説明

光化学処理装置及び光化学処理方法

【課題】被照射物に対して均一に紫外線を照射することにより、均一に光化学処理を行うことが可能な光化学処理装置及び光化学処理方法を提供する。
【解決手段】被照射物1を光化学処理するための処理室2と、処理室2内に設けられ、被照射物を搬送するための搬送手段3と、処理室2内に、水平方向に一定の周期Tで配置され、被照射物1に紫外線を照射する複数の管状の紫外線光源4と、被照射物1を、複数の紫外線光源4の配置方向に、距離d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)水平移動させる移動手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶基板などの露光処理などに用いられる光化学処理装置及び光化学処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶パネルなどのシールやカラーフィルタなどのパターニング、印刷インクや塗料などの硬化乾燥に、光触媒を含む有機物の紫外線による重合硬化を利用した光化学処理が用いられている。このような光化学処理には、例えば、発光管内に、ナトリウムなどの金属ハロゲン化物と、水銀、アルゴンガスを封入したメタルハライドランプなどが用いられる。このメタルハライドランプは、金属スペクトルに起因する長波長側紫外線を含む200〜450nmのブロードな発光波長とともに、高い発光効率を得ることができる紫外線光源である。
【0003】
このような紫外線光源を用いた光化学処理には、例えば複数の管状の紫外線光源を並列に配置し、搬送された被照射物に紫外線を照射するというバッチ式処理が用いられている。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このとき、紫外線光源は、所定の周期で配置されているが、光源直下と光源間下では、照度が異なるため、バッチ式処理の場合、照度ムラが生じ、被照射物面内で積算光量がばらつくため、被照射物面内の処理状態にばらつきを生ずるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−258270公報([0021]、[図1]、[図2]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被照射物に対して均一に紫外線を照射することにより、均一に光化学処理を行うことが可能な光化学処理装置及び光化学処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、被照射物を光化学処理するための処理室と、処理室内に設けられ、被照射物を搬送するための搬送手段と、処理室内に、水平方向に一定の周期Tで配置され、被照射物に紫外線を照射する複数の管状の紫外線光源と、被照射物を、複数の紫外線光源の配置方向に、距離d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)水平移動させる移動手段を備えることを特徴とする光化学処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、被照射物を光化学処理するための処理室に搬入する工程と、処理室内で、水平方向に一定の周期Tで配置された複数の管状の紫外線光源により、被照射物に紫外線を照射する工程と、紫外線を照射しながら、被照射物を、複数の前記紫外線光源の配置方向に、距離d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)水平移動させる工程を備えることを特徴とする光化学処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、光化学処理装置及び光化学処理方法において、被照射物に対して均一に紫外線を照射することにより、均一に光化学処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0010】
図1に本実施形態の光化学処理装置の側面図を示す。図に示すように、被照射物1を紫外線照射処理するための処理室2内に、処理室2内に被照射物1を搬送する搬送手段であるローラを備えた搬送機3と、水平方向に等間隔(周期:T)で配置され、被照射物1に紫外線を照射する複数の管状の紫外線光源であるメタルハライドランプ4が設置されている。搬送機3は、搬送速度を制御する駆動制御機構5と接続されており、メタルハライドランプ4は、高周波電圧を供給する電源装置(図示せず)と接続されている。また、メタルハライドランプ4の上方、側面には、照射効率を向上させるための反射板6が設置されている。
【0011】
このような光化学処理装置を用いて、例えば以下のように紫外線照射による重合硬化処理が行なわれる。先ず、光触媒を含む有機物が塗布された被照射物1を、搬送機3上に載置し、これを駆動させることにより、処理室2に搬入する。被照射物1は、予め点灯させ安定化したメタルハライドランプ4により紫外線を照射した状態で、処理室2内を移動した後、所定の位置で停止させ、例えば20秒間紫外線を照射する。
【0012】
次いで、搬送機3を駆動させ、被照射物1を、メタルハライドランプ4の配置方向(メタルハライドランプ4の長手方向と垂直方向)に、配置周期Tの半分の距離d=T/2移動させた後、停止させ、同様に20秒間紫外線を照射する。そして、搬送機3を駆動させ、被照射物1を、処理室より搬出する。
【0013】
図2に、このような光化学処理装置における紫外線の光量分布の概念図を示す。縦軸は積算光量で、横軸は被照射物の端部からの距離を示している。図に示すように、距離d=T/2移動前、移動後において、それぞれメタルハライドランプ4の直下と、ランプ間下の照射ムラにより、光量のムラが生じている。しかしながら、移動前後の和はほぼ一定となっていることが分かる。
【0014】
このようにして、メタルハライドランプ4の配置周期Tの半分の距離d=T/2移動させて処理を行うことにより、積算光量を一定とし、被照射物面内の処理状態にばらつきを生ずることなく、均一に光化学処理を行うことが可能となる。
【0015】
本実施形態において、紫外線照射処理時に搬送機3を駆動させ、被照射物1を距離d=T/2移動させているが、図3に示すように、2つのストッパを設け、第1のストッパ7により被照射物1の位置決めをして所定時間停止後、第1のストッパ7をオフにして、第2のストッパ8により停止するまで移動させることにより、より高精度に紫外線照射処理時の移動距離を制御することができる。
【0016】
また、本実施形態において、紫外線照射処理時の移動距離dを、d=T/2としたが、必ずしもこれに限定されることなく、d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)であれば、積算光量のバラツキを相殺し、一定とすることができる。
【0017】
また、本実施形態において、搬送機3により、搬送と紫外線照射処理時の移動を行なっているが、紫外線照射処理時の移動のために、別途移動手段を設けても良い。また、その移動方向も、搬送方向とは必ずしも一致している必要はないが、紫外線光源の配置方向に移動させる必要がある。
【0018】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様の光化学処理装置を示す側面図。
【図2】本発明の一態様の光化学処理装置による光量分布を示す図。
【図3】本発明の一態様の光化学処理装置を示す側面図。
【符号の説明】
【0020】
1…被照射物、2…処理室、3…搬送機、4…メタルハライドランプ、5…駆動制御機構、6…反射板、7、8…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物を光化学処理するための処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記被照射物を搬送するための搬送手段と、
前記処理室内に、水平方向に一定の周期Tで配置され、前記被照射物に紫外線を照射する複数の管状の紫外線光源と、
前記被照射物を、複数の前記紫外線光源の配置方向に、距離d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)水平移動させる移動手段を備えることを特徴とする光化学処理装置。
【請求項2】
前記移動手段による被照射物の移動前後の前記紫外線の照射時間が等しくなるように制御する照射制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光化学処理装置。
【請求項3】
前記移動手段による移動方向は、前記搬送手段による搬送方向と一致することを特徴とする請求項1又は2に記載の光化学処理装置。
【請求項4】
被照射物を光化学処理するための処理室に搬入する工程と、
前記処理室内で、水平方向に一定の周期Tで配置された複数の管状の紫外線光源により、前記被照射物に紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射しながら、前記被照射物を、複数の前記紫外線光源の配置方向に、距離d=(2n−1)T/2(nは1以上の整数)水平移動させる工程を備えることを特徴とする光化学処理方法。
【請求項5】
前記紫外線を照射する工程において、前記被照射物の移動前後の前記紫外線の照射時間が等しくなるように制御することを特徴とする請求項4に記載の光化学処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−264194(P2007−264194A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87595(P2006−87595)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】