光吸収部材
【課題】特に曲面形状を有する部材に対して空気との界面での光の反射を低減し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供すること。
【解決手段】光吸収部材は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材101、111と、該光の波長よりも短いピッチで、曲面の表面にアレイ状に配列された構造単位を有する反射防止構造体102、112、303とを備え、基材は、巨視的に曲面形状を有しており、構造単位は、基材の曲面に相当する仮想面に対して突出又は陥没した形状を有し、仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されている。
【解決手段】光吸収部材は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材101、111と、該光の波長よりも短いピッチで、曲面の表面にアレイ状に配列された構造単位を有する反射防止構造体102、112、303とを備え、基材は、巨視的に曲面形状を有しており、構造単位は、基材の曲面に相当する仮想面に対して突出又は陥没した形状を有し、仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収部材に関し、特定的には、投写型表示装置や撮像装置等の光学機器において、不要光を効率的に吸収することが可能な光吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器において、機器内部の不要光を取り扱いは重要である。ここで、不要光とは、光学機器内部を、意図しない光路に沿って伝搬され、光学系本来の機能を達成するために用いられない光をいう。不要光は、多くの場合、光学機器の性能劣化の原因となる。
【0003】
例えば、大画面映像を得る方法としてライトバルブ上に映像信号に応じた光学像を形成し、その光学像を投写レンズによりスクリーン上に拡大投写する投写型映像表示装置が知られている。このような投写型映像表示装置の一例として、映像信号に応じて照明光の進行方向を制御することにより光学像を形成する反射型のライトバルブを用いた装置がある。反射型のライトバルブを用いた投写型映像表示装置は、光利用効率が高く高輝度の投写画像を表示することが可能である。
【0004】
反射型のライトバルブを用いた投写表示装置において、投写レンズに入射されない照明光成分は、いわゆるオフ光と呼ばれる不要光となる。ところが、オフ光は、何ら対策を施さないと、ライトバルブ周辺に配置されるプリズムや各種光学素子を保持する機構部品などにより反射され、投写レンズへ入射してしまう。オフ光が投写レンズに入射してしまうと、スクリーン上に表示されるべき表示画像の品質を著しく劣化させる。そこで、従来、このような投写表示装置において、オフ光を吸収するため、黒色塗料を塗布した吸収板が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の例として従来から、前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの光学機器に用いられる撮像光学系を保持するレンズ鏡筒の不要光対策が知られている。一般に、レンズ鏡筒内でレンズ面間の反射や各種光学素子を保持する機構部品などにより反射された光は、迷光と呼ばれる不要光となる。迷光は、複雑な反射光路に沿って再び光学系の光路に戻ってくることがある。前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラ等の撮像光学系のような結像光学系の場合、迷光は、光学系のゴーストやフレアをとなって、形成されるべき結像画像の画像品質を劣化させる原因になる。そこで、従来のレンズ鏡筒は、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりして、迷光の発生の防止を図っていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−66693号公報
【特許文献2】特開2003−266580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された投写型表示装置の例のように、黒色塗料が塗布された吸収板を用いた場合、吸収板の表面は空気との界面になるので、オフ光が無視できない割合で反射して、光路に戻ってしまうという問題があった。また、特許文献2に記載されたレンズ鏡筒の例のように、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりしても、同様に迷光を完全に防止することは困難であった。
【0007】
特に、反射を低減したい面が曲面形状である場合、黒色塗料の塗布や梨地処理を行うこと自体が製造工程を複雑化する原因であるため、処理をおこなっても反射を低減する効果が小さいと製造工程を複雑化させるデメリットをカバーできず、大きな問題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、特に曲面形状を有する部材に対して空気との界面での光の反射を低減し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することである。
【0009】
上記目的は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材と、反射を低減すべき光の波長よりも短いピッチで、曲面の表面に所定の形状を持つ構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体とを備え、基材は、巨視的に曲面形状を有しており、各構造単位は、それぞれ基材の曲面形状に相当する仮想面に対して突出あるいは陥没した形状を有し、仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されていることを特徴とする光吸収部材により達成される。
【0010】
なお、この明細書において、反射防止構造体とは、反射を低減すべき光の反射を防止するために、表面に微細構造単位が形成された部材を意味し、反射を低減すべき光を完全に反射させない態様だけではなく、所定の波長の反射を低減すべき光の反射を防止する効果を持つ態様を含む。また、この明細書において、巨視的な曲面形状とは、反射を低減すべき光の波長よりも大きい表面形状に相当し、反射を低減すべき光の波長よりも小さい表面形状を無視した仮想面に対応するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に曲面形状を有する部材に対して空気との界面での光の反射を防止し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101と、反射防止構造体102とを備える。基材101は、反射を低減すべき光が光束として入射する場合にその光束を包括する大きさと、機械的強度と、構成上必要な厚みとを持つ。また、基材101は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、例えば、反射を低減すべき光が可視光の場合、黒色材料からなる。黒色材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる。
【0013】
基材101は、巨視的には円筒の側面の一部をなす曲面形状を有している。反射防止構造体102は、この曲面の内周側に形成されている。このように、反射防止構造体102を凹面である曲面形状の基材上に形成すると、凸面である曲面形状の基材上に形成した場合と比較して、基材上で反射した光を広く散乱させることなく、一部の光を反射防止構造体102に再度入射させることができるため、光の吸収効率を向上させることが可能である。
【0014】
また、基材101は、巨視的な曲面形状のサグ量(曲面形状の両縁を結ぶ弦と、曲面形状の頂点との間の距離)が、20μm以上になっている。サグ量が20μm未満であると、例えば、光吸収部材100を用いて内径2mmのレンズ鏡筒を作製する場合に、当該レンズ鏡筒を16以上に分割する必要があり、製造コストが高くなるからである。
【0015】
反射防止構造体102は、高さ0.15μmの円錐形状の突起を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材101の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の高さは、ピッチの1倍以上に相当している。光吸収部材100は、反射防止構造体102が以上の構成を有しているため。可視帯域波長又はそれよりも長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく基材101によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0016】
図2は、第1の実施形態の反射防止構造体を拡大して示した概略断面図である。図2に示すように、各構造単位102aは、それぞれ基材の巨視的な曲面形状に相当する仮想面103に対して突出した形状を有している。各構造単位102aは、仮想面103と各構造単位102aの端部とを結ぶ直線104が互いに略平行になるよう配列されている。特に、本実施形態の構造単位は、円錐形状であるから、直線104は、各構造単位102aの円錐形状の底面の中心と円錐形状の頂点とを結ぶ直線に相当しており、円錐形状の中心軸である。換言すれば、本実施形態の反射防止構造体102の各構造単位102aは、全ての構造単位に共通の特定の基準方向である直線104の方向から見たとき、その側面の全域が見える形状となっている。
【0017】
図3は、第1の実施形態の反射防止構造体の突出形状を持つ各構造単位の側面の傾斜状態を説明するための概略斜視図である。図3に示すように、各構造単位102aである円錐形状の側面の法線ベクトル106a及び106bが、仮想面103から各構造単位102aの端部へ向かう方向の基準ベクトル105となす角を、それぞれθa及びθbとすると、ピッチ0.15μm、高さ0.15μm(ピッチの1倍)の円錐形状を構造単位とする反射防止構造体102の場合、θa=θb=θ=63.4度である。また、ピッチの1倍以上の高さを有する反射防止構造体102の場合、構造単位が円錐形状であることを考慮すると、63.4度≦θ<90度となる。
【0018】
光吸収部材100の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工し、予め高精度の反射防止構造体102と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したガラス材料をプレス成形することにより、ガラスからなる反射防止構造体成形用型を作成する。この反射防止構造体成形用型を用いて黒色の樹脂材料からなる基材101をプレス成形により製造すると、光吸収部材100を安価に大量に製造することができる。
【0019】
上記のように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101の表面に、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体102を設けることによって構成されているので、この光吸収部材100を用いることにより、空気との界面での光の反射を防止し、かつ、入射した光を実質的に完全に吸収することが可能となる。
【0020】
また、本実施形態の光吸収部材100は、特にプレス成形時の型からの離型に有利である。すなわち、本実施形態の光吸収部材100は、反射防止構造体102の各構造単位が仮想面103と各構造単位102aの端部とを結ぶ直線104が互いに略平行になるよう配列されているので、プレス成形時に反射防止構造体102を破壊することなく離型することができるからである。
【0021】
なお、本実施形態においては、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、ピッチの2倍あるいは3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。この場合、図3に示したθa=θb=θは、それぞれ75.9度≦θ<90度、又は80.5度≦θ<90度となる。
【0022】
また、本実施形態においては、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、構造単位は当該ピッチの1倍以上あるいは3倍以上の高さを有することが望ましい。
【0023】
また、本実施形態においては、黒色材料からなる基材101が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0024】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状(図4A参照)の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状(図4B参照)であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも円錐又は角錐状に限定されるものではなく、円柱状(図5A参照)や角柱状(図5B参照)などの柱状であっても、先端が丸くなっている釣鐘状(図6A及び6B参照)であっても、円錐台状(図7A参照)や角錐台状(図7B参照)などの円錐台又は角錐台状であってもいずれでもよい。また、各構造単位は厳密な幾何学的な形状である必要はなく、実質的に円錐又は角錐状、柱状、釣鐘状、円錐台又は角錐台状であればよい。要するに、反射防止構造体102は、少なくとも、各構造単位が反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで配列されていればよい。
【0025】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の突出形状からなるものを示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の陥没形状がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0026】
図8は、第1の実施形態の変形例における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図8において、本実施形態の変形例の光吸収部材110は、基材111と、反射防止構造体112とを備える。なお、変形例にかかる光吸収部材110は、先に説明した第1の実施形態の光吸収部材100と概略構成が等しいので、以下相違点を中心に説明する。
【0027】
反射防止構造体112は、深さ0.15μmの円錐形状の陥没を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材111の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の深さは、ピッチの1倍以上に相当している。光吸収部材110は、反射防止構造体112が以上の構成を有しているため、可視帯域波長及びそれよりも長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく、基材111によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0028】
反射防止構造体112においても、各構造単位112aは、それぞれ基材の巨視的な曲面形状に相当する仮想面113に対して陥没した形状を有している。各構造単位112aは、仮想面113と各構造単位112aの端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されている。特に、本実施形態の変形例の構造単位は、円錐形状であるから、その直線は、各構造単位112aの円錐形状の底面の中心と円錐形状の頂点とを結ぶ直線に相当しており、円錐形状の中心軸である。換言すれば、本実施形態の反射防止構造体102の各構造単位112aは、全ての構造単位に共通の特定の基準方向であるその直線の方向から見たとき、その側面の全域が見える形状となっている。
【0029】
反射防止構造体112の各構造単位の内面の傾斜状態も、上述した角度の関係式63.4度≦θ<90度を満足している。なお、変形例においても、ピッチの2倍あるいは3倍以上の深さの円錐形状を持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。この場合、円錐形状の突起の高さの場合と同様に、角度θは、それぞれ75.9度≦θ<90度、又は80.5度≦θ<90度となる。
【0030】
また、変形例においても、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、構造単位は当該ピッチの1倍以上あるいは3倍以上の深さを有することが望ましい。
【0031】
また、変形例においても、構造単位は円錐形状に限定されるものではなく、角錐形状、円柱形状、角柱形状、釣鐘状、円錐台形状、角錐台形状など、いずれでもよい。また、各構造単位は厳密な幾何学的な形状である必要はなく、実質的に円錐又は角錐状、柱状、釣鐘状、円錐台又は角錐台状であればよい点も同様である。
【0032】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図であり、図10はその光軸を含む面で切断して示した概略断面図(レンズを組み込んだ状態)である。
【0033】
図9に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒200は、上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100(図1参照)を4個用意し、それらを円筒状に一体化して形成した構造となっている。
【0034】
図10に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒200は、レンズ素子201、レンズ素子202、レンズ素子203を光軸204上に同軸に保持している。レンズ鏡筒200の内周面は、反射防止構造体102が形成されているので、レンズ鏡筒200内に保持されたレンズ素子201に入射する包括画角以上の光束や各レンズ素子の表面での反射によって発生する迷光などの不要光は、反射防止構造体102を介して基材に効率良く吸収される。この結果、不要光が再び光路に侵入することを防止することができ、各レンズ素子からなる光学系は、ゴーストやフレアの発生を抑制することができる。特に、光学系が、デジタルカメラの撮像光学系や投写型画像表示装置の投影光学系のような結像光学系である場合、コントラストの良好な光学像を形成することが可能となる。
【0035】
また、レンズ鏡筒などでは、不要光が一定の規則性を有している場合がありうる。例えば、レンズ鏡筒200の内面にその法線方向から入射する迷光が多い場合、それぞれの光吸収部材100において、反射防止構造体102が形成された領域の中心付近と、周辺付近(隣接する他の光吸収部材との境界付近)との間で、不要光が光吸収部材へ入射する入射角の相違によって、反射を低減する効果にわずかながら差異を生じる。このような差異をさらに低減し、均一な光吸収効果が必要になる場合、反射防止構造体102の各構造単位の高さあるいは深さのみを変化させて、反射防止構造体102が形成された領域の中心付近から、周辺付近(隣接する他の光吸収部材との境界付近)へいくにしたがって各構造単位の高さあるいは深さが増大するようにすればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、円筒状の側面形状を有するレンズ鏡筒200を例に挙げて説明したが、レンズ鏡筒200の側面形状は円筒状に限定されるものではなく、例えば、円錐台形状であってもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、1つの円筒からなるレンズ鏡筒200を例に挙げて説明したが、複数の円筒部材を摺動可能に組み合わせて構成される沈胴式レンズ鏡筒に適用することもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、レンズ鏡筒200として、上記第1の実施形態で説明した光吸収部材を複数個用意し、それらを円筒状に一体化して形成したような構造のものを例に挙げて説明しているが、これに限られない。例えば、円筒形状を有するレンズ鏡筒本体とは別に、可撓性を備えるシート状部材に反射防止構造体を形成し、シート状部材をレンズ鏡筒本体の内周面に接着するようにしてもよい。シート状部材は、黒色材料、透明材料のいずれかで製造可能である。黒色材料からなるシート状部材は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得ることができる。また、黒色材料からなるシート状部材は、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。また、レンズ鏡筒の内面全体ではなく、少なくとも一部が上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100や光吸収部材110からなっていてもよい。また、本実施形態においては、レンズ鏡筒200の内面がその長手方向に沿った4つの領域に分かれているが、この分割数は任意であり、少なくとも3つの領域に分かれていればよい。
【0039】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図11Aに示すレンズ鏡筒成形用金型は、レンズ鏡筒を成形する際に当該レンズ鏡筒の基材に先にセットされる第1の金型301であり、図11Bに示すレンズ鏡筒成形用金型は、第1の金型301をセットした後にレンズ鏡筒の基材にセットされる第2の金型302である。また、図12は本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をレンズ鏡筒の基材にセットした状態を、光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図である。
【0040】
図11に示すように、第1及び第2の金型301、302は、いずれも円筒の側面の一部を成すように構成されており、それぞれ2個ずつ用意される。すなわち、第1及び第2の金型301、302は、1つの円筒をその長手方向に4分割したものとなっている。そして、第1及び第2の金型301、302のそれぞれの両側部は、当該第1及び第2の金型301、302を上記した順番でレンズ鏡筒200の基材201にセットする場合に互いに干渉しないような形状に加工されている(図12参照)。
【0041】
第1及び第2の金型301、302の転写面である外表面には、レンズ鏡筒200の内表面の反射防止構造体102を反転したパターンの反射防止構造体、すなわち、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで配列された円錐形状の陥没を構造単位とする、反射防止構造体303が形成されている。ここで、各構造単位である陥没形状の中心軸は、互いに平行である。
【0042】
本実施形態のレンズ鏡筒成形用金型である第1及び第2の金型301、302の反射防止構造体303は、X線を利用して形成するのが望ましい。例えば、内径30mmのレンズ鏡筒200を、上記のような4分割された第1及び第2の金型301、302を用いて成形する場合、各金型301、302の外表面のサグ量は4.39mmとなる。このため、各金型301、302の外表面に電子線描画法を用いて反射防止構造体303を形成するのは極めて困難である。また、反射防止構造体303の各構造単位である円錐形状の内面の最大傾斜角は45度であるので、各金型301、302の外表面に二光束干渉露光法を用いて反射防止構造体303を形成するのは困難である。
【0043】
しかしながら、反射防止構造体303は、X線露光法を用いて形成することができる。具体的には、X線に感光する性質を有する高分子化合物である、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる基板の表面を、1kJ/cm3〜20kJ/cm3のエネルギーを有するX線で露光し、当該表面にニッケルメッキを施した後、基板を取り除けば、反射防止構造体303を有する金属部分が得られるので、これを利用してレンズ鏡筒成形用金型(第1及び第2の金型301、302)を作製すればよい。
【0044】
ここでは、X線を利用して反射防止構造体303を形成する場合について説明したが、紫外線又は紫外線よりも波長の短い光を利用して反射防止構造体303を形成することもできる。そして、この場合には、紫外線又は紫外線よりも波長の短い光に感光する性質を有する高分子化合物としてホルミル化ノボラック樹脂を用いればよい。
【0045】
次に、本実施形態のレンズ鏡筒成形用金型を用いて、レンズ鏡筒200を成形する(基材101の内表面に反射防止構造体303を形成する)方法について説明する。
【0046】
まず、上記第2の実施形態で挙げた黒色材料(光を吸収する材料)からなる円筒状の基材101を180℃程度まで昇温しながら、当該基材101の内表面に第1の金型301を2個セットする。その後、2個の第1の金型301間の基材101の内表面に第2の金型302を2個セットして、第1及び第2の金型301、302の外表面に形成された反射防止構造体303のパターンを基材101の内表面に転写する(図12参照)。次いで、全体を冷却した後、第1及び第2の金型301、302を離型する。これにより、基材101の内表面に入射光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体303を備えたレンズ鏡筒200が得られる。この場合、第1及び第2の金型301、302の外表面に形成された反射防止構造体303は、各構造単位である円錐形状の中心軸が互いに平行となっているので、第2の金型302及び第1の金型301を、この順番で各中心軸の方向に離型することにより、各反射防止構造体102を破壊することなくレンズ鏡筒200を成形することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、レンズ鏡筒成形用金型の分割数を4としているが、3以上であれば、適当な分割数とすることができる。また、本実施形態においては、外表面に反射防止構造体303が形成されたレンズ鏡筒成形用金型を例に挙げて説明しているが、外表面に反射防止構造体を備えたレンズ鏡筒を成形する場合には、内表面に反射防止構造体が形成されたレンズ鏡筒成形用金型が用いられる。
【0048】
また、レンズ鏡筒成形用金型の反射防止構造体は、本実施形態で示した構造に限定されるものではなく、これらの反射防止構造体を破壊することなく一方向に離型できる構造であれば、第1の実施形態で説明したようなどのような構造であってもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、円筒の側面の一部を成すように構成された第1及び第2の金型301、302を例に挙げて説明しているが、円錐台状のレンズ鏡筒を成形する場合には、円錐台の側面の一部を成すように構成された金型が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の光吸収部材は、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等の投写型表示装置及びこれら投写型表示装置を複数備えたマルチビジョンシステム、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置、光ピックアップ装置、光ファイバー通信システム等、不要光の除去が必要なすべての光学機器に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図2】第1の実施形態の反射防止構造体を拡大して示した概略断面図
【図3】第1の実施形態の反射防止構造体の突出形状を持つ各構造単位の側面の傾斜状態を説明するための概略斜視図
【図4A】第1の実施形態の反射防止構造体の拡大図
【図4B】第1の実施形態の反射防止構造体の拡大図
【図5A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図5B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図6A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図6B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図7A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図7B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図8】第1の実施形態の変形例における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図9】本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図10】本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸を含む面で切断して示した概略断面図
【図11A】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図11B】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図12】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をレンズ鏡筒の基材にセットした状態を、光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収部材に関し、特定的には、投写型表示装置や撮像装置等の光学機器において、不要光を効率的に吸収することが可能な光吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器において、機器内部の不要光を取り扱いは重要である。ここで、不要光とは、光学機器内部を、意図しない光路に沿って伝搬され、光学系本来の機能を達成するために用いられない光をいう。不要光は、多くの場合、光学機器の性能劣化の原因となる。
【0003】
例えば、大画面映像を得る方法としてライトバルブ上に映像信号に応じた光学像を形成し、その光学像を投写レンズによりスクリーン上に拡大投写する投写型映像表示装置が知られている。このような投写型映像表示装置の一例として、映像信号に応じて照明光の進行方向を制御することにより光学像を形成する反射型のライトバルブを用いた装置がある。反射型のライトバルブを用いた投写型映像表示装置は、光利用効率が高く高輝度の投写画像を表示することが可能である。
【0004】
反射型のライトバルブを用いた投写表示装置において、投写レンズに入射されない照明光成分は、いわゆるオフ光と呼ばれる不要光となる。ところが、オフ光は、何ら対策を施さないと、ライトバルブ周辺に配置されるプリズムや各種光学素子を保持する機構部品などにより反射され、投写レンズへ入射してしまう。オフ光が投写レンズに入射してしまうと、スクリーン上に表示されるべき表示画像の品質を著しく劣化させる。そこで、従来、このような投写表示装置において、オフ光を吸収するため、黒色塗料を塗布した吸収板が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の例として従来から、前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの光学機器に用いられる撮像光学系を保持するレンズ鏡筒の不要光対策が知られている。一般に、レンズ鏡筒内でレンズ面間の反射や各種光学素子を保持する機構部品などにより反射された光は、迷光と呼ばれる不要光となる。迷光は、複雑な反射光路に沿って再び光学系の光路に戻ってくることがある。前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラ等の撮像光学系のような結像光学系の場合、迷光は、光学系のゴーストやフレアをとなって、形成されるべき結像画像の画像品質を劣化させる原因になる。そこで、従来のレンズ鏡筒は、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりして、迷光の発生の防止を図っていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−66693号公報
【特許文献2】特開2003−266580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された投写型表示装置の例のように、黒色塗料が塗布された吸収板を用いた場合、吸収板の表面は空気との界面になるので、オフ光が無視できない割合で反射して、光路に戻ってしまうという問題があった。また、特許文献2に記載されたレンズ鏡筒の例のように、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりしても、同様に迷光を完全に防止することは困難であった。
【0007】
特に、反射を低減したい面が曲面形状である場合、黒色塗料の塗布や梨地処理を行うこと自体が製造工程を複雑化する原因であるため、処理をおこなっても反射を低減する効果が小さいと製造工程を複雑化させるデメリットをカバーできず、大きな問題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、特に曲面形状を有する部材に対して空気との界面での光の反射を低減し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することである。
【0009】
上記目的は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材と、反射を低減すべき光の波長よりも短いピッチで、曲面の表面に所定の形状を持つ構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体とを備え、基材は、巨視的に曲面形状を有しており、各構造単位は、それぞれ基材の曲面形状に相当する仮想面に対して突出あるいは陥没した形状を有し、仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されていることを特徴とする光吸収部材により達成される。
【0010】
なお、この明細書において、反射防止構造体とは、反射を低減すべき光の反射を防止するために、表面に微細構造単位が形成された部材を意味し、反射を低減すべき光を完全に反射させない態様だけではなく、所定の波長の反射を低減すべき光の反射を防止する効果を持つ態様を含む。また、この明細書において、巨視的な曲面形状とは、反射を低減すべき光の波長よりも大きい表面形状に相当し、反射を低減すべき光の波長よりも小さい表面形状を無視した仮想面に対応するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に曲面形状を有する部材に対して空気との界面での光の反射を防止し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101と、反射防止構造体102とを備える。基材101は、反射を低減すべき光が光束として入射する場合にその光束を包括する大きさと、機械的強度と、構成上必要な厚みとを持つ。また、基材101は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、例えば、反射を低減すべき光が可視光の場合、黒色材料からなる。黒色材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる。
【0013】
基材101は、巨視的には円筒の側面の一部をなす曲面形状を有している。反射防止構造体102は、この曲面の内周側に形成されている。このように、反射防止構造体102を凹面である曲面形状の基材上に形成すると、凸面である曲面形状の基材上に形成した場合と比較して、基材上で反射した光を広く散乱させることなく、一部の光を反射防止構造体102に再度入射させることができるため、光の吸収効率を向上させることが可能である。
【0014】
また、基材101は、巨視的な曲面形状のサグ量(曲面形状の両縁を結ぶ弦と、曲面形状の頂点との間の距離)が、20μm以上になっている。サグ量が20μm未満であると、例えば、光吸収部材100を用いて内径2mmのレンズ鏡筒を作製する場合に、当該レンズ鏡筒を16以上に分割する必要があり、製造コストが高くなるからである。
【0015】
反射防止構造体102は、高さ0.15μmの円錐形状の突起を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材101の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の高さは、ピッチの1倍以上に相当している。光吸収部材100は、反射防止構造体102が以上の構成を有しているため。可視帯域波長又はそれよりも長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく基材101によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0016】
図2は、第1の実施形態の反射防止構造体を拡大して示した概略断面図である。図2に示すように、各構造単位102aは、それぞれ基材の巨視的な曲面形状に相当する仮想面103に対して突出した形状を有している。各構造単位102aは、仮想面103と各構造単位102aの端部とを結ぶ直線104が互いに略平行になるよう配列されている。特に、本実施形態の構造単位は、円錐形状であるから、直線104は、各構造単位102aの円錐形状の底面の中心と円錐形状の頂点とを結ぶ直線に相当しており、円錐形状の中心軸である。換言すれば、本実施形態の反射防止構造体102の各構造単位102aは、全ての構造単位に共通の特定の基準方向である直線104の方向から見たとき、その側面の全域が見える形状となっている。
【0017】
図3は、第1の実施形態の反射防止構造体の突出形状を持つ各構造単位の側面の傾斜状態を説明するための概略斜視図である。図3に示すように、各構造単位102aである円錐形状の側面の法線ベクトル106a及び106bが、仮想面103から各構造単位102aの端部へ向かう方向の基準ベクトル105となす角を、それぞれθa及びθbとすると、ピッチ0.15μm、高さ0.15μm(ピッチの1倍)の円錐形状を構造単位とする反射防止構造体102の場合、θa=θb=θ=63.4度である。また、ピッチの1倍以上の高さを有する反射防止構造体102の場合、構造単位が円錐形状であることを考慮すると、63.4度≦θ<90度となる。
【0018】
光吸収部材100の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工し、予め高精度の反射防止構造体102と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したガラス材料をプレス成形することにより、ガラスからなる反射防止構造体成形用型を作成する。この反射防止構造体成形用型を用いて黒色の樹脂材料からなる基材101をプレス成形により製造すると、光吸収部材100を安価に大量に製造することができる。
【0019】
上記のように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101の表面に、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体102を設けることによって構成されているので、この光吸収部材100を用いることにより、空気との界面での光の反射を防止し、かつ、入射した光を実質的に完全に吸収することが可能となる。
【0020】
また、本実施形態の光吸収部材100は、特にプレス成形時の型からの離型に有利である。すなわち、本実施形態の光吸収部材100は、反射防止構造体102の各構造単位が仮想面103と各構造単位102aの端部とを結ぶ直線104が互いに略平行になるよう配列されているので、プレス成形時に反射防止構造体102を破壊することなく離型することができるからである。
【0021】
なお、本実施形態においては、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、ピッチの2倍あるいは3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。この場合、図3に示したθa=θb=θは、それぞれ75.9度≦θ<90度、又は80.5度≦θ<90度となる。
【0022】
また、本実施形態においては、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、構造単位は当該ピッチの1倍以上あるいは3倍以上の高さを有することが望ましい。
【0023】
また、本実施形態においては、黒色材料からなる基材101が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0024】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状(図4A参照)の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状(図4B参照)であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも円錐又は角錐状に限定されるものではなく、円柱状(図5A参照)や角柱状(図5B参照)などの柱状であっても、先端が丸くなっている釣鐘状(図6A及び6B参照)であっても、円錐台状(図7A参照)や角錐台状(図7B参照)などの円錐台又は角錐台状であってもいずれでもよい。また、各構造単位は厳密な幾何学的な形状である必要はなく、実質的に円錐又は角錐状、柱状、釣鐘状、円錐台又は角錐台状であればよい。要するに、反射防止構造体102は、少なくとも、各構造単位が反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで配列されていればよい。
【0025】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の突出形状からなるものを示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の陥没形状がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0026】
図8は、第1の実施形態の変形例における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図8において、本実施形態の変形例の光吸収部材110は、基材111と、反射防止構造体112とを備える。なお、変形例にかかる光吸収部材110は、先に説明した第1の実施形態の光吸収部材100と概略構成が等しいので、以下相違点を中心に説明する。
【0027】
反射防止構造体112は、深さ0.15μmの円錐形状の陥没を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材111の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の深さは、ピッチの1倍以上に相当している。光吸収部材110は、反射防止構造体112が以上の構成を有しているため、可視帯域波長及びそれよりも長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく、基材111によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0028】
反射防止構造体112においても、各構造単位112aは、それぞれ基材の巨視的な曲面形状に相当する仮想面113に対して陥没した形状を有している。各構造単位112aは、仮想面113と各構造単位112aの端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるよう配列されている。特に、本実施形態の変形例の構造単位は、円錐形状であるから、その直線は、各構造単位112aの円錐形状の底面の中心と円錐形状の頂点とを結ぶ直線に相当しており、円錐形状の中心軸である。換言すれば、本実施形態の反射防止構造体102の各構造単位112aは、全ての構造単位に共通の特定の基準方向であるその直線の方向から見たとき、その側面の全域が見える形状となっている。
【0029】
反射防止構造体112の各構造単位の内面の傾斜状態も、上述した角度の関係式63.4度≦θ<90度を満足している。なお、変形例においても、ピッチの2倍あるいは3倍以上の深さの円錐形状を持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。この場合、円錐形状の突起の高さの場合と同様に、角度θは、それぞれ75.9度≦θ<90度、又は80.5度≦θ<90度となる。
【0030】
また、変形例においても、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、構造単位は当該ピッチの1倍以上あるいは3倍以上の深さを有することが望ましい。
【0031】
また、変形例においても、構造単位は円錐形状に限定されるものではなく、角錐形状、円柱形状、角柱形状、釣鐘状、円錐台形状、角錐台形状など、いずれでもよい。また、各構造単位は厳密な幾何学的な形状である必要はなく、実質的に円錐又は角錐状、柱状、釣鐘状、円錐台又は角錐台状であればよい点も同様である。
【0032】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図であり、図10はその光軸を含む面で切断して示した概略断面図(レンズを組み込んだ状態)である。
【0033】
図9に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒200は、上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100(図1参照)を4個用意し、それらを円筒状に一体化して形成した構造となっている。
【0034】
図10に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒200は、レンズ素子201、レンズ素子202、レンズ素子203を光軸204上に同軸に保持している。レンズ鏡筒200の内周面は、反射防止構造体102が形成されているので、レンズ鏡筒200内に保持されたレンズ素子201に入射する包括画角以上の光束や各レンズ素子の表面での反射によって発生する迷光などの不要光は、反射防止構造体102を介して基材に効率良く吸収される。この結果、不要光が再び光路に侵入することを防止することができ、各レンズ素子からなる光学系は、ゴーストやフレアの発生を抑制することができる。特に、光学系が、デジタルカメラの撮像光学系や投写型画像表示装置の投影光学系のような結像光学系である場合、コントラストの良好な光学像を形成することが可能となる。
【0035】
また、レンズ鏡筒などでは、不要光が一定の規則性を有している場合がありうる。例えば、レンズ鏡筒200の内面にその法線方向から入射する迷光が多い場合、それぞれの光吸収部材100において、反射防止構造体102が形成された領域の中心付近と、周辺付近(隣接する他の光吸収部材との境界付近)との間で、不要光が光吸収部材へ入射する入射角の相違によって、反射を低減する効果にわずかながら差異を生じる。このような差異をさらに低減し、均一な光吸収効果が必要になる場合、反射防止構造体102の各構造単位の高さあるいは深さのみを変化させて、反射防止構造体102が形成された領域の中心付近から、周辺付近(隣接する他の光吸収部材との境界付近)へいくにしたがって各構造単位の高さあるいは深さが増大するようにすればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、円筒状の側面形状を有するレンズ鏡筒200を例に挙げて説明したが、レンズ鏡筒200の側面形状は円筒状に限定されるものではなく、例えば、円錐台形状であってもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、1つの円筒からなるレンズ鏡筒200を例に挙げて説明したが、複数の円筒部材を摺動可能に組み合わせて構成される沈胴式レンズ鏡筒に適用することもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、レンズ鏡筒200として、上記第1の実施形態で説明した光吸収部材を複数個用意し、それらを円筒状に一体化して形成したような構造のものを例に挙げて説明しているが、これに限られない。例えば、円筒形状を有するレンズ鏡筒本体とは別に、可撓性を備えるシート状部材に反射防止構造体を形成し、シート状部材をレンズ鏡筒本体の内周面に接着するようにしてもよい。シート状部材は、黒色材料、透明材料のいずれかで製造可能である。黒色材料からなるシート状部材は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業(株)のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得ることができる。また、黒色材料からなるシート状部材は、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。また、レンズ鏡筒の内面全体ではなく、少なくとも一部が上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100や光吸収部材110からなっていてもよい。また、本実施形態においては、レンズ鏡筒200の内面がその長手方向に沿った4つの領域に分かれているが、この分割数は任意であり、少なくとも3つの領域に分かれていればよい。
【0039】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図である。図11Aに示すレンズ鏡筒成形用金型は、レンズ鏡筒を成形する際に当該レンズ鏡筒の基材に先にセットされる第1の金型301であり、図11Bに示すレンズ鏡筒成形用金型は、第1の金型301をセットした後にレンズ鏡筒の基材にセットされる第2の金型302である。また、図12は本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をレンズ鏡筒の基材にセットした状態を、光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図である。
【0040】
図11に示すように、第1及び第2の金型301、302は、いずれも円筒の側面の一部を成すように構成されており、それぞれ2個ずつ用意される。すなわち、第1及び第2の金型301、302は、1つの円筒をその長手方向に4分割したものとなっている。そして、第1及び第2の金型301、302のそれぞれの両側部は、当該第1及び第2の金型301、302を上記した順番でレンズ鏡筒200の基材201にセットする場合に互いに干渉しないような形状に加工されている(図12参照)。
【0041】
第1及び第2の金型301、302の転写面である外表面には、レンズ鏡筒200の内表面の反射防止構造体102を反転したパターンの反射防止構造体、すなわち、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで配列された円錐形状の陥没を構造単位とする、反射防止構造体303が形成されている。ここで、各構造単位である陥没形状の中心軸は、互いに平行である。
【0042】
本実施形態のレンズ鏡筒成形用金型である第1及び第2の金型301、302の反射防止構造体303は、X線を利用して形成するのが望ましい。例えば、内径30mmのレンズ鏡筒200を、上記のような4分割された第1及び第2の金型301、302を用いて成形する場合、各金型301、302の外表面のサグ量は4.39mmとなる。このため、各金型301、302の外表面に電子線描画法を用いて反射防止構造体303を形成するのは極めて困難である。また、反射防止構造体303の各構造単位である円錐形状の内面の最大傾斜角は45度であるので、各金型301、302の外表面に二光束干渉露光法を用いて反射防止構造体303を形成するのは困難である。
【0043】
しかしながら、反射防止構造体303は、X線露光法を用いて形成することができる。具体的には、X線に感光する性質を有する高分子化合物である、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる基板の表面を、1kJ/cm3〜20kJ/cm3のエネルギーを有するX線で露光し、当該表面にニッケルメッキを施した後、基板を取り除けば、反射防止構造体303を有する金属部分が得られるので、これを利用してレンズ鏡筒成形用金型(第1及び第2の金型301、302)を作製すればよい。
【0044】
ここでは、X線を利用して反射防止構造体303を形成する場合について説明したが、紫外線又は紫外線よりも波長の短い光を利用して反射防止構造体303を形成することもできる。そして、この場合には、紫外線又は紫外線よりも波長の短い光に感光する性質を有する高分子化合物としてホルミル化ノボラック樹脂を用いればよい。
【0045】
次に、本実施形態のレンズ鏡筒成形用金型を用いて、レンズ鏡筒200を成形する(基材101の内表面に反射防止構造体303を形成する)方法について説明する。
【0046】
まず、上記第2の実施形態で挙げた黒色材料(光を吸収する材料)からなる円筒状の基材101を180℃程度まで昇温しながら、当該基材101の内表面に第1の金型301を2個セットする。その後、2個の第1の金型301間の基材101の内表面に第2の金型302を2個セットして、第1及び第2の金型301、302の外表面に形成された反射防止構造体303のパターンを基材101の内表面に転写する(図12参照)。次いで、全体を冷却した後、第1及び第2の金型301、302を離型する。これにより、基材101の内表面に入射光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体303を備えたレンズ鏡筒200が得られる。この場合、第1及び第2の金型301、302の外表面に形成された反射防止構造体303は、各構造単位である円錐形状の中心軸が互いに平行となっているので、第2の金型302及び第1の金型301を、この順番で各中心軸の方向に離型することにより、各反射防止構造体102を破壊することなくレンズ鏡筒200を成形することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、レンズ鏡筒成形用金型の分割数を4としているが、3以上であれば、適当な分割数とすることができる。また、本実施形態においては、外表面に反射防止構造体303が形成されたレンズ鏡筒成形用金型を例に挙げて説明しているが、外表面に反射防止構造体を備えたレンズ鏡筒を成形する場合には、内表面に反射防止構造体が形成されたレンズ鏡筒成形用金型が用いられる。
【0048】
また、レンズ鏡筒成形用金型の反射防止構造体は、本実施形態で示した構造に限定されるものではなく、これらの反射防止構造体を破壊することなく一方向に離型できる構造であれば、第1の実施形態で説明したようなどのような構造であってもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、円筒の側面の一部を成すように構成された第1及び第2の金型301、302を例に挙げて説明しているが、円錐台状のレンズ鏡筒を成形する場合には、円錐台の側面の一部を成すように構成された金型が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の光吸収部材は、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等の投写型表示装置及びこれら投写型表示装置を複数備えたマルチビジョンシステム、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置、光ピックアップ装置、光ファイバー通信システム等、不要光の除去が必要なすべての光学機器に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図2】第1の実施形態の反射防止構造体を拡大して示した概略断面図
【図3】第1の実施形態の反射防止構造体の突出形状を持つ各構造単位の側面の傾斜状態を説明するための概略斜視図
【図4A】第1の実施形態の反射防止構造体の拡大図
【図4B】第1の実施形態の反射防止構造体の拡大図
【図5A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図5B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図6A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図6B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図7A】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図7B】第1の実施形態の変形例の反射防止構造体の拡大図
【図8】第1の実施形態の変形例における光吸収部材をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図9】本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図10】本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒を光軸を含む面で切断して示した概略断面図
【図11A】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図11B】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をその長手方向に垂直な面で切断して示した概略断面図
【図12】本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒成形用金型をレンズ鏡筒の基材にセットした状態を、光軸に垂直な面で切断して示した概略断面図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、巨視的に曲面形状を有する基材と、
前記光の波長よりも短いピッチで、前記曲面の表面にアレイ状に配列された構造単位を有する反射防止構造体とを備え、
前記構造単位が、前記基材の曲面に相当する仮想面に対して突出又は陥没した形状を有し、該仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるように配列されている、光吸収部材。
【請求項2】
前記各構造単位において、
突出した形状の側面又は陥没した形状の内面の法線ベクトルが、仮想面から各構造単位の端部へ向かう方向の基準ベクトルとなす角をθとしたとき、
θ<90度
の関係を満足する、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項3】
前記反射防止構造体が、基材の一部として一体的に形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項4】
前記反射防止構造体が、基材に貼付されたシート状部材に形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項5】
前記仮想面と各構造単位の端部との間の直線に沿った方向の長さが、ピッチの1倍以上である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項6】
前記曲面が凹面である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項7】
前記曲面の表面のサグ量が20μm以上である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項8】
前記光が、紫外光、可視光、近赤外光及び遠赤外光からなる群より選ばれる、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項9】
前記各構造単位が、略円錐状の突出又は略円錐状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項10】
前記各構造単位が、略釣鐘状の突出又は略釣鐘状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項11】
前記各構造単位が、略円錐台又は角錐台状の突出、もしくは略円錐台又は角錐台状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項12】
前記各構造単位が、略柱状の突出又は略柱状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項13】
前記各構造単位において、
突出した形状の仮想面上の底面又は陥没した形状の仮想面上の上面が、略円形、略楕円形、略矩形及び略正多角形からなる群より選ばれる形状を有する、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項14】
前記基材が染料を含有したものである、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項15】
前記基材が顔料を含有したものである、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項1】
反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、巨視的に曲面形状を有する基材と、
前記光の波長よりも短いピッチで、前記曲面の表面にアレイ状に配列された構造単位を有する反射防止構造体とを備え、
前記構造単位が、前記基材の曲面に相当する仮想面に対して突出又は陥没した形状を有し、該仮想面と各構造単位の端部とを結ぶ直線が互いに略平行になるように配列されている、光吸収部材。
【請求項2】
前記各構造単位において、
突出した形状の側面又は陥没した形状の内面の法線ベクトルが、仮想面から各構造単位の端部へ向かう方向の基準ベクトルとなす角をθとしたとき、
θ<90度
の関係を満足する、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項3】
前記反射防止構造体が、基材の一部として一体的に形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項4】
前記反射防止構造体が、基材に貼付されたシート状部材に形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項5】
前記仮想面と各構造単位の端部との間の直線に沿った方向の長さが、ピッチの1倍以上である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項6】
前記曲面が凹面である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項7】
前記曲面の表面のサグ量が20μm以上である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項8】
前記光が、紫外光、可視光、近赤外光及び遠赤外光からなる群より選ばれる、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項9】
前記各構造単位が、略円錐状の突出又は略円錐状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項10】
前記各構造単位が、略釣鐘状の突出又は略釣鐘状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項11】
前記各構造単位が、略円錐台又は角錐台状の突出、もしくは略円錐台又は角錐台状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項12】
前記各構造単位が、略柱状の突出又は略柱状の陥没である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項13】
前記各構造単位において、
突出した形状の仮想面上の底面又は陥没した形状の仮想面上の上面が、略円形、略楕円形、略矩形及び略正多角形からなる群より選ばれる形状を有する、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項14】
前記基材が染料を含有したものである、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項15】
前記基材が顔料を含有したものである、請求項1に記載の光吸収部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【公表番号】特表2008−500560(P2008−500560A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544760(P2006−544760)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/JP2005/009293
【国際公開番号】WO2005/116695
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/JP2005/009293
【国際公開番号】WO2005/116695
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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