本実施形態に係るリポソーム処方物は以下のように記載してもよい。
(付記1)
燐脂質から実質的になるリポソーム二重層、並びに治療上有効な量の非極性光増感剤を含むことを特徴とする光力学治療用の製薬リポソーム処方物。
(付記2)
該燐脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ポリ(エチレングリコール)結合燐脂質およびこれら3つの物質の組み合わせからなる群から選ばれる付記1のリポソーム処方物。
(付記3)
該光増感剤がポルフィリンマクロ環光増感剤である付記1のリポソーム処方物。
(付記4)
該ポルフィリンマクロサイクル光増感剤が、ジュウテリオポルフィリン、エチオポルフィリン、プロトポルフィン、ヘマトポルフィリン、フェオホルバイド並びにそれらのジ−およびテトラ−ヒドロポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる付記1のリポソーム処方物。
(付記5)
凍結乾燥され、1つ以上の単糖またはポリアルコールをさらに含み、好適な水性ベシクルを添加すると凍結乾燥処方物はリポソーム二重層内に治療上有効な量の非極性光増感剤を含むリポソームを形成する付記1のリポソーム処方物。
(付記6)
該単糖がグルコースおよびフラクトースからなる群から選ばれる付記5のリポソーム処方物。
(付記7)
該ポリアルコールがイノシトールおよびマンニトールからなる群から選ばれる付記5のリポソーム処方物。
(付記8)
単糖対燐脂質の濃度比が1:2−1:12の間である付記5のリポソーム処方物。
(付記9)
ポリアルコール対燐脂質の濃度比が1:2−1:12の間である付記5のリポソーム処方物。
(付記10)
製薬投与のために水性流体により再構成される付記5のリポソーム処方物。
(付記11)
光増感剤の治療上有効な濃度が、0.0001−0.15%w/vである付記1又は5のリポソーム処方物。
(付記12)
ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビン酸パルミテートおよびこれら2つの組み合わせからなる群から選ばれる成分をさらに含む付記1又は5のリポソーム処方物。
(付記13)
処方物が、特に極性があり予め選択された治療でいくらかの有益な効果を有するのに好適な少なくとも1つの追加の製薬上活性な物質をさらに含む付記1又は5のリポソーム処方物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペギレート化燐脂質を含む燐脂質からなるリポソーム二重層、並びに該リポソーム二重層内に含まれる治療上有効な量の光増感剤からなる、保存のための凍結乾燥を必要としない光力学治療用の製薬リポソーム処方物。
【請求項2】
前記燐脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ポリ(エチレングリコール)結合燐脂質およびこれら3つの物質の組み合わせからなる群から選ばれる請求項1に記載のリポソーム処方物。
【請求項3】
前記燐脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロールおよびペギレート化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの組み合わせである請求項1に記載のリポソーム処方物。
【請求項4】
前記ジパルミトイルホスファチジルコリンの濃度は0.5−2.0%w/vであり、
前記ジパルミトイルホスファチジルグリセロールの濃度は0.05−0.2%w/vである請求項3に記載のリポソーム処方物。
【請求項5】
前記光増感剤がジヒドロポルフィリンおよびテトラヒドロポルフィリンからなる群から選ばれる請求項1から4のいずれか1項に記載のリポソーム処方物。
【請求項6】
前記光増感剤がテモポルフィンである請求項1から5のいずれか1項に記載のリポソーム処方物。
【請求項7】
前記ジパルミトイルホスファチジルコリンの濃度は0.5−2.0%w/vであり、
前記ペギレート化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの濃度は0.05−0.2%w/vである請求項3に記載のリポソーム処方物。
【請求項8】
前記光増感剤の治療上有効な濃度が、0.0001−0.15%w/vである請求項1から7のいずれか1項に記載のリポソーム処方物。
【請求項9】
製薬投与のために水性流体により再構成される請求項1から8のいずれか1項に記載のリポソーム処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213731(P2011−213731A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147503(P2011−147503)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2006−524628(P2006−524628)の分割
【原出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】